JP5248322B2 - 環状オレフィンの製造方法 - Google Patents

環状オレフィンの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5248322B2
JP5248322B2 JP2008545308A JP2008545308A JP5248322B2 JP 5248322 B2 JP5248322 B2 JP 5248322B2 JP 2008545308 A JP2008545308 A JP 2008545308A JP 2008545308 A JP2008545308 A JP 2008545308A JP 5248322 B2 JP5248322 B2 JP 5248322B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
compound
dicarboxylic acid
group
ligand
cyclic olefin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008545308A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2008062553A1 (ja
Inventor
松浦  陽
直浩 植田
敦生 小畑
深田  功
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsui Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsui Chemicals Inc filed Critical Mitsui Chemicals Inc
Priority to JP2008545308A priority Critical patent/JP5248322B2/ja
Publication of JPWO2008062553A1 publication Critical patent/JPWO2008062553A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5248322B2 publication Critical patent/JP5248322B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C1/00Preparation of hydrocarbons from one or more compounds, none of them being a hydrocarbon
    • C07C1/20Preparation of hydrocarbons from one or more compounds, none of them being a hydrocarbon starting from organic compounds containing only oxygen atoms as heteroatoms
    • C07C1/207Preparation of hydrocarbons from one or more compounds, none of them being a hydrocarbon starting from organic compounds containing only oxygen atoms as heteroatoms from carbonyl compounds

