以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.他の実施の形態
<1.実施の形態>
[1−1.光ディスク装置の構成]
図1に示すように、光ディスク装置1は、統括制御部2を中心に構成されており、光ディスク100に対し情報を記録し、また当該光ディスク100から情報を再生し得るようになされている。
光ディスク100は、記録層において、螺旋状又は同心円状のトラック溝が形成されており、当該トラック溝に沿って情報が記録されるようになされている。因みに光ディスク100は、例えば4層の記録層Y0、Y1、Y2及びY3(以下、これらをまとめて記録層Yと呼ぶ)を有しており、各記録層Yの間には、種々の厚みでなるスペーサが設けられている。
統括制御部2は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、各種プログラム等が格納されるROM(Read Only Memory)と、当該CPUのワークメモリとして用いられるRAM(Random Access Memory)とによって構成されている。
統括制御部2は、光ディスク100から情報を再生する場合、駆動制御部3を介してスピンドルモータ5を回転駆動させ、ターンテーブル5Tに載置された光ディスク100を所望の速度で回転させる。
また統括制御部2は、駆動制御部3を介してスレッドモータ6を駆動させることにより、光ピックアップ7を移動軸に沿ってトラッキング方向、すなわち光ディスク100の内周側又は外周側へ向かう方向へ大きく移動させるようになされている。
光ピックアップ7は、対物レンズ8や2軸アクチュエータ9等の複数の部品が取り付けられており、統括制御部2の制御に基づいて光ディスク100へ光ビームを照射するようになされている。
因みに統括制御部2は、光ディスク100に光ビームを照射する場合、記録層Y0〜Y3のうち情報を読み出す対象とする記録層Y、すなわち光ビームの焦点を合わせるべき記録層Yを対象記録層YTとして選定するようになされている。
また光ピックアップ7は、光ビームが光ディスク100により反射されてなる反射光ビームを受光し、その受光結果に応じた受光信号を生成して信号処理部4へ供給するようになされている。
信号処理部4は、供給された受光信号を用いた所定の演算処理を行うことによりフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号及びプルイン信号をそれぞれ生成し、これらを駆動制御部3へ供給する。
駆動制御部3のサーボ制御部3Aは、供給されたフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号及びプルイン信号を基に、対物レンズ8を駆動するための駆動信号を生成し、これを光ピックアップ7の2軸アクチュエータ9へ供給する。
光ピックアップ7の2軸アクチュエータ9は、この駆動信号に基づいて対物レンズ8のフォーカスジャンプ、フォーカス制御及びトラッキング制御等を行い、当該対物レンズ8により集光される光ビームの焦点位置を調整するようになされている(詳しくは後述する)。
また駆動制御部3は、統括制御部2から対象記録層YTの通知を受け、当該対象記録層YTに当該光ビームの焦点を合わせるようフォーカス制御を行うようになされている。
信号処理部4は、受光信号に対し所定の演算処理、復調処理及び復号化処理等を施すことにより、光ディスク100に記録されている情報を再生し得るようになされている。
また統括制御部2は、光ディスク100に情報を記録する場合、図示しない外部機器等から記録すべき情報を受け付け、これを信号処理部4へ供給する。信号処理部4は、当該情報に対し所定の符号化処理や変調処理等を施すことにより記録用信号を生成し、これを光ピックアップ7へ供給する。
光ピックアップ7は、光ビームを記録用の強度とすると共に記録用信号に応じて変調させることにより、記録用信号に応じた記録マークを形成していく。例えば光ディスク100がBD−RE(Blu-ray Disc-Rewritable)と同様の記録方式の場合、記録層を形成する材料を局所的に相変化させることにより当該記録マークを形成する。
このように光ディスク装置1は、光ディスク100に対し光ピックアップ7から光ビームを照射させ、その反射光を基にフォーカス制御及びトラッキング制御を行いながら、情報の再生処理や記録処理を行い得るようになされている。
[1−2.光ピックアップの構成]
光ピックアップ7は、図2に示すように、光ディスク100に光ビームL1を照射し、当該光ディスク100により当該光ビームL1が反射されてなる反射光ビームLRを受光するようになされている。
レーザダイオード11は、光源制御部21の制御の基で、波長約405[nm]の青紫色レーザ光でなる光ビームL1を発散光として出射し得るようになされている。またレーザダイオード11は、光ビームL1がP偏光となるようにその取付角度等が調整されている。
実際上統括制御部2は、光源制御部21を制御することにより、レーザダイオード11から光ビームL1を発射させ、コリメータレンズ12へ入射させる。コリメータレンズ12は、光ビームL1を発散光から平行光に変換し、偏光ビームスプリッタ13へ入射させる。
偏光ビームスプリッタ13は、光ビームの偏光方向に応じて透過率が相違する反射透過面13Sを有しており、P偏光の光ビームをほぼ100%の割合で透過すると共に、S偏光の光ビームをほぼ100%の割合で反射するようになされている。
実際上偏光ビームスプリッタ13は、反射透過面13Sにより光ビームL1をほぼ100%の割合で透過させ、球面収差補正部14へ入射させる。
球面収差補正部14は、例えば液晶素子でなり、光ビームL1の球面収差を変化させ1/4波長板15へ入射させるようになされている。また球面収差補正部14は、サーボ制御部3Aの球面収差制御部3ASにより、液晶素子による球面収差の変化度合いを調整し得るようにもなされている。
実際上球面収差補正部14は、統括制御部2及び球面収差制御部3ASの制御に基づき、光ビームL1が集光され光ディスク100の対象記録層YTに到達した際に生じる球面収差と逆特性となるような球面収差を当該光ビームL1に予め与える。これにより球面収差補正部14は、光ビームL1の対象記録層YTへの到達時における球面収差を補正し得るようになされている。
1/4波長板15は、光ビームを直線偏光と円偏光との間で相互変換し得るようになされており、例えばP偏光でなる光ビームL1を左円偏光に変換し、対物レンズ8へ入射させる。
対物レンズ8は、光ビームL1を集光する。ここで統括制御部2は、フォーカス制御部3AFを介して、フォーカスアクチュエータ9Fにより対物レンズ8のフォーカス方向に関する位置を調整している。
このとき光ビームL1は、対象記録層YTで反射されることにより、反射光ビームLRとなり、対物レンズ8へ入射される。また反射光ビームLRは、円偏光における回転方向が反射時に反転されるため、右円偏光となる。
例えば記録層Y0が対象記録層YTであった場合、図3に示すように、光ビームL1は、記録層Y0において反射されることにより反射光ビームLRとなる。
この後反射光ビームLRは、対物レンズ8により発散光から平行光に変換され、1/4波長板15により右円偏光からS偏光(直線偏光)へ変換され、さらに球面収差補正部14へ入射される。
球面収差補正部14は、反射光ビームLRが対象記録層YTにより反射されてから対物レンズ8を通過するまでの間に生じた球面収差を補正し、当該反射光ビームLRを偏光ビームスプリッタ13へ入射させる。
偏光ビームスプリッタ13は、S偏光でなる反射光ビームLRを反射透過面13Sにおいて反射し、集光レンズ16へ入射させる。集光レンズ16は、反射光ビームLRを収束光に変換し、ホログラム素子17へ入射させる。
