JP2008247704A - 層間化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高分子材料の難燃性を高めることのできる層間化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】層間化合物は、層状無機化合物の層間にメラミンが挿入されているものである。メラミンの挿入は、層状無機化合物とメラミンとを固体状態で接触させるとともにそれら層状無機化合物及びメラミンに対して運動エネルギーを加えることにより実施される。層間化合物は、メラミンの挿入に際して酸を添加することで製造される。得られた層間化合物は、高分子材料に混合して使用される。
【選択図】なし
【解決手段】層間化合物は、層状無機化合物の層間にメラミンが挿入されているものである。メラミンの挿入は、層状無機化合物とメラミンとを固体状態で接触させるとともにそれら層状無機化合物及びメラミンに対して運動エネルギーを加えることにより実施される。層間化合物は、メラミンの挿入に際して酸を添加することで製造される。得られた層間化合物は、高分子材料に混合して使用される。
【選択図】なし
Description
本発明は、層状無機化合物の層間にメラミンが挿入されてなる層間化合物の製造方法に関する。
層間化合物としては、層状無機化合物の層間に有機化合物を挿入したものが知られている。(特許文献1及び2参照)。特許文献1には、膨潤性層状珪酸塩の層間にトリアジン系化合物誘導体が挿入された珪酸トリアジン塩複合体が開示されている。そして、この珪酸トリアジン塩複合体を熱可塑性樹脂に配合することで、難燃性を有する樹脂複合体が得られている。特許文献2には、メラミンが層間に挿入された層間化合物が開示されている。そして、この層間化合物を高分子材料に配合することで、難燃性を有する複合材料が得られている。
特開平10−81510号公報
特開2006−290723号公報
本発明は、高分子材料の難燃性を高める際に適した層間化合物の製造方法を見出すことによりなされたものである。本発明の目的は、高分子材料の難燃性を高めることのできる層間化合物の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の層間化合物は、層状無機化合物の層間にメラミンが挿入されてなり、高分子材料に混合される層間化合物の製造方法であって、前記メラミンの挿入は、前記層状無機化合物とメラミンとを固体状態で接触させるとともにそれら層状無機化合物及びメラミンに対して運動エネルギーを加えることにより実施され、前記メラミンの挿入に際して酸を添加することを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の層間化合物の製造方法において、前記酸が酢酸又は塩酸であることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の層間化合物の製造方法において、前記酸の添加量が前記層状無機化合物100質量部に対して0.01〜100質量部であることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の層間化合物の製造方法において、前記酸の添加量が前記層状無機化合物100質量部に対して0.01〜100質量部であることを要旨とする。
本発明によれば、高分子材料の難燃性を高めることのできる層間化合物を製造することができる。
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態における層間化合物は、層状無機化合物の層間にメラミンが挿入されているものである。こうした層間化合物は高分子材料に混合されることにより、難燃性を発揮する複合材料を得ることができる。
本実施形態における層間化合物は、層状無機化合物の層間にメラミンが挿入されているものである。こうした層間化合物は高分子材料に混合されることにより、難燃性を発揮する複合材料を得ることができる。
層状無機化合物は、その層間に存在するイオンによって、陽イオン交換性化合物及び陰イオン交換性化合物に分類される。陽イオン交換性化合物は、層間に交換性の陽イオンが存在している化合物であって、例えば膨潤性雲母(膨潤性マイカ)、スメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト族粘土鉱物、ゼオライト、セピオライト等が挙げられる。
膨潤性雲母としては、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等が挙げられる。スメクタイト族粘土鉱物としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトナイト、スティブンサイト等が挙げられる。バーミキュライト族粘土鉱物としては、3八面体型バーミキュライト、2八面体型バーミキュライト等が挙げられる。
