JP5257886B2 - マダニのリジンケトグルタル酸レダクターゼ(lkr)とサッカロピンデヒドロゲナーゼ(sdh) - Google Patents

マダニのリジンケトグルタル酸レダクターゼ(lkr)とサッカロピンデヒドロゲナーゼ(sdh) Download PDF

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Description

本発明は、マダニのリジンケトグルタル酸レダクターゼ(LKR)とサッカロピンデヒドロゲナーゼ(SDH)、それをコードする核酸分子及びそれらの利用に関する。
より詳細には、本発明は、マダニの生存に不可欠な飢餓耐性、吸血、及び吸血によってマダニ体内に侵入する動物・ヒトの病原体に関わるタンパク質、それをコードするポリヌクレオチド、及びそれらの使用に関する。ここで、動物・ヒトの病原体とは、世界的に甚大な被害をもたらすピロプラズマ症の病原体であるタイレリア又はバベシア原虫をはじめとする人獣共通感染性の細菌・ウイルスを意味する。具体的には、本発明は、マダニの生活史の90〜95%を占める未吸血期間、すなわち宿主探索に費やす飢餓期間、あるいは宿主動物からの血液成分の摂取(すなわち吸血)と消化にともなって、中腸上皮や卵巣などの病原体の体内移行経路にあたる多くの器官・組織で発現する、LKRとSDHをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターを保持する組換え体細胞、組換えペプチドタンパク質、及び合成ペプチドに関する。本発明により、マダニの吸血・変態や脱皮・産卵の予防と阻止、ピロプラズマ症をはじめとする人及び動物の感染症の媒介、予防及び治療を目的とした化合物の合成、あるいはそれら病原体による感染症の治療薬の開発に応用することができる。
地球上に棲息する15,000種を越える吸血性節足動物の中で、マダニはわずか約900種(6%)の弱小グループであるが、ヒト以外の動物では第1位、ヒトでは蚊に次いで第2位に重要な感染症媒介節足動物である。経済的被害からもマダニとマダニ媒介性疾病による世界の損害額は、畜産領域だけでも毎年140億米ドル以上(非特許文献1)にのぼり、その対策は世界各国で畜産振興上の最も重要な課題のひとつとなっている。マダニ防除の中心は化学療法剤などの薬剤利用に深く依存している。DTTが開発された1950年以降、シナプス後膜作用型のニコチン系、ネオニコチノイド系、神経伝達物質分解酵素型の有機燐系、カーバメート系、クロルジメフォルム、神経繊維膜作用型の塩素系、ピレスロイド系などの化合物が殺ダニ剤としてマダニ防除に使用されてきた。しかし、マダニは、薬剤の連続使用によるいわゆる薬剤耐性をいずれの薬剤に対しても獲得し、殺ダニ効果が減少あるいは消失した薬剤も少なくない。さらに、薬剤の使用には常に人あるいは動物への副作用を考えなくてはならず、同時に、環境と食物連鎖の汚染など環境と食の安全性を脅かす薬物残留問題があり、消費者から敬遠される傾向にある。そのうえ、経済動物である家畜では、薬剤の使用には有効性や適用範囲に加えて、膨大な開発コストの面からも限界が生じつつある。
感染症媒介者(ベクター)としてのマダニは、マラリアベクターの蚊と比べて、ウイルス、リケッチア、細菌、原虫、寄生虫などほぼすべての種類の病原体の伝播に関与しうる、他に比肩しうるもののない多種多様な疾病を媒介しうる優れた能力を有する。ヒトではマラリアが世界的に猛威を振るっていることはよく知られているが、動物(家畜・愛玩動物)ではマラリアに類似した血液の感染症として、マダニが媒介するバベシアやタイレリアなどの原虫によるピロプラズマ症がある。本症は畜産・獣医学領域で最も被害の大きい寄生虫感染症であり、近年ではヒトでのバベシア症が世界各国で報告され、新興人獣共通感染症のひとつにあげられている。
感染症予防の最大の武器はワクチンであるが、寄生虫ワクチン(多大な資金と精力的なワクチン開発が行われているマラリアに対しても)の開発は困難を極めている。進化した生活環を有する寄生虫では、動物・ヒトの獲得防御免疫に関する主要な寄生虫由来の抗原や免疫誘導機構など、不明な点が多くあるためであるが、とりわけ重大なのは、寄生虫は高度に発達した免疫回避機構により宿主の免疫監視から逃れるシステムを発達させており、防御免疫の獲得が困難なことにある。このようなことからタイレリアやバベシアなどのピロプラズマ原虫についても例外ではなく、ピロプラズマ症の発症をもたらす宿主体内ステージに焦点をあてた研究開発からはワクチンが生まれていない。
一方、マダニの頻回寄生に対して宿主が抵抗性を獲得する現象を応用した獲得免疫によるマダニ防除法が以前から試みられている(非特許文献2)。また、宿主への接触が全くないマダニタンパク質がマダニ感染に対する防御抗原となることも明らかにされ、実際にワクチン抗原(Tick GARD)(非特許文献3)として一部のマダニとマダニ媒介性病原体[例えば1宿主性のマダニ(Rhipicephalus (Boophilus) microplus)とその媒介するウシバベシア原虫]に対して野外応用されているものの、これらの効果は限定的であり、他のワクチン抗原との併用による効果増大の必要性が指摘されるなど、多くのマダニとマダニ媒介性病原体に対するワクチンは依然として開発途上にあり、病原体側のマダニ媒介性病原体の防除対策もマダニと同様に薬剤に深く依存しているのが実情である。このように21世紀におけるマダニとマダニ媒介性病原体による人及び家畜生産の被害を既存の薬剤使用によって防ぐことは、非常に難しい状況にある。
LKRおよびSDHは、動植物の必須アミノ酸であるリジンがサッカロピンを経由してグルタミン酸塩、ピペコリン酸、アセチル補酵素Aに変換される異化経路において、最初の2ステップに関わる酵素である。すなわち、LKRがリジンとαケトグルタル酸を結合させてサッカロピンを産生し、続いてSDHがサッカロピンをαアミノアジピン酸セミアルデヒドとグルタミン酸に変換する。植物と哺乳類では、LKRならびにSDHを単一の遺伝子がコードすることが広く知られている。また、最近、植物では、このような2機能性LKR/SDHに加えて、単機能性のSDHとLKRを発現するmRNAの存在も明らかになっている(非特許文献4)。しかし、マダニや蚊などの吸血性節足動物において、リジン代謝に関わるLKRとSDHの全塩基配列の単離や特性解明に関しては、これまでまったく実証されるに至っていない。
「ベテリナリー・パラシトロジー(Veterinary Parasitology)」, (オランダ国),1997年, 71巻, 77-97頁 「ナショナルインスティチュート・オブ・アニマルヘルス・クオータリー(トウキョウ)(National Institute of Animal Health Quarterly、Tokyo)」,1978年,18巻,27-38頁 「プラシトロジー・トゥデー(Parasitology Today)」,(オランダ国),1999年,15巻,258-262頁 「アミノアシッド(Amino Acids)」,(オーストリア),2006年,30巻,121-125頁
本発明者及びその共同研究者は約40年来にわたって継代してきた日本の最優占種であるフタトゲチマダニを用いて、その防除とこれが媒介するピロプラズマ原虫(Theileria orientalis、Babesia ovata、Babesia gibsoni)などの疾病媒介の予防・治療に関するプロジェクト研究を推進してきてきた。近年、本発明者らは、マダニ個体における様々な生物活性分子が、マダニの吸血・消化と病原体伝搬において果たす役割と機構の大きさに着目してきたが、今回、解析の結果から、すべてのマダニ発育期と臓器で発現し、アミノ酸不足に陥る飢餓時のマダニにおける体内アミノ酸の糖・エネルギー変換や、アミノ酸過剰状態となる吸血・飽血時のマダニにおけるアミノ酸分解において、リジン異化の面から大きな役割を果たす分子と想定されるLKRとSDHの単離に成功した。
LKRならびにSDHは、選択的にまた特異的にリジン分解経路に関わる細胞内あるいは細胞外に局在するタンパク質である。ほ乳類、植物、カビなどの真核生物に広く分布・存在することが知られているが、マダニを含む節足動物における機能と役割は不明である。植物では、体内のリジンレベルの恒常性維持という生命現象の基本部分を担うとともに、出芽、成長、ストレス耐性などにおいても様々な重要な機能を果たすことが知られている。哺乳類では、リジン異化は脳機能において重要であり、分解産物のグルタミン酸塩はその受容体を介して神経伝達シグナルを調節している可能性のあることが指摘されており、すでにヒトでは、リジン異化経路の欠陥によって、家族性高リジン血症とよばれる精神遅滞疾患が認められることが明らかにされている[Papes F et al. FEBS Letters 488:34-38(2001)]。しかし、マダニを含む節足動物においては、LKRならびにSDHがその生存・繁殖において重要であるとの報告はこれまでなかった。
本発明は、マダニとマダニが媒介する感染症から、人及び動物を守るための化合物を提供し、ウイルス、細菌、原虫、寄生虫などの、様々なマダニ媒介性病原体による感染症の防除法を提供するものである。具体的には、マダニのLKRならびにSDHの両方、又はそのいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターを保持する組換え体細胞、マダニのLKRとSDHの両方、又はそのいずれかに対する抗体などの阻害剤、並びにマダニ媒介性病原体の感染及び増殖を防ぐ化合物の提供を目的とする。
