以下、図1〜図6を用いて、本発明の第1実施形態である自転車用内装変速ハブについて説明する。
図1には、第1実施形態である自転車用内装変速ハブの模式的な構成図が示されている。また、図3には、自転車用内装変速ハブのブロック図が示されている。なお、図1及び図3等では、自転車用内装変速ハブはハブ軸に対して対称構造であるため、図中下部側を省略している。
図1に示されるように、自転車用内装変速ハブ10は、自転車本体としてのフレーム(図示省略)に固定されるハブ軸12と、ハブ軸12に回転可能に取り付けられた駆動部材14と、ハブ軸12の周囲に配置されてハブ軸12に回転可能に取り付けられたハブ胴16と、を備えている。駆動部材14はチェーンホイール14Aを備えており、チェーンホイール14Aに巻き掛けられたチェーン(図示省略)により駆動される。ハブ胴16の内部には、駆動部材14からハブ胴16に至る動力伝達系に出力側遊星歯車機構としての出力側遊星歯車列18と、入力側遊星歯車機構としての入力側遊星歯車列20とが配設されている。
図1及び図3に示されるように、出力側遊星歯車列18は、ハブ軸12に外挿される出力側のサンギヤ22(S1)と、このサンギヤ22に噛合する複数のピニオンギヤ24(P1)と、複数のピニオンギヤ24を回転可能に支持する出力側のキャリア26(C1)と、複数のピニオンギヤ24に噛合する出力側のリングギヤ28(R1)と、を備えている。
入力側遊星歯車列20は、ハブ軸12に外挿される入力側のサンギヤ30(S2)と、このサンギヤ30に噛合する複数のピニオンギヤ32(P2)と、複数のピニオンギヤ32を回転可能に支持する入力側のキャリア34(C2)と、複数のピニオンギヤ32に噛合する入力側のリングギヤ36(R2)と、を備えている。キャリア34は駆動部材14と連結されており、駆動部材14からの動力は入力側のキャリア34にのみ入力されるように構成されている。
入力側のリングギヤ36と出力側のリングギヤ28とは連結部38により一体的に形成されており、入力側のリングギヤ36と出力側のリングギヤ28とが一体的に回転する構成となっている。
また、自転車用内装変速ハブ10は、入力側のサンギヤ30をハブ軸12に対して固定又は解放することにより動力伝達経路を切り換える動力切り換え手段としてのブレーキ40を備えている。図示を省略するが、ブレーキ40は、自転車のハンドルに設けられた変速レバーと操作ワイヤで接続されており、変速レバーの操作によりブレーキ40を動作させ、入力側のサンギヤ30をハブ軸12に対して固定又は解放するように構成されている。本実施形態では、駆動部材14からの動力は入力側のキャリア34のみに入力されるように構成されているので、入力側のサンギヤ30は一定方向に回転するように設定されており、入力側のサンギヤ30を固定するための制御方向を一方向のみで構成することができる。また、出力側のサンギヤ22はハブ軸12に常時固定されている。
さらに、自転車用内装変速ハブ10は、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26とを接続するワンウェイクラッチ42を備えている。このワンウェイクラッチ42は、入力側のサンギヤ30の回転数が出力側のキャリア26の回転数より遅い場合は切断されるように構成されている。
また、ハブ胴16の内周面と出力側のキャリア26との間にはラチェット44が設けられており、ハブ胴16の内周面のラチェット歯にキャリア26側のラチェット爪が係合するように構成され、ハブ胴16へ伝達される動力は出力側のキャリア26からのみ出力されるように構成されている。
この自転車用内装変速ハブ10は、低速と高速の2段変速を行えるようにした内装変速ハブであり、自転車のハンドルに設けられた変速レバー(図示省略)の操作により、低速の1段位(1st)と高速の2段位(2nd)に切り換えられるように構成されている。表1には、各変速段位におけるブレーキ40及びワンウェイクラッチ42の接続状態が示されている。
ワンウェイクラッチ42(OWC2)は、入力側のサンギヤ30の回転が出力側のキャリア26の回転よりも遅い場合は切断される構成であり、表1に示すようにブレーキ40(B2)の固定、解放を制御すればよい。
図1、図4及び表1に示されるように、低速の1段位(1st)ではブレーキ40の動作により入力側のサンギヤ30がハブ軸12から解放され、入力側のサンギヤ30が回転可能となるように設定されている。この状態では、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26とがワンウェイクラッチ42で接続されており(ロック状態)、入力側のサンギヤ30の動力が出力側のキャリア26に伝達される構成となっている。
図2、図5及び表1に示されるように、高速の2段位(2nd)ではブレーキ40の動作により入力側のサンギヤ30がハブ軸12に固定され、サンギヤ30が回転しないように設定されている。この状態では、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26とがワンウェイクラッチ42で切断される(フリー状態)。
次に、自転車用内装変速ハブ10の動力伝達経路の切り換え、入力側のサンギヤ30の制御及び自転車用内装変速ハブ10の動作について説明する。
図1、図4及び表1に示されるように、1段位(1st)ではブレーキ40の動作により入力側のサンギヤ30がハブ軸12から解放され、入力側のサンギヤ30が回転可能となる。この状態では、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26とがワンウェイクラッチ42で接続されている(ロック状態)。
駆動部材14からの動力は入力側のキャリア34に入力され、キャリア34がハブ軸12を中心に一定方向に回転する。このとき、出力側のサンギヤ22が固定されているため、キャリア34の回転により複数のピニオンギヤ32を介して入力側のサンギヤ30が回転すると共に、入力側のサンギヤ30とワンウェイクラッチ42を介して接続された出力側のキャリア26が回転し、キャリア26に支持された複数のピニオンギヤ24が公転する。これと同時に、入力側のキャリア34の回転により複数のピニオンギヤ32を介して入力側のリングギヤ36が回転し、入力側のリングギヤ36の回転により出力側のリングギヤ28が一体的に回転する。その際、入力側のサンギヤ30及び出力側のキャリア26と、入力側のリングギヤ36及び出力側のリングギヤ28は、一定の速度差を保った状態で回転する(図6参照)。
すなわち、入力側のキャリア34に入力された動力の伝達経路は、入力側のサンギヤ30から出力側のキャリア26に伝達される経路と、入力側のリングギヤ36と一体的に回転する出力側のリングギヤ28を介して出力側のキャリア26に伝達される経路とに分流される。そして、出力側のキャリア26からラチェット44を介してハブ胴16へ動力が伝達され、ハブ胴16が回転する。