Description

本発明は、脂環式ジカルボン酸無水物から環状オレフィンを製造する方法に関するものである。
環状オレフィンは、エチレンなどの低級オレフィンとの共重合や開環メタセシス重合により得られるCOCの原料として有用である。環状オレフィンの製造法に関しては多くの方法が知られているが、その中で(1)脂環式ジカルボン酸無水物の脱カルボニル、脱炭酸反応、あるいは(2)脂環式ジカルボン酸無水物の加水分解によって得られるジカルボン酸誘導体の酸化的脱炭酸反応がある。
これらの反応の原料となる脂環式ジカルボン酸無水物は、共役ジエン化合物と無水マレイン酸類とのDiels−Alder反応によって得ることができる。一般にDiels−Alder反応において無水マレイン酸類は高い反応性を示すことから、付加体が良好な収率で得られる場合が多い。したがってこれらの脂環式ジカルボン酸無水物あるいはそれらの加水分解によって得られるジカルボン酸誘導体から効率良く脱カルボニルあるいは脱炭酸を行なうことができれば、種々のジエン化合物と無水マレイン酸類との組み合わせにより多様な構造をもつ環状オレフィンを高収率で合成することが期待できる。
しかしながら(1)、(2)のいずれの公知方法も環状オレフィンを工業的に有利に製造するには問題点が多い。
(1)の方法としては、例えばJ.Org.Chem.,41,887(1975)記載のニッケルカルボニル錯体を用いる方法が挙げられるが、高価なニッケルカルボニル錯体を1当量以上必要とするという問題がある。触媒量のニッケルカルボニル錯体を用いた例(J.Org.Chem.,43,3074(1978))もあるが、触媒量は原料酸無水物に対して20mol%と多く、また溶媒を厳密に精製し、触媒も使用前に新たに調製したものを使用しなければならないなど満足し得るものではない。
(2)の方法としては、例えば(a)J.Am.Chem.Soc.,74,4370(1952)記載の酸化鉛(IV)を用いる方法、(b)Org.React.,19,279(1972)記載の酢酸鉛(IV)を用いる方法、(c)(Tetrahedron Lett.,4447(1976)記載の酸化銅(I)と2,2'−ビピリジルを用いる方法、(d)Tetrahedron Lett.,5117(1968)記載の電気分解による方法などが挙げられる。
しかしながら、これらの方法も様々な問題点を有している。
(a)では毒性の高い酸化鉛(IV)を原料であるジカルボン酸に対して1当量以上必要とする上に収率が非常に低いという問題がある。
(b)では、(a)に比して収率は高いものの、転位反応が起こりやすいため満足し得るものとは言えず、同様に毒性の高い酢酸鉛(IV)を原料ジカルボン酸に対して1当量以上必要とするという問題がある。
(c)においても原料ジカルボン酸に対して酸化銅(I)を2当量以上、2,2'−ビピリジルを1当量以上必要とするという問題がある。
(d)では電極に高価な白金を用いる必要があり、また反応液中の原料濃度が高いと生成物の収率が極端に低下するため希薄条件下で行なわなければならず、工業的規模で行うには生産効率が悪いなどの問題を有している。
このように何れの方法も高価な原料、あるいは設備を必要とするためコストがかかる上、生成物の分離精製が煩雑であるという問題を有しており、さらに多量の廃棄物を排出するため環境問題の観点からも好ましいものではない。
J.Org.Chem.,41,887(1975) J.Org.Chem.,43,3074(1978) J.Am.Chem.Soc.,74,4370(1952) Org.React.,19,279(1972) Tetrahedron Lett.,4447(1976) Tetrahedron Lett.,5117(1968)
しかして、本発明の目的は、前記従来技術に鑑み、COCなどのポリオレフィンの原料として有用な環状オレフィンを、工業的に有利に製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、脂環式ジカルボン酸無水物の脱カルボニル、脱炭酸反応によって環状オレフィンを製造する方法において、配位子となりうる化合物の共存下でニッケル錯体を触媒として使用し、生成する環状オレフィンを反応系外に除去することにより、高い選択率で、高純度の環状オレフィンを製造することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(9)に記載されるとおりである。
(1)一般式(1)
Figure 0005248322
(式中、Xは環を形成するのに必要な非金属原子群を、RおよびR'は各々独立して水素原子または置換基を有することのある炭化水素基を表す。)で表される脂環式ジカルボン酸無水物と、ニッケル錯体と、該ニッケル錯体1モルに対して配位子となりうる化合物10〜500モルと、を混合する工程と、
前記脂環式ジカルボン酸無水物を、配位子となりうる前記化合物の共存下で前記ニッケル錯体を触媒として脱カルボニル、脱炭酸し、一般式(2)
Figure 0005248322
(式中、Xは環を形成するのに必要な非金属原子群を、RおよびR'は各々独立して水素原子または置換基を有することのある炭化水素基を表す。)で表される環状オレフィン化合物を製造する工程と、
を含み、
前記環状オレフィン化合物を合成する前記工程は、生成した前記環状オレフィン化合物を反応系外に除去しながら行なうことを特徴とする環状オレフィン化合物の製造方法。
(2)配位子となりうる前記化合物が含リン化合物である(1)に記載の製造方法。
(3)配位子となりうる前記化合物は、一般式(5)または(6)で表されることを特徴とする(1)または(2)に記載の環状オレフィン化合物の製造方法;
Figure 0005248322
(式中、X、XおよびXは、それぞれ独立に、置換基を有することのある炭化水素基を表す。)
Figure 0005248322
(式中、X、X、XおよびXは、それぞれ独立に、置換基を有することのある炭化水素基を表す。また、Zは炭素数1〜8までのアルキレン基、アリーレン基、フェロセニレン基を表す。)。
(4)配位子となりうる前記化合物がトリフェニルホスフィンである(3)に記載の製造方法。
(5)前記ニッケル錯体が、ゼロ価ニッケル錯体である(1)乃至(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)前記脂環式ジカルボン酸無水物が、一般式(3)
Figure 0005248322
(式中、R,R,R,R,R,R,およびRは各々独立して水素原子またはヘテロ原子を有することのある置換基を表す。)で表される5,6−ベンゾ−2,3−ジカルボン酸無水物類である(1)乃至(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)一般式(3)においてR,R,R,R,R,R,およびRがすべて水素である(6)記載の製造方法。
