JP5662754B2 - 誘電材料、その製造方法、それを用いたトランスデューサ - Google Patents

誘電材料、その製造方法、それを用いたトランスデューサ Download PDF

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本発明は、アクチュエータ、センサ等のトランスデューサに好適な誘電材料、その製造方法、およびそれを用いたトランスデューサに関する。
トランスデューサには、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ、発電素子等、あるいは音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカ、マイクロフォン等がある。柔軟性が高く、小型で軽量なトランスデューサを構成するためには、誘電体エラストマー等の高分子材料が有用である。
例えば、誘電体エラストマーからなる誘電膜の厚さ方向両面に、一対の電極を配置して、アクチュエータを構成することができる。この種のアクチュエータでは、電極間への印加電圧を大きくすると、電極間の静電引力が大きくなる。このため、電極間に挟まれた誘電膜は厚さ方向から圧縮され、誘電膜の厚さは薄くなる。膜厚が薄くなると、その分、誘電膜は電極面に対して平行方向に伸長する。一方、電極間への印加電圧を小さくすると、電極間の静電引力が小さくなる。このため、誘電膜に対する厚さ方向からの圧縮力が小さくなり、誘電膜の弾性復元力により膜厚は厚くなる。膜厚が厚くなると、その分、誘電膜は電極面に対して平行方向に収縮する。このように、アクチュエータは、誘電膜を伸長、収縮させることによって、駆動対象部材を駆動させる。
アクチュエータの力および変位量を大きくするためには、誘電膜の比誘電率が大きいことが望ましい。また、大きな電圧を印加できるように、誘電膜の耐絶縁破壊性が高いことが望ましい。例えば、誘電膜の材料としては、ニトリルゴム、アクリルゴム等のエラストマーが用いられる。これらエラストマーの架橋には、通常、硫黄や加硫促進剤等が用いられる(例えば、特許文献1、2参照)。
特表2003−506858号公報 特開2009−124839号公報 特開2009−296703号公報 特開2006−143789号公報 特開2001−59013号公報
例えば、硫黄架橋の場合、架橋後のエラストマー中に、未反応の硫黄や加硫促進剤等、および硫黄や加硫促進剤等の分解物(反応残渣)が残存することが多い。これらの反応残渣は、エラストマー中の不純物であり、誘電膜の耐絶縁破壊性を低下させる一因となる。すなわち、不純物がイオン化して、誘電膜中を移動することにより、誘電膜の電気抵抗が小さくなる。これにより、電圧を印加した時に、電流が誘電膜中を流れやすくなる(いわゆる漏れ電流が大きくなる)。電流が誘電膜中を流れると、ジュール熱が発生する。発生した熱により、誘電膜の物性が変化するおそれがある。さらには、誘電膜が破壊されやすくなる。つまり、誘電膜の耐絶縁破壊性が低下する。誘電膜の耐絶縁破壊性が低下すると、例えばアクチュエータにおいて、大きな電圧を印加することができない。よって、充分な力および変位量を得ることができない。
この点、本出願人は、誘電膜の材料として、ポリジメチルシロキサン以外のゴムポリマーと、金属アルコキシド化合物と、から合成された三次元架橋体を提案している(特許文献3参照)。三次元架橋体の合成には、硫黄を用いない。すなわち、三次元架橋体は、未架橋のゴムポリマーが金属アルコキシド化合物により架橋されて生成される。あるいは、金属アルコキシド化合物の架橋体中に、未架橋あるいは架橋後のゴムポリマーが侵入して生成される。したがって、三次元架橋体からなる誘電膜においては、上述した反応残渣による電気抵抗低下のおそれは小さい。しかしながら、トランスデューサの性能向上のためには、誘電膜について、さらなる絶縁破壊強度の向上が求められる。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、耐絶縁破壊性に優れた誘電材料、およびその製造方法を提供することを課題とする。また、耐絶縁破壊性が高く、耐久性に優れたトランスデューサを提供することを課題とする。
(1)上記課題を解決するため、本発明の誘電材料は、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂と、有機金属化合物と、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂のエポキシ基と反応可能な官能基を有するゴムポリマーと、から合成され、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂中のアルコキシシランのゾルゲル反応により生成したシリカがポリマーネットワーク中に分散されていることを特徴とする。
アルコキシシラン変性エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の水酸基の一部または全部が、アルコキシシランにより変性された樹脂である。アルコキシシラン変性エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、加水分解性アルコキシシランと、を脱アルコール縮合反応させて製造される。
本発明の誘電材料を合成する際、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂中のアルコキシシランのゾルゲル反応により、シリカが生成される。また、エポキシ基は、ゴムポリマーの官能基と反応する。これにより、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂とゴムポリマーとが結合する。したがって、本発明の誘電材料は、ゴムポリマーと有機金属化合物とから形成された架橋構造(ポリマーネットワーク)中に、エポキシ樹脂およびシリカが組み込まれた構造を有する。ポリマーネットワーク中に、エポキシ樹脂およびシリカが組み込まれることにより、分子鎖の運動性が拘束され、電子が移動しにくくなると考えられる。これにより、電気抵抗が増加して絶縁破壊強度が向上する。また、本発明の誘電材料の合成には、架橋剤として有機金属化合物を用いる。このため、ポリマーネットワーク中に有機金属化合物由来の金属酸化物も分散される。よって、誘電材料の弾性率は大きくなる。弾性率の増加に伴い、分子鎖の運動性は低下する。このため、上記同様、電気抵抗が増加して絶縁破壊強度が向上する。
