JP4452510B2 - ダニのキチナーゼ - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、ダニのキチナーゼに関する。
背景技術
ダニ類によって動物又は人に直接又は間接的に甚大な被害がもたらされている。
前者の直接的被害には、咬着と吸血による掻痒や失血、あるいは、吸血時の分泌唾液や腸内容の嘔吐によるアレルギー疾患やダニ麻痺の招来が知られている。後者の間接的被害には、ウイルス、リケッチア、細菌、スピロヘータ、原虫、又は線虫などによる様々な家畜でのその関連疾病を挙げることができ、その損害は、国内はもとより海外でも莫大な金額にのぼる。また、最近は、ダニ類によるいわゆる新興又は再興の人獣共通感染症の脅威が大きな社会問題になりつつある。
そのため、各国でダニ駆除を目的とした各種制圧方法がとられており、その中心をなしているのが、有機リン、カーバメイト、ピレスロイド系、又はマクロライド系抗生物質などの薬剤の利用である。しかしながら、薬剤の連続的使用又は大量使用による、いわゆる薬剤耐性がいずれの薬剤に対しても確立され、殺ダニ効果の消失するものも少なくない。更に、薬剤の使用には常に動物への副作用を考えなくてはならず、同時に、食と環境の安全性を脅かす薬物残留問題があり、消費者から敬遠される傾向にある。その上、薬剤の使用には有効性や適用範囲に加えて、膨大な開発コストの面からも限界が生じつつあり、21世紀における人畜のダニ寄生と媒介疾病の被害を薬剤使用によって防ぐことは非常に難しい状況にある。
ダニを含む吸血性節足動物でも、ウイルスや細菌感染症に見られるような宿主の再感染防御能の獲得が知られており、古くから実験室段階で実証されている[Fujisaki,Nat.Inst.Anim.Hlth.Quart.(Tokyo),18,27−38(1978)]。近年の遺伝子組換え技術の発達によって、その感染防御抗原、あるいは、吸血性節足動物に特有な変態関連酵素などをコードする遺伝子クローニングが各国で精力的に進められ、安全なワクチンタンパク質や化学療法剤の製造が試みられている。
しかしながら、実用化に至っているのは、Willadesen[Willadesen及びJogejan,Prasitology Today.15,258−262(1999)]らによって開発された1宿主性のマダニ(Boophilus microplus)に対してのみであって、日本を含めたアジア諸国やユーラシア大陸に広く分布し、ピロプラズマ症、Q熱、又はウイルス性脳炎などの人獣共通感染症の媒介者となっているフタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)に対しては、ワクチン候補の探索段階であり、早急なワクチン開発とその実用化が強く望まれている。
発明の開示
本発明者は、ダニ、特にはフタトゲチマダニのワクチン候補として有用な新規ポリペプチド及びそれをコードするポリヌクレオチドを取得することを目的として、鋭意探索したところ、新規のキチナーゼ及びそれをコードするポリヌクレオチドを見出した。更に、このキチナーゼをマウスに接種したところ、抗体産生の誘導を確認することができ、前記キチナーゼがダニワクチンとしての有用性を有することを確認した。本発明は、このような知見に基づくものである。
従って、本発明の課題は、ダニワクチンとして有用な新規キチナーゼ及びそれをコードするポリヌクレオチドを提供することにある。
前記課題は、本発明による、(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、キチナーゼ活性を有するポリペプチド;(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列の1又は複数の箇所において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、キチナーゼ活性を有するポリペプチド;又は(4)配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が60%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも、キチナーゼ活性を有するポリペプチドによって解決することができる。
また、本発明は、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
また、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
また、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含む形質転換体に関する。
また、本発明は、前記形質転換体を培養する工程を含むことを特徴とする、前記ポリペプチドを製造する方法に関する。
また、本発明は、前記ポリペプチド若しくはその断片、前記ポリヌクレオチド、又は前記ベクターを含む、医薬に関する。
また、本発明は、前記ポリペプチド若しくはその断片、前記ポリヌクレオチド、又は前記ベクターと、薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる担体又は希釈剤とを含む、医薬組成物に関する。
また、本発明は、前記ポリペプチド若しくはその断片、前記ポリヌクレオチド、又は前記ベクターを、ダニ駆除の必要な対象に、有効量で投与することを含む、ダニ駆除方法に関する。
また、本発明は、前記ポリペプチド若しくはその断片、前記ポリヌクレオチド、又は前記ベクターを、ダニ媒介性感染症の治療又は予防の必要な対象に、有効量で投与することを含む、ダニ媒介性感染症の治療又は予防方法に関する。
また、本発明は、前記ポリペプチドに対する抗体又はその断片に関する。