本発明者は、偏性吸血動物としてのマダニでは、その生存においては、生活史の大半を占める宿主探索に費やす未吸血・飢餓期間におけるアミノ酸不足を解消するために、オートファジー(自食)機構が重要であると考えている(「オートファジー(Autophagy)」, (米国),2008年, 4巻, 79-81頁)。しかし、真にマダニが飢餓耐性を発揮するためには、オートファジーによって獲得したアミノ酸を糖・エネルギーに変換する必要があることから、アミノ酸異化もポスト・オートファジーの機構として、マダニが長期間の飢餓に耐えるためには必須の機構であるに相違ない、と想定するに至った。一方、宿主を発見し寄生に成功したマダニでは、1週間内外の吸血期間において、未吸血時体重の数百倍、飽血体重の2〜3倍もの膨大な宿主血液の摂取と濃縮を行うため(「ナショナルインスティチュート・オブ・アニマルヘルス・クオータリー(トウキョウ)(National Institute of Animal Health Quarterly、Tokyo)」,1976年,16巻,114-121頁)、急激なアミノ酸過剰とこれに起因する中毒状態が十分に起こりうる。これを回避するために、吸血中のマダニ体内では、著しく活発なアミノ酸分解機構が必要になるものと、想定するに至った。このような視点から、マダニの必須アミノ酸代謝経路に関わる酵素の探索と特性解明を進めることを企画し、また、得られたアミノ酸異化に関わる酵素は、マダニの吸血・変態や脱皮・産卵の予防と阻止、ピロプラズマ症をはじめとする人及び動物の感染症の媒介、予防及び治療を目的とした化合物の合成、あるいはそれら病原体による感染症の治療薬の開発に応用することができると考えられた。今回、フタトゲチマダニにおいて、すべての発育期と臓器で発現し、未吸血期間が3、6、10ヶ月と経過し飢餓状態が進行するのに伴い、マダニ体内における発現が著しく上方調節されるとともに、吸血開始時には発現量が顕著に高まっているとともに、多くの主要臓器においては吸血期間の経過とともに発現量が減少する、リジンの異化参画酵素のLKRとSDHを突き止めた。このようなことから、マダニのLKRとSDHは、マダニの未吸血・飢餓時におけるアミノ酸不足の解消、ならびに飽血時における一過性のアミノ酸過剰を解消する上において、重要な役割を果たしていることが、十分に想定される。また、タンパク性レギュレーターあるいはプロテクタントを活用した創薬を目指す上で、マダニのLKRとSDHは大きな可能性を秘めていると推察することができる。今回単離したフタトゲチマダニのLKRとSDHは、マダニの変態・脱皮や産卵を阻害することによって、経発育期伝播や介卵伝播を行うバベシアなどのピロプラズマ原虫や、その他の病原体(野兎病、紅斑熱、ウイルス性脳炎など)の伝搬防除にも応用することができる。これまで、マダニの生存、ならびにマダニが媒介する病原体の発育・生存において、アミノ酸不足と過剰という視点から、生物活性分子を探索した研究はなく、またLKRとSDHがマダニの生存と繁殖に重要であるとの報告はない。マダニのLKRとSDHをコードする遺伝子及びその組換えタンパク質は、マダニとマダニ媒介性感染症の予防・防除を目的とした化合物の作出に有効であるといえる。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 以下の(1)〜(8)より選択されるポリペプチド。
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(3)配列番号2の第32〜412位のアミノ酸からなる配列を含むポリペプチド;
(4)配列番号2の第32〜412位のアミノ酸からなるポリペプチド;
(5)配列番号2の第493〜929位のアミノ酸からなる配列を含むポリペプチド;
(6)配列番号2の第493〜929位のアミノ酸からなるポリペプチド;
(7)(1)〜(6)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなり、LKR及び/又はSDHの活性を有するポリペプチド;
(8)(1)〜(6)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、LKR及び/又はSDHの活性を有するポリペプチド
[2] [1]のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
[3] [2]のポリヌクレオチドを含むベクター。
[4] [2]のポリヌクレオチドを含む形質転換体。
[5] [4]の形質転換体を培養する工程を含む、[1]のポリペプチドを製造する方法。
[6] [1]のポリペプチド又はその断片、[2]のポリヌクレオチド、および[3]のベクターからなる群より選択される有効成分と薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる担体又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
[7] マダニに対するワクチンである、[6]の医薬組成物。
[8] [1]のポリペプチドに対する抗体又はその機能的断片。
[9] [1]のポリペプチドと試験物質とを接触させる工程、並びに前記ポリペプチドのLKR及び/又はSDHの活性を分析する工程を含む、前記ポリペプチドのLKRおよび/又はSDHの活性を修飾する物質のスクリーニング方法。
[10] LKR及び/又はSDHの活性の阻害剤、或いは[8]の抗体若しくはその機能的断片を有効成分として含む、マダニ駆除剤。
[11] LKR及び/又はSDHの活性の阻害剤、或いは[8]の抗体若しくはその機能的断片を有効成分として含む、マダニ媒介性感染症の治療又は予防剤。
[12] [6]若しくは[7]の医薬組成物又は[10]若しくは[11]のマダニ駆除剤を、家畜又は愛玩動物に、有効量で投与することを含む、マダニ駆除方法。
[13] [6]若しくは[7]の医薬組成物又は[10]若しくは[11]のマダニ駆除剤を、家畜又は愛玩動物に、有効量で投与することを含む、マダニ媒介性感染症の治療又は予防方法。
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、形質転換体、及び抗体によれば、本発明の医薬組成物、特にはマダニワクチンを提供することができる。また、本発明の医薬組成物、特にはマダニワクチンによれば、例えば、マダニ駆除、又はマダニ媒介性感染症(例えば、人獣のピロプラズマ症、紅斑熱、又はウイルス性脳炎など)の治療若しくは予防が可能である。
[1]本発明のポリペプチド
本発明は、以下の(1)〜(8)より選択されるポリペプチド。
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(3)配列番号2の第32〜412位のアミノ酸からなる配列を含むポリペプチド;
(4)配列番号2の第32〜412位のアミノ酸からなるポリペプチド;
(5)配列番号2の第493〜929位のアミノ酸からなる配列を含むポリペプチド;
(6)配列番号2の第493〜929位のアミノ酸からなるポリペプチド;
(7)(1)〜(6)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなり、LKR及び/又はSDHの活性を有するポリペプチド;
(8)(1)〜(6)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、LKR及び/又はSDHの活性を有するポリペプチド、に関する。
「LKR及び/又はSDHの活性」とは、フタトゲチマダニのLKRタンパク質とSDHタンパク質の生物学的活性の両方又はいずれかを意味する。各活性について具体的には、例えば、LKRはリジン、SDHはサッカロピンに対する酵素としての結合活性及び/又は活性阻害活性を挙げることができる。
或るポリペプチドがLKRとSDHの両方、又はその一方の活性を有するか否かは、Papesら, Biochem. J. 344, 555-563, 1999などの、公知の方法に従って、判定することができる。より具体的には、例えば、LKR活性は、20mM L-リジン、0.1mM NADPH、10mM 2-oxoglutaric acid、175mM Tris-HClを含有するpH7.4の試薬とペプチドを混合後、混合後のNAPDHのNADPへの変化を分光光度計で調べることによって、判定することができる。また、SDH活性は、1mM L-サッカロピン、2mM NAD、0.1M Tris-HClを含有するpH8.5の試薬とペプチドを混合後、混合後のNADのNADHへの変化を分光光度計で調べることによって、判定することができる。
本発明のポリペプチドには、少なくとも配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドが含まれる。好ましくは、当該ポリペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる。当該ポリペプチドは、フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)を由来とする2機能性酵素(bifunctional enzyme)であり、LKRとSDHの両方の活性を有する(以下、HlLKR/SDHポリペプチドと称する)。LKRは、配列番号2の第32〜412位のアミノ酸領域に位置し、一方、SDHは、配列番号2の第493〜929位のアミノ酸領域に位置する。
また、本発明のポリペプチドには、本発明の配列番号2の第32〜412位のアミノ酸からなる配列を含むポリペプチド又は配列番号2の第493〜929位のアミノ酸からなる配列を含むポリペプチドを含む。当該ポリペプチドは、少なくともそれぞれLKR活性およびSDH活性を含むポリペプチドである(以下、それぞれHlLKRポリペプチドおよびHlSDHポリペプチドと称する)。好ましくは、当該ポリペプチドは、それぞれ配列番号2の第32〜412位のアミノ酸配列からなるポリペプチド又は配列番号2の第493〜929位のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
