JP5255515B2 - 絶縁フィルム、粗化絶縁硬化フィルム、積層体及び積層体の製造方法 - Google Patents

絶縁フィルム、粗化絶縁硬化フィルム、積層体及び積層体の製造方法 Download PDF

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本発明は、例えば、プリント配線板などの電子部品の絶縁層を形成するために用いられる絶縁フィルムに関し、より詳細には、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤を含むエポキシ樹脂組成物を用いた絶縁フィルム、並びに該絶縁フィルムを用いた粗化絶縁硬化フィルム、積層体及び積層体の製造方法に関する。
近年、プリント配線板の絶縁層を形成するために、絶縁フィルムが用いられている。
プリント配線板の絶縁層を形成するための絶縁フィルムの一例が、下記の特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の絶縁フィルムは、バインダーポリマー、エポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物を用いて形成されている。このエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤、フィラー、難燃剤及びレベリング剤等の添加剤を含有させることができる。
特開2007−197616号公報
回路を構成する導電層と絶縁層とが積層されてなる多層プリント配線板を得る際には、例えば、絶縁層を形成するための絶縁フィルムを導電層上に積層する。次に、絶縁フィルムを硬化又は半硬化させ、絶縁層を形成する。その後、絶縁層に、紫外線又はYAGレーザー等を照射して穴をあける。また、絶縁層上に導電層を積層し、積層された異なる導電層同士を導電性材料を用いて電気的に接続し、ビアを形成する。
このとき、絶縁層を構成する樹脂の残渣であるスミアが、ビア底となる導電層上に残り、電気的接続が行われ難くなる。そこで、スミアを除去するために、デスミア処理が行われている。デスミア処理の際には、ビア底のスミアだけでなく、ビア周辺の樹脂も除去されることがある。特に、導電層と樹脂との界面近傍の樹脂が除去されやすく、導電層と樹脂との界面に空隙が生じることがある。導電層と樹脂との界面に空隙が生じると、ランドと絶縁層との剥離が生じたり、ランド近傍の絶縁層にクラックが生じたりすることがある。このため、プリント配線板の信頼性が充分に確保できないことがある。
特許文献1に記載の絶縁フィルムを用いて、上記絶縁層を形成した場合には、上記導電層と樹脂との界面における空隙の発生を充分に抑制できないことがある。
本発明の目的は、基板上に絶縁層を形成するために用いられ、ビアの形成後にデスミア処理された場合に、ビア(底)周辺の導電層と樹脂との界面近傍の樹脂が除去されるのを抑制できる絶縁フィルム、該絶縁フィルムを用いた粗化絶縁硬化フィルム及び積層体を提供することである。
本発明の広い局面によれば、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤を含むエポキシ樹脂組成物を用いた絶縁フィルムであって、絶縁フィルムを単独で180℃で3時間硬化させた硬化物のガラス転移温度をT1(℃)としたときに、基板上に絶縁フィルムを積層し、次に絶縁フィルムを(T1−30)〜(T1+20)℃で5分間以上硬化させることにより得られた絶縁硬化フィルムにおいて、前記基板側の前記絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域の前記絶縁硬化フィルムのガラス転移温度T2(℃)が150℃以上であり、前記基板側とは反対側の前記絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域の前記絶縁硬化フィルムのガラス転移温度T3(℃)が150℃以上であり、かつ、前記T2と前記T3との温度差が10℃以下である、絶縁フィルムが提供される。
本発明に係る絶縁フィルムのある特定の局面では、前記エポキシ樹脂が、3つ以上のグリシジル基を有し、かつエポキシ当量が250以下であるエポキシ樹脂を含有し、前記エポキシ樹脂100重量%中、前記3つ以上のグリシジル基を有し、かつエポキシ当量が250以下であるエポキシ樹脂の含有量が30〜100重量%の範囲内である。
本発明に係る絶縁フィルムの他の特定の局面では、前記エポキシ樹脂組成物が硬化促進剤をさらに含み、前記硬化促進剤が、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジン、トリフェニルホスフィン類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン類からなる群から選ばれた少なくとも一種であり、前記エポキシ樹脂組成物の固形分100重量%中、前記硬化促進剤の含有量が0.005〜5重量%の範囲内である。
本発明に係る絶縁フィルムは、ソルダーレジスト用絶縁フィルムであることが好ましい。
本発明に係る粗化絶縁硬化フィルムは、本発明に従って構成された絶縁フィルムを(T1−30)〜(T1+20)℃で5分間以上硬化させた後、膨潤処理し、次に粗化処理することにより得られ、粗化処理された表面の算術平均粗さRaが0.3μm以下、かつ十点平均粗さRzが3.0μm以下である。
また、本発明によれば、基板と、前記基板の一方の面に積層された絶縁硬化フィルムとを備え、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤を含むエポキシ樹脂組成物を用いた絶縁フィルムを単独で、180℃で3時間硬化させた硬化物のガラス転移温度をT1(℃)としたときに、前記基板上に前記絶縁フィルムを積層し、次に前記絶縁フィルムを(T1−30)〜(T1+20)℃で5分間以上硬化させることにより前記絶縁硬化フィルムが形成されており、前記基板側の前記絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域の前記絶縁硬化フィルムのガラス転移温度T2(℃)が150℃以上であり、前記基板側とは反対側の前記絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域の前記絶縁硬化フィルムのガラス転移温度T3(℃)が150℃以上であり、かつ、前記T2と前記T3との温度差が10℃以下である、積層体が提供される。
