以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。この複合機10は、下部にプリンタ部11を、上部にスキャナ部12を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。この複合機10のうちプリンタ部11が本発明に係るインクジェット記録装置に相当する。この複合機10において、プリンタ機能以外の機能は、任意のものであって省略されていてもよい。すなわち、本発明は、スキャナ部12がなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして実施されてもよい。
複合機10は、主に図示されていないパーソナルコンピュータと接続され、このパーソナルコンピュータから送信される画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録媒体の一例である記録用紙に画像や文書が記録される。ただし、複合機10の使用態様はかかる態様に限定されるものではなく、複合機10がデジタルカメラ等の外部機器と接続され、デジタルカメラから出力される画像データが記録用紙に記録されたり、メモリカード等の各種記憶媒体が複合機10に装填され、この記憶媒体に記憶された画像データ等が記録用紙に記録されることも可能である。なお、本明細書において開示される複合機10の構成は、本発明に係るインクジェット記録装置の一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲で構成が適宜変更され得るものであることは当然である。
プリンタ部11は、正面に開口13が形成されており、この開口13から一部が露呈するようにして給紙トレイ14及び排紙トレイ15が上下2段に設けられている。給紙トレイ14は、記録用紙を貯蔵するためのものである。この給紙トレイ14に収容された記録用紙は、プリンタ部11の内部へ給送され、所望の画像が記録された後に排紙トレイ15へ排出されるようになっている。
複合機10の正面上部に操作パネル20が設けられている。この操作パネル20は、プリンタ部11やスキャナ部12を操作するための各種操作ボタンや液晶表示部を備えている。複合機10は、この操作パネル20からの操作指示に基づいて動作する。また、複合機10がパーソナルコンピュータに接続されている場合には、当該複合機10は、パーソナルコンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても動作する。さらに、複合機10の正面にスロット部21が設けられている。記憶媒体である各種小型メモリカードは、このスロット部21に装填されるようになっている。操作パネル20からの入力に基づいて、スロット部21に装填された小型メモリカードに記録された画像データが読み出され、この画像データに関する情報が液晶表示部に表示され、あるいは、任意の画像がプリンタ部11により記録用紙に記録される。
図2は、プリンタ部11の主要な構成を示す斜視図である。プリンタ部11には、主に、給紙トレイ14と、給紙トレイ14の上方に設置されている給紙ローラ25と、給紙トレイ14の奥方から立設し、給紙ローラ25から給紙される記録用紙を搬送する搬送経路を形成する搬送ガイド体50と、搬送ガイド体50の下流側であって、搬送ローラ60と排紙ローラ62との間に往復移動可能に設置されている記録ヘッド39と、記録ヘッド39のインク吐出面と対向配置されているプラテン83と、プラテン83と隣接する位置であってキャリッジ38の走査範囲内に設置されているメンテナンスユニット48とが配設されている。
給紙トレイ14は、上面が開放された略箱状に形成されており、その内部に記録用紙が積載収納される。また、給紙トレイ14の側壁には、図2では不図示の排紙トレイ15(図1参照)を支持する支持部14aが形成されており、排紙トレイ15は、支持部14a上にスライド可能に支持されている。
給紙ローラ25は、給紙トレイ14に積載されている記録用紙に当接した状態で回転し、記録用紙を搬送ガイド体50に形成されている搬送経路を経由して搬送ローラ60に給紙する。給紙ローラ25はアーム51の一端に回転可能に軸支されている。アーム51は、シャフト52に対して振り子状に回動可能に支持されており、給紙トレイ14に積載されている記録用紙の積載量に応じて、アーム51と記録用紙とのなす角度が変わるように構成されている。また、アーム51の内部には、図示しない複数個の歯車が直線状に並べて設置されており、この歯車を介して給紙ローラ25が回転する。
搬送ガイド体50は、給紙ローラ25から給紙された記録用紙を搬送ローラ60までU字状に搬送する搬送経路を形成するものである。搬送ローラ60には、搬送ローラ60に追従して回転する従動ローラ(図示せず)が対向配置されており、搬送経路を経由して搬送された記録用紙は、この搬送ローラ60と従動ローラとに挟持され、記録ヘッド39とプラテン83との間に搬送される。
