以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1〜5は、本発明の第1の実施の形態に係る電動リクライニングシートが適用された電動車椅子の概略構成を示す図であり、図1は左側面図であり、図2は正面図であり、図3は背面図であり、図4は平面図であり、図5は駆動系を示す部分拡大図である。以降、電動車椅子の前後方向及び左右方向は電動車椅子の使用者(運転者)を基準にして呼称する。
図1〜4に示すように、電動車椅子1は電動リクライニングシート10を備える。電動リクライニングシート10は、運転者(図1のP参照)が着座するシートクッション(着座シート)11と、シートクッション11に着座する運転者の背部を受けるシートバック(背もたれ)12(図1の斜線部分)と、シートクッション11に着座する運転者の脚部の膝下部位を支えると共に足置きとなるフットレスト(足置き)13とを備える。電動リクライニングシート10は、後述するリクライニング駆動用装置を備え、リクライニング駆動用装置が制御されて、座位状態とフルフラット状態との間の状態をとる。電動リクライニングシート10が座位状態の場合は、図1に示すように、シートクッション11は側面視やや斜めとなり、即ち、後端が水平状態を維持したまま上端より下方に下がった状態となり、シートバック12は、この状態のシートクッション11に対して略垂直となり、フットレスト13は、シートバック12に対して平行な位置よりやや後方に傾いた状態となる。また、電動リクライニングシート10がフルフラット状態の場合は、図6に示すように、シートクッション11、シートバック12、及びフットレスト13が同一の略水平な平面上に位置する状態となる。
シートクッション11の下方には、左右一対のメインフレーム14が、前後方向に延設されている。左右一対のメインフレーム14は複数のブリッジ部材15(パイプ材)によって結合され、必要かつ十分な強度剛性を有している(図3参照)。各メインフレーム14の前部近傍及び後部近傍には、前後方向に延設されるブラケット16が立設され、シートクッション11は、ブラケット16を介してメインフレーム14に支持されている。
メインフレーム14は前方下方向に傾斜して配置され、その前端部には支軸17が垂直方向に延設されており、支軸17の下端には支軸17を中心に回転自在に支持されたキャスタ式の前輪18が配設されている。また、メインフレーム14の後端部近傍には、後述するパワーユニットによって左右独立に駆動可能な後輪19が配設されている。後輪19は、メインフレーム14の前部に枢支された懸架アーム20、及びメインフレーム14の後端部近傍に枢支されたクッションユニット21を介して、メインフレーム14に取り付けられている。クッションユニット21は、クッションスプリングを備えており、後輪19をメインフレーム14に対して上下方向に移動可能にし、ダンパとして機能する。
一対のブラケット16の後端には、前後方向に回転可能に軸支された略コの字型のシートバックフレーム23が配設されている。シートバック12は、シートバックフレーム23に沿って(図1の矢印A方向に)スライド自在に、シートバックフレーム23に取り付けられている。シートバック12の上部にはヘッドレスト24が取り付けられている。また、シートバックフレーム23の背面側には手押し用の一対のハンドル25が取り付けられている。
シートバック12の左右両側部には左右一対のアームレスト27が配置されている。アームレスト27は、運転者がシートクッション11に着座した状態で肘を置くことが可能な位置に配置されており、その後端がシートバック12に上下方向(図1の矢印B方向)に回転可能に軸支されている。アームレスト27の前端部には、支持フレーム28の一端が回転可能に軸支されており、支持フレーム28の他端は、後述するシートクッションフレーム51に回転可能に軸支されている。
また、右側のアームレスト27の前端部には前側から、電動車椅子1を操作するためのコントローラ29が取り付けられている。コントローラ29は、運転者がシートクッション11に着座した状態でアームレスト27に肘を置きながら、無理なく後述する走行操作レバー30等を操作し得るように配置されている。尚、右側のアームレスト27ではなく左側のアームレスト27にコントローラ29を設けることも可能である。コントローラ29は、後述する後輪駆動用の電動モータを駆動制御して電動車椅子1の走行、右或いは左旋回動作等を行わせるための走行操作レバー30や、運転その他電動車椅子1を操作するために必要なスイッチ類31等を備えている。スイッチ類31には、例えば、電動車椅子1の走行を可能にしたり、リクライニング動作を可能にしたり、電動車椅子1の電源をOFF状態にしたりすることができる切換スイッチ等が含まれる。
フットレスト13は、左右一対のフットレストフレーム32と、フットレストフレーム32の下端に夫々図2の矢印C,D方向に回転可能に取り付けられた一対の足乗せ33とを備える。フットレストフレーム32はその上端部に取り付けられたブラケット34を有し、ブラケット34はその上端部において上下方向に回転可能にシートクッション11に軸支されている。ブラケット34の下端部には、回転範囲を規制するストッパ34aが設けられている。メインフレーム14の前端部にはブラケット34のストッパ34aに当接可能にストッパ35が設けられており、ストッパ34aとストッパ35が当接することにより、フットレスト13の下方向の回転可能範囲が規制される。
左右一対の後輪19の内側には、後輪19を駆動するパワーユニット40が夫々配設されている(図3,5参照)。パワーユニット40は、動力源である電動モータ41とこの電動モータ41の動力を後輪19に減速伝達する減速ギヤ列を含むギヤボックス42とを備える。電動モータ41は略筒状の形状であり、水平配置される。ギヤボックス42のケーシング内には減速ギヤ列を構成する複数のギヤが収容されており、電動モータ41はその主軸41aが減速ギヤ列に動力を伝達するようにギヤボックス42に一体的に結合されている。
ギヤボックス42は後輪19の内側に配置され、前後方向略中央部には車幅方向の外方に突出する後輪車軸43を備え、後輪車軸43は後輪19を支持する。電動モータ41は、図5に示すように、ギヤボックス42の内側に取り付けられているが、後輪車軸43に対して平行かつ後方に偏倚して配置されている。このように電動モータ41を後方に偏倚して配置することによって、電動モータ41の前側にスペースを確保することができる。
シートクッション11の下方には、パワーユニット40に給電するバッテリ44が配設されている。バッテリ44は、メインフレーム14に取り付けられたバッテリホルダ45(図2参照)によって着脱可能に保持されている。本実施の形態においては、バッテリホルダ45は2個のバッテリ44を前後方向に並べて搭載可能に構成されている。