したがって、本発明の誘電材料を、トランスデューサの誘電膜として用いた場合には、電圧印加時に、電流が誘電膜中を流れにくい(いわゆる漏れ電流が小さい)。電流が誘電膜中を流れにくいため、ジュール熱の発生は抑制される。よって、熱により、誘電膜の物性が変化したり、誘電膜が破壊されるおそれは小さい。つまり、本発明の誘電材料からなる誘電膜は、耐絶縁破壊性が高く、耐久性に優れる。また、当該誘電膜には、より大きな電圧を印加することができる。よって、例えば、本発明の誘電材料からなる誘電膜を用いてアクチュエータを構成すると、より大きな力および変位量を得ることができる。
(2)本発明の第一の誘電材料の製造方法は、上記本発明の誘電材料の製造方法であって、前記ゴムポリマーが溶解可能であり、かつ、前記有機金属化合物をキレート化できる溶剤中に、該ゴムポリマーと、該有機金属化合物と、前記アルコキシシラン変性エポキシ樹脂と、が含有されている第一混合液を調製する第一混合液調製工程と、該第一混合液を加熱して、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂中のアルコキシシランのゾルゲル反応によりシリカを生成させるシリカ生成工程と、さらに該第一混合液を加熱して、該溶剤を除去すると共に、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂と該有機金属化合物と該ゴムポリマーとの架橋反応を進行させる架橋工程と、を有することを特徴とする。
有機金属化合物は、空気中や、反応系(ゴムポリマー、溶液)中の水分と反応し、加水分解して重縮合する(ゾルゲル反応)。したがって、水との急激な反応を抑制するためには、有機金属化合物をキレート剤によりキレート化して用いることが望ましい。なかでも、金属アルコキシド化合物の反応性は高い。このため、金属アルコキシド化合物については、キレート化して用いることが望ましい。
この点、本発明の第一の製造方法によると、第一混合液の溶媒として、ゴムポリマーが溶解可能であり、かつ、有機金属化合物をキレート化できる溶剤を使用する。したがって、有機金属化合物の反応速度を遅くすることができる。このため、誘電材料を均質な膜状に形成しやすい。また、溶剤は、ゴムポリマーを溶解させる溶媒としての役割と、キレート剤としての役割と、の両方を果たす。このため、ゴムポリマーを溶解させる溶媒とキレート剤とを別々に準備する必要がない。よって、実用的である。
また、本発明の第一の製造方法によると、シリカ生成工程において、加熱によりアルコキシシラン変性エポキシ樹脂におけるゾルゲル反応を進行させて、シリカを生成させる。続いて、架橋工程において、加熱により溶剤(キレート剤)を除去することにより、架橋反応を進行させる。二段階の加熱により、シリカの生成と架橋反応とを、各々進行させることができる。このように、本発明の第一の製造方法によると、上記本発明の誘電材料を容易に製造することができる。
(3)本発明の第二の誘電材料の製造方法は、上記本発明の誘電材料の製造方法であって、前記アルコキシシラン変性エポキシ樹脂を含む樹脂溶液を加熱して、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂中のアルコキシシランのゾルゲル反応により、予めシリカを生成させるシリカ予備生成工程と、前記ゴムポリマーが溶解可能であり、かつ、前記有機金属化合物をキレート化できる溶剤中に、該ゴムポリマーと該有機金属化合物とが含有されているゴム/有機金属化合物混合液に、前記シリカを生成させた後の前記樹脂溶液を混合して、第二混合液を調製する第二混合液調製工程と、該第二混合液を加熱して、該溶剤を除去すると共に、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂と該有機金属化合物と該ゴムポリマーとの架橋反応を進行させる架橋工程と、を有することを特徴とする。
本発明の第二の製造方法によると、シリカ予備生成工程において、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂中に予めシリカを生成させておく。こうすることにより、得られる誘電材料におけるシリカの分散性を、向上させることができる。その結果、誘電材料の絶縁破壊強度を、より向上させることができる。
(4)本発明のトランスデューサは、上記本発明の誘電材料からなる誘電膜と、該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、を備えることを特徴とする。
トランスデューサは、ある種類のエネルギーを他の種類のエネルギーに変換する装置である。トランスデューサには、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ、発電素子等、あるいは音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカ、マイクロフォン等が含まれる。
本発明のトランスデューサは、上記本発明の誘電材料からなる誘電膜を備える。このため、電圧印加時に、電流が誘電膜中を流れにくい。つまり、熱により、誘電膜の物性が変化したり、誘電膜が破壊されるおそれは小さい。したがって、本発明のトランスデューサは、耐久性に優れる。また、本発明のトランスデューサをアクチュエータとして用いた場合には、誘電膜に大きな電圧を印加することができる。よって、印加電圧を大きくすることにより、より大きな力を発生させることができる。
本発明のトランスデューサの一実施形態であるアクチュエータの断面模式図であって、(a)は電圧オフ状態、(b)は電圧オン状態を示す。 本発明のトランスデューサの一実施形態である発電素子の断面模式図であって、(a)は伸長時、(b)は収縮時を示す。 本発明のトランスデューサの一実施形態であるスピーカの斜視図である。 図3のIV−IV断面図である。 測定装置に取り付けられたアクチュエータの表側正面図である。 図5のVI−VI断面図である。
以下、本発明の誘電材料、その製造方法、およびトランスデューサの各実施形態について説明する。なお、本発明の誘電材料、その製造方法、およびトランスデューサは、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