ホログラム素子17は、回折素子としての性質により、反射光ビームLRを回折させて少なくとも0次光及び1次光に分離し、0次光でなる反射光ビームLR0をほぼ直進させると共に、1次光でなる反射光ビームLR1については0次光と異なる方向へ進行させ、シリンドリカルレンズ18へ入射させる。
ここでホログラム素子17は、図4(A)に示すように反射光ビームLRの通過部分が複数の領域17A〜17Eに分割されており、また図4(B)に示すように領域ごとに反射光ビームLRの回折方向が設定されている。
領域17Aは、反射光ビームLR1のうち、光ディスク100のトラックにより回折された1次回折光(すなわち+1次光又は−1次光)を含み、且つ当該光ディスク100の内周側部分に相当する部分を反射光ビームLR1Aとする。このとき領域17Aは、反射光ビームLR1Aをほぼトラックの走行方向に沿った方向(便宜上、以下この方向を縦方向と呼ぶ)へ回折させる。
領域17Bは、反射光ビームLR1のうち、光ディスク100のトラックにより回折された1次回折光(すなわち−1次光又は+1次光)を含み、且つ当該光ディスク100の外周側部分に相当する部分を反射光ビームLR1Bとする。このとき領域17Bは、反射光ビームLR1Bをほぼ縦方向へ、且つ反射光ビームLR1Aよりも僅かに大きく回折させる。
領域17C1及び17C2は、反射光ビームLR1のうち、光ディスク100のトラックにより回折された1次回折光を殆ど含まず、且つ当該反射光ビームLR1の中央部分を除いた領域のうち、当該光ディスク100の内周側部分に相当する部分を反射光ビームLR1Cとする。このとき領域17C1及び17C2は、反射光ビームLR1Cをほぼトラックの走行方向と直交する方向(便宜上、以下この方向を横方向と呼ぶ)へ回折させる。
領域17D1及び17D2は、反射光ビームLR1のうち、光ディスク100のトラックにより回折された1次回折光を殆ど含まず、且つ当該反射光ビームLR1の中央部分を除いた領域のうち、当該光ディスク100の外周側部分に相当する部分を反射光ビームLR1Dとする。このとき領域17D1及び17D2は、反射光ビームLR1Dをほぼ横方向へ、且つ反射光ビームLR1Cよりも僅かに小さく回折させる。
領域17Eは、反射光ビームLR1の中央部分を反射光ビームLR1Eとする。このとき領域17Eは、反射光ビームLR1Eを縦方向及び横方向のほぼ中間となる斜め方向、すなわち図の左下方向へ回折させる。
かくしてホログラム素子17は、1次光でなる反射光ビームLR1のうち、プッシュプル成分(すなわち光ビームL1の焦点F1が所望のトラックに対し内周側又は外周側へ変位した際に光量が変動する成分)を含む部分を反射光ビームLR1A及びLR1Bとし、これらを縦方向へそれぞれ回折させるようになされている。
またホログラム素子17は、反射光ビームLR1のうち、プッシュプル成分を殆ど含まず、且つトラックの走行方向における前後部分を反射光ビームLR1C及びLR1Dとし、これらを横方向へそれぞれ回折させるようになされている。
因みにホログラム素子17は、各領域17A〜17Eにいわゆるバイナリ型のホログラムが形成されているため、実際には回折作用によりそれぞれ+1次光及び−1次光が生じる。しかしながら光ピックアップ7では、1次回折光としては、+1次光又は−1次光のいずれか一方のみを利用するようになされており、他方は利用しないようになされている。
このようにホログラム素子17は、反射光ビームLR1を領域ごとに設定された方向へ回折させることにより、複数の反射光ビームLR1A〜LR1Eに分割するようになされている。
シリンドリカルレンズ18は、0次光でなる反射光ビームLR0に非点収差を持たせ、光検出器19へ照射する。
因みにシリンドリカルレンズ18は、その光学的性質により、1次光でなる反射光ビームLR1A、LR1B、LR1C、LR1D及びLR1Eについても同様に非点収差を持たせることになる。しかしながら反射光ビームLR1A〜LR1Eは、ホログラム素子17に形成された回折格子により、予め当該非点収差を相殺するような収差が与えられ、これによりシリンドリカルレンズ18から出射される時点で収差を持たないようになされている。
光検出器19は、図5に示すように、複数の受光部D1〜D4が形成され、さらに各受光部D1〜D4にそれぞれ複数の受光領域が形成されている。
受光部D1は、0次光でなる反射光ビームLR0の光軸に対応する基準点Pを中心に、縦方向及び横方向にそれぞれ2分割された、すなわち格子状に4分割された受光領域D1A、D1B、D1C及びD1Dにより当該反射光ビームLR0を受光するようになされている。因みに受光領域D1A〜D1Dは、いずれもほぼ同等の大きさでなる略正方形状に形成されている。
また受光領域D1A、D1B、D1C及びD1Dは、それぞれの受光量に応じた受光信号S1A、S1B、S1C及びS1Dを生成し、これらをヘッドアンプ22(図2)へ送出するようになされている。
受光部D2は、基準点Pから縦方向に離隔した箇所に設けられており、互いに縦方向に並べて、すなわち基準点Pから縦方向へ延長される仮想的な直線VL1に沿って、受光領域D2A及びD2Bが配置されている。因みに受光領域D2A及びD2Bは、いずれもほぼ同等の大きさでなる略正方形状に形成されている。
受光領域D2A及びD2Bは、反射光ビームLR1A及びLR1Bをそれぞれ受光し、それぞれの受光量に応じた受光信号S2A及びS2Bを生成して、これらをヘッドアンプ22(図2)へ送出するようになされている。
さらに受光部D2には、縦方向に沿って、受光領域D2A及びD2Bにそれぞれ隣接するよう、迷光(詳しくは後述する)を検出するための迷光受光領域D2P及びD2Qが設けられている。この迷光受光領域D2P及びD2Qも、それぞれの受光量に応じた受光信号S2P及びS2Qを生成し、これらをヘッドアンプ22(図2)へ送出するようになされている。
受光部D3は、基準点Pから横方向に離隔した箇所に設けられており、互いに横方向に、すなわち基準点Pから横方向へ延長される仮想的な直線VL2に沿って、受光領域D3C及びD3Dが所定の間隔を持って配置されている。因みに受光領域D3C及びD3Dは、いずれもほぼ同等の大きさでなる略正方形状に形成されている。
これにより光検出器19は、光ビームL1の波長変動や、温度特性、デフォーカス等の様々な要因による反射光ビームLRの移動が生じたような状態でも、例えば受光領域D3Cで受光すべき反射光が、もう一方の受光領域D3Dにかからないようにすることができる。
受光領域D3C及びD3Dは、反射光ビームLR1C及びLR1Dをそれぞれ受光し、それぞれの受光量に応じた受光信号S3C及びS3Dを生成して、これらをヘッドアンプ22(図2)へ送出するようになされている。
さらに受光部D3には、迷光受光領域D3R1及びD3R2が、縦方向から受光領域D3Cを挟み込むよう、受光領域D3Cに隣接して設けられている。
同様に受光部D3には、迷光受光領域D3S1及びD3S2が、縦方向から受光領域D3Dを挟み込むよう、受光領域D3Dに隣接して設けられている。
迷光受光領域D3R1及びD3R2は、それぞれの受光量に応じた迷光受光信号S3R1及びS3R2を生成し、これらをヘッドアンプ22(図2)へ送出するようになされている。
同様に迷光受光領域D3S1及びD3S2は、それぞれの受光量に応じた迷光受光信号S3S1及びS3S2を生成し、これらをヘッドアンプ22(図2)へ送出するようになされている。