図2、図5及び表1に示されるように、2段位(2nd)では、ブレーキ40の動作により入力側のサンギヤ30がハブ軸12に固定され、サンギヤ30が回転しない。この状態では、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26とがワンウェイクラッチ42で切断される。駆動部材14からの動力は入力側のキャリア34に入力され、キャリア34がハブ軸12を中心に一定方向に回転する。サンギヤ30が固定されているため、キャリア34に支持された複数のピニオンギヤ32が公転し、複数のピニオンギヤ32に噛合する入力側のリングギヤ36が回転する。入力側のリングギヤ36の回転により出力側のリングギヤ28は一体的に回転する。出力側のサンギヤ22は常時固定されているため、出力側のリングギヤ28に噛合する複数のピニオンギヤ24が公転し、出力側のキャリア26が回転する。そして、出力側のキャリア26からラチェット44を介してハブ胴16へ動力が伝達され、ハブ胴16が回転する。
図6には、入力側遊星歯車列20及び出力側遊星歯車列18の作動別変速比を共線図法により作図した図が示されている。サンギヤ22(S1)の歯数をZS1、リングギヤ28(R1)の歯数をZR1とし、α1=ZS1/ZR1とおく。図6では、横軸にサンギヤ22(S1)、キャリア26(C1)、リングギヤ28(R1)を配置して間隔を1:α1とする。縦軸は回転速度を示す。横軸の0より上方はプラスで正転を表す。同様に、サンギヤ30(S2)の歯数をZS2、リングギヤ36(R2)の歯数をZR2とし、α2=ZS2/ZR2とおく。図6では、横軸にサンギヤ30(S2)、キャリア34(C2)、リングギヤ36(R2)を配置して間隔を1:α2とする。その際、リングギヤ28(R1)とリングギヤ36(R2)は一体的に回転するため、横軸の同じ位置となる。また、サンギヤ30(S2)とキャリア26(C1)はワンウェイクラッチ42で接続されるため、横軸の同じ位置となる。
2段位(2nd)では、駆動部材14からの動力が入力されるキャリア34(C2)の回転を1とし、固定要素の入力側のサンギヤ30(S2)をゼロとし、この2点を直線50で結ぶ。この直線50をキャリア34(C2)からの動力伝達経路にしたがって入力側のリングギヤ36(R2)に延長し、この直線50の延長線上の入力側のリングギヤ36(R2)の縦軸の大きさがリングギヤ36(R2)の回転速度となる。入力側のリングギヤ36(R2)と出力側のリングギヤ28(R1)とは一体的に回転するため、出力側のリングギヤ28(R1)の回転速度も同じである。固定要素の出力側のサンギヤ22(S1)をゼロとし、これと出力側のリングギヤ28(R1)の回転速度の2点を直線52で結ぶ。ハブ胴16へ動力が出力されるキャリア26(C1)の縦軸の大きさAが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して増速となる。
1段位(1st)では、駆動部材14からの動力が入力されるキャリア34(C2)の回転を1とし、固定要素の出力側のサンギヤ22(S1)をゼロとし、この2点を直線54で結ぶ。キャリア34(C2)からの動力は入力側のサンギヤ30(S2)とワンウェイクラッチ42で接続された出力側のキャリア26(C1)に伝達されるため、入力側のサンギヤ30(S2)の縦軸の大きさがサンギヤ30(S2)の回転速度となり、出力側のキャリア26(C1)の縦軸の大きさBが出力回転の大きさとなる。また、キャリア34(C2)からの動力は入力側のリングギヤ36(R2)及び出力側のリングギヤ28(R1)を介して出力側のキャリア26(C1)に伝達されるため、直線54の延長線上の入力側のリングギヤ36(R2)及び出力側のリングギヤ28(R1)の縦軸の大きさがこれらの回転速度となり、出力側のキャリア26(C1)の縦軸の大きさBが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して減速となる。
このような自転車用内装変速ハブ10では、入力要素、出力要素を固定した入力側遊星歯車列20及び出力側遊星歯車列18を構成することができ、大トルクの要素を移し換える必要がなく、変速待ちや変速ショックを抑制することができる。
また、入力側のサンギヤ30を固定するための制御の方向を一方向のみで構成することができ、サンギヤを固定するときに正逆両方向の制御を行う場合に比べて、構成を簡略化できる。また、入力側のキャリア34にのみ入力し、出力側のキャリア26のみから出力すると共に、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26とをワンウェイクラッチ42で接続することにより、入力要素、出力要素を固定した増減速仕様を実現することができる。なお、分流時には減速となり、それ以外の時は各歯数の設定により減速、等速、増速に設定することができる(第1実施形態では減速仕様)。
次に、図7〜図13を用いて、本発明の第2実施形態である自転車用内装変速ハブについて説明する。なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図7及び図8に示されるように、自転車用内装変速ハブ60は、ハブ胴16の内部に、出力側の遊星歯車機構としての出力側遊星歯車列62と、入力側の遊星歯車機構としての入力側遊星歯車列20と、を備えている。出力側遊星歯車列62に設けられたキャリア26には、複数の段付きピニオンギヤ64が支持されている。段付きピニオンギヤ64は、歯数が異なる小径のギヤ64A(P1a)と大径のギヤ64B(P1b)が一体として設けられたものであり、入力側遊星歯車列20の側に小径のギヤ64Aが配置されている。また、出力側遊星歯車列62には、段付きピニオンギヤ64のそれぞれのギヤ64A、64Bに噛合する2つのサンギヤ66(S1a)、68(S1b)が設けられている。
自転車用内装変速ハブ60は、サンギヤ66、68をハブ軸12に対して固定又は解放することにより動力伝達経路を切り換える動力切り換え手段としてのブレーキ70(B1a)、ブレーキ72(B1b)をそれぞれ備えている。
この自転車用内装変速ハブ60は、低速から高速までの4段変速を行えるようにした内装変速ハブであり、自転車に設けられた図示しない変速レバーの操作により、低速から高速まで1段位(1st)、2段位(2nd)、3段位(3rd)、4段位(4th)に切り換えられるように構成されている。
表2には、各変速段位におけるブレーキ40、70、72及びワンウェイクラッチ42の接続状態が示されている。
