したがって、第1の局面において、本発明は、β-AR相同シクロペプチド変異体(本明細書において「環状ペプチド」または「シクロペプチド」などとも称する)、特に、β1-AR相同シクロペプチド変異体、すなわちβ1-ECII相同シクロペプチド変異体に関する。これらのシクロペプチド変異体/環状ペプチドの構造は、個々の分子内ジスルフィド結合を1つだけ形成できることを特徴とする。
特に、第1の局面において、本発明は、式I:
シクロ(x-xh-Cys-x-xa-xb-xc-x-Cys-y-xi-x)(I)
(式中、
a) xは、Cys以外のアミノ酸であり;
b) hは、1〜15の任意の整数であり;
c) iは、0〜14の任意の整数であり;
d) xa、xbおよびxcの1つはProであり;
e) yは、Cys以外のアミノ酸であり;
f) 環状ペプチドは少なくとも16個で最大25個のアミノ酸からなる)
の環状ペプチドに関する。
特に好ましい態様は、後述するように、式VII、IX、IX’、VIまたはVIIIで示す特定の環状ペプチドである。
本発明は、以下に本明細書および添付の実施例に記載のように、驚くべきことに、単一の規定された個々の分子内ジスルフィド結合を形成することができるシステインを2つだけ含む変異体環状ペプチドが、抗β-AR抗体を阻害することもでき、刺激性抗β1-AR抗体の阻害に有用であることがわかったため、上記に示した技術的課題を解決するものである。
さらに驚くべきことに、本発明に関連して、本明細書に記載および提供する環状構造を有するペプチド変異体(すなわち、環状ペプチド)は、立体配座的抗β-AR抗体の認識または除去およびその抗体中和(すなわち、医薬的)潜在性の両方に関して、その線状対応物よりも優れていることがわかった。これらの所見は、それぞれELISA競合アッセイおよび機能的(cAMP)FRETアッセイを例示的に使用することによって得られた。
また、単一の規定された個々の分子内ジスルフィド結合を形成することができるシステインを2つだけ含む本発明の環状ペプチドは、容易に得られ/製造され、生化学的に特徴づけされ、精製され得る。これは、同じシクロペプチド異性体の純粋な部分が必要とされる場合、特にそうである。本発明に関連して、異なる分子内ジスルフィド結合を有するシクロペプチド異性体を含むシクロペプチド異性体、すなわち立体異性体の混合物は回避される。本明細書において以下に記載するように、この回避のため、すべて同じ分子内ジスルフィド結合を有する異性体を含む特異的で純粋な医薬品(GMP基準を満たす)が得られ得る。
システイン残基の1つがセリン残基で置換される精密な性質によって、β1-ECII由来の環状ペプチドの抗体中和効力が顕著に決定されることは、本発明に関連して、および添付の実施例に示すように、さらなる驚くべき所見であった。
特に、それぞれ本明細書に例示的に好ましく開示した25量体シクロペプチド(式VII/IX)の18位、本明細書に例示的に好ましく開示した22量体シクロペプチド(式IX’)の17位、または本明細書に例示的に好ましく開示した18量体シクロペプチド(式VI/VIII)の14位のものなどのCys→Ser置換は、インビトロで優れた抗体中和効果および薬理学的効果を有する環状ペプチド(Cys-Ser環状ペプチド)をもたらす(図4〜11および27)が、それぞれ本明細書に例示的に開示した25量体、22量体または18量体環状ペプチド(Ser-Cys環状ペプチド)の17、16または13位におけるCys→Ser置換は、驚くべきことに、ほぼ阻害効果がなかった。この阻害効果は、抗体スカベンジャーとしての性質に関しても、例えば図4〜10に見られるようなインビトロレセプター刺激の中和機能性抗体効果を阻害する能力に関しても検出され得なかった。
ECII-β1-ARドメインのほぼ完全な立体模倣は、22個のアミノ酸、例えばヒトβ1-ARの公開された元の一次配列の21個のアミノ酸、すなわちアミノ酸200(R)〜221(T)(Frielle et al.1987、PNAS 84、第7920〜7924頁による番号付け)と、合成環を222位で閉じて22AAシクロペプチドを形成するためのさらなるアミノ酸残基(例えばグリシン(G))とを含む第2ループ相同環化ペプチドによって得られ得ることは、本発明に関連するさらなる所見であった。
理論に拘束されることを望まないが、環状ペプチドの心臓保護および免疫調節活性はそのコンホメーションに大きく依存する。さらに、本発明に関連して、(予想)閉環部位(またはそれに相当する位置)への最も小さい天然アミノ酸グリシンの導入により、抗β1-AR自己抗体の増強された結合がもたらされる、すなわち、見かけ上、ECII-β1-ARドメインとの22AAシクロペプチドの類似性がさらに増強されることがわかった。特に、とりわけ添付の実施例は、cyc22AAシクロペプチドが、より大きい(すなわち、cyc25AAペプチド)またはより小さい(すなわち、cyc18AAペプチド)他のECII模倣シクロペプチドよりもインビボで有意に高い抗体遮断効率を有することを示す。前記22AAシクロペプチドに関するコンピュータ支援モデル設計試験により、予測天然第2細胞外ループ後方ヘリックスと比較した場合、シクロペプチドの塩基(予想抗体結合部位と反対側)において大きさが計算上4.5オングストローム(4.5Å)だけ差を有する予測第2細胞外ループ構造の優れた模倣が確認された(添付の図24も参照のこと)。さらに、本明細書および添付の実施例において、特に前記22AAシクロペプチドが、異常に高い効率で抗β1-AR自己抗体の力価を低下させることが示された。
環状22AAペプチド内に存在する3つのシステインの1つの置換により、2つの残留システイン間への、強化されたジスルフィド結合(二重環化によって生じる第2の「内部」環として)の導入が可能になるため、得られる環状22AAシクロペプチドもまた、生化学的に明白に規定される生成物を表す(図25および26もまた参照)。
また、驚くべきことに、25位(25量体シクロペプチド変異体)または18位(18量体シクロペプチド変異体)におけるGln←→D-Glu置換は、その長さに関係なく; すなわち、図6、7および9に示すように25個のアミノ酸対18個のアミノ酸で、シクロペプチドの遮断能に有意に影響しないことがわかった。
また、以下の実施例にも、本明細書に開示した環状ペプチドが、例えば3つのCys残基を含むペプチド(例えばWO 2006/103101に開示されたCys/Cys環状ペプチド)と比べて改善された特徴を示すことを記載している。本発明の環状ペプチドの改善された特徴の例は、抗β1-AR抗体を遮断する極めて良好な能力、およびGMP基準に従うその高い再現性である。
本発明に関連して、インビトロ所見は、一般的にインビボ試験において確認された(図12〜16および28/29)。興味深いことに、線状ペプチドのものと比較した場合のCys18,17または14→Ser18,17または14変異シクロペプチドの遮断効率の差は、インビボでさらに顕著であった(図5、7および14〜16)。抗β1-アドレナリン作動性抗体誘導性自己免疫心筋症の確立されたラットモデル(Jahns、2004)を用いて、作製したβ1-ECII相同シクロペプチド変異体のインビボ有効性を評価した。インビボデータは、開示した変異シクロペプチド(例えば、18AA Cys/Serシクロペプチド)の効率が等しく投与用量に依存し得ることを示す(図14〜16)。
また、インビボ実験により、変異体シクロペプチドの抗体遮断能は、見かけ上、25量体から18量体シクロペプチドへのアミノ酸の数の低減によって影響されないことが示された。インビトロおよびインビボ両方のデータは、これらの2つの2システイン含有単一ジスルフィド結合25AA Cys/Serまたは18AA Cys/Serシクロペプチド変異体の優れた比較可能性を示す。しかしながら、1.0mg/kg 25AA量体Cys/Serならびに高用量(すなわち、4.0mg/kg Bw)18AA量体Cys/Ser 変異体の両方により、抗体力価の初期の一過性の増大がもたらされ、したがってレセプター抗体力価の有意な低下を第3または第4のシクロペプチド適用(第3または第4治療月)まで延期させたことに注目されたい。この現象は、1.0または2.0mg/kgのいずれのBw用量の18AA Cys/Serシクロペプチド変異体でも起こらなかった(図16B、C)。
特に本明細書に開示した18量体または25量体環状ペプチドが投与された動物は、異常の徴候を示さず、投与されたペプチドの所望の効果、すなわち抗β1-AR抗体の遮断のみが検出された。したがって、本明細書において提供するペプチドは、適用された投与計画において望ましくない副作用または毒性を示さない。これは、さらに本明細書において、本発明の環状ペプチドが腎臓に対して毒性を及ぼさない(腎糸球体膜の機械的閉塞が検出されない; 図23)ことを示すことにより示された。また、腎臓機能を示す通常の実験パラメータは、12ヶ月のCP適用の間、正常なままであり、非処理対照動物と異ならなかった(図22A、B)。
本発明の変異シクロペプチドの抗体遮断能は、ペプチドが18AAより短くなく、25AAより長くない限り、ペプチドの長さに影響されない。これは、25個から18個へのペプチドのアミノ酸の数の低減によって例証的に示された。アミノ酸18〜25個の範囲内では、22個のアミノ酸を有する環状ペプチドが、本発明によると最も効果的であり、したがって特に好ましい態様である。かかる特に好ましい22量体環状ペプチドの一例を式IX’に示す。
本発明のシクロペプチド変異体の利点の1つは、特定のシステインの1つ(好ましくはβ1-ARのアミノ酸配列のCys 216に相当するCys)をセリン残基に変異させ、第2S-S特異的環化手順による可能な特有の分子内S-S架橋の形成を強化することによってその立体配座的拘束が増大することである。当該技術分野で公知のペプチドとの比較において、この本発明のペプチドの拘束の増大により、細胞表面上に第2β1-ECIIループの天然コンホメーションで提示されたエピトープをより良好に模倣する分子がもたらされる。
DCMおよび刺激性抗β1-AR抗体によって引き起こされる他の疾患の治療のために当該技術分野で使用されているビソプロロールなどのβ遮断薬は、心拍数および血圧の両方を有意に低下させる。これとは対照的に、本発明の変異体シクロペプチドのインビボ適用は、肺機能、心拍数または血圧に対して負の影響を有しない(図20および21)。また、肝臓および腎臓機能を評価するためのいくつかの重要な実験パラメータは、反復シクロペプチド注射によって影響されなかった(図22a/bおよび23)。したがって、本発明の環状ペプチドは、とりわけ、別の場合ではβ遮断薬を用いることによって治療され得なかった異なる患者群、すなわち、例えば既に徐脈に苦しんでいる患者、または禁忌のためβ遮断薬の使用が可能でない患者(閉塞性肺疾患もしくは低血圧に苦しんでいる患者など)の治療に特に適している。
記載のように、特に、なお3つのシステインを有するβ1-ECII由来の(環状)ペプチド(例えば WO 2006/103101に開示されたものなど)を利用した手段および方法と比較した本発明の手段および方法のさらなる利点は、シクロペプチド異性体の混合物の形成が回避され得ることである。
3つ以上のCys残基を含むペプチドの環化中に形成される異なるシクロペプチド異性体の混合物の生化学的特徴付けは面倒である。したがって、1種類のみのシクロペプチド異性体を含む純粋な環状ペプチド部分の作製は、3つ以上のCys残基を含むペプチドを利用した場合、時間および費用が集約的である。これは、環状ペプチドがGMP基準の下に作製される場合、特にそうである。
これとは対照的に、本発明の環状ペプチドは、容易に特徴付けされ得、同じ異性体の純粋な部分として作製され得る。これにより高い再現性がもたらされる。本発明のペプチドの特別な利点は、分離し、面倒な試験で特徴付けしなければならない異性体の混合物が回避されること、および少なくとも1回のさらなる作製工程(分離および/または生化学的特徴)が最終的に省略されること(Sewald 2002もまた参照のこと)である。
本発明は、とりわけ、添付の実施例に記載の実験に基づいている。
これらの実施例の状況では、β1-ECII25AA-シクロペプチドの17位または18位いずれか一方のシステインを、個々の単一分子内ジスルフィド結合(S-S)が1つだけ形成され得るようにセリン残基で置換した(Cys17または18→Ser17または18変異)(図1)。このような処置は、副作用が低減され、本発明の構築物の生物学的有効性が維持または増大する可能性をもたらす。本発明の環状ペプチドは、異性体の混合物が形成される先行技術のペプチドとは対照的に、簡単で頑健で高度に再現性のある製造方法によって得られる。これらにより、効率的に規模が拡大され得る。さらに、これらの方法により異性体混合物の分離が回避され、GMP基準に適当である。添付の実施例は、対応する製造/作製方法を提供する。
添付の実施例において、本発明のペプチドの環化は、とりわけ、例えば、環状ペプチドの(環)閉鎖部位での「Dglu」変異; 図2に示すGln←→DGlu変異の導入によって得られた)。
さらに、アミノ酸(AA)の数を、さらなる組の本発明のシクロペプチド変異体において、25AAから22AAに、さらに18AAに低減させた。この測定により該構築物の免疫原性副作用の可能性が最小限となる可能性が提供される。18AAシクロペプチド変異体は、14位または13位(それぞれ、Cys13-Ser14またはSer13-Cys14を含む18AA変異体シクロペプチド)のいずれかにシステイン→セリン置換を含み、例えば環状ペプチドの閉環部位に(さらなる)グルタミン置換/D-グルタミン酸と組み合わされているか(Gln←→D-Glu変異)、または組み合わされていないかのいずれかであった(図2)。22AAシクロペプチド変異体は、17位にシステイン→セリン置換を含んでおり(Cys16-Ser17を含む22AA)、任意に22位(環状ペプチドの可能な閉環部位; 図24)へのGly残基の導入と組み合わされている。
総合すると、本明細書に提供したインビトロ実験データならびにインビボデータは、0.25〜5.0mg/kg体重(Bw)、特に1.0〜2.0mg/kg Bwの範囲の用量を使用した場合、開示した変異体シクロペプチドの抗体遮断能が25量体から18量体へのシクロペプチドのアミノ酸の数の低減に影響されないことを明白に示す。インビトロおよびインビボデータは、1.0mg/kg Bwの用量で、2つの2システイン含有単一ジスルフィド結合25AA Cys/Ser(式VII/IX)または18AA Cys/Ser(式VI/VIII)シクロペプチド変異体の優れた比較可能性を示す; 図16〜21。しかしながら、19〜24AAの「中間」環状ペプチドは、本発明による活性の増大を示す。特に22AAの環状ペプチドは本発明による活性の増大を示す。かかる「中間」環状ペプチドの好ましい例は、式IX’に示すアミノ酸残基を含むまたは該アミノ酸残基からなる環状ペプチドである。
さらに、1つのシステイン残基のセリン残基での置換(すなわち、Cys/SerまたはSer/Cys-変異)の精密な性質により、開示した環状ペプチドの効力がインビトロで、またはインビボでも顕著に決定された(図6〜10および14〜16)。
β-アドレナリン作動性レセプター(β-AR)、特にβ1-アドレナリン作動性レセプター(β1-AR)は当該技術分野で周知である。例えば、ヒトβ1-AR(アドレナリン作動性β-1レセプター(ADRB1)としても知られる)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号40)は、データバンク登録NM_000684またはNP_000675から得られ得る。β-ARは、本明細書においてECIおよびECIIまたはβ(1)-ECIおよびβ(1)-ECIIと称する2つの細胞外ドメインを形成することが知られている。上記のように、本発明の環状ペプチドは、β1-ECII、特にヒトβ1-ARのアミノ酸鎖DEARRCYNDPKCCDFV(配列番号33)またはRAESDEARRCYNDPKCCDFVTNR(配列番号34)(それぞれ、アミノ酸204〜219位または200〜222位)または特に、ヒトβ1-ARのアミノ酸鎖DEARRCYNDPK(配列番号45)またはESDEARRCYNDPK(配列番号46)と配列類似性を共有する。
用語「β-AR」は、本明細書で使用される場合、好ましくはβ1-アドレナリン作動性レセプター(β1-AR)、より好ましくは上記のヒトβ1-ARをいう。
本明細書に提供する環状ペプチドは、
a) β1-アドレナリン作動性レセプター(β1-AR)のECIIループに対する(自己)抗体に結合することができること;
b) β1-ARとβ1-ARのECIIループに対する(自己)抗体間の相互作用を阻害することができること;
c) β1-ARのECIIループの天然コンホメーションで提示された少なくとも1つのエピトープを模倣すること;および
d) β1-ARの抗体媒介活性化を低下させることができること
からなる群より選択される少なくとも1つの特徴を有する。
β1-ARの構造は、とりわけ、Warne(2008 Nature. DOI:10. 1038)によって解析された。
上記のように、本発明の環状ペプチドは、一般式シクロ(x-xh-Cys-x-xa-xb-xc-x-Cys-y-xi-x)(式I)によって規定される。この式中、「y」は、Cysではない任意のアミノ酸残基であり得、好ましくは「y」は、Pro以外およびCys以外の任意のアミノ酸残基であり得る。一般的に、「y」は本明細書に提供した環状ペプチドの別のアミノ酸(例えば、本明細書に提供した環状ペプチドの別のCys)と分子内結合(例えば、ジスルフィド結合)を形成しない限り、任意のアミノ酸であり得る。好ましくは、「y」は、本明細書に提供した環状ペプチドの別のアミノ酸(例えば、本明細書に提供した環状ペプチドの別のCys)と分子内結合(例えば、ジスルフィド結合)を形成しない限り、Cysと類似した(すなわち、類似した化学構造および/または類似した動きの3次元のペプチド構造を有する)任意のアミノ酸であり得る。より好ましくは、「y」は、ThrまたはSerなどのCysではない任意の極性アミノ酸であり得る。最も好ましくは、本明細書に提供した環状ペプチドにおいて、「y」はSerまたはSerアナログである。本文中において、「Serアナログ」は、Serのものと類似した構造的特性を有する残基、特にアミノ酸残基を意味する。「Serアナログ」は、例えば、Serのものなどと類似した化学構造、および/またはSerのものなどと類似した動きの3次元のペプチド構造を有する(アミノ酸)残基をいう。さらなる例として、「y」はまた、セレノシステインまたはそのアナログであり得る。
