JP2017078014A - リン酸水素イオンがインターカレートされた層状複水酸化物、該層状複水酸化物を含む難燃剤、難燃性合成樹脂組成物および該層状複水酸化物の製造方法 - Google Patents

リン酸水素イオンがインターカレートされた層状複水酸化物、該層状複水酸化物を含む難燃剤、難燃性合成樹脂組成物および該層状複水酸化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】成形性等に優れており且つ吸熱ピークが高温側へシフトされ、それに伴う中低温領域での重量減少も抑制された層状複水酸化物、難燃剤及びその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明によれば、 式(I):〔M2+1−xM3+x(OH)2〕(式中、M2+はMg2+、M3+はAl3+、0.2≦x≦0.33)で示される金属複水酸化物からなる基本層と、該基本層の中間層にインターカレートされたリン酸水素イオンおよび層間水からなるリン含有の層状複水酸化物、該層状複水酸化物を含む難燃剤、難燃性合成樹脂組成物および該層状複水酸化物の製造方法が提供される。【選択図】 図2

Description

本発明は、リンがリン酸水素イオンとしてインターカレートされた層状複水酸化物、該層状複水酸化物を含む難燃剤、難燃性合成樹脂組成物および該層状複水酸化物の製造方法に関し、特に層状複水酸化物の中間層へ、リンをリン酸水素イオンとしてインターカレートすることにより、加工性や成形性に優れており、且つ吸熱ピークが現れる温度領域が高温側へシフトされ、それに伴う中低温領域での重量減少も抑制されたリン含有の層状複水酸化物、該層状複水酸化物を含む難燃剤、難燃性合成樹脂組成物および該層状複水酸化物の製造方法に関する。
難燃剤としては、主に臭素系や塩素系などのハロゲン系化合物とアンチモンやリン化合物との併用した難燃剤、または水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム水和物などの無機系水和物材料、赤リンや有機リン系化合物のリン系化合物などが知られている。これらの難燃剤は建築や電子デバイス、電線など広い分野に使用されている。
しかしながら、近年、環境規制の高まりによりハロゲン系難燃剤の使用が問題となっており、環境に無害な難燃材料の開発が求められている。また、電子回路や自動車のエンジン周りなど高温用途のニーズも高まってきている。これらの要求を満たす材料として、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide)が注目されており、特にマグネシウムやアルミニウム、炭酸、水酸化物、水を含むハイドロタルサイト〔組成式例:MgAl(OH)16CO・4HO〕が注目されている。
層状複水酸化物は、以下の一般式で示される、陰イオン交換能をもつ層状化合物である。その結晶構造は、二価金属イオンの一部を三価金属イオンが置換した正八面体の水酸化物層である基本層と、層間陰イオンと層間水からなる中間層が交互に積層した構造を有している。
一般式:〔M2+ 1−x3+ (OH)X+〔An− x/n・yHO〕

ここで、M2+は、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Znなどの二価金属イオンであり、M3+は、Al,Cr,Fe,Co,Inなどの三価金属イオンであり、基本骨格である水酸化物の正八面体層は、二価金属イオンの一部を三価金属イオンで置換することで結果として正電荷を持ち、その電荷を補うために層間へ陰イオンを取り込んで電気的中性を保っている。また層間には、層間水として水分子も取り込まれている。An−は、Cl,NO ,CO 2−,COOなどのn価の陰イオンであり、種類によっては交換が可能である。また、xは、x=[M3+]/([M2+]+[M3+])であって、通常x=0.2〜0.33であり、yは0より大きい実数である。