シートクッション11は、図1に示すように、下端面に前後方向に延びる左右一対のシートクッションフレーム51を備え、シートクッショ11は、このシートクッションフレーム51によって支持される。シートクッションフレーム51は、前端部がブラケット16の前端部に形成されたスライドブラケット16aによって前後方向にスライド移動可能に支持されており、後端部がブラケット16の後端部に形成されたガイドブラケット16bによって前方斜め上方に移動可能に支持されている。これにより、シートクッション11は、座位状態(図1の状態)において前方に押されると、後端が上端より下方にやや下がった状態から、即ちシートクッション11の上面が水平より右側面視左斜め下方向に傾いた状態から、前方にスライド移動すると共に後端が上方に上がってシートクッション11の上面が水平になった状態(図6のフルフラット状態)に移動可能に構成されている。即ち、シートクッション11は、後端が前端より下方に下がった座位状態から、所定の距離だけ前方にスライド移動して後端が前端と略水平位置になるように移動可能に構成されている。シートクッションフレーム51の前後方向略中央部には、アームレスト27を支持する支持フレーム28の下端部が上下方向に回転可能に軸支されている。
シートバックフレーム23は、下端においてブラケット16のガイドブラケット16bの上端に前後方向(図1の矢印F方向)に傾動可能に軸支されており、また、下端にはリクライニング機構52が取り付けられている。リクライニング機構52は、後述するリクライニング駆動用装置61によって、電動リクライニングシート10を座位状態からフルフラット状態に変動可能にする。
また、リクライニング機構52には、シートクッションフレーム51の後端が連結されていると共に、リンク機構53を介してフットフレーム32が連結されている。具体的には、リクライニング機構52は、シートバック12が座位状態から後方(図1の矢印F方向)に傾動されるに従って、シートクッション11が座位状態から前方にスライド移動されると共にその後端が上方に移動され、シートバック12が略水平になった場合に、シートクッション11が略水平となる(その前端と後端とが水平となる)ように、シートバックフレーム23とシートクッションフレーム51とを連結している。また、リクライニング機構52は、シートバック12が座位状態から後方(図1の矢印F方向)に傾動されるに従って、フットレスト13が座位状態から前方に(図1の矢印E方向)に傾動され、シートバック12が略水平になった場合に、フットレスト13が所定の角度となるように、シートバックフレーム23とフットレストフレーム32とを連結している。このように、シートクッション11及びフットレスト13がリクライニング機構52によってシートバックフレーム23に連結されることにより、電動リクライニングシート10は、座位状態からフルフラット状態に変位可能になっている。
上記アームレスト27を支持する支持フレーム28は、電動リクライニングシート10が座位状態においてシートクッション11に対して略垂直に、フルフラット状態においてシートクッション11に対して所定の角度になるようにその長さが設定されている。この所定の角度は、フルフラット状態において、シートクッション11、シートバック12、及びフットレスト13上に仰臥する運転者がコントローラ29を操作しやすい角度に設定されている。
電動リクライニングシート10は更に、図3に示すように、電動リクライニングシート10を座位状態からフルフラット状態のいずれかの状態にするリクライニング動作を行うためのシートバック傾動駆動用モータ67を有するリクライニング駆動用装置61と、シートバック12をシートバックフレーム23に沿って(図1の矢印A方向に)スライド駆動させるシートバックスライド駆動用モータ62と、シートバック12の傾動角度を検出するシートバック傾動角度検出センサ63と、シートバック12のスライド量を検出するシートバックスライド位置検出センサ64とを備える。また、電動リクライニングシート10は、シートバック12の傾動方向の位置であるシートバック傾動角度及びスライド方向の位置であるシートバックスライド位置(以下、シートバック位置と総称する)を任意の位置に操作するための座位変換駆動スイッチ65と、運転者の座位変換駆動スイッチ65の操作に対応してリクライニング駆動用装置61及びシートバックスライド駆動用モータ62を夫々駆動制御する制御ユニット66とを備える。
図7に示すように、シートバックスライド駆動用モータ62、シートバック傾動角度検出センサ63、シートバックスライド位置検出センサ64、座位変換駆動スイッチ65、シートバック傾動駆動用モータ67、及びバッテリ44は、制御ユニット66に電気的に接続されている。シートバックスライド駆動用モータ62及びシートバック傾動駆動用モータ67は、例えばステッピングモータである。
リクライニング駆動用装置61は、シートバック12の背面側であって例えば右側のリクライニング機構52の近傍に配設されている。リクライニング駆動用装置61は、シートバック傾動駆動用モータ67によって前後方向に伸縮する図示しない伸縮部材を介してリクライニング機構52に接続されている。リクライニング機構52は、リクライニング駆動用装置61によって駆動されることにより電動リクライニングシート10が座位状態とフルフラット状態との間で移動することができるように構成されている。シートバック傾動駆動用モータ67は、制御ユニット66から電力が供給されることにより作動する。
シートバック傾動角度検出センサ63は、シートバックフレーム23の背面において例えば左側のリクライニング機構52の近傍に配設されている。シートバック傾動角度検出センサ63は、例えば、ポテンショメータから構成されており、図示しない検出部がシートバック12あるいはシートフレーム23の傾動(リクライニング動作)に応じて回転し、シートバック12の角度に対応した信号例えば電圧信号を制御ユニット66に出力する。
シートバックスライド駆動用モータ62及びシートバックスライド位置検出センサ64は、図3に示すように、シートバックフレーム23の背面側に取り付けられたスライドメカプレート68に取り付けられている。シートバックスライド位置検出センサ64はシートバック傾動角度検出センサ63と同様に、例えばポテンショメータから構成されている。スライドメカプレート68は所定の間隔を開けてシートバックフレーム23に取り付けられている。
図8に示すように、スライドメカプレート68の背面側において下方にシートバックスライド駆動用モータ62がその出力軸62aが略垂直上方に延びるように取り付けられている。主軸62aには螺旋状の歯車であるウオームギヤ62bが取り付けられている。また、スライドメカプレート68の背面側には、図8及び図9に示すように、大径の上段ギヤ69aと小径の下段ギヤ69bとが同軸に重ね合わされて形成された減速ギヤ69が取り付けられている。減速ギヤ69の下段ギヤ69bは、スライドメカプレート68の貫通孔70に受容されている。