また、本発明は、前記ポリペプチドと試験物質とを接触させる工程、及び前記ポリペプチドのキチナーゼ活性を分析する工程を含む、前記ポリペプチドのキチナーゼ活性を修飾する物質のスクリーニング方法に関する。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を詳細に説明する。
[1]本発明のポリペプチド:
本発明のポリペプチドには、
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、キチナーゼ活性を有するポリペプチド;
(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列の1又は複数の箇所において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、キチナーゼ活性を有するポリペプチド(以下、機能的等価改変体と称する);及び
(4)配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が60%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも、キチナーゼ活性を有するポリペプチド(以下、相同ポリペプチドと称する)
が含まれる。
本明細書において「キチナーゼ活性」とは、キチン[ポリ(β−1,4−N−アセチルD−グルコサミン)]を分解し、オリゴ糖とN−アセチルグルコサミンを生成する酵素活性を意味する。ポリペプチドがキチナーゼ活性を有するか否かは、例えば、試験ポリペプチドとキチナーゼ基質とを接触させ、前記キチナーゼ基質の分解の有無及び/又は程度を分析する公知のキチナーゼ活性測定法[例えば、Johannesら,Infect.Immun.,69,4041−4047(2001)]により容易に判定することができ、特に限定されるものではないが、後述の実施例6に記載の方法により判定することが好ましい。
具体的には、例えば、キチナーゼの適当な基質(例えば、グリコールキチン又はキチン)を含有するアガロースゲルのウェル中に、試験ポリペプチドを添加し、所定時間(例えば、37℃で12時間)インキュベートした後、適当な色素[例えば、Fluorescent Brightener28(Sigma社)]で染色し、紫外線の下でゲルを観察する。キチナーゼでキチンを溶解した部分は、色素が反応せず、黒色を呈するので、この場合には、前記試験ポリペプチドがキチナーゼ活性を有すると判定することができる。キチナーゼ反応がない場合には、色素の反応により明るくなるので、この場合には、前記試験ポリペプチドがキチナーゼ活性を有しないと判定することができる。
本発明のポリペプチドである「配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、キチナーゼ活性を有するポリペプチド」としては、例えば、
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端及び/又はC末端に、適当なマーカー配列等が付加されたアミノ酸配列からなり、しかも、キチナーゼ活性を有する融合ポリペプチド;あるいは、
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドと、融合用パートナーとの融合ポリペプチドであって、しかも、キチナーゼ活性を有する融合ポリペプチド
を挙げることができる。
前記マーカー配列としては、例えば、ポリペプチドの発現の確認、細胞内局在の確認、あるいは、精製等を容易に行なうための配列を用いることができ、例えば、FLAGタグ、ヘキサ−ヒスチジン・タグ、ヘマグルチニン・タグ、又はmycエピトープなどを用いることができる。
また、前記融合用パートナーとしては、例えば、精製用ポリペプチド[例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)の全部又は一部]、検出用ポリペプチド[例えば、ヘムアグルチニン又はβ−ガラクトシダーゼαペプチド(LacZ α)の全部又は一部]、又は発現用ポリペプチド(例えば、シグナル配列)などを用いることができる。
更に、前記融合ポリペプチドにおいては、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドと前記マーカー配列又は融合用パートナーとの間に、限定分解するタンパク質分解酵素(例えば、トロンビン又はファクターXa)で切断することができるアミノ酸配列を適宜導入することもできる。
本発明の機能的等価改変体は、配列番号2で表されるアミノ酸配列の1又は複数の箇所において、全体として1又は複数個(好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜7個、更に好ましくは1〜5個)、例えば、全体として1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、キチナーゼ活性を有するポリペプチドである限り、特に限定されるものではなく、その起源もフタトゲチマダニに限定されない。
例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのフタトゲチマダニにおける変異体が含まれるだけでなく、フタトゲチマダニ以外の生物(例えば、その他のマダニ類、又はヒメダニ類)由来の機能的等価改変体が含まれる。更には、それらの天然ポリペプチド(すなわち、フタトゲチマダニ由来の変異体、あるいは、フタトゲチマダニ以外の生物由来の機能的等価改変体)をコードするポリヌクレオチドを元にして、あるいは、配列番号2で表されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを元にして、遺伝子工学的に、コードするアミノ酸配列を人為的に改変したポリヌクレオチドを用いて製造したポリペプチドなどが含まれる。なお、本明細書において「変異体」(variation)とは、同一種内の同一ポリペプチドにみられる個体差、あるいは、数種間の相同ポリペプチドにみられる差異を意味する。