また、陽イオン交換性化合物としては、例えば下記一般式(1)で示される膨潤性層状珪酸塩を挙げることもできる。
〔Aa(XbYc)(Si4−dAld)O10(OHeF2−e)〕 …(1)
一般式(1)中におけるaの値は0.2≦a≦1.0、bの値は0≦b≦3、cの値は0≦c≦2、dの値は0≦d≦4、及びeの値は0≦e≦2である。
〔Aa(XbYc)(Si4−dAld)O10(OHeF2−e)〕 …(1)
一般式(1)中におけるaの値は0.2≦a≦1.0、bの値は0≦b≦3、cの値は0≦c≦2、dの値は0≦d≦4、及びeの値は0≦e≦2である。
一般式(1)中のAは、交換性陽イオンを示し、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群から選ばれる少なくとも1個の陽イオンである。Aで示される交換性金属イオンの金属原子としては、例えばLi、Na等が挙げられる。
一般式(1)中におけるX及びYは、膨潤性層状珪酸塩の構造内における八面体シートに入る陽イオンであって、XはMg、Fe、Mn、Ni、Zn及びLiから選ばれる少なくとも一つの金属原子が構成する陽イオンであり、YはAl、Fe、Mn及びCrから選ばれる少なくとも一つの金属原子が構成する陽イオンである。
陰イオン交換性化合物は、層間に陰イオンが存在している化合物であって、例えばハイドロタルサイト、及びハイドロタルサイト状化合物を含むハイドロタルサイト類が挙げられる。ハイドロタルサイト類は、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide:LDH)の一種であって、例えば下記一般式(2)で示される。
〔M2+ 1−xM3+ x(OH)2〕x+〔An− x/n・yH2O〕x− …(2)
一般式(2)中におけるM2+は二価の金属原子、M3+は三価の金属原子、An−はn価の交換性の金属イオン、x=0.2〜0.33、yは環境湿度によって変化するため特に限定されないが、例えば0<y<1である。M2+としては、例えばMg2+、Mn2+、Ni2+、Zn2+等が挙げられる。M3+としては、例えばAl3+、Cr3+、Fe3+、Co3+等が挙げられる。An−としては、例えばOH−、Cl−、NO3 −、SO4 −、CO3 2−等が挙げられる。なお、ハイドロタルサイトはMg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで示される。
一般式(2)中におけるM2+は二価の金属原子、M3+は三価の金属原子、An−はn価の交換性の金属イオン、x=0.2〜0.33、yは環境湿度によって変化するため特に限定されないが、例えば0<y<1である。M2+としては、例えばMg2+、Mn2+、Ni2+、Zn2+等が挙げられる。M3+としては、例えばAl3+、Cr3+、Fe3+、Co3+等が挙げられる。An−としては、例えばOH−、Cl−、NO3 −、SO4 −、CO3 2−等が挙げられる。なお、ハイドロタルサイトはMg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで示される。
メラミンは、加熱により不燃性のガスを発生する有機化合物である。こうした不燃性のガスは、高分子材料の燃焼を抑制する。すなわち、メラミンは高分子材料に難燃性を付与する化合物である。
層間化合物を構成する層状無機化合物の層間には、メラミンが介在している。こうした層間化合物は、層状無機化合物とメラミンとを固体状態で接触させるとともにそれら層状無機化合物及びメラミンに対して、剪断力、衝撃力等の運動エネルギーを加える方法によって製造される。こうした方法により、層状無機化合物の層間にメラミンが挿入される。
メラミンの配合量は、層状無機化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.1〜70質量部、さらに好ましくは1〜50質量部である。層状無機化合物100質量部に対するメラミンの配合量が0.1質量部未満の場合、メラミンの層間挿入量を十分に確保することが困難となるおそれがある。一方、層状無機化合物100質量部に対するメラミンの配合量が100質量部を超える場合、層間挿入量の向上率の低下を招くため、不経済となるおそれがある。