層状複水酸化物の中で最も一般的に用いられているのがハイドロタルサイトであり、その構造はMg2+の一部がAl3+で置き換わり、層間にCO 2−を有していることを特徴としている。また、三価金属イオンの一部を四価金属イオンで置き換えた組成や、一価金属イオン−三価金属イオンの組み合わせである[Li1/3Al2/3(OH)][An−1/(3×n)・yHO]などの層状複水酸化物も合成されている。上記組成式に示されるように、層状複水酸化物は中間層に水分子や炭酸イオンを含むため、層状複水酸化物を難燃材料として使用した場合は、水分子の脱離による吸熱効果や、炭酸イオンのガス化による酸素遮断効果を発揮することが期待されている。
このため、例えば特開2011−116981号公報(特許文献1)、特開2008−01806号公報(特許文献2)および特開2001−164131号公報(特許文献3)などに記載されているように、層状複水酸化物を樹脂マトリックスへ配合することにより、難燃性を向上させた難燃性樹脂組成物などが知られている。
しかしながら、層状複水酸化物は中間層に水分子を取り込んでいるため、400℃未満の中低温領域において水分子の脱離による吸熱ピークを生じ、層状複水酸化物の重量もそれに伴って減少する。このため、層状複水酸化物を難燃剤として使用すると、層状複水酸化物の中間層から脱離した水分子が基材である樹脂マトリックスの中へ放出される結果、樹脂マトリックスとの混練において悪影響を及ぼし、基材の加工不良を発生させたり、或いは電子回路製作時などにおいて基板上での半田付けによる接合時に水ぶくれを発生させ、半田付け不良を引き起こすなど問題があった。
また、一般的には、400℃以上の高温領域では、有機化合物系の難燃剤や水酸化マグネシウムを含んでいる難燃剤は分解してしまうため、400℃以上の高温領域で有効であり且つ使用が可能な難燃剤はほとんど存在しないという問題があった。
特開2011−116981号公報 特開2008−01806号公報 特開2001−164131号公報 国際公開WO2015/152279号公報
そこで、本発明は、層状複水酸化物を400℃以上の高温領域において難燃剤として使用可能とするため、加工性や成形性に優れており、且つ吸熱ピークが現れる温度領域を400℃以上の高温領域へシフトさせ、そしてそれに伴う400℃未満での重量減少も抑制された層状複水酸化物、該層状複水酸化物を含む難燃剤、難燃性合成樹脂組成物および該層状複水酸化物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、層状複水酸化物の中低温領域で生じる吸熱ピークは、基本層の層間に取り込まれている一部の水分子に依存しているものと考え、水分子の一部をインターカレーションにより他の元素へ置換することについて鋭意研究を重ねた結果、層状複水酸化物を高温領域で難燃剤として使用可能にするためには、リンをリン酸水素イオンとして基本層の層間へインターカレートすることが有効であることを見出し、本発明のリン含有の層状複水酸化物、該層状複水酸化物を含む該難燃剤、難燃性合成樹脂組成物および該層状複水酸化物の製造方法を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、上記課題を解決するため、
式(I):
〔M2+ 1−x3+ (OH)〕 (I)
(式中、M2+はMg2+であり、M3+はAl3+であり、0.2≦x≦0.33である。)で示される金属複水酸化物からなる基本層と、該基本層の中間層にインターカレートされたリン酸水素イオンおよび層間水からなるリン含有の層状複水酸化物、該層状複水酸化物を含む該難燃剤、難燃性合成樹脂組成物が提供される。
また、層状複水酸化物の中間層には、リン酸水素イオンがPに換算して、基本層に対して少なくとも0.5重量%以上インターカレートされていることが好ましい。
リンおよびリン化合物は、従来より難燃剤として使用されている。そこで、本発明者らはリンおよびリン化合物に着目し、層状複水酸化物の中間層に取り込まれている水分子の一部をリン酸水素イオンでインターカレートすると、リン含有の層状複水酸化物は、その吸熱ピークが現れる温度領域が高温領域へシフトされ、そしてそれに伴う中低温領域での層状複水酸化物の重量減少も抑制されることを見出した。