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのフタトゲチマダニにおける変異体、あるいは、フタトゲチマダニ以外の生物由来の機能的等価改変体は、当業者であれば、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列(例えば、配列番号1で表される塩基配列における第571番〜第3360番の塩基からなる配列)の情報を基にして、取得することができる。なお、遺伝子組換え技術については、特に断りがない場合、公知の方法(例えば、Sambrookら,“Molecular Cloning,A Laboratory Manual”,Cold Spring Harber Laboratory Press,1989)に従って実施することが可能である。
例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列の情報を基にして適当なプライマー又はプローブを設計し、前記プライマー又はプローブと、目的とする生物(例えば、その他のマダニ類、又はヒメダニ類)由来の試料(例えば、全RNA若しくはmRNA画分、cDNAライブラリー、又はファージライブラリー)とを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法(Saiki,R.K.ら,Science,239,487−491,1988)又はハイブリダイゼーション法を実施することにより、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを取得し、そのポリヌクレオチドを適当な発現系を用いて発現させ、発現したポリペプチドが、例えば、実施例6に記載の方法により、キチナーゼ活性を有することを確認することにより、所望のポリペプチドを取得することができる。
また、前記の遺伝子工学的に人為的に改変したポリペプチドは、常法、例えば、部位特異的突然変異誘発法(site−specific mutagenesis;Mark,D.F.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,5662−5666,1984)により、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを取得し、そのポリヌクレオチドを適当な発現系を用いて発現させ、発現したポリペプチドが、例えば、実施例6に記載の方法により、キチナーゼ活性を有することを確認することにより、所望のポリペプチドを取得することができる。
本発明の相同ポリペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が60%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも、キチナーゼ活性を有するポリペプチドである限り、特に限定されるものではない。本発明の相同ポリペプチドとしては、配列番号2で表されるアミノ酸配列に関して、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなることができる。なお、本明細書における前記「相同性」とは、Clustal program(Higgins及びSharp,Gene,73,237−244,1988;並びにThompsonら,Nucleic Acid Res.,22,4673−4680,1994)により、デフォルトで用意されているパラメータを用いて得られた値を意味する。
これらの本発明の新規ポリペプチドは、種々の公知の方法によって製造することができ、例えば、本発明の前記ポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドを用いて公知の遺伝子工学的手法により調製することができる。より具体的には、後述する本発明の形質転換体(すなわち、本発明のポリヌクレオチドを含む形質転換体)を、本発明による新規ポリペプチドの発現が可能な条件下で培養し、ポリペプチドの分離及び精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から目的ポリペプチドを分離及び精製することにより調製することができる。前記の分離及び精製方法としては、例えば、硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、又は凍結乾燥等を挙げることができる。
また、本発明には、本発明によるポリペプチドの断片も含まれる。本発明による前記断片は、本発明による医薬の有効成分として、あるいは、本発明の抗体を調製するための抗原として有用である。
[2]本発明のポリヌクレオチド:
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではなく、例えば、配列番号1で表される塩基配列における第571番〜第3360番の塩基からなる配列からなるポリヌクレオチドを挙げることができる。なお、本明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNA及びRNAの両方が含まれる。
また、本発明には、本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な塩基配列を含むポリヌクレオチド、好ましくは本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドが含まれる。本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な塩基配列としては、本発明のポリヌクレオチドの塩基配列又はその部分配列に、相捕的な塩基配列であることが好ましく、配列番号1で表される塩基配列における第571番〜第3360番の塩基からなる配列又はその部分配列に、相捕的な塩基配列であることがより好ましい。