一般に、「Cysではない任意のアミノ酸(残基)」または「Cys以外のアミノ酸(残基)」などの用語の意味は当業者に明白である。特に、本明細書全体において使用するように、かかる用語は、本明細書に提供した環状ペプチドの別のアミノ酸(例えば、本明細書に提供した環状ペプチドの別のCys)と分子内結合(例えば、ジスルフィド結合)を形成しない限り、任意のアミノ酸をいう。
記載のように、本発明の環状ペプチドの主な特徴の1つは、分子内結合を形成し得るCysを2つだけ含むことである。かかる環状ペプチドは、例えば、β1-ECIIに相同なペプチドの第3のCysを異なるアミノ酸で置換することにより得られ得る。ここで、置換されるCysは、β1-ECIIの互いに直接隣接して存在する第2または好ましくは、第3のCysに対応するものである(ヒトβ1-ARのアミノ酸215位および216位(NP_000675および配列番号40も参照のこと)。これらの2つのCys残基は、本明細書において「Cys-Cys」、「Cys/Cys」、「Cys215-Cys216」または「Cys215/Cys216」などと称する。
本明細書に開示するようにして得られた変異体ペプチドまたは変異は、したがって、どのCysが置換され、変異体ペプチドがどれだけ多くのアミノ酸を含むかに応じて「Cys-Ser」、「Cys/Ser」、「Cys13、16または17-Ser14、17または18」または「Cys13、16または17/Ser14、17または18」変異体ペプチドもしくは変異または「Ser-Cys」、「Ser/Cys」、「Ser13または17-Cys14または18」または「Ser13または17/Cys14または18」変異体ペプチドもしくは変異と称する。
あるいは、本明細書に開示する変異体ペプチドは、特定の位置の具体的なアミノ酸置換に言及することによって規定される。したがって、変異体ペプチド/変異は、例えば、異なるアミノ酸で置換されているのがβ1-ARのCys216に対応するCysであるか、Cys215に対応するCysであるかに応じて、それぞれ、「Cys14、17または18→Ser14、17または18」変異体ペプチド/変異または「Cys13または17→Ser13または17」変異体ペプチド/変異と称される。表示「14、17または18」あるいは「13または17」は、例示した本発明の環状ペプチドにおける位置に関し、ここで、1位は、式I、すなわちシクロ(x-xh-Cys-x-xa-xb-xc-x-Cys-y-xi-x)に規定された最初の「x」に対応する。
したがって、「Cys13-Ser14」または「Cys13/Ser14」変異体ペプチド/変異などの用語は、「Cys14→Ser14」変異体ペプチド/変異と同じ意味で使用され、この特別な例では本明細書に開示した18量体ペプチドをいう。「Cys16-Ser17」または「Cys16/Ser17」変異体ペプチド/変異などの用語は、「Cys17→Ser17」変異体ペプチド/変異と同じ意味で使用され、この特別な例では本明細書に開示した22量体ペプチドをいう。「Cys17-Ser18」または「Cys17/Ser18」変異体ペプチド/変異などの用語は、「Cys18→Ser18」変異体ペプチド/変異と同じ意味で使用され、この特別な例では本明細書に開示した25量体ペプチドをいう。
同様に、「Ser13-Cys14」または「Ser13/Cys14」変異体ペプチド/変異などの用語は、「Cys13→Ser13」変異体ペプチド/変異と同じ意味で使用され、この特別な例では本明細書に開示した18量体ペプチドをいい、「Ser17-Cys18」または「Ser17/Cys18」変異体ペプチド/変異などの用語は、「Cys17→Ser17」変異体ペプチド/変異と同じ意味で使用され、この特別な例では本明細書に開示した25量体ペプチドをいう。
上記に示した例示的な表示は、それぞれ、本明細書に開示した特定の18量体、22量体または25量体ペプチド内の表示アミノ酸の位置をいう。本発明に関連して、本明細書に開示した環状ペプチドについて示された表示アミノ酸の位置に関する開始点は、環状ペプチドの線状化された主鎖のN末端アミノ酸(式Iの最初の「x」など、上記参照)である。本明細書に開示した線状ペプチドについて示された表示アミノ酸の位置に関する開始点は、そのN末端アミノ酸である。
本明細書および添付の実施例において提供した所見は、Cys変異のない25AA、22AAおよび18AA シクロペプチドと環状25AA、22AAまたは18AA Cys18、17または14→Ser18、17または14(Cys-Ser)変異体との比較可能性を示すが、環状25AAまたは18AA Cys17または13→Ser17または13(Ser-Cys)変異体との比較可能性を示さない。
また、上記のように、本発明の環状ペプチドの式において、hは1〜15、好ましくは5〜9の任意の整数であり得る、および/またはiは0〜14、好ましくは1〜14、より好ましくは0〜6、さらにより好ましくは1〜6の任意の整数であり得る。したがって、hは、1、2、3、4、5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15であり得る、および/またはiは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14であり得る。好ましくは、hは5、8もしくは9である、および/またはiは3、4もしくは6である。より好ましくは、hは8である、および/またはiは4である。本発明の特に好ましい態様において、xhは特定のアミノ酸鎖DEARR(配列番号35)、AESDEARR(配列番号47)もしくはRAESDEARR(配列番号36) を表す、および/またはxiは特定のアミノ酸鎖DFV(配列番号37)、DFVT(配列番号48)もしくはDFVTNR(配列番号38)を表す。本発明のより好ましい特定の態様において、xhは特定のアミノ酸鎖AESDEARR(配列番号47)を表す、および/またはxiは特定のアミノ酸鎖DFVT(配列番号48)を表す。
本発明の環状ペプチド(またはその環状部分)は、少なくとも18個のアミノ酸および最大25個のアミノ酸からなり得る。したがって、本発明の環状ペプチドは18、19、20、21、22、23、24または25個のアミノ酸からなり得、ここで、特に18個または25個のアミノ酸が好ましく、特に22個のアミノ酸が最も好ましい。あまり好ましくない態様において、より小さいペプチド、すなわち、16個または17個のアミノ酸を含むペプチドも構想される。
本発明に関連して特に好ましい環状ペプチドは、それぞれのアミノ酸組成に応じた環状分子の規定の最大および最小サイズを有し、ヒトβ1-アドレナリン作動性レセプターの最初の一次配列由来の21個のアミノ酸(すなわち、アミノ酸200〜221; Frielle 1987、PNAS 84、7920-7924)と、予想閉環部位の22番目のアミノ酸(222位)としてのさらなるグリシンによって構成された(21+1=)22AA長のものである。
理論に拘束されることを望まないが、アミノ酸の数、したがって、抗β1-AR抗体に結合する環状ペプチドの一次構造(すなわち、アミノ酸主鎖)の長さは、その生物学的効果および/または良好な/効果的な製造に重要である。
26個以上のアミノ酸のペプチド長(一次構造)は、免疫応答性T細胞を直接 (すなわち、担体タンパク質の使用なしで)刺激している可能性があり、したがって、T-細胞媒介性B細胞刺激による抗β1レセプター抗体産生の望ましくない逆説的な増大を誘発し得る。
16個未満のアミノ酸のペプチド長(一次構造)により、作製過程での望ましくない結晶化および例えばi.vまたはs.c.注射の目的のための合成生成物の水溶液中への溶解の問題がもたらされる。
また、本発明のあまり好ましくない態様において、上記に示した式Iの定義a)〜f)を満たし、16個のアミノ酸のみからなる、またはさらにあまり好ましくないが17個のアミノ酸のみからなる環状ペプチドを提供する。かかるあまり好ましくない環状ペプチドの非限定的な例は、シクロ(Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Cys-Ser-Asp-Phe-Val-Tyr-Gln/DGlu)(配列番号39に示したアミノ酸主鎖によって形成され得る)のペプチドである。
本明細書において、開示した環状ペプチドがProを1つだけ含むことは特に好ましい。したがって、厳密にxa、xbおよびxcの1つ以外、本明細書に示した式のyもxもProでないことは特に好ましい。式I(または他の式)に示したアミノ酸鎖xa、xbおよびxcにおいて、xcがProであることが好ましい。
特に本明細書では、AspまたはGluなどの酸性アミノ酸が、本発明の環状ペプチドに含まれるProの前にあることが構想される。したがって、式I(または他の式)に示したxbはAspまたはGluなどの酸性アミノ酸であることが好ましい。特に、xcがProである場合、xbは酸性アミノ酸であり得、xbがProである場合、xaは酸性アミノ酸であり得、xaがProである場合、xaと最初のCysの間に存在する式I(または他の式)のxが酸性アミノ酸であり得る。
より具体的には、本発明の環状ペプチドは、
式I’またはI’’:
シクロ(xI-xh-Cys-x-xa-xb-xc-x-Cys-y-xi-x)(I’)
シクロ(xIII-xh-Cys-x-xa-xb-xc-x-Cys-y-xi-x)(I’’)
によって規定され得る。
さらにより具体的には、本発明の環状ペプチドは、式I’’’またはI’’’’:
シクロ(xI-xh-Cys-x-xa-xb-xc-x-Cys-y-xi-xII)(I’’’)
シクロ(xIII-xh-Cys-x-xa-xb-xc-x-Cys-y-xi-xIV)(I’’’’)
によって規定され得る。
一般に、式I’およびI’’’(および本明細書に示したその他の式)に示すxIおよびxIIは、記載のように、Cysでない任意のアミノ酸であり得る。しかしながら、特にxIとxIIの間で本発明の環状ペプチドの閉環が起こった場合、特に、xIおよびxIIは「頭-尾(head to tail)」環化条件下で互いにペプチド結合などを形成することができるようなアミノ酸であることが構想される。「頭-尾」環化は当該技術分野で公知であり(例えば、KatesおよびAlbericio: Solid phase synthesis、CRC-Press、2000; Williams、Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides、CRC-Press 1997; Benoiton: Chemistry of Peptide Synthesis.CRC-Press、2005)、その例を本実験部分に示す。xIであり得るアミノ酸の可能な例は、Gly、Val、Thr、Ser、好ましくはAlaである。xIIであり得るアミノ酸の可能な例はGlu、好ましくはGlnである。あまり好ましくないが、xIIはまたAspまたはAsnであり得る。最も好ましくは、xIはAlaであり、xIIはGlnまたはGlu(好ましくはDGlu)である。
したがって、本発明の環状ペプチドにおいて、式I’およびI’’’に示すxIIはGlnまたはGluであり得、ここで、Gluはまた、DGlu(D-Glu; D-グルタミン酸)であり得る。しかしながら、天然のアミノ酸が本明細書において好ましい。したがって、xIIがGlnであることがより好ましい。
当業者は、本明細書に示した教示に基づいた本発明および自身の当該技術分野の知識(例えば、Williams、Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides、CRC-Press 1997; Benoiton: Chemistry of Peptide Synthesis.CRC-Press、2005)に従い、式I’およびI’’’のxIおよび/またはxIIに適切なアミノ酸残基を選択することができる。
式I’’およびI’’’’(および本明細書に示したその他の式)に示すxIIIおよびxIVは、記載のように、Cysでない任意のアミノ酸であり得る。しかしながら、特にxIIIとxIVの間で本発明の環状ペプチドの閉環が起こった場合、特に、xIIIおよびxIVは「頭-尾」環化条件下で互いにペプチド結合などを形成することができるようなアミノ酸であることが構想される。xIIIであり得るアミノ酸の可能な例はArgである。xIVであり得るアミノ酸の可能な最も好ましい一例はGlyまたはGlyアナログである。「Glyアナログ」は、本文中において、Glyのものと類似した構造的特性を有する残基、特にアミノ酸残基を意味する。特に、「Glyアナログ」は、例えば、Gly残基と同じ(またはさらに小さい)大きさを有する(アミノ酸)残基をいう。驚くべきことに、本発明に関連して、特に、「XIV」位のGlyなどの小さい(アミノ酸)残基により、対応する本発明の環状ペプチドによるβ1-ARのECIIの模倣の改善がもたらされることがわかった。当業者は、本明細書に示した教示に基づいた本発明および自身の当該技術分野の知識(例えば、Williams、Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides、CRC-Press 1997; Benoiton: Chemistry of Peptide Synthesis.CRC-Press、2005)に従い、式I’’およびI’’’’のxIIIおよび/またはxIVに適切なアミノ酸残基を選択することができる。
本明細書において、本発明の環状ペプチドはTrpおよび/またはHisを含まないことがさらに特に好ましい。したがって、特に、本発明に関連して、任意の式I〜I’’’’に示されるxもyもTrpまたはHisでないことが構想される。
さらに、提供される環状ペプチドは、加水分解または例えば血清プロテアーゼなどの切断性プロテアーゼに感受性の部位を含まないことが好ましい。用語「加水分解」および「(血清)プロテアーゼ」の意味は当該技術分野で周知である。
本明細書に提供するペプチドはまた、配列番号33(β1-ECIIのエピトープを含む野生型アミノ酸鎖を表す)に相同なアミノ酸配列からなる、または該アミノ酸配列を含むペプチドとして記載され得、ここで、(a)配列番号33の13位に対応する(または、あまり好ましくないが12位に対応する)アミノ酸はCysではなく、配列番号33の6位および12位に対応する(または、あまり好ましくないが6位および13位に対応する)アミノ酸はCysであり、(b) 前記アミノ酸配列は、ペプチド内、すなわち、配列番号33に相同なペプチドの部分内で分子内結合を形成することができるさらなるCysを含まず、ここで、該ペプチドは、本発明による環状ペプチドとしての機能を果たし得る、例えば、抗β-AR抗体を遮断することができる、または該ペプチドはかかる環状ペプチドを形成することができる。任意に、開示した線状および/または環状ペプチドの構造に関して本明細書に示したさらなる規定条件は、本明細書において必要な変更が加えられる。このように規定されるペプチドは、本明細書に示す式I’〜I’’’’の1位で「xI」/「xIII」および最後の位置で「xII」/「xIV」など、N末端およびC末端で1つ以上のアミノ酸、好ましくは天然アミノ酸と隣接する配列番号33に相同な16個のアミノ酸の鎖からなる。
本発明に関連して、特に(野生型)配列番号33に関連して、「相同な」は、アミノ酸レベルで少なくとも18.75%、少なくとも37.5%、少なくとも50%、少なくとも56.25%、少なくとも62.5%、少なくとも68.75%、少なくとも75%、少なくとも81.25%、少なくとも87.5%または93.75%同一であることを意味し、大きい値ほど好ましい。
一般に、用語「アミノ酸」または「アミノ酸残基」の意味は当該技術分野で公知であり、本明細書ではそれに応じて使用される。ここで、「アミノ酸」がペプチド/タンパク質の成分である場合、用語「アミノ酸」は本明細書において「アミノ酸残基」と同じ意味で使用されることに注意のこと。
特に、「アミノ酸」または「アミノ酸残基」は、本明細書で言及する場合、好ましくは天然アミノ酸、より好ましくは天然L-アミノ酸(上記のDGlu以外)であることが構想される。しかしながら、あまり好ましくないが、「アミノ酸」または「アミノ酸残基」は、本発明に関連して、例えば、ノルロイシンまたはβ-アラニン、または特に本明細書に示した式の「y」場合はセレノシステインもしくはそのアナログなどの非天然(すなわち、合成)アミノ酸であってもよい。
また、用語「(1つまたは複数の)酸性アミノ酸」、「(1つまたは複数の)塩基性アミノ酸」、「(1つまたは複数の)脂肪族アミノ酸」および「(1つまたは複数の)極性アミノ酸」の意味は当該技術分野で公知である(例えば、Stryer、Biochemie、Spectrum Akad.Verlag、1991、Item I.2.)。これらの用語は、本発明全体を通して相応して使用される。そのため、本発明の環状ペプチドに関して本明細書に示した具体的な条件も適用される。
特に、用語「(1つまたは複数の)酸性アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、Asp、Asn、Glu、およびGln、好ましくはAspおよびGluを含む群から選択されるアミノ酸を意味することを意図し、用語「(1つまたは複数の)塩基性アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、Arg、LysおよびHis、好ましくはArgおよびLysを含む群から選択されるアミノ酸を意味することを意図し、用語「(1つまたは複数の)脂肪族アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、Gly、Ala、Ser、Thr、Val、Leu、Ile、Asp、Asn、Glu、Gln、Arg、Lys、CysおよびMetを含む群から選択される任意のアミノ酸を意味することを意図し、用語「(1つまたは複数の)極性アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、Cys、Met、Ser、Tyr、Gln、Asnおよび、あまり好ましくないがTrpを含む群から選択される任意のアミノ酸を意味することを意図する。
本発明の第1局面のより一般的な態様において、本明細書に提供する環状ペプチドは、式II、IIIまたはIII’:
シクロ(xI-x1-x1-x-x2-x2-Cys-x-xa-xb-xc-x-Cys-y-xi-xII)(II)
シクロ(xI-x2-x-x1-x-x1-x1-x-x2-x2-Cys-x-xa-xb-xc-x-Cys-y-xi-xII)(III)