本実施形態の層間化合物の製造方法では、メラミンの挿入に際して酸を添加する。酸を添加して得られる層間化合物では、層状無機化合物の層間剥離が抑制される。酸としては、有機酸及び無機酸が挙げられる。有機酸としては、酢酸、フマル酸、コハク酸等が挙げられる。無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。こうした酸の中でも、例えば酢酸又は塩酸が好適に使用される。
酸の添加量は、層状無機化合物100質量部に対して、好ましくは0.01〜100質量部、より好ましくは0.05〜90質量部、さらに好ましくは0.1〜80質量部である。層状無機化合物100質量部に対する酸の添加量が0.01質量部未満の場合、層間剥離を抑制する作用効果が十分に得られないおそれがある。一方、層状無機化合物100質量部に対する酸の添加量が100質量部を超える場合、高分子材料自体の諸物性に影響を及ぼすおそれがある。
メラミンの挿入には、例えばボールミル、ハンマーミル、ジェットミル、ニーダー等の装置が好適に使用される。
こうして得られた層間化合物と高分子材料とを混合することにより複合材料が得られる。高分子材料は複合材料の母材となるものであり、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びゴム類に分類される。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン・アクリロニトリル系樹脂の他、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。オレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、各種ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、非晶性ポリアミド、ポリメタクリルイミド等が挙げられる。スチレン・アクリロニトリル系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
こうして得られた層間化合物と高分子材料とを混合することにより複合材料が得られる。高分子材料は複合材料の母材となるものであり、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びゴム類に分類される。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン・アクリロニトリル系樹脂の他、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。オレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、各種ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、非晶性ポリアミド、ポリメタクリルイミド等が挙げられる。スチレン・アクリロニトリル系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。
ゴム類としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。
ゴム類としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。
これらの高分子材料は、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせたポリマーアロイやブロック共重合体として使用してもよい。
複合材料中における層間化合物の含有量は、高分子材料100質量部に対して、好ましくは0.1〜200質量部、より好ましくは0.5〜100質量部、さらに好ましくは1〜60質量部である。高分子材料100質量部に対する層間化合物の配合量が0.1質量部未満の場合、複合材料の難燃性が顕著に向上され難くなるおそれがある。一方、高分子材料100質量部に対する層間化合物の配合量が200質量部を超える場合、複合材料の成形性が十分に得られないおそれがある。
複合材料中における層間化合物の含有量は、高分子材料100質量部に対して、好ましくは0.1〜200質量部、より好ましくは0.5〜100質量部、さらに好ましくは1〜60質量部である。高分子材料100質量部に対する層間化合物の配合量が0.1質量部未満の場合、複合材料の難燃性が顕著に向上され難くなるおそれがある。一方、高分子材料100質量部に対する層間化合物の配合量が200質量部を超える場合、複合材料の成形性が十分に得られないおそれがある。
この複合材料には、層間化合物以外の成分として充填剤、腐食防止剤、着色剤、制電剤、湿潤剤等を必要に応じて含有させることもできる。