すなわち、本発明によれば、〔Mg2+ 1−xAl3+ (OH)〕からなる基本層と、該基本層の中間層にインターカレートしたリン酸水素イオンおよび層間水からなるリン含有の層状複水酸化物を300〜400℃の高温で乾燥すると、従来の層状複水酸化物では400℃未満であった吸熱ピークが現れる温度領域が450〜460℃へシフトされ、そしてそれに伴い400℃未満での層状複水酸化物の重量減少も抑制される。
さらに、難燃剤として、リンがリン酸水素イオンとしてインターカレートされた上記層状複水酸化物を配合した難燃性合成樹脂組成物は、燃焼性UL94規格において最高の指標レベルであるV−Oを達成することができ、また水泡などを生じることがなく高い加工性や成形性を示すことができる。また、本発明のリン含有の層状複水酸化物を合成樹脂へ配合する場合は、リン含有の層状複水酸化物を合成樹脂固形成分に対して5〜80重量%配合することが好ましく、10〜70重量%配合することがより好ましい。
リンがリン酸水素イオンとしてインターカレートされた本発明の層状複水酸化物は、吸熱ピークが現れる温度領域が高温側へシフトされ、それに伴う中低温領域での重量減少も抑制された要因としては、層状複水酸化物の中間層に存在する層間水の一部が、インターカレートしたリン酸水素イオンにより置換されたことによるものと考えられる。また、本発明のリン含有の層状複水酸化物の難燃性が最高レベルにある要因としては、上述の吸熱効果に加えて、層状複水酸化物には、リンがリン酸水素イオンとしてインターカレートされているので、該リン含有の層状複水酸化物を含む難燃性合成樹脂組成物は、燃焼時、チャー生成による酸素遮断効果も強化されていることによるものと考えられる。
本発明によれば、式(I)で示される、リンがリン酸水素イオンとしてインターカレートされた層状複水酸化物の製造方法が提供される。この製造方法は、
式(II):
〔M2+ 1−x3+ (OH)〕〔(COx/2・yHO〕 (II)
(式中、M2+はMg2+であり、M3+はAl3+であり、0.2≦x≦0.33であり、yは0より大きい実数である。)で示される炭酸型層状複水酸化物を熱分解するステップ;
生成する熱分解物をリン含有化合物(例えばリン酸水素二ナトリウム)の水溶液へ加え、反応させるステップ;
固体の反応生成物を反応液から分離するステップ;そして
分離した固体を乾燥し、粉砕するステップ;よりなる。式(II)の炭酸型層状複水酸化物は、ハイドロタルサイトとして知られている。
本発明において、層状複水酸化物へインターカレートさせる目的で用いることができるリン含有化合物としては、最終的に該層状複水酸化物へリン酸水素イオンがインターカレートされる形態となる化合物であれば特に種類等を問わず制限なく使用することができ、また複数の化合物の混合物であってもよい。本発明に使用できる上記リン含有化合物の具体的名称としては、例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アンモニウムなどが挙げられる。その中でも特にリン酸水素二ナトリウムを用いるのが、ハンドリングの利便性や層状複水酸化物へのインターカレートし易さの観点から好ましい。
上記リン含有化合物を層状複水酸化物へインターカレートさせるためには、後述する実施例に記載されているように、リン酸水素イオンを水溶液状態で溶解している状態とし、層状複水酸化物へ処理することが一般的であるが、インターカレートの目的が達成されるのであれば、溶融、湿式(乾式)混合などの手法を用いてもよい。
上記のリン含有の層状複水酸化物の製造方法において、炭酸型層状複水酸化物の熱分解は400℃〜800℃の温度で行うことが好ましく、分離した固体の乾燥は300℃〜400℃の温度で行うことが好ましい。また、分離した固体の表面などに軽付着した水分を先行して飛ばす目的で、或いは分離した固体の焼結の進行をできるだけ抑制する目的で、上記本乾燥の前に約110℃前後の温度で予備乾燥を行ってもよい。