シクロ(xIII、2-x-x1-x-x1-x1-x-x2-x2-Cys-x-xa-xb-xc-x-Cys-y-xi-xIV)(III’)
(式中、
a) x1は、個々に独立して、酸性アミノ酸からなる群より選択される; および/または
b) x2は、個々に独立して、塩基性アミノ酸からなる群より選択される)
の環状ペプチドであり得る。
本発明の第1局面のより具体的な態様において、本明細書に提供する環状ペプチドは、式IV、VまたはV´:
シクロ(xI-x1-x1-x4-x2-x2-Cys-x3-xa 5-xb-xc-x2-Cys-y-x1-x3-x3-xII)(IV)
シクロ(xI-x2-x4-x1-x4-x1-x1-x4-x2-x2-Cys-x3-xa 5-xb-xc-x2-Cys-y-x1-x3-x3-x4-x5-x2-xII)(V)
シクロ(xIII、2-x4-x1-x4-x1-x1-x4-x2-x2-Cys-x3-xa 5-xb-xc-x2-Cys-y-x1-x3-x3-x4-xIV)(V’)
(式中、
a) x1は、個々に独立して、酸性アミノ酸からなる群より選択される;
b) x2は、個々に独立して、塩基性アミノ酸からなる群より選択される;
c) x3は、個々に独立して、Leu、Ile、Val、Met、Trp、TyrおよびPheからなる群より選択される;
d) x4は、個々に独立して、Ser、Thr、AlaおよびGlyからなる群より選択される; および/または
e) x5は、個々に独立して、GlnおよびAsnからなる群より選択される)
の環状ペプチドであり得る。
本発明の第1局面のさらなる態様において、環状ペプチドは、式IIもしくはIVのアミノ酸2〜12位もしくは2〜14位によって規定されるアミノ酸鎖、式IIIもしくはVのアミノ酸4〜16位または4〜18位によって規定されるアミノ酸鎖、あるいは式III’もしくはV´のアミノ酸3〜15位または3〜17位によって規定されるアミノ酸鎖を含む。本発明の第1局面のより一般的な態様において、本明細書に提供する環状ペプチドは、式II、IIIまたはIII’の環状ペプチドであり得る。
本発明の第1局面のさらに特定の態様において、本明細書に提供する環状ペプチドは、アミノ酸鎖
aci-Glu-Ala-bas-bas-Cys-Tyr-neu-aci-neu-bas;
aci-neu-aci-Glu-Ala-bas-bas-Cys-Tyr-neu-aci-neu-bas;
aci-Glu-Ala-bas-bas-Cys-Tyr-neu-aci-neu-bas-Cys-Ser;または
aci-neu-aci-Glu-Ala-bas-bas-Cys-Tyr-neu-aci-neu-bas-Cys-Ser
を含み得る。式中、「aci」は酸性アミノ酸を表し、「neu」は中性アミノ酸を表し、「bas」は塩基性アミノ酸を表す。また、上記の2つのアミノ酸鎖の各アミノ酸残基も、独立して、本明細書に提供した式I、II、III、III’、IV、VおよびV’のいずれか1つの対応するアミノ酸残基として定義され得る。
本発明の第1局面のさらに特定の態様において、本明細書に提供する環状ペプチドは、アミノ酸鎖
Asp-Xxx1-Xxx4-Arg-Arg-Cys-Xxx3-Asn-Asp-Pro-Lys(配列番号45)または
Glu-Ser-Asp-Xxx1-Xxx4-Arg-Arg-Cys-Xxx3-Asn-Asp-Pro-Lys(配列番号46)
を含み得る。式中、Xxx1は、上記に示した式に記載の「x」または「x1」と規定される、Xxx3は「x」または「x3」と規定される、および/またはXxx4は「x」または「x4」と規定される。例えば、上記のアミノ酸鎖は、
Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys(配列番号45)または
Glu-Ser-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys(配列番号46)
であり得る。
本明細書において、特に、本発明の環状ペプチドは、例えば、任意の上記のアミノ酸鎖(またはこれらのアミノ酸鎖を含む開示した環状ペプチドの一部分)が有するエピトープなどのβ1-ECIIが有する1つ以上のエピトープを含むことが構想される。これに関連して、用語「エピトープ」は、特に、(自己)抗β1-AR抗体が結合するアミノ酸鎖をいう。特に、エピトープは、本発明に関連して、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13または少なくとも14個のアミノ酸からなる。当業者は、β1-ECIIのどの具体的なアミノ酸残基(1つまたは複数)が、(自己)抗β1-AR抗体が結合するエピトープ(1つまたは複数)に寄与しているかを推定する立場にある。したがって、当業者は、これらのペプチドが(自己)抗β1-AR抗体に結合することを確実にするために、少なくともどの具体的なアミノ酸残基が本発明の環状ペプチドに含まれなければならないかを推定することができる。この目的のため、当該技術分野で公知のいくつかの手段および方法が使用され得る(例えば、エピトープマッピングのための手段および方法(PepSpotsTM、Biacore、アミノ酸スキャン(アラニンスキャンなど))。
本発明による環状ペプチドの非限定的な例は、
a) 配列番号41、43、1〜4および17〜20のいずれか1つに示されたアミノ酸配列によって形成され得る、または形成される環状ペプチド;
b) 配列番号42、44、9〜12、25〜28、49、50、53および54のいずれか1つに示されたヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列によって形成され得る、または形成される環状ペプチド; ならびに
c) 遺伝コードの縮重のため配列番号42、44、9〜12、25〜28、49、50、53および54のいずれか1つに示されたヌクレオチド配列と異なるヌクレオチド配列にコードされたアミノ酸配列によって形成され得る、または形成される環状ペプチド
からなる群より選択される環状ペプチドである。
本発明による環状ペプチドのうち、Cys-Ser変異体ペプチドである環状ペプチド、すなわち、β1-ECIIの第3のCys (β1-ARの216位のCys)に対応するCysをSerで置換した環状ペプチドが特に好ましい。上記に示した例は、かかる特に好ましい環状ペプチドをいう。添付の実施例に示すように、かかる環状ペプチドは、抗β1-AR抗体の阻害または診断に特に有用である。
上記の例示した特に好ましい環状ペプチドの具体的な構造は下記式VI〜IX’:
シクロ(Arg-Ala-Glu-Ser-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Cys-Ser-Asp-Phe-Val-Thr-Gly)(IX’);
シクロ(Ala-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Cys-Ser-Asp-Phe-Val-Gln)(VI);
シクロ(Ala-Arg-Ala-Glu-Ser-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Cys-Ser-Asp-Phe-Val-Thr-Asn-Arg-Gln)(VII);
シクロ(Ala-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Cys-Ser-Asp-Phe-Val-DGlu)(VIII); および
シクロ(Ala-Arg-Ala-Glu-Ser-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Cys-Ser-Asp-Phe-Val-Thr-Asn-Arg-DGlu)(IX)
のいずれか1つによって示される。
あまり好ましくない本発明による環状ペプチドの非限定的な例は、
a) 配列番号5〜8および21〜24のいずれか1つに示されたアミノ酸配列によって形成され得る、または形成される環状ペプチド;
b) 配列番号13〜16および29〜32のいずれか1つに示されたヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列によって形成され得る、または形成される環状ペプチド; ならびに
c) 遺伝コードの縮重のため配列番号29〜32のいずれか1つに示されたヌクレオチド配列と異なるヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列によって形成され得る、または形成される環状ペプチド
からなる群より選択される環状ペプチドである。
上記の例示したあまり好ましくない環状ペプチドの具体的な構造は、下記式X〜XIII:
シクロ(Ala-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Ser-Cys-Asp-Phe-Val-Gln)(X);
シクロ(Ala-Arg-Ala-Glu-Ser-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Ser-Cys-Asp-Phe-Val-Thr-Asn-Arg-Gln)(XI);
シクロ(Ala-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Ser-Cys-Asp-Phe-Val-DGlu)(XII);
シクロ(Ala-Arg-Ala-Glu-Ser-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Ser-Cys-Asp-Phe-Val-Thr-Asn-Arg-DGlu)(XIII)
のいずれか1つによって示される。
上記のペプチドは、「Cys-Ser」変異体ペプチドとしてのペプチド(「Cys-Ser」環状ペプチド)が、とりわけ、インビボで本明細書で規定するあまり好ましくない「Ser-Cys」変異体ペプチド(「Ser-Cys」環状ペプチド)よりも機能性であるため、本発明のあまり好ましくない態様である。
これに関連して、本発明による環状ペプチドの最も好ましい例は、特に、その薬理学的機能および/または診断機能が添付の実施例で実証された環状ペプチド(例えば、式VI〜IX’のいずれか1つを特徴とするもの)であることに注意されたい。
本発明の種々のペプチドに関して、少なくともいくつかの固定されたアミノ酸残基およびその空間的配列によって規定されるそれぞれのペプチドの二次構造および三次構造全体が確保される限り(例えば、上記の式I参照)、一次配列、すなわちアミノ酸配列主鎖において、ある程度の柔軟性および変動が可能であることは理解されよう。
本明細書に提供した教示に基づき、当業者は、一方において、本発明のペプチドの対応するバリアントを容易に見い出す立場にある。他方において、当業者は、本発明のペプチドの所定のバリアントがなお所望の機能、例えばβ-AR抗体に特異的に結合する能力を有し、したがって、本明細書に記載および提供した治療適用および診断適用などの対応する医療介入のための可能性を有するかどうかを試験することができる。かかる試験のための対応する実験指針、すなわちそれぞれのアッセイは、本明細書、特に添付の実施例に例示的に提供および記載している。
したがって、本明細書において、本明細書に開示および記載したペプチドのバリアントも提供するが、
第1に、これらのバリアントは、本発明に従ってなお機能的に活性である、すなわち、抗β-AR抗体、特にβ1-ECIIに対する抗β1-AR抗体の結合パートナーとして機能的に活性である、より特別には、β1-ARのインヒビターとして機能的に活性である、さらにより好ましくは、β1-ARと、β1-ECIIに対する抗β1-AR抗体、より好ましくはβ1-ECIIに対する自己抗β1-AR抗体との相互作用の阻害において活性であるものとする; ならびに
第2に、これらのバリアントは、異性体混合物の形態で存在しないか、または本発明の作製方法により環化される場合、異性体混合物を形成しないものとする。これらのバリアントは、個々の分子内結合(例えば、ジスルフィド結合)を1つだけ形成する、または形成し得る特定のCys残基を2つだけ有することが構想される。
本発明のペプチドのバリアントにおいて、例えば、前記ペプチドの1つ以上のアミノ酸が他の1つ以上の天然または合成アミノ酸で置換されることが構想される。これに関連して、この/これらのアミノ酸置換(1つまたは複数)は、同類アミノ酸置換(1つまたは複数)であること、すなわち、置換アミノ酸は、置換されるアミノ酸と同じ範疇のアミノ酸に属することが好ましい。例えば、酸性アミノ酸は別の酸性アミノ酸で置換され得る、塩基性アミノ酸は、別の塩基性アミノ酸で置換され得る、脂肪族アミノ酸は、別の脂肪族アミノ酸で置換され得る、および/または極性アミノ酸は、別の極性アミノ酸で置換され得る。
したがって、本発明の(シクロ)ペプチドの特に好ましく提供されるバリアントは、酸性アミノ酸の少なくとも1つが酸性アミノ酸からなる群より選択される異なるアミノ酸で置換された、塩基性アミノ酸の少なくとも1つが塩基性アミノ酸からなる群より選択される異なるアミノ酸で置換された、極性アミノ酸の少なくとも1つが極性アミノ酸からなる群より選択される異なるアミノ酸で置換された、および/または脂肪族アミノ酸の少なくとも1つが脂肪族アミノ酸からなる群より選択される異なるアミノ酸で置換された(ただし、上記の要件を満たすものとする)バリアントである。
特に、開示した(環状)ペプチドのバリアントをもたらすアミノ酸置換は、得られるバリアントの三次構造内の極性および電荷のパターンが、β1-ARの対応するECIIエピトープ(1つまたは複数)の三次元構造をなお実質的に模倣するようなものであることが構想される。
本発明の(シクロ)ペプチドの「バリアント」に関して、置換により、なお、シクロペプチド内にジスルフィド結合などの個々の分子内結合がもたらされる、すなわち、環化中に異性体混合物の形成が回避される、および/またはβ1-ARのECIIが正しく模倣される限り、本明細書に規定したCysはまた、他のアミノ酸で置換され得る。かかるアミノ酸、とりわけ、ジスルフィド結合を形成し得る-SH基を有する非天然アミノ酸などの非天然アミノ酸であってもよい。しかしながら、本明細書において、上記の式Iに示されたCysは実際には天然アミノ酸、好ましくはCys自体であることが好ましい。
また、当業者には、本発明の(環状)ペプチドを形成する1つまたはいくつかのアミノ酸が修飾されていてもよいことが認識されよう。それに従い、本明細書で使用される任意のアミノ酸はまた、その修飾形態で表され得る。例えば、本明細書で使用されるアラニン残基は修飾アラニン残基を含み得る。かかる修飾は、中でもメチル化またはアシル化などであり得、ここで、このようにして修飾されたアミノ酸、より特別には、このようにして修飾された前記アミノ酸を含むペプチドが、本明細書に規定されるようになお機能的に活性であり、例えば、抗β1-AR抗体のインヒビターとして機能的に活性である、好ましくは、β1-ARと、抗体、より好ましくはβ1-ARに対する自己抗体との相互作用の阻害において活性である限り、かかる修飾または修飾アミノ酸は、好ましくは本発明に含まれるものである。かかるペプチド、すなわち、1つまたはいくつかの修飾アミノ酸を含むペプチドがこの要件を満たすかどうかを調べるためのそれぞれのアッセイは当業者に公知であり、とりわけ、本明細書、特にその実施例部分にも記載している。
本発明はまた、HCl、H2SO4、H3PO4、リンゴ酸、フマル酸、シトロン(citronic)酸、酒石酸、酢酸などの生理学的有機酸および無機酸との塩などの開示した(環状)ペプチドの誘導体を提供する。
本明細書において使用される場合、開示されたペプチドの配列はN-末端からC-末端に示し、ここで、N-末端は、それぞれ示したアミノ酸配列の左側であり、C-末端は右側である。環状ペプチドに言及する場合、対応する配列は、式Iの左側に対応する側から式Iの右側に対応する側に示す。
本発明による「環状ペプチド」または「シクロペプチド」などは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは共有結合性を有する厳密に2つの分子内結合によってそのアミノ酸主鎖/一次アミノ酸配列内に分子環構造を分子内形成するペプチドである。この分子環構造の形成も、本発明に関連して「環化」と称される。
特に好ましい一態様において、本発明の環状ペプチドは、共有結合性を有する2つの分子内結合を有し、ここで、これらの結合の1つは、開示した環状ペプチドのアミノ酸主鎖/一次アミノ酸配列であるペプチドのN末端とC末端間の分子内結合であり、他方は、このペプチドの2つの非末端アミノ酸間の分子内結合である。記載のように、これらの2つの非末端アミノ酸は2つのCysであり得る。
一般的に、本発明による「環化」は、S-S結合、ペプチド結合、C-CまたはC=Cなどの炭素結合、エステル結合、エーテル結合、アゾ結合、C-S-C結合、C-N-C結合およびC=N-C結合からなる群より選択される共有結合である少なくとも1つの結合によって起こり得る。
特に、本発明を通して記載するペプチド結合は、開示した環状ペプチドのアミノ酸主鎖/一次アミノ酸配列を形成するペプチドのN末端アミノ酸のNH2基とC末端アミノ酸のCOOH基によって形成され得る。
好ましくは、開示した環状ペプチドのアミノ酸主鎖/一次アミノ酸配列を形成するペプチドのN末端とC末端間の分子内結合はペプチド結合であり、このペプチドの2つの非末端アミノ酸間の分子内結合はS-S結合(すなわち、ジスルフィド結合)である。
本発明に関連して、提供した環状ペプチド内の分子内S-S結合は、前記環状ペプチドのアミノ酸主鎖/一次アミノ酸配列内の2つのCys残基間で形成され得る。
本発明の環状ペプチドにおいて、上記の2つの特定の分子内共有結合が形成され得るだけでなく、さらなる分子内結合も生じ得る、ただし、環状ペプチドの本明細書に記載した機能性が維持されているものとし、環状ペプチドはなお、容易に生化学的に特徴付けされ得るものとし、これは、例えば、対応するアミノ酸主鎖/一次アミノ酸配列の環化中、異性体混合物が形成されないことを意味する。
例えば、かかるさらなる分子内結合は、構成要素アミノ酸のNH2基およびCOOH基の側鎖によって形成されるさらなる結合である。
「アミノ酸主鎖」または「一次アミノ酸配列」などの用語は、本発明全体を通して使用されるように、一方において、その対応するアミノ酸配列によって形成され得るか、または形成される環状ペプチドの構造成分または一部分をいう。他方において、これらの用語は、環化によって本発明の環状ペプチドを形成することができる線状ペプチドをいう。