スライドメカプレート68の前面側には、図9に示すように、扇形歯車であるセクタ71が減速ギヤ69の下段ギヤ69bに噛み合うように取り付けられている。セクタ71には、電動車椅子1の幅方向の内側に延びる板状のセクタアーム72が固定されている。セクタアーム72は、セクタ71の回転と共にセクタ71の回転軸71aを中心として上下方向(図9の矢印G方向)に回転する。セクタアーム72は、その先端部が図示しない接続部を介してシートバック12の背面に接続されている。
また、図8に示すように、スライドメカプレート68の背面側には、シートバックスライド位置検出センサ64と、シートバックスライド位置検出センサ64の検出部64aと噛み合うセクタであるセンサギヤ73が取り付けられている。センサギヤ73は、セクタ71の回転軸71aに取り付けられている。即ち、センサギヤ73とセクタ71とは同軸(回転軸71a)に一体的に取付けられており、回転軸71aを中心に一体的に回転する。また、スライドメカプレート68の背面側には、制御ユニット66が取り付けられている。
上述の構成により、制御ユニット66から電力が供給されてシートバックスライド駆動用モータ62が作動され、主軸62aに取り付けられたウオームギヤ62bが回転し、減速ギヤ69が回転する。これにより、セクタ71が回転してセクタアーム72の先端部が上下方向に移動し、この上下方向の動きに連動してシートバック12がシートバックフレーム23に沿って上下方向(図1の矢印A方向)にスライド移動する。また、セクタ71の回転によりセンサギヤ73がセクタ71と一体的に回転してシートバックスライド位置検出センサ64の検出部64aが回転し、シートバックスライド位置検出センサ64は検出部64aの回転量に応じた信号、例えば電圧信号を制御ユニット66に送信する。
座位変換駆動スイッチ65は、電動リクライニングシート10の座位変換を指示するスイッチであり、具体的には電動リクライニングシート10を座位状態に近づくように動作させるための指示をする上昇指示と、フルフラット状態に近づくように動作させるための指示をする下降指示との2つの動作指示信号を出力可能なスイッチである。具体的には、座位変換駆動スイッチ65は前方に操作されることにより、制御ユニット66に上昇指示信号を送信し、座位変換駆動スイッチ65は後方に操作されることにより、制御ユニット66に下降指示信号を送信する。
制御ユニット66は、図7に示すように、CPU81と、CPU81の演算処理の作業領域としてのRAM82と、CPU81の実行するプログラム等を格納する領域である不揮発性メモリ、例えばEEPROM83と、シートバックスライド駆動用モータ62を駆動制御するためのシートバックスライド駆動用モータ制御部84と、シートバック傾動駆動用モータ67を駆動制御するためのシートバック傾動駆動用モータ制御部85とを備える。
EEPROM83には、運転者の座位変換駆動スイッチ65の操作に応じて、シートバック傾動角度検出センサ63及びシートバックスライド位置検出センサ64の検出値に基づいてシートバック位置を座位状態からフルフラット状態の間の任意の位置に移動制御するためのシートバック位置制御データが予め記憶されている。このシートバック位置制御データは、具体的には、図10に示すように、各シートバック傾動角度に対応したシートバックスライド位置が設定されたマップデータやテーブルデータである。制御ユニット66は、使用者が、EEPROM83内のシートバック位置制御データを任意に設定及び変更可能に構成されている。即ち、使用者は、各シートバック傾動角度に応じたシートバックスライド位置、つまりシートバック12の動特性を示すシートバック動特性設定値を任意に設定及び変更することができる。
本実施の形態において、制御ユニット66は、シートバック位置制御データとして、シートバック傾動角度を水平面に対して0°〜80°の間で設定することができ、シートバックスライド位置をスライド方向(図1の矢印A方向)最下位置を基準として0mm〜180mmの間で設定することができるように構成されている。また、シートバック位置制御データは、シートバック12の上昇動作時とシートバック12の下降動作時において夫々独立したシートバック動特性を示すように設定することができるように構成されている。例えば、図10に示すように、シートバック12の上昇及び下降動作を、線aや線eに示すような動特性を示すように設定することや、線b,c,dに示すようなヒステリシスループを描くような動特性を示すように設定することができる。
シートバックスライド駆動用モータ制御部84は、例えば、PWM回路から構成されており、シートバックスライド駆動用モータ62に出力するパルス幅を変化させることによりシートバックスライド駆動用モータ62を駆動制御する。
シートバック傾動駆動用モータ制御部85は、シートバックスライド駆動用モータ制御部84と同様に、例えば、PWM回路から構成されており、シートバック傾動駆動用モータ67に出力するパルス幅を変化させることによりシートバック傾動駆動用モータ67を駆動制御する。
制御ユニット66は、シートバック傾動角度検出センサ63及びシートバックスライド位置検出センサ64の検出値に応じて現在のシートバック位置を検出し、上記シートバック位置制御データを参照して、座位変換駆動スイッチ65の操作に応じて設定されているシートバック動特性に従ってシートバックスライド駆動用モータ62及びシートバック傾動駆動用モータ67を夫々駆動してシートバック位置を駆動制御するシートバック駆動制御処理を実行する。シートバック駆動制御処理は、CPU81によって実行される。
以下、シートバック駆動制御処理について具体的に説明する。
図11は、シートバック駆動制御処理のフローチャートである。
シートバック駆動制御処理において、まず、シートバック傾動角度検出センサ63及びシートバックスライド位置検出センサ64の検出値に基づいて現在のシートバック位置を検出する(ステップS1)。具体的には、シートバック傾動角度検出センサ63の検出値と予め設定されている所定の基準値との差を検出し、この検出した差に基づいて現在のシートバック12のシートバック傾動角度を算出する。また、同様に、シートバックスライド位置検出センサ64の検出値と予め設定されている所定の基準値との差を検出し、この検出した差に基づいて現在のシートバック12のシートバックスライド位置を算出する。
次いで、座位変換駆動スイッチ65からの入力信号が上昇動作指示信号であるか否かを判別する(ステップS2)。座位変換駆動スイッチ65からの入力信号が上昇動作指示信号である場合は、EEPROM83内のシート位置制御データを検索して、電動リクライニングシート10の上昇動作時のシートバック動特性設定値を読み出し(ステップS3)、ステップS5の処理に移行する。一方、座位変換駆動スイッチ65からの入力信号が上昇動作指示信号ではなく下降動作指示信号である場合は、EEPROM83内のシート位置制御データを検索して、電動リクライニングシート10の下降動作時のシートバック動特性設定値を読み出し(ステップS4)、ステップS5の処理に移行する。