また、本発明のポリペプチドには、HlLKR/SDHポリペプチド、HlLKRポリペプチド又はHlSDHポリペプチドを構成するアミノ酸配列の1又は複数の箇所において、全体として1又は数個(好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜7個、更に好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなり、しかも、LKR及び/又はSDHの活性を有するポリペプチドを含む。
このようなポリペプチドには、フタトゲチマダニに由来するHlLKR/SDHポリペプチド、HlLKRポリペプチド又はHlSDHポリペプチドの変異体が含まれるだけでなく、フタトゲチマダニ以外の生物(例えば、その他のマダニ類、又はヒメダニ類)に由来するオルソログなどの機能的等価改変体が含まれる。更には、それらの天然ポリペプチド(すなわち、フタトゲチマダニ由来の変異体、あるいは、フタトゲチマダニ以外の生物由来の機能的等価改変体)をコードするポリヌクレオチドを元にして、あるいは、HlLKR/SDHポリペプチド、HlLKRポリペプチド又はHlSDHポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを元にして、遺伝子工学的に、コードするアミノ酸配列を人為的に改変したポリヌクレオチドを用いて製造したポリペプチドなどが含まれる。なお、本明細書において「変異体」(variation)とは、同一種内の同一ポリペプチドにみられる個体差、あるいは、数種間の相同ポリペプチドにみられる差異を意味する。
HlLKR/SDHポリペプチド、HlLKRポリペプチド又はHlSDHポリペプチドのフタトゲチマダニにおける変異体、あるいは、フタトゲチマダニ以外の生物由来の機能的等価改変体は、当業者であれば、HlLKR/SDHポリペプチド、HlLKRポリペプチド又はHlSDHポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列(それぞれ例えば、配列番号1で表される塩基配列における721番〜3531番の塩基を含む配列、814番〜1956番の塩基を含む配列、および2197番〜3507番の塩基を含む配列)、あるいは、HlLKR/SDHポリペプチド、HlLKRポリペプチド又はHlSDHポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列(例えば、配列番号1で表される塩基配列における721番〜3531番の塩基からなる配列、814番〜1956番の塩基からなる配列、および2197番〜3507番の塩基からなる配列)の情報を基にして、取得することができる。なお、遺伝子組換え技術については、特に断りがない場合、公知の方法(例えば、Sambrookら,“Molecular Cloning, A Laboratory Manual”, Cold Spring Harber Laboratory Press, 1989)に従って実施することが可能である。
例えば、HlLKR/SDHポリペプチド、HlLKRポリペプチド又はHlSDHポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列の情報を基にして適当なプライマー又はプローブを設計し、前記プライマー又はプローブと、目的とする生物(例えば、その他のマダニ類、又はヒメダニ類)由来の試料(例えば、全RNA若しくはmRNA画分、cDNAライブラリー、又はファージライブラリー)とを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法(Saiki, R. K. ら, Science, 239, 487-491, 1988)又はハイブリダイゼーション法を実施することにより、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを取得し、そのポリヌクレオチドを適当な発現系を用いて発現させ、発現したポリペプチドが、LKR及び/又はSDHの活性を有することを確認することにより、所望のポリペプチドを取得することができる。
また、前記の遺伝子工学的に人為的に改変したポリペプチドは、常法、例えば、部位特異的突然変異誘発法(site-specific mutagenesis; Mark, D. F. ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 5662-5666, 1984)により、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを取得し、そのポリヌクレオチドを適当な発現系を用いて発現させ、発現したポリペプチドが、LKR及び/又はSDHの活性を有することを確認することにより、所望のポリペプチドを取得することができる。
さらに、本発明のポリペプチドには、HlLKR/SDHポリペプチド、HlLKRポリペプチド又はHlSDHポリペプチドのアミノ酸配列との相同性が70%以上であるアミノ酸配列からなり、LKR及び/又はSDHの活性を有するポリペプチドを含む(以下、相同ポリペプチドと称する)。本発明の相同ポリペプチドは、HlLKR/SDHポリペプチド、HlLKRポリペプチド又はHlSDHポリペプチドのアミノ酸配列に関して、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなることができる。なお、本明細書における前記「相同性」とは、Clustal program(Higgins及びSharp, Gene, 73, 237-244, 1988; 並びにThompsonら, Nucleic Acid Res., 22, 4673-4680, 1994)により、デフォルトで用意されているパラメータを用いて得られた値を意味する。
これらの本発明のポリペプチドは、LKR活性及び/又はSDH活性を有する限り、N末端及び/又はC末端に、適当なマーカー配列、融合用パートナー等が付加されていても良い。
前記マーカー配列としては、例えば、ポリペプチドの発現の確認、細胞内局在の確認、あるいは、精製等を容易に行なうための配列を用いることができ、例えば、FLAGタグ、ヘキサ−ヒスチジン・タグ、ヘマグルチニン・タグ、又はmycエピトープなどを用いることができる。
また、前記融合用パートナーとしては、例えば、精製用ポリペプチド[例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)の全部又は一部]、検出用ポリペプチド[例えば、ヘムアグルチニン又はβ−ガラクトシダーゼαペプチド(LacZ α)の全部又は一部]、又は発現用ポリペプチド(例えば、シグナル配列)などを用いることができる。
更に、HlLKR/SDHポリペプチド、HlLKRポリペプチド又はHlSDHポリペプチドと前記マーカー配列又は融合用パートナーとの間に、限定分解するタンパク質分解酵素(例えば、トロンビン、血液凝固因子Xa、エントロキナーゼ、TEVプロテアーゼなど)で切断することができるアミノ酸配列を適宜導入することもできる。
また、これらの本発明のポリペプチドは、種々の公知の方法によって製造することができ、例えば、本発明の前記ポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドを用いて公知の遺伝子工学的手法により調製することができる。より具体的には、後述する本発明の形質転換体(すなわち、本発明のポリヌクレオチドを含む形質転換体)を、本発明による新規ポリペプチドの発現が可能な条件下で培養し、ポリペプチドの分離及び精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から目的ポリペプチドを分離及び精製することにより調製することができる。前記の分離及び精製方法としては、例えば、硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、又は凍結乾燥等を挙げることができる。
[2]本発明のポリヌクレオチド
本発明は、前記本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。HlLKR/SDHポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(以下、HlLKR/SDHポリヌクレオチドと称する)は、当該ポリペプチドをコードする限り、特に限定されるものではないが、好ましくは、配列番号1で表される塩基配列における721番〜3531番の塩基からなる配列(すなわち、フタトゲチマダニのLKRとSDHの前駆体をコードする遺伝子(HlLKR/SDH遺伝子))を含むポリヌクレオチド、さらに好ましくは配列番号1で表される塩基配列における721番〜3531番の塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
また、HlLKRポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(以下、HlLKRポリヌクレオチドと称する)は、当該ポリペプチドをコードする限り、特に限定されるものではないが、好ましくは、配列番号1で表される塩基配列における814番〜1956番の塩基からなる配列(すなわち、フタトゲチマダニのLKRをコードする遺伝子(HlLKR遺伝子))を含むポリヌクレオチド、さらに好ましくは配列番号1で表される塩基配列における814番〜1956番の塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