高分子材料と層間化合物との複合化は、高分子材料に層間化合物を配合し、高分子材料と層間化合物とを混合することによって行うことができる。なお、複合材料は、高分子材料と層間化合物とを複合化したマスターバッチとして構成し、そのマスターバッチを高分子材料で希釈して使用してもよい。
高分子材料と層間化合物との複合化は、高分子材料に層間化合物を配合し、高分子材料と層間化合物とを混合することによって行うことができる。なお、複合材料は、高分子材料と層間化合物とを複合化したマスターバッチとして構成し、そのマスターバッチを高分子材料で希釈して使用してもよい。
高分子材料と層間化合物とを混合する装置としては、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、グレンミル、ニーダー等の公知の混合機の他に、ディゾルバー、各種押出機を使用することが可能である。上記混合に際して、加熱が必要な場合には、加熱装置を備えた装置を使用する。
本実施形態の複合材料は、難燃性を発揮する複合材料であって、例えば電気・電子分野、自動車分野、建築分野等の各種成形品を成形する複合材料として使用することができる。
次に、本実施形態の層間化合物の作用について説明する。
高分子材料に層間化合物を混合して複合材料を調製する際に、層間化合物には剪断力が加わることになる。また、層間化合物は、高分子材料の極性等の化学的な影響を受けることになる。そして、複合材料を成形する際にも同様に、層間化合物には剪断力が加わったり、層間化合物が化学的な影響を受けたりする。一般に、層間化合物は、メラミンの挿入によって層間が拡張されていると、高分子材料と混合する際に加わる剪断力、又は化学的な影響を要因として、層間剥離が進行し易い。本実施形態の層間化合物の製造方法では、層状無機化合物の層間にメラミンを挿入する際に酸を添加している。こうした酸は、メラミンのアミノ基と層状無機化合物の層間に存在するイオンとに作用して層状無機化合物の複層構造を維持させるものと推測される。このため、層間化合物の層間剥離の進行は抑制されるようになる。そして、例えば複合材料の調製時等において、層状無機化合物の層間に介在するメラミンの割合が高められる。
高分子材料に層間化合物を混合して複合材料を調製する際に、層間化合物には剪断力が加わることになる。また、層間化合物は、高分子材料の極性等の化学的な影響を受けることになる。そして、複合材料を成形する際にも同様に、層間化合物には剪断力が加わったり、層間化合物が化学的な影響を受けたりする。一般に、層間化合物は、メラミンの挿入によって層間が拡張されていると、高分子材料と混合する際に加わる剪断力、又は化学的な影響を要因として、層間剥離が進行し易い。本実施形態の層間化合物の製造方法では、層状無機化合物の層間にメラミンを挿入する際に酸を添加している。こうした酸は、メラミンのアミノ基と層状無機化合物の層間に存在するイオンとに作用して層状無機化合物の複層構造を維持させるものと推測される。このため、層間化合物の層間剥離の進行は抑制されるようになる。そして、例えば複合材料の調製時等において、層状無機化合物の層間に介在するメラミンの割合が高められる。
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 複合材料の調製時、又は複合材料の成形時において、層間化合物が層間剥離すると、層状無機化合物に挿入されていたメラミンが露出することになる。露出したメラミンは、高分子材料中において単独で分散すると推測される。メラミンは昇華性を有する有機化合物であるため、分散したメラミンは高分子材料の加熱に伴って昇華する。こうした昇華を通じて、メラミンは高分子材料から放出されてしまう。このようにメラミンが高分子材料から放出されてしまうと、複合材料及びその複合材料から得られた成形体では、メラミンの配合量に応じた難燃性が得られ難くなる。本実施形態の層間化合物の製造方法では、層状無機化合物の層間に、メラミンを挿入するに際して酸を添加しているため、例えば高分子材料と混合するに際して、層間化合物の層間剥離が抑制される。このため、複合材料の調製時、又は複合材料の成形時において、メラミンが高分子材料から放出する現象を抑制することができる。従って、メラミンの配合量に応じた難燃性が発揮され易い。よって、酸を添加せずに製造した層間化合物を配合したときよりも、高分子材料の難燃性を高めることができる。