ワンウェイクラッチ42(OWC2)は、入力側のサンギヤ30の回転が出力側のキャリア26の回転よりも遅い場合は切断される構成であり、表2に示すようにブレーキ40、70、72の固定、解放を制御すればよい。
次に、自転車用内装変速ハブ60の動力伝達経路の切り換え、サンギヤ30、66、68の制御及び自転車用内装変速ハブ60の動作について説明する。
図9及び表2に示されるように、1段位(1st)ではブレーキ70の動作により出力側のサンギヤ66がハブ軸12に固定される。また、入力側のサンギヤ30を固定するブレーキ40と出力側のサンギヤ68を固定するブレーキ72がそれぞれ解放される。この状態では、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26とがワンウェイクラッチ42で接続されている(ロック状態)。
駆動部材14からの動力は入力側のキャリア34に入力され、キャリア34がハブ軸12を中心に回転する。このとき、出力側のサンギヤ66が固定されているため、キャリア34の回転により複数のピニオンギヤ32を介して入力側のサンギヤ30が回転すると共に、入力側のサンギヤ30とワンウェイクラッチ42を介して接続された出力側のキャリア26が回転し、キャリア26に支持された複数の段付きピニオンギヤ64が公転する。これと同時に、入力側のキャリア34の回転により複数のピニオンギヤ32を介して入力側のリングギヤ36と出力側のリングギヤ28が一体的に回転する。その際、入力側のサンギヤ30及び出力側のキャリア26と、入力側のリングギヤ36及び出力側のリングギヤ28は、一定の速度差を保った状態で回転する(図13参照)。
すなわち、入力側のキャリア34に入力された動力の伝達経路は、入力側のサンギヤ30から出力側のキャリア26に伝達される経路と、入力側のリングギヤ36と一体的に回転する出力側のリングギヤ28を介して出力側のキャリア26に伝達される経路とに分流される。動力伝達経路が分流されることにより、遊星機構の各要素が反力を分担し、反力の集中を抑制することができる。そして、出力側のキャリア26からラチェット44を介してハブ胴16へ動力が伝達される。
図10及び表2に示されるように、2段位(2nd)ではブレーキ72の動作により出力側のサンギヤ68がハブ軸12に固定され、サンギヤ68が回転しない。また、サンギヤ30を固定するブレーキ40とサンギヤ66を固定するブレーキ70は解放される。この状態では、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26とがワンウェイクラッチ42で接続されている(ロック状態)。
駆動部材14からの動力は入力側のキャリア34に入力され、キャリア34がハブ軸12を中心に回転する。このとき、出力側のサンギヤ68が固定されているため、キャリア34の回転により複数のピニオンギヤ32を介して入力側のサンギヤ30が回転すると共に、入力側のサンギヤ30とワンウェイクラッチ42を介して接続された出力側のキャリア26が回転し、キャリア26に支持された複数の段付きピニオンギヤ64が公転する。これと同時に、入力側のキャリア34の回転により複数のピニオンギヤ32を介して入力側のリングギヤ36と出力側のリングギヤ28が一体的に回転する。その際、入力側のサンギヤ30、出力側のキャリア26と、入力側のリングギヤ36及び出力側のリングギヤ28は、一定の速度差を保った状態で回転する(図13参照)。
すなわち、入力側のキャリア34に入力された動力の伝達経路は、入力側のサンギヤ30から出力側のキャリア26に伝達される経路と、入力側のリングギヤ36及び出力側のリングギヤ28を介して出力側のキャリア26に伝達される経路とに分流される。動力伝達経路が分流されることにより、遊星機構の各要素が反力を分担し、反力の集中を抑制することができる。そして、出力側のキャリア26からラチェット44を介してハブ胴16へ動力が伝達される。
図11及び表2に示されるように、3段位(3rd)ではブレーキ40、70の動作によりサンギヤ30とサンギヤ66がハブ軸12に固定され、サンギヤ30とサンギヤ66が回転しない。また、サンギヤ68を固定するブレーキ72は解放される。この状態では、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26とがワンウェイクラッチ42で切断される(フリー状態)。駆動部材14からの動力は入力側のキャリア34に入力され、キャリア34がハブ軸12を中心に回転する。そして、キャリア34に支持された複数のピニオンギヤ32が公転し、複数のピニオンギヤ32に噛合する入力側のリングギヤ36が出力側のリングギヤ28と一体的に回転する。サンギヤ66は固定されているため、出力側のリングギヤ28に噛合する複数の段付きピニオンギヤ64が公転し、出力側のキャリア26が回転する。そして、出力側のキャリア26からラチェット44を介してハブ胴16へ動力が伝達される。
図12及び表2に示されるように、4段位(4th)ではブレーキ40、72の動作により入力側のサンギヤ30と出力側のサンギヤ68がハブ軸12に固定され、サンギヤ30とサンギヤ68が回転しない。また、サンギヤ66を固定するブレーキ70は解放される。この状態では、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26とがワンウェイクラッチ42で切断される(フリー状態)。駆動部材14からの動力は入力側のキャリア34に入力され、キャリア34がハブ軸12を中心に回転する。そして、キャリア34に支持された複数のピニオンギヤ32が公転し、複数のピニオンギヤ32に噛合する入力側のリングギヤ36が出力側のリングギヤ28と一体的に回転する。出力側のサンギヤ68は固定されているため、出力側のリングギヤ28に噛合する複数の段付きピニオンギヤ64が公転し、出力側のキャリア26が回転する。そして、出力側のキャリア26からラチェット44を介してハブ胴16へ動力が伝達される。
図13には、入力側遊星歯車列20及び出力側遊星歯車列62の作動別変速比を共線図法により作図した図が示されている。前述した図6と同様に、サンギヤ66(S1a)とリングギヤ28(R1)の歯数の比、サンギヤ68(S1b)とリングギヤ28(R1)の歯数の比に基づき、横軸にサンギヤ66(S1a)、サンギヤ68(S1b)、キャリア26(C1)、リングギヤ28(R1)を配置する。同様に、サンギヤ30(S2)とリングギヤ36(R2)の歯数の比に基づき、横軸にサンギヤ30(S2)、キャリア34(C2)、リングギヤ36(R2)を配置する。