さらに、本発明によれば、基板と、該基板の一方の面に積層された絶縁硬化フィルムとを備える積層体の製造方法であって、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤を含むエポキシ樹脂組成物を用いた絶縁フィルムを単独で、180℃で3時間硬化させた硬化物のガラス転移温度をT1(℃)としたときに、前記絶縁フィルムを前記基板上に積層し、該基板上に積層された前記絶縁フィルムを(T1−30)〜(T1+20)℃で5分間以上硬化させることにより絶縁硬化フィルムを形成し、前記基板側の前記絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域の前記絶縁硬化フィルムのガラス転移温度T2(℃)が150℃以上であり、前記基板側とは反対側の前記絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域の前記絶縁硬化フィルムのガラス転移温度T3(℃)が150℃以上であり、かつ、前記T2と前記T3との温度差が10℃以下である前記絶縁硬化フィルムを得る、積層体の製造方法が提供される。
本発明に係る絶縁フィルムは、該絶縁フィルムを上記特定の条件で硬化させた絶縁硬化フィルムの上記T2及び上記T3がそれぞれ150℃以上であるため、絶縁硬化フィルムの両側の表面近傍の硬化度を高くすることができ、耐薬品性を高めることができる。さらに、上記T2と上記T3との温度差が10℃以下であるので、絶縁フィルムが基板上に絶縁層を形成するために用いられ、ビアの形成後にデスミア処理された場合に、ビア(底)周辺の導電層と絶縁層との界面近傍の樹脂が除去されるのを抑制できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体を用いたプリント配線板を示す部分切欠断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る積層体を示す部分切欠断面図である。
本願発明者らは、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤を含むエポキシ樹脂組成物を用いた絶縁フィルムを単独で180℃で3時間硬化させた硬化物のガラス転移温度(℃)をT1とし、基板上に絶縁フィルムを積層し、次に絶縁フィルムを(T1−30)〜(T1+20)℃で5分間以上硬化させることにより、絶縁硬化フィルムを形成したときに、基板側の絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域の絶縁硬化フィルムのガラス転移温度T2(℃)が150℃以上であり、基板側とは反対側の絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域のガラス転移温度T3(℃)が150℃以上であり、かつ、T2とT3との温度差が10℃以下である構成を採用することにより、ビアの形成後にデスミア処理された場合に、ビア(底)周辺の絶縁層を構成する樹脂が除去されるのを抑制できることを見出した。本発明によれば、導電層と樹脂との界面近傍における空隙の発生が抑制されており、また基板と絶縁硬化フィルムとの剥離又は基板の表面近傍の絶縁層におけるクラックの発生が抑制されているプリント配線板等を提供できる。
本発明に係る絶縁フィルムは、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤を含むエポキシ樹脂組成物を用いて構成されている。本発明に係る絶縁フィルムは、例えば、エポキシ樹脂組成物をフィルム状に成形することにより得られる。
先ず、エポキシ樹脂組成物に含まれる各成分の詳細を説明する。
(エポキシ樹脂)
上記エポキシ樹脂とは、少なくとも1つのエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ樹脂は、2つ以上のエポキシ基を有することが好ましく、3つ以上のエポキシ基を有することがより好ましい。また、上記エポキシ樹脂は、グリシジル基を有することが好ましい。
上記エポキシ樹脂は特に限定されない。上記エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック、フェノールノボラック、α−ナフトールノボラック、β−ナフトールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ビフェニルノボラック、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビスフェノールフルオレン及びジヒドロキシナフタレンなどの多価フェノールのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエニルジフェノールとエピクロルヒドリンとから得られるジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニル型エポキシ樹脂、テトラフェニル型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール及び水添ビスフェノールAなどのアルコール系のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロ無水フタル酸又はダイマー酸などを原料としたグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンなどのアミンを原料としたグリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ベンゾピラン型エポキシ樹脂、並びにイソシアヌル酸骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。上記エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂又はジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂であることが好ましい。
上記エポキシ樹脂は、3つ以上のグリシジル基を有することが好ましい。上記エポキシ樹脂のエポキシ当量は250以下であることが好ましい。さらに、上記エポキシ樹脂は、3つ以上のグリシジル基を有し、かつエポキシ当量が250以下であるエポキシ樹脂であることが好ましい。3つ以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂は、一般的に反応性が高く、短い硬化時間で、上記T2及び上記T3を150℃以上にすることができる。また、エポキシ当量が250以下であるエポキシ樹脂は、硬化により密なネットワークが形成されるため、上記T2及び上記T3を150℃以上にすることが容易である。
上記エポキシ樹脂の合計100重量%中、上記3つ以上のグリシジル基を有し、かつエポキシ当量が250以下であるエポキシ樹脂の含有量が30〜100重量%の範囲内であることが好ましい。この場合には、上記T2及び上記T3を150℃以上にし、かつ上記T2と上記T3との温度差を10℃以下にすることがより一層容易である。
エポキシ樹脂組成物の固形分100重量%中、上記エポキシ樹脂の含有量は20〜50重量%の範囲内であることが好ましい。上記エポキシ樹脂の含有量が上記好ましい範囲内にあることにより、絶縁フィルムのハンドリング性をより一層高くすることができる。さらに、絶縁フィルムを硬化した絶縁硬化フィルムの表面の凹凸をより一層小さくすることができる。エポキシ樹脂組成物の固形分100重量%中の上記エポキシ樹脂の含有量のより好ましい下限は25重量%であり、より好ましい上限は40重量%である。
上記エポキシ樹脂組成物の固形分とは、エポキシ樹脂組成物に含まれている溶剤を除く成分であり、液状エポキシ樹脂も固形分に含まれる。また、上記「エポキシ樹脂組成物の固形分100重量%」とは、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤と、必要に応じて配合される他の成分のうち、成型、加熱時に揮発しない不揮発分との総和をいう。
(硬化剤)
上記硬化剤として、従来公知の硬化剤を用いることができる。上記硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、アミン化合物、アミン化合物の誘導体、ヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール化合物、活性エステル化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤及びシアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらの硬化剤の誘導体を用いてもよい。上記硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、フェノールアラルキル樹脂、α−ナフトールアラルキル樹脂、β−ナフトールアラルキル樹脂又はアミノトリアジンノボラック樹脂等が挙げられる。これらの誘導体を上記フェノール化合物として用いてもよい。上記フェノール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化剤として上記フェノール化合物が好適に用いられる。上記フェノール化合物の使用により、絶縁硬化フィルムの耐熱性及び寸法安定性を高めることができ、さらに吸水性を低くすることができる。さらに、粗化処理された粗化絶縁硬化フィルムの表面の表面粗さをより一層小さくすることができる。
上記エポキシ樹脂100重量部に対して、上記硬化剤の含有量は1〜200重量部の範囲内であることが好ましい。上記エポキシ樹脂100重量部に対する上記硬化剤の含有量のより好ましい下限は30重量部であり、より好ましい上限は140重量部である。上記硬化剤の含有量が少なすぎると、絶縁フィルムが充分に硬化しないことがある。上記硬化剤の含有量が多すぎると、上記エポキシ樹脂を硬化させる効果が飽和することがある。
(硬化促進剤)
上記エポキシ樹脂組成物は硬化促進剤を含むことが好ましい。硬化促進剤は任意成分である。
上記硬化促進剤は特に限定されない。上記硬化促進剤は、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジン、トリフェニルホスフィン類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン類からなる群から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。上記硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ樹脂組成物の固形分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は0.005〜5重量%の範囲内であることが好ましい。硬化促進剤の含有量が上記好ましい範囲内にあることにより、絶縁フィルムをより一層効率的に硬化させることができ、かつ硬化むらを抑制できる。
(無機充填剤)
上記無機充填剤としては、例えば、層状ケイ酸塩、シリカ及び水酸化アルミニウム等が挙げられる。なかでも、シリカが好ましい。無機充填剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記シリカは球状シリカであることが好ましい。球状シリカの場合には、粗化処理により球状シリカが容易に脱離するので、粗化処理された粗化絶縁硬化フィルムの表面により一層微細な粗面を形成できる。なお、「球状」とは、例えば、アスペクト比が1〜2の範囲内にあることを意味する。
上記球状シリカとしては、天然球状シリカ原料を粉砕して得られる結晶性球状シリカ、天然球状シリカ原料を火炎溶融し、粉砕して得られる破砕溶融球状シリカ、天然球状シリカ原料を火炎溶融、粉砕及び火炎溶融して得られる球状溶融球状シリカ、フュームド球状シリカ(アエロジル)、及びゾルゲル法球状シリカなどの合成球状シリカ等が挙げられる。