(8)前記脂環式ジカルボン酸無水物が、一般式(4)
Figure 0005248322
(式中、nは0〜1の整数を、X'はOまたはCH2を表す。)で表されるジカルボン酸無水物である(1)乃至(7)のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、脂環式ジカルボン酸無水物の脱カルボニル、脱炭酸反応によりエチレンなどの低級オレフィンとの共重合や開環メタセシス重合により得られるCOCなどのポリオレフィンの原料として有用な環状オレフィン化合物を提供することができる。
本発明の方法によれば、触媒であるニッケル錯体の使用量を大幅に低減することが可能であり、高価な原料を多量に必要とするためコストがかかる、生成物の収率が低い、生成物の分離精製が煩雑である、多量の廃棄物を排出する、などの公知の方法における問題点を解決できる。
上記の理由から、本発明は環状オレフィンの工業的製造方法として極めて有利であり、容易に入手される脂環式ジカルボン酸無水物から入手困難な環状オレフィンが製造され得る際に特に有用である。
実施例において得られたベンゾノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物のH−NMRチャートである。 実施例において得られたベンゾノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の13C−NMRチャートである。 実施例において得られたベンゾノルボルナジエンのH−NMRチャートである。 実施例において得られたベンゾノルボルナジエンの13C−NMRチャートである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において原料として使用する脂環式ジカルボン酸無水物は一般式(1)で表される。
Xは、環を形成するのに必要な非金属原子群を示し、これらから構成される環は飽和環でも不飽和環でもよく、例えばシクロヘキサン、ノルボルナン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]ドデカン等の飽和環、ノルボルネン、テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]−8−ドデセン、ベンゾノルボルネン等の不飽和環、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、7−チアビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の非プロトン性ヘテロ環が挙げられる。
RおよびR'は、それぞれ独立に水素原子または置換基を有することのある炭化水素基を表す。炭化水素基としては、炭素数1〜8までの基を挙げることができ、例えば、メチル、エチル、プロピル等のアルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;エチニル、プロピニル等のアルキニル基;フェニル、トリル等のアリール基;ベンジル、フェネチル等のアラルキル基が挙げられる。
RおよびR'としては、好ましくは水素原子、アルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基である。
RおよびR'はお互いと、あるいはXで構成される環と架橋して、炭素原子2〜8個のアルキレン基を形成してもよい。また、Xで構成される環、RおよびR'は反応に不活性な置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アシル基、アルキルアミノ基、カルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アルキルチオ基、スルフィニル基、スルホニル基、シリル基などが挙げられる。また、これらの置換基のうち、隣接する置換基が架橋されて、その結合炭素原子を含む環を形成しても良い。
一般式(1)で表される脂環式ジカルボン酸無水物としては、具体的に一般式(3)で表される5,6−ベンゾ−2,3−ジカルボン酸無水物類、一般式(4)で表されるジカルボン酸無水物などを用いることができる。
一般式(3)において、R,R,R,R,R,R,およびRは、各々独立に水素原子またはヘテロ原子を有することのある置換基を表す。置換基としては、上記の置換基を用いることができる。本発明においては、R〜Rのいずれの置換基も水素原子である化合物を用いることができる。
本発明においては、触媒としてニッケル錯体を使用するが、具体例としては、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジカルボニルのような、ニッケルテトラカルボニルと第三級ホスフィンとの反応によって得られるニッケルカルボニル錯体、あるいはテトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルなどのような、一酸化炭素の存在下でニッケルカルボニル錯体に変換しうるニッケル錯体である。
ニッケル錯体は、市販されているものをそのまま使用できるが、例えば米国特許第4012399号、J.Am.Chem.Soc.,81,4200(1959)、J.Am.Chem.Soc.,94,2669(1972)、J.Am.Chem.Soc.,96,53(1974)、Inorg.Chim.Acta,12,167(1975)、Inorg.Chim.Acta,37,L455(1979)、Chem.Lett.,831(1974)、Chem.Lett.,1119(1972)、J.Chem.Soc.,2099(1962)などに記載されている方法で合成し、使用してもよい。
また上記のニッケル錯体は、ニッケルテトラカルボニルや、あるいはビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(π−アリル)ニッケル、ニッケロセンなどのようなニッケル錯体を、配位子となりうる化合物を含む反応溶液に添加することによりin situで形成されてもよい。ニッケル錯体触媒の使用量は、一般的には原料である脂環式ジカルボン酸無水物1モルあたり0.0001〜0.2モルであり、好ましくは0.001〜0.05モルである。
本発明において使用される「配位子となりうる化合物」(以下、単に化合物ともいう)は、配位原子として周期律表第V族元素、すなわち、窒素、リン、ヒ素、アンチモンを有する単座または多座の電子供与性化合物である。なお、本発明において用いられる配位子となりうる化合物は、ニッケル錯体における配位子と同一であってもよく異なっていてもよい。