4段位(4th)では、駆動部材14からの動力が入力されるキャリア34(C2)の回転を1とし、固定要素の入力側のサンギヤ30(S2)をゼロとし、この2点を直線80で結ぶ。この直線80をキャリア34(C2)からの動力伝達経路にしたがって入力側のリングギヤ36(R2)と出力側のリングギヤ28(R1)に延長し、この直線80の延長線上の入力側のリングギヤ36(R2)と出力側のリングギヤ28(R1)の縦軸の大きさがこれらの回転速度となる。固定要素の出力側のサンギヤ68(S1b)をゼロとし、これと出力側のリングギヤ28(R1)の回転速度の2点を直線82で結ぶ。ハブ胴16へ動力が出力されるキャリア26(C1)の縦軸の大きさCが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して大幅な増速となる。
3段位(3rd)では、同様に固定要素の出力側のサンギヤ66(S1a)をゼロとし、これと出力側のリングギヤ28(R1)の回転速度の2点を直線84で結ぶ。ハブ胴16へ動力が出力されるキャリア26(C1)の縦軸の大きさDが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して増速となる。
2段位(2nd)では、駆動部材14からの動力が入力されるキャリア34(C2)の回転を1とし、固定要素の出力側のサンギヤ68(S1b)をゼロとし、この2点を直線86で結ぶ。キャリア34(C2)からの動力は入力側のサンギヤ30(S2)に伝達され、サンギヤ30(S2)とワンウェイクラッチ42で接続された出力側のキャリア26(C1)に伝達されるため、入力側のサンギヤ30(S2)の縦軸の大きさがサンギヤ30(S2)の回転速度となり、キャリア26(C1)の縦軸の大きさEが出力回転の大きさとなる。また、キャリア34(C2)からの動力は入力側のリングギヤ36(R2)及び出力側のリングギヤ28(R1)を介して出力側のキャリア26(C1)に伝達されるため、直線86の延長線上の入力側のリングギヤ36(R2)及び出力側のリングギヤ28(R1)の縦軸の大きさがこれらの回転速度となり、出力側のキャリア26(C1)の縦軸の大きさEが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して減速となる。
1段位(1st)では、同様に動力が入力されるキャリア34(C2)の回転を1とし、固定要素の出力側のサンギヤ66(S1a)をゼロとし、この2点を直線88で結ぶ。キャリア34(C2)からの動力は入力側のサンギヤ30(S2)と、サンギヤ30(S2)とワンウェイクラッチ42で接続された出力側のキャリア26(C1)に伝達されるため、入力側のサンギヤ30(S2)の縦軸の大きさがサンギヤ30(S2)の回転速度となり、出力側のキャリア26(C1)の縦軸の大きさFが出力回転の大きさとなる。また、キャリア34(C2)からの動力は入力側のリングギヤ36(R2)及び出力側のリングギヤ28(R1)を介して出力側のキャリア26(C1)に伝達されるため、直線88の延長線上の入力側のリングギヤ36(R2)と出力側のリングギヤ28(R1)の縦軸の大きさがこれらの回転速度となり、出力側のキャリア26(C1)の縦軸の大きさFが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して大幅な減速となる。
このような自転車用内装変速ハブ60では、入力要素、出力要素を固定した構成とすることができ、大トルクの要素を移し換える必要がなく、変速待ちや変速ショックを抑制することができる。また、サンギヤ30、66、68を固定するための制御の方向を一方向のみで構成することができ、正逆両方向の制御を行う場合に比べてサンギヤ30、66、68を固定、解放する制御が容易であり、構成を簡略化できる。
さらに、段付きピニオンギヤ64を用いることで、更なる多段化を実現でき、入力要素、出力要素を固定した増減速仕様を実現することができる。なお、分流時には減速となり、それ以外の時は各歯数の設定により、減速、等速、増速に設定することができる(第2実施形態では増速仕様)。段付きピニオンギヤを用いて変速する場合は、サンギヤの反力が何れかの変速段に集中する可能性があるが、上述のように動力の伝達経路の分流を適切に行うことで、このような集中する抑制することができる。また、制御するサンギヤのトルクが大きい場合は、変速操作時にペタリングの踏力を弱める等の必要があるが、本実施形態では制御するサンギヤ66、68のトルクを小さくすることができるため、高負荷時の変速性能が向上し、気持ち良い変速を実現することができる。
次に、図14〜図19を用いて、本発明の第3実施形態である自転車用内装変速ハブについて説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図14及び図15に示されるように、自転車用内装変速ハブ100は、ハブ胴16の内部に、出力側の遊星歯車機構としての出力側遊星歯車列18と、入力側の遊星歯車機構としての入力側遊星歯車列102と、を備えている。入力側遊星歯車列102に設けられたキャリア34には、複数の段付きピニオンギヤ104が支持されている。複数の段付きピニオンギヤ104は、歯数が異なる小径のギヤ104A(P2a)と大径のギヤ104B(P2b)が一体として設けられたものであり、出力側遊星歯車列18の側に小径のギヤ104Aが配置されている。また、入力側遊星歯車列102には、段付きピニオンギヤ104のそれぞれのギヤ104A、104Bに噛合する2つのサンギヤ106(S2a)、108(S2b)が設けられている。
また、自転車用内装変速ハブ100は、サンギヤ106、108をハブ軸12に対して固定又は解放することにより動力伝達経路を切り換える動力切り換え手段としてのブレーキ110(B2a)、ブレーキ112(B2b)をそれぞれ備えている。サンギヤ22はハブ軸12に常時固定されている。ワンウェイクラッチ42は、入力側のサンギヤ106と出力側のキャリア26とを接続又は切断するように構成されている。
この自転車用内装変速ハブ10は、低速から高速までの3段変速を行えるようにした内装変速ハブであり、自転車に設けられた図示しない変速レバーの操作により、低速から高速まで1段位(1st)、2段位(2nd)、3段位(3rd)に切り換えられるように構成されている。
表3には、各変速段位におけるブレーキ110、112及びワンウェイクラッチ42の接続状態が示されている。
ワンウェイクラッチ42(OWC)は、入力側のサンギヤ106の回転が出力側のキャリア26の回転よりも遅い場合は切断される構成であり、表3に示すようにブレーキ110、112の固定、解放を制御すればよい。
次に、自転車用内装変速ハブ100の動力伝達経路の切り換え、サンギヤ106、108の制御及び自転車用内装変速ハブ100の動作について説明する。
図16及び表3に示されるように、1段位(1st)ではサンギヤ106を固定するブレーキ110とサンギヤ108を固定するブレーキ112がそれぞれ解放される。この状態では、入力側のサンギヤ106と出力側のキャリア26とがワンウェイクラッチ42で接続されている(ロック状態)。