さらに、HlSDHポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(以下、HlSDHポリヌクレオチドと称する)は、当該ポリペプチドをコードする限り、特に限定されるものではないが、好ましくは、配列番号1で表される塩基配列における2197番〜3507番の塩基からなる配列(すなわち、フタトゲチマダニのLKRをコードする遺伝子(HlSDH遺伝子))を含むポリヌクレオチド、さらに好ましくは配列番号1で表される塩基配列における2197番〜3507番の塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
また、本発明のポリヌクレオチドには、HlLKR/SDHポリヌクレオチド、HlLKRポリヌクレオチド又はHlSDHポリヌクレオチドに相補的な配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつLKRおよび/又はSDHの活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも含まれる。
さらに、本発明のポリヌクレオチドには、HlLKR/SDHポリヌクレオチド、HlLKRポリヌクレオチド又はHlSDHポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、LKR及び/又はSDHの活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを挙げることができる。なお、本明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNA及びRNAの両方が含まれる。
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、フタトゲチマダニのLKRとSDHの両方、又はその一方の活性をコードするDNA配列とBLAST等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータを用いて)を用いて計算したときに90%以上の相同性、好ましくは95%以上の相同性、より好ましくは97%以上の相同性が配列間に存在するときのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。通常、完全ハイブリッドの融解温度より約5℃〜約30℃、好ましくは約10℃〜約25℃低い温度でハイブリダイゼーションが起こる場合をいう。ストリンジェントな条件については、J.Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Mannual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載されており、ここに記載の条件を使用することができる。例えば、ストリンジェントな条件としてハイブリダイゼーションを65℃で一晩実施し、非特異反応を除去するための洗浄を2×SSCを用いて室温で5分間行った後、0.1%SDSを含む0.2×SSCを用いて65℃で30分間の洗浄を2回繰り返すことなどが挙げられる。なお、2XSSCの組成は、0.3mol/L NaCl及び30mmol/Lクエン酸ナトリウム(pH7.0)である。
[3]本発明のベクター及び形質転換体
本発明は、前記本発明のポリヌクレオチドを含むベクターに関する。本発明のベクターは、本発明による前記ポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターに、本発明による前記ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるベクターを挙げることができる。
また、本発明は、前記本発明のポリヌクレオチドを含む形質転換体に関する。本発明の形質転換体も、本発明による前記ポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば、本発明による前記ポリヌクレオチドが、宿主細胞の染色体に組み込まれた形質転換体であることもできるし、あるいは、本発明による前記ポリヌクレオチドを含むベクターの形で含有する形質転換体であることもできる。また、本発明によるポリペプチドを発現している形質転換体であることもできるし、あるいは、本発明によるポリペプチドを発現していない形質転換体であることもできる。本発明の形質転換体は、例えば、本発明による前記ベクターにより、あるいは、本発明による前記ポリヌクレオチドそれ自体により、所望の宿主細胞を形質転換することにより得ることができる。
前記宿主細胞としては、例えば、通常使用される公知の微生物、例えば、大腸菌又は酵母(Saccharomyces cerevisiae)、あるいは、公知の培養細胞、例えば、動物細胞(例えば、CHO細胞、HEK−293細胞、又はCOS細胞)又は昆虫細胞(例えば、BmN4細胞)を挙げることができる。
また、公知の前記発現ベクターとしては、例えば、大腸菌に対しては、pUC、pTV、pGEX、pKK、又はpTrcHisを;酵母に対しては、pEMBLY又はpYES2を;CHO細胞に対してはpcDNA3又はpMAMneoを;HEK−293細胞に対してはpcDNA3を;COS細胞に対してはpcDNA3を;BmN4細胞に対しては、カイコ核多角体ウイルス(BmNPV)のポリヘドリンプロモーターを有するベクター(例えば、pBK283)を挙げることができる。更に、公知の発現ベクターとしては、遺伝子治療用のベクターとして使用することのできるウイルスベクター、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、又はセンダイウイルス等を挙げることができる。
[4]本発明の医薬組成物
本発明は、有効成分として、本発明のポリペプチド若しくはその断片、本発明のポリヌクレオチド、および本発明のベクターからなる群より選択される物質を含む医薬組成物に関する。また、本発明の医薬組成物はさらに、薬剤学的若しくは獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤を含むことができ、マダニ駆除の必要な動物、好ましくは哺乳動物(特には、ヒト)に経口的に又は非経口的に投与することができる。
本発明の医薬組成物は、好ましくはマダニワクチンとして使用し得る。
本発明の医薬組成物をマダニに対するワクチンとして投与すると、本発明のポリヌクレオチドに対する抗体産生を誘導することができ、宿主の再感染防御能を介してマダニを駆除することができる。
すなわち、本発明の医薬組成物は、マダニ駆除用医薬組成物、あるいは、マダニ媒介性感染症の治療又は予防用医薬組成物として使用することも可能である。
本発明の医薬組成物の製造においては、本発明における有効成分である、本発明のポリペプチド若しくはその断片、本発明のポリヌクレオチド、及び本発明のベクターからなる群より選択される物質を使用することができる。
本発明の医薬組成物をマダニワクチンとして使用する場合、本発明のポリペプチドの断片としては、投与対象に投与した場合に、前記断片に対して免疫反応を誘導するのに充分な断片である限り、特に限定されるものではなく、当業者であれば適宜選択することができる。当該断片は、少なくとも8〜10個以上のアミノ酸からなるポリペプチドであって、好ましくは、当該断片はLKRポリペプチド又はSDHポリヌクレオチドの一部である。
本発明の医薬組成物(特にはマダニワクチンとして使用する場合)は、さらに当業者に公知である1種又は数種のアジュバント、例えばフロイントの完全若しくは不完全アジュバント、コレラトキシン、易熱性大腸菌毒素、水酸化アルミニウム、カリウムミョウバン、サポニン若しくはその誘導体、ムラミルジペプチド、鉱物油又は植物油、NAGO、ノバソーム又は非イオン性ブロック共重合体、DEAEデキストラン等を含むことができ、マダニに対するワクチンとして、適当な間隔で動物(例えば、家畜等)に接種することができる。あるいは、本発明のポリペプチドを直接、適当な溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできるし、リポソーム中に封入したり、適当なベクターに組み込んだ形にして使用することもできる。また、必要に応じて、本発明のポリペプチドに薬学的に許容し得る担体を添加し、例えば、注射剤、錠剤、カプセル剤、点眼剤、クリーム剤、坐剤、噴霧剤、又はパップ剤等の適当な剤型にして使用することができる。
薬学的に許容し得る担体には、当業者には周知の溶媒、基剤、安定化剤、防腐剤、溶解剤、賦形剤、及び緩衝剤等が含まれる。
経口投与には舌下投与を含む。非経口投与としては、例えば、吸入、経皮投与、点眼、膣内投与、関節内投与、直腸投与、動脈内投与、静脈内投与、局所投与、筋肉内投与、皮下投与、及び腹腔内投与等から適当な方法を選んで投与することができる。
[5]本発明の抗体又はその断片
本発明は、前記本発明のポリペプチドに対する抗体又はその断片に関する。「前記本発明のポリペプチドに対する抗体」とは、前記本発明のポリペプチド又はその一部に反応性を有する抗体、或いは当該ポリペプチド又はその一部を認識する抗体である。「その機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、抗体の抗原への作用を保持するものを意味し、具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fv、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、およびこれらの重合体等をいう。
