JP5559229B2 - トランスデューサ - Google Patents

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Description

本発明は、エラストマー材料を用いた柔軟なトランスデューサに関する。
トランスデューサとしては、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ等、あるいは音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカ、マイクロフォン等が知られている。柔軟性が高く、小型で軽量なトランスデューサを構成するためには、誘電体エラストマー等の高分子材料が有用である。
例えば、誘電体エラストマーからなるシート状の誘電層の厚さ方向両面に、伸縮しても電気抵抗が増加しにくい一対の電極を配置して、柔軟なアクチュエータを構成することができる。この種のアクチュエータでは、電極間への印加電圧を大きくすると、電極間の静電引力が大きくなる。このため、電極間に挟まれた誘電層は厚さ方向から圧縮され、誘電層の厚さは薄くなる。膜厚が薄くなると、その分、誘電層は電極面に対して平行方向に伸長する。一方、電極間への印加電圧を小さくすると、電極間の静電引力が小さくなる。このため、誘電層に対する厚さ方向からの圧縮力が小さくなり、誘電層の弾性復元力により膜厚は厚くなる。膜厚が厚くなると、その分、誘電層は電極面に対して平行方向に収縮する。このように、アクチュエータは、誘電層を伸長、収縮させることによって、駆動対象部材を駆動させる。
アクチュエータから出力される力および変位量は、印加電圧の大きさと、誘電層の比誘電率と、により決定される。すなわち、印加電圧が大きく、かつ誘電層の比誘電率が大きいほど、アクチュエータの発生力および変位量は大きくなる。このため、誘電層の材料としては、耐絶縁破壊性が高いシリコーンゴムや、比誘電率が大きいアクリルゴム、ニトリルゴム等が用いられる(例えば、特許文献1、2参照)。
特表2003−506858号公報 特表2001−524278号公報 特開2011−201104号公報
しかし、シリコーンゴムの比誘電率は小さい。このため、誘電層の材料にシリコーンゴムを用いた場合、印加電圧に対する静電引力が小さく、所望の発生力および変位量を得ることは難しい。また、シリコーンゴムの耐絶縁破壊性は充分とはいえず、印加できる電圧には限界がある。
一方、アクリルゴムやニトリルゴムの比誘電率は、シリコーンゴムの比誘電率よりも大きい。このため、誘電層の材料にアクリルゴム等を用いると、印加電圧に対する静電引力は、シリコーンゴムを用いた場合と比較して大きくなる。しかしながら、アクリルゴム等の電気抵抗は、シリコーンゴムと比較して小さい。このため、誘電層が絶縁破壊しやすい。また、電圧印加時に電流が誘電層中を流れてしまい(いわゆる漏れ電流)、誘電層と電極との界面付近に電荷が溜まりにくい。したがって、比誘電率が大きいにも関わらず、静電引力が小さくなり、所望の発生力および変位量を得ることは難しい。さらに、電流が誘電層中を流れると、発生するジュール熱により、誘電層が破壊されるおそれがある。このように、現状では、高電界強度に耐えられるエラストマーは無い。したがって、誘電層の材料にエラストマーを用いた場合、印加電圧を大きくして、発生力および変位量が大きいアクチュエータを実現することは、難しい。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、エラストマーを含む誘電層を備え、大きな電圧を印加して大きな力を出力可能なトランスデューサを提供することを課題とする。
エラストマーの絶縁破壊強度は、例えば、Mckeown電極を用いて測定することができる。Mckeown電極は、一対のステンレス鋼球電極間に試料を挟み、試料と電極とをエポキシ樹脂で固定して形成される。一方、上述した柔軟なアクチュエータにおいては、誘電層の表裏両面を覆うように、柔軟な電極が配置される。柔軟な電極は、例えば特許文献3に記載されているように、エラストマーに導電材を分散させて形成される。本発明者が検討したところ、アクチュエータを構成した場合、Mckeown電極を用いて測定された絶縁破壊電圧よりも小さい電圧で、誘電層が絶縁破壊することがわかった。この理由については、次のように考えられる。
