JP5249909B2 - 焼付け補修材 - Google Patents

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Description

本発明は、耐火性粉体と有機バインダーとを含む焼付け補修材に関する。
以下、制限的意味なく転炉の投げ込み補修法を例にとって、焼付け補修材の一施工形態を説明する。
製鋼プロセスで溶鉄の精錬を担う転炉の補修法として、出鋼直後の転炉に、ビニール袋等の焼失性をもつ袋で梱包された焼付け補修材を投げ込む方法が知られている。
焼付け補修材には、マグネシアクリンカー等からなる耐火性粉体に、ピッチやレジン等の有機バインダーを添加したものが用いられている。
炉内に投げ込まれた焼付け補修材は、炉熱で一旦軟化し、炉壁の損傷した部分に展開した後、有機バインダー中の揮発分の逸散、及び有機バインダー中の固定炭素分によるカーボンボンドの形成を伴いながら固化する。
焼付け補修材に要求される特性の一つに、固化に要する時間(以下、固化時間という。)が短いことが挙げられる。焼付け補修材の固化時間が短い程、転炉の補修をすみやかに終えることができ、転炉の稼動率の向上に貢献する。
特許文献1は、固化時間の短縮を図るために、焼付け補修材にマグネシウム粉を添加することを提案している。特許文献1によると、マグネシウム粉を添加することで、炉内面からの受熱に加え、施工体の内部からもマグネシウム粉の燃焼熱を生じるため、固化時間の大幅な短縮が図られるとされている。
特開平11−240771号公報
焼付け補修材で構成される施工体の内部の組織は、表層部の組織に比べて多孔質になりやすい。この問題は、特に焼付け補修材を厚く施工する場合に深刻化するため、施工厚を増しても、それに見合った補修効果が得られにくい。
本発明者によると、この主な原因は、施工体の内部における有機バインダーの燃焼が、表層部における有機バインダーの燃焼よりも遅れるため、内部に有機バインダーの揮発分が閉じ込められた状態で固化が進行することにあると考えられる。
特許文献1は、マグネシウム粉の使用により、施工体内部からの発熱が可能と説明しているが、施工体内部にはマグネシウム粉の燃焼に必要な酸素が充分に存在しないため、内部からの発熱が充分に得られるとは言いがたい。
このため、特許文献1の技術によっては、施工体の内部組織の多孔質化の問題は解消しがたく、また固化時間の短縮に関しても改善の余地を残している。
本発明の目的は、固化時間の短縮を図ることができ、かつ施工体の内部組織が多孔質化しにくい焼付け補修材を提供することである。
本発明の一観点によれば、耐火性粉体と有機バインダーとを含む焼付け補修材において、Mnの酸化物とMnよりもイオン化傾向の小さい元素の酸化物との少なくともいずれか一方よりなる粉末(以下、易還元性粉末という。)を、有機バインダーに対する外かけ5質量%以上含むことを特徴とする焼付け補修材が提供される。
易還元性粉末が熱間で酸素を放出する分解反応を起こすため、施工体の内部に有機バインダーの揮発分の燃焼に必要な酸素を確保することができる。このため、施工体の内部から揮発分の燃焼を促進でき、施工体内部への揮発分の残留を抑制できるため、施工体の内部組織が多孔質化しにくくなる。燃焼によって施工体の固化が促進されるため、固化時間の短縮を図ることができる。
耐火性粉体として、例えば、マグネシアクリンカー等のマグネシア質原料、ドロマイトクリンカー等のドロマイト質原料、カルシアクリンカー等のカルシア質原料、スピネルクリンカー等のスピネル質原料、シリカ質原料、ジルコン質原料、アルミナ質原料、炭素質原料、炭化珪素質原料や窒化珪素質原料等の非酸化物原料、及びこれらを原料に用いた使用済み耐火物の粉砕物から選択される1種以上を、被補修面の材質等に応じて適宜に選択して用いることができる点は従来と変わりない。耐火性粉体は、施工体に密充填構造を付与するために、粗粒、中粒、微粒に粒度調整される。
有機バインダーは、熱間でカーボンボンドを形成する物質であり、例えば、瀝青、樹脂、又はそれらの組み合わせを用いることができる。瀝青としては、例えば、ピッチ及びタールの少なくともいずれか一方を用いることができ、樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂等のカーボン質樹脂から選択される1種以上を用いることができる。