純度が高いことから、溶融球状シリカが好適に用いられる。球状シリカは、溶剤に分散された状態で球状シリカスラリーとして用いられてよい。球状シリカスラリーの使用により、エポキシ樹脂組成物の製造の際に、作業性及び生産性を高めることができる。また、球状シリカは、シランカップリング剤により表面処理されていてもよい。
上記シランカップリング剤として、一般的なシラン化合物を使用できる。上記シランカップリング剤は、エポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシラン、アクリロキシシラン、メタクリロキシシラン、ビニルシラン、スチリルシラン、ウレイドシラン、スルフィドシラン及びイミダゾールシランからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。また、シラザンのようなアルコキシシランにより、球状シリカが表面処理されていてもよい。シランカップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ樹脂組成物の固形分100重量%中、上記無機充填剤の含有量は5〜60重量%の範囲内であることが好ましい。上記エポキシ樹脂組成物の固形分100重量%中の上記無機充填剤の含有量のより好ましい下限は15重量%であり、より好ましい上限は50重量%である。上記無機充填剤の含有量が少なすぎると、絶縁フィルムを予備硬化させた後に粗化処理した際に、無機充填剤の脱離により形成される孔の総表面積が小さくなる。このため、粗化絶縁硬化フィルムと金属層との接着強度を充分に高めることができないことがある。上記無機充填剤の含有量が多すぎると、絶縁硬化フィルムが脆くなりやすく、かつ粗化絶縁硬化フィルムの表面の表面粗さが大きくなりやすい。
(他の成分)
上記エポキシ樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、染料、難燃剤、酸化防止剤及び可塑剤等の添加剤が添加されていてもよい。また、樹脂の相溶性、安定性及び作業性等の各特性を高めるために、上記エポキシ樹脂組成物には、例えば、レベリング剤、非反応性希釈剤、反応性希釈剤、揺変性付与剤及び増粘剤等が添加されてもよい。
さらに、上記エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、カップリング剤が添加されてもよい。上記カップリング剤としては、シラン系、チタネート系又はアルミニウム系のカップリング剤等が挙げられる。中でも、絶縁硬化フィルムと金属層との密着性を高めることができるので、シラン系カップリング剤が好ましい。また、エポキシ樹脂組成物は顔料を含むことが好ましい。顔料を含むエポキシ樹脂組成物は、ソルダーレジスト用絶縁フィルムを形成するのに好適に用いられる。
上記エポキシ樹脂組成物は、溶剤を含むことが好ましい。上記エポキシ樹脂組成物は、溶剤を含むワニスであることが好ましい。
上記ワニスに用いられる溶剤としては、エポキシ樹脂組成物の溶剤を除く各成分の溶解性が良好な溶剤が適宜選択される。上記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、メタノール、エタノール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等が挙げられる。上記溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、n−ヘキサン、シクロヘキサン又はジメチルホルムアミドが好ましい。
(絶縁フィルム)
本発明に係る絶縁フィルムは、上記エポキシ樹脂組成物を用いて構成されている。本発明に係る絶縁フィルムは、基材に積層され、積層フィルムとして提供されてもよい。
本発明に係る絶縁フィルムには、半乾燥された絶縁フィルムも含まれる。半乾燥された絶縁フィルムは、一般的に、Bステージフィルムと呼ばれている。本発明に係る絶縁フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。本発明に係る絶縁フィルムは、上記ワニスを基材上に塗工し、100℃で30秒〜10分乾燥することにより得られた絶縁フィルムであることが好ましい。
上記基材としては、樹脂コート紙、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム又は銅箔などの金属箔等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
上記基材の厚みは特に限定されない。上記基材の厚みは10〜200μmの範囲内であることが好ましく、10〜100μmの範囲内であることがより好ましい。上記基材の厚みが薄すぎると、基材の取り扱いが困難となることがある。上記基材の厚みが厚すぎると、基材と絶縁フィルムとの積層フィルムがかさばることがある。
上記基材の離型処理の方法としては、離型性を発現する物質を基材に含ませる方法、離型性を発現する物質を基材の表面に塗布する方法、離型性を有するように、基材の表面に凹凸を付与する方法、並びに基材をエンボス加工する方法等が挙げられる。上記離型性を発現する物質としては、シリコン系化合物、フッ素系化合物及び界面活性剤等が挙げられる。
離型性を有する基材を保護するために、樹脂コート紙、ポリエステルフィルム、PETフィルム、PPフィルムなどの保護フィルムが、基材に積層されていてもよい。
また、上記基材には、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、レベリング剤及び可塑剤等の添加剤が添加されていてもよい。
本発明に係る絶縁フィルムは、特に絶縁性に優れている。このため、本発明に係る絶縁フィルムは、ソルダーレジスト用絶縁フィルムであることが好ましい。
本発明に係る絶縁フィルムの製造方法の具体例としては、押出機を用いて、各原料を溶融混練した後に押し出し、Tダイ又はサーキュラーダイ等を用いてフィルム状に成形する押出成形法、有機溶剤等の溶媒に各原料を溶解又は分散させた後、キャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法、並びに従来公知のその他の成形法等が挙げられる。
(積層体及び積層体の製造方法)
本発明に係る絶縁フィルムは、例えば、単層又は多層のプリント配線板などの電子部品の絶縁層を形成するために用いられる。