駆動部材14からの動力は入力側のキャリア34に入力され、キャリア34がハブ軸12を中心に回転する。このとき、出力側のサンギヤ22が固定されているため、キャリア34の回転により複数の段付きピニオンギヤ104を介して入力側のサンギヤ106が回転すると共に、サンギヤ106とワンウェイクラッチ42を介して接続された出力側のキャリア26が回転し、キャリア26に支持された複数のピニオンギヤ24が公転する。これと同時に、入力側のキャリア34の回転により複数の段付きピニオンギヤ104を介して入力側のリングギヤ36及び出力側のリングギヤ28が回転する。その際、入力側のサンギヤ106及び出力側のキャリア26と、入力側のリングギヤ36及び出力側のリングギヤ28は、一定の速度差を保った状態で回転する(図19参照)。
すなわち、入力側のキャリア34に入力された動力の伝達経路は、入力側のサンギヤ106から出力側のキャリア26に伝達される経路と、入力側のリングギヤ36と一体的に回転する出力側のリングギヤ28を介して出力側のキャリア26に伝達される経路とに分流される。動力伝達経路が分流されることにより、遊星機構の各要素が反力を分担し、反力の集中を抑制することができる。そして、出力側のキャリア26からラチェット44を介してハブ胴16へ動力が伝達される。
図17及び表3に示されるように、2段位(2nd)では、ブレーキ112が作動してサンギヤ108がハブ軸12に固定され、サンギヤ108が回転しない。また、サンギヤ106を固定するブレーキ110は解放される。この状態では、入力側のサンギヤ106と出力側のキャリア26とがワンウェイクラッチ42で切断される(フリー状態)。駆動部材14からの動力は入力側のキャリア34に入力され、キャリア34がハブ軸12を中心に回転する。入力側のキャリア34が回転すると、複数の段付きピニオンギヤ104が公転し、ギヤ104Aに噛合する入力側のリングギヤ36が出力側のリングギヤ28と一体的に回転する。さらに出力側のリングギヤ28に噛合する複数のピニオンギヤ24が公転し、出力側のキャリア26が回転することにより、ハブ胴16へ動力が伝達される。
図18及び表3に示されるように、3段位(3rd)ではブレーキ110の動作によりサンギヤ106がハブ軸12に固定され、サンギヤ106が回転しない。また、サンギヤ108を固定するブレーキ112は解放される。この状態では、入力側のサンギヤ106と出力側のキャリア26とがワンウェイクラッチ42で切断される(フリー状態)。駆動部材14からの動力は入力側のキャリア34に入力され、キャリア34がハブ軸12を中心に回転する。そして、キャリア34に支持された複数の段付きピニオンギヤ104が公転し、ギヤ104Aに噛合する入力側のリングギヤ36が出力側のリングギヤ28と一体的に回転する。サンギヤ22は固定されているため、出力側のリングギヤ28に噛合する複数のピニオンギヤ24が公転し、出力側のキャリア26が回転する。そして、出力側のキャリア26からラチェット44を介してハブ胴16へ動力が伝達される。
図19には、入力側遊星歯車列102及び出力側遊星歯車列18の作動別変速比を共線図法により作図した図が示されている。前述した図6と同様に、サンギヤ22(S1)とリングギヤ28(R1)の歯数の比に基づき、横軸にサンギヤ22(S1)、キャリア26(C1)、リングギヤ28(R1)を配置する。同様に、サンギヤ106(S2a)とリングギヤ36(R2)の歯数の比、サンギヤ108(S2b)とリングギヤ36(R2)の歯数の比に基づき、横軸にサンギヤ108(S2b)、サンギヤ106(S2a)、キャリア34(C2)、リングギヤ36(R2)を配置する。
3段位(3rd)では、動力が入力されるキャリア34(C2)の回転を1とし、固定要素の入力側のサンギヤ106(S2a)をゼロとし、この2点を直線120で結ぶ。この直線120の延長線上の入力側のリングギヤ36(R2)と出力側のリングギヤ28(R1)の縦軸の大きさがこれらの回転速度となる。固定要素の出力側のサンギヤ22(S1)をゼロとし、これと出力側のリングギヤ28(R1)の回転速度の2点を直線122で結ぶ。動力が出力されるキャリア26(C1)の縦軸の大きさGが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して大幅な増速となる。
2段位(2nd)では、同様にキャリア34(C2)の回転を1とし、固定要素の入力側のサンギヤ108(S2b)をゼロとし、この2点を直線124で結ぶ。同様に固定要素の出力側のサンギヤ22(S1)をゼロとし、これと出力側のリングギヤ28(R1)の回転速度の2点を直線126で結ぶ。動力が出力されるキャリア26(C1)の縦軸の大きさHが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して増速となる。
1段位(1st)では、動力が入力されるキャリア34(C2)の回転を1とし、固定要素の出力側のサンギヤ22(S1)をゼロとし、この2点を直線128で結ぶ。キャリア34(C2)からの動力は入力側のサンギヤ106(S2a)に伝達され、サンギヤ106(S2a)とワンウェイクラッチ42で接続された出力側のキャリア26(C1)に伝達されるため、サンギヤ106(S2a)の縦軸の大きさがその回転速度となり、出力側のキャリア26(C1)の縦軸の大きさIが出力回転の大きさとなる。また、キャリア34(C2)からの動力は入力側のリングギヤ36(R2)及び出力側のリングギヤ28(R1)を介して出力側のキャリア26(C1)に伝達されるため、直線128の延長線上の入力側のリングギヤ36(R2)と出力側のリングギヤ28(R1)の縦軸の大きさがこれらの回転速度となり、出力側のキャリア26(C1)の縦軸の大きさIが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して減速となる。
このような自転車用内装変速ハブ100では、入力要素、出力要素を固定した構成とすることができ、大トルクの要素を移し換える必要がなく、変速待ちや変速ショックを抑制することができる。また、サンギヤ106、108を固定するための制御の方向を一方向のみで構成することができ、正逆両方向の制御を行う場合に比べてサンギヤ106、108を固定、解放する制御が容易であり、構成を簡略化できる。
さらに、段付きピニオンギヤ104を用いることで、多段化を実現でき、入力要素、出力要素を固定した増減速仕様を実現することができる。段付きピニオンギヤを用いて変速する場合は、サンギヤの反力が何れかの変速段に集中する可能性があるが、上述のように動力の伝達経路の分流を適切に行うことで、このような集中する抑制することができる。また、制御するサンギヤのトルクが大きい場合は、変速操作時にペタリングの踏力を弱める等の必要があるが、本実施形態では制御するサンギヤ106、108のトルクを小さくすることができるため、高負荷時の変速性能が向上し、気持ち良い変速を実現することができる。