有機バインダーの添加量が、施工条件に応じて当業者により適宜に選択できることは従来と変わりない。例えば、有機バインダー/耐火性粉体の質量比は10/90〜40/60とすることができる。10/90以上とすることで、カーボンボンドの形成による強度及び接着性を高める効果が特に顕著となり、40/60以下に抑えることで、焼付き施工体の組織の緻密性を高めることができる。
湿潤剤を、有機バインダーと併用してもよい。湿潤剤は、焼付け補修材の流動性及び充填性を高める効果をもつ。湿潤剤としては、エチレングリコール等の多価アルコール、灯油、アントラセン油、軽油、重油、クレオソート油、ワックス油、パラフィン、p−アルキルフェノール類、ラクタム類、ビスフェノール、ジフェニル、ジフェニルアミン等から選択される1種を用いることができる。湿潤剤を用いる場合、その添加量は、有機バインダー100質量%に対する外かけで、100質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
易還元性粉末としては、二酸化マンガン粉が好ましい。二酸化マンガン粉は、熱間、具体的には、主として400℃以上1000℃以下の温度範囲で、2MnO→Mn+1/2O、及び3Mn→2Mn+1/2Oの少なくともいずれか一方の反応式に従って施工体中に酸素を放出する。
これにより、たとえ焼付き補修材を厚く施工する場合であっても、施工体の内部に、有機バインダーの揮発分の燃焼に必要な酸素を確保することができ、施工体の内部からの燃焼を促進することができる。従って、施工体内部への揮発分の残留量を低減でき、施工体の内部組織が多孔質化しにくくなる。燃焼によって施工体の固化が促進されるため、固化時間の短縮を図ることができる。
二酸化マンガン粉の粒径が小さい程、上記効果が顕著に発現しやすい。二酸化マンガン粉の粒径は、JIS−Z8801に規定する標準篩を用いた測定で、0.5mm以下が好ましく、75μm以下がより好ましい。
二酸化マンガン粉の添加量は、有機バインダー100質量%に対する外かけ5質量%以上が必要である。5質量%未満だと、二酸化マンガン粉から供給される酸素量が揮発分の燃焼を促進するには不充分であり、上記効果が殆ど発現しない。
二酸化マンガン粉の添加量の上限は、特に制限されない。二酸化マンガン粉の添加量が多い程、固化時間が短くなり、かつ内部組織の緻密さも良好になる傾向にある。但し、二酸化マンガン粉の添加量が多すぎると、その分、主材たるべき耐火性粉体及び有機バインダーの割合が減少するため、焼付け補修材としての常識的な特性を担保するために、二酸化マンガン粉の添加量が自ずと制限されることは当業者に自明であろう。
好ましくは、二酸化マンガン粉の添加量を、耐火性粉体と有機バインダーとの合量100質量%に対する外かけ12質量%以下に抑えることで、さらに耐食性改善の効果を兼ね備えることができる。二酸化マンガン粉の分解反応の結果施工体中に残留するMnやMnは融点が高い成分とは言えないため、二酸化マンガン粉の添加量をこのように制限することで、施工体の融点が下がることを防止し、上述した内部組織の緻密化の効果と相まって、耐食性改善の効果も得られる。
金属粉を、二酸化マンガン粉と併用してもよい。金属粉としては、例えば、マグネシウム粉、アルミニウム粉、及び金属シリコン粉から選択される1種を用いることができる。金属粉を添加する場合、その添加量は、有機バインダーに対する外かけ5質量%以上が好ましい。
金属粉は、二酸化マンガン粉によって供給される酸素で燃焼するため、施工体内部から燃焼を生じる。これにより、金属粉を用いない場合に比べると、有機バインダーの揮発分の燃焼が促進され、固化時間を短縮する効果、及び施工体の内部組織が緻密化される効果がいっそう顕著となる。
なお、金属粉の使用によるこの効果は、二酸化マンガン粉の使用下においてはじめて奏される。二酸化マンガン粉を使用することなく金属粉を使用しても、施工体内部に充分な酸素が存在しないため、施工体内部からの燃焼が発現しがたい。
金属粉の添加量の上限は、特に制限されない。但し、金属粉の添加量が多すぎると、その分、主材たるべき耐火性粉体及び有機バインダーの割合が減少するため、焼付け補修材としての常識的な特性を担保するために、金属粉の添加量が自ずと制限されることは当業者に自明であろう。