[3]本発明のベクター及び形質転換体:
本発明のベクターは、本発明による前記ポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターに、本発明による前記ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるベクターを挙げることができる。
また、本発明の形質転換体も、本発明による前記ポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば、本発明による前記ポリヌクレオチドが、宿主細胞の染色体に組み込まれた形質転換体であることもできるし、あるいは、本発明による前記ポリヌクレオチドを含むベクターの形で含有する形質転換体であることもできる。また、本発明によるポリペプチドを発現している形質転換体であることもできるし、あるいは、本発明によるポリペプチドを発現していない形質転換体であることもできる。本発明の形質転換体は、例えば、本発明による前記ベクターにより、あるいは、本発明による前記ポリヌクレオチドそれ自体により、所望の宿主細胞を形質転換することにより得ることができる。
前記宿主細胞としては、例えば、通常使用される公知の微生物、例えば、大腸菌又は酵母(Saccharomyces cerevisiae)、あるいは、公知の培養細胞、例えば、動物細胞(例えば、CHO細胞、HEK−293細胞、又はCOS細胞)又は昆虫細胞(例えば、BmN4細胞)を挙げることができる。
また、公知の前記発現ベクターとしては、例えば、大腸菌に対しては、pUC、pTV、pGEX、pKK、又はpTrcHisを;酵母に対しては、pEMBLY又はpYES2を;CHO細胞に対してはpcDNA3又はpMAMneoを;HEK−293細胞に対してはpcDNA3を;COS細胞に対してはpcDNA3を;BmN4細胞に対しては、カイコ核多角体ウイルス(BmNPV)のポリヘドリンプロモーターを有するベクター(例えば、pBK283)を挙げることができる。更に、公知の発現ベクターとしては、遺伝子治療用のベクターとして使用することのできるウイルスベクター、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、又はセンダイウイルス等を挙げることができる。
[4]本発明の医薬:
本発明の医薬(好ましくはダニに対するワクチン)は、有効成分として、本発明のポリペプチド若しくはその断片、本発明のポリヌクレオチド、又は本発明のベクターを含む。すなわち、本発明においては、本発明のポリペプチド若しくはその断片、本発明のポリヌクレオチド、又は本発明のベクターを、それ単独で、又は好ましくは薬剤学的若しくは獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤と共に、ダニ駆除の必要な動物、好ましくは哺乳動物(特には、ヒト)に経口的に又は非経口的に投与することができる。
本発明の医薬における前記有効成分である、本発明のポリペプチド若しくはその断片、本発明のポリヌクレオチド、又は本発明のベクターをダニワクチンとして投与すると、抗体産生を誘導することができ、宿主の再感染防御能を介してダニを駆除することができる。また、その結果として、ダニ媒介性感染症(例えば、ピロプラズマ症、Q熱、又はウイルス性脳炎など)の治療又は予防が可能である。
すなわち、本発明の医薬組成物(好ましくは、ダニ駆除用医薬組成物、あるいは、ダニ媒介性感染症の治療又は予防用医薬組成物)は、有効成分としての本発明のポリペプチド若しくはその断片、本発明のポリヌクレオチド、又は本発明のベクターと、薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる担体又は希釈剤とを含む。本発明における有効成分である、本発明のポリペプチド若しくはその断片、本発明のポリヌクレオチド、又は本発明のベクターは、前記医薬(好ましくは、ダニ駆除用医薬、あるいは、ダニ媒介性感染症の治療又は予防用医薬)を製造するために使用することができる。
本発明の医薬をダニワクチンとして使用する場合、本発明のポリペプチドの断片としては、投与対象に投与した場合に、前記断片に対して免疫を誘導するのに充分な断片である限り、特に限定されるものではなく、当業者であれば適宜選択することができる。
本発明の医薬(特にはダニワクチン)では、例えば、本発明のポリペプチドをアジュバント等と混合して、ダニに対するワクチンとして、適当な間隔で動物(例えば、家畜等)に接種することができる。あるいは、本発明のポリペプチドを直接、適当な溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできるし、リポソーム中に封入したり、適当なベクターに組み込んだ形にして使用することもできる。また、必要に応じて、本発明のポリペプチドに薬学的に許容し得る担体を添加し、例えば、注射剤、錠剤、カプセル剤、点眼剤、クリーム剤、坐剤、噴霧剤、又はパップ剤等の適当な剤型にして使用することができる。
薬学的に許容し得る担体には、当業者には周知の溶媒、基剤、安定化剤、防腐剤、溶解剤、賦形剤、及び緩衝剤等が含まれる。本発明の医薬に含有される本発明のポリペプチドは、このような剤型とした場合、例えば、投与対象の年齢、性別、疾患の種類、又は程度等に応じて、その投与方法及び投与量を適宜設定して使用することができる。
経口投与には舌下投与を含む。非経口投与としては、例えば、吸入、経皮投与、点眼、膣内投与、関節内投与、直腸投与、動脈内投与、静脈内投与、局所投与、筋肉内投与、皮下投与、及び腹腔内投与等から適当な方法を選んで投与することができる。
[5]本発明の抗体又はその断片:
本発明のポリペプチドに反応する抗体(例えば、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体)は、各種動物に、本発明のポリペプチド、又はその断片を直接投与することで得ることができる。また、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入したプラスミドを用いて、DNAワクチン法(Raz,E.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,9519−9523,1994;又はDonnelly,J.J.ら,J.Infect.Dis.,173,314−320,1996)によっても得ることができる。
ポリクローナル抗体は、例えば、本発明のポリペプチド又はその断片を適当なアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバントなど)に乳濁した乳濁液を、腹腔、皮下、又は静脈等に免疫して感作した動物(例えば、ウサギ、ラット、ヤギ、又はニワトリ等)の血清又は卵から製造することができる。このように製造された血清又は卵から、常法のポリペプチド単離精製法によりポリクローナル抗体を分離精製することができる。そのような分離精製方法としては、例えば、遠心分離、透析、硫酸アンモニウムによる塩析、又はDEAE−セルロース、ハイドロキシアパタイト、若しくはプロテインAアガロース等によるクロマトグラフィー法を挙げることができる。
モノクローナル抗体は、例えば、ケーラーとミルスタインの細胞融合法(Kohler,G.及びMilstein,C.,Nature,256,495−497,1975)により、当業者が容易に製造することが可能である。
すなわち、本発明のポリペプチド又はその断片を適当なアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバントなど)に乳濁した乳濁液を、数週間おきにマウスの腹腔、皮下、又は静脈に数回繰り返し接種することにより免疫する。最終免疫後、脾臓細胞を取り出し、ミエローマ細胞と融合してハイブリドーマを作製する。
ハイブリドーマを得るためのミエローマ細胞としては、例えば、ヒポキサンチン−グアニン−ホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損又はチミジンキナーゼ欠損のようなマーカーを有するミエローマ細胞(例えば、マウスミエローマ細胞株P3X63Ag8.U1)を利用することができる。また、融合剤としては、例えば、ポリエチレングリコールを利用することができる。更には、ハイブリドーマ作製における培地として、例えば、イーグル氏最小必須培地、ダルベッコ氏変法最小必須培地、又はRPMI−1640などの通常よく用いられている培地に、10〜30%のウシ胎仔血清を適宜加えて用いることができる。融合株は、HAT選択法により選択することができる。ハイブリドーマのスクリーニングは培養上清を用い、ELISA法又は免疫組織染色法などの周知の方法により行ない、目的の抗体を分泌しているハイブリドーマのクローンを選択することができる。また、限界希釈法によってサブクローニングを繰り返すことにより、ハイブリドーマの単クローン性を保証することができる。このようにして得られるハイブリドーマは、培地中で2〜4日間、あるいは、プリスタンで前処理したBALB/c系マウスの腹腔内で10〜20日間培養することで、精製可能な量の抗体を産生することができる。
このように製造されたモノクローナル抗体は、培養上清又は腹水から常法のポリペプチド単離精製法により分離精製することができる。そのような分離精製方法としては、例えば、遠心分離、透析、硫酸アンモニウムによる塩析、又はDEAE−セルロース、ハイドロキシアパタイト、若しくはプロテインAアガロース等によるクロマトグラフィー法を挙げることができる。
また、モノクローナル抗体又はその一部分を含む抗体断片は、前記モノクローナル抗体をコードする遺伝子の全部又は一部を発現ベクターに組み込み、適当な宿主細胞(例えば、大腸菌、酵母、又は動物細胞)に導入して生産させることもできる。
以上のように分離精製された抗体(ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含む)について、常法により、ポリペプチド分解酵素(例えば、ペプシン又はパパイン等)によって消化を行ない、引き続き、常法のポリペプチド単離精製法により分離精製することで、活性のある抗体の一部分を含む抗体断片、例えば、F(ab’)、Fab、Fab’、又はFvを得ることができる。
更には、本発明のポリペプチドに反応する抗体を、クラクソンらの方法又はゼベデらの方法(Clackson,T.ら,Nature,352,624−628,1991;又はZebedee,S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,3175−3179,1992)により、一本鎖(single chain)Fv又はFabとして得ることも可能である。また、マウスの抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子に置き換えたトランスジェニックマウス(Lonberg,N.ら,Nature,368,856−859,1994)に免疫することで、ヒト抗体を得ることも可能である。
[6]本発明のスクリーニング方法:
本発明のポリペプチドを用いると、試験物質が、本発明のポリペプチドのキチナーゼ活性を修飾(例えば、抑制又は促進)するか否かをスクリーニングすることができる。