配位子となりうる化合物としては、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,2−フェニレンジアミンなどの第三級アミン類、2,2'−ビピリジル、1,10−フェナントロリンなどの含窒素芳香族類、N,N'−ジフェニル−1,4−ジアザブタジエン、1,6−ジフェニル−2,5−ジアザ−1,5−ヘキサジエンなどのイミン類に代表される含窒素化合物;トリブチルヒ素、トリフェニルヒ素などの含ヒ素化合物;
トリブチルアンチモン、トリフェニルアンチモンなどの含アンチモン化合物;一般式(5)または(6)で表される含リン化合物が挙げられる。
Figure 0005248322
(式中、X、XおよびXは、それぞれ独立に、置換基を有することのある炭化水素基を表す。)
Figure 0005248322
(式中、X、X、XおよびXは、それぞれ独立に、置換基を有することのある炭化水素基を表す。また、Zは炭素数1〜8までのアルキレン基、アリーレン基、フェロセニレン基を表す。)
〜Xにおける炭化水素基としては、炭素数1〜6のアルキル基、芳香族基、炭素環および/またはヘテロ環が縮合してなる縮合環等を挙げることができる。また、その置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
前記一般式(5)で表される配位子となりうる化合物としては、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリベンジルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン類や、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン(オルト、メタ、およびパラの各種置換異性体を含む)、トリス(メトキシフェニル)ホスフィン(オルト、メタ、およびパラの各種置換異性体を含む)、トリス(フルオロフェニル)ホスフィン(オルト、メタ、およびパラの各種置換異性体を含む)、トリ(α−ナフチル)ホスフィンなどのトリアリールホスフィン類、ジフェニルシクロヘキシルホスフィンなどのジアリールアルキルホスフィン類、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンなどのジアルキルアリールホスフィン類などが挙げられるが、好ましくはトリアリールホスフィン類であり、さらに好ましくはトリフェニルホスフィンである。また、X、XおよびXは二つの基の間で架橋されてリン原子を含む環を構成してもよく、そのようなホスフィンとしては、フェニルビフェニレンホスフィンなどが挙げられる。
前記一般式(6)で表される配位子となりうる化合物としては、例えば、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンなどが挙げられる。
本発明においては、高い選択率で、高純度の目的物質を得る観点から、一般式(5)または(6)で表される配位子となりうる化合物を用いることが好ましい。
本発明においては、ニッケル錯体触媒の安定性を向上させるため、配位子となりうる化合物を過剰に共存させることが重要である。配位子となりうる化合物の量が少なすぎると触媒の安定性が低下する。一方、配位子の量が多い場合には、触媒の安定性が使用量に比例して向上するわけではなく不経済であったり、反応速度が低下する傾向が認められる。
したがって、配位子となりうる化合物の使用量はその種類によって必ずしも一定ではないが、通常、ニッケル錯体触媒1モルあたり10〜500モルであり、好ましくは20〜200モルである。
配位子となりうる化合物を上記の量で用いることにより、高い選択率で、高純度の環状オレフィンを製造することができる。さらに、この範囲内であれば、この化合物自身を溶媒として用いてもよい。その場合使用される化合物は、目的化合物に対して安定であり、かつ、比較的安価なものが好ましい。中でもトリフェニルホスフィンは有用な化合物の一つである。
これらの配位子となりうる化合物は単独で用いてもよいが、いずれか二種以上の混合物として用いてもよい。これらの配位子となりうる化合物の混合物を用いる場合、それらを任意の割合で混合してもよいが、これらの化合物の総使用量がニッケル錯体触媒1モルに対して上記の範囲内になることが好ましい。
反応温度は高いほうが反応速度の点では有利であるが、高すぎると触媒の分解や生成物である環状オレフィンの転位、重合などの好ましくない副反応を引き起こして選択率の低下を招く恐れがある。したがって通常100〜300℃、特に150〜250℃で反応を行なうのが好ましい。
本発明においては、ニッケル錯体触媒の活性低下を抑制するため、さらには生成する環状オレフィン化合物の熱履歴を少なくすることによって選択率を高めるため、生成物をできるだけ速やかに反応系外に除去することが重要である。したがって反応蒸留方式を採用することが望ましい。
反応圧力は生成するオレフィンの沸点に大きく依存するが、生成物の反応系外からの速やかな除去が達成される限りにおいては特に制限はない。生成物の沸点が低い場合は、常圧で反応させることができる。一方、生成物の沸点が高い場合は、減圧下で反応を行なうことが好ましい。
一般式(1)の脂環式ジカルボン酸無水物から得られる一般式(2)で表される環状オレフィン化合物は、気体の形で取り出された後、凝縮によりCOとCOを含むガスから分離される。このようにして得られる粗製の環状オレフィン化合物は、必要に応じて蒸留などによりさらに精製してもよい。
反応に際しては、配位子となりうる化合物自身が溶媒の役割を担うことができる場合、それ以外の溶媒を用いることなく反応を行ってもよいが、必要に応じて新たに溶媒を用いても差し支えない。
溶媒としては、原料、触媒、および配位子となりうる化合物に対して不活性な溶媒であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール、ベラトロール等のエーテル類、テトラリン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
溶媒(または配位子となりうる化合物)は、生成物である環状オレフィンと容易に分離できるものが好ましく、一般には生成する環状オレフィンよりも高沸点のものが使用される。上記のような溶媒を使用すれば、反応混合物から目的物である環状オレフィンを含む生成物を反応蒸留によって分離する際、触媒と配位子となりうる化合物を溶解している反応液中からの溶媒(または配位子となりうる化合物)の留出を抑制することができるため、これらの溶媒(または配位子となりうる化合物)を新たに供給する必要がなく、また、生成物の煩雑な分離精製を回避できるという点からも有利である。
反応は酸素や水分を除いた状態で行なうことが好ましく、通常、窒素あるいはアルゴンのような不活性雰囲気下で行なわれる。
反応はバッチ方式、あるいは、ニッケル錯体触媒、配位子となりうる化合物、原料であるジカルボン酸無水物、および溶媒を反応器に連続的に供給する連続式の何れの方式においても実施することができる。