また、本発明により得られるリン含有の層状複水酸化物の中間層には、リン酸水素イオンがPに換算して、基本層に対して少なくとも0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以上インターカレートされていることが好ましい。さらに、層状複水酸化物の中間層にインターカレートされているリン酸水素イオンは、Pに換算して、基本層に対して少なくとも35重量%以下であってもよい。
このため、上記のリン含有の層状複水酸化物を得るためには、歩留り等を考慮しても、反応段階においてリン含有化合物をPに換算して、熱分解した炭酸型層状複水酸化物からなる基本層に対して少なくとも0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以上、より顕著な効果を得るには10重量%以上を反応させることが好ましい。さらに、前記リン含有化合物は、Pに換算して、基本層に対して少なくとも35重量%以下であってもよい。
より具体的には、例えばリン含有化合物としてリン酸水素二ナトリウムを用いることができ、この場合は、Pに換算して、熱分解した炭酸型層状複水酸化物からなる基本層に対して少なくとも0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以上、より顕著な効果を得るには10重量%以上を反応させることが好ましい。さらに、前記リン酸水素二ナトリウムは、Pに換算して、基本層に対して少なくとも35重量%以下であってもよい。
また、本発明により得られるリン含有の層状複水酸化物は、BET法による比表面積において40m/g以下であることが好ましく、この場合、樹脂との均一な混練を阻害する二次粒子の形成が抑制されてことが予測され、樹脂との混練において好影響を及ぼすことが期待される。
本発明のリン含有の層状複水酸化物は、層状複水酸化物の中間層へ、リンをリン酸水素イオンとしてインターカレートすることにより、加工性や成形性に優れており、且つリンの含有量によって変化するが、吸熱ピークが現れる温度領域が420〜460℃へシフトし、そしてそれに伴い400℃未満での層状複水酸化物の重量減少も抑制されるという優れた効果を奏する。その結果、リンがリン酸水素イオンとしてインターカレートされた本発明の層状複水酸化物は、合成樹脂組成物などに対して、400℃以上の高温領域においても有益な難燃剤として使用することができる。
また、本発明のリン含有の層状複水酸化物が難燃剤として配合された合成樹脂組成物は、燃焼性UL94規格などにおいて高い難燃性を示し、また水泡などを生じることがなく高い加工性、成形性を示すことができる。
ハイドロタルサイト(比較例1)、リン化合物含有ハイドロタルサイト様化合物(比較例4)及び本発明のリン含有の層状複水酸化物(実施例1〜3)のX線回折チャートである。 ハイドロタルサイト(比較例1)及びベーマイト(比較例2)と比較した本発明のリン含有の層状複水酸化物(実施例1)のTG−DTA曲線である。
以下、リンがリン酸水素イオンとしてインターカレートされた本発明の層状複水酸化物、該層状複水酸化物を含む難燃剤、難燃性合成樹脂組成物および該層状複水酸化物の製造方法などについて、具体例を交えながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
A.リン含有の層状複水酸化物の製造方法:
実施例1
ハイドロタルサイト(協和化学製)を600℃で3時間焼成を行い、水分と炭酸を除去したマグネシウムとアルミニウムの酸化物を得た。リン酸水素二ナトリウム200g(アルドリッチ製)を水2L中に溶解させ、50℃に加温した。加温したリン酸水素二ナトリウム溶液中に、上記マグネシウムとアルミニウムの酸化物200gを投入し、撹拌を行いながら2時間熟成させた。熟成後、濾過を行い4Lの水で水洗し、得られたケーキを110℃で乾燥させた。乾燥物を粗粉砕をした後、350℃で焼成することにより、リンがリン酸水素イオンとしてインターカレートされた実施例1の層状複水酸化物を得て、これを難燃剤として使用した。
実施例2
リン酸水素二ナトリウムを11gに添加した以外は実施例1と同様に操作を行い、実施例2の層状複水酸化物を得て、これを難燃剤として使用した。