本発明のスクリーニング方法にかけることのできる試験物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術(Terrett,N.K.ら,Tetrahedron,51,8135−8137,1995)又は通常の合成技術によって得られた化合物群、あるいは、ファージ・ディスプレイ法(Felici,F.ら、J.Mol.Biol.,222,301−310,1991)などを応用して作成されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清、植物若しくは海洋生物由来の天然成分、又は動物組織抽出物などもスクリーニングの試験物質として用いることができる。更には、本発明のスクリーニング方法により選択された化合物(ペプチドを含む)を、化学的又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を用いることができる。
本発明のスクリーニング方法においては、試験ポリペプチドとキチナーゼ基質とを接触させる代わりに、本発明のポリペプチドとキチナーゼ基質と試験物質とを接触させること以外は、先述のキチナーゼ活性の判定方法と同様にして実施することができる。
すなわち、本発明のスクリーニング方法では、本発明のポリペプチドとキチナーゼ基質と試験物質とを接触させ、前記試験物質の存在下において、前記キチナーゼ基質が、本発明のポリペプチドのキチナーゼ活性に基づいて分解されたか否か(あるいは、その分解の程度)を分析することにより、前記試験物質が、本発明のポリペプチドのキチナーゼ活性を修飾するか否かを判断する。キチナーゼ基質が、本発明のポリペプチドのキチナーゼ活性に基づいて分解されないか、あるいは、前記分解の程度が減少する場合には、前記試験物質が、本発明のポリペプチドのキチナーゼ活性を抑制すると判断することができる。一方、本発明のポリペプチドのキチナーゼ活性に基づくキチナーゼ基質の分解の程度が上昇する場合には、前記試験物質が、本発明のポリペプチドのキチナーゼ活性を促進すると判断することができる。
実施例
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、以下の実施例においては、各種分子生物学、ダニ学、節足動物学、免疫学、及び生化学的な技術を用いた。これらの技術は、Sambrookら,“Molecular Cloning,A Laboratory Manual”,Cold Spring Harber Laboratory Press,1989やその関連書を参考にした。また、DNA解析ソフトとしては、MacVectorTM(Oxford Molecular社)を使用した。
実施例1:新規のダニ・キチナーゼをコードする遺伝子の単離
フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)岡山株[Fujisakiら,Nat.Inst.Anim.Hlth Quart.(Tokyo),16,122−128(1976)]の卵から、酸グアニジニウム(Acid Guanidinium)−フェノール−クロロホルム法[Chomczynskiら,Anal.Biochem.,162,156−159(1987)]により、全RNAを抽出した。得られた全RNAから、mRNA単離キット[Oligotex−dT30(Super),code:W9021B;Takara社]を用いて、前記キットに添付のプロトコールに従い、ポリARNAを精製した。
以下に述べるcDNAライブラリーの構築、スクリーニング、及びcDNAクローンのプラスミド化(in vivo Excision)は、全て、市販の試薬キット(Stratagen社)を用い、キットに添付のプロトコールに従って実施した。
すなわち、ダニmRNA5μgを鋳型とし、cDNA合成キット(ZAP−cDNA Synthesis Kit,Cat.No.200401−5;Stratagen社)を用いてcDNAを合成した。得られたcDNAをセファロースCL−2Bゲルカラムにてサイズ分画した後、ベクター(Uni−ZAPXR Vector,Cat.No.237211;Stratagen社)に挿入し、パッケージング試薬(GigapackIII Gold packaging extract;Stratagen社)にてパッケージングを行なった。パッケージング産物を大腸菌(E.coli XL1−Blue MRF’株)に感染させ、約50万個のcDNAクローンを含むライブラリーを得た。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて、cDNAライブラリーをプラークスクリーニングし、4個のオーバラップする陽性クローンを得た。より具体的には、PCRで得られたダニ由来キチナーゼ遺伝子のフラグメントをプローブとして、cDNAライブラリーに反応させ、反応陽性コロニーがフィルム上で黒色の点として観察されるのを確認しながらスクリーニングを行なった。なお、前記PCRでは、配列番号5又は6で表される各アミノ酸配列から設計した配列番号7又は8で表される各塩基配列からなる2種類のプライマーを用いた。また、PCRは、反応液[鋳型DNA1μg,0.1μmol/Lプライマー,10mmol/L−Tris−HCl(pH8.3),50mmol/L−KCl,1.5mmol/L−MgCl,2.5U−Taq Gold DNA polymerase(Part No.N808−0244;Perkin Elmer社)]50μLを、94℃にて1分間、50℃にて1分間、72℃にて2分間の条件で、反応を40サイクル繰り返すことにより実施した。
これらの陽性クローンをインビボ切り出し(in vivo Excision)法にてプラスミド化(すなわち、pBluescriptへ変換)した。
cDNA断片を含むプラスミドをプラスミド精製キット(Cat no.12125;Qiagen社)にて精製した後に、シークエンスキット(Dye Primer Cycle Sequencing Kit,Part No.4303153;Perkin Elmer社)を用い、前記キットに添付のプロトコールに従ってPCRを行なった。続いて、DNAシークエンサー(ABI PRISM 3100 Genetic Analyzer;Perkin Elmer社)を用いてPCR産物を解析し、cDNA断片の塩基配列を決定した。