次いで、ステップS5において、ステップS3又はステップS4において読み出したシートバック動特性設定値に基づいて、図10に示すような各設定値を滑らかに結んだシートバック動特性ライングラフを算出する。次いで、ステップS1において検出した現在のシートバック位置に対応するシートバック位置をステップS5において算出したシートバック動特性ライングラフから検出し、この検出値からシートバック動特性ライングラフに沿ってシートバック12がリクライニング動作及びスライド動作するようにシートバックスライド駆動用モータ62及びシートバック傾動駆動用モータ67を駆動制御して、シートバック12の位置を制御する(ステップS6)。
上記シートバック駆動制御処理により、図12(A)〜(G)に示すように、シートバック12を座位状態からフルフラット状態の所望の位置に制御することができる。
上述のように、本発明の第1の実施の形態に係る電動リクライニングシート10によれば、シートバック12のリクライニング動作時にシートバック傾動角度に応じてシートフレーム23に沿ってシートバック12をスライド駆動させるので、運転者の背中がシートバック上を摩擦力に抗して動くことを抑制することができる。これにより、運転者のシートバックに対する背中の接触部が擦れるようにずれてしまうことを抑制することができる。このため、運転者がリクライニング動作の度に座り直して姿勢を元に戻す必要を低減することができ、リクライニング動作時に運転者に不便が生ずることを抑制することができる。加えて、リクライニング動作時に運転者の背中が擦れることを抑制することができ、運転者に不快感を与えることを抑制することができる。
また、本実施の形態に係る電動リクライニングシート10によれば、制御ユニット66のEEPROM83に予め設定されたシート位置制御データに基づいてシートバック傾動角度及びシートバックスライド位置が制御されるので、運転者の体型や好みに合わせてシートバック動特性を設定することができる。このため、運転者毎に、シートバックに対する背中の接触部が擦れるようにずれてしまうことを抑制することができる。これにより、運転者毎に、リクライニング動作時に不便が生ずること、及び不快感を与えることを抑制することができる。
加えて、EEPROM83に設定されたシート位置制御データは、使用者によって任意の設定値に設定及び変更することができると共に、シートバック12の上昇動作時とシートバック12の下降動作時において夫々独立したシートバック動特性を示すように設定することができる。このため、種々のシートバック動特性を設定することができる。
次いで、本発明の第2の実施の形態に係る電動リクライニングシートについて説明する。
上記本発明の第1の実施の形態に係る電動リクライニングシート10においては、リクライニング動作時にシートバックがずれない、運転者に最適なシートバック動特性を示すようにシート位置制御データを設定するために、予め適当な設定値が設定された状態でリクライニング動作を行い、運転者が背中の感覚を頼りにシートバックのズレがなくなるように自らシート位置制御データの設定値を微調整するか、若しくは介護者等が使用者の訴えに応じて設定値を微調整する必要がある。
この方法は、最適な設定値を探し出すまでに時間と手間がかかるばかりではなく、その過程において運転者に不快感や負担を与える可能性がある。また、上半身の不自由な使用者にとっては、この方法でシート位置制御データの最適な設定値を見つけ出すことは困難である。
本実施の形態に係る電動リクライニングシートは、より簡単に、リクライニング動作時にシートバックがずれないようにスライド動作する、運転者に最適なシートバック動特性を示すようなシート位置制御データを設定することができるようにするものである。
本実施の形態に係る電動リクライニングシート100は、上記本発明の第1の実施の形態に係る電動リクライニングシート10に対して、シートバックへのシートバックスライド駆動用モータの動力を遮断可能にするクラッチ機構を有する点が異なり、上記本発明の第1の実施の形態と同じ構成部材には同一の符号を付してその説明を省略し、以下異なる点のみ説明する。
以下、クラッチ機構の構成について説明する。
本実施の形態に係る電動リクライニングシート100において、図13に示すように、シートバックスライド駆動用モータ62及び減速ギヤ69は、取付プレート110に取り付けられている。取付プレート110は上部に、外側に突出する凸部111を有する。また、取付プレート110は、図14に示すように、回転軸112を中心に回転可能にスライドメカプレート68に軸支されている。即ち、シートバックスライド駆動用モータ62及び減速ギヤ69は、図13,14の矢印Hの方向に一体的に回転可能に構成されている。
また、図14に示すように、スライドメカプレート68には、取付プレート110の回転可能範囲を規定するための長穴状のガイド孔113,114が形成されており、取付プレート110には、このガイド孔113,114に夫々受容されるガイド軸115,116が取り付けられている。ガイド孔113,114及びガイド軸115,116は、減速ギヤ69の下段ギヤ69bがセクタ71に噛み合う位置から、これらの噛み合いが解ける位置との間においてシートバックスライド駆動用モータ62が回転可能になるように取付プレート110の回転範囲を規定する。また、スライドメカプレート68には、貫通孔70に代えて、取付プレート110の回転範囲内において減速ギヤ69の下段ギヤ69bがスライドメカプレート68に緩衝しないような長穴状の貫通孔117が形成されている。
取付プレート110は、下段ギヤ69bがセクタ71に噛み合わない位置(以下、フリー状態とも称呼する)に保持されるように、図13の矢印Hの左側回転方向に付勢されている。具体的には、図15に示すように、センサギヤ73を軸支するボス118と取付プレート110に設けられたストッパピン119との間に設けられた弾性材から構成されるスプリング120によって矢印Iの方向に付勢される。このスプリング120の付勢力によって、取付プレート110はフリー状態に付勢される。
また、スライドメカプレート68には、図13に示すように、取付プレート110の凸部111の近傍に回転可能に軸支されたクラッチレバー130が配設されている。クラッチレバー130の回転軸には、図16に示すように、取付プレート110の凸部111と当接するカム131が設けられている。カム131は、図13,16に示すように、クラッチレバー130が矢印Jの右方向に回転されたOFF状態において、カム131の左側面131aがフリー状態の取付プレート110の凸部111の右側面111aに当接するように形成されている。