<誘電材料>
本発明の誘電材料は、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂と、有機金属化合物と、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂のエポキシ基と反応可能な官能基を有するゴムポリマーと、から合成される。
アルコキシシラン変性エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、加水分解性アルコキシシランと、を脱アルコール縮合反応させたものを使用すればよい。例えば次式(1)で示されるものが好適である。式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ基を示す。m、nは、各々1以上の整数を示す。例えば、Rがアルコキシ基の場合には、加水分解が速やかに進行するため、シリカの生成速度が大きい。
Figure 0005662754
有機金属化合物の種類は、特に限定されるものではない。有機金属化合物としては、金属アルコキシド化合物、金属アシレート化合物、および金属キレート化合物が挙げられる。これらから選ばれる一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。有機金属化合物は、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ホウ素、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ゲルマニウム、イットリウム、ニオブ、ランタン、セリウム、タンタル、タングステン、およびマグネシウムから選ばれる一種以上の元素を含むことが望ましい。
金属アルコキシド化合物としては、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシシラン、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラエトキシシラン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタンブトキシドダイマー等が挙げられる。また、金属アシレート化合物としては、ポリヒドロキシチタンステアレート、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート等が挙げられる。また、金属キレート化合物としては、チタン−ジイソプロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)、チタン−テトラアセチルアセトネート、チタン−ジオクチロキシ−ビス(オクチレングリコレート)、チタン−ジイソプロポキシ−ビス(エチルアセトアセテート)、チタン−ジイソプロポキシ−ビス(トリエタノールアミネート)、チタン−ジブトキシ−ビス(トリエタノールアミネート)等のチタンキレート化合物、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネート−ビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシ−ビス(エチルアセトアセテート)等のジルコニウムキレート化合物等が挙げられる。
ゴムポリマーとしては、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂のエポキシ基と反応可能な官能基を有するものを用いる。エポキシ基と反応可能な官能基としては、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH、−NHR、−NRR’(R、R’は炭化水素基))等が挙げられる。ゴムポリマーには、これらの官能基の一つ以上があればよい。また、ゴムポリマーとしては、一種を単独で、あるいは二種以上を混合して用いることができる。
より小さな印加電圧で大きな変位量を得るという観点では、極性が大きい、つまり比誘電率が大きいゴムポリマーが望ましい。例えば、比誘電率が4以上(測定周波数100Hz)のゴムポリマーが好適である。比誘電率が大きいゴムポリマーとしては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、アクリルゴム(ACM)等が挙げられる。従って、例えばカルボキシル基変性水素化ニトリルゴム、カルボキシル基変性アクリルゴム、カルボキシル基変性ニトリルゴム等のように、これらのゴムポリマーを、官能基を導入するなどして変性すればよい。
<誘電材料の製造方法>
[第一の製造方法]
本発明の第一の誘電材料の製造方法は、第一混合液調製工程と、シリカ生成工程と、架橋工程と、を有する。以下、各工程について説明する。
(1)第一混合液調製工程
本工程は、ゴムポリマーが溶解可能であり、かつ、有機金属化合物をキレート化できる溶剤中に、該ゴムポリマーと、該有機金属化合物と、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂と、が含有されている第一混合液を調製する工程である。
第一混合液の調製は、例えば、混練りしたゴムポリマーを溶剤に溶解したゴムポリマー溶液に、有機金属化合物およびアルコキシシラン変性エポキシ樹脂を、各々、そのままあるいは溶剤に配合した状態で、混合すればよい。なお、ゴムポリマーの混練り時、あるいは第一混合液の調製時において、必要に応じて補強剤、可塑剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤を添加してもよい。
ゴムポリマー、有機金属化合物、およびアルコキシシラン変性エポキシ樹脂の種類については、上記本発明の誘電材料の実施形態において、説明した通りである。また、有機金属化合物のキレート剤としては、例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等のβ−ジケトン、アセト酢酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル等のβ−ケト酸エステル、トリエタノールアミン、乳酸、2-エチルヘキサンー1,3ジオール、1,3へキサンジオール等が挙げられる。溶剤は、ゴムポリマーが溶解可能であれば、すべてがキレート剤であっても、キレート剤とそれ以外の溶剤との混合物であってもよい。