図1に、本発明の一実施形態に係る積層体を用いたプリント配線板を部分切欠断面図で示す。
図1に示すプリント配線板1では、基板2の上面2aに絶縁層3が積層されている。絶縁層3は絶縁硬化フィルムであり、上記絶縁フィルムを硬化させることにより形成されている。基板2の上表面は金属層である。絶縁層3の上面3aには、金属層4が積層されている。絶縁層3は、層間接続のために開けられたビア3bを有する。金属層4はビア3b内に至っている。このため、絶縁層3の下面3cに積層された基板2の金属層と、上面3aに積層された金属層4とが導通されている。
プリント配線板1を作製する際には、ラミネート工程、キュア工程、ビア形成工程、デスミア処理工程及びめっき工程がこの順で行われることが好ましい。
上記ラミネート工程では、基板2の上面2aに、絶縁硬化フィルムを形成するための絶縁フィルムを対向させつつ、ラミネートする。また、基板2の上面2aに積層された絶縁フィルムをプレスする。このようにして、基板2付き絶縁フィルムを得る。上記ラミネート工程では、プレスが行われることが好ましい。
上記ラミネートに用いられるラミネーター又はプレス機は特に限定されない。上記ラミネーターとしては、真空ラミネーター等が挙げられる。上記ラミネーターの市販品としては、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター等が挙げられる。上記プレス機としては、真空プレス機及びクイックプレス機等が挙げられる。上記プレス機の市販品としては、北川精機社製の真空プレス機、及びミカドテクノス社製のクイック式真空プレス機等が挙げられる。
上記ラミネートの温度は、40〜230℃の範囲内であることが好ましい。上記ラミネートの温度のより好ましい下限は50℃であり、より好ましい上限は200℃である。上記ラミネートの温度が低すぎると、基板2の上面2aの凹凸に絶縁フィルムを充填させたときに、絶縁フィルムの上面の平坦性が確保されにくい。また、絶縁フィルムの充填が不十分となるために、空隙が生じる傾向がある。上記ラミネートの温度が高すぎると、樹脂の硬化反応が進行し、絶縁フィルムの充填が不十分となったり、絶縁フィルムの厚みを均一に保つことが困難となったりする。
上記ラミネート工程において、絶縁フィルムを充分に硬化させない場合には、上記ラミネートの温度は50〜110℃の範囲内であることが好ましい。上記ラミネート工程において、絶縁フィルムを充分に硬化させる場合には、上記ラミネートの温度は100〜200℃の範囲内であることが好ましい。
上記ラミネート時のプレスの圧力は特に限定されないが、0.1〜30MPaの範囲内であることが好ましい。上記プレスの圧力のより好ましい下限は0.3MPaであり、より好ましい上限は15MPaである。上記プレスの圧力が低すぎると、絶縁フィルムの上面の平坦性が確保されにくく、更に基板2の上面2aの凹凸への絶縁フィルムの充填が不十分となる傾向がある。上記プレスの圧力が高すぎると、基板2の表面2aの凹凸により、絶縁フィルムに加わる圧力が部分的に異なって、絶縁フィルムに厚みむらが生じやすくなる。さらに、絶縁フィルムの上面の平坦性が確保されにくくなる傾向がある。
上記プレスの時間は特に限定されないが、6秒間〜60分間の範囲内であることが好ましい。上記プレスの時間が上記好ましい範囲内にある場合には、基板2の上面2aの凹凸に絶縁フィルムを充分に充填させることができ、絶縁フィルムの上面の平坦性を充分に確保でき、生産効率を高めることができる。
上記キュア工程では、得られた基板2付き絶縁フィルムを加熱し、予備硬化させる。加熱には、オーブン等が用いられる。絶縁フィルムが加熱されると、基板2の上面2aに、絶縁フィルムが硬化された絶縁硬化フィルムが形成される。
上記キュア工程での加熱温度は、(T1−30)〜(T1+20)℃の範囲内である。上記加熱温度が低すぎると、樹脂の硬化反応が充分に進行しないことがある。上記加熱温度が高すぎると、プリント配線板等の構成部材が熱劣化することがある。
本発明に係る絶縁フィルムを単独で180℃で3時間硬化させた硬化物のガラス転移温度をT1(℃)とする。基板2の上面2aに上記絶縁フィルムを積層し、次に絶縁フィルムを(T1−30)〜(T1+20)℃で5分間以上硬化させることにより、絶縁硬化フィルムを得る。このような温度で絶縁フィルムを硬化させることにより、絶縁フィルムの硬化時間を短縮できる。
図2に、本発明の一実施形態に係る積層体を部分切欠断面図で示す。図2では、キュア工程の後の基板2と、基板2の上面2aに積層された絶縁硬化フィルム12とを備える積層体11が示されている。ビア形成工程及びデスミア処理工程により絶縁層3が形成される前の絶縁硬化フィルム12が示されている。
図2に示すように、基板2側の絶縁硬化フィルム12の下面12aから、0〜5μmの領域12Aの絶縁硬化フィルム12のガラス転移温度T2(℃)は150℃以上である。また、基板2側とは反対側の絶縁硬化フィルム12の上面12bから0〜5μmの領域12Bの絶縁硬化フィルム12のガラス転移温度T3(℃)は150℃以上である。さらに、上記T2と上記T3との温度差は10℃以下である。なお、領域12Aは、下面12aと、点線d1とで囲まれた領域である。領域12Bは上面12bと、点線d2とで囲まれた領域である。上記T2が測定される領域12Aの絶縁フィルム12が積層されている基板2の表面2aは金属層であることが好ましい。該金属層は、銅により形成されていることが好ましい。
一般的に、基板2側の絶縁硬化フィルム12の表面12aから0〜5μmの領域12Aの絶縁フィルム12の硬化度は、他の領域の硬化度よりも低くなりやすい。このように硬化度が異なると、基板2と絶縁層3との界面に、空隙が形成されやすい。これは、ビアを形成する際のレーザーの熱等により、熱収縮等が起きるためと考えられる。領域12Aの絶縁硬化フィルム12の硬化度を比較的高くし、絶縁硬化フィルム12の部分的な硬化度の差を小さくすることにより、導電層と樹脂との界面に空隙を生じ難くすることができ、基板2と絶縁層3との界面に、空隙を生じ難くすることができる。