記録ヘッド39は、プラテン83と対向する面にインクを吐出するノズルが形成されたノズル形成面90(図3参照)を有し、そのノズルからプラテン83に支持されてノズル形成面90と対向する位置に搬送される記録媒体にインク滴を吐出して画像を形成するものである。尚、記録ヘッド39には、複合機10に着脱自在に設置されるインクカートリッジ(図示せず)からシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色のインクが供給される。
ここで、図3を参照して、記録ヘッド39のノズル形成面90について説明する。図3は、記録ヘッド39を底面側(ノズル形成面90側)から見た斜視図である。図3に示すように、記録ヘッド39のノズル形成面90には、複数のノズルが形成された平面状の平面部91と、その平面部91の一端に連続するインク吸収部92とが設けられている。なお、インク吸収部92が連続する平面部91の一端とは、後述するように、ワイパブレード41の払拭方向縁部に対応する。
インク吸収部92は、後述するワイプ処理(図7参照)の実行によってワイパブレード41(図4参照)に付着したインクを吸収する部位であり、多数の溝部92aが凹設されている。これら多数の溝部92aは、ノズル形成面90の端部まで延設され、それぞれの溝部92aが互いに平行かつ等間隔となるように設けられている。また、ノズル形成面90の端部には、ノズル形成面90の側面に向かって徐々に傾斜する傾斜部93が形成されている。
図2に戻って説明する。記録ヘッド39は、キャリッジ38に搭載され、主走査方向に往復移動可能に構成されている。キャリッジ38は、プラテン83と、メンテナンスユニット48との範囲に亘って往復移動可能に構成されており、プラテン83と対向する領域で記録ヘッド39によって記録媒体に対して記録を実行し、メンテナンスユニット48と対向する領域で記録ヘッド39のメンテナンスを実行する。
プラテン83は、記録ヘッド39の下方に対向配置されており、搬送ローラ60から搬送される記録用紙を記録ヘッド39とは反対側から支持する。インクが供給された記録ヘッド39は、往復移動しながらインクを微小なインク滴としてプラテン83側に吐出し、プラテン83上に搬送される記録用紙に対して画像を形成する。
プラテン83を搬送ローラ60との間に挟んで設置されている排紙ローラ62には、排紙ローラ62に追従して回転する従動ローラ(図示せず)が対向配置されており、記録ヘッド39とプラテン83との間を経由して搬送される記録済みの記録用紙は、この排紙ローラ60と従動ローラとに挟持され、排紙トレイ15(図1参照)に排紙される。
メンテナンスユニット48は、記録ヘッド39のノズル形成面90に付着したインクをワイパブレード41で払拭するワイプ処理を実行するためのワイプ機構40(図4参照)、記録ヘッド39のノズル形成面90を密封した状態でノズル形成面90に形成されているノズルからインクを吸引するパージ処理を実行するためのパージ機構、廃インクトレイ等が設けられており、このメンテナンスユニット48により、記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去等のメンテナンスが行われる。
また、メンテナンスユニット48にはキャリッジレバー27が設けられており、キャリッジ38がメンテナンスユニット48と対向する位置に移動すると、このキャリッジレバー27が押し倒され、LFモータ71(図6参照)の動力がメンテナンスユニット48に伝達される。
次に、図4を参照して、メンテナンスユニット48に含まれるワイプ機構40について説明する。図4は、ワイプ機構40の断面図であり、特に、(a)はワイパブレード41がノズル形成面90に当接している状態、(b)はワイパブレード41がノズル形成面90から離間している状態を示している。
ワイプ機構40は、メンテナンスユニット48の一部として設けられており、キャリッジ38に搭載された記録ヘッド39がメンテナンスユニット48と対向する領域に移動した場合に、その記録ヘッド39と対向する位置に設置されている。
ワイプ機構40には、図4に示すように、弾性を有する板状のワイパブレード41と、そのワイパブレード41の一端を保持するワイパホルダ42と、そのワイパホルダ42の他端側を保持する回転体43とが設けられている。
ワイパブレード41は、回転体43から記録ヘッド39のノズル形成面90に対して出没可能に設けられている。ワイパブレード41は、記録ヘッド39の下面の搬送方向長さに対応した長さのゴム製のブレードである。ワイパブレード41が、回転体43側から突出されることによりワイパブレード41の先端部分が撓んだ状態で記録ヘッド39のノズル形成面90に当接される。記録ヘッド39は、ワイパブレード41がノズル形成面90に当接した状態で、キャリッジ38と共にスライド移動される。これにより、ノズル形成面90に付着したインクがワイパブレード41により払拭される。