受光部D4は、基準点Pから斜め方向(すなわち縦方向及び横方向のほぼ中間となる方向)に離隔した箇所に設けられており、格子状に4分割された受光領域D4A、D4B、D4C及びD4Dにより反射光ビームLR1Eを受光するようになされている。因みに受光部D4における各受光領域の分割方向は、受光部D1における分割方向と約45度の角度をなすようになされている。また受光領域D4A〜D4Dは、いずれもほぼ同等の大きさでなる略正方形状に形成されている。
また受光領域D4A、D4B、D4C及びD4Dは、それぞれの受光量に応じた受光信号S4A、S4B、S4C及びS4Dを生成し、これらをヘッドアンプ22(図2)へ送出するようになされている。
このように光検出器19は、受光部D1〜D4の各受光領域により反射光ビームLR0、LR1A〜LR1Eをそれぞれ受光し、それぞれの受光量に応じた受光信号をそれぞれ生成してヘッドアンプ22へ供給するようになされている。
因みに光ピックアップ7では、集光レンズ16及びホログラム素子17の設計等により、反射光ビームLR1A、LR1B、LR1C、LR1D、LR1Eそれぞれが光検出器19においてほぼ焦点を結ぶようになされている。このため光検出器19の受光部D2、D3及びD4それぞれに形成されるビームスポットは、ほぼ点状に収束している。
[1−3.迷光の照射と受光領域の配置]
ところで光ディスク100は、記録層Y1〜Y3において常にそれぞれ所定の反射率で光ビームを反射すると共にその残りを透過し、記録層Y1を透過した光ビームを記録層Y0において反射するようになされている。
このため図3に示したように、光ディスク装置1により例えば記録層Y0が対象記録層YTとして選定されていたとしても、光ビームL1は常に他の記録層Y1〜Y3によってもそれぞれ反射されることになる。このように、他の記録層Y1〜Y3により光ビームL1の一部が反射されてなる光ビームを層間迷光ビームLNと呼ぶ。
因みに記録層Y0〜Y3と比較して低い反射率を有するディスク表面100Aによっても、僅かではあるが光ビームは反射されることとなる。
層間迷光ビームLNは、反射光ビームLRと同様の光路を通り、ホログラム素子17により回折された上で、最終的に光検出器19に照射される。
しかしながら層間迷光ビームLNは、反射光ビームLRと比較して、対物レンズ8から光ビームL1として出射されてから光検出器19に到達するまでの光路長が相違する。
光ピックアップ7では、反射光ビームLRについて、光検出器19が対象記録層YTの共焦点となるように各種光学部品の配置や光学特性等が定められている。このため層間迷光ビームLNは、反射光ビームLRと同様の分割パターンにより分割され、且つ焦点が外れた状態、いわゆるデフォーカスした状態で光検出器19に照射される。
さらに光ディスク100は、他の記録層Y1〜Y3を複数(この場合は3層)有しており、層間迷光ビームLNの中でも、他の記録層Y1〜Y3のいずれにおいて反射された光ビームであるかにより、光検出器19上でのデフォーカスの状態が相違することになる。
例えば他の記録層Y3、すなわち対象記録層YTである記録層Y0から最も離れた記録層Yにより反射されてなる層間迷光ビームLN(以下これを層間迷光ビームLN3と呼ぶ)は、図6(A)に示すように、光検出器19上で大きく広がった迷光パターンW3を形成する。
この迷光パターンW3は、ホログラム素子17により0次光の迷光パターンW30が形成されると共に、1次光のうち領域17A及び17Bにより迷光パターンW3A及びW3Bが形成され、領域17C1、17C2、17D1及び17D2により迷光パターンW3C1、W3C2、W3D1及びW3D2がそれぞれ形成されている。
ここで光検出器19の受光部D2及びD3は、図6(A)に示したように、照射範囲が最も広がる迷光パターンW3について、迷光パターンW30、迷光パターンW3A及びW3B、並びに迷光パターンW3C1、W3C2、W3D1及びW3D2のいずれもがかからないよう配置されている。
一方、他の記録層Y1、すなわち対象記録層YTである記録層Y0に隣接した記録層Yにより反射されてなる層間迷光ビームLN(以下これを層間迷光ビームLN1と呼ぶ)は、図6(B)に示すように、光検出器19上で狭い範囲に縮まった迷光パターンW1を形成する。
この迷光パターンW1は、迷光パターンW3と対応しており、ホログラム素子17により0次光の迷光パターンW10が形成されると共に、1次光のうち領域17A及び17Bにより迷光パターンW1A及びW1Bが形成され、領域17C1、17C2、17D1及び17D2により迷光パターンW1C1、W1C2、W1D1及びW1D2がそれぞれ形成されている。
光検出器19の受光部D2は、図6(B)に示したように、照射範囲が最も縮まる迷光パターンW1の場合に、ホログラム素子17の領域17A及び17Bにより形成される迷光パターンW1A及びW1Bがかからないよう配置されている。
ここで迷光パターンW1A及びW1Bの間隔u1は、図6(B)に示したように最も狭くなる。このため光検出器19では、受光領域D2A及びD2Bを横方向に並べず縦方向に並べると共に、受光領域D2A、D2B、迷光受光領域D2P及びD2Qの横方向の幅を間隔u1よりも小さくするようになされている。
また光検出器19の受光部D3は、この迷光パターンW1の場合に、ホログラム素子17の領域17C1、17C2、17D1及び17D2により形成される迷光パターンW3C1、W3C2、W3D1及びW3D2がいずれもかからないよう配置されている。
ここで迷光パターンW1C1及びW1C2の間隔u2は、図6(B)に示したように最も狭くなる。このため光検出器19では、受光領域D3C及びD3Dを縦方向に並べず横方向に並べると共に、受光領域D3Cに迷光受光領域D3R1及びD3R2を加えた縦方向の幅と、受光領域D3Dに迷光受光領域D3S1及びD3S2を加えた縦方向の幅とを間隔u2よりも小さくするようになされている。
このように光検出器19の各受光領域は、対象記録層YTからの距離が相違する他の記録層Yにより反射された様々な層間迷光ビームLNにより、様々な大きさの迷光パターンWが形成された際にも、受光部D2及びD3に当該迷光パターンがかからないように配置されている。
[1−4.フォーカス制御及びトラッキング制御]
光ディスク装置1のヘッドアンプ22(図2)は、受光信号S1A、S1B、S1C及びS1D、S2A及びS2B、S3C及びS3D、並びにS4A、S4B、S4C及びS4Dをそれぞれ増幅し、信号処理部4へ供給する。
またヘッドアンプ22は、迷光受光信号S2P及びS2Q、並びにS3R及びS3Sについてもそれぞれ増幅し、信号処理部4へ供給するようになされている。
信号処理部4は、フォーカスエラー信号演算回路4Fによって次の(1)式に従った演算を行うことにより、非点収差法によるフォーカスエラー信号SFEを算出し、これをサーボ制御部3Aのフォーカス制御部3AFへ供給する。
このフォーカスエラー信号SFEは、光ディスク100において、光ビームL1の焦点F1と対象記録層YTとのずれ量を表すことになる。
また信号処理部4は、プルイン信号演算回路4Pによって次の(2)式に従った演算を行うことにより、プッシュプル成分の光量信号としてのプルイン信号PI1を算出し、これをサーボ制御部3Aのフォーカス制御部3AFへ供給する。
このプルイン信号PI1は、1次光でなる反射光ビームLR1のプッシュプル成分を多く含む反射光ビームLR1A及びLR1Bの光量に相当する。
また信号処理部4は、トラッキングエラー信号の生成については、DPD(Differential Phase Detection)法等の位相差法又は1ビームプッシュプル法のいずれかを用いるようになされている。