すなわち、上記T2及び上記T3が150℃以上であり、かつ上記T2と上記T3との温度差が10℃以下であることにより、後述のデスミア処理された場合に、ビア周辺の基板2の上面2aの樹脂が除去されるのを抑制できる。また、ガラス転移温度付近では樹脂がゴム状になるので、基板2と絶縁層3を構成する樹脂との界面での応力を緩和できる。このため、基板2と樹脂との剥離又は基板2の上表面の金属層の表面近傍の絶縁層3におけるクラックの発生を抑制できる。
上記キュア工程での加熱時間の下限は5分間である。樹脂の硬化反応を進行させ、かつ絶縁フィルムの熱収縮を抑制する観点からは、上記加熱時間の好ましい下限は30分間であり、好ましい上限は120分間である。
上記キュア工程の後に、層間接続のためのビア3bを形成するビア形成工程が行われる。ビア形成工程では、絶縁硬化フィルムに、例えば、紫外線又はYAGレーザーを照射する。
ビア3bの形成の後に、ビア3b内に樹脂の残渣であるスミアが生じることがある。スミアを除去するために、デスミア処理工程が行われる。絶縁硬化フィルムの表面に凹凸を形成するための粗化処理がデスミア処理を兼ねていてもよい。絶縁硬化フィルムは膨潤処理された後に、粗化処理されてもよい。
絶縁硬化フィルムを膨潤処理する方法は特に限定されない。膨潤処理は従来公知の方法により行われる。例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホシキド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、硫酸又はスルホン酸などを主成分として含む水溶液又は有機溶媒分散溶液により、絶縁硬化フィルムを処理する方法等が挙げられる。上記膨潤処理の温度は50〜85℃の範囲内であることがこのましい。上記膨潤処理の時間は3〜25分間の範囲内であることが好ましい。
絶縁硬化フィルムを粗化処理(デスミア処理)する方法は、特に限定されない。粗化処理は従来公知の手法により行われる。例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などを主成分とする酸化剤の水溶液又は有機溶媒分散溶液により、絶縁硬化フィルムを処理する処理方法などが挙げられる。なかでも、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液又は30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液中に、絶縁硬化フィルムを浸漬し、揺動させる方法が好適である。上記粗化処理の温度は、50〜85℃の範囲内であることが好ましい。上記粗化処理の時間は、3〜25分の範囲内であることが好ましい。上記粗化処理の回数は1又は2回であることが好ましい。
上記過硫酸化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
上記粗化処理の後の粗化絶縁硬化フィルムの表面の算術平均粗さRaは0.3μm以下であり、かつ十点平均粗さRzは3.0μm以下であることが好ましい。上記粗化絶縁硬化フィルムの表面の算術平均粗さRaは、0.2μm以下であることがより好ましい。上記粗化絶縁硬化フィルムの表面の十点平均粗さRzは、2μm以下であることがより好ましい。上記算術平均粗さRa及び上記十点平均粗さRzが大きすぎると、粗化絶縁硬化フィルムの表面に配線が形成された場合に、該配線における電気信号の伝送速度を高速化できないことがある。算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzは、JIS B0601−1994に準拠した測定法により求めることができる。
次に、絶縁硬化フィルム又は粗化絶縁硬化フィルムの上面に金属層4を形成するめっき工程が行われる。めっき材料としては、銅、金、銀又はニッケル等が挙げられる。これらの2種類以上の合金を用いてもよい。金属層4の形成方法は、公知の方法を採用できる。絶縁硬化フィルム又は粗化絶縁硬化フィルムの上面に、例えば、無電解めっき又は無電解めっきを行い、更に電解めっきを行うことにより金属層4を形成できる。無電解めっきを行う前に、絶縁硬化フィルム又は粗化絶縁硬化フィルムの上面をプラズマ処理や薬品処理することにより、上面に微細な凹凸を形成してもよい。金属層4の形成の際に、又は金属層4の形成とは別の工程で、ビア3b内に金属を充填させることにより、絶縁層3の下面3cに積層された基板2の金属層と上面3aに積層された金属層4とを導通させることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
実施例及び比較例では、以下に示す材料を用いた。
(エポキシ樹脂)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)(日本化薬社製、商品名「RE−310S」、エポキシ当量184、グリシジル基2つ)
多官能エポキシ樹脂(2)(日産化学社製、商品名「TEPIC−SP」、エポキシ当量100、グリシジル基4つ)
多官能エポキシ樹脂(3)(DIC社製、商品名「EPICLON HP−4700」、エポキシ当量162、グリシジル基2つ以上)
多官能エポキシ樹脂(4)(日本化薬社製、商品名「NC−7000L」、エポキシ当量214、グリシジル基2つ以上)
多官能エポキシ樹脂(5)(ADEKA社製、商品名「EP−5400SEP」、エポキシ当量350、グリシジル基2つ以上)
(硬化剤)
ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル硬化剤(1)(明和化成社製、商品名「MEH7851−4H」、水酸基当量241)
テトラキスフェノール硬化剤(2)(明和化成社製、商品名「MEH7600」、水酸基当量101)
(硬化促進剤)
硬化促進剤(1)(2−フェニル−4−メチルイミダゾール、四国化成社製、商品名「2P4MZ」
硬化促進剤(2)(2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物、四国化成社製、商品名「2MAOK−PW」
硬化促進剤(3)(トリフェニルホスフィン、四国化成社製、商品名「TPP」)
(無機充填剤)
シリカスラリー(1):
イミダゾールシラン(日鉱金属社製、商品名「IM−1000」)により表面処理されたシリカ(龍森社製、商品名「1−Fx」)50重量%が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50重量%に分散されたシリカ50重量%含有スラリー