ワイパホルダ42は、後述する回転体43の回転に伴って記録ヘッド39のノズル形成面90に対して出没可能に設置されており、このワイパホルダ42が回転体43からノズル形成面90側に突出することで、ワイパホルダ42に支持されているワイパブレード41がノズル形成面90に当接し、逆に、回転体43側に没することでワイパブレード41がノズル形成面90から離間する。
回転体43は、ワイパホルダ42(ワイパブレード41)を記録ヘッド39のノズル形成面90に対して出没させるためのものであり、記録ヘッド39のノズル形成面90との間にワイパホルダ42とワイパブレード41とを挟む位置に回転可能に設置されている。
回転体43には、環状のカム溝43aが形成されており、このカム溝43aには、所定範囲に亘って溝の深さが第1深さである第1溝部43a1と、溝の深さが第1深さよりも深い第2深さを有し、第1溝部43a1の両端と連続するように形成される第2溝部43a2とが形成されている。
よって、ワイパホルダ42が第1溝部43a1上に位置している場合には、ワイパホルダ42が回転体43からノズル形成面90側に突出して、ワイパブレード41がノズル形成面90に当接し、ワイパホルダ42が第2溝部43a2上に位置している場合には、ワイパホルダ42が回転体43側に没して、ワイパブレード41がノズル形成面90から離間する。尚、ワイパホルダ42は図示しないコイルバネによって回転体43側に付勢されており、カム溝43aに従って出没し易くなるように構成されている。
ここで、図5を参照して、この回転体43を回転させる動力伝達機構について説明する。図5は、回転体43を底面側から見た斜視図である。図5に示すように、回転体43を回転させる動力伝達機構には、第1ギヤ44と、その第1ギヤ44と噛合する第2ギヤ45と、その第2ギヤ45と一端側が連結されているリンクバー46と、そのリングバー46の他端側と連結されている第3ギヤ47とが設けられている。
この動力伝達機構によれば、キャリッジ38がメンテナンスユニット48と対向する位置に移動し、キャリッジレバー27が押し倒されている状態で、動力源としてのLFモータ71(図6参照)を所定方向に駆動すると、その回転力が、図示しないギヤ機構を介して、第1ギヤ44に伝達され、第1ギヤ44が図5において反時計回りに回転する。すると、第2ギヤ45とリンクバー46とが図5において時計回りに回転し、第3ギヤ47がパージ処理を実行する場合に使用するポンプを駆動するための第4ギヤ49と噛合する。
一方、動力源としてのLFモータ71を上述したのとは逆回転すると、第1ギヤ44が、図5において時計回りに回転する。すると、第2ギヤ45とリンクバー46とが反時計回りに回転し、第3ギヤ47が回転体43の底面に形成されている第5ギヤ43bと噛合し、回転体43が回転駆動する。そして、この回転体43が回転駆動すると、上述したように、回転体43に形成されているカム溝43aに追従してワイパホルダ42(ワイパブレード41)が記録ヘッド39のノズル形成面90に対して出没する。
図6は、複合機10の制御部64の構成を示すブロック図である。制御部64は、プリンタ部11のみでなくスキャナ部12も含む複合機10の全体動作を制御するものであるが、スキャナ部12は本発明の主要な構成ではないので詳細な説明は省略する。制御部64は、図6に示すように、CPU(Central Processing Unit)65、ROM(Read Only Memory)66、RAM(Random Access Memory)67、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)68を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス69を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)70に接続されている。
ROM66には、複合機10の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。例えば、図7に示すワイプ処理を実行させるワイプ処理プログラム66aが格納されている。RAM67は、CPU65が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。EEPROM68には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、LFモータ71に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をLFモータ71の駆動回路72に付与し、該駆動回路72を介して駆動信号をLFモータ71に通電することにより、LFモータ71の回転制御を行っている。