Mckeown電極を用いた測定方法においては、エラストマー(試料)を挟んで、直径10mmの球状の電極が一つずつ配置される。この場合、電極とエラストマーとは一点で接触する。エラストマーには、電極との接触点間に、導通経路が形成されるに過ぎない。一方、アクチュエータにおいては、エラストマー(誘電層)の表裏両面を覆うように、電極が配置される。電極は、分散された導電材の電子導電により、導電性を発現する。ミクロ的に見ると、エラストマーには、導電材の多数の点から電荷が供給される。したがって、電極と接するエラストマーの界面には、電圧が均一に印加されにくい。また、エラストマーに何らかの欠陥がある場合、欠陥部分に電荷が集中すると、大電流が流れてしまい、誘電層が破壊されやすい。このように、Mckeown電極を用いた測定方法と実際のアクチュエータとでは、電極構成が異なる。このため、アクチュエータを構成した場合、エラストマーの絶縁破壊強度は、Mckeown電極を用いて測定された絶縁破壊強度よりも、小さくなると考えられる。
このような知見に基づいてなされた本発明のトランスデューサは、エラストマーを含み体積抵抗率が1012Ω・cm以上の第一誘電層と、該第一誘電層の表裏両側に配置され、バインダーおよび導電材を含む一対の電極と、該第一誘電層の表裏少なくとも一方において該電極と該第一誘電層との間に介装され、エラストマーを含み該第一誘電層よりも体積抵抗率が2桁以上小さい第二誘電層と、を備えることを特徴とする。
本発明のトランスデューサにおいては、一対の電極間に配置される誘電層が、体積抵抗率が異なる第一誘電層と第二誘電層とから構成される。第二誘電層は、第一誘電層の表裏少なくとも一面に、配置される。すなわち、第二誘電層は、第一誘電層の表面または裏面のどちらか一方に積層されるか、第一誘電層を挟むように第一誘電層の表裏両面に積層される。電極と第一誘電層との間に第二誘電層が介装されることにより、電極から多数の点で供給される電荷は、第二誘電層で均一化された後、第一誘電層へ供給される。よって、第一誘電層に対して、電圧を均一に印加することができる。これにより、第一誘電層は、本来有する耐絶縁破壊性を、発揮しやすくなる。
図1に、本発明のトランスデューサの第一実施形態の断面模式図を示す。図1に示すように、トランスデューサ1は、第一誘電層10と、第二誘電層20と、一対の電極30a、30bと、を備えている。ここで、一対の電極30a、30b間に印加される電圧をV、一対の電極30a、30b間に流れる電流をIとし、第一誘電層10の体積抵抗率をR1、厚さをt1、第一誘電層10に印加される電圧をV1とし、第二誘電層の体積抵抗率をR2、厚さをt2、第二誘電層に印加される電圧をV2とする。この場合、第一誘電層10に印加される電圧V1は、式(1)により算出される。
Figure 0005559229
第二誘電層20の体積抵抗率R2は、第一誘電層10の体積抵抗率R1よりも、2桁以上小さい。つまり、式(1)において、R2/R1が1/100以下になる。例えば、R2/R1が0.01の場合、式(1)から、V1=V/1.01となり、第一誘電層10には、一対の電極30a、30b間に印加される電圧Vのうちの99%が印加されることになる。したがって、第二誘電層20の体積抵抗率R2が、第一誘電層10の体積抵抗率R1よりも、2桁以上小さい場合、一対の電極30a、30b間に印加される電圧Vのうちの99%以上が、第一誘電層10に印加されることになる。
ここでは、第一誘電層の片側のみに第二誘電層が配置される形態を示したが、第一誘電層の両側(表裏両面)に第二誘電層が配置される形態においても、同様に、第一誘電層に印加される電圧は、式(1)により算出される。
本発明のトランスデューサによると、第一誘電層の体積抵抗率は1012Ω・cm以上である。よって、第一誘電層は耐絶縁破壊性に優れる。したがって、電極と第一誘電層との間に第二誘電層を介装し、第一誘電層が本来有する耐絶縁破壊性を生かすことにより、より大きな電圧を印加して、より大きな力を得ることができる。