(1) 複合材料の調製時、又は複合材料の成形時において、層間化合物が層間剥離すると、層状無機化合物に挿入されていたメラミンが露出することになる。露出したメラミンは、高分子材料中において単独で分散すると推測される。メラミンは昇華性を有する有機化合物であるため、分散したメラミンは高分子材料の加熱に伴って昇華する。こうした昇華を通じて、メラミンは高分子材料から放出されてしまう。このようにメラミンが高分子材料から放出されてしまうと、複合材料及びその複合材料から得られた成形体では、メラミンの配合量に応じた難燃性が得られ難くなる。本実施形態の層間化合物の製造方法では、層状無機化合物の層間に、メラミンを挿入するに際して酸を添加しているため、例えば高分子材料と混合するに際して、層間化合物の層間剥離が抑制される。このため、複合材料の調製時、又は複合材料の成形時において、メラミンが高分子材料から放出する現象を抑制することができる。従って、メラミンの配合量に応じた難燃性が発揮され易い。よって、酸を添加せずに製造した層間化合物を配合したときよりも、高分子材料の難燃性を高めることができる。
(2) 酸としては、例えば酢酸又は塩酸が好適に使用される。そして、酸の添加量は層状無機化合物100質量部に対して0.01〜100質量部であることが好ましい。このような添加量であれば、上述した酸の作用効果を十分に発揮させるとともに、高分子材料自体の物性に対する酸の影響を抑制することができる。
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記層状無機化合物が、膨潤性雲母、スメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト族粘土鉱物、ゼオライト、セピオライト、及びハイドロタルサイト類から選ばれる少なくとも一種である層間化合物の製造方法。
・ 前記層状無機化合物が、膨潤性雲母、スメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト族粘土鉱物、ゼオライト、セピオライト、及びハイドロタルサイト類から選ばれる少なくとも一種である層間化合物の製造方法。
・ 前記メラミンの配合量が前記層状無機化合物100質量部に対して0.1〜100質量部である層間化合物の製造方法。
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1−A)
層状無機化合物として合成マイカ[Na型テトラシリシックフッ素雲母:ソマシフ(商品名)ME−100、コープケミカル(株)製]100質量部に対して、メラミン37.8質量部、及び酢酸を50質量部添加し、ボールミルを用いて室温(25℃)で120分間混合することにより、合成マイカの層間にメラミンを挿入した。
(実施例1−A)
層状無機化合物として合成マイカ[Na型テトラシリシックフッ素雲母:ソマシフ(商品名)ME−100、コープケミカル(株)製]100質量部に対して、メラミン37.8質量部、及び酢酸を50質量部添加し、ボールミルを用いて室温(25℃)で120分間混合することにより、合成マイカの層間にメラミンを挿入した。
原料として用いた合成マイカ及び層間化合物について、X線回折によって層間距離の分析を行った。図1及び図2には、それぞれ合成マイカ及び層間化合物のX線回折パターンを示している。これらX線回折パターンにおいて、合成マイカのピーク位置は2θ=9°付近である一方で、層間化合物のピーク位置は2θ=7°付近である。すなわち、層間化合物のピーク位置は、合成マイカのピーク位置よりも低角側にシフトしているため、層間化合物の層間距離は、メラミンの挿入によって拡張されていることがわかる。
(実施例2−A)
実施例2−Aにおいては、実施例1−Aで使用した酢酸を塩酸に変更した以外は実施例1−Aと同様にして層間化合物を調製した。なお、塩酸の添加量は、合成マイカ100質量部に対して20質量部である。図3には、実施例2−Aにおける層間化合物のX線回折パターンを示している。このX線回折パターンにおいて、メラミンの挿入に基づくピークが2θ=7°付近に発現している。
実施例2−Aにおいては、実施例1−Aで使用した酢酸を塩酸に変更した以外は実施例1−Aと同様にして層間化合物を調製した。なお、塩酸の添加量は、合成マイカ100質量部に対して20質量部である。図3には、実施例2−Aにおける層間化合物のX線回折パターンを示している。このX線回折パターンにおいて、メラミンの挿入に基づくピークが2θ=7°付近に発現している。
(比較例1−A)
比較例1−Aにおいては、酸の添加を省略した以外は、実施例1−Aと同様にして合成マイカにメラミンを挿入することにより、層間化合物を調製した。図4には、比較例1−Aにおける層間化合物のX線回折パターンを示している。このX線回折パターンにおいて、メラミンの挿入に基づくピークが2θ=7°付近に発現している。
比較例1−Aにおいては、酸の添加を省略した以外は、実施例1−Aと同様にして合成マイカにメラミンを挿入することにより、層間化合物を調製した。図4には、比較例1−Aにおける層間化合物のX線回折パターンを示している。このX線回折パターンにおいて、メラミンの挿入に基づくピークが2θ=7°付近に発現している。