実施例3
リン酸水素二ナトリウムを2.2gに添加した以外は実施例1と同様に操作を行い、実施例3の層状複水酸化物を得た。これを難燃剤として使用した。
比較例1
炭酸型層状複水酸化物であるハイドロタルサイト(協和化学製:DHT−6)を比較例1の難燃剤として使用した。
比較例2
水酸化アルミニウム(アルドリッチ社製)を比較例2の難燃剤として使用した。
比較例3
オキシ水酸化アルミニウムであるベーマイト(昭和電工製)を比較例3の難燃剤として使用した。
比較例4
ハイドロタルサイトとして、炭酸型LDHであるハイドロタルサイト(DHT−6、協和化学工業株式会社製、平均粒径:約1μm)を700℃、2時間の条件で焼成して、ハイドロタルサイト焼成物を得た。このハイドロタルサイト焼成物34.4質量部を、リン酸アンモニウム((NH)P0)37.2質量部と脱炭酸イオン交換水1500質量部とを混ぜた溶液中に投入し、60℃で2時間撹梓させ、ろ過、水洗を行った後、110℃で乾燥を行い、比較例4のリン化合物含有ハイドロタルサイト様化合物を得、これを難燃剤として使用した。
実施例1〜3および比較例1〜4の粉体物性分析結果を表1に示す。
Figure 2017078014
B.粉体物性分析:
実施例1〜3のリン含有の層状複水酸化物および比較例1の炭酸型層状複水酸化物(ハイドロタルサイト)の結晶構造解析は、X線回折分析(パナリティカル製 X’Pert 管球Cu、電圧45kV、電流40mA)を用いて測定を行った。
分解温度ならびに熱重量減少の測定は、示差熱重量分析(日立ハイテクサイエンス製TG/DTA7300 昇温速度10℃/min. 測定温度30〜800℃)で測定を行った。
比表面積は、BET法を用い、Macsorb HM model−1208(マウンテック社製)で測定を行った。
各元素の定量は、蛍光X線回折(リガク製)で測定を行った。
図1に示されるX線回折分析結果より、実施例1〜3の層状複水酸化物は、比較例1の炭酸型層状複水酸化物(ハイドロタルサイト)よりも高角度側へシフトし、また半価幅も大きくなっていることが判った。また、実施例1から実施例3までの層状複水酸化物は、蛍光X線回折分析結果より、元素としてリンを確認することができた。また、比較例4のリン化合物含有ハイドロタルサイト様化合物は、X線回折分析による結晶構造解析において実施例1の層状複水酸化物とは結晶構造が異なり(図1)、さらに、水分の重量減少も多く吸熱ピーク温度も確認することができない(表1)ことから、リンがリン酸水素イオンとしてインターカレートされた実施例1の層状複水酸化物とは異なる物質であることが判った。
図2に示される示差熱重量分析結果ならびに表1の各粉体物性分析結果より、実施例1のリン含有の層状複水酸化物は、比較例1の炭酸型層状複水酸化物(ハイドロタルサイト)に対して、吸熱ピークが現れる温度領域が420〜460℃へシフトされ、そしてそれに伴い400℃未満での層状複水酸化物の重量減少も抑制されることが判った。
また、図2に示される示差熱重量分析結果より、実施例1のリン含有の層状複水酸化物は、比較例2のオキシ水酸化アルミニウム(ベーマイト)とほぼ同じ重量減少挙動およびほぼ同じ温度域において吸熱ピークを示すが、吸熱ピークは比較例2のオキシ水酸化アルミニウム(ベーマイト)よりも大きく、420〜460℃付近において極めて高い難燃性を期待できることが判った。
さらに、表1の各粉体物性分析結果より、実施例1〜3の粉体物の比表面積は40m/g以下であり、比較例2〜4の粉体物の比表面積と比べてかなり小さい値を示すことが判った。その結果、実施例1〜3の粉体物は比較例2〜4の粉体物よりも一次粒子の粒子径が大きく、二次粒子の形成が少ないものと推察されることから、樹脂との混練において好影響を及ぼすことが期待される。
以上の結果より、本発明のリン含有の層状複水酸化物は、中間層にリン酸水素イオンがインターカレートされたことにより結晶構造に変化が生じ、上記の特性を有していることが推察される。
C.難燃性評価:
実施例4