好ましくは、金属粉の添加量を、耐火性粉体と有機バインダーとの合量100質量%に対する外かけ10質量%以下に抑えることで、施工時における本補修材の展開性及び充填性を良好に担保することができる。さらに、金属粉の不完全燃焼を防止する観点から、金属粉の配合量を二酸化マンガン粉の配合量以下とすることがより好ましい。
本焼付け補修材の施工方法は特に限定されない。典型的には、フレコンバックやビニール袋等の焼失性袋に収容された状態で、補修対象部位に投入される。また、本焼付け補修材を予めブロック状又は塊状に加圧成形しておくことで、焼失性袋を使用することなく、補修対象部位への投入が可能となる。また、本焼付け補修材は、配管内をエアー搬送し、補修対象部位に吹付けることも可能である。
本焼付け補修材の用途は特に限定されない。本焼付け補修材は、転炉、電気炉、溶鋼鍋、溶銑鍋、脱ガス炉、電気炉、出銑樋その他の溶融金属容器の熱間での補修に広く用いることができる。本明細書において、熱間とは、溶融金属容器の内面が400℃以上である状態を指すものとする。
本焼付け補修材は、厚く施工する場合に特に意義が大きい。厚く施工する場合であっても、固化時間の短縮を図ることができ、かつ施工体の内部組織の多孔質化を防止できる。例えば、転炉の出鋼口スリーブ若しくは炉底羽口の周囲、取鍋のノズル孔の周囲、又は溶融金属容器内面の異常溶損した箇所といった比較的深い、例えば深さ30mm以上、より具体的には深さ50mm以上の凹部の補修に好適である。但し、本焼付け補修材は、10mm程度の厚さに施工する場合にも、好ましく利用できることは言うまでもない。
表1に、焼付け補修材の具体例と評価結果とを示す。
表1で、耐火性粉体には、マグネシアクリンカーを用いた。有機バインダーには、フェノール樹脂とピッチとを質量比1:3の割合で組み合わせたものを用いた。易還元性粉末には、粒径75μm以下の二酸化マンガン粉を用いた。金属粉には、マグネシウム粉を用いた。
早期固化性は、次の要領で評価した。深さ130mm、内径70mmの円柱状凹部がくり貫かれた煉瓦を準備し、これを1000℃に加熱した状態でその凹部に焼付け補修材を充填する。充填後、3分毎に、重さ160g外径2.5mmの丸棒を自重で凹部内の施工体に貫入させ、貫入深さがゼロになった場合を固化完了とする。充填から固化完了までの時間を固化時間とし、固化時間の短さによって◎、○、△、×の4段階で相対評価した。
内部組織の緻密さは、次の要領で評価した。上述した固化が完了した施工体から、その厚さ方向中央部を含む部分を所定寸法切り出して、その見かけ気孔率を測定する。見かけ気孔率の小ささによって◎、○、△、×の4段階で相対評価した。
耐食性は、次の要領で評価した。水平に置かれたプレート状定形耐火物を1000℃に加熱した状態で、その表面上の100mm×200mm以上の領域に、焼付け補修材を厚さ約50mmに施工する。既述の要領で焼付け補修材の固化を判定した後、プレート状定形耐火物を垂直に立て、焼付け補修材の施工体に、転炉スラグと鋼片を1:1の質量割合で組み合わせた侵食材を溶射する。侵食材の供給量や溶射時間等の条件は共通とし、溶射によって施工体がえぐられる深さによって◎、○、△、×の4段階で相対評価した。
Figure 0005249909
例Aは、二酸化マンガン粉を含まない比較例であり、早期固化性、内部組織の緻密さ、及び耐食性のいずれの評価も相対的に劣る。
例Bは、例Aに金属粉を添加したもので、早期固化性は改善されたが、内部組織の緻密さ及び耐食性は依然として劣る。
例Cは、例Aに二酸化マンガン粉を極少量添加したもので、二酸化マンガン粉の添加量が少なすぎ、例Aと同様、いずれの評価にも劣る。
例D〜Kは、例Aに二酸化マンガン粉を適量添加したもので、例Aに比べると、いずれの評価においても改善がみられた。二酸化マンガン粉の添加量が多い程、早期固化性及び内部組織の緻密さが良好になる傾向にある。
例Fは、例Eに金属粉を添加したもので、例Eに比べると、早期固化性及び内部組織の緻密さが改善された。また、例Hは、例Gに金属粉を添加したもので、例Gに比べると、早期固化性が改善された。これらの結果は、金属粉が二酸化マンガン粉から供給される酸素で施工体内部から燃焼を生じることで、有機バインダーの揮発分の燃焼がいっそう促進されたことによると考えられる。