本発明の第1局面の特定の一態様において、本明細書に提供する環状ペプチドの作製方法によって得られ得る環状ペプチドが提供される。本明細書において上記に示した定義は、この特に提供される本発明の環状ペプチドに関しても適用される。
また、本発明の第1局面の一態様において、開示した環状ペプチドが形成され得るか、または形成されるペプチドが提供される。特に、これらのペプチドは、本明細書に開示した環状ペプチドを形成する、または形成することができる線状ペプチド、すなわち、そのアミノ酸主鎖/一次アミノ酸配列である。
一般に、かかる線状ペプチドは、そのN末端とC末端との共有結合により本発明により開示された環状ペプチドがもたらされる任意のペプチドであり得る。例えば、かかる線状ペプチドは、本明細書に開示した環状ペプチドの作製方法などの本発明の環状ペプチドの作製手順におけるある種の中間化合物であり得る。
一般に、本明細書に提供する線状ペプチドのN末端とC末端は、本発明に関連して開示した環状ペプチドのアミノ酸主鎖内で互いに隣接して存在する任意のアミノ酸対であり得る。換言すると、本発明の環状ペプチドの環化(閉環)は、一般的に任意の前記アミノ酸対間で起こり得る。当業者は、本明細書に開示した線状ペプチドのN末端およびC末端として作用するのに効果的/適当なかかる特定のアミノ酸対、すなわち、本発明に関連して規定した閉環/環化に関与しているアミノ酸対として作用するのに効果的/適当なアミノ酸対を容易に見い出す立場にある。
好ましいが非限定的な一例において、本発明の線状ペプチドの環化(閉環)はAlaとGlnまたはGlu間で起こり得る、すなわち、この線状ペプチドのN末端アミノ酸はAlaであり得、C末端アミノ酸はGlnまたはGluであり得る。本発明の環状ペプチドを形成し得るかかる線状ペプチドの例は、配列番号1〜4および、あまり好ましくないが配列番号5〜8である。
別の好ましいが非限定的な例において、本発明の線状ペプチドの環化(閉環)はLysとPro間で起こり得る、すなわち、この線状ペプチドのN末端アミノ酸はLysであり得、C末端アミノ酸はProであり得る。本発明の環状ペプチドを形成し得るかかる線状ペプチドの例は、配列番号17〜20および、あまり好ましくない配列番号21〜24である。
より好ましいが非限定的な例において、特に22量体環状ペプチドが提供される場合、本発明の線状ペプチドの環化(閉環)は、ArgとGly間で起こり得る、すなわち、この線状ペプチドのN末端アミノ酸はArgであり得、C末端アミノ酸はGlyであり得る。本発明の環状ペプチドを形成し得るかかる線状ペプチドの例は配列番号41である。
別のより好ましいが非限定的な例において、特に22量体環状ペプチドが提供される場合、本発明の線状ペプチドの環化(閉環)は、LysとPro間で起こり得る、すなわち、この線状ペプチドのN末端アミノ酸はLysであり得、C末端アミノ酸はProであり得る。本発明の環状ペプチドを形成し得るかかる線状ペプチドの例は配列番号43である。
そのアミノ酸主鎖の他に、本発明の環状ペプチドは、さらに、標識、アンカー(タンパク質性膜アンカーなど)、タグ(HISタグなど)などのさらなる置換基(1つまたは複数)を含み(例えば、共有結合され)得る。適切な置換基およびその本発明の環状ペプチドへの付加方法は当業者に公知である。
これに関連する標識の例としては、とりわけ、蛍光色素(フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッドなど)、酵素(ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、放射性同位体(32P、33P、35S、125Iもしくは123I、135I、124I、11C、15O)、ビオチン、ジゴキシゲニン、コロイド状金属、化学発光または生物発光化合物(ジオキセタン、ルミノールもしくはアクリジニウムなど)が挙げられる。本発明のペプチドに結合され得る特に構想される標識の1つは、FRETの蛍光色素対に属する蛍光色素、例えばGFPバリアント(例えば、GFP、eGFP、EYFPまたはECFP)である。
種々の技術が生体分子の標識に利用可能であり、当業者に周知であり、本発明の範囲に含まれるとみなされ、とりわけ、酵素またはビオチニル基の共有結合、リン酸化、ビオチン化、ランダムプライミング、ニックトランスレーション、テイリング(ターミナルトランスフェラーゼを使用)を含む。かかる技術は、例えば、Tijssen、"Practice and theory of enzyme immunoassays"、Burdenおよびvon Knippenburg(編)、第15巻(1985); "Basic methods in molecular biology"、Davis LG、Dibmer MD、Battey Elsevier(1990); Mayer、(編)"Immunochemical methods in cell and molecular biology" Academic Press、London(1987); または"Methods in Enzymology"シリーズ、Academic Press、Inc.に記載されている。検出方法は、限定されないが、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡検査、直接および間接的な酵素反応などを含む。
置換基(1つまたは複数)は、本発明の環状ペプチドに(例えば、共有結合により)直接またはリンカーを介して結合され得る。当業者は、これに関連して使用される適切なリンカーを容易に見い出す立場にある。
さらなる局面において、本発明は、本発明に関連して開示した環状ペプチドのアミノ酸主鎖/一次アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。また、本発明は、本明細書に提供および記載した線状ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。
例えば、かかる核酸分子は、配列番号42、44、9〜12、25〜28、49、50、53および54もしくは、あまり好ましくないが配列番号13〜16および29〜32のいずれか1つに示されたヌクレオチド配列、または遺伝コードの縮重のためにこれらと異なるヌクレオチド配列を含み得る。
用語「(1つまたは複数の)核酸分子」、「(1つまたは複数の)核酸配列」および「(1つまたは複数の)ヌクレオチド配列」などの意味は当該技術分野で周知であり、本発明に関連して相応して使用される。
例えば、本発明全体を通して使用される場合、これらの用語は、すべての形態の天然または組換えにより作製された型のヌクレオチド配列および/または核酸配列/分子ならびに化学的に合成されたヌクレオチド配列および/または核酸配列/分子をいう。これらの用語はまた、例えば、ロックドDNA、PNA、オリゴヌクレオチドチオホスフェートおよび置換リボオリゴヌクレオチドなどの核酸アナログおよび核酸誘導体を包含する。さらに、これらの用語はまた、ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含む任意の分子をいう。
好ましくは、用語「(1つまたは複数の)核酸分子」、「(1つまたは複数の)核酸配列」および「(1つまたは複数の)ヌクレオチド配列」などは、デオキシリボ核酸(DNA)もしくはリボ核酸(RNA)をいう。「(1つまたは複数の)核酸分子」、「(1つまたは複数の)核酸配列」および「(1つまたは複数の)ヌクレオチド配列」は当業者に公知の合成化学方法論もしくは組換え技術の使用によって作製され得るか、または天然の供給源から単離され得るか、またはその組合せである。DNAおよびRNAは任意に非天然のヌクレオチドを含み得、単鎖または二本鎖であり得る。「(1つまたは複数の)核酸分子」、「(1つまたは複数の)核酸配列」および「(1つまたは複数の)ヌクレオチド配列」はまた、センスおよびアンチセンスDNAおよびRNA、すなわちDNAおよび/またはRNA内のヌクレオチドの特定の配列に相補的なヌクレオチド配列をいう。
さらに、用語「(1つまたは複数の)核酸分子」、「(1つまたは複数の)核酸配列」および「(1つまたは複数の)ヌクレオチド配列」などは、DNAもしくはRNAまたはそのハイブリッドまたは当該技術水準において公知のその任意の修飾体をいうことがあり得る(修飾の例については、例えばUS 5525711、US 4711955、US 5792608またはEP 302175を参照)。本発明のこれらの分子は、単鎖または二本鎖、線状または環状、天然または合成であり得、大きさに限定はない。例えば、「(1つまたは複数の)核酸分子」、「(1つまたは複数の)核酸配列」および/または「(1つまたは複数の)ヌクレオチド配列」は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、アンチセンスRNA、リボゾームまたはかかるRNAもしくはキメロプラスト(chimeroplast)(Cole-Strauss Science 1996 273(5280)1386-9)をコードするDNAであり得る。これらは、プラスミドまたはウイルスDNAもしくはRNAの形態であり得る。「(1つまたは複数の)核酸分子」、「(1つまたは複数の)核酸配列」および「(1つまたは複数の)ヌクレオチド配列」などはまた、ホスホチオエートまたはペプチド核酸(PNA)などの任意の当該技術水準の修飾が含まれた(1つまたは複数の)オリゴヌクレオチドをいうことがある。
本明細書に提供する核酸分子は、例えば本明細書に開示した対応する方法による本発明の環状ペプチドの作製に特に有用である。
別の局面において、本発明はまた、本明細書に開示し上記に示した核酸分子を含むベクターに関する。
前記ベクターは、クローニングベクターまたは発現ベクター、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルスまたはレトロウイルスベクターであり得る。レトロウイルスベクターは、複製可能または複製欠陥であり得る。後者の場合、ウイルス増殖は、一般的に補足した宿主/細胞のみで起こる。本明細書に提供した核酸分子は、宿主内での増殖に関する選択可能なマーカーを含有する特定のベクターに結合され得る。一般的に、プラスミドベクターがリン酸カルシウム沈殿物もしくは塩化ルビジウム沈殿物などの沈殿物、または荷電脂質との複合体、またはフラーレンなどの炭素系クラスターに導入される。ベクターがウイルスの場合、これは、宿主細胞に適用される前に、適切なパッケージ細胞株を用いてインビトロでパッケージされ得る。
好ましくは、本発明の核酸分子は、(例えば、本明細書に開示されるベクター内の)発現制御配列に作動的に連結され、原核生物細胞もしくは真核生物細胞またはその単離された部分で発現することができる。前記ポリヌクレオチドの発現には、核酸分子の転写、好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写が含まれる。真核生物細胞、好ましくは哺乳動物細胞中の発現を確実にする調節エレメントは、当業者に周知である。これら調節エレメントには、通常、転写の開始を確実にする調節配列および任意に転写の終結および転写物の安定化を確実にするポリAシグナルが含まれる。さらなる調節エレメントには、転写エンハンサーおよび翻訳エンハンサーが含まれ得る。原核生物宿主細胞での発現を可能にする有力な調節エレメントには、例えば大腸菌のlacプロモーター、trpプロモーターまたはtacプロモーターが含まれ、真核生物宿主細胞での発現を可能にする調節エレメントの例は、酵母のAOX1プロモーターまたはGAL1プロモーター、あるいは哺乳動物細胞および他の動物細胞のCMVプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター(Rous肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサーまたはグロビンイントロンである。また、転写の開始に重要なエレメントの他に、かかる調節エレメントは、ポリヌクレオチドの下流に、転写終結シグナル、例えばSV40-ポリA部位またはtk-ポリA部位を含み得る。これに関連して、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)、pSPORT1(GIBCO BRL)などの適切な発現ベクターが当該技術分野で公知である。好ましくは、前記ベクターは、発現ベクターおよび/または遺伝子移入ベクターである。レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシパピローマウイルスなどのウイルス由来の発現ベクターが、標的細胞集団に本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを送達するために使用され得る。当業者に周知の方法は、本発明によってベクターを構築するために使用され得る;例えば、Sambrook、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.およびAusubel、Current Protocols in Molecular Biology、Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.(1994)に記載されている技術を参照。あるいは、本発明のポリヌクレオチドおよびベクターは、標的細胞への送達のためにリポソームに再構築され得る。
用語「その単離された部分」とは、本発明のベクターからRNAを転写または転写および翻訳することができる、真核生物または原核生物の細胞または組織の部分のことをいう。前記部分には、RNAの転写またはRNAの転写および前記RNAのポリペプチドへの翻訳に必要なタンパク質が含まれる。前記単離された部分は、例えば、網状赤血球などの真核生物細胞の核および細胞質部分であり得る。細胞または組織の前記単離された部分を含む、RNAを転写および翻訳するためのキットが市販されており、例えばTNT reticulolysate(Promega)がある。
また、本発明の核酸分子と同様に、本明細書に提供および記載されるベクターは、例えば本明細書に開示される対応の方法による本発明の環状ペプチドの製造に特に有用である。
さらなる局面において、本発明は、本明細書に開示される核酸分子および/またはベクターを含む組み換え宿主細胞に関する。本局面の状況において、本明細書に開示される核酸分子および/またはベクターは、とりわけ、例えば本明細書に開示される環状ペプチドのアミノ酸主鎖/一次アミノ酸配列、従って本発明の線状ペプチドを発現および単離するために遺伝子操作宿主細胞に使用され得る。
前記宿主細胞は、原核生物細胞または真核生物細胞であり得る;上掲を参照。宿主細胞に存在する核酸分子またはベクターは、宿主細胞のゲノムに統合され得るか、または染色体の外に維持され得るかのいずれかである。
宿主細胞は、任意の原核生物細胞または真核生物細胞、例えば、細菌、昆虫、真菌、植物、動物、哺乳動物、あるいは好ましくはヒトの細胞であり得る。好ましい真菌細胞は、例えば、サッカロマイセス属のもの、特にS.セレビシエ種のもの、または菌糸真菌の群に属するもの、例えば、数種類のペニシリン株またはアスペルギルス株である。用語「原核生物」は、本明細書に開示される環状ペプチドのアミノ酸主鎖/一次アミノ酸配列、従って本発明の線状ペプチドの発現のための核酸分子で形質転換またはトランスフェクトされ得る全ての細菌を含むことを意図する。原核生物宿主は、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌、例えば、大腸菌、S.チフィリウム(typhimurium)、セラチア マルセセンス(marcescens)およびバチルス サブチリスなどを含み得る。本明細書に開示される環状ペプチドのアミノ酸主鎖/一次アミノ酸配列、従って本発明の線状ペプチドをコードする核酸分子は、当業者に一般に公知の任意の技術を用いて宿主を形質転換またはトランスフェクトするために使用され得る。融合され、作動的に連結された遺伝子の調製方法、および細菌細胞または動物細胞中でのこれらの発現方法は、当該技術分野で周知である(Sambrook、上掲)。そこに記載される遺伝子構築物および方法は、例えば原核生物宿主中の上記アミノ酸主鎖/一次アミノ酸配列および線状ペプチドの発現のために利用され得る。
一般に、挿入されたポリヌクレオチドの効率的な転写を促進するプロモーター配列を含む発現ベクターが、宿主に関して使用される。発現ベクターは、典型的に、複製開始点、プロモーター、およびターミネーターならびに形質転換した細胞の表現型選択を提供し得る特定の遺伝子を含む。形質転換された原核生物宿主は、当該技術分野で公知の技術によって発酵槽で増殖され、培養され、最適な細胞増殖を達成し得る。次に、発現したペプチドは、増殖培地、細胞溶解物、または細胞膜部分から単離され得る。細菌または他の方法により発現されたペプチドの単離および精製は、任意の従来の手段、例えば、分取用クロマトグラフィー分離および免疫学的分離、例えばモノクローナル抗体またはポリクロナール抗体の使用を伴うものによるものであり得る(Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology、Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.(1994))。
また、本明細書に提供および記載される核酸分子およびベクターと同様に、対応の宿主細胞は、例えば本明細書に開示される対応の方法による本発明の環状ペプチドの製造に特に有用である。
さらに別の局面において、本発明は、
a)(i)本明細書に開示される環状ペプチドのアミノ酸主鎖(もしくは本発明の線状ペプチド)が発現するような条件下で、本発明の組み換え宿主細胞を培養し、前記アミノ酸主鎖(または本発明の前記線状ペプチド)を回収する工程; または
(ii)本明細書に開示される環状ペプチドのアミノ酸主鎖(もしくは本発明の線状ペプチド)を化学合成する工程;および
b)前記アミノ酸主鎖(または前記線状ペプチド)を環化し、本明細書に開示される環状ペプチドを形成する工程
を含む、本発明の環状ペプチドの製造方法に関する。
用語「環化」に関して本明細書の上記に示される定義は、ここで準用する。上記方法の特定の状況において、用語「環化」の意味には、分子内架橋(ジスルフィド結合)ならびに製造される環状ペプチドの主鎖のN末端およびC末端を共有結合することによる閉環の形成の両方が含まれる。
環状ペプチド、そのアミノ酸主鎖または本発明の対応の線状ペプチド、ならびに本明細書に提供される宿主細胞に関して本明細書に示される定義は、ここで準用する。