第一実施形態のトランスデューサの断面模式図である。 第二実施形態のトランスデューサの断面模式図である。 第三実施形態のトランスデューサの電圧印加前の状態における断面模式図である。 同トランスデューサの電圧印加時の状態における断面模式図である。 生成される陽イオン固定粒子の模式図である。 測定装置に取り付けられたアクチュエータの表側正面図である。 図6のVII−VII断面図である。 実施例1〜3および比較例1のアクチュエータにおける、みかけの電界強度と第一誘電層に印加される電界強度との関係を示すグラフである。 実施例1、4、5および比較例2のアクチュエータにおける、みかけの電界強度と発生力との関係を示すグラフである。
以下、本発明のトランスデューサの実施形態について説明する。なお、本発明のトランスデューサは、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。本発明のトランスデューサは、第一誘電層と、第二誘電層と、一対の電極と、を備える。
<第一誘電層>
第一誘電層は、エラストマーを含み、1012Ω・cm以上の体積抵抗率を有する。第一誘電層は、エラストマーのみから構成されていてもよく、エラストマーに加えて他の成分を含んで構成されていてもよい。本明細書において、エラストマーは、架橋ゴムおよび熱可塑性エラストマーを含む。
エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、イソプレンゴム、天然ゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体等が好適である。また、エポキシ化天然ゴム、カルボキシル基変性水素化ニトリルゴム(XH−NBR)等のように、官能基を導入するなどして変性したエラストマーを用いてもよい。エラストマーとしては、一種を単独で、あるいは二種以上を混合して用いることができる。
エラストマーに加えて配合される他の成分としては、絶縁性の高い無機フィラー等が挙げられる。絶縁材料を配合することにより、第一誘電層の体積抵抗率を大きくすることができる。無機フィラーとしては、例えば、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、クレー、焼成クレー、タルク等が挙げられる。これらの一種を単独で、あるいは二種以上を混合して用いればよい。例えば、後述する官能基の数が多く、比較的安価であるという理由から、シリカが好適である。また、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウムについては、有機金属化合物の加水分解反応(ゾルゲル法)により製造したものを用いてもよい。
電子の流れを遮断して、より絶縁性を高くするためには、エラストマーと無機フィラーとが、化学結合されていることが望ましい。こうするためには、エラストマーおよび無機フィラーの両方が、互いに反応可能な官能基を有することが望ましい。官能基としては、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、無水マレイン酸基等が挙げられる。この場合、エラストマーとしては、カルボキシル基変性水素化ニトリルゴム等のように、官能基を導入するなどして変性したものが好適である。また、無機フィラーの場合、製造方法により、あるいは製造後に表面処理を施すことにより、官能基を導入したり、官能基の数を増加させることができる。官能基の数が多いほど、エラストマーと無機フィラーとの反応性が向上する。
無機フィラーの配合割合は、エラストマーの体積抵抗率等を考慮して、決定すればよい。例えば、エラストマーの100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下とすることが望ましい。5質量部未満であると、電気抵抗を大きくする効果が小さい。反対に、50質量部を超えると、第一誘電層が硬くなり、柔軟性が損なわれるおそれがある。