その結果、4クローン全てが同一遺伝子由来であることが判明した。その中で最も長いクローンを以後の解析に供した。
cDNAの全長は6439bpであり、その塩基配列は、配列番号1で表される塩基配列であった。また、塩基配列中に、2790bpのオープンリーディングフレーム(配列番号1で表される塩基配列における第571番〜第3360番の塩基からなる配列)を有していることが確認された。前記オープンリーディングフレームから推測されるタンパク質のアミノ酸配列は、929残基のアミノ酸からなる配列番号2で表されるアミノ酸配列であり、その推定分子量は104kDaであった。
予想されるアミノ酸配列を、BLAST法(Basic local alingment search tool;Altschul,S.F.ら,J.Mol.Biol.,215,403−410,1990;National Center for Biotechnology Informationより入手)にて相同性検索を行なったところ、これまでに報告されている他の生物のキチナーゼタンパク質に高い相同性を有することが確認された。例えば、ネッタイシマカ(Yellow fever mosquito;Aedes aegypti)キチナーゼ[Insect Mol.Biol.,7(3),233−239(1998)]との相同性は約30%であった。
実施例2:ダニ・キチナーゼ融合タンパク質の発現用ベクターの構築
ダニキチナーゼ遺伝子のORF領域をクローニングするために、実施例1で得られたcDNAクローンを鋳型とし、配列番号3で表される塩基配列からなるセンスプライマー(5’側にEcoRI認識配列gaattcを含む)と、配列番号4で表される塩基配列からなるアンチセンスプライマー(5’側にXhoI認識配列ctcgagを含む)とを用いたPCRにて増幅した。PCRは、反応液[鋳型DNA1μg,0.1μmol/Lプライマー,10mmol/L−Tris−HCl(pH8.3),50mmol/L−KCl,1.5mmol/L−MgCl,2.5U−Taq Gold DNA polymerase(Part No.N808−0244;Perkin Elmer社)]50μLを、94℃にて1分間、50℃にて1分間、72℃にて2分間の条件で、反応を40サイクル繰り返すことにより実施した。
PCR産物をフェノール/クロロホルム処理した後に、エタノール沈澱法にて回収し、蒸留水中に溶解した。得られたDNA液を制限酵素EcoRIで消化した後に、電気泳動にて分離し、DNA精製キット(Cat no.1001−400;Biotechnologies社)にて精製し、蒸留水中に回収した。
一方、大腸菌発現用ベクターpGEX−4T−3(Product no.27−4583;Pharmacia Biotech社)を制限酵素EcoRIで消化した後に、アルカリホスファターゼにて脱リン酸化処理し、その後、PCR産物と同様な方法にて精製した。
精製したPCR産物とベクターとを、DNAライゲーションキット(Cat no.6022;Takara社)を用いて、キットに添付のプロトコールに従って反応させた。大腸菌DH5α株をライゲーション反応産物にて形質転換させ、キチナーゼORF断片がベクターのグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)と同一方向に挿入された組換えクローンを選択した。プラスミド精製キット(Cat no.12125;Qiagen社)にて組換えプラスミドを精製した。
実施例3:ダニ・キチナーゼ組換えタンパク質の大腸菌による発現
実施例2で得られた組換えプラスミドにて、大腸菌JM109(DE3)株(Promega社)を形質転換させた後、37℃でアンピシリン含有LB培地で培養した。培養液のOD600nmが0.3〜0.5に達した時点で、イソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を最終濃度が0.5mmol/Lになるように添加し、更に37℃で4時間培養を続けた。
ダニキチナーゼ組換えタンパク質の発現は、10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動[Laemmliら,Nature,227,680−685(1970)]を実施した後、クーマシー染色で確認した。
その結果、約130kDaの組換えタンパク質の発現が認められ、GSTリーダータンパク質(26kDa)とダニキチナーゼタンパク質(104kDa)との融合タンパク質であることが確認された。
実施例4:ダニ・キチナーゼ組換えタンパク質の精製及び抗血清の調製
実施例3で述べた方法により、大腸菌で発現させた組換えキチナーゼ融合タンパク質を、市販のキット(Bulk GST Purification Module;Amersham Bioscience社)に添付のプロトコールに従って精製した。
精製後の組換えキチナーゼ融合タンパク質の電気泳動像を図1に示す。なお、電気泳動及び染色は、実施例3と同様にして実施した。図1において、レーン1は、分子量マーカーの泳動結果であり、レーン2は、精製した組換えキチナーゼ融合タンパク質の泳動結果であり、レーン3は、精製したGSTタンパク質の泳動結果である。また、レーン3の右側の矢印は、組換えキチナーゼ融合タンパク質の位置を示し、レーン3の右側の各数値は、組換えキチナーゼ融合タンパク質(130kDa)並びにそれを構成するダニキチナーゼタンパク質(104kDa)及びGSTリーダータンパク質(26kDa)の各分子量を意味する。