シリカスラリー(2):
エポキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−403」)により表面処理されたシリカ(龍森社製、商品名「1−Fx」)50重量%が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50重量%に分散されたシリカ50重量%含有スラリー
(その他)
フタロシアニンブルー(東京化成工業社製、商品名「pigment Blue 15」)
(溶剤)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
(実施例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1)13.3g、硬化促進剤(1)0.14g及びシリカスラリー(1)39.0gを、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)15.5g中に加え、均一な溶液となるまで常温で攪拌した。その後、多官能エポキシ樹脂(2)8.8gを添加し、均一な溶液となるまで常温で攪拌した。
次に、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル硬化剤(1)23.2gを上記溶液に添加し、均一な溶液となるまで常温で攪拌して、エポキシ樹脂組成物としての樹脂組成物溶液を調製した。
基材として、離型処理された透明なPETフィルムを用意した。このPETフィルム上にアプリケーターを用いて、乾燥後の厚みが30μmとなるように、得られた樹脂組成物溶液を塗工した。次に、100℃のギアオーブン内で1分間乾燥することにより、絶縁フィルムとしてのBステージフィルムとPETフィルムとの積層フィルムを作製した。
(実施例2〜10及び比較例1〜4)
使用した材料の種類及びその配合量を下記の表1,2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、BステージフィルムとPETフィルムとの積層フィルムを作製した。
(評価)
(1)導電層(金属層)と樹脂との界面の空隙の評価
銅張積層板(ガラスエポキシ基板FR−4、品番「CS−3665」、利昌工業社製)を用意した。この銅張積層板上に、BステージフィルムとPETフィルムとの積層フィルムをBステージフィルム側から、80℃でラミネートした。その後、PETフィルムを剥離した。次に、下記の表1,2に示す加熱温度で30分間加熱処理した。次に、レーザー加工を行い、ビアを形成し、ラミネート基板を得た。得られたラミネート基板を用いて、下記の膨潤処理をした後、下記の粗化処理(デスミア処理)をした。
膨潤処理:
60℃の膨潤水溶液(スウェリングディップセキュリガントP、アトテックジャパン社製、有機溶媒含有水溶液)に、上記ラミネート基板を入れて、20分間揺動させた。その後、純水で洗浄し、乾燥した。
粗化処理:
80℃のアルカリ性過マンガン酸カリウム粗化水溶液(コンセントレートコンパクトCP、アトテックジャパン社製)に、膨潤処理されたラミネート基板を入れて、20分間揺動させた。
その後、25℃の洗浄液(リダクションセキュリガントP、アトテックジャパン社製、酸性還元性水溶液)により2分間処理した後、純水で洗浄し、乾燥した。このようにして、粗化絶縁硬化フィルムを備える銅張積層基板を得た。
得られた粗化絶縁硬化フィルムを備える銅張積層基板をアクリルカップ(三啓社製、埋込用クリアカップ)に入れ、エポキシ樹脂(BUEHLER社製、エポキュアー)で埋めて、一日放置した。その後、研磨機により研磨し、粗化絶縁硬化フィルムのレーザー加工された箇所(ビア)の断面を露出させた。また、銅張積層板と絶縁硬化フィルムとを積層方向が鉛直方向となるように配置した。露出した断面において、銅張積層板と粗化絶縁硬化フィルムとの間に空隙が生じているか否かを観察し、導電層(金属層)と樹脂との界面の空隙を下記の評価基準で評価した。
[導電層と樹脂との界面の空隙の評価基準]
○:銅張積層板と粗化絶縁硬化フィルムとの間に空隙が生じていない、又は空隙が生じているものの、該空隙の大きさが鉛直方向に1μm未満かつ水平方向に2μm未満
×:銅張積層板と粗化絶縁硬化フィルムとの間に空隙が生じており、該空隙の大きさが、鉛直方向に1μm以上又は水平方向に2μm以上
(2)銅箔ピール強度評価
Cz処理された銅箔(厚み35μm)を用意した。この銅箔上に、BステージフィルムとPETフィルムとの積層フィルムをBステージフィルム側からラミネートした。その後、PETフィルムを剥離し、Bステージフィルムを露出させた。次に、露出したBステージフィルム上に、銅箔(厚み35μm)をラミネートし、下記の表1,2に示す加熱温度で60分間加熱し、サンプルを得た。
得られたサンプルを、Cz処理された銅箔を上側に配置して、上側の銅箔に10mm幅の切り欠きを入れた。引張試験機(島津製作所社製、商品名「オートグラフ」)を用いて、クロスヘッド速度5mm/分の条件で、Cz処理された銅箔の接着強度(銅箔ピール強度)を測定した。
(3)表面粗さ
走査型レーザー顕微鏡(レーザーテック社製、品番「1LM21」)を用いて、上記導電層と樹脂との界面に空隙の評価において、粗化処理された粗化絶縁硬化フィルムの表面の算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzを測定した。測定領域は100μmの大きさとした。
(4)示差走査熱量測定(DSC)
ガラス転移温度T1の測定:
Bステージフィルムを単独で、180℃で3時間硬化させ、硬化物を得た。得られた硬化物のガラス転移温度をDSCにて測定した。
ガラス転移温度T2及びT3の測定:
基板としての銅張積層板(FR−4)上に、得られたBステージフィルムをラミネートし、下記の表1,2に示す加熱温度で60分間加熱し、Bステージフィルムを硬化させ、銅張積層板上に絶縁硬化フィルムを形成した。
その後、マイクログラインダーを用いて、銅張積層板側とは反対側の絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域の絶縁硬化フィルムを研磨し、上記T3の測定用の粉末状サンプルを得た。