本発明の抗体(例えば、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体)は、各種動物に、本発明のポリペプチド、又はその断片を直接投与することで得ることができる。また、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入したプラスミドを用いて、DNAワクチン法[Raz, E.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 9519-9523 (1994); 又はDonnelly, J.J.ら, J. Infect. Dis., 173, 314-320, (1996)]によっても得ることができる。
ポリクローナル抗体は、例えば、本発明のポリペプチド又はその断片を適当なアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバントなど)に乳濁した乳濁液を、腹腔、皮下、又は静脈等に免疫して感作した動物(例えば、ウサギ、ラット、ヤギ、又はニワトリ等)の血清又は卵から製造することができる。このように製造された血清又は卵から、常法のポリペプチド単離精製法によりポリクローナル抗体を分離精製することができる。そのような分離精製方法としては、例えば、遠心分離、透析、硫酸アンモニウムによる塩析、又はDEAE−セルロース、ハイドロキシアパタイト、若しくはプロテインAアガロース等によるクロマトグラフィー法を挙げることができる。
モノクローナル抗体は、例えば、ケーラーとミルスタインの細胞融合法 [Kohler, G.及びMilstein, C., Nature, 256, 495-497(1975)]により、当業者が容易に製造することが可能である。すなわち、本発明のポリペプチド又はその断片を適当なアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバントなど)に乳濁した乳濁液を、数週間おきにマウスの腹腔、皮下、又は静脈に数回繰り返し接種することにより免疫する。最終免疫後、脾臓細胞を取り出し、ミエローマ細胞と融合してハイブリドーマを作製する。
ハイブリドーマを得るためのミエローマ細胞としては、例えば、ヒポキサンチン−グアニン−ホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損又はチミジンキナーゼ欠損のようなマーカーを有するミエローマ細胞(例えば、マウスミエローマ細胞株P3X63Ag8.U1)を利用することができる。また、融合剤としては、例えば、ポリエチレングリコールを利用することができる。更には、ハイブリドーマ作製における培地として、例えば、イーグル氏最小必須培地、ダルベッコ氏変法最小必須培地、又はRPMI−1640などの通常よく用いられている培地に、10〜30%のウシ胎仔血清を適宜加えて用いることができる。融合株は、HAT選択法により選択することができる。ハイブリドーマのスクリーニングは培養上清を用い、ELISA法又は免疫組織染色法などの周知の方法により行ない、目的の抗体を分泌しているハイブリドーマのクローンを選択することができる。また、限界希釈法によってサブクローニングを繰り返すことにより、ハイブリドーマの単クローン性を保証することができる。このようにして得られるハイブリドーマは、培地中で2〜4日間、あるいは、プリスタンで前処理したBALB/c系マウスの腹腔内で10〜20日間培養することで、精製可能な量の抗体を産生することができる。
このように製造されたモノクローナル抗体は、培養上清又は腹水から常法のポリペプチド単離精製法により分離精製することができる。そのような分離精製方法としては、例えば、遠心分離、透析、硫酸アンモニウムによる塩析、又はDEAE−セルロース、ハイドロキシアパタイト、若しくはプロテインAアガロース等によるクロマトグラフィー法を挙げることができる。
また、モノクローナル抗体又はその一部分を含む抗体断片は、前記モノクローナル抗体をコードする遺伝子の全部又は一部を発現ベクターに組み込み、適当な宿主細胞(例えば、大腸菌、酵母、又は動物細胞)に導入して生産させることもできる。
以上のように分離精製された抗体(ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含む)について、常法により、ポリペプチド分解酵素(例えば、ペプシン又はパパイン等)によって消化を行ない、引き続き、常法のポリペプチド単離精製法により分離精製することで、活性のある抗体の一部分を含む抗体断片、例えば、F(ab’)、Fab、Fab’、又はFvを得ることができる。
更には、本発明のポリペプチドに反応する抗体を、クラクソンらの方法又はゼベデらの方法 [Clackson, T.ら, Nature, 352, 624-628 (1991); 又はZebedee, S. ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 3175-3179 (1992)] により、一本鎖(single chain)Fv又はFabとして得ることも可能である。また、マウスの抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子に置き換えたトランスジェニックマウス [Lonberg, N. ら, Nature, 368, 856-859 (1994)] に免疫することで、ヒト抗体を得ることも可能である。
[6]本発明のスクリーニング方法並びにそのスクリーニング結果物又は本発明の抗体を含むマダニ駆除剤
本発明のポリペプチドを用いると、試験物質が、本発明のポリペプチドのLKR活性及び/又はSDH活性を修飾(例えば、抑制又は促進)するか否かをスクリーニングすることができる。本発明には、本発明のポリペプチドを含むスクリーニングキットが含まれる。
本発明のスクリーニング方法にかけることのできる試験物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術 [Terrett, N. K. ら, Tetrahedron, 51, 8135-8137 (1995)] 又は通常の合成技術によって得られた化合物群、あるいは、ファージ・ディスプレイ法 [Felici, F. ら, J. Mol. Biol., 222, 301-310 (1991)] などを応用して作成されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清、植物若しくは海洋生物由来の天然成分、又は動物組織抽出物などもスクリーニングの試験物質として用いることができる。更には、本発明のスクリーニング方法により選択された化合物(ペプチドを含む)を、化学的又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を用いることができる。
本発明のスクリーニング方法においては、本発明のポリペプチドと試験物質とを接触させ、前記試験物質の存在下における、本発明のポリペプチドのLKR活性及び/又はSDH活性を分析することにより、前記試験物質が、本発明のポリペプチドのLKR活性及び/又はSDH活性を修飾するか否かを判断することができる。試験物質の不在下における本発明のポリペプチドのLKR活性及び/又はSDH活性と比較して、試験物質の存在下における前記LKR活性及び/又はSDH活性が減少する場合には、前記試験物質が、本発明のポリペプチドのLKR活性及び/又はSDH活性を抑制又は阻害すると判断することができる。一方、LKR活性及び/又はSDH活性が上昇する場合には、前記試験物質が、本発明のポリペプチドのLKR活性及び/又はSDH活性を促進すると判断することができる。
LKR活性及び/又はSDH活性を抑制する物質(すなわち、LKR/SDH阻害剤)は、寄生虫駆除剤の有用な候補物質であり、例えば、マダニ駆除、又はマダニ媒介性感染症(例えば、人獣のピロプラズマ症、紅斑熱、又はウイルス性脳炎など)の治療若しくは予防に用いることができるマダニ駆除剤の有効成分として用いることが可能である。LKR/SDH阻害剤としては、例えば、LKR活性及び/又はSDH活性に対する中和抗体、構造活性相関に基づく親和物を公知のものとして挙げることができる。
本発明のマダニ駆除剤における有効成分、すなわち、LKR活性及び/又はSDH活性に対する阻害剤は、所望により、種々の形態で投与することができる。このような投与形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与、あるいは、注射剤、点滴剤、座薬などによる非経口投与を挙げることができる。本発明のマダニ駆除剤は、公知の方法によって製造することができ、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤、賦形剤を含むことができる。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、ステアリン酸マグネシウムなどが使用される。注射剤は、前記有効成分を通常注射剤に用いられる無菌の水性若しくは油性液に溶解、懸濁又は乳化することによって調製することができる。注射用の水性液としては、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが使用可能であり、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール、プロピレングリコールなどのポリアルコール、非イオン界面活性剤などと併用しても良い。油性液としては、ゴマ油、大豆油などが使用され、溶解補助剤としては安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用しても良い。
[7]本発明のマダニ駆除方法
本発明は、前記本発明の医薬組成物又は前記本発明のマダニ駆除剤を、マダニ駆除の必要な動物に有効量で投与することによる、マダニ駆除方法に関する。