具体的に信号処理部4は、光ディスク100の種類に応じて、当該光ディスク100が記録層Yにピット列が予め形成されたBD−ROM(Read Only Memory)であった場合には位相差法を用いる。また信号処理部4は、当該光ディスク100が記録可能なBD−R(Recordable)又はBD−RE(Rewritable)であった場合には、1ビームプッシュプル法を用いる。
信号処理部4は、1ビームプッシュプル法を用いる場合、トラッキングエラー信号演算回路4Tによって次の(3)式に従った演算を行うことによりトラッキングエラー信号STEを算出する。さらに信号処理部4は、当該トラッキングエラー信号STEをサーボ制御部3Aのトラッキング制御部3ATへ供給する。
このトラッキングエラー信号STEは、光ディスク100において、光ビームL1の焦点F1と対象記録層YTにおける所望のトラックとのずれ量を表すことになる。
因みに(3)式において、係数αは所定の係数を表している。また(S2A−S2B)の項は、プッシュプル成分(すなわち光ビームL1の焦点F1と所望のトラックとの相対的な変位)にレンズシフト成分(すなわち対物レンズ8のトラッキング方向への変位)が加算された値に相当する。さらにα×(S3C−S3D)の項は、レンズシフト成分の値に相当する。
すなわち(3)式では、レンズシフト成分が加算されたプッシュプル成分の値から、レンズシフト成分のみを減算することにより、プッシュプル成分を算出している。
一方信号処理部4は、位相差法を用いる場合、受光信号S1A、S1B、S1C及びS1Dを基に、次に示す(4)式に従った演算処理を行うことによりトラッキングエラー信号STEを生成し、これをサーボ制御部3Aのトラッキング制御部3ATへ供給する。
因みに(4)式では、演算子φは信号位相を表しており、式全体としては位相差を算出している。
サーボ制御部3Aのフォーカス制御部3AF(図2)は、フォーカスエラー信号SFE及びプルイン信号PI1を基にフォーカス駆動信号SFDを生成し、これをフォーカスアクチュエータ9Fへ供給する。フォーカスアクチュエータ9Fは、フォーカス駆動信号SFDに基づき対物レンズ8をフォーカス方向へ駆動する(以下これをフォーカス制御とも呼ぶ)。
ここで光ディスク装置1は、実際のフォーカス制御の開始に先立ち、フォーカスジャンプを行い光ビームL1の焦点F1を対象記録層YTの近傍まで移動させる必要がある(詳しくは後述する)。
光ディスク装置1は、フォーカス制御を繰り返し行う(すなわちフィードバック制御を行う)ことにより、光ビームL1の焦点F1と対象記録層YTとのフォーカス方向に関するずれ量を所定の範囲内に収めていく。
またサーボ制御部3Aのトラッキング制御部3AT(図2)は、トラッキングエラー信号STEを基に、トラッキング駆動信号STD1を生成し、これをトラッキングアクチュエータ9Tへ供給する。トラッキングアクチュエータ9Tは、トラッキング駆動信号STD1に基づき対物レンズ8をトラッキング方向へ駆動する(以下これをトラッキング制御と呼ぶ)。
光ディスク装置1は、このトラッキング制御についても繰り返し行う(すなわちフィードバック制御を行う)ことにより、光ビームL1の焦点F1と対象記録層YTにおける所望のトラックとのトラッキング方向に関するずれ量を任意の目標値に収束させていく。
かくして光ディスク装置1は、フォーカス制御及びトラッキング制御を行うことにより、光ビームL1の焦点F1を対象記録層YTにおける所望のトラックに合わせるようになされている。
また光ディスク装置1は、信号処理部4の再生信号演算回路4Rにおいて、次の(5)式に従って受光信号S1A〜S1Dを加算することにより再生RF信号SRFを算出するようになされている。
この再生RF信号SRFは、0次光でなる反射光ビームLR0全体の光量に相当すると共に、光ディスク100に記録された信号を表している。その後再生信号演算回路4Rは、再生RF信号SRFに対し所定の復調処理や復号化処理等を施すことにより、光ディスク100に記録されている情報を再生するようになされている。
[1−5.フォーカスエラー信号及びプルイン信号のシミュレーション]
以下では、光ピックアップ7が対物レンズ8をフォーカス方向に駆動し、光ビームL1の焦点F1を各記録層Yの合焦位置を通過するよう移動させる(フォーカスサーチを行う)ときのプルイン信号PI0とフォーカスエラー信号SFEとのシミュレーション結果について説明する。
本シミュレーションで用いる光ディスク100の記録層Y0〜Y3は、図7(A)に示すカバー層厚みを有している。カバー層厚みとは、図3に示した光ディスク100のディスク表面100Aから所定の記録層Yまでの距離を示している。
また光ディスク100の各記録層Y0〜Y3の間には図7(B)に示す厚みのスペーサが設けられている。
図7(C)に示すようにホログラム素子17に設けられた各領域17A〜17Eによる0次光量比は74.9[%]とする。0次光量比とは、ホログラム素子17に入射された反射光ビームLRの光量に対する、ホログラム素子17を直進した0次光でなる反射光ビームLR0の光量の割合を示している。
また図7(D)に示すようにホログラム素子17に設けられた各領域17A〜17Eによる1次光量比は10.2[%]とする。1次光量比とは、ホログラム素子17に入射された反射光ビームLRの光量に対する、ホログラム素子17により回折された1次光でなる反射光ビームLR1の光量の割合を示している。
上述したように本実施の形態による光ディスク装置1は、プルイン信号演算回路4Pが(2)式に従った演算を行うことによりプルイン信号PI1を算出する。一方、本シミュレーションでは次の(6)式に従って受光信号S1A〜S1Dを加算することにより、0次光でなる反射光ビームLR0全体の光量に相当するプルイン信号PI0を算出した。
図8は、記録層Y0からの反射光ビームLRのうちホログラム素子17を直進した0次光でなる反射光ビームLR0が受光部D1に照射され生成された受光信号S1A、S1B、S1C及びS1Dによるフォーカスエラー信号SFE及びプルイン信号PI0の特性曲線を示す。
同様に、記録層Y1、Y2、Y3及びディスク表面100Aからの反射光ビームLRのうちホログラム素子17を直進した0次光でなる反射光ビームLR0によるフォーカスエラー信号SFE及びプルイン信号PI0をそれぞれ図9、図10、図11及び図12に示す。
図8〜図12において、横軸は記録層Y0の合焦位置を0[μm]とし、当該合焦位置からフォーカス方向への距離をデフォーカス量としている。また縦軸は信号レベルを示す相対値である。
図8〜図12に示す本シミュレーションにおいて光ディスク装置1は、記録層Y0を対象記録層YTとしている。このとき球面収差制御部3ASは、光ビームL1の焦点F1が記録層Y0に合っている状態(合焦状態)における球面収差を補正するよう球面収差補正部14を設定する。因みに図8〜図12に示したフォーカスエラー信号SFE及びプルイン信号PI0は、他層からの迷光の影響を受けていないものとなっている。
ここで、上述した非点収差法について、記録層Y0に光ビームL1の焦点F1を合わせる場合を例としてフォーカスエラー信号SFEの信号波形と共に説明する。
光ビームL1の焦点F1が記録層Y0の合焦状態にあるときは、図13(B)に示すように反射光ビームLR0が受光領域D1A、D1B、D1C及びD1Dに均等に照射される。このため(1)式よりフォーカスエラー信号SFEの値は0レベルとなる。従ってフォーカスエラー信号SFEは、シミュレーション結果では図8に示すデフォーカス量0[μm]の部分の信号レベルとなる。
一方、記録層Y0の合焦状態から対物レンズ8が記録層Y0に近接すると、図13(A)に示すように、図13(B)と比べ反射光ビームLR0が受光領域D1A及びD1Cに照射される面積が小さくなり、受光領域D1B及びD1Dに照射される面積が大きくなる。このため(1)式よりフォーカスエラー信号SFEの値はマイナスとなる。従ってフォーカスエラー信号SFEは、シミュレーション結果では図8に示すデフォーカス量の0〜約−5[μm]の部分の信号レベルとなる。