(実施例1−B)
実施例1−Bにおいては、ポリアミド6(1011FB、宇部興産(株)製)100質量部に対して、実施例1−Aの層間化合物を3質量部配合した後、二軸押出機を用いて樹脂温度250℃、スクリュー回転数50回転/分の条件で混練することにより、複合材料を調製した。図5には、実施例1−Bにおける複合材料のX線回折パターンを示している。このX線回折パターンにおいて、層間化合物の層間距離を示すピーク(2θ=7°付近)がショルダーピークとして残留していることが確認されることから、複合材料を調製した後であっても、層間剥離していない層間化合物が存在していることがわかる。
実施例1−Bにおいては、ポリアミド6(1011FB、宇部興産(株)製)100質量部に対して、実施例1−Aの層間化合物を3質量部配合した後、二軸押出機を用いて樹脂温度250℃、スクリュー回転数50回転/分の条件で混練することにより、複合材料を調製した。図5には、実施例1−Bにおける複合材料のX線回折パターンを示している。このX線回折パターンにおいて、層間化合物の層間距離を示すピーク(2θ=7°付近)がショルダーピークとして残留していることが確認されることから、複合材料を調製した後であっても、層間剥離していない層間化合物が存在していることがわかる。
(比較例1−B)
比較例1−Bにおいては、実施例1−Aの層間化合物を比較例1−Aの層間化合物に変更した以外は、実施例1−Bと同様にして複合材料を調製した。図6には、比較例1−Bにおける複合材料のX線回折パターンを示している。このX線回折パターンにおいては、層間化合物の層間距離を示すピーク(2θ=7°付近)が、2θ=6°よりも低角側にシフトしていることが確認されているため、この複合材料では、層間化合物の層間剥離が実施例1−Bよりも進行していることがわかる。
比較例1−Bにおいては、実施例1−Aの層間化合物を比較例1−Aの層間化合物に変更した以外は、実施例1−Bと同様にして複合材料を調製した。図6には、比較例1−Bにおける複合材料のX線回折パターンを示している。このX線回折パターンにおいては、層間化合物の層間距離を示すピーク(2θ=7°付近)が、2θ=6°よりも低角側にシフトしていることが確認されているため、この複合材料では、層間化合物の層間剥離が実施例1−Bよりも進行していることがわかる。
(難燃性の評価)
実施例1−B及び比較例1−Bにおける複合材料の難燃性について、米国アンダー・ライターズ・ラボラトリーズ・インク(Under Writers Laboratories Inc)によって制定された規格であるUL94に準拠した垂直燃焼試験により評価した。実施例1−Bの複合材料では、厚さ1/32インチ及び厚さ1/64インチのいずれの試料おいても、V−0の基準の難燃性を有していた。一方、比較例1−Bの複合材料では、厚さ1/32インチの試料においてV−0の難燃性を有していたものの、厚さ1/64インチの試料においてはV−0の難燃性は有していなかった。このように実施例1−Aの層間化合物を混合した複合材料では、難燃性が高まることがわかる。
実施例1−B及び比較例1−Bにおける複合材料の難燃性について、米国アンダー・ライターズ・ラボラトリーズ・インク(Under Writers Laboratories Inc)によって制定された規格であるUL94に準拠した垂直燃焼試験により評価した。実施例1−Bの複合材料では、厚さ1/32インチ及び厚さ1/64インチのいずれの試料おいても、V−0の基準の難燃性を有していた。一方、比較例1−Bの複合材料では、厚さ1/32インチの試料においてV−0の難燃性を有していたものの、厚さ1/64インチの試料においてはV−0の難燃性は有していなかった。このように実施例1−Aの層間化合物を混合した複合材料では、難燃性が高まることがわかる。
Claims (3)
- 層状無機化合物の層間にメラミンが挿入されてなり、高分子材料に混合される層間化合物の製造方法であって、
前記メラミンの挿入は、
前記層状無機化合物とメラミンとを固体状態で接触させるとともにそれら層状無機化合物及びメラミンに対して運動エネルギーを加えることにより実施され、
前記メラミンの挿入に際して酸を添加することを特徴とする層間化合物の製造方法。 - 前記酸が酢酸又は塩酸であることを特徴とする請求項1に記載の層間化合物の製造方法。
- 前記酸の添加量が前記層状無機化合物100質量部に対して0.01〜100質量部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の層間化合物の製造方法。
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