以下、実施例により本発明の有用性を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるのもではない。なお、分析はガスクロマトグラフィーで行い、転化率及び選択率は内部標準法(mol%)により、純度は面積百分率(%)により求めた。
[合成例1]
ベンゾノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の合成
SUS316製1.5Lオートクレーブに、インデン(JFEケミカル製、純度96%)380.1g(3.14mol)、無水マレイン酸282.9g(2.88mol)、フェノチアジン5.69g(28.6mmol)、メチルイソブチルケトン501.5gを仕込み、220℃で4時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却した後、析出した固形物を吸引ろ過により分別し、メチルイソブチルケトンで洗浄した後、乾燥した(424.0g)。この固形物のマススペクトルおよびNMRによる分析を行った結果、ベンゾノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物であった(EI m/z 214(M))。NMRチャートを図1および2に示す。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、純度は99%以上であった(無水マレイン酸基準での単離収率69%)。
[実施例1]
蒸留装置を備えた100mLガラス製フラスコに、ベンゾノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物21.42g(0.100mol)、トリフェニルホスフィン26.23g(0.100mol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジカルボニル1.28g(2.0mmol)を仕込み、25mmHgの減圧下で200〜210℃に加熱した。反応液は沸騰し、ガスの発生と液体の留出が見られた。2時間後、液体の留出はほぼおさまった(13.55g)。反応残液の分析の結果、ベンゾノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の転化率は99.0%であった。また、留出した液体はマススペクトルおよびNMRにより分析した結果、ベンゾノルボルナジエンであった(EI m/z 142(M))。NMRチャートを図3および4に示す。選択率は96.0%、純度は99.7%であった。
[実施例2]
ベンゾノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物21.42g(0.100mol)、トリフェニルホスフィン39.34g(0.150mol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジカルボニル0.64g(1.0mmol)を仕込み、実施例1と同様に反応を行なった。9時間後におけるベンゾノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の転化率は94.9%であった。また、ベンゾノルボルナジエン(13.19g)の選択率は97.2%、純度は99.4%であった。
[実施例3]
実施例1において、用いるニッケル錯体をビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0.55g、2.0mmol)に変更する以外は、全て同様に操作した。
ベンゾノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の転化率は95.1%であった。また、ベンゾノルボルナジエン(13.27g)の選択率は97.4%、純度は99.2%であった。
[実施例4]
実施例1において、用いるニッケル錯体をテトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(2.22g、2.0mmol)に変更する以外は、全て同様に操作した。
ベンゾノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の転化率は99.1%であった。また、ベンゾノルボルナジエン(13.27g)の選択率は93.0%、純度は99.0%であった。
[実施例5]
蒸留装置を備えた50mLガラス製フラスコに、endo−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物9.96g(0.060mol)、トリフェニルホスフィン23.60g(0.090mol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジカルボニル0.64g(1.0mmol)を仕込み、常圧下で270℃に加熱した。反応液は沸騰し、ガスの発生と液体の留出が見られた。2時間後、液体の留出はほぼおさまった(4.78g)。反応残液の分析の結果、endo−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の転化率は99.5%であった。また、留出した液体はマススペクトルにより分析した結果、ノルボルネンであり(EI m/z 94(M))、選択率は86.4%、純度は98.7%であった。
[比較例1]
還流冷却器を備えた100mLガラス製フラスコに、ベンゾノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物21.42g(0.100mol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジカルボニル0.64g(1.0mmol)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル39.5gを仕込み、窒素雰囲気下、常圧で210℃に加熱した。反応液の分析の結果、ベンゾノルボルナジエンの収率は2時間後において1%以下であり、それ以上の向上は見られなかった。
[比較例2]
還流冷却器を備えた100mLガラス製フラスコに、ベンゾノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物21.42g(0.100mol)、トリフェニルホスフィン39.34g(0.150mol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジカルボニル0.64g(1.0mmol)を仕込み、窒素雰囲気下、常圧で210℃に加熱した。反応液の分析の結果、ベンゾノルボルナジエンの収率は2時間後において3%であり、それ以上の向上は見られなかった。