有機金属化合物の配合割合は、ゴムポリマー100質量部に対して、0.5質量部以上40質量部以下であることが望ましい。0.5質量部未満であると、架橋が充分に進行しないおそれがある。1.5質量部以上が好適である。反対に、40質量部を超えると、架橋が進行し過ぎて誘電材料が硬くなり、誘電膜として必要な柔軟性が損なわれるおそれがある。30質量部以下が好適である。
アルコキシシラン変性エポキシ樹脂の配合割合は、ゴムポリマー100質量部に対して、5質量部以上60質量部以下であることが望ましい。5質量部未満であると、生成するシリカ量が少なく、絶縁破壊強度の向上効果が小さい。反対に、60質量部を超えると、シリカ量が多いため、誘電材料が硬くなり、誘電膜として必要な柔軟性が損なわれるおそれがある。
(2)シリカ生成工程
本工程は、先の工程で調製した第一混合液を加熱して、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂中のアルコキシシランのゾルゲル反応によりシリカを生成させる工程である。
例えば、第一混合液を基材上に塗布し、形成された塗膜を加熱すればよい。加熱温度は、ゾルゲル反応が進行しやすいように、100℃程度とすればよい。第一混合液を基材上に塗布する方法としては、既に公知の方法を採用すればよい。例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、リソグラフィー等の印刷法の他、ディップ法、スプレー法、バーコート法等が挙げられる。
(3)架橋工程
本工程は、シリカを生成させた後の第一混合液を加熱して、溶剤を除去すると共に、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂と有機金属化合物とゴムポリマーとの架橋反応を進行させる工程である。
シリカを生成させた後の第一混合液(先の工程において、第一混合液を基材上に塗布した場合には、形成された塗膜の態様を含む)の加熱温度は、溶剤の種類に応じて適宜決定すればよい。例えば、反応速度等を考慮して、溶剤の沸点以上とすることが望ましい。
[第二の製造方法]
本発明の第二の誘電材料の製造方法は、シリカ予備生成工程と、第二混合液調製工程と、架橋工程と、を有する。以下、各工程について説明する。
(1)シリカ予備生成工程
本工程は、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂を含む樹脂溶液を加熱して、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂中のアルコキシシランのゾルゲル反応により、予めシリカを生成させる工程である。
アルコキシシラン変性エポキシ樹脂の種類については、上記本発明の誘電材料の実施形態において、説明した通りである。アルコキシシラン変性エポキシ樹脂を含む樹脂溶液としては、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂をメチルエチルケトン(MEK)等の溶媒に溶解させた溶液、あるいは、当該溶液を次の工程で使用する溶剤に混合した混合溶液等を用いればよい。樹脂溶液の加熱温度は、ゾルゲル反応が進行しやすいように、100℃程度とすればよい。
(2)第二混合液調製工程
本工程は、ゴムポリマーが溶解可能であり、かつ、有機金属化合物をキレート化できる溶剤中に、該ゴムポリマーと該有機金属化合物とが含有されているゴム/有機金属化合物混合液に、先の工程でシリカを生成させた後の樹脂溶液を混合して、第二混合液を調製する工程である。
ゴム/有機金属化合物混合液の調製は、例えば、混練りしたゴムポリマーを溶剤に溶解したゴムポリマー溶液に、有機金属化合物をそのまま、あるいは溶剤に配合した状態で、混合すればよい。なお、ゴムポリマー溶液や、ゴム/有機金属化合物混合液の調製時等において、必要に応じて補強剤、可塑剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤を添加してもよい。
ゴム/有機金属化合物混合液を構成するゴムポリマー、有機金属化合物、溶剤については、上記本発明の第一の製造方法と同じでよい。また、樹脂溶液は、ゴムポリマー100質量部に対するアルコキシシラン変性エポキシ樹脂の配合量が、5質量部以上60質量部以下となるように、ゴム/有機金属化合物混合液に混合すればよい。
(3)架橋工程
本工程は、先の工程で調製された第二混合液を加熱して、溶剤を除去すると共に、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂と有機金属化合物とゴムポリマーとの架橋反応を進行させる工程である。
例えば、第二混合液を基材上に塗布し、形成された塗膜を加熱すればよい。加熱温度は、上記本発明の第一製造方法と同様に、溶剤の種類に応じて適宜決定すればよい。例えば、反応速度等を考慮して、溶剤の沸点以上とすることが望ましい。
<トランスデューサ>
本発明のトランスデューサは、本発明の誘電材料からなる誘電膜と、該誘電膜を介して配置される複数の電極と、を備える。本発明の誘電材料の構成、および製造方法については、上述した通りである。よって、ここでは説明を割愛する。なお、本発明のトランスデューサにおいても、本発明の誘電材料の好適な態様を採用することが望ましい。
本発明のトランスデューサにおいて、電極の材質は、特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラック等の炭素材料や金属粉からなる導電剤に、バインダーとしてオイルやエラストマーを混合して製造されるペーストまたは塗料を塗布した電極を使用することができる。あるいは、炭素材料や金属等をメッシュ状に編んだ電極を使用することができる。電極は、誘電膜の伸縮に応じて伸縮可能であることが望ましい。電極が、誘電膜と共に伸縮すると、誘電膜の変形が電極によって妨げられにくい。このため、本発明のトランスデューサを、例えばアクチュエータとして使用した場合に、所望の力、変位量を得やすくなる。
以下、本発明のトランスデューサの例として、アクチュエータ、発電素子、およびスピーカの実施形態を説明する。
[第一実施形態]