次に、図20〜図23を用いて、本発明の第4実施形態である自転車用内装変速ハブについて説明する。なお、第1実施形態〜第3実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図20に示されるように、自転車用内装変速ハブ140は、第1実施形態と同様に入力側遊星歯車列20と出力側遊星歯車列18とを備えている。出力側遊星歯車列18には、出力側のサンギヤ22をハブ軸12に対して固定又は解放することにより動力伝達経路を切り換える動力切り換え手段としてのブレーキ142(B1)が設けられている。入力側のサンギヤ30はハブ軸12に対して固定されている。
また、自転車用内装変速ハブ140は、入力側のキャリア34と出力側のサンギヤ22とを接続又は切断するクラッチ144(C(S1/C2))を備えている。クラッチ144は、第1実施形態で用いられたワンウェイクラッチではなく、オン・オフ操作により入力側のキャリア34と出力側のサンギヤ22とを接続・切断する構成である。
この自転車用内装変速ハブ140は、低速と高速の2段変速を行えるようにした内装変速ハブであり、自転車に設けられた図示しない変速レバーの操作により、1段位(1st)、2段位(2nd)に切り換えるように構成されている。表4には、各変速段位におけるブレーキ142及びクラッチ144の接続状態が示されている。
次に、自転車用内装変速ハブ140の動力伝達経路の切り換え、サンギヤ22の制御及び自転車用内装変速ハブ140の動作について説明する。
図21及び表4に示されるように、1段位(1st)ではブレーキ142の動作により出力側のサンギヤ22がハブ軸12に固定される。また、この状態では、クラッチ144がオフ状態とされ、入力側のキャリア34と出力側のサンギヤ22とが切断されている(フリー状態)。
駆動部材14(図1参照)からの動力は入力側のキャリア34に入力される。そして、キャリア34に支持された複数のピニオンギヤ32(図1参照)を介して入力側のリングギヤ36が回転し、入力側のリングギヤ36の回転により出力側のリングギヤ28が一体的に回転する。さらに、出力側のリングギヤ28に噛合する複数のピニオンギヤ24(図1参照)を介して出力側のキャリア26が回転し、ハブ胴16(図1参照)へ動力が伝達される。
図22及び表4に示されるように、2段位(2nd)では、出力側のサンギヤ22を固定するブレーキ142が解放される。この状態では、クラッチ144がオン状態とされ、入力側のキャリア34と出力側のサンギヤ22とが接続されている(ロック状態)。
駆動部材14(図1参照)からの動力は入力側のキャリア34に入力される。キャリア34の回転により、キャリア34とクラッチ144を介して接続された出力側のサンギヤ22が回転し、出力側のサンギヤ22と噛合する複数のピニオンギヤ24(図1参照)を介して出力側のキャリア26が回転する。これと同時に、入力側のキャリア34の回転により複数のピニオンギヤ32(図1参照)を介して入力側のリングギヤ36が回転し、出力側のリングギヤ28が一体的に回転する。その際、入力側のキャリア34及び出力側のサンギヤ22と、入力側のリングギヤ36及び出力側のリングギヤ28は、一定の速度差を保った状態で回転する(図23参照)。
すなわち、入力側のキャリア34に入力された動力の伝達経路は、出力側のサンギヤ22を介して出力側のキャリア26に伝達される経路と、入力側のリングギヤ36と一体的に回転する出力側のリングギヤ28を介して出力側のキャリア26に伝達される経路とに分流される。動力伝達経路が分流されることにより、遊星機構の各要素が反力を分担し、反力の集中を抑制することができる。そして、出力側のキャリア26からハブ胴16(図1参照)へ動力が伝達される。
図23には、入力側遊星歯車列20及び出力側遊星歯車列18の作動別変速比を共線図法により作図した図が示されている。前述した図6と同様に、サンギヤ30(S2)とリングギヤ36(R2)の歯数の比に基づき、横軸にサンギヤ6サンギヤ30(S2)、キャリア34(C2)、リングギヤ36(R2)を配置すると共に、サンギヤ22(S1)とリングギヤ28(R1)の歯数の比に基づき、横軸にサンギヤ22(S1)、キャリア26(C1)、リングギヤ28(R1)を配置する。また、サンギヤ22(S1)とキャリア34(C2)はクラッチ144で接続されるため、横軸の同じ位置となる。
2段位(2nd)では、動力が入力されるキャリア34(C2)の回転を1とし、固定要素の入力側のサンギヤ30(S2)をゼロとし、この2点を直線150で結ぶ。キャリア34(C2)からの動力は入力側のリングギヤ36(R2)及び出力側のリングギヤ28(R1)を介して出力側のキャリア26(C1)に伝達されるため、直線150の延長線上の入力側のリングギヤ36(R2)及び出力側のリングギヤ28(R1)の縦軸の大きさがこれらの回転速度となり、出力側のキャリア26(C1)の縦軸の大きさJが出力回転の大きさとなる。また、キャリア34(C2)からの動力はキャリア34(C2)とクラッチ144で接続された出力側のサンギヤ22(S1)を介して出力側のキャリア26(C1)に伝達されるため、出力側のサンギヤ22(S1)の縦軸の大きさがその回転速度となり、出力側のキャリア26(C1)の縦軸の大きさJが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して増速となる。
1段位(1st)では、固定要素の出力側のサンギヤ22(S1)をゼロとし、これと出力側のリングギヤ28(R1)の回転速度の2点を直線152で結ぶ。動力は出力側のリングギヤ28(R1)を介して出力側のキャリア26(C1)に伝達されるため、動力が出力されるキャリア26(C1)の縦軸の大きさKが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して減速となる。
このような自転車用内装変速ハブ140では、入力要素、出力要素を固定した入力側遊星歯車列20及び出力側遊星歯車列18を構成することができ、大トルクの要素を移し換える必要がなく、変速待ちや変速ショックを抑制することができる。また、出力側のサンギヤ22を固定するための制御の方向を一方向のみで構成することができ、サンギヤを固定するときに正逆両方向の制御を行う場合に比べて、構成を簡略化できる。また、入力側のキャリア34にのみ入力し、出力側のキャリア26のみから出力すると共に、入力側のキャリア34と出力側のサンギヤ22とをクラッチ144で接続することにより、入力要素、出力要素を固定した増減速仕様を実現することができる。なお、分流時には増速となり、それ以外の時は各歯数の設定により減速、等速、増速に設定することができる(第4実施形態では減速仕様)。