対象とする動物としては、ヒトや家畜および愛玩動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、リス、フェレット、アヒル、ニワトリ、ハト等)であり得る。前記本発明の医薬組成物をワクチンとして用いる場合には、哺乳動物を対象とするのが好ましい。
本発明方法において、当該医薬組成物又はマダニ駆除剤の有効量は、投与対象とする動物の症状、年齢、体重、及び/又は投与経路に応じて適宜決定することができ、医師の判断及び各患者の状況に応じて決定することができる。例えば、インビトロにおける試験又はインビボの動物モデル試験系から導くことができる。例えば、1回につき体重1kgあたり0.0001mg〜100mgの用量で、2日から8週間間隔で投与することができる。
本発明方法は、当該医薬組成物又はマダニ駆除剤を投与することにより、マダニの飽血体重、産卵率、脱皮率などを低下させ、マダニを駆除することが可能である。
本発明により駆除し得る対象しては、フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)、ヤマトチマダニ(Haemaphysalis japonica)、アミメカクマダニ(Dermacentor recticulatus)、タイワンカクマダニ(Dermacentor taiwanensis)、キチマダニ(Haemaphysalis flava)、ヤマトマダニ(Ixodes ovatus)、シュルツェマダニ(Ixodes persulcatus)、オウシマダニ(Boophilus microplus)等のマダニ類が好ましく、特にフタトゲチマダニが好ましい。さらに、ヒメダニ類(例えば、ツバメヒメダニ(Argas japonicus)など)などの他のダニ類を駆除することも可能である。
本発明方法によりマダニを駆除することによって、さらにマダニ媒介性感染症(例えば、人獣のピロプラズマ症、紅斑熱、又はウイルス性脳炎など)を治療又は予防することが可能である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、以下の実施例においては、各種分子生物学、ダニ学、節足動物学、免疫学、及び生化学的な技術を用いた。これらの技術は、Sambrook, J.ら, Molecular Cloning, a laboratory manual, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Harlow E. ら, Antibodies, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988)やその関連書を参考にした。また、DNA解析ソフトとしては、MacVectorTM(Oxford Molecular社)を使用した。
《実施例1:LKRとSDHをコードする遺伝子の単離及び塩基配列決定》
家兎を吸血4日目のフタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)の雌成ダニ500匹から、中腸組織を実体顕微鏡下で摘出した。これらから直ちに、アシッドグアニジニウム(Acid Guanidinium)−フェノール−クロロホルム法[Chomczynski et al., Anal Biochem 162: 156-159 (1987)](AGPC法)を用いて全RNAを調製し、この5μgを使用し、G−キャッピング法(G-Capping法)による完全長cDNA合成を行った。pGCAPベクター[Kato et al., DNA Res. 12: 53-62(2005)]に2本鎖cDNAがインサートされたプラスミドは、フェノール抽出後、エタノール沈殿により回収し、TE緩衝液に溶解した。得られたプラスミド溶液は、DH5αコンピテント細胞(Takara社)と混合し、エレクトロポレーション法により形質転換を行い、寒天培地に蒔いて培養した。
得られたcDNAライブラリーのサイズは約1x10個の形質転換体を含むもので、直ちにライブラリーの予備的なインサート確認を実施した結果、cDNAの完全長率は、92%と極めて高率であった。作製したcDNAライブラリーに含まれる形質転換体から順次、プラスミドDNAを単離・精製し、このプラスミドを鋳型にして5’端側よりサイクルシーケンス反応を行い、DNAシーケンサー(ABI社製3730型シーケンサー)でcDNAの5’端塩基配列を決定した。この中腸のcDNAライブラリーから10,000クローンずつ選択し、5’端塩基配列を決定し、全クローンをGenBank(http://www.Ncbi.nih.gov/BLAST/)データベースを用いてBLASTX検索を実施した。この結果を表計算ソフトウェア(マイクロソフトExcel)のワークシート上でアノテーションし、アセンブルを行った。その結果、中腸のcDNAライブラリーは、有効クローンを8,304(83%)含有し、さらに完全長cDNAクローンを7,639(92%)含有していることが示された。さらに、得られた有効クローンについてクラスターリング解析を行ったところ、中腸のcDNAライブラリーに3,433種類の遺伝子(クラスター)が含有されることが示され、この遺伝子の中から、LKR/SDHを同定した。
得られたcDNAの全長(配列番号1)は4502bpであり、ORF(Open Reading Frame)は721位〜3531位にあり、937残基のアミノ酸(配列番号2)をコードしていることが確認され、推定分子量は104.0kDaであった。予想されるアミノ酸配列をNCBI(National Center for Biotechnology Information)のBLAST法にて相同性検索を行ったところ、これまでに報告されている他の生物のLKR/SDHタンパク質に高い相同性を有することが確認された。例えば、同じ節足動物とは、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)のLKR/SDHとの相同性は61%、アノフェレス・ガンビエ(Anopjeles gambiae)のLKR/SDHとは62%の相同性であった。
《実施例2:LKR/SDH融合タンパク質の発現用ベクターの構築》
フタトゲチマダニ・LKR/SDH成熟体(配列番号2で表されるアミノ酸配列における1番〜937番のアミノ酸からなる配列)をコードする遺伝子断片をPCR法にて増幅した。PCR産物をフェノール/クロロホルム処理した後に、エタノール沈澱法にて回収し、蒸留水中に溶解した。得られたDNA液を制限酵素EcoRIで消化した後に、電気泳動にて分離し、DNA精製キット(Biotechnologies社)にて精製し、蒸留水中に回収した。一方、大腸菌発現用ベクターpGEX-4T3(Pharmacia Biotech社)を制限酵素EcoRIで消化した後に、アルカリホスファターゼにて脱リン酸化処理し、その後、PCR産物と同様な方法にて精製した。
精製したPCR産物とベクターとを、DNAライゲーションキット(Takara社)を用いて、キットに添付のプロトコールに従って反応させた。大腸菌DH5α株をライゲーション反応産物にて形質転換させ、フタトゲチマダニ・LKR/SDH遺伝子ORF断片がベクターのグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)と同一方向に挿入された組換えクローンを選択した。プラスミド精製キット(Qiagen社)にて組換えプラスミドを精製した。
《実施例3:組換えフタトゲチマダニ・LKR/SDH融合タンパク質の大腸菌による発現》
実施例2で得られた組換えプラスミドにて、大腸菌DH5α株を形質転換させた後、37℃でアンピシリン含有LB培地で培養した。組換えタンパク質の発現は、10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動[Laemmli ら, Nature, 227, 680-685 (1970)]を実施した後、クーマシー染色で確認した。
結果を図1に示す。その結果、約74kDaの組換えSDHタンパク質と、約62kDaの組換えLKRタンパク質の発現が認められ、GSTリーダータンパク質(26kDa)とフタトゲチマダニ・SDHタンパク質(48kDa)の融合タンパク質(以下、組換えHlSDH融合タンパク質と称する)、GSTリーダータンパク質(26kDa)とフタトゲチマダニ・LKRタンパク質(36kDa)の融合タンパク質(以下、組換えHlLKR融合タンパク質と称する)であることが確認された。
《実施例4:組換えHlSDH融合タンパク質と組換えHlLKR融合タンパク質の酵素活性の測定》
実施例3で得られた組換えSDHタンパク質と組換えLKRタンパク質は、3−10%native gradient polyacrylamide gel(Pagel:アトー,東京)を用いて、20mAで120分間泳動後、以下の染色処理によって酵素活性を測定した。
SDH活性は、泳動後のゲルを0.1M Tris緩衝液(pH8.5)を用いて4℃で10分間ずつ3回洗浄後、0.1 M Tris-HCl緩衝液(pH8.5)、1 mMサッカロピン、1mM NAD、0.1%nitro blue tetrazolium、0.01mM phenazine methasulfateを含有する染色液に浸漬し、30℃で30分間インキュベートした後、活性バンドを紫外線で可視化し、活性を比色測定した。
LKR活性は、泳動後のゲルを175mM Tris緩衝液(pH7.4)を用いて4℃で10分間洗浄後、20mMリジン、0.1mM NADPH、10mM 2-oxoglutaric acid、0.1%nitro blue tetrazolium、0.01mM phenazine methasulfateを含有する染色液に浸漬し、30℃で2時間インキュベートした後、活性バンドを紫外線を用いて可視化・比色して、活性を測定した。
