JP5248105B2 - 層間化合物及びその製造方法 - Google Patents
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本実施形態における層間化合物は、層状無機化合物の層間に難燃剤が挿入されているものである。こうした層間化合物は高分子材料に混合されることにより、難燃性を発揮する複合材料を得ることができる。難燃剤は、層状無機化合物と難燃剤とを固体状態で接触させるとともにそれら層状無機化合物及び難燃剤に対して運動エネルギーを加えることにより、層状無機化合物の層間に挿入されている。本実施形態の難燃剤は、含窒素化合物の塩酸塩である。
〔Aa(XbYc)(Si4−dAld)O10(OHeF2−e)〕 …(1)
一般式(1)中におけるaの値は0.2≦a≦1.0、bの値は0≦b≦3、cの値は0≦c≦2、dの値は0≦d≦4、及びeの値は0≦e≦2である。
一般式(2)中におけるM2+は二価の金属原子、M3+は三価の金属原子、An−はn価の交換性の金属イオン、x=0.2〜0.33、yは環境湿度によって変化するため特に限定されないが、例えば0<y<1である。M2+としては、例えばMg2+、Mn2+、Ni2+、Zn2+等が挙げられる。M3+としては、例えばAl3+、Cr3+、Fe3+、Co3+等が挙げられる。An−としては、例えばOH−、Cl−、NO3 −、SO4 −、CO3 2−等が挙げられる。なお、ハイドロタルサイトはMg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで示される。
こうして得られた層間化合物と高分子材料とを混合することにより複合材料が得られる。高分子材料は複合材料の母材となるものであり、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びゴム類に分類される。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン・アクリロニトリル系樹脂の他、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。オレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、各種ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、非晶性ポリアミド、ポリメタクリルイミド等が挙げられる。スチレン・アクリロニトリル系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
ゴム類としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。
複合材料中における層間化合物の含有量は、高分子材料100質量部に対して、好ましくは0.1〜200質量部、より好ましくは0.5〜100質量部、さらに好ましくは1〜60質量部である。高分子材料100質量部に対する層間化合物の配合量が0.1質量部未満の場合、複合材料の難燃性が顕著に向上され難くなるおそれがある。一方、高分子材料100質量部に対する層間化合物の配合量が200質量部を超える場合、複合材料の成形性が十分に得られないおそれがある。
高分子材料と層間化合物との複合化は、高分子材料に層間化合物を配合し、高分子材料と層間化合物とを混合することによって行うことができる。なお、複合材料は、高分子材料と層間化合物とを複合化したマスターバッチとして構成し、そのマスターバッチを高分子材料で希釈して使用してもよい。
層状無機化合物の層間に含窒素化合物をその塩酸塩として挿入することにより、含窒素化合物として挿入するよりも、層状無機化合物の層間が拡張され易くなると推測される。その結果、層状無機化合物に対する前記塩酸塩の挿入量を高めることが容易である。
(1) 層状無機化合物の層間に含窒素化合物をその塩酸塩として挿入することにより、含窒素化合物として挿入するよりも、層状無機化合物の層間が拡張され易くなると推測される。その結果、層状無機化合物に対する前記塩酸塩の挿入量を高めることが容易である。すなわち、層間化合物において、難燃剤の層間挿入量が高められるため、難燃剤として有効に寄与する上記塩酸塩が増大される結果、高分子材料の難燃性を高めることができる。