また一方、記録層Y0の合焦状態から対物レンズ8が記録層Y0から離隔すると、図13(C)に示すように、図13(B)と比べ反射光ビームLR0が受光領域D1A及びD1Cに照射される面積が大きくなり、受光領域D1B及びD1Dに照射される面積が小さくなる。このため(1)式よりフォーカスエラー信号SFEの値はプラスとなる。従ってフォーカスエラー信号SFEは、シミュレーション結果では図8に示すデフォーカス量の0〜約5[μm]の部分の信号レベルとなる。
このようにフォーカスエラー信号SFEは、合焦位置からある程度のデフォーカス量まで、光ビームL1の焦点F1から対象記録層YTの合焦位置までのデフォーカス量に比例した信号を示す。これによりフォーカスエラー信号SFEは、光ビームL1の焦点F1が対象記録層YTを通過する際に略S字状の曲線を描く。以下、フォーカスエラー信号SFEの略S字状の曲線が0レベルと交差する点をゼロクロス点とも呼ぶ。
記録層Y1、Y2、Y3及びディスク表面100Aについても同様に、図9〜図12に示したようにフォーカスエラー信号SFEのゼロクロス点が、各記録層Y及びディスク表面100Aの合焦位置となる。
このように光ディスク装置1は、非点収差法によりフォーカスエラー信号SFEを算出している。
ところで本シミュレーションにおいて光ディスク装置1は、記録層Y0を対象記録層YTとしている。このとき球面収差制御部3ASは、記録層Y0の合焦状態における球面収差を補正するよう球面収差補正部14を設定する。
このため球面収差補正部14は、光ビームL1の焦点F1が記録層Y0から離隔するにつれ球面収差を補正できなくなっていき、光ディスク100の記録層Yに照射される光ビームL1の集光スポットを極端に劣化させていく。これにより図9〜図12に示したように、検出されるフォーカスエラー信号SFEの振幅は図8と比較して小さくなっていく。
また(6)式に示したように、プルイン信号PI0は反射光ビームLR0の光量に応じた信号レベルとなる。
このためプルイン信号PI0は光ビームL1の焦点F1が記録層Yやディスク表面100A等の所定の反射率を有する層に近接したとき、その信号レベルが増大する。これにより図8〜図12に示したように、フォーカスエラー信号SFEのゼロクロス点付近において、プルイン信号PI0はその極大値を持つ。
以上のように、プルイン信号PI0は記録層Y及びディスク表面100Aの合焦位置近傍においてその極大値を持つ。このため光ディスク装置1は、プルイン信号PI0の極大値から、記録層Yのおおよその位置を判断することができる。これにより光ディスク装置1は、フォーカスジャンプを行う際にプルイン信号PI0を利用することができる。
[1−6.シミュレーション結果によるフォーカスジャンプ及びフォーカス制御]
図8〜図12におけるフォーカスエラー信号SFE及びプルイン信号PI0を足し合わせると、図14に示すフォーカスエラー信号SFE及びプルイン信号PI0が得られた。
プルイン信号PI0には、記録層Y0〜Y3及びディスク表面100Aの合焦位置近傍における極大値が5箇所現れており、フォーカスエラー信号SFEには記録層Y0〜Y3及びディスク表面100Aの合焦位置におけるゼロクロス点が5箇所現れている。またプルイン信号PI0には、各記録層Y0〜Y3の合焦位置近傍における極大値とそれぞれ隣接する記録層Yの極大値との間に、極小値が3箇所現れている。
上述したように本シミュレーションにおいて光ディスク装置1は、記録層Y0を対象記録層YTとしており、球面収差制御部3ASは、記録層Y0の合焦状態における球面収差を補正するよう球面収差補正部14を設定している。
図14は、記録層Y0の合焦状態における球面収差を補正された場合の記録層Y0〜Y3及びディスク表面100Aにおけるフォーカスエラー信号SFE及びプルイン信号PI0を足し合わせたものであるため、他の記録層Yにより反射される層間迷光ビームLNの影響が現れたものとなっている。
因みに上述したようにフォーカスエラー信号SFEは(1)式に従った演算により算出される。このため、図6に示したように受光領域D1A、D1B、D1C及びD1Dそれぞれに迷光パターンWがかかっていても、フォーカスエラー信号SFEは、(1)式により受光信号S1A、S1B、S1C及びS1Dに含まれる迷光の影響はキャンセルされたものとなる。
ここで、図14に示したフォーカスエラー信号SFE及びプルイン信号PI0に基づき、光ディスク装置1が行う記録層Y0から記録層Y1へのフォーカスジャンプ及びフォーカス制御について説明する。
フォーカス制御部3AFは、記録層Y0から記録層Y1へのフォーカスジャンプを行う際、キックパルスをフォーカス駆動信号SFDとしてフォーカスアクチュエータ9Fへ供給し対物レンズ8を記録層Y1方向へ大きく移動させる。これによりフォーカス制御部3AFは光ビームL1の焦点F1を現在合焦している記録層Y0の合焦位置から次の記録層Y1の合焦位置方向へ移動させる。
フォーカス制御部3AFは上記フォーカスジャンプにより対物レンズ8を大きく移動させながら、プルイン信号PI0の変化率を測定する。
続いてフォーカス制御部3AFは当該変化率を基に、さらにフォーカスアクチュエータ9Fへキックパルスを供給するか、又はブレーキパルスをフォーカス駆動信号SFDとしてフォーカスアクチュエータ9Fに供給して対物レンズ8の移動を止めるかの判断を行う。
具体的にはフォーカス制御部3AFは、プルイン信号の信号レベルが小さくなってから大きくなるよう変化している場合、記録層Y0と記録層Y1との間に光ビームL1の焦点F1があると判断して、さらにフォーカスアクチュエータ9Fへキックパルスを供給する。
このためプルイン信号PI0における、現在合焦している記録層Yによる極大値と次の対象記録層YTによる極大値との間の、極小値付近の変化率(すなわち微分量)が大きいほど、光ディスク装置1は精度良くフォーカスジャンプを行うことができる。
ここで、プルイン信号PI0における対象記録層YTの合焦位置近傍に現れる極大値に対する、対象記録層YTに隣接する記録層Yとの間に現れる極小値の割合を極小値割合MRとする。プルイン信号PI0では、極小値割合MRが低いほど、当該極小値付近の変化率は大きくなる。
フォーカスジャンプにより記録層Y1の合焦位置近傍に光ビームL1の焦点F1が位置すると、フォーカス制御部3AFはフォーカス制御を行って対物レンズ8を細かく移動させ、光ビームL1の焦点F1を記録層Y1に合焦させる。
このときフォーカス制御部3AFは、プルイン信号PI0の信号レベルが所定の閾値(例えば320レベル)以上である状態において、フォーカスエラー信号SFEのゼロクロス点を、記録層Y1に合焦したと判断する。
またフォーカス制御部3AFは、プルイン信号PI0の信号レベルが所定の閾値(例えば320レベル)未満の場合、光ビームL1の焦点F1は記録層Y1の合焦位置近傍にはないと判断する。
よってプルイン信号PI0は、フォーカス制御部3AFがフォーカスジャンプ及びフォーカス制御に利用するためには、極大値では所定の閾値以上であり、極小値では所定の閾値未満である必要がある。因みにプルイン信号における所定の記録層Yの合焦位置近傍に現れる極大値と、当該記録層Yに隣接する記録層Yとの間に現れる極小値との信号レベルの差が大きい場合、極小値割合MRは低いものとなる。
このように光ディスク装置1は、プルイン信号PI0を補助信号として用いながら、フォーカスエラー信号SFEに基づきフォーカスジャンプ及びフォーカス制御を行う。