基材樹脂であるエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(株式会社NUC 品番NUC3195)を30g、難燃剤として実施例1のリン含有の層状複水酸化物を70g秤量した後、二本ロールを使用して110℃で各材料を混練及び成形し、シート状になった実施例2の樹脂成形物を得た。その樹脂成形物を厚み調整するためプレスを行い、所定の寸法に切断後、難燃性評価用テストピースを作製した。テストピースを難燃性評価規格であるUL94の垂直燃焼試験方式に基づき評価を行った。
実施例5
難燃剤として実施例2のリン含有の層状複水酸化物を使用した以外は実施例4と同様の操作を行い、難燃性評価用テストピースを作製した。テストピースを難燃性評価規格であるUL94の垂直燃焼試験方式に基づき評価を行った。
実施例6
難燃剤として実施例3のリン含有の層状複水酸化物を使用した以外は実施例4と同様の操作を行い、難燃性評価用テストピースを作製した。テストピースを難燃性評価規格であるUL94の垂直燃焼試験方式に基づき評価を行った。
実施例7
基材樹脂であるポリ塩化ビニル樹脂(新第一塩ビ株式会社 品番ZEST1000Z)を90g、難燃剤として実施例1のリン含有の層状複水酸化物を10g秤量した後、二本ロールを使用して160℃で各材料を混練及び成形し、シート状になった実施例7の樹脂成形物を得た。その樹脂成形物を厚み調整するためプレスを行い、所定の寸法に切断後、難燃性評価用テストピースを作製した。テストピースを難燃性評価規格であるUL94の垂直燃焼試験方式に基づき評価を行った。
実施例8
基材樹脂であるポリ塩化ビニル樹脂を70g、難燃剤として実施例1のリン含有の層状複水酸化物を30gに変更した以外は実施例7と同様の操作を行って得られた樹脂成形物を実施例8とし、実施例4と同じUL94の垂直燃焼試験方式に基づき評価を行った。
比較例5
難燃剤として比較例1の炭酸型層状複水酸化物(ハイドロタルサイト)を使用した以外は実施例4と同様の操作を行って得られた樹脂成形物を比較例5とし、実施例4と同じUL94の垂直燃焼試験方式に基づく評価を行った。
比較例6
難燃剤として比較例2の水酸化アルミニウムを使用した以外は実施例4と同様の操作を行って得られた樹脂成形物を比較例6とし、実施例4と同じUL94の垂直燃焼試験方式に基づく評価を行った。
比較例7
難燃剤として比較例3のオキシ水酸化アルミニウム(ベーマイト)を使用した以外は実施例4と同様の操作を行って得られた樹脂成形物を比較例7とし、実施例4と同じUL94の垂直燃焼試験方式に基づく評価を行った。
実施例4〜8および比較例5〜7についての難燃性および成形性の評価結果を表2に示す。
Figure 2017078014
難燃性の評価では、比較例7のオキシ水酸化アルミニウムを用いた樹脂成形物は燃焼してしまうが、実施例4〜8のリン含有の層状複水酸化物、比較例5の炭酸型層状複水酸化物(ハイドロタルサイト)を用いた樹脂成形物、比較例6の水酸化アルミニウムを用いた樹脂成形物は、いずれも燃焼性UL94規格において、最高の指標レベルであるV−Oを達成できることが判った。
一方、成形性の評価では、実施例4〜8のリン含有の層状複水酸化物を用いた樹脂成形物は、水泡がなくシート状に成形可能であったのに対して、比較例5の炭酸型層状複水酸化物(ハイドロタルサイト)を用いた樹脂成形物はシート状には成形できるものの、水分による水泡が多数発生する不具合を生じることが判った。また、比較例6の水酸化アルミニウムを用いた樹脂成形物および比較例7のオキシ水酸化アルミニウム(ベーマイト)を用いた樹脂成形物は、圧延する時にいずれも短冊状に破断してしまい、シート状に延ばすことができないことが判った。
以上の結果より、リンがリン酸水素イオンとしてインターカレートされた本発明の層状複水酸化物は、難燃剤として樹脂成形物へ配合した場合、極めて高い難燃性を発現させると共に、水泡などを生じさせることなく極めて高い加工性、成形性を付与することができる。
D.既存難燃剤との併用:
実施例9