本発明のトランスデューサの第一例として、アクチュエータの実施形態を説明する。図1に、本実施形態のアクチュエータの断面模式図を示す。(a)は電圧オフ状態、(b)は電圧オン状態を各々示す。
図1に示すように、アクチュエータ1は、誘電膜10と、電極11a、11bと、配線12a、12bと、を備えている。誘電膜10は、本発明の誘電材料からなる。電極11aは、誘電膜10の上面の略全体を覆うように、配置されている。同様に、電極11bは、誘電膜10の下面の略全体を覆うように、配置されている。電極11a、11bは、各々、配線12a、12bを介して電源13に接続されている。
オフ状態からオン状態に切り替える際は、一対の電極11a、11b間に電圧を印加する。電圧の印加により、誘電膜10の厚さは薄くなり、その分だけ、図1(b)中白抜き矢印で示すように、電極11a、11b面に対して平行方向に伸長する。これにより、アクチュエータ1は、図中上下方向および左右方向の駆動力を出力する。
本実施形態によると、誘電膜10は、ポリマーネットワーク中に、エポキシ樹脂およびシリカが組み込まれた構造を有する。また、ポリマーネットワーク中には、有機金属化合物由来の金属酸化物も分散されている。このため、分子鎖の運動性が拘束されて、電子が移動しにくい。よって、誘電膜10の電気抵抗は大きくなる。つまり、電圧印加時に、誘電膜10中を電流が流れにくい。このため、ジュール熱により、誘電膜10の物性が変化したり、誘電膜10が破壊されるおそれは小さい。したがって、誘電膜10は、耐絶縁破壊性および耐久性に優れる。
以上より、アクチュエータ1は、高い耐絶縁破壊性を有し、耐久性に優れる。また、アクチュエータ1によると、より大きな電圧を印加することができる。その結果、より大きな力を発生させることができる。
[第二実施形態]
本発明のトランスデューサの第二例として、発電素子の実施形態を説明する。図2に、本実施形態における発電素子の断面模式図を示す。(a)は伸長時、(b)は収縮時を各々示す。
図2に示すように、発電素子3は、誘電膜30と、電極31a、31bと、配線32a〜32cと、を備えている。誘電膜30は、本発明の誘電材料からなる。電極31aは、誘電膜30の上面の略全体を覆うように、配置されている。同様に、電極31bは、誘電膜30の下面の略全体を覆うように、配置されている。電極31aには、配線32a、32bが接続されている。すなわち、電極31aは、配線32aを介して、外部負荷(図略)に接続されている。また、電極31aは、配線32bを介して、電源(図略)に接続されている。電極31bは、配線32cにより接地されている。
図2(a)中白抜き矢印で示すように、発電素子3を圧縮し、誘電膜30を電極31a、31b面に対して平行方向に伸長すると、誘電膜30の膜厚は薄くなり、電極31a、31b間に電荷が蓄えられる。その後、圧縮力を除去すると、図2(b)に示すように、誘電膜30の弾性復元力により誘電膜30は収縮し、膜厚が厚くなる。その際、蓄えられた電荷が配線32aを通して放出される。
本実施形態によると、誘電膜30は、ポリマーネットワーク中に、エポキシ樹脂およびシリカが組み込まれた構造を有する。また、ポリマーネットワーク中には、有機金属化合物由来の金属酸化物も分散されている。このため、分子鎖の運動性が拘束されて、電子が移動しにくい。よって、誘電膜30中を電流が流れにくい。したがって、圧縮量が大きい場合でも、誘電膜30の内部に、多くの電荷を蓄えることができる。すなわち、発電素子3によると、大きな発電量を得ることができる。また、誘電膜30中に電流が流れにくいため、ジュール熱の発生が抑制される。よって、熱により、誘電膜30の物性が変化したり、誘電膜30が破壊されるおそれは小さい。つまり、誘電膜30は、耐絶縁破壊性および耐久性に優れる。以上より、発電素子3は、高い耐絶縁破壊性を有し、耐久性に優れる。
[第三実施形態]
本発明のトランスデューサの第三例として、スピーカの実施形態を説明する。まず、本実施形態のスピーカの構成について説明する。図3に、本実施形態のスピーカの斜視図を示す。図4に、図3のIV−IV断面図を示す。図3、図4に示すように、スピーカ4は、第一アウタフレーム40aと、第一インナフレーム41aと、第一誘電膜42aと、第一アウタ電極43aと、第一インナ電極44aと、第一振動板45aと、第二アウタフレーム40bと、第二インナフレーム41bと、第二誘電膜42bと、第二アウタ電極43bと、第二インナ電極44bと、第二振動板45bと、八つのボルト460と、八つのナット461と、八つのスペーサ462と、を備えている。
第一アウタフレーム40a、第一インナフレーム41aは、各々、樹脂製であって、リング状を呈している。第一誘電膜42aは、円形の薄膜状を呈している。第一誘電膜42aは、本発明の誘電材料からなる。第一誘電膜42aは、第一アウタフレーム40aと第一インナフレーム41aとの間に張設されている。すなわち、第一誘電膜42aは、表側の第一アウタフレーム40aと裏側の第一インナフレーム41aとにより、所定の張力を確保した状態で、挟持、固定されている。
第一振動板45aは、樹脂製であって、円板状を呈している。第一振動板45aは、第一誘電膜42aよりも小径である。第一振動板45aは、第一誘電膜42aの表面の略中央に配置されている。第一アウタ電極43aは、リング状を呈している。第一アウタ電極43aは、第一誘電膜42aの表面に貼着されている。第一インナ電極44aも、リング状を呈している。第一インナ電極44aは、第一誘電膜42aの裏面に貼着されている。第一アウタ電極43aと第一インナ電極44aとは、第一誘電膜42aを挟んで、表裏方向に背向している。図4に示すように、第一アウタ電極43aは、端子430aを備えている。第一インナ電極44aは、端子440aを備えている。端子430a、440aには、外部から電圧が印加される。
第二アウタフレーム40b、第二インナフレーム41b、第二誘電膜42b、第二アウタ電極43b、第二インナ電極44b、第二振動板45b(以下、「第二部材」と総称する。)の構成、材質、形状は、上記第一アウタフレーム40a、第一インナフレーム41a、第一誘電膜42a、第一アウタ電極43a、第一インナ電極44a、第一振動板45a(以下、「第一部材」と総称する。)の構成、材質、形状と、同様である。また、第二部材の配置は、上記第一部材の配置と、表裏方向に対称である。簡単に説明すると、第二誘電膜42bは、第二アウタフレーム40bと第二インナフレーム41bとの間に張設されている。第二誘電膜42bは、本発明の誘電材料からなる。第二振動板45bは、第二誘電膜42bの表面の略中央に配置されている。第二アウタ電極43bは、第二誘電膜42bの表面に印刷されている。第二インナ電極44bは、第二誘電膜42bの裏面に印刷されている。第二アウタ電極43bの端子430b、第二インナ電極44bの端子440bには、外部から電圧が印加される。