提供される環状ペプチドおよび線状ペプチドに関して既に上記したように、本発明のこのさらなる局面の好ましい態様において、本発明の環状ペプチドを製造するために、環化されるアミノ酸主鎖/線状ペプチドのN末端アミノ酸は、Ala、Argまたは Lysであり、対応のC末端アミノ酸は、Gln、GlyまたはGlu (DGluも可能)またはProである。しかし、上記のように、他のN末端アミノ酸およびC末端アミノ酸も構想され、即ち、他の環状(閉環)部位が開示される方法の状況で使用され得る。
当業者は、ペプチド、特に環状ペプチドをいかに合成するかの一般方法論を開示するWO2006/103101のような共通一般知識および先行技術に基づいて、本明細書に開示される環状ペプチドの製造方法を容易に実施することができる。また、本発明の教示を、例えば添付の実施例部分(実施例1)の教示において、技術手引きを可能にするために提供する。
本発明の非限定的な実施例1において、シクロペプチドの変異体は、(例えばFmoc/tertブチル戦略(WO 2006/103101; Chen W.C. and White P.D.: Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis、Oxford University Press 2003に記載)のような化学合成アプローチを適用することによって)線状ペプチド/アミノ酸主鎖の形態で最初に合成され、C末端カルボキシル基とN末端アミノ酸のアミノ基との縮合によって主鎖上での共有結合で環化された(「頭-尾」環化;Kates S. and Albericio F.: Solid phase synthesis、CRC-Press、2000)。
次に、ジスルフィド結合は、当該技術分野で公知の化学相互作用によって(例えば、Benoiton N.L.: Chemistry of Petide Synthesis. CRC-Press、2005)ジスルフィド結合を形成可能な線状ペプチドの2つのシステイン残基間(例えば、18量体ペプチドのCys7〜Cys13間、22量体ペプチドのCys10〜Cys16間または25量体ペプチドのCys11〜Cys17間)で確立される。
一般に、上記に記載される方法の「環化」工程の状況において、製造される環状ペプチドの線状主鎖の閉環が、S-S架橋の形成の前後で行われ得る。即ち、ペプチドのAA鎖の2つのCys残基間のS-S架橋は、記載される製造プロセスの「環化」手順において最初の段階であってもよいし、閉環は第二段階であってよいし、またはその逆であってもよい。当業者は、これらの特定のアプローチのいずれが製造必須条件の所定の設定に適切であるかを見出すことができる。
また、上記のように、製造される環状ペプチドの線状ペプチド/アミノ酸主鎖は、組み換え操作技術によって製造され得る。かかる技術は、当該技術分野で周知である(例えば、Sambrook、上掲)。また上記のように、前記線状ペプチド/アミノ酸主鎖のこの種類の製造によって、特定の利点が、本明細書に開示および記載される核酸分子、ベクターおよび/または宿主細胞について得られ得る。対応して上記に示される定義は、ここで準用する。
ペプチド合成のいくつかのアプローチ、環状ペプチドの特定の合成アプローチが、当該技術分野で公知である(例えば、Williams、Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides、CRC-Press 1997;Benoiton: Chemistry of PeptideSynthesis. CRC-Press、2005)。当業者は、本明細書に提供される教示に基づいて、開示された環状ペプチドの製造方法の特定の要件に、先行技術の知識を容易に適用する立場にある。
既に上記したように、本発明は、上記の方法によって得られ得るまたは得られる環状ペプチドだけでなく、ある種類の中間体生成物(特に、上記の方法の工程a)によって得られ得るまたは得られる生成物)として上記の方法によって得られ得るまたは得られる対応の線状ペプチド(対応の環状ペプチドのアミノ酸主鎖/一次配列)にも関する。
一般に、本発明の環状ペプチドは、とりわけ医学的介入アプローチで使用され得る。かかるアプローチには、診断剤としてのもしくは診断剤における使用、疾患の治療のための医薬の製造のための使用、あるいは組成物、好ましくは医薬組成物、診断組成物、または、好ましくは抗β-AR抗体の検出、より好ましくは抗β1-AR抗体の検出のための診断キットにおける使用もしくはそれらとしての使用が含まれる。
上記のように、本明細書に定義または記載される抗体は、好ましくは自己抗体である。
本発明の化合物、特に環状ペプチドの非限定的な使用および適用を、例えば以下の本明細書に記載する。
また、本発明は、本発明の状況で開示および提供される、環状ペプチドもしくは線状ペプチド、核酸分子、ベクター、または組み換え宿主細胞および任意に担体を含む組成物に関する。
この局面の特定の一態様において、前記組成物は、医薬組成物であり、前記担体は、薬学的に許容され得る担体である。
本発明の組成物、特に本発明の医薬組成物は、本明細書に記載および定義されるように、治療、改善または予防に使用される場合に特に有用である。従って、本発明の医薬組成物は、β-ARの活性が増強される疾患の治療、改善もしくは予防またはβ-ARに対する抗体を有する患者の治療に使用され得る。さらに、本発明の医薬組成物は、患者の免疫寛容、特に内因性β1-ARの免疫性拡張物に関する患者の免疫寛容を誘導するために使用され得る。
本発明の少なくとも1つの環状ペプチドを含むのとは別に、提供される(医薬)組成物は、2つまたは複数(例えば少なくとも3つまたは少なくとも5つ)のいずれかの本発明の環状ペプチドを含み得る。
同様に、1つだけでなく、2つまたは複数(例えば少なくとも3つまたは少なくとも5つ)の前記環状ペプチドが、本発明によって医学介入の必要がある患者に投与され得る。それによって、前記1つより多くの環状ペプチドの投与が、同時または連続的であってもよい。
さらに、特定の一態様において、本発明は、前記環状ペプチドが少なくとも1つのさらなる薬学的に活性な薬剤と共に投与されるまたは前記医薬組成物が少なくとも1つのさらなる薬学的に活性な薬剤を含む、医薬組成物、医学介入のための方法またはその使用あるいは本明細書に開示される環状ペプチドまたは医薬組成物に関する。
前記少なくとも1つのさらなる薬学的に活性な薬剤は、βレセプター遮断薬、好ましくは選択性β-AR遮断薬、例えば、アテノロール、メトプロロール、ネビボロール、ビソプロロールなどからなる群より選択されるβ1-AR遮断薬などであり得る。理論に拘束されないが、β1-ARは、同時にβ遮断薬、例えばビソプロロールまたはメトプロロールによって上方調節され、環状ペプチドおよび(1つまたは複数の)さらなるβ遮断薬の相乗効果を最終的にもたらすために、この種の特定の組み合わせが、本明細書に提供される環状ペプチドによる抗体誘導の、選択性β1-AR下方調節からの保護を提供する。
本発明の(医薬)組成物に任意に含まれる担体または本発明の(医薬)組成物もしくは環状ペプチドと共に投与される担体は、特に、薬学的に許容され得る担体、賦形剤、または希釈剤であり得る。
かかる担体は、当該技術分野で周知である。当業者は、特に本発明によって使用されることが適切なかかる担体を容易に見出す立場にいる。
以下に、いくつかの非限定的な投与スキームおよび対応する適切な薬学的に許容され得る担体の使用を記載する。
皮下(s.c.)または静脈内(i.v)注射を介した本発明の医薬組成物および/または環状ペプチドの投与のために、本発明の化合物は、水溶液、好ましくは生理学的に適合するバッファ、例えばハンクス溶液、リンガー溶液、または生理食塩水バッファ中に調製され得る。経粘膜投与および経肺投与のために、透過される障壁に適切な浸透剤が製剤に使用される。かかる浸透剤は、一般に当該技術分野で公知である。
全身、即ち、静脈内/動脈内または皮下投与に適切な用量または医薬組成物への、本発明の化合物を調製するための薬学的に許容され得る担体の使用は、本発明の範囲内である。担体の適切な選択および適切な製造実施で、本発明の医薬組成物、特に溶液として調製される組成物が、静脈内注射などによって非経口投与され得る。化合物は、当該技術分野で周知の薬学的に許容され得る担体を用いて皮下投与または経口投与に適切な用量に容易に調製され得る。かかる担体によって、本発明の化合物は、治療される被験体による経口摂取のための、錠剤、丸薬、カプセル、錠剤、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして調製することが可能である。
体内/細胞内投与されることを目的とした本発明の化合物または化合物を含む医薬は、当業者に周知の技術を用いて投与され得る。例えば、かかる薬剤は、リポソームにカプセル化され得、次に上記のように投与され得る。リポソームは、水性内部を有する球状脂質二重層である。リポソームの形成時に水溶液に存在する全ての分子は、水性内部に組み込まれる。リポソーム内容物は、外部微小環境から保護され、リポソームが細胞膜と融合するために細胞表面近くに効率的に送達される。リポソームを含む送達システムは、Janoffらの米国特許第4、880、635号に開示されている。刊行物および特許は、リポソーム薬物送達のための技術の有用な説明を提供する。
非経口投与および/または皮下投与のための本発明の化合物を含む医薬組成物としては、水溶性形態中の(1つまたは複数の)活性化合物の水溶液が挙げられる。また、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油、例えばゴマ油もしくはヒマシ油、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドあるいはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液には、懸濁液の粘性を高める化合物、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストランなどが含まれ得る。また、任意に、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にし、生物での物質の一定した徐放を可能にするために、化合物の可溶性を高める適切な安定剤または薬剤を含み得る。
本発明によって、開示された医薬組成物または環状ペプチドが薬学的に/治療的に有効な用量で投与され得、投与された薬学的に/治療的に有効な量の化合物が到達することを意味することが、当業者には明らかである。好ましくは、薬学的に/治療的に有効な用量とは、被験体の症状の改善または生存の延長を生じる投与化合物(活性成分)の量のことをいい、日常の試験を行う当業者が決定することができる。
本発明によって投与される化合物の投薬計画は、付き添いの医師および臨床要因によって決定されることに注意する。医学分野で周知のように、いずれかの患者のための投薬は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時間および経路、一般健康、ならびに同時に投与される他の薬物などの多くの要因に依存する。当業者は関連する用量を知っており試験することができ、本発明によって医学的に適用される化合物を投与する。
本明細書に示すように、本明細書に提供される環状ペプチドの効果、つまり抗β1-AR抗体の遮断が用量依存様式で得られ得る。それによって、本明細書に開示されるCys→Ser変異シクロペプチドの有効性が閾値濃度に依存する(図14、15、および16B、C)。
従って、特に、開示される医薬組成物または環状ペプチドは、これらがある濃度で存在する、即ち少なくとも0,05mg/kg体重、好ましくは少なくとも0,1mg/kg体重の濃度、より好ましくは0,1mg/kg体重(100μg/kg)〜100mg/kg体重の範囲、より好ましくは1mg/kg体重〜100mg/kg体重の範囲、最も好ましくは1mg/kg体重〜10mg/kg体重の範囲の閾値濃度に達する様式で、投与され得る。特に、開示される医薬組成物または環状ペプチドの有効用量は、約1mg/kg体重であり得る。また、高濃度の開示される医薬組成物または環状ペプチドは、一般的に、対応して使用される投与スキームにより到達するように構想される。例えば、かかる高濃度は、少なくとも2、3、4または5mg/kg体重であり得る。少なくとも1mg/kg体重または少なくとも2mg/kg体重の濃度が好ましい。
本発明の状況で適用される1つの特に好ましく非限定的な投与スキームは、2週毎または4週毎のs.c.適用またはi.v.適用である。
これに関して、本明細書で使用されるラットモデルで、2ヶ月毎の1〜4mg/kg i.v.用量が本発明の化合物の治療レベルを得るのに十分であり、ヒトのそれぞれの用量は、好ましくは約0,3〜10mg/kg i.v.またはs.c、より好ましくは約1〜10mg/kg i.v.またはs.c.、さらにより好ましくは約1〜5mg/kg i.v.またはs.c.であったことに注意する。
本明細書に示すように、開示される環状ペプチドの投与は、特に高用量で適用される場合に一過性の反対免疫応答を最初に誘発し得る。長期のかかる一過性免疫応答は、投与される環状ペプチドの抗体不活性化の活性によって相殺される。これによって、投与される環状ペプチドの減速効果、即ち、抗β1-AR抗体の減速排除、従って(異常な)β1-AR活性の減速効果がもたらされ得る。
また、本発明は、医学介入を必要とする患者に、本明細書に開示される薬学的に活性な量の環状ペプチドおよび/または医薬組成物ならびに任意に薬学的に許容され得る担体を投与する工程を含む、
a)β-AR、好ましくはβ1-ARの活性が増強される疾患の治療、改善もしくは予防;
b)β-AR、好ましくはβ1-ARに対する抗体を有する患者もしくは本明細書に開示される疾患に罹患している患者もしくは該疾患を発症するリスクがある患者の治療; または
c)免疫寛容の誘導
のための方法に関する。
また、本発明は、
a)β-AR、好ましくはβ1-ARの活性が増強される疾患の治療、改善もしくは予防;
b)β-AR、好ましくはβ1-ARに対する抗体を有する患者もしくは本明細書に開示される疾患に罹患している患者もしくは該疾患を発症するリスクがある患者の治療; または
c)免疫寛容の誘導
のための、本明細書に開示される環状ペプチドまたは医薬組成物および任意に薬学的に許容され得る担体に関する。
本発明によって医学的に介入される(治療、改善、予防または診断される)疾患または本明細書に定義および記載されるように患者が罹患している疾患は、好ましくはβ1-ARが非生理学的な様式で活性化されるもの、より好ましくは抗体、より好ましくはβ1-ARに対する自己抗体によって活性化されるものである。
しかし、例示的におよび好ましくは、本発明によって医学的に介入される疾患または本明細書に定義および記載されるように患者が罹患している疾患は、限定されないが、心臓疾患の群を含む。
特に、本発明によって医学的に介入される心臓疾患または本明細書に定義および記載されるように患者が罹患している心臓疾患は、限定されないが、感染および非感染心臓疾患、虚血および非虚血心臓疾患、炎症性心臓疾患および心筋炎、心拡大、特発性心筋症、(特発性)拡張心筋症(DCM)、免疫心筋症、心不全、および任意の不整脈、例えば心室および/または上室性期外捕捉収縮(premature capture beats)ならびに任意の心房不整脈、例えば心房細動および/または心房粗動を含み得る。
即ち、本発明の方法または環状ペプチドまたは医薬組成物に関して、本明細書に示される記載および定義に表される心臓疾患は、感染および非感染心臓疾患、虚血および非虚血心臓疾患、炎症性心臓疾患および心筋炎、心拡張、特発性心筋症、(特発性)拡張心筋症(DCM)、免疫心筋症、心不全、および任意の不整脈、例えば心室および/または上室性期外捕捉収縮ならびに任意の心房不整脈、例えば心房細動および/または心房粗動を含む群より選択される心臓疾患であり得る。
本発明によって医学的に介入される(治療、改善、予防または診断される)最も好ましい疾患または本明細書に定義および記載されるように患者が罹患している最も好ましい疾患は、DCM、好ましくは特発性DCMであることに注意する。
本発明の目的のための「患者」の特定の亜集団は、本明細書に記載される疾患のいずれか、より具体的に本明細書に記載される心臓疾患の群に罹患しており、かつ同時にβ-ARに対する抗体、より好ましくはβ1-ARに対する抗体を有する患者であり、抗体は好ましくは自己抗体である。
本発明によって医学的に介入される(治療、改善、予防または診断される)疾患あるいは本明細書に定義および記載されるように患者が罹患している疾患は、β-ARに対する抗体、好ましくはβ1-ARに対する抗体によって誘導されるものを意図する。好ましくは、これらの抗体は自己抗体である。
本明細書に提供される手段および方法は、本明細書に定義される疾患の予防(prophylaxis)/予防(prevention)に提供される場合に特に有用である。このことは、患者が本明細書に定義される疾患(の症状)の発症前に本発明の環状ペプチドおよび/または医薬組成物で治療され得ることを意味する。例えば、この予防治療は、例えば本明細書に提供される診断手段および方法を利点とする以前の診断適用に従い得る。それによって、本明細書に定義される疾患を発症するリスクが診断される場合、例えば抗β-AR(自己)抗体が検出される場合に、本発明の治療手段および方法を利点とする予防治療を適用することが好ましい。
これに関して、好ましい「患者」は、本明細書に定義される疾患を発症するリスクを有する患者である。特に、かかる患者は、抗β(自己)抗体、好ましくは抗β1-AR(自己)抗体を有するが、本明細書に定義される疾患またはその症状に(まだ)罹患していない患者である。
本発明の状況で誘導される免疫寛容は、β-AR分子の免疫原拡張物に対する抗体の産生の抑制によって具体的に得られることが構想され、これは、理論に拘束されないが、抗体産生早期(成熟)B細胞および記憶B細胞の抗原認識部位の遮断によるものであり得る。
提供される医薬組成物または環状ペプチドが、前記化合物の使用による患者における抗β-AR抗体の検出などの、本明細書に定義される疾患および患者群または患者のいずれかの治療、予防および/または改善に特に有用であることは、本発明の範囲内である。
本発明の目的のための、即ち本発明の化合物が投与されるまたは本明細書に定義および記載される疾患に罹患しているまたは本発明によって診断されることを意図する「患者」には、ヒトならびに他の動物および生物の両方が含まれる。従って、本発明の化合物および方法は、(1つまたは複数の)診断薬、診断手順および方法ならびに病期分類手順および方法などのヒト治療および獣医学用途の両方に適用可能であるか、またはこれらと関連するものである。好ましい態様において、患者は哺乳動物であり、最も好ましい態様において、患者はヒトである。