その後、絶縁フィルムを紙ヤスリでさらに研磨した。次に、マイクログラインダーを用いて、絶縁硬化フィルムの銅張積層板側の表面から0〜5μmの領域の絶縁硬化フィルムを研磨し、上記T2の測定用の粉末状サンプルを得た。
得られた粉末状サンプルを用いて、DSCにてガラス転移温度T2及びT3を測定した。
結果を下記の表1,2に示す。
Figure 0005255515
Figure 0005255515
1…プリント配線板
2…基板
2a…上面
3…絶縁層
3a…上面
3b…ビア
3c…下面
4…金属層
11…積層体
12…絶縁硬化フィルム
12a…下面
12b…上面
12A…基板側の絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域
12B…基板側とは反対側の絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域

Claims (6)

  1. エポキシ樹脂、硬化剤及びシリカを含むエポキシ樹脂組成物を用いた絶縁フィルムであって、
    絶縁フィルムを単独で180℃で3時間硬化させた硬化物のガラス転移温度をT1(℃)としたときに、基板上に絶縁フィルムを積層し、次に絶縁フィルムを(T1−30)〜(T1+20)℃で5分間以上硬化させることにより得られた絶縁硬化フィルムにおいて、
    前記基板側の前記絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域の前記絶縁硬化フィルムのガラス転移温度T2(℃)が150℃以上であり、
    前記基板側とは反対側の前記絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域の前記絶縁硬化フィルムのガラス転移温度T3(℃)が150℃以上であり、かつ、
    前記T2と前記T3との温度差が10℃以下であり、
    前記エポキシ樹脂が、3つ以上のグリシジル基を有し、かつエポキシ当量が250以下であるエポキシ樹脂を含有し、
    前記エポキシ樹脂100重量%中、前記3官能以上のグリシジル基を有し、かつエポキシ当量が250以下であるエポキシ樹脂の含有量が30〜100重量%の範囲内である、絶縁フィルム。
  2. 前記エポキシ樹脂組成物が硬化促進剤をさらに含み、
    前記硬化促進剤が、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジン、トリフェニルホスフィン類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン類からなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
    前記エポキシ樹脂組成物の固形分100重量%中、前記硬化促進剤の含有量が0.005〜5重量%の範囲内である、請求項1に記載の絶縁フィルム。
  3. ソルダーレジスト用絶縁フィルムである、請求項1又は2に記載の絶縁フィルム。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁フィルムを(T1−30)〜(T1+20)℃で5分間以上硬化させた後、膨潤処理し、次に粗化処理することにより得られ、
    粗化処理された表面の算術平均粗さRaが0.3μm以下、かつ十点平均粗さRzが3.0μm以下である、粗化絶縁硬化フィルム。
  5. 基板と、
    前記基板の一方の面に積層された絶縁硬化フィルムとを備え、
    エポキシ樹脂、硬化剤及びシリカを含むエポキシ樹脂組成物を用いた絶縁フィルムを単独で、180℃で3時間硬化させた硬化物のガラス転移温度をT1(℃)としたときに、前記基板上に前記絶縁フィルムを積層し、次に前記絶縁フィルムを(T1−30)〜(T1+20)℃で5分間以上硬化させることにより前記絶縁硬化フィルムが形成されており、
    前記基板側の前記絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域の前記絶縁硬化フィルムのガラス転移温度T2(℃)が150℃以上であり、
    前記基板側とは反対側の前記絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域の前記絶縁硬化フィルムのガラス転移温度T3(℃)が150℃以上であり、かつ、
    前記T2と前記T3との温度差が10℃以下であり、
    前記エポキシ樹脂が、3つ以上のグリシジル基を有し、かつエポキシ当量が250以下であるエポキシ樹脂を含有し、
    前記エポキシ樹脂100重量%中、前記3官能以上のグリシジル基を有し、かつエポキシ当量が250以下であるエポキシ樹脂の含有量が30〜100重量%の範囲内である、積層体。
  6. 基板と、該基板の一方の面に積層された絶縁硬化フィルムとを備える積層体の製造方法であって、
    エポキシ樹脂、硬化剤及びシリカを含むエポキシ樹脂組成物を用いた絶縁フィルムを単独で、180℃で3時間硬化させた硬化物のガラス転移温度をT1(℃)としたときに、前記絶縁硬化フィルムを前記基板上に積層し、該基板上に積層された前記絶縁フィルムを(T1−30)〜(T1+20)℃で5分間以上硬化させることにより絶縁硬化フィルムを形成し、
    前記基板側の前記絶縁フィルムの表面から0〜5μmの領域の前記絶縁硬化フィルムのガラス転移温度T2(℃)が150℃以上であり、前記基板側とは反対側の前記絶縁硬化フィルムの表面から0〜5μmの領域の前記絶縁硬化フィルムのガラス転移温度T3(℃)が150℃以上であり、かつ、前記T2と前記T3との温度差が10℃以下である前記絶縁硬化フィルムを得る工程を備え、
    前記エポキシ樹脂が、3つ以上のグリシジル基を有し、かつエポキシ当量が250以下であるエポキシ樹脂を含有し、
    前記エポキシ樹脂100重量%中、前記3官能以上のグリシジル基を有し、かつエポキシ当量が250以下であるエポキシ樹脂の含有量が30〜100重量%の範囲内である、積層体の製造方法。
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