第一部材と第二部材とは、八つのボルト460、八つのナット461により、八つのスペーサ462を介して、固定されている。「ボルト460−ナット461−スペーサ462」のセットは、スピーカ4の周方向に所定間隔ずつ離間して配置されている。ボルト460は、第一アウタフレーム40a表面から第二アウタフレーム40b表面までを貫通している。ナット461は、ボルト460の貫通端に螺着されている。スペーサ462は、樹脂製であって、ボルト460の軸部に環装されている。スペーサ462は、第一インナフレーム41aと第二インナフレーム41bとの間に、所定の間隔を確保している。第一誘電膜42aの中央部裏面(第一振動板45aが配置されている部分の裏側)と、第二誘電膜42bの中央部裏面(第二振動板45bが配置されている部分の裏側)と、は接合されている。このため、第一誘電膜42aには、図4に白抜き矢印Y1aで示す方向に、付勢力が蓄積されている。また、第二誘電膜42bには、図4に白抜き矢印Y1bで示す方向に、付勢力が蓄積されている。
次に、本実施形態のスピーカの動きについて説明する。端子430a、440aと端子430b、440bとを介して、第一アウタ電極43aおよび第一インナ電極44aと、第二アウタ電極43bおよび第二インナ電極44bと、には、初期状態(オフセット状態)において、所定の電圧(オフセット電圧)が印加されている。スピーカ4の動作時には、端子430a、440aと端子430b、440bとに、逆位相の電圧が印加される。 例えば、端子430a、440aに、オフセット電圧+1Vが印加されると、第一誘電膜42aのうち、第一アウタ電極43aと第一インナ電極44aとの間に配置されている部分の膜厚が薄くなる。並びに、当該部分が径方向に伸長する。これと同時に、端子430b、440bに逆位相の電圧(オフセット電圧−1V)が印加される。すると、第二誘電膜42bのうち、第二アウタ電極43bと第二インナ電極44bとの間に配置されている部分の膜厚が厚くなる。並びに当該部分が径方向に収縮する。これにより、第二誘電膜42bは、第一誘電膜42aを引っ張りながら、図4に白抜き矢印Y1bで示す方向に、自身の付勢力により弾性変形する。反対に、端子430b、440bにオフセット電圧+1Vが印加され、端子430a、440aに逆位相の電圧(オフセット電圧−1V)が印加されると、第一誘電膜42aは、第二誘電膜42bを引っ張りながら、図4に白抜き矢印Y1aで示す方向に、自身の付勢力により弾性変形する。このようにして、第一振動板45a、第二振動板45bを振動させることにより空気を振動させ、音声を発生させる。
次に、本実施形態のスピーカ4の作用効果について説明する。本実施形態によると、第一誘電膜42aおよび第二誘電膜42bは、
ポリマーネットワーク中に、エポキシ樹脂およびシリカが組み込まれた構造を有する。また、ポリマーネットワーク中には、有機金属化合物由来の金属酸化物も分散されている。このため、分子鎖の運動性が拘束されて、電子が移動しにくい。よって、電圧印加時に、電流が第一誘電膜42aおよび第二誘電膜42b中を流れにくい。よって、電流が流れにくいため、ジュール熱の発生が抑制される。したがって、熱により、第一誘電膜42aおよび第二誘電膜42bの物性が変化したり、第一誘電膜42aおよび第二誘電膜42bが破壊されるおそれは小さい。つまり、第一誘電膜42aおよび第二誘電膜42bは、耐絶縁破壊性および耐久性に優れる。以上より、スピーカ4は、高い耐絶縁破壊性を有し、耐久性に優れる。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
<誘電材料の製造>
[実施例1〜4の誘電材料]
下記の表1に示す原料から、実施例1〜4の誘電材料を製造した。まず、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム(ランクセス社製「テルバン(登録商標)XT8889」)をロール練り機にて混練りした後、アセチルアセトンに溶解した。次に、このゴムポリマー溶液に、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン(TOT)をアセチルアセトンに混合したTOT溶液と、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂のメチルエチルケトン(MEK)溶液(荒川化学工業(株)製「コンポセラン(登録商標)E103D」、MEK含有量51.5質量%)と、を混合して、第一混合液を調製した。ここで、アセチルアセトンは、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム(ゴムポリマー)を溶解させる溶媒であると共に、TOT(有機金属化合物)のキレート剤である。続いて、第一混合液をバーコート法により基材上に塗布し、風乾した。その後、塗膜を100℃で1時間加熱した。一旦常温に戻した後、さらに、塗膜を150℃で1時間加熱して、硬化させた。このようにして、厚さ40μmの薄膜状の誘電材料を得た。なお、表1中、シリカ換算量は、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂から生成するシリカの量の理論計算値である。具体的には、シリカ換算量を、次式(2)から算出した。
シリカ換算量(質量部)=「コンポセランE103D」配合量×硬化残分(48.5質量%)×硬化残分中のシリカ量(35質量%)・・・(2)
[比較例1の誘電材料]
有機金属化合物を配合しない以外は、実施例1〜4の誘電材料と同様にして、比較例1の誘電材料を製造した。
[比較例2、3の誘電材料]
アルコキシシラン変性エポキシ樹脂を配合しない以外は、実施例1〜4の誘電材料と同様にして、比較例2、3の誘電材料を製造した。なお、比較例2と比較例3との違いは、TOTの配合量のみである。
[比較例4の誘電材料]