樹脂としてABS樹脂(旭化成ケミカルズ社製、商品名スタイラック)を100g、臭素系難燃剤(阪本薬品工業社製、商品名SR−T5000)を20g、三酸化アンチモン(日本精鉱社製、商品名 PATOX−M)2.5g、実施例1で得たリン含有LDHを2.5g混合し、二本ロールを使用して160℃で各材料を混練及び成形し、シート状とした樹脂成形物を得た。その樹脂成形物を厚み調整するためプレスを行い、所定の寸法に切断して難燃性評価テストピースを作製し、実施例4と同じUL94の垂直燃焼試験方式に基づき評価を行った。
比較例8
リン含有LDHを添加せず、代わりに三酸化アンチモンの添加量を5.0gとした以外は実施例9と同様の操作を行ってシート状樹脂成形物を得、実施例9と同様にUL94の垂直燃焼試験方式に基づき評価を行った。
実施例9および比較例8についての難燃性の評価結果を表3に示す。
Figure 2017078014
難燃剤を併用した場合の評価では、比較例8のように臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを用いた樹脂成形物は、燃焼性UL94規格においてV−1の指標レベルを達成するが、実施例9のように臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンに加えてリン含有の層状複水酸化物を用いた樹脂成形物は、最高の指標レベルであるV−Oを達成できることが判った。
なお、実施例9および比較例8において、三酸化アンチモンは、臭素系難燃剤と組み合わせることで水酸化ラジカルや水素ラジカルをトラップさせて燃焼を抑制するために使用されている(ラジカルトラップ効果)。ところが、三酸化アンチモンや臭素系難燃剤は環境負荷が大きいため、環境に優しい代替材料が求められており、このため、本発明のリン酸水素イオンがインターカレートされた層状複水酸化物を使用すれば、前記難燃剤の一部をPLDHで置き換えすることで環境負荷を低減することができる。また、PLDHのチャー生成効果促進により燃焼速度(時間)を遅くすることができ、難燃剤の併用効果が期待される。なお、「チャー」とは、ガス化炉中において、石炭から揮発分や水分を除いて得られる未反応固形物で主に灰分と固定炭素からなるものをいう。

Claims (8)

  1. 式(I):
    〔M2+ 1−x3+ (OH)〕 (I)
    (式中、M2+はMg2+であり、M3+はAl3+であり、0.2≦x≦0.33である。)で示される金属複水酸化物からなる基本層と、該基本層の中間層にインターカレートされたリン酸水素イオンおよび層間水からなる層状複水酸化物。
  2. 請求項1に記載の層状複水酸化物を含んでいる難燃剤。
  3. 前記層状複水酸化物の中間層には、リン酸水素イオンがPに換算して、基本層に対して少なくとも0.5重量%以上インターカレートされていることを特徴とする請求項2に記載の難燃剤。
  4. 前記層状複水酸化物のBET法による比表面積が40m/g以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の難燃剤。
  5. 請求項2ないし4のいずれか1項に記載の難燃剤が、合成樹脂固形成分に対して10〜80重量%配合されていることを特徴とする難燃性合成樹脂組成物。
  6. 式(II):
    〔M2+ 1−x3+ (OH)〕〔(COx/2・yHO〕 (II)
    (式中、M2+はMg2+であり、M3+はAl3+であり、0.2≦x≦0.33であり、yは0より大きい実数ある。)で示される炭酸型層状複水酸化物を熱分解するステップ;
    生成する熱分解物をリン含有化合物の水溶液へ加え、反応させるステップ;
    固体の反応生成物を反応液から分離するステップ;そして
    分離した固体を乾燥し、粉砕するステップ;
    を含む請求項1に記載の層状複水酸化物の製造方法。
  7. 前記熱分解は、400℃〜800℃の温度で行われる請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記乾燥は、300℃〜400℃の温度で行われる請求項6又は7に記載の製造方法。

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