本発明の変異環状ペプチドは、また、本明細書に定義される疾患および患者群/患者のいずれかの治療、予防および/または改善のための医薬の製造に使用され得る。また、医薬組成物について本明細書で言及されるものは、本発明のペプチドが使用され得る医薬の製造に適用される。
なおさらなる局面において、本発明は、本発明の環状ペプチドまたは組成物および任意に少なくとも1つのさらなる生物学的活性化合物を含む診断剤あるいはこれらの診断剤に関する。
好ましくは、本明細書に開示される診断剤は、本発明の変異ペプチドからなるまたはこれらを含むものであり、変異ペプチドには標識が含まれる。かかる標識は、放射性標識および蛍光標識を含む群から選択され得る。それぞれの標識は、当業者に公知である。本明細書の上記に示される標識の定義および記載は、ここで準用する。典型的に、ペプチドは、診断剤の一部分であり、特異的結合特性、好ましくは抗β1-AR抗体に結合する特性を診断剤に付与するが、標識は、シグナル伝達特性を診断剤に付与する。
本発明の診断剤は、本発明の(1つまたは複数の)標識または非標識変異ペプチドとは別に、さらに生物学的活性化合物を含み得る。かかるさらなる生物学的活性化合物は、特に本発明の変異ペプチドが標識されない場合に、診断剤にシグナル伝達特性を付与するための手段であり得る。例えば、さらなる生物学的活性化合物は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、より好ましくは本発明の変異ペプチドもしくは本発明の変異ペプチドおよび抗β-AR抗体、好ましくは抗β1-AR抗体からなる複合体に特異的に結合する標識抗体であり得る。
さらなる局面において、本発明は、
a)本発明の環状ペプチドまたは組成物または診断剤を用いて(例えば試料中の)β-ARに対する抗体を検出する工程; および
b)前記抗体の力価が増大する場合に疾患を診断する工程
を含む、本明細書に定義および記載される疾患の診断方法に関する。
さらなる局面において、本発明は、本発明の変異ペプチド、医薬組成物および医薬を用いて治療され得る患者の診断方法に関する。また、この特定の方法の状況において、本発明の化合物を用いて(例えば試料中の)β-ARに対する抗体を検出する工程および/または前記検出工程の結果が本明細書に定義される疾患を示すかを判断する工程が使用され得る。上記のように、本明細書に定義される疾患または本明細書に定義される疾患を発症するリスクは、前記抗β-AR抗体の力価が増大する場合に示される。
別の局面において、本発明は、本明細書に定義される疾患を(例えば試料中で)診断するための、本明細書に提供および記載される環状ペプチド、組成物または診断剤に関する。また、本明細書に定義される疾患または本明細書に定義される疾患を発症するリスクは、抗β-AR抗体の力価の増大によって示される。
本発明の状況において、用語「抗β-AR抗体の力価の増大」は、(例えば本発明によって診断される患者に由来する試料中の)抗β-AR抗体の力価が健常対照患者、即ち本明細書に定義される疾患に罹患していない患者および/または抗β-AR抗体を欠く患者のものよりも高いことを意味する。
上記のように、健常患者において、抗β-AR抗体は、通常、ほとんどまたは全く存在せずまたは検出可能ではない。従って、本発明の「抗β-AR抗体の力価の増大」は、好ましくは抗β-AR抗体の任意の発生、即ち、検出可能な量の抗β-AR抗体の任意の発生のことをいう。
本発明の適切な「試料」としては、限定されないが、(1つまたは複数の)生物学的試料または医学的試料、例えば(1つまたは複数の)細胞または組織を含む(1つまたは複数の)試料が挙げられる。例えば、かかる(1つまたは複数の)試料は、生検材料の生物学的材料を含み得る。「生検材料」の意味は当該技術分野で公知である。例えば、生検材料には、例えば本明細書に記載される患者/被験体から付き添いの医師が取り出す(1つまたは複数の)細胞または組織が含まれる。例示的に、限定されないが、本発明の状況で分析される生物学的試料または医学的試料は、血液、血漿、白血球、尿、精液、唾液、脳脊髄液、リンパ液またはリンパ性組織もしくは細胞、筋肉細胞、心臓細胞、静脈または動脈の細胞、神経細胞、脊髄の細胞、脳細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、腸管の細胞、精巣の細胞、尿生殖管の細胞、結腸細胞、皮膚、骨、骨髄、胎盤、羊膜液、髪、髪および/または小胞、幹細胞(胚性、神経性、および/または他)あるいは一次もしくは不死化細胞株(リンパ球、マクロファージ、または細胞株)であり、またはこれらに由来するものである。本発明による好ましい「試料」は、血液または血漿に由来するものである。また、本明細書に定義される生物学的試料または医学的試料は、生検材料、例えば心臓組織、静脈もしくは動脈に由来する生検材料であり得、またはこれらに由来し得る。
さらなる局面において、本発明は、診断キット、例えば本発明の環状ペプチド、組成物または診断剤を含む、β-ARに対する抗体の検出のための診断キットに関する。
本発明のキットは、本発明によって開示される少なくとも1つの化合物、例えば、本発明の環状ペプチドもしくは線状ペプチド、本発明の核酸分子、ベクターもしくは宿主細胞または本発明の組成物もしくは診断剤などを含む。特定の一態様において、キットは、指示リーフレット、および/またはキットの適用に使用されるバッファ、および/またはキットを使用するもしくは使用することになっている検出反応を行うための少なくとも1つの反応容器をさらに含む。さらなる態様において、前記キットの適用に関して使用される少なくとも1つ、いくつかまたは全ての試薬が、キットを使用することになっている(1つまたは複数の)反応の実施に有用な一部分として存在する。
本発明の環状ペプチド、診断剤またはキットは、β1-ARの検出に適用され得る。従って、本発明の環状ペプチド、診断剤またはキットは、細胞および/または組織表面に結合した抗β1-AR抗体の同定/検出に特に有用であり得る。例えば、本発明の環状ペプチド、診断剤またはキットは、画像目的、例えば単一光子放出計算トモグラフィー(SPECT)、MiBi、PET、磁気共鳴トモグラフィー(MRT)または医療に使用される他の診断画像技術において使用され得る。インビボでの131I標識CP分布パターン(図30)によると、本発明の環状ペプチド、診断剤は、例えば、臓器特異的トレーサーとして特に有用であり得る。
それぞれ診断剤としておよび診断方法において、本発明の化合物を使用するための1つの特定のアプローチは、3段階スクリーニング手順である。例えば、本方法は、本発明の環状ペプチドを用いてELISAを行う工程、および免疫蛍光を測定する工程ならびに天然ヒトβ-ARを発現する細胞中のcAMP応答を測定する工程を含む。前記工程のそれぞれおよびいずれかは、従って、本発明の環状ペプチドを用いた前記抗体の検出のために行われ得ることが理解される。従って、多数の患者、例えば心不全患者は、機能的に活性な抗β1-AR抗体についてスクリーニングされ得る。かかる(または他の本明細書に開示される)診断方法に関して、機能的に活性な抗β1-AR抗体の定義は、好ましくはレセプター媒介シグナル伝達に対する影響、即ち細胞性cAMPレベルに対する影響およびcAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)の活性に対する影響に基づくものである。環状AMPは、β-ARファミリーなどの多くのGタンパク質共役レセプターの普遍的な第二メッセンジャーである。これは、PKA、cAMPゲートイオンチャンネル、ホスホジエステラーゼ、ならびにEpac1および2として公知の、cAMPによって直接活性化される交換タンパク質を介して影響を及ぼす。先行技術には、本発明の診断方法と共に全て使用され得る、非修飾細胞中のcAMPを測定するためのいくつかの蛍光方法が説明されている。PKAの調節および触媒サブユニットに融合された緑蛍光タンパク質(GFP)バリアント間の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)が、神経細胞(Hempel CM、Vincent P、Adams SR、Tsien RY、Selverston Al. Nature. 1996;384:113-114)または心筋細胞(Zaccolo M、Pozzan T.、Science. 2002;295:1711-1715)において、cAMPの空間-時間ダイナミクスを研究するために記載されている。
最近、Epac-タンパク質のcAMP結合ドメインに直接融合した強化シアン(CFP)またはイエロー蛍光タンパク質(YFP)を有することを特徴とする単鎖蛍光インジケーターが当該技術分野で説明されており、cAMP測定の高い感度および良好な時間解像度を達成することが可能である。中でも、かかるシステムは、WO2005/052186に記載されている。かかるシステムは、本発明の環状ペプチドまたは他の対応の化合物を用いて任意の診断手順と共に使用され得る。しかし、また、かかるシステムは、限定されないが、機能的に活性な抗β1-AR抗体の割合を分析するために使用され得る。好ましくは、かかる診断方法は、以前に抗体で分類されたDCM患者またはこれまでに評価された任意の個体または本明細書に記載される疾患のいずれかに罹患していることが疑われる個体または罹患するリスクがある任意の個体のコホートに適用される。診断方法およびスクリーニング方法のさらなる工程において、β遮断薬が抗β1-AR抗体誘導レセプター活性を阻害する能力を、それぞれ評価し、かつ決定し得る。
本発明のペプチドを利用する、WO2005/052186に記載されるFRETベース法の前記アッセイは、単純であり、時間を消費しない限り有利であり、同時に抗β1-ECII抗体陽性と以前にみなしたDCM患者全てを開示または同定する。本発明の1つまたはいくつかのペプチドを利用するFRETベースの診断方法のこの態様は、抗体が誘導するcAMPの増大の検出に基づいている。
まとめると、Epac-FRETによるスクリーニングは、非常に感度の高い単一工程アプローチを表すように思われ、ヒトβ1-ARに対する活性化抗体を検出することが可能である。従って、本発明は、また、Epac-FRETアッセイに使用するための、本発明の1つまたはいくつかのペプチドの使用に関する。より好ましくは、かかるEpac-FRETアッセイは、診断に使用され、さらにより好ましくは本明細書に記載される疾患のいずれかを罹患している患者またはこれらを罹患していると疑われる患者の診断に使用される。
上記の点で、本発明によるFRET技術、特にFRETベース検出システムを使用または適用することが特に好ましい。
さらなる局面において、本発明は、本発明の環状ペプチドと検出されるβ-ARに対する抗体とを接触させる工程を含む、(例えば本明細書に定義される試料中の)β-ARに対する抗体の検出方法に関する。
さらなる局面において、本発明は、β-ARに対する抗体を(例えば本明細書に定義される試料中で)検出するための、本明細書に開示される環状ペプチド、組成物または診断剤に関する。
抗体または環状ペプチド、組成物または診断剤の上記検出方法は、本発明の状況で記載および提供される診断用途の状況で使用されることが特に有用である。
本出願を通して、以下の略語は以下の意味:Abまたはab:抗体、Absまたはabs:複数の抗体、AR:アドレナリン作動性レセプター、EC β-ARの細胞外ドメイン、ECII β-ARの細胞外ドメインIIおよびAA アミノ酸を有する。
本発明を、以下の非限定的な図面および実施例を参照してさらに説明する。
図は以下のことを示す:
実施例1:変異体シクロペプチドの合成
1つだけの個別のジスルフィド結合を形成し得る、本明細書に開示されるシクロペプチドの3つの特定の例は、18、22または25アミノ酸(AA)から構成され:ECII-18AA Cys/Ser変異体(Gln-)シクロペプチド、ECII-22AA Cys/Ser変異体(Gly-)シクロペプチドおよびECII-25AA Cys/Ser変異体(Gln-)シクロペプチドのそれぞれである。一次配列は、β1-ARの配列のヒト配列(それぞれアミノ酸位204から219、200から220および200から222)に部分的に相同である。線状ペプチドの頭-尾の環化、その後環化手順を安定にする第2の(1つの)ジスルフィド結合によりコンホメーション柔軟性を限定することで、18AA、22または25AAシクロペプチド変異体は、天然β1-ECIIタンパク質ループの表面上に提示されるようなエピトープのコンホメーションをより厳密に模倣するコンホメーションをとる。さらに、一般的に環状ペプチドはその線状対応物よりもタンパク質分解に対して安定であるので、環化はしばしば、ペプチドの作用の持続時間を延長するツールとして使用される。
詳細に、シクロ(K-18-P)環状S-S、Cys/Ser変異体のペプチド配列は:シクロ-Ala-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Cys-Ser-Asp-Phe-Val-Glnであり、環化はCys7とCys13の間(ジスルフィド結合)およびAla1とGln18の間(閉環)で生じ得る。
詳細に、シクロ(K-22-P)環状S-S、Cys/Ser変異体のペプチド配列は:シクロ-Arg-Ala-Glu-Ser-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Cys-Ser-Asp-Phe-Val-Thr-Glyであり、環化はCys10とCys16の間(ジスルフィド結合)およびArg1とGly22の間(閉環)で生じ得る。
詳細に、シクロ(K-25-P)環状S-S、Cys/Ser変異体のペプチド配列は:シクロ-Ala-Arg-Ala-Glu-Ser-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Cys-Ser-Asp-Phe-Val-Thr-Asn-Arg-Glnであり、環化はCys11とCys17の間(ジスルフィド結合)およびAla1とGln25の間(閉環)で生じ得る。
本発明のシクロペプチド変異体は、最初線状ペプチドとして合成され、その後C末端カルボキシル基とN末端アミノ酸のアミノ基の縮合により、主鎖上で共有結合して環化される。その後、システイン残基7と13の間(18量体シクロペプチド)、システイン残基10と16の間(22量体シクロペプチド)およびシステイン残基11と17の間(25量体シクロペプチド)のジスルフィド結合が形成される。
Fmoc/tertブチル戦略を使用して、線状ペプチドを段階的固相ペプチド合成により集合させる。開始樹脂としてクロロトリチルを使用する。第1のアミノ酸(Fmoc-Pro-OH)をDMF中でDIEAとカップリングさせ、第2のアミノ酸をDMF中でPYBOP/HOBT/DIEAとカップリングさせ、その後アミノ酸をDMF中でジイソプロピルカルボイミド、HOBTとカップリングさせる。UV検出により、ペプチドの品質を作業中にモニターする。脱保護/カップリング(2回過剰)手順を以下に記載する:
合成には以下のアミノ酸を使用した(18量体環状Cys/Serペプチド変異体について例示的に示す):
反応性N末端アミノ基およびC末端カルボキシル基で完全に保護されたペプチドを、ヘキサフルオロイソプロパノール/ジクロロメタンを用いた処理により樹脂から切断する。
その後、以下のプロトコルに従い溶液中で環化を行う:
高DMF希釈(10mmolの線状ペプチド/1LのDMF)中でPyBOP/NaHCO3を用いて、保護ペプチドの「頭-尾」環化を行う。環化は3日後に完了する。DMF蒸発後、ペプチドを5%NaHCO3、H2Oおよび純H2Oで洗浄する。反応混合物を冷却し、システイン基を除いてペプチドを脱保護する。その後、部分的に保護されたペプチドを、メチルt-ブチルエーテルを用いて沈殿により単離する。
粗製ペプチドを液体クロマトグラフィーにより予備精製する:
ジメチルスルホキシド(3%)の存在下でH2O(2mg/mL)中でジスルフィド環化を行う。環化反応は3日後に完了する。上述の条件を使用して、HPLCによりペプチドを精製する。95%より高い純度を有する画分をプールする。ペプチドをイオン交換樹脂(Dowex 1X2)で交換し、最終溶液を凍結乾燥する。アミノ酸分析(Edman配列決定)によりペプチド含有量を測定する。
図1、3、25および26のHPLC溶出プロフィールは、3Cys含有18AA Cys13-Cys14、22AA Cys16-Cys17および25AA Cys17-Cys18シクロペプチドにより得られた比較的大きな(山のような)溶出プロフィールと比較して、全て同じ単一のジスルフィド結合を含む変異体シクロペプチドにより得られた、形状および良好に規定された溶出ピークを明確に示す。以下のインビトロおよびインビボ試験は全て、これらのシクロペプチド変異体を用いて行った。
実施例2:インビトロELISA競合アッセイ
3Cys含有線状25AA Cys/Cysペプチドを抗原として使用して、免疫化抗体陽性ラット由来の異なる数の血清のプレインキュベーション(12時間、4℃、一晩回転インキュベーション)後、β1-ECII-18AAシクロペプチド変異体(例えば閉環部位にさらなるD-Glu→Gln交換を有するCys13-Ser14またはSer13-Cys14変異体)の遮断能力をELISA競合アッセイで3Cys含有25AAまたは18AA Cys/Cysシクロペプチドと比較した。図4、5および7〜10は、本発明の異なるシクロペプチドを使用して、n=12からn=82までの免疫化抗体陽性ラットの血清で行った測定の結果を示す。
12の異なる免疫化抗体陽性ラットの血清から単離したIgG画分で得られた結果により、驚くべきことに、Ser/Cysシクロペプチド変異体ではなくCys/Serだけが、β1-ECII-抗原に対する抗体結合を有意に遮断可能であったことが明らかになった。18AS Cys/Ser変異体シクロペプチドの遮断効果は、3Cys含有β1-ECII-18AA Cys/Cysシクロペプチドの遮断能力と同等であったかまたは(分析した血清の半分より多くのn=8/12で)さらに効果的であった(図4)。この所見は、β1-ECII-18AA Cys/Serシクロペプチド変異体の明らかな用量依存的遮断効果を示す用量滴定試験により確認され、2〜8倍モル過剰(IgG分子について150kDaの分子量を考慮して、環状(2.1kDa分子質量(MM))または線状ペプチド(3.0kDa MM)の両方について、1:1ストイキオメトリーと推定される)で、そのSer/Cys変異対応物または3Cys含有線状25AA Cys/Cysペプチドのいずれよりもレセプター抗体の遮断において、一貫して大きく優れていた(図5)。
