JP5243775B2 - 誘電膜およびそれを用いたアクチュエータ、センサ、トランスデューサ - Google Patents
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Description
上述したように、本発明の誘電膜は、(A)アルケニル基またはヒドロキシ基を持ち、ポリジメチルシロキサン以外のポリマーと、(B)シロキサン結合形成可能な架橋剤と、を含んだゴム組成物を架橋してなる。
本発明の誘電膜を構成するポリマーは、ポリジメチルシロキサン以外であって、アルケニル基またはヒドロキシ基を持つものであればよい。ポリマーは、液状でも固体でもよい。ポリマー中のアルケニル基またはヒドロキシ基が架橋サイトとなり、後述の架橋剤によりシロキサン結合が導入される。より小さな印加電圧で大きな変位量を得るという観点では、極性が大きいポリマーが望ましい。例えば、比誘電率が2.8以上(測定周波数1Hz)のものが好適である。また、クリープ性を向上させるという観点では、絶縁性が高いものが望ましい。例えば、電気抵抗値が108〜1016Ω・cmのものが好適である。
使用する架橋剤は、上記ポリマー(A)との反応によりシロキサン結合を形成することができるものであれば、その種類が特に限定されるものではない。付加反応架橋、縮合反応架橋のいずれを採用してもよい。縮合反応架橋用の架橋剤としては、脱水素型、脱アルコール型、脱酢酸型、脱オキシム型、脱アミド型、脱ヒドロキシルアミン型、脱アセトン型がある。これらは、スズ化合物やチタン化合物等の触媒と共に用いるとよい。
本発明の誘電膜は、上記ポリマー(A)と架橋剤(B)とを含んだゴム組成物を架橋して製造される。ゴム組成物には、必要に応じて触媒、補強剤、遅延剤、可塑剤、老化防止剤、着色剤等を添加してもよい。予め(A)に(B)を含有させておいてもよく、これらを部分的に反応させてもよく、(A)に他の成分を分散させた後に(B)を配合してもよい。本発明の誘電膜は、例えば、次のようにして製造することができる。第一の方法としては、まず、ポリマー(A)に架橋剤(B)等を添加して混練りし、ゴム組成物を調製する。次に、調製したゴム組成物を成形し、それを金型に充填して、所定の条件下でプレス架橋する。また、上記第一の方法と同様に調製したゴム組成物を、フィルム状あるいはチューブ状に押し出し成形等した後、架橋してもよい。また、第二の方法としては、まず、ポリマー(A)を、所定の溶媒に溶解する。この溶液へ架橋剤(B)等を加え、攪拌、混合してゴム組成物を調製する。次に、調製したゴム組成物を基材上に塗布し、乾燥させて溶媒を蒸発させた後、架橋する。
図1に、本実施形態におけるアクチュエータの断面模式図を示す。(a)はオフ状態、(b)はオン状態を各々示す。図1に示すように、アクチュエータ10は、誘電膜20と電極30a、30bとを備えている。電極30a、30bは、誘電膜20の表裏に、それぞれ固定されている。電極30a、30bは、導線を介して電源40に接続されている。オフ状態からオン状態に切り替える際は、一対の電極30a、30b間に電圧を印加する。電圧の印加により、誘電膜20の膜厚は薄くなり、その分だけ、図1(b)中白抜き矢印で示すように、電極30a、30b面に対して平行方向に伸長する。これにより、アクチュエータ10は、図中横および上下方向の駆動力を出力する。
以下、本発明の誘電膜を用いた静電容量型センサの実施形態を説明する。図2に、本実施形態における静電容量型センサの断面模式図を示す。図2に示すように、静電容量型センサ11は、誘電膜21と電極31a、31bと基材41とを備えている。誘電膜21は、左右方向に延びる帯状を呈している。誘電膜21は、基材41の上面に、電極31bを介して配置されている。電極31a、31bは、左右方向に延びる帯状を呈している。電極31a、31bは、誘電膜21の表裏に、それぞれ固定されている。電極31a、31bには、導線(図略)が接続されている。基材41は絶縁性の柔軟なフィルムであって、左右方向に延びる帯状を呈している。基材41は、電極31bの下面に固定されている。
C=ε0εrS/d・・・(I)
[C:キャパシタンス、ε0:真空中の誘電率、εr:誘電膜の比誘電率、S:電極面積、d:電極間距離]
例えば、静電容量型センサ11が上方から押圧されると、誘電膜21は圧縮され、その分だけ長手方向に伸長する。膜厚dが小さくなると、電極31a、31b間のキャパシタンスは大きくなる。このキャパシタンス変化により、加わった荷重の大きさ、位置等が検出される。ここで、誘電膜21は、上述した本発明の誘電膜である。誘電膜21の架橋部分には、シロキサン結合が形成されている。このため、誘電膜21は、伸縮を繰り返してもクリープしにくい。よって、静電容量型センサ11は耐久性に優れる。