クラッチレバー130が矢印Jの左方向に回転されると、カム131が凸部111をスプリング120の付勢力に抗して左方向に押し、クラッチレバー130がON状態まで回転されるとカム131の先端131bが凸部111の右側面111aと当接する。このとき、取付プレート110は、下段ギヤ69bがセクタ71に噛み合う位置(以下、噛み合い状態とも称呼する)となる。
上述の構成により、電動リクライニングシート100において、クラッチレバー130をOFF状態に保持することにより、取付プレート110をフリー状態に保持し、クラッチレバー130をON状態に保持することにより、取付プレート110を噛み合い状態に保持することができる。減速ギヤ69がフリー状態の場合、シートバック12はシートバックスライド駆動用モータ62との結合が解けているため、自由にスライド移動することができる。
次いで、EEPROM83へのスライド位置制御データの設定方法の一例について説明する。
まず、クラッチレバー130をOFF状態にして、取付プレート110をフリー状態にし、シートバック12を自由にスライド移動することができる状態にする。次いで、座位状態において運転者に最適なスライド位置にシートバック12を保持する。次いで、座位変換駆動スイッチ65を操作して下降指示信号を送信し、シートバック12を下降側に傾動させていき、シートバック12をフルフラット状態にする。この動作中、シートバック12が運転者の背中に対して滑らないようにしてシートバック12をスライドさせる。そして、座位変換駆動スイッチ65を操作して上昇指示信号を送信し、シートバック12を上昇側に傾動させていき、シートバック12を座位状態にする。同様に、この動作中、シートバック12が運転者の背中に対して滑らないようにしてシートバック12をスライドさせる。
このとき、シートバック12のシートバック傾動角度とシートバックスライド位置との関係が図17に示すようにシートバック12が動作したとする。制御ユニット66は、このシートバック傾動角度とシートバックスライド位置との関係におけるシートバック傾動角度の値に対応するシートバックスライド位置の値をシートバック傾動角度検出センサ63及びシートバックスライド位置検出センサ64の検出値に基づいてEEPROM83に記憶する。そして、制御ユニット66は、この記憶した値を上述のシートバック駆動制御処理におけるシートバック位置制御データとして用いる。これにより、より運転者に最適なシートバック動特性を示すシートバック位置制御データを設定することができ、シートバック12のリクライニング動作及びスライド動作において、運転者の背中に対するシートバック12のズレをより抑制することができる。
制御ユニット66における、シートバック傾動角度の値に対応するシートバックスライド位置の値のEEPROM83への記憶方法は、例えば、図18に示すように、等角度間隔でシートバック傾動角度の設定角度を下降方向及び上昇方向で夫々5箇所設定し、この設定した設定箇所のシートバック傾動角度の値に対応するシートバックスライド位置の値をシートバック傾動角度検出センサ63及びシートバックスライド位置検出センサ64の検出値に基づいて記憶することにより行う。この設定箇所を細かく設けるほど、運転者固有の最適なシートバック12のスライド動作の再現性を向上させることができる。
上述のように、本実施の形態に係る電動リクライニングシート100によれば、クラッチレバー130をON状態からOFF状態に操作することにより、シートバックスライド駆動用モータ62とシートバック12との結合を解除することができ、シートバック12を自由にスライド移動することができる状態にすることができる。制御ユニット66は、この状態において、シートバック12が上昇側及び下降側にリクライニング動作された場合に、そのときのシートバック12のシートバック傾動角度に対応するシートバックスライド位置をEEPROM83に記憶する。そして、制御ユニット66は、この記憶されたシートバック動特性に基づいてシートバック12のシートバック駆動制御処理を実行する。このように、運転者固有の最適なシートバック動特性を示すシートバック位置制御データの設定値を簡単に検出することができ、運転者固有の最適なシートバック動特性を示すようにシートバック12を駆動することができる。従って、運転者毎に、リクライニング動作時に不便が生ずること、及び不快感を与えることをより確実に抑制することができる。
上述のように、本実施の形態に係る電動リクライニングシート100において、クラッチレバー130は、手動によってON状態及びOFF状態に操作可能な構成としたが、クラッチレバー130の構成をこれに限るものではなく、例えば、コントローラ29又は座位変換駆動スイッチ65における所定の操作に応じて、制御ユニット66によって自動的にON状態及びOFF状態に駆動可能な構成としてもよい。
また、シートバック位置制御データの設定は、シートバック12のリクライニング動作を上述のように1回のみ行って、シートバック傾動角度に対応するシートバックスライド位置を記憶して行うものに限らず、例えば、シートバック12のリクライニング動作を複数回行って、シートバック傾動角度に対応するシートバックスライド位置を複数回記憶し、この平均値を算出して設定して行うものであってもよい。
次いで、本発明の第3の実施の形態に係る電動リクライニングシートについて説明する。
図19,20は、本発明の第3の実施の形態に係る電動リクライニングシート200が適用された電動車椅子300の概略構成を示す図であり、図19は左側面図であり、図20は背面図である。また、図21〜24は、電動リクライニングシート200の動作を説明するための図である。図19,20は座位状態の電動リクライニングシート200を示す。図23,24は、電動リクライニングシート200が立位状態である電動車椅子300の概略構成を示す図であり、図23は左側面図であり、図24は背面図である。図21,22は、電動リクライニングシート200が座位状態と立位状態の間の状態である電動車椅子300の概略構成を示す図であり、図21は左側面図であり、図22は背面図である。
本実施の形態に係る電動リクライニングシート200は、上記本発明の第2の実施の形態に係る電動リクライニングシート100に対して、立位状態に変形可能に構成された点が異なる。立位状態において、電動リクライニングシート200は、図23,24に示すように、シートクッション11、シートバック12、及びフットレスト13が接地面に対して略垂直な平面上に位置する状態となる。以下、上記本発明の第2の実施の形態と同じ構成部材には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる点のみ説明する。