図7では、n=78の免疫化抗体陽性ラットから単離したIgGとのプレインキュベート後の、線状3Cys含有25AA Cys/Cys-ペプチドを抗原として使用したELISA競合アッセイにおける異なるシクロペプチド変異体の遮断効果を要約する。完全無能化環状25AAまたは18AA Ser/Cys変異体(それぞれ、6±2%または1±2%;P<5x10-30またはP<3.7x10-33)と比較して、18AA Cys/Ser変異体の遮断能力が最も高く(69±2%)、続いて25AA Cys/Cys(67±2%)、18AA Cys/Cysシクロペプチド(60±4%)、および3Cys含有線状25AAペプチド(55±4%)であった。試験したラットの血清のわずか5%未満(n=4)は環状ECII-18AA Ser/Cys変異体によっても部分的に遮断されたが、大部分(>95%;n=78)は、ECII-18AA Cys/Ser変異体により有効に遮断された(図8)。
Gln-Ala閉環部位またはD-Glu-Ala閉環部位のいずれかを有するシクロペプチド変異体のインビトロ遮断効果は、69の異なる免疫化抗体陽性ラットから単離した血清とのプレインキュベート後、ELISA競合アッセイ(3Cys含有線状25AA Cys/Cysペプチドを抗原として使用した)により分析した。結果を図9に示す。
再度、試験したラット血清の反応の2つのパターンが見られた(1型/2型)。血清の大部分の画分(93%、図9、上パネル、1型および図10)は、25AAまたは18AA Cys/Ser変異体シクロペプチドにより非常に有効に遮断され(それぞれ、69±2%または68±3%(Gln-閉環)/69±2%(D-Glu-閉環))、対応する3-Cys含有25AAまたは18AA Cys/Cysシクロペプチド(それぞれ、65±2%または59±2%)よりもかなり優れたが、閉環部位のアミノ酸に関係なく、25AAまたは18AA Ser/Cys変異体はほとんど阻害効率を有さなかった(6±2%、25AA Ser/Cys、P<5x10-30;1±2%、18AA Ser/Cys Gln閉環(P<3.7x10-33)または1±2%、D-Glu閉環(P<6x10-55)。
阻害能力に関して低い程度ではあるが、血清の少数の画分(7%、図9、下パネル、2型および図10)は、Cys/SerまたはSer/Cys変異ペプチドで同様に遮断され、また、25AAおよび18AAシクロペプチドの両方について、変異体はそれらの3Cys含有25AAまたは18AA Cys/Cys対応物よりも効果が低かった。25AAまたは18AA Cys/Ser変異体シクロペプチドの遮断能力は、それぞれ48±6%または50±8%(Gln-閉環)/47±5%(D-Glu-閉環)であり、対応する3Cys含有25AAまたは18AA Cys/Cysシクロペプチドの能力(それぞれ、72±5%または67±6%)よりも一貫して劣った;しかしながら、これらの動物において、25AAまたは18AA Ser/Cys変異体は、Cys/Ser変異体とほとんど同等の遮断能力を示した(それぞれ、37±7%25AA Ser/Cys、P=0.22n.s.:47±3% 18AA Ser/Cys Gln閉環またはで33±5%、D-Glu閉環、P=0.7n.s.、またはP=0.08n.s.)。
続いて、種々の線状および環状β1-ECIIペプチドの用量依存的遮断能力を、同様のELISA競合アッセイを使用してインビトロで分析した(図11):
線状25AA Cys/Cysペプチド、環状25AA Cys/Serペプチド変異体、環状18AA Cys/Cysペプチド、環状18AA Cys/Serペプチド変異体および線状18AA Cys/Serペプチド変異体を含む実験により、ランダムに選択した免疫化抗体陽性ラットのn=6由来の全ての血清は、用量依存的様式で、β1-ECII-18AA Cys/Ser変異体シクロペプチドにより最も遮断され、続いて非変異体18AA Cys/Cysシクロペプチド、および25AA Cys/Serシクロペプチド変異体により遮断されることが明らかとなった。抗体中和能力について、全てのシクロペプチドは、それらの線状対応物(変異有または無し)よりも大きく優れており(P<0.005;図11)、抗β1-ECII抗体非含有循環中で、18AA Cys/Serシクロペプチド変異体の8倍過剰で53%、20倍過剰で66%および80倍過剰で約85%の用量依存的減少を生じた。環状18AA Cys/Cys-または環状25AA Cys/Ser-ペプチドについての対応する結果は:46/30%[8倍過剰]、56/49%[20倍過剰]、および80倍過剰で71/83%であった。線状ペプチドは、明らかに効果が低く、線状25AA Cys/Cysおよび線状18AA Cys/Serペプチドの両方について、わずか24%[8倍過剰]、35%[20倍過剰]、および80倍過剰で約50%のレセプター抗体力価における用量依存的減少を生じた。
さらに、ヒトβ1アドレナリン作動性レセプターの第2細胞外ループ(ECII)の種々のシクロペプチドバリアントのインビトロ遮断(=中和)能力を、4℃で12〜14時間のインキュベーション後、免疫化β1-ECII抗体陽性ラットの血清で試験した。22AAシクロペプチドcyc22AA Cys/Cys(遮断されない血清に対する遮断効率82.0±5.0%、P=0.000046)および22AAシクロペプチド変異体cyc22AA Cys/Serのインビトロ遮断効率(遮断効率74.9±5.0%、P=0.00026)は、前述の3Cys含有シクロペプチド、すなわちcyc25AA Cys/Cys(遮断効率73.4±5.0%、P=0.00011)またはcyc18AA Cys/Cysの遮断能力(遮断されない血清に対する遮断効率66.1±7.0%、P=0.00025;図27A/B参照)よりもかなり高かった。
実施例3:インビトロ機能的FRETアッセイ
β1-レセプター媒介性シグナル伝達(機能的cAMPアッセイ)におけるβ1-ECII25AAまたは18AAシクロペプチド変異体(閉環部位にD-Glu/Glnを有するかまたは有さない)の遮断能力を、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)によるアプローチを使用してアッセイした(図6)。
代表的なラットの抗β1-ECII IgG抗体とβ1-ECII-18AAシクロペプチド変異体(それぞれ、Cys/SerまたはSer/Cys変異)とのプレインキュベーション(12時間、4℃、回転インキュベーター)の効果を、3Cys含有25AA Cys/Cysシクロペプチドの阻害効果と、または遮断ペプチドとインキュベートしなかった抗β1-ECIIIgG抗体の阻害効果と比較した。一過的にEpac1でトランスフェクトされた、β1-ARを安定に発現するヒト胚性腎細胞(HEK 293-β1細胞)の抗体誘導性細胞cAMP産生の遮断(%)に関して、記録されたFRET発光シグナルの標準化されたYFP/CFP比を使用して本発明のシクロペプチド変異体の効果を定量した。図6のx軸は、秒(s)で表される記録時間に対応する。
β1-アドレナリン作動性膜貫通シグナル伝達の抗体誘導性刺激におけるβ1-ECII-18AAシクロペプチド変異体の阻害効果を、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)によるアプローチを使用して分析した。再度、測定可能な機能的抗体を阻害する効果(細胞内cAMP増加を遮断する)に関しても、環状β1-ECII-18AA Cys/Ser変異体は、そのSer/Cys対応物より大きく優れており、3Cys含有25AA Cys/Cysシクロペプチドよりもわずかに効果的であった(図6)。
総合すると、本発明で行った試験の結果により、変異シクロペプチドの抗体遮断能力は、25量体ペプチドから18量体ペプチドにアミノ酸の数を減らすことによっては影響を受けないことが示される。結果はまた、環状25AAまたは18AA Ser/Cys変異体とではなく、環状25AAまたは18AA Cys/Ser変異体と25AA Cys/Cysおよび18AA Cys/Cysシクロペプチドの優れた同等性を示す。驚くべきことに、1つのシステイン残基をセリン残基で交換することの正確な性質は、変異ペプチドの中和能力を顕著に決定し:18位(25-AAシクロペプチド)または14位(18-AAシクロペプチド)でのCys→Serの交換はそれぞれ、インビトロにおいて優れた抗体中和および薬学的効果を有する環状ペプチドを生じるが(図6〜10)、Cys17→Ser17またはCys13→Ser13変異体(それぞれ、25-AAまたは18-AAペプチド)は、抗体スカベンジャーとしてのペプチドの特性に関して、または機能的な抗体効果を阻害するペプチドの能力(インビトロにおけるレセプター刺激の中和;図6〜10および実施例3)に関してのいずれにおいても阻害効果をほとんど有さなかった。25位(25AAシクロペプチド変異体)または18位(18AAシクロペプチド変異体)でのD-Glu/Gln交換は、その長さに関係なく(すなわち25対18アミノ酸;図7〜10)、シクロペプチドの遮断能力に大きな影響を及ぼさなかった。
実施例4:動物モデル、レセプター抗体の「インビボ」遮断
この実施例および本明細書に記載される任意の他の実施例に使用した動物モデルは、そうではないと示されなければ、ヒト類似ラットモデルである。それぞれ、評価および試験の前に、種々の本発明の化合物、より具体的には式VI、VII、VIIIおよびIXの化合物、ならびに対照として線状ECII-18AA Cys/Ser変異(Gln18-)ペプチド(以下のアミノ酸配列:Ala-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Cys-Ser-Asp-Phe-Val-Glnを有する)および線状非変異3Cys含有ECII-25AA Cys/Cys (Gln25)ペプチド(以下のアミノ酸配列:Ala-Arg-Ala-Glu-Ser-Asp-Glu-Ala-Arg-Arg-Cys-Tyr-Asn-Asp-Pro-Lys-Cys-Cys-Asp-Phe-Val-Thr-Asn-Arg-Glnを有する、を使用して、このヒト類似ラットモデルを下記のように処理した。
25AAおよび18AA両方のCys/Ser変異体シクロペプチド(Gln閉環部位を有する)、18AA Ser/Cys変異体シクロペプチド、ならびに変異線状18AA Cys/Serペプチドのインビボ遮断効果を、1.0mg/kg体重(Bw)のそれぞれの構築物を新しく免疫した抗体陽性ラットへの静脈内(i.v.)注射後に分析し、第1のシクロペプチド適用を最初の免疫の3ヵ月後とした(およびその後2回のブーストを2ヶ月目および3ヶ月目として)(すなわち、「予防」試験の種類のシクロペプチドの使用)。全体的に、種々の構築物の5回の予防適用は4週間ごとに、毎月の連続した抗原ブーストの2週間後に行った。i.v.注射の18〜20時間後に血清を採取し、3Cys含有線状25AA Cys/Cysペプチドを抗原として使用して、ELISAにより反応性をアッセイした(図12)。
この第1の(予防)インビボシクロペプチド適用により、抗体中和に関して最も高い効率は1.0mg/kg体重(Bw)の非変異25AA Cys/Cysまたは18AA Cys/Cysシクロペプチドで達成され(未処理免疫化動物と比較して、5回のシクロペプチド注射後、87.7±2%または89.9±3%減少;両方P<0.005)、続いて18AA Cys/Ser変異体シクロペプチド(5回のシクロペプチド注射後54.5±2%減少;P<0.05)となったが、線状25AA Cys/Cysペプチドまたは線状18AA Cys/Ser変異体は同じ濃度で有意な遮断効果を有さなかった(5回の注射後、25.8±3%または4.5±11%の抗体力価減少、P=0.16またはP=0.8;図12)ことが示された。
この所見は、選択されたシクロペプチド処理ラット対未処理免疫化ラット(n=3)の骨髄および脾臓細胞調製物のELIspot解析により確認した。図13には、25AA Cys/Cysシクロペプチドまたは18AA Cys/Serシクロペプチド変異体で処理したラット(それぞれ、n=3または4)のみでの、脾臓およびより低い程度で骨髄の両方における、特異的抗β1-ECII抗体分泌細胞(ASC)の数の有意な減少が示されるが、線状18AA Cys/Serペプチド変異体(n=3)は(脾臓および骨髄のいずれにおいても)ASCに影響を及ぼさなかった。
さらに、治療的に使用された25AAおよび18AA Cys/Serシクロペプチド変異体、18AA Ser/Cys変異体(Gln-)シクロペプチド、ならびに変異線状18AA Cys/Serペプチドのインビボ遮断効果を、長期に渡り免疫され、抗β1-ECII抗体陽性だが、心筋症表現型を示すラットに注射したそれぞれの構築物の第1静脈内(i.v.)用量(すなわち、1.0mg/kg体重(Bw))後に評価した(β1-ECII/GST抗原での1x毎月免疫の9ヵ月後;図14〜16および17)。種々の構築物の第1のi.v.注射の18〜20時間後に血清を採取し、3Cys含有線状25AA Cys/Cysペプチドを抗原として使用して、ELISAにより反応性をアッセイした。心筋症抗体陽性ラットにおける種々のシクロペプチドの「治療的」適用により、同じ濃度の25AA Cys/Serシクロペプチド変異体または明らかに効果の低い18AA Ser/Cysシクロペプチド変異体のいずれかと比較して、18AA Cys/Serシクロペプチド変異体(1mg/kg/Bw)のより高いインビボ遮断能力が明らかとなった(図14および15)。再度、18AA Cys/Ser シクロペプチド変異体のインビボ効率は、線状18AA Cys/Serペプチド変異体の効率よりも大きく優れていた。しかし、環状18AA Cys/Ser変異体の適用量を0.25mg/kg体重(Bw)に減らした場合、レセプター抗体における関連のある減少は達成されず、シクロペプチド変異体の用量と効果の関係が示唆された。
長期に渡り免疫され、抗体誘導性免疫心筋症を有するラットへの変異体単一S-Sシクロペプチドの4週間毎の反復治療注射により、単一S-Sシクロペプチド変異体について、ある種の「臨界最小用量」と効果の関係が確認された:1.0または2.0mg/kg体重のいずれかの用量の18AA Cys/Serシクロペプチドと比較して、0.25mg/kg Bwの用量の18AA Cys/Serシクロペプチドは、レセプター抗体をある程度除去し得るにも関わらず、(1) 循環レセプター抗体の達成された減少(7回のシクロペプチド注射後、治療開始時の力価の80%以下の最大残存抗体レベルを有する動物であると規定されるシクロペプチド感受性「応答体」だけを考慮したとしても(図16bおよびc)、および(2) 達成された心臓予防効果(図17b、19b、20および21b)の両方に関して明らかに効果は低かった。後者の用量は、循環レセプター抗体の中和(図16bおよびc)、ならびに抗体誘導性心筋症の特徴の逆転(図17b、19b、20および21b)の両方に関してほとんど同等に効果的であった。しかし、適用量をさらに4.0mg/kg体重に増加することでは、抗体除去能力(図16bおよびc)、または心臓予防効果(図17b、19b、20および21b)のいずれにおいてもより高い効果はもたらされなかった。
ペプチドの注射の際に、重大な局所または全身性の副作用は観察されなかった。また、種々の変異体シクロペプチドの注射後、動物の心拍数および血圧は影響を受けなかった(図20a)。また、シクロペプチド変異体の適用に関して常套的な実験室パラメーターの明らかな変化は生じなかった(図22aおよびb)。
抗β1-レセプター抗体を作製するために、動物を、細菌グルタチオン-Sトランスフェラーゼおよびヒトβ1-アドレナリン作動性レセプターの第2細胞外ループの配列を含む融合タンパク質(GST/β1-ECII)で免疫した。本発明の変異シクロペプチドで動物を処理する前に、4週間毎の定期的な免疫の6〜8ヵ月後に進行性拡張型心筋症を観察する(図17)。全ての免疫した動物は、高い力価の刺激性抗β1-ECII抗体を生じた。特異的抗β1-ECII力価は4週間毎の動物の連続ブーストの6〜8ヶ月の間に最大に達したが、NaCl注射対照動物は特異的なレセプター抗体を生じなかった(図18)。
このように免疫された動物を、本発明の変異体シクロペプチドの適用に使用した。25AAおよび18AA Cys/Ser変異体シクロペプチド(Gln閉環部位を有する)の両方のインビボ遮断効果を、1.0mg/kg体重(Bw)(18AA Cys/Serシクロペプチドについては0.25mg/kg/Bwも)の免疫化抗体陽性ラットへの最初の静脈内(i.v.)注射後に測定した。異なるペプチドのi.v.注射の18〜20時間後に血清を採取して、3Cys含有線状25AA Cys/Cysペプチドを抗原として使用してELISAにより反応性をアッセイした。
記載されるように、25AAおよび18AAの両方のCys/Ser変異シクロペプチド(Gln閉環部位を有する)、18AA Ser/Cys変異体(Gln-)シクロペプチド、および変異線状18AA Cys/Serペプチドのインビボ遮断効果を、1mg/kg体重(Bw)のそれぞれの構築物の免疫化抗体陽性ラットへの第1の静脈内(i.v.)注射後に分析した。i.v.注射の18〜20時間後に血清を採取して、3Cys含有線状25AA Cys/Cysペプチドを抗原として使用して、ELISAにより反応性をアッセイした。
インビボデータにより、同じ濃度の25AA Cys/Ser変異体または明らかに効果の低い18AA Ser/Cys変異シクロペプチドと比較して、18AA Cys/Ser変異シクロペプチド(1mg/kg/Bw)のより高い遮断能力が確認された(図14および15)。18AA Cys/Serシクロペプチドのインビボ効率も、18AA Cys/Serペプチドより大きく優れていた。
ペプチドの注射の際に、重大な局所または全身性の副作用は観察されなかった。また、種々の変異体シクロペプチドの注射後、動物の心拍数および血圧の両方は影響を受けなかった。
しかし、インビボデータによって、18AA Cys/Ser変異(Gln-)シクロペプチドの効率はまた、適用量に依存すると思われることも示され、0.25mg/kg/Bwの注射は、1mg/kg/Bwの濃度で提供した同一の構築物よりも、抗体中和に関して効果が低かった(図14および15)。