誘電材料として、アクリルテープ(住友スリーエム(株)製「Y4905J」)を準備した。
[比較例5の誘電材料]
まず、ゴムポリマーの水素化ニトリルゴム(日本ゼオン(株)製「Nipol(登録商標)DN003」)100質量部と、加硫助剤の酸化亜鉛2種(堺化学工業(株)製)5質量部とを、ロール練り機にて混練りした。続いて、架橋剤の硫黄(鶴見化学工業(株)製「サルファックスT−10」)0.44質量部と、加硫促進剤のテトラエチルチウラムジスルフィド(三新化学工業(株)製「サンセラー(登録商標)TET−G」)2.1質量部、およびN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(同社製「サンセラーCZ−G」)1質量部と、を添加して、ロール練り機にて混練りし、シート状のゴム組成物を製造した。次に、製造したゴム組成物を金型に充填し、150℃で18分間プレス架橋することにより、厚さ200μmの薄膜状の誘電材料を得た。
Figure 0005662754
<誘電材料の弾性率>
実施例および比較例の誘電材料の静的せん断弾性率を、JIS K 6254(2003)に準じて測定した。低変形引張試験における伸び率は25%とした。測定結果を上記表1にまとめて示す。
表1に示すように、実施例1と実施例2、比較例2と比較例3を各々比較すると、有機金属化合物の配合量の増加に伴い、弾性率は大きくなった。また、実施例2〜4を比較すると、有機金属化合物の配合量が同じ場合、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂の配合量の増加に伴い、弾性率は大きくなった。これは、ポリマーネットワーク中の金属酸化物やシリカの分散量が増加したためと考えられる。
<誘電材料の比誘電率>
実施例および比較例の誘電材料の比誘電率を測定した。比誘電率の測定は、各誘電材料を、サンプルホルダー(ソーラトロン社製、12962A型)に設置して、誘電率測定インターフェイス(同社製、1296型)、および周波数応答アナライザー(同社製、1255B型)を併用して行った(周波数100Hz)。比誘電率の測定結果を、上記表1にまとめて示す。
<誘電材料の体積抵抗率>
実施例および比較例の誘電材料の体積抵抗率を、JIS K6271(2008)に準じて測定した。測定は、直流電圧100Vを印加して行った。体積抵抗率の測定結果を、上記表1にまとめて示す。表1に示すように、硫黄架橋を行った比較例1の誘電材料と比較して、実施例1〜4の誘電材料の体積抵抗率は、いずれも大きくなった。また、有機金属化合物の配合量が同じ実施例2〜4を比較すると、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂の配合量の増加に伴い、体積抵抗率は大きくなった。
<アクチュエータの評価>
次に、実施例および比較例の誘電材料を、各々誘電膜としてアクチュエータを構成し、アクチュエータの最大発生応力および絶縁破壊強度を測定した。まず、実験装置および実験方法について説明する。
実施例および比較例の各誘電材料からなる誘電膜(以下、単に「実施例の誘電膜」等と称す。)の表裏両面に、アクリルゴムにカーボンブラックが混合されてなる電極を各々貼着してアクチュエータを作製した。以下、作製したアクチュエータを、誘電膜の種類に対応させて、「実施例のアクチュエータ」等と称す。図5に、実験装置に取り付けられたアクチュエータの正面図を示す。図6に、図5のVI−VI方向断面図を示す。
図5、図6に示すように、アクチュエータ5の上端は、実験装置における上側チャック52により把持されている。アクチュエータ5の下端は、下側チャック53により把持されている。上側チャック52、下側チャック53と、アクチュエータ5とは、各々絶縁されている。アクチュエータ5は、予め上下方向に延伸された状態で、上側チャック52と下側チャック53との間に、取り付けられている(延伸率25%)。上側チャック52の上方には、ロードセル(図略)が配置されている。
アクチュエータ5は、誘電膜50と一対の電極51a、51bとからなる。誘電膜50は、自然状態で、縦50mm、横25mm、厚さ40μmの長方形の薄膜状を呈している。電極51a、51bは、誘電膜50を挟んで表裏方向に対向するよう配置されている。電極51a、51bは、自然状態で、各々、縦40mm、横25mm、厚さ10μmの長方形の薄膜状を呈している。電極51a、51bは、上下方向に10mmずれた状態で配置されている。つまり、電極51a、51bは、誘電膜50を介して、縦30mm、横25mmの範囲で重なっている。電極51aの下端には、配線(図略)が接続されている。同様に、電極51bの上端には、配線(図略)が接続されている。電極51a、51bは、各々の配線を介して、電源(図略)に接続されている。
電極51a、51b間に電圧を印加すると、電極51a、51b間に静電引力が生じて、誘電膜50を圧縮する。これにより、誘電膜50の厚さは薄くなり、延伸方向(上下方向)に伸長する。誘電膜50の伸長により、上下方向の延伸力は減少する。電圧印加前後において減少した延伸力を、ロードセルにより測定して、発生応力とした。発生応力の測定は、印加する電圧を段階的に増加させて、誘電膜50が破壊されるまで行った。そして、誘電膜50が破壊される寸前における発生応力を、最大発生応力とした。また、その時の電圧値を誘電膜50の膜厚で除した値を、絶縁破壊強度とした。上記表1に、実施例および比較例のアクチュエータにおける最大発生応力および絶縁破壊強度の測定結果を、まとめて示す。
表1において、実施例1と比較例2、実施例3と比較例3の比較からわかるように、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂を配合した誘電材料を用いることにより、アクチュエータの絶縁破壊強度、最大発生応力は大きくなった。また、有機金属化合物の配合量が同じ誘電材料を用いた実施例2〜4のアクチュエータを比較すると、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂の配合量の増加に伴い、絶縁破壊強度、最大発生応力は大きくなった。
なお、比較例4、5のアクチュエータにおいては、絶縁破壊強度、最大発生応力のいずれも小さかった。また、有機金属化合物を配合せずに合成した誘電材料を用いた比較例1のアクチュエータにおいては、絶縁破壊強度はやや高いものの、誘電膜の弾性率が小さいため、最大発生応力は小さくなった。