・ 前記層状無機化合物が、膨潤性雲母、スメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト族粘土鉱物、ゼオライト、セピオライト、及びハイドロタルサイト類から選ばれる少なくとも一種である層間化合物。
(実施例1−A)
層状無機化合物として合成マイカ[Na型テトラシリシックフッ素雲母:ソマシフ(商品名)ME−100、コープケミカル(株)製]100質量部に対して、メラミン塩酸塩48.6質量部、及び水を5質量部添加し、ボールミルを用いて室温(25℃)で120分間混合することにより、合成マイカの層間にメラミン塩酸塩を挿入した。
実施例2−Aにおいては、水の添加量を10質量部に増量した以外は実施例1−Aと同様にして層間化合物を調製した。図3には、実施例2−Aにおける層間化合物のX線回折パターンを示している。このX線回折パターンにおいて、メラミン塩酸塩の挿入に基づくピークが2θ=7°付近の位置に発現している。さらに、この実施例2−Aにおける2θ=7°のピーク強度は、実施例1−Aにおける2θ=7°付近のピーク強度よりも高まっていることから、水の添加量を増量した場合、層間の拡張した層間化合物の収率が高まることが示唆される。
実施例3−Aにおいては、水の添加を省略した以外は、実施例1−Aと同様にして合成マイカにメラミン塩酸塩を挿入することにより、層間化合物を調製した。図4には、実施例3−Aにおける層間化合物のX線回折パターンを示している。このX線回折パターンにおいて、メラミン塩酸塩の挿入に基づくピークが2θ=7°付近に発現している。
比較例1−Aにおいては、水の添加を省略するとともにメラミン塩酸塩をメラミンに変更した以外は、実施例1−Aと同様にして合成マイカにメラミンを挿入することにより、層間化合物を調製した。図5には、比較例1−Aにおける層間化合物のX線回折パターンを示している。このX線回折パターンにおいて、メラミンの挿入に基づくピークが2θ=7°付近に発現している。
実施例1−Bにおいては、ポリアミド6(1011FB、宇部興産(株)製)100質量部に対して、実施例2−Aの層間化合物を3質量部配合した後、二軸押出機を用いて樹脂温度250℃、スクリュー回転数50回転/分の条件で混練することにより、複合材料を調製した。図6には、実施例1−Bにおける複合材料のX線回折パターンを示している。このX線回折パターンにおいて、層間化合物の層間距離を示すピーク(2θ=7°付近)が残留していることが確認されることから、複合材料を調製した後であっても、層間剥離していない層間化合物が存在していることがわかる。
比較例1−Bにおいては、実施例2−Aの層間化合物を比較例1−Aの層間化合物に変更した以外は、実施例1−Bと同様にして複合材料を調製した。図7には、比較例1−Bにおける複合材料のX線回折パターンを示している。このX線回折パターンにおいては、層間化合物の層間距離を示すピーク(2θ=7°付近)が、2θ=6°よりも低角側にシフトしていることが確認されているため、この複合材料では、層間化合物の層間剥離が実施例1−Bよりも進行していることがわかる。
実施例1−B及び比較例1−Bにおける複合材料の難燃性について、米国アンダー・ライターズ・ラボラトリーズ・インク(Under Writers Laboratories Inc)によって制定された規格であるUL94に準拠した垂直燃焼試験により評価した。実施例1−Bの複合材料では、厚さ1/32インチ及び厚さ1/64インチのいずれの試料おいても、V−0の基準の難燃性を有していた。一方、比較例1−Bの複合材料では、厚さ1/32インチの試料においてV−0の難燃性を有していたものの、厚さ1/64インチの試料においてはV−0の難燃性は有していなかった。このように実施例1−Aの層間化合物を混合した複合材料では、難燃性が高まることがわかる。
比較例2−Aにおいては、層状無機化合物として合成マイカ[Na型テトラシリシックフッ素雲母:ソマシフ(商品名)ME−100、コープケミカル(株)製]100質量部とテトラヒドロフラン10質量部とをボールミルを用いて室温(25℃)で45分間混合することにより、合成マイカに前処理を施した。続いて、その合成マイカに対してメラミン37.8質量部を添加して、同じくボールミルを用いて2時間混合することにより、層間化合物を調製した。