駆動回路72は、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、回転体43などに接続されたLFモータ71を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、LFモータ71を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてLFモータ71が回転し、該LFモータ71の回転力がギヤや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、回転体43へ伝達される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、CR(キャリッジ)モータ73に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をCRモータ73の駆動回路74に付与し、該駆動回路74を介して駆動信号をCRモータ73に通電することにより、CRモータ73の回転制御を行っている。
駆動回路74は、上記キャリッジ38に接続されたCRモータ73を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、CRモータ73を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてCRモータ73が回転し、該CRモータ73の回転力がキャリッジ38へ伝達されことによりキャリッジ38が往復動される。
駆動回路75は、記録ヘッド39から所定のタイミングでインクを記録用紙に対して選択的に吐出させるものであり、CPU65から出力される駆動制御手順に基づいてASIC70において生成された出力信号を受け、記録ヘッド39を駆動制御する。
ASIC70には、スキャナ部12や、複合機10の操作指示を行うための操作パネル20、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部21、パソコン等の外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース78及びUSBインタフェース79、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)80やモデム(MODEM)81が接続されている。
その他、ASIC70には、給紙ローラ25から搬送ローラ60に記録媒体が搬送されたことを検出するレジセンサ53、搬送ローラ60の回転量を検出するためのロータリエンコーダ54、キャリッジ38の移動量を検出するためのリニアエンコーダ55が接続されている。
次に、図7及び図8を参照して上述したように構成されたワイプ機構40の動作について説明する。図7は、ワイプ処理を示すフローチャートである。また、図8(a1)から(a5)は、ワイプ処理における記録ヘッド39とワイパブレード41との関係を時系列で示す図であり、図8(b)は、ワイプ処理における記録ヘッド39のワイパブレード41に対する速度と、時間との関係を示すグラフである。
ワイプ処理は、パージ処理の後、或いは、記録動作後に実行される処理であり、前提として、記録ヘッド39がワイプ処理の実行開始位置に位置しているものとする。
図7に示すように、ワイプ処理では、まず、ワイパブレード41が記録ヘッド39のノズル形成面90に当接するようにLFモータ71を駆動する(S601)。即ち、ワイパホルダ42がカム溝43aの第1溝部43a1上に位置するように、LFモータ71によって回転体43を回転させる。そして、ワイパブレード41が記録ヘッド39のノズル形成面90に当接させた後、記録ヘッド39がワイパブレード41に対して所定速度で移動するようにキャリッジモータ73を駆動する(S602)。
ここまでの処理を、図8(a1)及び図8(a2)を参照して説明する。図8(a1)は、ワイパブレード41が記録ヘッド39のノズル形成面90に当接している状態を示している。なお、図8(b)に示すように、この状態における記録ヘッド39のワイパブレード41に対する速度および時間を0とする。
図8(a1)に示す状態になると、次に、記録ヘッド39がワイパブレード41に対して所定速度で移動するようにキャリッジモータ73を駆動して、記録ヘッド39をワイパブレード41に対して相対的に移動させる。図8(a2)は、記録ヘッド39がワイパブレード41に対して所定速度で移動している状態を示している。この場合、ワイパブレード41がノズル形成面90に当接した状態で記録ヘッド39に対して相対的に移動するので、ノズル形成面90に付着しているインクをワイパブレード41によって払拭することができる。