電動リクライニングシート200は、図19に示すように、上記本発明の第2の実施の形態に係る電動リクライニングシート100の一対のブラケット16(図1参照)に代えて一対のブラケット201を備える。ブラケット201は、ブラケット16に対して先端形状が異なる。具体的には、図19に示すように、ブラケット201はその先端がシートクッション11の先端近傍まで延設されている。また、ブラケット201は、シートクッション11下方の一対のメインフレーム14に固定されていない。
メインフレーム14の各先端部には、前方斜め上方に延びるスタンディングブラケット202が取り付けられている。スタンディングブラケット202の上端には、ブラケット201の前端が図19の矢印K方向に回転可能に軸203を介して軸支されている。このように、ブラケット201はメインフレーム14に直接支持されておらず、スタンディングブラケット202を介してメインフレーム14に支持されている。また、一対のスタンディングブラケット202は、幅方向に水平に延びるブリッジ部材204(図22,24参照)によって結合されている。ブリッジ部材204は、左右の端部が各スタンディングブラケット202の略中央に夫々接続している。
上記構成を有するブラケット201とスタンディングブラケット202により、電動リクライニングシート200は、シートクッション11が、軸203を中心として図19の矢印K方向に回転可能になっている。
電動リクライニングシート200は、シートクッション11の下方に、電動リクライニングシート200を座位状態(図19,20)と立位状態(図23,24)との間で変形(座位変換)可能にするシートクッション傾動駆動用アクチュエータ205を備える。シートクッション傾動駆動用アクチュエータ205は、例えば、モータ式のアクチュエータであり、図24に示すように、ロッド206と、ロッド206をその軸方向に摺動可能に収容するシリンダ207と、ロッド206をその軸方向に駆動するシートクッション傾動駆動用モータ208とを備える。シートクッション傾動駆動用モータ208は、例えばステッピングモータである。
シートクッション傾動駆動用アクチュエータ205は、ロッド206側端部(ロッド206先端部)が、スタンディングブラケット202間を接続するブリッジ部材204の幅方向略中央に前後方向(図19の矢印K方向)に回転可能に軸支されている(図24参照)。また、シートクッション傾動駆動用アクチュエータ205は、シリンダ207側端部(シリンダ207先端部)が、ブラケット201の後端間を接続するブリッジ部材15の幅方向略中央に前後方向(図19の矢印K方向)に回転可能に軸支されている(図24参照)。
シートクッション傾動駆動用アクチュエータ205は、シートクッション傾動駆動用モータ208の駆動により、ロッド206が突出又は後退して、軸203を中心にシートクッション11を矢印K方向に傾動可能にする。シートクッション傾動駆動用アクチュエータ205は、ロッド206が最も後退した状態において、図19,20に示すように、シートクッション11を座位状態にし、ロッド206が最も突出した状態において、図23,24に示すように、シートクッション11が最も前方に(矢印Kの半時計周り方向に)傾いた状態(立位状態)にする。
電動リクライニングシート200は、電動リクライニングシート100と同様にリクライニング機構52を備える。電動リクライニングシート200が座位状態と立位状態の間で変形するスタンドアップ動作を行う場合においても、リクライニング機構52はリクライニング動作(図12(A)〜(G)参照)の場合と同様に、リンク機構53を介してフットレスト13を傾動駆動する。
電動リクライニングシート200は、図19に示すように、電動リクライニングシート100の支持フレーム28(図1参照)を備えず、左右一対のアームレスト27がシートバック12の左右両側部に固定されている。これはスタンドアップ動作時に運転者の体の支えとするためである。右側アームレスト27の座位変換駆動スイッチ65の近傍には、後述するようにリクライニングモードとスタンドアップモードとを切り換えることができるモード切換スイッチ209が取り付けられている。リクライニングモード及びスタンドアップモードは、電動リクライニングシート200の変形モードである。リクライニングモードにおいては、上記第1及び第2の実施の形態において説明したようにシートバック12が傾動すると共に、シートバック傾動角度に応じてシートバック12がスライド移動するリクライニング動作を行う(図12(A)〜(G)参照)。スタンドアップモードにおいては、電動リクライニングシート200が座位状態と立位状態の間で変形するスタンドアップ動作を行う(図19〜24参照)。
また、電動リクライニングシート200は、図20に示すように、電動リクライニングシート100の制御ユニット66(図3参照)に代えて制御ユニット210を備える。
図25は、電動リクライニングシート200の電気的構成を示すブロック図である。
図25に示すように、制御ユニット210は、制御ユニット66の備えるCPU81、RAM82、EEPROM83、シートバックスライド駆動用モータ制御部84、及びシートバック傾動駆動用モータ制御部85に加えて、シートクッション傾動駆動用アクチュエータ205のシートクッション傾動駆動用モータ208を駆動制御するためのシートクッション傾動駆動用モータ制御部211を備える。
また、図25に示すように、シートバックスライド駆動用モータ62、シートバック傾動角度検出センサ63、シートバックスライド位置検出センサ64、座位変換駆動スイッチ65、シートバック傾動駆動用モータ67、及びバッテリ44に加えて、シートクッション傾動駆動用モータ208、及びモード切換スイッチ209が、制御ユニット210に電気的に接続されている。本実施の形態において、シートバック傾動角度検出センサ63は、シートクッション11に対するシートバック12の傾動角度を検出するものとする。
制御ユニット210のEEPROM83には、上記第2の実施の形態におけるシートバック動特性を示すシートバック位置制御データ(図10参照)に加えて、シートバック12のシートバックスライド位置とシートクッション11の傾動角度との関係を示す、シートクッション傾動角度/シートバックスライド位置制御データがシート位置制御データとして記憶されている。また、EEPROM83には、シートバック12の傾動角度とシートクッション11の傾動角度との関係を示す、シートクッション傾動角度/シートバック傾動角度制御データがシート位置制御データとして記憶されている。即ち、シートクッション傾動角度/シートバックスライド位置制御データ及びシートクッション傾動角度/シートバック傾動角度制御データは、スタンドアップ動作時のシートクッション11及びシートバック12の動特性を示す。本実施の形態においては、シートクッション11が傾動駆動されている間シートバック12の傾動角度が接地面に対して一定となるように、具体的には、シートバック12と接地面との角度が座位状態における角度を維持するようにシートクッション11の傾動速度と同じ傾動速度でシートバック12が傾動駆動されるようにシートクッション傾動角度/シートバック傾動角度制御データが設定されている。