以下、本発明のトランスデューサの一例として、発電トランスデューサの実施形態を説明する。図3に、本実施形態における発電トランスデューサの断面模式図を示す。(a)は伸長時、(b)は収縮時を各々示す。図3に示すように、発電トランスデューサ12は、誘電膜22と電極32a、32bとを備えている。電極32a、32bは、誘電膜22の表裏に、それぞれ固定されている。電極32a、32bには、導線が接続されており、電極32bは、接地されている。
(1)実施例の誘電膜の製造
下記の表1に示す所定の原料を配合してゴム組成物を調製し、加熱下でプレス架橋させて、実施例の誘電膜を製造した。すなわち、実施例1〜7の誘電膜については、まず、ポリマー(A)、架橋剤(B)、遅延剤、ヒドロシリル化触媒を、ロール練り機にて混合、分散させて、ゴム組成物を調製した。次に、調製したゴム組成物を薄いシート状に成形し、それを金型に充填して、120℃で約30分間プレス架橋することにより、誘電膜を得た。また、実施例8の誘電膜については、以下の方法により誘電膜を製造した。まず、ポリマー(A)のイソプレン−ブタジエン共重合体〔イソプレン:ブタジエン=10:90(質量比)〕100gと、トルエン50gとを、1Lの4ツ口フラスコに計量し、100℃で1時間減圧脱水した。次いで、窒素雰囲気下にて塩化白金酸100μL(0.2mol/Lキシレン溶液)を添加し、70℃で攪拌しながら、架橋剤(B)のメチルジエトキシシラン4.4gを滴下し、5時間攪拌して反応させた。得られたポリマーに、ジブチル錫ジラウレート、ラウリルアミンを混合してゴム組成物を調製した。次に、調製したゴム組成物を薄いシート状に成形し、それを金型に充填して、40℃で約30分間プレス架橋した。脱型後、80℃で12時間熱処理して誘電膜を得た。実施例の誘電膜の膜厚は、いずれも約200μmとした。
下記の表2に示す所定の原料を配合してゴム組成物を調製し、加熱下でプレス架橋させて、比較例の誘電膜を製造した。すなわち、まず、ポリマー、架橋剤等の原料を、ロール練り機にて混合、分散させて、ゴム組成物を調製した。次に、調製したゴム組成物を薄いシート状に成形し、それを金型に充填して、120℃で約30分間プレス架橋することにより、誘電膜を得た。誘電膜の膜厚は、いずれも約200μmとした。
(1)架橋時間
実施例1〜7および比較例1〜4の誘電膜を製造する際に調製した各々のゴム組成物について、120℃における架橋時間を測定した。架橋が100%進行した時の目標粘度を100%とし、粘度がその90%に到達するまでの時間(t90)を架橋時間とした。測定結果を下記表3に示す。表3に示すように、実施例1〜7の架橋時間は、従来のシリコーンゴム(比較例1)以外の比較例2〜4と比較して、短くなった。同じポリマー同士で比較すると、実施例3は比較例2に対して、実施例5は比較例3に対して、実施例6は比較例4に対して、いずれも架橋時間が大幅に短縮された。
実施例および比較例の誘電膜の電気抵抗を、JIS K 6911に準じて測定した。測定結果を下記表3に示す。表3中、同じポリマー同士で比較すると、実施例3は比較例2に対して、実施例5は比較例3に対して、実施例6は比較例4に対して、いずれも電気抵抗が大きくなった。このように、実施例の誘電膜では、架橋部分にシロキサン結合が形成されることにより絶縁性が高くなった。
実施例および比較例の誘電膜の比誘電率を測定した。比誘電率の測定は、各誘電膜をサンプルホルダー(ソーラトロン社製、12962A型)に設置し、誘電率測定インターフェイス(同社製、1296型)、および周波数応答アナライザー(同社製、1255B型)を併用して測定した(周波数1Hz)。測定結果を下記表3に示す。表3中、同じポリマー同士で比較すると、実施例3は比較例2に対して、実施例5は比較例3に対して、実施例6は比較例4に対して、比誘電率は同等、若しくはそれ以上であった。
実施例および比較例の誘電膜の硬度を、JIS K 6253のタイプAデュロメータ硬さに準じて測定した。測定結果を下記表3に示す。
実施例および比較例の誘電膜の圧縮永久歪みを、JIS K 6262に準じて測定した。測定条件は、温度70℃、試験時間22時間、圧縮率25%とした。測定結果を下記表3に示す。表3に示すように、実施例1〜8の圧縮永久歪みは、従来のシリコーンゴム(比較例1)以外の比較例2〜4と比較して、小さい値となった。同じポリマー同士で比較すると、実施例3は比較例2に対して、実施例5は比較例3に対して、実施例6は比較例4に対して、いずれも圧縮永久歪みが低下した。これより、実施例の誘電膜は、へたりにくく耐クリープ性が高いことがわかる。
(1)変位量
次に、実施例および比較例の各誘電膜を用いてアクチュエータを構成し、アクチュエータの変位量を測定した。まず、実験装置および実験方法について説明する。
延伸率(%)={√(S2/S1)−1}×100・・・(II)
[S1:延伸前(自然状態)の誘電膜面積、S2:二軸方向延伸後の誘電膜面積]