図7に戻って説明を続ける。S602の処理においてキャリッジモータ73を駆動した後は、ワイパブレード41が第1停止位置に到達したかを判断する(S603)。尚、ワイパブレード41が第1停止位置に到達したかの判断は、リニアエンコーダ55によって検出した記録ヘッド73の移動距離に基づいて行われる。そして、ワイパブレード41が第1停止位置に到達していないと判断される場合には(S603:No)、第1停止位置に到達したと判断されるまでS602の処理を繰り返す。
一方、ワイパブレード41が第1停止位置に到達したと判断される場合には(S603:Yes)、キャリッジモータ73を停止した後(S604)、第1の所定時間が経過したかを判断する(S605)。そして、第1の所定時間が経過していないと判断される場合には(S605:No)、第1の所定時間が経過したと判断されるまで待機する(S605の処理を繰り返す)。
ここまでの処理を、図8(a3)を参照して説明する。ワイパブレード41が第1停止位置に到達すると、次に、キャリッジモータ73を停止して、記録ヘッド39を停止させる。図8(a3)は、ワイパブレード41が第1停止位置に到達し、記録ヘッド39が停止している状態を示している。この場合、ノズル形成面90の払拭によってワイパブレード41に付着したインクをワイパブレード41に沿って流下させることができる。よって、ワイパブレード41とノズル形成面90との間に滞留するインク量を減少させることができる。
ここで、第1停止位置は、図8(a3)に示すように、ワイパブレード41が複数のノズルを払拭した後の位置である。これにより、ノズルの払拭によってワイパブレード41に付着したインクを効率的にワイパブレード41に沿って流下させることができる。
図7に戻って説明を続ける。S605の処理において第1の所定時間が経過したと判断される場合には(S605:Yes)、再び、記録ヘッド39がワイパブレード41に対して所定速度で移動するようにキャリッジモータ73を駆動した後(S606)、記録ヘッド39が第2停止位置に到達したかを判断する(S607)。そして、記録ヘッド39が第2停止位置に到達していないと判断される場合には(S607:No)、第2停止位置に停止したと判断されるまでS606の処理を繰り返す。
一方、記録ヘッド39が第2停止位置に到達したと判断される場合には(S607:Yes)、キャリッジモータ73を停止した後(S608)、第2の所定時間が経過したかを判断する(S609)。そして、第2の所定時間が経過していないと判断される場合には(S609:No)、第2の所定時間が経過したと判断されるまで待機する(S609の処理を繰り返す)。
ここまでの処理を、図8(a4)を参照して説明する。図8(a3)に示す状態で第1の所定時間が経過すると、次に、記録ヘッド39がワイパブレード41に対して所定速度で移動するようにキャリッジモータ73を駆動して、記録ヘッド39をワイパブレード41に対して相対的に移動させる。そして、ワイパブレード41が第2停止位置に到達すると、次に、キャリッジモータ73を停止して、記録ヘッド39を停止させる。図8(a4)は、ワイパブレード41が第2停止位置に到達し、記録ヘッド39が停止している状態を示している。この場合、第1停止位置での停止において流下し切らず未だワイパブレード41に付着したままのインクやノズル形成面90の払拭によって新たにワイパブレード41に付着したインクをワイパブレード41に沿って流下させることができる。よって、ワイパブレード41とノズル形成面90との間に滞留するインク量を一層減少させることができる。
ここで、第2停止位置は、図8(a4)に示すように、ノズル形成面90の払拭方向縁部の位置、具体的には、ワイパブレード41がノズル形成面90のインク吸収部92における溝部92a(図3参照)に当接する位置である。これにより、かかる縁部の位置よりも手前で停止させる場合よりもワイパブレード41とノズル形成面90との間に滞留するインク量を減少させることができる。また、第1停止位置での停止において流下し切らず未だワイパブレード41に付着したままのインクやノズル形成面90の払拭によって新たにワイパブレード41に付着したインクを毛管現象によって溝部92aに吸収させて、ワイパブレード41とノズル形成面90との間に滞留するインク量を減少させることができる。更に、例え第2停止位置に停止したワイパブレード41が復元してインクが飛散したとしても、その飛散したインクを記録ヘッド39のノズル形成面90の側面に付着させることが可能となる。
図7に戻って説明を続ける。S609の処理において第2の所定時間が経過したと判断される場合には(S609:Yes)、再び、記録ヘッド39がワイパブレード41に対して所定速度で移動するようにキャリッジモータ73を駆動した後(S610)、ワイパブレード41が記録ヘッド39のノズル形成面90から離れてからキャリッジモータ73を停止して(S611)、このワイプ処理を終了する。尚、ワイパブレード41が記録ヘッド39のノズル形成面90から離れたかの判断は、リニアエンコーダ55によって検出した記録ヘッド73の移動距離に基づいて行われる。