シートクッション傾動角度/シートバックスライド位置制御データは、具体的には、図26に示すように、各シートバックスライド位置に対応したシートクッション11の傾動角度(シートクッション傾動角度)が設定されたマップデータやテーブルデータである。制御ユニット210は、シートバック位置制御データと同様に、使用者がEEPROM83内のシートクッション傾動角度/シートバックスライド位置制御データを任意に設定及び変更可能に構成されている。即ち、使用者は、各シートバックスライド位置に対応したシートクッション傾動角度、つまりシートクッション11及びシートバック12の動特性を示すシートクッション・シートバック動特性設定値を任意に設定及び変更することができる。シートクッション傾動角度/シートバック傾動角度制御データについても同様である。
本実施の形態において、制御ユニット210は、シートクッション傾動角度/シートバックスライド位置制御データとして、シートクッション傾動角度を座位状態の傾動角度に対して0°〜80°の間で設定することができ、シートバックスライド位置をスライド方向(図19の矢印A方向)最下位置を基準として0mm〜180mmの間で設定することができるように構成されている。また、シートクッション傾動角度/シートバックスライド位置制御データは、シートクッション11の上昇動作時とシートクッション11の下降動作時において夫々独立したシートクッション・シートバック動特性を示すように設定することができるように構成されている。例えば、図26に示すように、シートクッション11の上昇及び下降動作を、線fや線jに示すような動特性を示すように設定することや、線g,h,iに示すようなヒステリシスループを描くような動特性を示すように設定することができる。
シートクッション傾動駆動用モータ制御部211は、例えば、PWM回路から構成されており、シートクッション傾動駆動用モータ208に出力するパルス幅を変化させることによりシートクッション傾動駆動用モータ208を駆動制御する。
次いで、上述の構成を有する電動リクライニングシート200の動作について説明する。
リクライニングモードにおける動作は上記第1及び第2の実施の形態と同様であるためその説明を省略する。以下、スタンドアップモードにおける動作について説明する。尚、制御ユニット210のCPU81は、モード切換スイッチ209がスタンドアップモードに切り換えられたと判断した場合に、スタンドアップモードにおける動作を実行する。
図27は、スタンドアップモードにおけるシート駆動制御処理のフローチャートである。
本シート駆動制御処理においては、まず、シートバック傾動角度検出センサ63、及びシートバックスライド位置検出センサ64の検出値に基づいて現在のシート位置(シートバック位置及びシートクッション位置)を検出する(ステップS11)。具体的には、図11のステップS1と同様に、シートバック傾動角度検出センサ63の検出値と予め設定されている所定の基準値との差を検出し、この検出した差に基づいて現在のシートバック12のシートクッション11に対する傾動角度(シートバック傾動角度)を算出する。また、同様に、シートバックスライド位置検出センサ64の検出値と予め設定されている所定の基準値との差を検出し、この検出した差に基づいて現在のシートバック12のシートバックスライド位置を算出する。
次いで、ステップS11の検出結果に基づいて、電動リクライニングシート200が座位状態とフルフラット状態との間の状態(以下、リクライニング状態という)(図12(A)〜(G)参照)にあるか否かを判別する(ステップS12)。電動リクライニングシート200がリクライニング状態にない場合は、ステップS14の処理に移行する。一方、電動リクライニングシート200がリクライニング状態にある場合は、図11に示すシートバック駆動制御処理を実行し(ステップS13)、本処理を終了する。尚、ステップS12におけるリクライニング状態であるか否かの判別は、電動リクライニングシート200が座位状態にあるか否かを検出するON/OFFセンサ等をメインフレーム14等に設けることにより行ってもよい。
ステップS14においては、座位変換駆動スイッチ65からの入力信号が上昇動作指示信号であるか否かを判別する。座位変換駆動スイッチ65からの入力信号が上昇動作指示信号である場合は、EEPROM83内のシートクッション傾動駆動/シートバックスライド位置制御データを検索して、シートクッション11の上昇動作時のシートクッション・シートバック動特性設定値を読み出し(ステップS15)、ステップS17の処理に移行する。一方、座位変換駆動スイッチ65からの入力信号が上昇動作指示信号ではなく下降動作指示信号である場合は、EEPROM83内のシートクッション傾動駆動/シートバックスライド位置制御データを検索して、シートクッション11の下降動作時のシートクッション・シートバック動特性設定値を読み出し(ステップS16)、ステップS17の処理に移行する。
次いで、ステップS17において、ステップS15又はステップS16において読み出したシートクッション・シートバック動特性設定値に基づいて、図26に示すような各設定値を滑らかに結んだシートクッション・シートバック動特性ライングラフを算出する。次いで、ステップS11において検出した現在のシート位置(シートバックスライド位置及びシートクッション傾動角度)に対応するシート位置をステップS17において算出したシートクッション・シートバック動特性ライングラフから検出し、この検出値からシートクッション・シートバック動特性ライングラフに沿ってシートバック12がスライド動作をし、シートクッション11が傾動動作をするようにシートバックスライド駆動用モータ62及びシートクッション傾動駆動用モータ208を駆動制御する(ステップS18)。また、ステップS18においては、シートバック13が接地面に対して一定の角度を維持しるように、つまり、シートバック13がシートクッション11と反対方向に同じ傾動速度で傾動駆動するようにシートバック傾動駆動用モータ67を駆動制御する。
上記シート駆動制御処理により、図28(A)〜(G)に示すように、電動リクライニングシート200を座位状態から立位状態の所望の位置に制御することができる。