Claims (8)

  1. 一般式(1)
    Figure 0005248322
    (式中、Xは環を形成するのに必要な非金属原子群を、RおよびR'は各々独立して水素原子または置換基を有することのある炭化水素基を表す。)で表される脂環式ジカルボン酸無水物と、ニッケル錯体と、該ニッケル錯体1モルに対して配位子となりうる化合物10〜500モルと、を混合する工程と、
    前記脂環式ジカルボン酸無水物を、配位子となりうる前記化合物の共存下で前記ニッケル錯体を触媒として脱カルボニル、脱炭酸し、一般式(2)
    Figure 0005248322
    (式中、Xは環を形成するのに必要な非金属原子群を、RおよびR'は各々独立して水素原子または置換基を有することのある炭化水素基を表す。)で表される環状オレフィン化合物を製造する工程と、
    を含み、
    前記環状オレフィン化合物を合成する前記工程は、生成した前記環状オレフィン化合物を反応系外に除去しながら行なうことを特徴とする環状オレフィン化合物の製造方法。
  2. 配位子となりうる前記化合物が含リン化合物である請求項1に記載の製造方法。
  3. 配位子となりうる前記化合物は、一般式(5)または(6)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の環状オレフィン化合物の製造方法;
    Figure 0005248322
    (式中、X、XおよびXは、それぞれ独立に、置換基を有することのある炭化水素基を表す。)
    Figure 0005248322
    (式中、X、X、XおよびXは、それぞれ独立に、置換基を有することのある炭化水素基を表す。また、Zは炭素数1〜8までのアルキレン基、アリーレン基、フェロセニレン基を表す。)。
  4. 配位子となりうる前記化合物がトリフェニルホスフィンである請求項に記載の製造方法。
  5. 前記ニッケル錯体が、ゼロ価ニッケル錯体である請求項1乃至のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記脂環式ジカルボン酸無水物が、一般式(3)
    Figure 0005248322