結果を図2に示す。その結果、組換えHlLKR融合タンパク質と組換えHlSDH融合タンパク質は、それぞれリジンあるいはサッカロピンに対する酵素活性を有していることが示された。
《実施例5:組換えHlLKR/SDH融合タンパク質の抗血清の調製、及びイムノブロット法によるネイティブ(天然型)LKRとSDHの同定》
実施例3で述べた方法により、大腸菌で発現させた組換えHlLKRとSDH融合タンパク質を、市販のキット(Pharmacia Biotech社)に添付のプロトコールに従って精製した。この100μgを含む溶液200μLと、フロイント完全アジュバント(Adjuvant Complete Freund; Difco社)200μLとを混合した後に、BALB/cマウス(8週齢,雌)に腹腔内接種した。腹腔内接種から2週間及び4週間経過後に、それぞれ、組換えHlcyst融合タンパク質100μgをフロイント不完全アジュバント(Difco社)と混合し、追加接種を行なった。最終接種後から2週目に採血し、得られた血清を−20℃に保存した。得られた抗組換えHlLKR/SDH融合タンパク質マウス血清を用い、イムノブロット法[Towbin et al., Proc Natl Acad Sci USA 76: 4350-4354 (1979)]にて天然型LKR/SDHタンパク質の同定を行なった。なお、試料として、4日間家兎を吸血した雌成ダニの中腸と唾液腺ライセートを使用した。
結果を図3に示す。その結果、マダニ全身、卵、藍藻ライセートにおいて約104kDaの特異的バンドが検出された。天然型LKR/SDHタンパク質の分子量が、実施例1で示した推定理論値と一致すると考えられた。なお、免疫前の血清と組換えHlLKR/SDH融合タンパク質やダニのライセートとの反応は認められなかった。
《実施例6:天然型LKR/SDHのフタトゲチマダニの各発育期と主要内部器官における分布、ならびに吸血にともなう発現の変化》
フタトゲチマダニの卵、幼ダニ、若ダニ、成ダニの全発育期と、タトゲチマダニの雌成ダニを家兎に吸血させ、吸血後1日目から5日目、飽血(吸血後7日目)の雌ダニの主要内部器官における天然型LKR/SDHの発現分布について、常法に従って、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法によりmRNA発現の分析を実施した。RT−PCR法によるmRNA発現分析の発育期別の結果を図4に、吸血に伴う臓器別の発現量の推移の結果を図5に示す。
図4及び図5の結果が示すとおり、天然型LKR/SDHは、全発育期において発現し、雌成ダニの体内臓器別でも、調べたすべての臓器において未吸血時においては発現することが確認された。また、中腸、脂肪体、中央神経球、そして唾液腺においては、吸血開始から飽血に至る過程で発現量が顕著に下方調節されることが示された。
《実施例7:天然型HlLKR/SDHの局在》
実施例5で作製した組換えHlLKR/SDH融合タンパク質の抗血清を用いて、家兎を吸血開始4日目の雌成ダニから作製した凍結切片における天然型HlLKR/SDHの局在分析を、常法に従って、感染蛍光抗体法(IFAT)で実施した。結果を図6に示す。
図6において、天然型LKR/SDHが、半飽血状態の雌ダニの卵母細胞と中腸消化細胞の細胞質内に局在することが確認された。
《実施例8:天然型SDHタンパク質の、マダニの卵巣と中腸における酵素活性の同定》
家兎を吸血開始4日目の雌成ダニから作製した凍結切片を、4℃で2日間、0.4%パラホルムアルデヒド(pH7.0)で固定し、内在性基質を除去するために、同切片を4℃で12時間、PBSで洗浄した後に、4mMのL-サッカロピン、0.1%ニトロブルーテトラジウム、0.01mMフェナジンメタサルフェートを含有する、100mMTris―HCl(pH8.5)で30分間室温にてインキュベートして、天然型HlSDHタンパク質のin situにおける酵素活性の組織化学的検出を実施した。陰性対象としては、サッカロピンを含有しない0.1%ニトロブルーテトラジウム、0.01mMフェナジンメタサルフェートを含有する、100mMTris―HCl(pH8.5)によるインキュベートを行った。結果を図7に示す。
図7において、各矢印は、雌ダニの卵巣と中腸の細胞内に局在する天然型SDHタンパク質による、基質として用いたサッカロピンと反応することを示した。この実施例8によって、実施例7で確認した、卵巣と中腸に局在する内在型SDHタンパク質が、酵素活性を発揮することが組織化学的に確認された。
《実施例9:飢餓状態の雌成ダニにおける天然型LKR/SDHの発現の変化》
脱皮後3ヶ月目、6ヶ月目、10ヶ月目のフタトゲチマダニの雌成ダニにおける天然型LKR/SDHの発現について、常法に従って、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法によりmRNA発現の分析を実施した。RT−PCR法によるmRNA発現分析の結果を図8に示す。
図8において、未吸血期間(すなわち飢餓期間)の増大に伴って、天然型LKR/SDHの発現量は、著しく上方調節されることが示された。このことは、HlLKR/SDHは、飢餓とともにマダニ体内における発現が著しく上方調節され、またその結果として、吸血開始時には発現量が顕著に高まることを示している。すなわち、HlLKR/SDHは、マダニの未吸血・飢餓時におけるアミノ酸不足の解消、ならびに飽血時における一過性のアミノ酸過剰を解消する上において、重要な役割を果たしているものと考えられる。なお、マダニの吸血時に惹起されると想定されるアミノ酸過剰とこれによる中毒を解消する上で、HlLKR/SDHが吸血開始時に一時的に関与することは、実施例6において明らかにした、多くの臓器におけるLKR/SDH発現量の吸血の進行に伴う減少の結果からも、肯定される。
《実施例10:RNA干渉法による天然型LKR/SDH遺伝子の発現のノックダウン》
常法(de la Funte et al.,Trend Parasitol 23:427-433(2007)に従って、RNA干渉法を用いたマダニ体内の天然型LKR/SDH遺伝子の発現のノックダウン(gene silencing)を実施し、LKR/SDHの生物学的機能について解析を行った。LKR/SDHのSDHドメイン(588bp)とLKRドメイン(680bp)をコードするDNA断片テンプレートは、SDHドメインに対しては、オリゴヌクレオチドのT7forward(5’-GGATCCTAATACGACTCACTATAGGCTGGGTCAACAGGACAACCTGCTTACGTCC-3’:配列番号3)とT7reverse (5’-GGATCCTAATACGACTCACTATAGGTCTACAACGAATTCCCTCGTTCTTGAGC-3’:配列番号4)プライマーを用いて、またLKRドメインに対しては、オリゴヌクレオチドのT7 forward (5’-GGATCCTAATACGACTCACTATAGGAAGAATGGCGTCAAAGTCTA-3’:配列番号5) とT7 reverse (5’-GGATCCTAATACGACTCACTATATGGGTCCTTCGGGTCGACCCAT-3’:配列番号6)プライマーを用いて、それぞれPCRによって増幅した。PCR産物は、ゲル精製キット(GENECLEAN、MP Biomedicals)を用いて精製した後、T7 RiboMaxTM Express large-scale RNA kit (Promega, Madison, WI) を用いて、dsRNA構築に供した。得られたdsRNA/LKRとdsRNA/SDHは、それぞれ、マダニ1個体あたり2.5μgを、ガラス毛細管を用いて、第4脚基節付近から未吸血雌成ダニの血体腔に注入した。陰性対象としては、PBS(0.5μl)接種群、ならびに細菌由来のルシフェラーゼdsRNA接種群を用意した。dsRNA接種ダニは、25℃に18時間放置して、接種による機器的ダメージのないことを確認した後、家兎を吸血させ、吸血、飽血、産卵、卵のふ化などの生物学的特性について観察を実施した。また、dsRNA摂取後のマダニのライセートを経時的に作製し、イムノブロット法によって、LKR/SDHタンパクの発現抑制を確認した。
図9において、未吸血雌成ダニの血体腔内に接種されたdsRNA/LKRとdsRNA/SDH(図中のSDHdsRNA-inj、LKRdsRNA-inj)が、HlLKR/SDHのmRNAの発現を抑制した結果を示す。また、図9で、陰性対象としてPBS、あるいは細菌由来のルシフェラーゼdsRNAを接種したマダニ群においては、HlLKR/SDH遺伝子の発現抑制がなかったことが明らかである。
《実施例11:RNA干渉法による天然型LKR/SDHタンパク質の発現のノックダウン》
実施例10における天然型LKR/SDHタンパク質の発現をイムノブロット法で解析した。
図10において、未吸血雌成ダニの血体腔内に接種されたdsRNA/LKRとdsRNA/SDH(図中のSDHdsRNA-inj、LKRdsRNA-inj)が、HlLKR/SDHタンパク質の発現を抑制した結果を示す。また、図10で、陰性対象としてPBS、あるいは細菌由来のルシフェラーゼdsRNAを接種したマダニ群においては、HlLKR/SDHタンパク質の発現抑制がなかったことが、明らかである。
《実施例12:RNA干渉法によりHlLKR/SDHの発現がノックダウンされたマダニの吸血、産卵、ふ化》
RNA干渉法によってHlLKR/SDHの発現が抑制された雌成ダニを家兎に寄生させ、吸血、産卵、卵のふ化について解析した。
図11で、HlLKR又はHlSDHの発現が抑制された雌成ダニ50匹では、ともに飽血・落下に至までの吸血期間が、対照群(PBSならびにdsRNA/Luc)に比べて有意に1−2日間延長し、飽血体重も有意に低下したことが明らかである。また、SDH発現抑制群では、産卵は認められるものの、産卵開始までの日数が有意に延長し、産卵量と卵のふ化率も顕著に低下した。さらにLKR発現抑制群では、産卵がまったく認められず、HlLKRの発現を抑制すれば、マダニの産卵を完全の阻止できることが示された。