一対の電極51a、51bは、誘電膜50を挟んで上下方向に対向するよう配置されている。電極51a、51bは、直径約27mmの円形の薄膜状を呈しており、各々、誘電膜50と略同心円状に配置されている。電極51aの外周縁には、拡径方向に突出する端子部510aが形成されている。端子部510aは矩形板状を呈している。同様に、電極51bの外周縁には、拡径方向に突出する端子部510bが形成されている。端子部510bは矩形板状を呈している。端子部510bは、端子部510aに対して、180°対向する位置に配置されている。端子部510a、510bは、各々、導線を介して電源52に接続されている。
変位率(%)=(変位量/電極の半径)×100・・・(III)
上記実施例および比較例のアクチュエータについて、電圧のオン、オフにより誘電膜を繰り返し伸縮させる耐久試験を行った。結果を上記表4に示す。表中の○印は耐久性が高いものを、×印は耐久性が低いものを表している。また、かっこ内の数字は、誘電膜が破断した回数(×1000回)を示す。ここで「100<」は、10万回繰り返しても破断しなかったことを示す。表4に示すように、実施例のアクチュエータでは、電圧のオン、オフを10万回繰り返しても誘電膜は破断しなかった。一方、比較例のアクチュエータでは、従来のシリコーンゴム製誘電膜を使用した比較例1のアクチュエータを除いて、いずれも試験途中で誘電膜が破断した。これより、実施例のアクチュエータは、耐久性に優れることが確認された。
以上(1)、(2)の結果から、本発明の誘電膜によると、変位量が大きく、かつ耐久性に優れたアクチュエータを構成できることが確認された。
11:静電容量型センサ 21:誘電膜 31a、31b:電極 41:基材
12:発電トランスデューサ 22:誘電膜 32a、32b:電極
5:アクチュエータ 50:誘電膜 51a、51b:電極 52:電源 53:変位計
510a、510b:端子部 530:マーカー
Claims (7)
- アクチュエータ、センサ、トランスデューサのいずれかにおいて少なくとも一対の電極間に介装され、該電極間の印加電圧の変化により伸縮し、または、変形により該電極間の静電容量に変化を生じさせる誘電膜であって、
(A)アルケニル基またはヒドロキシ基を持ち、ポリジメチルシロキサン以外であって、次の(ア)〜(ウ)から選ばれる一種以上のポリマーと、(B)該ポリマーと反応してシロキサン結合を形成する架橋剤と、を含んだゴム組成物を架橋してなることを特徴とする誘電膜。
(ア)ポリメチレン形の飽和された主鎖を持つゴム。
(イ)ポリマーの主鎖に酸素を持つゴム。
(ウ)ジオレフィン誘導体で不飽和の炭素鎖を持つゴム。 - 前記(B)の架橋剤は、付加反応により前記シロキサン結合を形成するヒドロシリル基を持つ化合物、または、加水分解反応により該シロキサン結合を形成するシラノール基、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基のうちの一つ以上を持つ化合物、を含む請求項1に記載の誘電膜。
- 前記ヒドロシリル基を持つ化合物は、さらにフェニル基、アリール基、アルキル基のうちの一つ以上を持つ請求項2に記載の誘電膜。
- (A)アルケニル基またはヒドロキシ基を持ち、ポリジメチルシロキサン以外であって、次の(ア)〜(ウ)から選ばれる一種以上のポリマーと、(B)該ポリマーと反応してシロキサン結合を形成する架橋剤と、を含んだゴム組成物を架橋してなる誘電膜と、
該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、を備え、
該電極間への印加電圧に応じて該誘電膜が伸縮するアクチュエータ。
(ア)ポリメチレン形の飽和された主鎖を持つゴム。
(イ)ポリマーの主鎖に酸素を持つゴム。
(ウ)ジオレフィン誘導体で不飽和の炭素鎖を持つゴム。 - 前記誘電膜は、予め延伸された状態で配置されている請求項4に記載のアクチュエータ。
- (A)アルケニル基またはヒドロキシ基を持ち、ポリジメチルシロキサン以外であって、次の(ア)〜(ウ)から選ばれる一種以上のポリマーと、(B)該ポリマーと反応してシロキサン結合を形成する架橋剤と、を含んだゴム組成物を架橋してなる誘電膜と、
該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、を備え、
該電極間の静電容量変化に基づいて変形を検出するセンサ。
(ア)ポリメチレン形の飽和された主鎖を持つゴム。
(イ)ポリマーの主鎖に酸素を持つゴム。
(ウ)ジオレフィン誘導体で不飽和の炭素鎖を持つゴム。 - (A)アルケニル基またはヒドロキシ基を持ち、ポリジメチルシロキサン以外であって、次の(ア)〜(ウ)から選ばれる一種以上のポリマーと、(B)該ポリマーと反応してシロキサン結合を形成する架橋剤と、を含んだゴム組成物を架橋してなる誘電膜と、
該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、
を備えるトランスデューサ。
(ア)ポリメチレン形の飽和された主鎖を持つゴム。
(イ)ポリマーの主鎖に酸素を持つゴム。
(ウ)ジオレフィン誘導体で不飽和の炭素鎖を持つゴム。
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