精製した組換えキチナーゼ融合タンパク質100μgを含む溶液200μLと、フロイント完全アジュバント(Adjuvant Complete Freund;Difco社)200μLとを混合した後に、BALB/cマウス(8週齢、雌)に腹腔内接種した。腹腔内接種から2週間及び4週間経過後に、それぞれ、組換えキチナーゼ融合タンパク質100μgをフロイント不完全アジュバント(Difco社)と混合し、追加接種を行なった。最終接種後から2週目に採血し、得られた血清を−20℃に保存した。
実施例5:イムノブロット法によるネイティブ(天然型)キチナーゼの同定
実施例4で得られた抗組換えキチナーゼ融合タンパク質マウス血清を用い、イムノブロット法[Towbinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76,4350−4354(1979)]にて天然型キチナーゼタンパク質の同定を行なった。なお、試料としては、Youら,Insect Biochem.Mol.Biol.,32,67−73(2000)に記載の方法に従って、20mmol/L−Tris−HClでダニ卵をホモジナイズし、1000rpmで30分間遠心後の上清を、ダニ卵ライセートとして使用した。
結果を図2に示す。図2において、レーン1は、抗組換えキチナーゼ融合タンパク質免疫血清を用いた場合の結果であり、レーン2は、抗GSTタンパク質免疫血清(陰性対象)を用いた場合の結果である。また、レーン2の右側の矢印は、天然型キチナーゼタンパク質の位置を示し、レーン2の右側の各数値は、分子量を示す。
図2のレーン1に示すように、卵ライセートにおいて、天然型キチナーゼタンパク質(114kDa)の特異的バンドが検出された。この分子量は、配列番号2で表されるアミノ酸配列から推定される分子量(104kDa)より10kDa程度大きく、この差はグリコシル化によるものと考えられる。
実施例6:組換えキチナーゼ融合タンパク質のキチナーゼ活性の確認
本実施例では、公知のキチナーゼ活性測定法[Johannesら,Infect.Immun.,69,4041−4047(2001)]に従って、0.01%グリコールキチン(glycol chitin)を含む1%アガロースゲルにて組換えキチナーゼ融合タンパク質のキチナーゼ活性を検討した。なお、比較のために、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)由来キチナーゼ(Sigma社)及びβ−ガラクトシダーゼについても、キチナーゼ活性を検討した。
具体的には、各タンパク質をPBS(リン酸緩衝液)に溶解した各タンパク質溶液10μLを、それぞれ、前記アガロースゲルのウェルに入れ、37℃で12時間インキュートした後に、0.01%染色液(Fluorescent Brightener28;Sigma)で染色し、蒸留水で洗った後、紫外線の下でゲルを観察した。
組換えキチナーゼ融合タンパク質又はセラチア・マルセセンス由来キチナーゼは、β−ガラクトシダーゼ又はPBS(コントロール)に比べてキチンと強く反応し、キチンを溶かす性質を有することが確認された。
産業上の利用可能性
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、形質転換体、及び抗体によれば、本発明の医薬、特にはダニワクチンを提供することができる。
また、本発明の医薬、特にはダニワクチンによれば、例えば、ダニ駆除、又はダニ媒介性感染症(例えば、ピロプラズマ症、Q熱、又はウイルス性脳炎など)の治療若しくは予防が可能である。
配列表フリーテキスト
配列表の配列番号3、4、7、及び8の配列で表される各塩基配列は、人工的に合成したプライマー配列である。
また、配列表の配列番号8の配列で表される塩基配列において、記号「n」は、A(アデニン)、C(シトシン)、G(グアニン)、又はT(チミン)を意味する。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
図1は、組換えキチナーゼ融合タンパク質のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す図面である。
図2は、イムノブロット法によるダニ卵ライセート中のネイティブ(天然型)キチナーゼの電気泳動の結果を示す図面である。

Claims (7)

  1. (1)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (2)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、キチナーゼ活性を有するポリペプチド;
    (3)配列番号2で表されるアミノ酸配列の1又は複数の箇所において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、キチナーゼ活性を有するポリペプチド;又は
    (4)配列番号2で表されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも、キチナーゼ活性を有するポリペプチド。
  2. 請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  3. 請求項2に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  4. 請求項に記載のベクターを含む形質転換体。
  5. 請求項4に記載の形質転換体を培養する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチドを製造する方法。
  6. 請求項1に記載のポリペプチドに対する抗体、又はその断片であって、活性のある抗体の一部分を含む抗体断片。
  7. 請求項1に記載のポリペプチドと試験物質とを接触させる工程、及び
    前記ポリペプチドのキチナーゼ活性を分析する工程
    を含む、前記ポリペプチドのキチナーゼ活性を修飾する物質のスクリーニング方法。
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