なお、自転車用内装変速ハブ140において、入力側遊星歯車列20及び出力側遊星歯車列18の少なくとも一方に段付きピニオンギヤを設けることにより、更なる多段化を実現でき、入力要素、出力要素を固定した増減速仕様を実現することができる。
次に、図24〜図27を用いて、本発明の第5実施形態である自転車用内装変速ハブについて説明する。なお、第1実施形態〜第4実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図24に示されるように、自転車用内装変速ハブ160は、第1実施形態と同様に入力側遊星歯車列20と出力側遊星歯車列18とを備えており、入力側のサンギヤ30、出力側のサンギヤ22をハブ軸12に対して固定又は解放することにより動力伝達経路を切り換える動力切り換え手段としてのブレーキ162(B2)、ブレーキ142(B1)が設けられている。
自転車用内装変速ハブ160は、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26を接続又は切断するワンウェイクラッチ42(OWC)を備えている。ワンウェイクラッチ42は第1実施形態と同じ構成である。また、自転車用内装変速ハブ160は、駆動部材14(図1参照)からの動力は入力側のキャリア34のみに入力され、出力側のリングギヤ28のみからハブ胴16(図1参照)へ動力が出力されるように構成されている。
この自転車用内装変速ハブ160は、低速と高速の2段変速を行えるようにした内装変速ハブであり、図示しない変速レバーの操作により、1段位(1st)、2段位(2nd)に切り換えるように構成されている。表5には、各変速段位におけるブレーキ142、162及びワンウェイクラッチ42の接続状態が示されている。
次に、自転車用内装変速ハブ160の動力伝達経路の切り換え、サンギヤ22、30の制御及び自転車用内装変速ハブ160の動作について説明する。
図25及び表5に示されるように、1段位(1st)ではブレーキ142、162の動作により出力側のサンギヤ22がハブ軸12に固定され、入力側のサンギヤ30がハブ軸12から解放される。また、この状態では、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26とがワンウェイクラッチ42で接続されている(ロック状態)。
駆動部材14(図1参照)からの動力が入力側のキャリア34に入力されると、入力側のキャリア34の回転により複数のピニオンギヤ32(図1参照)を介して入力側のリングギヤ36と出力側のリングギヤ28が一体的に回転する。これと同時に、入力側のキャリア34の回転により複数のピニオンギヤ32(図1参照)を介して入力側のサンギヤ30が回転し、サンギヤ30とワンウェイクラッチ42を介して接続された出力側のキャリア26が回転する。さらに複数のピニオンギヤ24(図1参照)を介して出力側のリングギヤ28に動力が伝達される。その際、入力側のサンギヤ30及び出力側のキャリア26と、入力側のリングギヤ36及び出力側のリングギヤ28は、一定の速度差を保った状態で回転する(図27参照)。
すなわち、入力側のキャリア34に入力された動力の伝達経路は、入力側のリングギヤ36と一体的に回転する出力側のリングギヤ28に伝達される経路と、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26を介して出力側のリングギヤ28に伝達される経路とに分流される。動力伝達経路が分流されることにより、遊星機構の各要素が反力を分担し、反力の集中を抑制することができる。そして、出力側のリングギヤ28からハブ胴16(図1参照)へ動力が伝達される。
図26及び表5に示されるように、2段位(2nd)では、ブレーキ142、162の動作により入力側のサンギヤ30がハブ軸12に固定され、出力側のサンギヤ22がハブ軸12から解放される。この状態では、入力側のサンギヤ30と出力側のキャリア26とがワンウェイクラッチ42により切断されている(フリー状態)。
駆動部材14(図1参照)からの動力が入力側のキャリア34に入力されると、複数のピニオンギヤ32(図1参照)を介して入力側のリングギヤ36が回転し、出力側のリングギヤ28が一体的に回転する。そして、出力側のリングギヤ28からハブ胴16(図1参照)へ動力が伝達される。
図27には、入力側遊星歯車列20及び出力側遊星歯車列18の作動別変速比を共線図法により作図した図が示されている。前述した図6と同様に、サンギヤ22(S1)とリングギヤ28(R1)の歯数の比に基づき、横軸にサンギヤ22(S1)、キャリア26(C1)、リングギヤ28(R1)を配置すると共に、サンギヤ30(S2)とリングギヤ36(R2)の歯数の比に基づき、横軸にサンギヤ30(S2)、キャリア(C2)、リングギヤ36(R2)を配置する。また、サンギヤ30(S2)とキャリア26(C1)はワンウェイクラッチ42で接続されるため、横軸の同じ位置となる。
2段位(2nd)では、動力が入力されるキャリア34(C2)の回転を1とし、固定要素の入力側のサンギヤ30(S2)をゼロとし、この2点を直線170で結ぶ。キャリア34(C2)からの動力は入力側のリングギヤ36(R2)及び出力側のリングギヤ28(R1)に伝達されるため、直線170の延長線上の入力側のリングギヤ36(R2)及び出力側のリングギヤ28(R1)の縦軸の大きさLが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して大幅な増速となる。
1段位(1st)では、動力が入力されるキャリア34(C2)の回転を1とし、固定要素の出力側のサンギヤ22(S1)をゼロとし、この2点を直線172で結ぶ。キャリア34(C2)からの動力は入力側のリングギヤ36(R2)及び出力側のリングギヤ28(R1)に伝達されるため、直線172の延長線上の出力側のリングギヤ28(R1)の縦軸の大きさMが出力回転の大きさとなる。また、キャリア34(C2)からの動力はサンギヤ30(S2)とワンウェイクラッチ42で接続された出力側のキャリア26(C1)を介して出力側のリングギヤ28(R1)に伝達されるため、サンギヤ30(S2)と出力側のキャリア26(C1)の縦軸の大きさがそれらの回転速度となり、出力側のリングギヤ28(R1)の縦軸の大きさMが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して増速となる。