図12には、RNA干渉法によってHlLKRの発現を抑制されたマダニが家兎吸血によって飽血した後、産卵を開始できず、飽血後1週間〜10日程度が経過した後に、最終的には死に至る過程で認められる代表的病態を示した。図12において、PBS接種対照群と比較して、LKR発現抑制群(dsRNA/LKRを接種したダニ)では、飽血後7日目(A)のダニの腹面では常態の数倍にも拡張した直腸嚢(Rs)が明らかであり、これを拡大観察すると(B)、常態ではグアニン顆粒のみを貯えている直腸嚢に、大量の液体成分も貯えられていることが明らかであった。さらに飽血後14日目以降のマダニでは、背面(C)、腹面(D)のいずれにおいても、常態よりも大量の液体成分を貯えたマルピギー氏管(Mg)や、大量の液体成分を貯えた血体腔が観察された。また、この血体腔の液体成分の貯蔵によって、常態では体腔内に収められているゼネ氏器官が、外部突出(ヘルニア化)することも、多くの個体で認められた(I)。すでに植物では、LKRが浸透圧調節因子として機能することが報告されている(Deleu C et al., Plant Cell Environ 22:979-988(1999))。従って、マダニにおいても、LKRが飽血後の浸透圧調節因子として、体内の水分調節機構(Osmoregulation)に大きな役割を果たしており、LKR発現ノックダウンマダニでは、浸透圧調節因子としてのLKRの発現が抑制されたために、飽血後の体内の水分調節機構が破綻し、このために様々な「水腫様」病態が招来されたことが、想定される。
《実施例13:組換えHlSDH融合タンパク質と組換えHlLKR融合タンパク質のワクチン効果》
組換えHlSDH融合タンパク質(GST/SDH)、組換えHlLKR融合タンパク質(GST/LKR)、あるいはこれら2種類の等量混合物(GST/SDH and GST/LKR)いずれかで家兎に頻回免疫し、十分にこれらに対する抗体価が上昇してから、フタトゲチマダニの若ダニ(N)と雌成ダニ(A)を寄生させて、吸血期間、飽血率、損耗個体の出現率、飽血体重、雌1個体当たりの産卵量、若ダニの脱皮率若しくは卵のふ化率に与える効果を解析した。
図13で、組換えHlSDH融合タンパク質(GST/SDH)又は組換えHlLKR融合タンパク質(GST/LKR)で免疫した家兎を吸血した若ダニと雌ダニの飽血体重は、対照群と差異は認められなかったが、雌ダニの産卵率には有意の低下が認められた。一方、GST/SDH とGST/LKRの等量混合物で免疫した家兎を吸血した雌ダニでは、飽血体重、産卵率ともに有意に減少し、若ダニの脱皮率も若干の減少が認められた。これらの結果から、HlSDH融合タンパク質と組換えHlLKR融合タンパク質を用いた抗マダニ開発の可能性が示された。
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はベクターは、例えば、マダニ(特にはフタトゲチマダニ)媒介性感染症の治療又は予防、特にマダニワクチンの用途に適用することができる。
図1は、組換えフタトゲチマダニ(Hl)リジンケトグルタル酸レダクターゼ(LKR)とサッカロピンデヒドロゲナーゼ(SDH)融合タンパク質の電気泳動の結果を示す。図中、レーンMは分子量マーカー、レーン1はpGEX-4T-3/SDH発現大腸菌ライセート、レーン2は精製した組換えGST/SDH融合タンパク質、レーン3はpGEX-4T-3/LKH発現大腸菌ライセート、レーン4は精製した組換えGST/LKR融合タンパク質、レーン5はGSTリーダータンパク質の泳動結果である。 図2は、組換えHlLKR融合タンパク質と組換えHlSDH融合タンパク質の酵素活性測定の結果を示す。 図3は、天然型フタトゲチマダニ(Hl)LKR/SDHタンパク質の電気泳動(イムノブロット)の結果を示す。図中、レーンMは、分子量マーカーの泳動結果であり、レーン1、2は、それぞれ未吸血雌ダニ全身ライセート、卵ライセートの泳動結果であり、レーン3、4は、それぞれ部分飽血雌ダニの唾液腺ライセート、卵巣ライセートの泳動結果である。 図4は、天然型LKR/SDHタンパク質のマダニの各発育期における発現の解析結果を示す。それぞれ、卵、未吸血幼ダニ、飽血幼ダニ、未吸血若ダニ、飽血若ダニ、未吸血雌成ダニ、飽血雌成ダニのフタトゲチマダニの個体(whole tick)由来のRNAの結果であることを意味する。 図5は、天然型LKR/SDHタンパク質のマダニの主要臓器における分布と、未吸血時から吸血を経て飽血に至る過程における発現量の変化を示す。図中、記号Mg、Sg、Ov、Fb、Sy、Hg&Mtは、それぞれ、前記フタトゲチマダニ雌成ダニの中腸組織、唾液腺、卵巣、脂肪体、中央神経球、およびヘモサイトとマルピギー氏管の混合物由来のRNAの結果であることを意味する。また、記号UF、d1、d2、d3、d4、d5、Egは、それぞれ、未吸血時、家兎を吸血開始1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、飽血時の雌成ダニから得た臓器RNAの結果であることを意味する。 図6は、天然型LKR/SDHタンパク質の、卵母細胞と中腸消化細胞における局在を示す。図中、AとBは、それぞれ卵巣と中腸における天然型LKR/SDHの局在を示し、OOは卵母細胞、DGCは中腸消化細胞、を示す。また、A、BのIFAでは2次抗体として、それぞれAlexa-488標識抗マウスIgG抗体、Alexa-594標識抗マウスIgG抗体を用いた。 図7は、天然型SDHタンパク質の、卵巣と中腸における酵素活性を示す。図中、Saccha+とSaccha−は、それぞれ酵素活性陽性例と陰性対象を示す。 図8は、未吸血期間3ヶ月目、6ヶ月目、10ヶ月目の雌成ダニにおける天然型LKR/SDHタンパク質の発現量の変化を示す。 図9は、未吸血雌成ダニの血体腔内に接種されたdsRNA/LKRとdsRNA/SDHが、HlLKR/SDHmRNAの発現を抑制した結果を示す。 図10は、未吸血雌成ダニの血体腔内に接種されたdsRNA/LKRとdsRNA/SDHが、HlLKR/SDHタンパク質の発現を抑制した結果を示す。。 図11は、dsRNA/LKRとdsRNA/SDHの血体腔内接種によって、HlLKR/SDHの発現が抑制された雌ダニの家兎吸血における生物学的性状の変化を示す。 図12は、dsRNA/LKRの血体腔内接種によって、HlLKRの発現が抑制された雌ダニの家兎吸血後における様々な水腫様の病態を示す。 図13は、組換え体HlLKR/SDHタンパク質を接種された家兎における抗マダニ効果を示す。
配列番号3〜6は、合成オリゴヌクレオチド配列を示す。

Claims (11)

  1. 以下の(1)〜(8)より選択されるポリペプチド。
    (1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
    (2)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (3)配列番号2の第32〜412位のアミノ酸からなる配列を含むポリペプチド;
    (4)配列番号2の第32〜412位のアミノ酸からなるポリペプチド;
    (5)配列番号2の第493〜929位のアミノ酸からなる配列を含むポリペプチド;
    (6)配列番号2の第493〜929位のアミノ酸からなるポリペプチド;
    (7)(1)〜(6)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなり、リジンケトグルタル酸レダクターゼ(LKR)及び/又はサッカロピンデヒドロゲナーゼ(SDH)の活性を有するポリペプチド;
    (8)(1)〜(6)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、LKR及び/又はSDHの活性を有するポリペプチド。
  2. 請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  3. 請求項2に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  4. 請求項2に記載のポリヌクレオチドを含む形質転換体。
  5. 請求項4に記載の形質転換体を培養する工程を含む、請求項1に記載のポリペプチドを製造する方法。
  6. 請求項1に記載のポリペプチド、請求項2に記載のポリヌクレオチド、および請求項3に記載のベクターからなる群より選択される有効成分と薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる担体又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
  7. マダニに対するワクチンである、請求項6に記載の医薬組成物。
  8. 請求項1に記載のポリペプチドに対する抗体又はその機能的断片。
  9. 請求項1に記載のポリペプチドと試験物質とを接触させる工程、並びに前記ポリペプチドのLKR及び/又はSDHの活性を分析する工程を含む、前記ポリペプチドのLKRおよび/又はSDHの活性を修飾する物質のスクリーニング方法。
  10. 請求項6若しくは7に記載の医薬組成物を、家畜又は愛玩動物に、有効量で投与することを含む、マダニ駆除方法。
  11. 請求項6若しくは7に記載の医薬組成物を、家畜又は愛玩動物に、有効量で投与することを含む、マダニ媒介性感染症の治療又は予防方法。
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