このように、本発明の誘電材料を誘電膜として用いることにより、耐絶縁破壊性が高く、大きな力を出力できるアクチュエータを実現することができた。
本発明の誘電材料は、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ、発電素子等、あるいは音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカ、マイクロフォン、ノイズキャンセラ等のトランスデューサの誘電膜として有用である。なかでも、大きな電圧下で使用されるアクチュエータ、発電素子、スピーカ等に好適である。
1:アクチュエータ(トランスデューサ) 10:誘電膜 11a、11b:電極
12a、12b:配線 13:電源
3:発電素子(トランスデューサ) 30:誘電膜 31a、31b:電極
32a〜32c:配線
4:スピーカ(トランスデューサ)
40a:第一アウタフレーム 40b:第二アウタフレーム
41a:第一インナフレーム 41b:第二インナフレーム
42a:第一誘電膜 42b:第二誘電膜
43a:第一アウタ電極 43b:第二アウタ電極
44a:第一インナ電極 44b:第二インナ電極
45a:第一振動板 45b:第二振動板
430a、430b、440a、440b:端子 460:ボルト 461:ナット
462:スペーサ
5:アクチュエータ 50:誘電膜 51a、51b:電極 52:上側チャック
53:下側チャック

Claims (5)

  1. アルコキシシラン変性エポキシ樹脂と、有機金属化合物と、カルボキシル基、水酸基、およびアミノ基のうちの少なくとも一つの官能基を有するゴムポリマーと、から合成され、
    該有機金属化合物は、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシシラン、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラエトキシシラン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタンブトキシドダイマー、ポリヒドロキシチタンステアレート、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート、チタン−ジイソプロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)、チタン−テトラアセチルアセトネート、チタン−ジオクチロキシ−ビス(オクチレングリコレート)、チタン−ジイソプロポキシ−ビス(エチルアセトアセテート)、チタン−ジイソプロポキシ−ビス(トリエタノールアミネート)、チタン−ジブトキシ−ビス(トリエタノールアミネート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネート−ビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシ−ビス(エチルアセトアセテート)から選ばれる一種以上であり、
    合成時に、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂中のエポキシ基と該ゴムポリマーの該官能基とが反応して、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂と該ゴムポリマーとが結合され、
    該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂中のアルコキシシランのゾルゲル反応により生成したシリカが、該ゴムポリマーと該有機金属化合物とから形成されるポリマーネットワーク中に分散されていることを特徴とする誘電材料。
  2. 前記ゴムポリマーは、カルボキシル基変性水素化ニトリルゴム、カルボキシル基変性アクリルゴム、およびカルボキシル基変性ニトリルゴムから選ばれる一種以上である請求項1に記載の誘電材料。
  3. 請求項1または請求項2に記載の誘電材料の製造方法であって、
    前記ゴムポリマーが溶解可能であり、かつ、前記有機金属化合物をキレート化できる溶剤中に、該ゴムポリマーと、該有機金属化合物と、前記アルコキシシラン変性エポキシ樹脂と、が含有されている第一混合液を調製する第一混合液調製工程と、
    該第一混合液を加熱して、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂中のアルコキシシランのゾルゲル反応によりシリカを生成させるシリカ生成工程と、
    さらに該第一混合液を加熱して、該溶剤を除去すると共に、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂と該有機金属化合物と該ゴムポリマーとの架橋反応を進行させる架橋工程と、
    を有することを特徴とする誘電材料の製造方法。
  4. 請求項1または請求項2に記載の誘電材料の製造方法であって、
    前記アルコキシシラン変性エポキシ樹脂を含む樹脂溶液を加熱して、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂中のアルコキシシランのゾルゲル反応により、予めシリカを生成させるシリカ予備生成工程と、
    前記ゴムポリマーが溶解可能であり、かつ、前記有機金属化合物をキレート化できる溶剤中に、該ゴムポリマーと該有機金属化合物とが含有されているゴム/有機金属化合物混合液に、前記シリカを生成させた後の前記樹脂溶液を混合して、第二混合液を調製する第二混合液調製工程と、
    該第二混合液を加熱して、該溶剤を除去すると共に、該アルコキシシラン変性エポキシ樹脂と該有機金属化合物と該ゴムポリマーとの架橋反応を進行させる架橋工程と、
    を有することを特徴とする誘電材料の製造方法。
  5. 請求項1または請求項2に記載の誘電材料からなる誘電膜と、
    該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、
    を備えることを特徴とするトランスデューサ。
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