ところで図14は、図8〜図12におけるフォーカスエラー信号SFE及びプルイン信号PI0を足し合わせたものであるため、他の記録層Yにより反射される層間迷光ビームLNの影響が現れたものとなっている。
すなわち、受光部D1(図6)にはホログラム素子17により回折されずに直進した0次光でなる反射光ビームLR0が照射される。それと共に層間迷光ビームLNのうちホログラム素子17により回折されずに直進した、層間迷光ビームLNの0次光も同様に受光部D1に照射されてしまう。
層間迷光ビームLNは反射光ビームLRと同じ経路を通るため、層間迷光ビームLNがホログラム素子17を直進した0次光は、反射光ビームLRの0次光でなる反射光ビームLR0と共に同じ受光部D1に照射する。
本実施の形態による光ピックアップ7においては、このような層間迷光ビームLNの0次光の受光部D1への照射を避けることは困難である。また、層間迷光ビームLNが反射された記録層Yと対象記録層YTとの間隔である層間隔が狭いほど、図6に示したように受光部D1に照射される迷光層間ビームLNの光量は多くなるため、当該層間迷光ビームLNの影響はプルイン信号PI0に現れる。
このためプルイン信号PI0の各記録層Yによるピーク波形の一部が、隣接する記録層Yにおけるピーク波形の一部と重なってしまう。特に記録層Y2と記録層Y3の間のスペーサ厚みは12[μm](図7)と狭いため、記録層Y2及び記録層Y3については極大値の位置が判別し難くなっている。
すなわち、上述したように、フォーカス制御を行う際にフォーカスエラー信号SFEの補助信号として用いるプルイン信号PI0の信号レベルの閾値を320レベルと設定した場合、記録層Y2と記録層Y3との間では、常にプルイン信号PI0の信号レベルは当該閾値を上回ってしまい、フォーカス制御を行う際の判断基準とは成り得ない信号となってしまう。
このようにプルイン信号PI0の極小値の信号レベルは極大値に対して十分に小さくならないため、光ディスク装置1はプルイン信号PI0の極大値の位置を判別できなくなり、記録層Yのおおよその位置を判断し難くなる。
またプルイン信号PI0の極小値の信号レベルは極大値に対して十分に小さくならないため、極大値に隣接する極小値の変化率も小さくなる。このため光ディスク装置1は、光ビームL1の焦点F1が記録層Yと隣接する記録層Yとの間にあるか否かを判断し難くなる。
これにより光ディスク装置1は、プルイン信号PI0をフォーカスジャンプ及びフォーカス制御の際の補助信号として使うことが困難になってしまう。
[1−7.本実施の形態によるフォーカスジャンプ及びフォーカス制御]
以上は、0次光でなる反射光ビームLR0が受光部D1の受光領域D1A、D1B、D1C及びD1Dに照射されることにより生成された受光信号S1A、S1B、S1C及びS1Dを足し合わせた和信号としてのプルイン信号PI0について説明した。
次に、本実施の形態における、受光信号S2AとS2Bとを足し合わせた和信号としてのプルイン信号PI1を図15に示す。受光信号S2A及びS2Bは、1次光でなる反射光ビームLR1のうちプッシュプル成分を含む反射光ビームLR1A及びLR1Bが受光領域D2A及びD2Bに照射されることにより生成された信号である。
また、図15に示したプルイン信号PI1において、光ディスク装置1は図14と同様に記録層Y0を対象記録層YTとしており、球面収差制御部3ASは、記録層Y0の合焦状態における球面収差を補正するよう球面収差補正部14を設定する。
図6に示したように受光領域D2A及びD2Bは、層間迷光ビームLNがホログラム素子17を直進した0次光が照射されない位置に配置されている。このため受光信号S2A及びS2Bは、層間迷光ビームLNの0次光の影響を回避した信号となっている。
また受光領域D2A及びD2Bは、照射範囲が最も縮まる、隣接する記録層Yからの迷光パターンW1A及びW1Bがかからないように配置されている。このため受光信号S2A及びS2Bは、迷光パターンW1A及びW1Bの影響を回避した信号となっている。
反射光ビームLR1A及びLR1Bは、反射光ビームLR0と同様に反射光ビームLRに基づくものであるため、図15に示すように、反射光ビームLR1A及びLR1Bによる受光信号S2A及びS2Bのプルイン信号PI1は、記録層Y0に対するプルイン信号PI0と同じデフォーカス量でその極大値が現れる。
図15に示したように、プルイン信号PI1は、プルイン信号PI0と比べ、所定の記録層Yの合焦位置近傍における極大値と、当該記録層Yに隣接する記録層Yとの間における極小値との信号レベルの差が遥かに大きくなっており、極小値割合MRが低く抑えられている。
特にスペーサ厚みが狭い記録層Y2と記録層Y3との間においてもプルイン信号PI1は信号レベルが極小値で約12レベルまで落ちており、当該極小値に隣接した極大値の約17レベルと比べ、十分に極小値割合MRが低く抑えられている。
仮に、フォーカス制御を行う際にフォーカスエラー信号SFEの補助信号として用いるプルイン信号PI1の信号レベルの閾値を14レベルと設定すると、記録層Y2と記録層Y3との間の極小値は当該閾値を下回っている。
また極小値割合MRが低く抑えられていることにより、プルイン信号PI1は、図14に示したプルイン信号PI0と比べ、極小値付近の変化率が遥かに大きくなっている。
ところで図7に示したように、ホログラム素子17は0次光量比が74.9[%]であり、1次光量比は10.2[%]である。このため受光領域D2A及びD2Bが受光する光量は、受光部D1の受光領域D1A、D1B、D1C及びD1Dが受光する光量よりも小さくなる。これによりプルイン信号PI1は、プルイン信号PI0よりも信号レベルが小さくなる。
これに対して光ディスク装置1は、ホログラム素子17の各領域における回折効率の調整、ヘッドアンプ22による受光信号の増幅率の増加などにより十分なプルイン信号PI1の信号レベルを得ることができる。
図16には、対象記録層YTを記録層Y0とし球面収差制御部3ASにより記録層Y0合焦状態における球面収差を補正するよう球面収差補正部14を設定したときのフォーカスエラー信号SFE及びプルイン信号PI0のシミュレーション結果(図14)とプルイン信号PI1(図15)とを示す。
図17〜図19は、対象記録層YTをそれぞれ記録層Y1〜Y3とし、球面収差制御部3ASにより各記録層Y1〜Y3合焦状態における球面収差を補正するよう球面収差補正部14を設定したときのフォーカスエラー信号SFE及びプルイン信号PI0のシミュレーション結果と、プルイン信号PI1とを示す。
ここで横軸のデフォーカス量は、対象記録層YTの合焦位置を0[μm]とし、左側の縦軸はプルイン信号PI0による信号レベルの相対値を、右側の縦軸はプルイン信号PI1による信号レベルの相対値を示す。
図16〜図19に示したように、どの記録層Yに合焦する際の球面収差を補正するように球面収差補正部14が設定されていても、プルイン信号PI0は、各極大値の間で信号レベルが緩やかに変化し、各極大値に対して極小値の信号レベル差が小さくなっており、極小値割合MRが高くなってしまっている。これを換言すれば、プルイン信号PI0は極大値同士の分離が困難な状態と言える。
それに対してプルイン信号PI1は、どの記録層Yに球面収差補正を設定していても、互いに隣接する極大値と極小値との間の信号レベル差が十分に大きな値となっており、極小値割合MRが低く抑えられている。このためプルイン信号PI1は、各記録層Yの極大値同士が分離されているのが分かる。
これにより光ディスク装置1は、記録層Yのおおよその位置を精度良く判断することができ、また光ビームL1の焦点F1が記録層Yと隣接する記録層Yとの間にあるか否かも精度良く判断することができる。かくして光ディスク装置1は、当該プルイン信号PI1をフォーカスエラー信号SFEの補助信号として用いることができる。