比較例3−Aにおいては、合成マイカ[Na型テトラシリシックフッ素雲母:ソマシフ(商品名)ME−100、コープケミカル(株)製]100質量部に対して水2000質量部を加えて合成マイカを分散した分散液に、メラミン37.8質量部及び塩酸24.9質量部を加えた後、60℃で6時間攪拌した。すなわち、比較例3−Aでは、メラミンを固体状態ではなく塩酸水溶液の状態で合成マイカに接触させている。これにより、合成マイカの層間に存在する金属カチオンとメラミンのカチオンとをイオン交換させることで層間化合物を調製した。
実施例1−A、比較例2−A、及び比較例3−Aの層間化合物について、熱重量測定(TG)及び示差熱分析(DTA)を行った。これら熱重量測定及び示差熱分析では、窒素中で昇温した際の熱重量曲線(以下、TG曲線という)及び示差熱分析曲線(以下、DTA曲線という)を作成した。
実施例4−Aにおいては、5質量部の水を、10質量部のテトラヒドロフランに変更した以外は、実施例1−Aと同様にして層間化合物を調製した。得られた層間化合物について、上述した熱分析を行った。実施例4−Aの層間化合物について、図11(a)はTG曲線を示すとともに、図11(b)はDTA曲線を示している。
実施例5−Aにおいては、層状無機化合物として合成マイカ[Na型テトラシリシックフッ素雲母:ソマシフ(商品名)ME−100、コープケミカル(株)製]100質量部に対して、メラミンシアヌレート塩酸塩50質量部、及び塩酸20質量部を添加し、ボールミルを用いて室温(25℃)で120分間混合することにより、合成マイカの層間にメラミンシアヌレート塩酸塩を挿入した。得られた層間化合物について、上述した熱分析を行った。実施例5−Aの層間化合物について、図12(a)はTG曲線を示すとともに、図12(b)はDTA曲線を示している。
比較例4−Aにおいては、層状無機化合物として合成マイカ[Na型テトラシリシックフッ素雲母:ソマシフ(商品名)ME−100、コープケミカル(株)製]100質量部と水10質量部とをボールミルを用いて室温(25℃)で45分間混合することにより、合成マイカに前処理を施した。続いて、その合成マイカに対してメラミン37.8質量部を添加して、同じくボールミルを用いて2時間混合することにより、層間化合物を調製した。得られた層間化合物について、上述した熱分析を行った。比較例4−Aの層間化合物について、図13(a)はTG曲線を示すとともに、図13(b)はDTA曲線を示している。
TG曲線より層間に挿入されている難燃剤の挿入量を測定した。すなわち、図14に示すように、層状無機化合物の表面に付着している難燃剤の重量A(mg)と、層状無機化合物の層間に挿入されている難燃剤の重量B(mg)とをTG曲線より求めた。次に、それら重量を下記式(1)に代入することにより、挿入率を算出した。
各実施例の挿入率を表1に示す。
Claims (4)
- 層状無機化合物の層間に難燃剤が挿入されてなり、高分子材料に混合される層間化合物であって、
前記難燃剤は、前記層状無機化合物と前記難燃剤とを固体状態で接触させるとともにそれら層状無機化合物及び難燃剤に対して運動エネルギーを加えることにより前記層状無機化合物の層間に挿入されてなり、前記難燃剤が含窒素化合物の塩酸塩であることを特徴とする層間化合物。 - 前記含窒素化合物の塩酸塩が、メラミン塩酸塩及びメラミンシアヌレート塩酸塩の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の層間化合物。
- 層状無機化合物の層間に難燃剤が挿入されてなり、高分子材料に混合される層間化合物の製造方法であって、
前記難燃剤の挿入は、
前記層状無機化合物と難燃剤とを固体状態で接触させるとともにそれら層状無機化合物及び難燃剤に対して運動エネルギーを加えることにより実施され、前記難燃剤が含窒素化合物の塩酸塩であることを特徴とする層間化合物の製造方法。 - 前記含窒素化合物の塩酸塩が、メラミン塩酸塩及びメラミンシアヌレート塩酸塩の少なくとも一方であることを特徴とする請求項3に記載の層間化合物の製造方法。
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