実施例2および3に記載されるインビトロの所見は一般的にインビボで確認された(例えば、図14〜16)。興味深いことに、線状ペプチドと比較したCys/Ser変異シクロペプチドの遮断効率の差は、インビボにおいてはさらに顕著であった(図5、7および14〜16)。
しかし、インビボデータによって、18AA Cys/Ser変異シクロペプチドの効率は同等に適用量に依存し得ることも示される(図14〜16)。得られた結果は、単一S-Sシクロペプチド変異体について(最小の)用量と効果の関係と同等であり:0.25mg/kgの用量の18AACys/Serシクロペプチド変異体は、1.0または2.0mg/kg体重(Bw)のいずれかの用量と比較して、循環レセプター抗体において達成された減少および達成された心臓予防効果の両方に関してかなり効果が低かった(図14〜16)。これらの用量は、循環レセプター抗体の中和および抗体誘導性の心筋症の特徴の逆転の両方に関してほとんど同等の効果であった(図16〜20)。しかし、適用量を4.0mg/kg Bwにさらに増加することでは、インビボにおける抗体清掃(図16)能力または心臓予防効果(図17〜21)のいずれに関してもより高い効果をもたらさなかった。
高用量(=4.0mg/kg Bw)のcyc18AA Cys/Ser変異体は効率を増加しなかったが、代わりに、抗体力価の一過的な増加をもたらし、3または4回目のシクロペプチド注射後だけ、レセプター抗体力価を有意に減少させた。最も注意すべきこととして、異なる注射濃度のcyc18AA Cys/Ser変異体シクロペプチドの抗体中和能力の効果はまた、1.0または2.0mg/kg Bw 18AA Cys/Serシクロペプチド変異体で最良の心臓予防が達成された試験の経過における抗体誘導性心筋症の特徴の逆転に関しても確認された(図17B、19B、20、21B)。
記載されるように、1.0mg/kg Bwの25AA量体Cys/Serおよび高用量(=4.0mg/kg Bw)の18AA量体Cys/Ser変異体の両方により、最初の免疫反応と一致する、一過的な抗体力価の増加がもたらされ、3または4回目のシクロペプチド注射(治療の3または4ヶ月目;図16aおよびb参照)後だけで、レセプター抗体力価が有意に減少された。この現象は、1.0または2.0mg/kg用量の18AA Cys/Serシクロペプチド変異体では起こらず、-37±13%(1.0mg/kg 25AA Cys/Ser-CP;P=0.36、対免疫未処理動物)または-39±14%(4.0mg/kg 18AA Cys/Ser-CP、P=0.24、対免疫未処理動物)の治療開始時のそれぞれの抗体力価のみと比較して、治療の9ヵ月後により高い抗体力価の絶対的な減少がもたらされた(それぞれ、1.0mg/kg:-59±14%または2.0mg/kg:-59±12%、P<0.0005、対免疫未処理動物)。したがって、1.0または2.0mg/kg Bwの用量のcyc18AA Cys/Serペプチドは、循環レセプター抗体の中和(図16bおよびc)に関して、ならびに試験の経過において、抗体誘導性心筋症の特徴の逆転(図17b、19b、20および21b)に関しても、ほとんど同等の効果であった。
また、インビボ実験により、変異体シクロペプチドの抗体遮断能力は、25量体から18量体シクロペプチドへのアミノ酸の数の減少により影響を受けないと思われることが示され、インビトロおよびインビボデータの両方は、2つの2システイン含有単一ジスルフィド結合25AA Cys/Serまたは18AA Cys/Serシクロペプチド変異体の優れた同等性を示す(図17a)。しかし、1.0mg/kg 25AA量体Cys/Serおよび高用量(すなわち4.0mg/kg Bw)18AA量体Cys/Ser変異体の両方は、抗体力価の最初の一過的な増加をもたらし(図16aおよびb)、したがってレセプター抗体力価の有意な減少を3または4回目のシクロペプチド適用(治療の3または4ヶ月目)に延期したことに注意されたい。この現象は、1.0または2.0mg/kg Bwのいずれの用量の18AA Cys/Serシクロペプチド変異体でも起こらなかった。
ヒトβ1アドレナリン作動性レセプターの第2細胞外ループ(ECII)のcyc22AA Cys/Ser変異体のインビボ遮断(=中和)能力はまた、8ヶ月にわたり定期的に免疫された(基本的な免疫およびその後7回の4週毎の抗原ブースト、図28A/B参照)ラットへの「治療」注射でも試験され、記載されたcyc18AA Cys/Ser変異体の効果と比較された。
4週間毎に4〜5回の定期的なシクロペプチド注射の後、未処理抗体陽性動物の力価は、治療の開始時の値(n=5、陽性対照;8ヶ月目の抗体力価と比較して全体で8+4(=12)回の抗原適用後の参照力価)の110.7±5.6%まで増加した。対照的に、cyc22AA Cys/Ser変異体(n=8動物)の4回の注射により、抗体力価は治療の開始時の抗体力価の9.0±2.2%まで減少した(P=3.0x10-7、未処理抗体陽性動物の抗体力価に対する有意さについて両側t検定で試験した場合)。したがって、cyc22AA-変異体のインビボ効率は、記載される18アミノ酸長を有するCys/Serシクロペプチド変異体(cyc18AA Cys/Ser;n=5動物)と比較してさらに増強され、4回の注射後、抗体力価は治療の開始時の力価の76.0±23.0%まで減少した(P=0.44、対未処理抗体陽性動物、n.s.;図28A参照)。
また、治療の4ヵ月後の心エコー追跡データも、Visual Sonics心エコーシステム(Vevo 770、バージョンV2.2.3)17.5 MHz変換器を備える)を使用して二次元およびドップラー心エコーにより測定した左心室拡張終期(LVED)および収縮末期(LVES)の直径の両方の減少(図29A)、ならびに「心係数」(CI、ml/分/g体重で表される;図29B参照)の増加により評価した場合、インビボにおける心臓予防効果に関してcyc18AA Cys/Ser変異体と比較して、cyc22AA変異体の優勢を示す。
総合すると、ECII-相同環状ペプチドの心臓予防および免疫調節活性は該ペプチドのコンホメーションに大きく依存するように思われるので、分子内局在ジスルフィド架橋は、構築物の三次元構造を安定化および維持するために必要不可欠である。環状の21+1(=22)AAペプチドにおいて、残存するシステイン(すなわち、216がSerに変異した場合209位および215位)は、規定の分子間距離を維持し、さらに構造規定分子内ジスルフィド架橋の形成を可能にするために、(予想される)閉環部位に最小の天然アミノ酸グリシンを導入して強化される。
本発明は、以下のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列に言及する:
配列番号:1:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(18AA;Cys14→Ser14);Ala1とGln18の間で環化が起こり得る
配列番号:2:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(25AA;Cys18→Ser18);Ala1とGln25の間で環化が起こり得る
配列番号:3:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(18AA;Cys14→Ser14;Gln18→DGlu18);Ala1とDGlu18の間で環化が起こり得る
配列番号:4:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(25AA;Cys18→Ser18;Gln25→DGlu25);Ala1とDGlu25の間で環化が起こり得る
配列番号:5:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(18AA;Cys13→Ser13);Ala1とGln18の間で環化が起こり得る
配列番号:6:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(25AA;Cys17→Ser17);Ala1とGln25の間で環化が起こり得る
配列番号:7:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(18AA;Cys13→Ser13;Gln18→DGlu18);Ala1とDGlu18の間で環化が起こり得る
配列番号:8:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(25AA;Cys17→Ser17;Gln25→DGlu25);Ala1とDGlu25の間で環化が起こり得る
配列番号:9:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(18AA;Cys14→Ser14)
配列番号:10:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(25AA;Cys18→Ser18)
配列番号:11:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(18AA;Cys14→Ser14;Gln18→DGlu18)
配列番号:12:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(25AA;Cys18→Ser18;Gln25→DGlu25)
配列番号:13:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(18AA;Cys13→Ser13)
配列番号:14:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(25AA;Cys17→Ser17)
配列番号:15:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(18AA;Cys13→Ser13;Gln18→DGlu18)
配列番号:16:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(25AA;Cys17→Ser17;Gln25→DGlu25)
配列番号:17:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(18AA;Cys3→Ser3);Lys1とPro18の間で環化が起こり得る
配列番号:18:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(25AA;Cys3→Ser3);Lys1とPro25の間で環化が起こり得る
配列番号:19:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(18AA;Cys3→Ser3;Gln7→DGlu7);Lys1とPro18の間で環化が起こり得る
配列番号:20:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(25AA;Cys3→Ser3;Gln10→DGlu10);Lys1とPro25の間で環化が起こり得る
配列番号:21:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(18AA;Cys2→Ser2);Lys1とPro18の間で環化が起こり得る
配列番号:22:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(25AA;Cys2→Ser2);Lys1とPro25の間で環化が起こり得る
配列番号:23:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(18AA;Cys2→Ser2;Gln7→DGlu7);Lys1とPro18の間で環化が起こり得る
配列番号:24:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(25AA;Cys2→Ser2;Gln10→DGlu10);Lys1とPro25の間で環化が起こり得る
配列番号:25:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(18AA;Cys3→Ser3)
配列番号:26:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(25AA;Cys3→Ser3)
配列番号:27:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(18AA;Cys3→Ser3;Gln7→DGlu7)
配列番号:28:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(25AA;Cys3→Ser3;Gln10→DGlu10)
配列番号:29:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(18AA;Cys2→Ser2)
配列番号:30:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(25AA;Cys2→Ser2)
配列番号:31:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(18AA;Cys2→Ser2;Gln7→DGlu7)
配列番号:32:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(25AA;Cys2→Ser2;Gln10→DGlu10)
配列番号:33:
ヒトβ1-ARの部分を有するECIIエピトープのアミノ酸配列(16AA;AA位204〜219)
配列番号:34:
ヒトβ1-ARの部分を有するECIIエピトープのアミノ酸配列(23AA;AA位200〜222)
配列番号:35:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープのアミノ酸配列
配列番号:36:
ヒトβ1-ARの(部分を有する)ECIIエピトープのアミノ酸配列
配列番号:37:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープのアミノ酸配列
配列番号:38:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープのアミノ酸配列
配列番号:39:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(16AA;Cys11→Ser11;N末端AA:Gln16またはDGlu16);Ala1とGln16/DGlu16の間で環化が起こり得る
配列番号:40:
ヒトβ1-ARのアミノ酸配列
配列番号:41:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(22AA;Cys17→Ser17);Arg1とGly22の間で環化が起こり得る
配列番号:42:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(22AA;Cys17→Ser17)
配列番号:43:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列(22AA;Cys3→Ser3);Lys1とPro22の間で環化が起こり得る
配列番号:44:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(22AA;Cys3→Ser3)
配列番号:45:
ヒトβ1-ARの(部分を有する)ECIIエピトープのアミノ酸配列
配列番号:46:
ヒトβ1-ARの(部分を有する)ECIIエピトープのアミノ酸配列
配列番号:47:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープのアミノ酸配列
配列番号:48:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープのアミノ酸配列
配列番号:49:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(19AA;Cys15→Ser15(18AA;Cys14→Ser14))
配列番号:50:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(19AA;Cys15→Ser15(18AA;Cys14→Ser14);Gln18→DGlu18)
配列番号:51:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(19AA;Cys14→Ser14(18AA;Cys13→Ser13))
配列番号:52:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(19AA;Cys14→Ser14(18AA;Cys13→Ser13);Gln18→DGlu18)
配列番号:53:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(19AA;Cys3→Ser3(18AA;Cys3→Ser3))
配列番号:54:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(19AA;Cys3→Ser3(18AA;Cys3→Ser3);Gln7→DGlu7)
配列番号:55:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(19AA;Cys2→Ser2;(18AA;Cys2→Ser2))
配列番号:56:
ヒトβ1-ARのECIIエピトープに相同なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(19AA;Cys2→Ser2;(18AA;Cys2→Ser2);Gln7→DGlu7)
ヌクレオチド配列において、「SER」は、Ser(セリン)をコードする任意のヌクレオチドトリプレット、すなわち、tcnまたはagyを表し;「GLY」は、Gly(グリシン)をコードする任意のヌクレオチドトリプレット、すなわちggnを表す。
nは任意のヌクレオチド、特にa、c、gまたはtを表し、yはtまたはcを表し、rはaまたはgを表す。
本明細書で使用する場合、種々のペプチドの配列はN末端からC末端で示し、それにより、それぞれの示されるアミノ酸配列のN末端が左側となり、C末端が右側となる。
以下のさらなる略語が本明細書で使用される:
引用されるさらなる参考文献