[1−8.スペーサ厚みについてのシミュレーション]
上述したように、プルイン信号PI0は光ディスク100の層間隔が狭くなるほど層間迷光ビームLNの影響を受け、その極小値が下がらなくなり、極大値と極大値とがつながっていってしまう。
そこで、層間隔を変化させた場合におけるフォーカスエラー信号SFE、プルイン信号PI0及びプルイン信号PI1のシミュレーションについて説明する。
具体的には、それぞれ等しい反射率でなる記録層Y0及び記録層Y1の2層の記録層Yを有する光ディスク100について考える。ここで、例えば記録層Y0が記録済みであり、記録層Y1が未記録であったとすると、記録層Y0と記録層Y1との反射率の差は約50[%]となる。
このとき、記録層Yの記録済み・未記録の違いだけで反射率が50[%]変化するため、プルイン信号の極小値割合MRが50[%]未満でないと、記録済み・未記録による反射光ビームの光量の変化が、プルイン信号の極大値と極小値による反射光ビームの光量の変化を上回ってしまう。
この場合、光ディスク装置1は、記録層Yに対する焦点F1が移動することによりプルイン信号が変化したのか、若しくは記録済み・未記録の違いで反射率が変化して反射光ビームの光量が変化したのかを判断できなくなる。
このためプルイン信号の極小値割合MRは50[%]未満である必要があり、2層の記録層における層間隔、すなわちスペーサ厚みが狭くなっても、極小値割合MRは低い方が望ましい。
図20〜図24に、記録層Y0及び記録層Y1の2層の記録層Yを有する光ディスク100におけるフォーカスエラー信号SFE、プルイン信号PI0及びプルイン信号PI1のシミュレーション結果を示す。
図20〜図24は、記録層Y0と記録層Y1との間のスペーサの厚みをそれぞれ25、22、20、18、16[μm]とした。
図25は、図20〜図24に示したシミュレーション結果をまとめた、スペーサ厚みによるプルイン信号PI0及びプルイン信号PI1のそれぞれの極小値割合MRを示す。因みに図20〜図24に示したようにプルイン信号の極大値は2箇所現れるが、これら極大値の信号レベルを平均した値に対する極小値の割合を極小値割合MRとした。
図25より、プルイン信号PI0とプルイン信号PI1とは共に、スペーサ厚みが狭くなるにつれて、極小値割合MRが徐々に増大していく。プルイン信号PI0は、スペーサ厚みが21[μm]以下になると、極小値割合MRが50[%]以上となる。
このため光ディスク装置1は、プルイン信号PI0を用いた場合、スペーサ厚みが21[μm]以下になるとプルイン信号PI0の極大値の位置を判別できなくなり、記録層Yのおおよその位置を判断し難くなる。
これにより光ディスク装置1は、スペーサ厚みが21[μm]以下になるとプルイン信号PI0をフォーカスジャンプ及びフォーカス制御の補助信号として用いることができなくなる。
一方プルイン信号PI1は、スペーサ厚みが21[μm]における極小値割合MRは約0[%]である。またスペーサ厚みが16[μm]とさらに狭くなっても、極小値割合MRは約10[%]に抑えられている。
因みに一般的な2層のBDにおける光ディスクのスペーサ厚みは約25[μm]である。スペーサ厚みが25[μm]の場合、プルイン信号PI0では、極小値割合MRは約40[%]となり50[%]に近い値となるが、プルイン信号PI1では、極小値割合MRは約0[%]となる。
このため、本実施の形態における光ディスク100のように4層の記録層Yを有しておらず、2層の記録層を有する光ディスクに対しても、プルイン信号PI0よりもプルイン信号PI1を用いる方が、光ディスク装置1はより安定的にフォーカスジャンプ及びフォーカス制御を行うことができる。
このようにプルイン信号PI1はプルイン信号PI0と比べて、スペーサ厚みが狭くなっていっても極小値割合MRを低く抑えられている。これにより光ディスク装置1は、プルイン信号PI1を用いることで、より安定的にフォーカスジャンプ及びフォーカス制御を行うことができる。
[1−9.動作及び効果]
以上の構成において光ディスク装置1の光ピックアップ7は、光ビームL1を光ディスク100へ照射し、当該光ディスク100により反射されてなる反射光ビームLR及び層間迷光ビームLNをホログラム素子17に入射させる。
ホログラム素子17は、0次光でなる反射光ビームLR0と層間迷光ビームLNの0次光とをほぼ直進させると共に、領域17A〜17E(図4(A))ごとに、1次光でなる反射光ビームLR1と層間迷光ビームLNの1次光とを回折させる。
このときホログラム素子17は、反射光ビームLR1A及びLR1Bをそれぞれ縦方向へ回折させ、反射光ビームLR1C及びLR1Dをそれぞれ横方向へ回折させ、さらに反射光ビームLR1Eを斜め方向へ回折させる。
これに応じて光検出器19は、受光部D1の受光領域D1A〜D1Dにより反射光ビームLR0及び層間迷光ビームLNの0次光を受光し、受光信号S1A〜S1Dを生成する。
信号処理部4は、ヘッドアンプ22により増幅された受光信号S1A〜S1Dを基に、フォーカスエラー信号演算回路4Fにより(1)式に従ってフォーカスエラー信号SFEを算出する。
また光検出器19は、層間迷光ビームLNの1次光の迷光パターンWを避けるよう配置した受光部D2の受光領域D2A及びD2Bにより、反射光ビームLR1A及びLR1Bをそれぞれ受光し、受光信号S2A及びS2Bを生成する。
サーボ制御部3Aは、フォーカス制御部3AFによってフォーカスエラー信号SFE及びプルイン信号PI1を基にフォーカス駆動信号SFDを生成しフォーカスアクチュエータ9Fへ供給することにより、フォーカスジャンプ及びフォーカス制御を行う。
信号処理部4は、ヘッドアンプ22により増幅された受光信号S2A及びS2Bを基に、プルイン信号演算回路4Pにより(2)式に従ってプルイン信号PI1を算出する。
このためプルイン信号演算回路4Pは層間迷光ビームLNの影響を避けたプルイン信号PI1を算出することができる。
これにより光ディスク装置1は、層間迷光ビームLNの影響を受けたプルイン信号PI0と比べ極小値割合MRが低く抑えられたプルイン信号PI1を得ることができる。
また極小値割合MRが低く抑えられていることにより、光ディスク装置1は記録層Yによる極大値と隣接する記録層Yによる極大値との間の極小値付近の変化率が、プルイン信号PI0と比べて大きいプルイン信号PI1を得ることができる。
このため光ディスク装置1は、プルイン信号PI1が極大値を取る位置を、記録層Yのおおよその位置と判断することができる。
かくして光ディスク装置1は光ディスク100の層間隔が狭くなっても精度良くフォーカスジャンプを行うことができる。
以上の構成によれば、光ディスク装置1は、0次光でなる反射光ビームLR0に基づきフォーカスエラー信号SFEを生成する。また光ディスク装置1は、1次光のうち反射光ビームLR1A及びLR1Bを、層間迷光ビームLNの迷光パターンWを避けるよう配置された受光部D2の受光領域D2A及びD2Bによりそれぞれ受光し、プルイン信号PI1を生成する。続いて光ピックアップ7は、フォーカスエラー信号SFE及びプルイン信号PI1に基づき、フォーカスジャンプ及びフォーカス制御を行う。これにより光ディスク装置1は、複数の記録層Yからの層間迷光ビームLNによりそれぞれ形成される迷光パターンWの影響を排除したプルイン信号PI1を生成でき、精度良くフォーカスジャンプ及びフォーカス制御を行うことができる。
<2.他の実施の形態>