このような自転車用内装変速ハブ160では、入力要素、出力要素を固定した入力側遊星歯車列20及び出力側遊星歯車列18を構成することができ、大トルクの要素を移し換える必要がなく、変速待ちや変速ショックを抑制することができる。また、サンギヤ22、30を固定するための制御の方向を一方向のみで構成することができ、サンギヤを固定するときに正逆両方向の制御を行う場合に比べて、構成を簡略化できる。なお、分流時およびそれ以外のときも増速となる。
なお、自転車用内装変速ハブ160において、入力側遊星歯車列20及び出力側遊星歯車列18の少なくとも一方に段付きピニオンギヤを設けることにより、更なる多段化を実現できる。
次に、図28〜図31を用いて、本発明の第6実施形態である自転車用内装変速ハブについて説明する。なお、第1実施形態〜第5実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図28に示されるように、自転車用内装変速ハブ180は、第1実施形態と同様に入力側遊星歯車列20と出力側遊星歯車列18とを備えており、入力側のサンギヤ30、出力側のサンギヤ22をハブ軸12に対して固定又は解放することにより動力伝達経路を切り換える動力切り換え手段としてのブレーキ162(B2)、ブレーキ142(B1)が設けられている。
自転車用内装変速ハブ180は、入力側のキャリア34と出力側のサンギヤ22とを接続又は切断するクラッチ144を備えている。また、自転車用内装変速ハブ180は、駆動部材14(図1参照)からの動力は入力側のリングギヤ36のみに入力され、出力側のキャリア26のみからハブ胴16(図1参照)へ動力が出力されるように構成されている。
この自転車用内装変速ハブ180は、低速と高速の2段変速を行えるようにした内装変速ハブであり、図示しない変速レバーの操作により、1段位(1st)、2段位(2nd)に切り換えるように構成されている。表6には、各変速段位におけるブレーキ142、162及びクラッチ144の接続状態が示されている。
次に、自転車用内装変速ハブ180の動力伝達経路の切り換え、サンギヤ22、30の制御及び自転車用内装変速ハブ180の動作について説明する。
図29及び表6に示されるように、1段位(1st)ではブレーキ142、162の動作により出力側のサンギヤ22がハブ軸12に固定され、入力側のサンギヤ30がハブ軸12から解放される。また、クラッチ144はオフ状態とされ、入力側のキャリア34と出力側のサンギヤ22とが切断されている(フリー状態)。
駆動部材14(図1参照)からの動力が入力側のリングギヤ36に入力されると、出力側のリングギヤ28が一体的に回転する。さらに、出力側のリングギヤ28に噛合する複数のピニオンギヤ24(図1参照)を介して出力側のキャリア26が回転し、ハブ胴16(図1参照)へ動力が伝達される。
図30及び表6に示されるように、2段位(2nd)では、ブレーキ142、162の動作により入力側のサンギヤ30がハブ軸12に固定され、出力側のサンギヤ22がハブ軸12から解放される。また、クラッチ144はオン状態とされ、入力側のキャリア34と出力側のサンギヤ22とが接続されている(ロック状態)。
駆動部材14(図1参照)からの動力が入力側のリングギヤ36に入力されると、複数のピニオンギヤ32(図1参照)を介して入力側のキャリア34が回転し、キャリア34とクラッチ144を介して接続された出力側のサンギヤ22が回転し、複数のピニオンギヤ24(図1参照)を介して出力側のキャリア26が回転する。これと同時に、入力側のリングギヤ36の回転により出力側のリングギヤ28が一体的に回転し、複数のピニオンギヤ24(図1参照)を介して出力側のキャリア26に動力が伝達される。その際、入力側のキャリア34及び出力側のサンギヤ22と、入力側のリングギヤ36及び出力側のリングギヤ28は、一定の速度差を保った状態で回転する(図31参照)。
すなわち、入力側のリングギヤ36に入力された動力の伝達経路は、入力側のキャリア34から出力側のサンギヤ22を介して出力側のキャリア26に伝達される経路と、出力側のリングギヤ28を介して出力側のキャリア26に伝達される経路とに分流される。動力伝達経路が分流されることにより、遊星機構の各要素が反力を分担し、反力の集中を抑制することができる。そして、出力側のキャリア26からハブ胴16(図1参照)へ動力が伝達される。
図31には、入力側遊星歯車列20及び出力側遊星歯車列18の作動別変速比を共線図法により作図した図が示されている。前述した図6と同様に、サンギヤ30(S2)とリングギヤ36(R2)の歯数の比に基づき、横軸にサンギヤ30(S2)、キャリア(C2)、リングギヤ36(R2)を配置すると共に、サンギヤ22(S1)とリングギヤ28(R1)の歯数の比に基づき、横軸にサンギヤ22(S1)、キャリア26(C1)、リングギヤ28(R1)を配置する。また、キャリア34(C2)とサンギヤ22(S1)はクラッチ144で接続されるため、横軸の同じ位置となる。
2段位(2nd)では、動力が入力されるリングギヤ36(R2)の回転を1とし、固定要素の入力側のサンギヤ30(S2)をゼロとし、この2点を直線190で結ぶ。この直線190の出力側のキャリア26(C1)の縦軸の大きさNが出力回転の大きさとなる。また、リングギヤ36(R2)からの動力はキャリア34(C2)から出力側のサンギヤ22(S1)を介して出力側のキャリア26(C1)に伝達されるため、キャリア34(C2)とサンギヤ22(S1)の縦軸の大きさがこれらの回転速度となり、出力側のキャリア26(C1)の縦軸の大きさNが出力回転の大きさとなる。これは入力に対して減速となる。
1段位(1st)では、動力が入力されるリングギヤ36(R2)の回転を1とし、固定要素の出力側のサンギヤ22(S1)をゼロとし、この2点を直線192で結ぶ。リングギヤ36(R2)からの動力は出力側のリングギヤ28(R1)を介して出力側のキャリア26(C1)に伝達されるため、直線192の出力側のキャリア26(C1)の縦軸の大きさOが出力回転の大きさとなる。これは入力に対し大幅な減速となる。
このような自転車用内装変速ハブ180では、入力要素、出力要素を固定した入力側遊星歯車列20及び出力側遊星歯車列18を構成することができ、大トルクの要素を移し換える必要がなく、変速待ちや変速ショックを抑制することができる。また、サンギヤ22、30を固定するための制御の方向を一方向のみで構成することができ、サンギヤを固定するときに正逆両方向の制御を行う場合に比べて、構成を簡略化できる。なお、分流時およびそれ以外のときも減速となる。
なお、自転車用内装変速ハブ180において、入力側遊星歯車列20及び出力側遊星歯車列18の少なくとも一方に段付きピニオンギヤを設けることにより、更なる多段化を実現できる。
なお、上記第1実施形態〜第6実施形態に記載の自転車用内装変速ハブの作動別変速比は、図示した共線図に限定されるものではなく、サンギヤ、リングギヤ、ピニオンギヤの歯数を適宜に変更することができる。