また、上記シート駆動制御処理により、電動リクライニングシート200は、座位状態と立位状態の間の状態(以下、スタンドアップ状態という)において、座位変換駆動スイッチ65が前方へ倒されると、シートクッション11が前方に傾動駆動され、これに伴ってシートバック12がスライド駆動される。また、このとき、シートバック12が接地面に対して一定の角度を維持するように、シートバック12が後方に傾動駆動される。一方、座位変換駆動スイッチ65が後方へ倒されると、シートクッション11が後方に傾動駆動され、これに伴ってシートバック12がスライド駆動される。また、このとき、シートバック12が接地面に対して一定の角度を維持するように、シートバック12が前方に傾動駆動される。
一方、電動リクライニングシート200は、リクライニング状態において、モード切換スイッチ209がスタンドアップモードに切り換えられて、座位変換駆動スイッチ65が前方へ倒されると、一旦リクライニング状態から座位状態に戻され、その後スタンドアップ状態に変形される。即ち、シートバック12が前方に傾動駆動されると共にスライド駆動されてリクライニング状態から座位状態に戻され、シートクッション11が傾動駆動され、シートバック12が傾動駆動及びスライド駆動されてスタンドアップ状態になる。一方、スタンドアップ状態において、モード切換スイッチ209がリクライニングモードに切り換えられて、座位変換駆動スイッチ65が後方へ倒されると、電動リクライニングシート200は、一旦スタンドアップ状態から座位状態に戻され、その後リクライニング状態に変形される。即ち、シートクッション11が傾動駆動され、シートバック12が傾動駆動及びスライド駆動されてスタンドアップ状態から座位状態に戻され、シートバック12が後方に傾動駆動されると共にスライド駆動されてリクライニング状態となる。
尚、上述のように、スタンドアップ状態おいては、座位変換駆動スイッチ65が前方へ倒されると、シートクッション11が前方に傾動駆動されると共に同じ傾動速度でシートバック12が後方に傾動駆動される。このとき、シートバック12は接地面に対して一定の角度を維持し、シートバック12は接地面からは傾動駆動されていないように見える。座位変換駆動スイッチ65が後方へ倒される場合も同様である。
上述のように、本発明の第3の実施の形態に係る電動リクライニングシート200によれば、スタンドアップ動作時において、シートクッション11の傾動角度に応じてシートフレーム23に沿ってシートバック12をスライド駆動させるので、上記第1及び第2の実施の形態に係る電動リクライニングシートの奏する効果に加えて、スタンドアップ動作時においても、運転者の背中がシートバック上を摩擦力に抗して動くことを抑制することができる。これにより、運転者のシートバックに対する背中の接触部が擦れるようにずれてしまうことを抑制することができる。このため、運転者がスタンドアップ動作の度に姿勢を直す必要を低減することができ、スタンドアップ動作時に運転者に不便が生ずることを抑制することができる。加えて、スタンドアップ動作時に運転者の背中が擦れることを抑制することができ、運転者に不快感を与えることを抑制することができる。
また、本実施の形態に係る電動リクライニングシート200によれば、制御ユニット212のEEPROM83に予め設定されたシートクッション傾動角度/シートバックスライド位置制御データ及びシートクッション傾動角度/シートバック傾動角度制御データに基づいてシートクッション傾動角度及びシートバックスライド位置、並びにシートバック傾動角度が制御されるので、運転者の体型や好みに合わせてシートクッション・シートバック動特性を設定することができる。このため、運転者毎に、シートバックに対する背中の接触部が擦れるようにずれてしまうことを抑制することができる。これにより、運転者毎に、スタンドアップ動作時に不便が生ずること、及び不快感を与えることを抑制することができる。
加えて、EEPROM83に設定されたシートクッション傾動角度/シートバックスライド位置制御データ及びシートクッション傾動角度/シートバック傾動角度制御データは、使用者によって任意の設定値に設定及び変更することができると共に、シートクッション11の上昇動作時とシートクッション11の下降動作時において夫々独立したシートクッション・シートバック動特性を示すように設定することができる。このため、種々のシートクッション・シートバック動特性を設定することができる。
また、本実施の形態に係る電動リクライニングシート200によれば、上記本発明の第2の実施の形態に係る電動リクライニングシート100と同様に、クラッチレバー130を操作することにより、運転者固有の最適なシートクッション傾動角度/シートバックスライド位置制御データ及びシートクッション傾動角度/シートバック傾動角度制御データを設定することができ、運転者固有の最適なシートクッション・シートバック動特性を示すことができる。
尚、本実施の形態においては、スタンドアップ動作時にシートバック12は接地面に対して一定の角度を維持する構成としたが、シートバック12の傾動駆動制御方法はこれに限らず、シートバック12は接地面に対して一定の角度を維持しない構成であってもよい。例えば、シートクッション傾動角度/シートバック傾動角度制御データを変更して、シートバック12をやや早めに倒しながら、シートクッション11をゆっくり起こすように駆動制御してもよい。この場合においても、シートバック12とシートクッション11の傾動速度が異なるが、シートバック12は適切なシートバックスライド位置に制御される。
また、本実施の形態においては、シートバック12に対するシートクッション11の傾動角度に基づいてシートバック12のスライド位置を制御しているが、例えば、図19に示すように、軸203の近傍にシートクッション11の矢印K方向の傾動角度を検知するためのシートクッション傾動角度検出センサ220を取り付けて、車体フレームに対するシートクッション11の傾動角度に基づいてシートバック12のスライド位置を制御してもよい。ただし、この場合、シートクッション11とシートバック12の傾動速度を同じにする必要がある。
本実施の形態においては、シートクッション11をシートクッション傾動駆動用アクチュエータ205によって傾動駆動させるものとしたが、シートクッション11の傾動駆動方法はこれに限るものではない。例えば、シートクッション傾動駆動用アクチュエータ205に代えて他のアクチュエータを用いてもよい。また、他の駆動機構であってもよい。
上記第1、第2及び第3の実施の形態において、電動リクライニングシートは電動車椅子に適用されるものとしたが、電動リクライニングシートは、マッサージチェアや4輪自動車のシート等の他のシートに適用してもよく、また、介護ベッドに応用することもできる。
また、第1、第2及び第3の実施の形態において、シートバック12は、シートバック傾動駆動用モータ67によって傾動駆動されるものとしたが、シートバック12の傾動駆動方法はこれに限るものではなく、他の方法であってもよい。例えば、シートバック12とシートバックフレーム23との間にアクチュエータを配設することによりシートバック12を傾動駆動させてもよい。