なお上述した実施の形態においては、受光信号S2A及びS2Bを足し合わせた和信号をプルイン信号PI1とする場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、受光信号S2A又はS2Bの一方の受光信号のみをプルイン信号PI1としても良い。但し受光信号S2A及びS2Bを足し合わせた方がどちらか一方のみより信号レベルは大きくなるため、一方の受光信号のみを用いる場合と比較して、精度良くフォーカスジャンプ及びフォーカス制御を行うことができる。
また上述した実施の形態においては、1次光でなる反射光ビームLR1のうちプッシュプル成分を多く含む反射光ビームLR1A及びLR1Bが照射された受光領域D2A及びD2Bによる受光信号をプルイン信号PI1とする場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、反射光ビームLR1のうち、レンズシフト成分を多く含む反射光ビームLR1C及びLR1Dが照射された受光領域D3C及びD3Dによる受光信号をプルイン信号PI1としても良い。
但し図4に示したホログラム素子17の構成のように、反射光ビームLR1A及びLR1Bを回折させる領域17Aと17Bとを足し合わせた面積の方が、反射光ビームLR1C及びLR1Dを回折させる領域17C及び17C2と17D1及び17D2とを足し合わせた面積よりも大きくなっている。
このため受光領域D2A及びD2Bに照射される光量の方が受光領域D3C及びD3Dに照射される光量よりも多くなる。これにより受光信号の信号レベルも大きくなり、受光信号S2A及びS2Bを用いる場合と比較して、受光信号S3C及びS3Dを用いる場合よりも、精度良くフォーカスジャンプ及びフォーカス制御を行うことができる。
また、受光領域D3C及びD3Dによる受光信号を用いる場合も受光領域D2A及びD2Bと同様に、受光信号S3C又はS3Dの一方の受光信号のみをプルイン信号PI1としても良い。但し受光信号S3C及びS3Dを足し合わせた方がどちらか一方のみより信号レベルは大きくなるため、一方の受光信号のみを用いる場合と比較して、精度良くフォーカスジャンプ及びフォーカス制御を行うことができる。
また、受光領域D2A及びD2Bによる受光信号に、受光領域D3C及びD3Dによる受光信号を加えてプルイン信号PI1としても良い。
この場合、受光領域D2A及びD2Bによる受光信号のみの場合よりも信号レベルが上がるため、光ディスク装置1は精度良くフォーカスジャンプ及びフォーカス制御を行うことができる。
さらに上述した実施の形態においては、光検出器19の基準点Pから縦方向に離隔した箇所に受光部D2を設け、基準点Pから横方向に離隔した箇所に受光部D3を設ける場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、光検出器19は種々の受光領域を設けるようにしても良い。この場合光検出器19は、反射光ビームLR1の中央部分が除かれることにより当該中央部分による迷光の照射を回避し、かつ反射光ビームLR1の他の部分に起因した迷光の照射範囲外に受光領域を配置すれば良い。
要は光ディスク装置1が、層間迷光ビームLNによる迷光パターンWが照射されないように種々の位置に配置された種々の形状や大きさでなる任意数の受光領域により得られた受光信号をプルイン信号として用いれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、ホログラム素子17により反射光ビームLRを回折させる場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、光ビームを分離可能な種々の光学素子を用いても良い。この場合、光検出器19における所定の受光領域に対し、反射光ビームLRを照射させ、層間迷光ビームLNの照射を回避できれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、検出器19における受光部D2及びD3は層間迷光ビームLNの照射を回避するように配置される場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、ある程度までの層間迷光ビームLNであれば、光検出器19における受光部D2及びD3に照射されてしまっても良い。この場合例えば、光ディスクの全ての記録層に対するフォーカスサーチを行って得られたプルイン信号において、全ての記録層における極大値の、隣接する極小値に対する極小値割合MRが50[%]未満であれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、受光部D2及びD3には、層間迷光ビームLNの迷光パターンWが照射されない場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば対物レンズ8のレンズシフトが生じて層間迷光ビームLNがこれに連れて動き、当該層間迷光ビームLNの迷光パターンWが受光部D2又はD3に照射されても良い。
この場合、例えば受光領域D2Aに迷光パターンW1Bが照射された場合、迷光受光領域D2Pにも迷光パターンW1Bが照射されているので、当該迷光受光領域D2Pによる受光信号S2Pを用いて、受光領域D2Aに照射された迷光パターンW1Bの影響をキャンセルすれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、フォーカスエラー信号演算回路4Fが非点収差法によりフォーカスエラー信号SFEを算出する場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、SSD(Spot Size Detection)法など、種々のフォーカスエラー信号算出方法を用いてもよい。その場合、種々のフォーカスエラー信号算出方法に対応した光検出器を用いれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、4層の記録層Yを有する光ディスク100に対してフォーカスジャンプ及びフォーカス制御を行う場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、任意数の記録層Yを有する光ディスクを用いる場合に適用しても良い。この場合、記録層Yの層数が多く、記録層Y間のスペーサ厚みが狭くなるほど、本発明の効果を顕著に奏する。
さらに上述した実施の形態においては、光源としてのレーザダイオード11と、対物レンズとしての対物レンズ8と、レンズ移動部としての2軸アクチュエータ9と、集光レンズとしての集光レンズ16と、光分離素子としてのホログラム素子17と、光検出器としての光検出器19とによって光ピックアップとしての光ピックアップ7を構成する場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の回路構成でなる光源と、対物レンズと、レンズ移動部と、集光レンズと、光分離素子と、光検出器とによって光ピックアップを構成するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、光源としてのレーザダイオード11と、対物レンズとしての対物レンズ8と、レンズ移動部としての2軸アクチュエータ9と、集光レンズとしての集光レンズ16と、光分離素子としてのホログラム素子17と、光検出器としての光検出器19と、信号処理部としての信号処理部4と、サーボ制御部としてのサーボ制御部3Aとによって光ディスク装置としての光ディスク装置1を構成する場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の回路構成でなる光源と、対物レンズと、レンズ移動部と、集光レンズと、光分離素子と、光検出器と、信号処理部と、サーボ制御部とによって光ディスク装置を構成するようにしても良い。