    (式中、R,R,R,R,R,R,およびRは各々独立して水素原子またはヘテロ原子を有することのある置換基を表す。)で表される5,6−ベンゾ−2,3−ジカルボン酸無水物類である請求項1乃至のいずれかに記載の製造方法。
  7. 一般式(3)においてR,R,R,R,R,R,およびRがすべて水素である請求項記載の製造方法。
  8. 前記脂環式ジカルボン酸無水物が、一般式(4)
    Figure 0005248322
    (式中、nは0〜1の整数を、X'はOまたはCH2を表す。)で表されるジカルボン酸無水物である請求項1乃至のいずれかに記載の製造方法。
JP2008545308A 2006-11-20 2007-11-19 環状オレフィンの製造方法 Active JP5248322B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008545308A JP5248322B2 (ja) 2006-11-20 2007-11-19 環状オレフィンの製造方法

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006312579 2006-11-20
JP2006312579 2006-11-20
PCT/JP2007/001250 WO2008062553A1 (fr) 2006-11-20 2007-11-19 Procédé de production d'oléfine cyclique
JP2008545308A JP5248322B2 (ja) 2006-11-20 2007-11-19 環状オレフィンの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2008062553A1 JPWO2008062553A1 (ja) 2010-03-04
JP5248322B2 true JP5248322B2 (ja) 2013-07-31

Family

ID=39429496

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008545308A Active JP5248322B2 (ja) 2006-11-20 2007-11-19 環状オレフィンの製造方法

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JP5248322B2 (ja)
TW (1) TW200833640A (ja)
WO (1) WO2008062553A1 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4974732B2 (ja) * 2007-03-30 2012-07-11 三井化学株式会社 環状オレフィンの製造方法
US20230219868A1 (en) 2020-06-26 2023-07-13 Mitsui Chemicals, Inc. Method for producing cyclic olefin compound
US20240025838A1 (en) 2020-08-26 2024-01-25 Mitsui Chemicals, Inc. Ester compound
KR20230110317A (ko) 2020-12-21 2023-07-21 미쓰이 가가쿠 가부시키가이샤 에스터 화합물
CN114573412B (zh) * 2022-02-23 2023-12-26 杭州凯名庞德生物科技有限公司 一种苯并苝的制备方法
WO2023163050A1 (ja) * 2022-02-25 2023-08-31 日東電工株式会社 触媒反応方法、ギ酸塩の製造方法、及びギ酸の製造方法

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6007014292; Tetrahedron Letters Vol.12,No.28, 1971, p.2603-2607 *
JPN6012066445; J.Org,Chem. Vol.43,No.15, 1978, p.3074-3077 *

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2008062553A1 (ja) 2010-03-04
TW200833640A (en) 2008-08-16
WO2008062553A1 (fr) 2008-05-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4264418B2 (ja) メタセシス反応用(予備)触媒としてのルテニウム錯体
JP6528862B2 (ja) 含フッ素オレフィンの製造方法
US20100022789A1 (en) Catalytic compositions for the metathesis of unsaturated fatty bodies with olefins and metathesis methods using catalytic compositions
JP5248322B2 (ja) 環状オレフィンの製造方法
JP6054386B2 (ja) パラジウム(I)トリ−t−ブチルホスフィンブロミド二量体の製造方法および異性化反応においてそれを使用するプロセス
JP6583289B2 (ja) 含塩素含フッ素オレフィンの製造方法
JP6572966B2 (ja) 含フッ素オレフィン化合物の製造方法
JP7367219B2 (ja) 環状オレフィン化合物の製造方法
JP6759760B2 (ja) 含フッ素オレフィンの製造方法
JP6384363B2 (ja) 含フッ素オレフィンの製造方法
JP6607200B2 (ja) 含フッ素ジエンの製造方法
JP6669085B2 (ja) 含フッ素重合体の製造方法
CN117776958A (zh) 一种芳烃羧酸间位烷基化产物及其合成方法
JP2023536686A (ja) ジエンの調製方法
JP2016160231A (ja) 含フッ素オレフィンの製造方法
JP2023152776A (ja) オレフィン化合物の製造方法
JP2016160230A (ja) 含フッ素オレフィンの製造方法
JP4257977B2 (ja) 1−インダノン類の製造方法
JP2016145174A (ja) 含フッ素ジエンの製造方法
JPWO2016129607A1 (ja) 含フッ素シクロオレフィンの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100916

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121225

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130222

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20130222

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130402

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130410

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 5248322

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160419

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250