ここまでの処理を、図8(a5)を参照して説明する。図8(a4)に示す状態で第2の所定時間が経過すると、次に、記録ヘッド39がワイパブレード41に対して所定速度で移動するようにキャリッジモータ73を駆動して、記録ヘッド39をワイパブレード41に対して相対的に移動させる。そして、ワイパブレード41が記録ヘッド39のノズル形成面90から離れると、次に、キャリッジモータ73を停止して、記録ヘッド39を停止させる。図8(a5)は、ワイパブレード41が記録ヘッド39のノズル形成面90から離れ、記録ヘッド39が停止している状態を示している。なお、上述したように、ノズル形成面90の端部には、ノズル形成面90の側面に向かって徐々に傾斜する傾斜部93が形成されているので、ノズル形成面90に撓んだ状態で当接したワイパブレード41を徐々に復元させることができる。よって、ワイパブレード41が復元する際の装置内へのインクの飛散を抑制することができる。
ここで、図8(b)に示すように、第2の所定時間T2は、第1の所定時間T1よりも短く設定されている。これにより、ワイプ処理の時間(記録ヘッド39のノズル形成面90をワイパブレード41によって払拭する時間)の短縮を図ることができる。尚、第2の所定時間T2を第1の所定時間T1よりも短く設定できるのは、第1停止位置での停止においてワイパブレード41とノズル形成面90との間に滞留するインク量を予め減少させることで実現可能となったものであり、これにより、ワイプ処理を効率良く行うことができる。
以上説明したように、本発明によれば、ワイパブレード41が第1停止位置に第1の所定時間停止している間および第2停止位置に第2の所定時間停止している間のそれぞれにおいて、ワイパブレード41に付着したインクをワイパブレード41に沿って流下させることができる。よって、ワイパブレード41と記録ヘッド39のノズル形成面90との間に滞留するインク量を減少させることができる。更に、ワイパブレード41を第1停止位置と第2停止位置との二度停止させるので、一度だけ停止させる場合よりもワイパブレード41と記録ヘッド29のノズル形成面90との間に滞留するインク量を一層減少させることができる。
また、単にワイパブレード41の停止制御のみでワイパブレード41と記録ヘッド39のノズル形成面90との間に滞留するインク量を減少させることができるので、新たな部品を必要とせず、複雑な構成になることもない。従って、簡単な構成でワイパブレード41が復元する際にインクが装置内に飛散するのを抑制することができる。
更に、ワイパブレード41を第2停止位置に第2の所定時間停止させた後、ワイパブレード41をノズル形成面90の範囲外に相対的に移動させるので、ノズル形成面90へのインクの残存を防止することができる。これにより、記録用紙に記録する画像の品質を向上させることができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
上記実施形態では、記録ヘッド39をワイパブレード41に対して移動させる場合について説明したが、記録ヘッド39を移動させることなく、その記録ヘッド39に対してワイパブレード41を移動させたり、記録ヘッド39とワイパブレード41とを共に移動させるように構成して、ワイプ処理を実行しても良い。
上記実施形態では、ノズル形成面90の払拭方向縁部の位置を第2停止位置とする場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1停止位置からノズル形成面90の払拭方向縁部までの位置であれば良い。この場合でも、ワイパブレード41と記録ヘッド39のノズル形成面90との間に滞留するインク量を十分に減少させて、ワイパブレード41が復元する際にインクが装置内に飛散するのを確実に抑制することができる。
上記実施形態では、第2の所定時間T2を第1の所定時間T1よりも短く設定する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第2の所定時間T2と第1の所定時間T1とを同じに設定しても良く、或いは、第2の所定時間T2を第1の所定時間T1よりも長く設定しても良い。
上記実施形態では、記録ヘッド39をワイパブレード41に対して一定の速度で移動させる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、第2停止位置での停止後の速度を第1停止位置での停止後の速度よりも低速としても良い。この場合には、記録ヘッド39のノズル形成面90に撓んだ状態で当接したワイパブレード41を徐々に復元させて、ワイパブレード41が復元する際の装置内へのインクの飛散を一層抑制することができる。