例Lは、二酸化マンガン粉の添加量が多すぎたためか、例Aに対して、耐食性改善の効果はみられなかった。但し、例Lは、早期固化性及び内部組織の緻密さの点で、例Aに対して改善効果を示すため、好ましい実施例である。
なお、例Lは、内部組織の緻密さの点で良好であるため、二酸化マンガン粉の多量添加に伴って耐食性の改善効果が小さくなる理由は、二酸化マンガン粉が放出した酸素によるカーボンボンドの酸化というよりも、むしろ二酸化マンガン粉の分解反応の結果に残留するMnやMnに原因すると考えられる。
即ち、MnやMnは耐火性粉体に用いたマグネシアクリンカーよりも融点が低いため、これらが多量に施工体中に存在することで、施工体の融点が下がったことが、耐食性の改善効果が小さくなる原因と考えられる。
例Mは、有機バインダーの使用量が40質量部で、二酸化マンガン粉を含まない比較例である。
例Nは、例Mに二酸化マンガン粉を適量添加したもので、例Mに比べると、各評価が改善された。例Nは、例Dよりも有機バインダーが多いため、二酸化マンガン粉による効果が発現するには、例Dよりも多くの二酸化マンガン粉が必要であった。
例Oは、例Nよりも二酸化マンガン粉を増やしたもので、例Nに比べると、早期固化性及び内部組織の緻密さがさらに改善された。
例Pは、有機バインダーの使用量が10質量部で、二酸化マンガン粉を含まない比較例である。
例Qは、例Pに二酸化マンガン粉を適量添加したもので、例Pに比べると、早期固化性が改善された。例Qは、例Dよりも有機バインダーが少ないため、二酸化マンガン粉による効果が発現するには、例Dよりも少ない量の二酸化マンガン粉で充分であった。
例Rは、例Qよりも二酸化マンガン粉を増やしたもので、例Qに比べると、早期固化性がさらに改善された。
例D、N、及びQの結果が示すように、二酸化マンガン粉の必要量は、有機バインダーの使用量に依存する。従って、二酸化マンガン粉の添加量の下限は、有機バインダーの使用量に対して規定することが適切である。例D、N、Qの結果から、二酸化マンガン粉の添加量は、有機バインダーに対する外かけ5質量%以上が必要である。
金属粉の役割は、施工体の内部から有機バインダーの燃焼を促進することであるから、金属粉の添加量も、有機バインダーの使用量に対して規定することが適切である。例F及びHの結果から、金属粉を添加する場合、その添加量は、有機バインダーに対する外かけ5質量%以上が好ましいと考えられる。
また、例Lの結果において述べたように、耐食性については、施工体内に残留するMnやMnの量に依存する。例L、K、O、及びRの結果から、耐食性改善の効果の確実性を高めるためには、二酸化マンガン粉の添加量を、耐火性粉体と有機バインダーとの合量100質量%に対する外かけで、12質量%以下に抑えることが好ましく、10質量%以下に抑えることがより好ましい。
以上の実施例で示したように、易還元性粉末が二酸化マンガン粉である場合にその効果が確認された。二酸化マンガンよりも還元されやすい物質からなる粉末も、熱間で酸素を放出するといえるので、二酸化マンガン粉と同様の効果を示すと考えられる。また、二酸化マンガンに限らず、Mnの酸化物も同様の効果を示すと考えられる。
このことを踏まえ、一般にイオン化傾向が小さい元素程、還元されやすいことを考慮すると、易還元性粉末としては、Mnの酸化物と、Mnよりもイオン化傾向の小さい元素(例えば、Zn、Co、Ni、Sn、Cu、Ti、Ta、V等)の酸化物との少なくともいずれか一方よりなるものを用いうると推察される。
以上、本発明の具体例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、種々の組み合わせ及び改良が可能なことは当業者に自明であろう。

Claims (2)

  1. 耐火性粉体と有機バインダーとを含む焼付け補修材において、Mnの酸化物とMnよりもイオン化傾向の小さい元素の酸化物との少なくともいずれか一方よりなる粉末を、有機バインダーに対する外かけ5質量%以上含むことを特徴とする焼付け補修材。
  2. さらに、金属粉を有機バインダーに対する外かけ5質量%以上含む請求項1に記載の焼付け補修材。
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