第一誘電層の厚さは、成膜精度を確保して膜の欠陥を低減するという観点から、5μm以上であることが望ましい。一方、第一誘電層の厚さが大きくなると、駆動に大きな電圧が必要になりコスト高になる。このため、第一誘電層の厚さは、50μm以下であることが望ましい。第一誘電層に加わる電界強度は、第一誘電層への印加電圧V1を厚さt1で除して算出される(前出図1参照)。よって、第一誘電層の厚さを小さくする程、電界強度を大きくすることができる。
また、第一誘電層および第二誘電層の全体厚さに対する第一誘電層の厚さ比率は、0.1以上0.75以下であることが望ましい(0.1≦t1/(t1+t2)≦0.75、前出図1参照)。第一誘電層の厚さ比率が0.1未満の場合、第二誘電層の厚さが大きくなるため、トランスデューサの厚さが大きくなる。この場合、印加電圧を大きくする必要があるため、実用上望ましくない。一方、第一誘電層の厚さ比率が0.75を超えると、第一誘電層の厚さを5μm程度に小さくした場合に、それよりも厚さが小さい第二誘電層を形成しにくくなる。
<第二誘電層>
第二誘電層は、第一誘電層の表面または裏面の少なくとも一方に積層される。例えば、上述した第一実施形態のように、一対の電極間に第一誘電層および第二誘電層を一層ずつ積層して、トランスデューサを構成することができる。また、第一誘電層の表裏両面において電荷の供給を均一化するという観点から、第二誘電層は、第一誘電層の表裏両面に配置される形態が望ましい。図2に、本発明のトランスデューサの第二実施形態の断面模式図を示す。図2に示すように、トランスデューサ1は、第一誘電層10と、第二誘電層21、22と、一対の電極30a、30bと、を備えている。第二誘電層21は、第一誘電層10の上面(表面)に積層されている。電極30aは、第二誘電層21の上面に配置されている。つまり、第二誘電層21は、第一誘電層10と電極30aとの間に介装されている。第二誘電層22は、第一誘電層10の下面(裏面)に積層されている。電極30bは、第二誘電層22の下面に配置されている。つまり、第二誘電層22は、第一誘電層10と電極30bとの間に介装されている。
第二誘電層の体積抵抗率は、第一誘電層の体積抵抗率よりも2桁以上小さい。第二誘電層の好適な体積抵抗率は、10Ω・cm以上である。1010Ω・cm以上であるとより好適である。
第二誘電層は、エラストマーを含む。エラストマーは、第一誘電層のエラストマーと同じでも異なっていてもよい。また、第二誘電層が、後述するイオン固定粒子を含む場合には、イオン固定粒子と化学結合可能なエラストマーを用いることが望ましい。例えば、イオン固定粒子が水酸基(−OH)を有する場合、エラストマーとしては、当該水酸基と反応可能な官能基を有するものを用いればよい。このような官能基としては、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH)、エポキシ基等が挙げられる。例えば、比誘電率が大きいという観点から、カルボキシル基変性ニトリルゴム(X−NBR)、カルボキシル基変性水素化ニトリルゴム(XH−NBR)等が好適である。なかでも、アクリロニトリル含有量(結合AN量)が33質量%以上のものが望ましい。結合AN量は、ゴムの全体質量を100質量%とした場合のアクリロニトリルの質量割合である。
トランスデューサから出力される力を、より大きくするという観点から、第二誘電層は、イオン成分を含むことが望ましい。電圧を印加すると、イオン成分の分極により、第二誘電層の内部に多くの電荷が発生する。このため、第二誘電層の内部や、第一誘電層との界面付近に、多くの電荷が蓄えられる。これにより、第一、第二誘電層を圧縮する大きな静電引力が発生し、より大きな出力を得ることができる。
イオン成分は、室温で固体のものでも、液体のもの(イオン性液体)でもよい。特に、イオン性液体が好適である。また、イオン成分の一部は、第二誘電層を構成するポリマーに、固定化されていてもよい。例えば、陽イオンまたは陰イオンが固定化されたポリマーを、エラストマーに混合することができる。また、陽イオンまたは陰イオンが金属酸化物粒子に固定化されたイオン固定粒子を、エラストマーに化学結合させてもよい。以下、後者の態様、すなわち、第二誘電層がイオン固定粒子を含む態様について、説明する。
本態様の第二誘電層は、エラストマーと、金属酸化物粒子に第一イオン成分が固定化されてなるイオン固定粒子と、該第一イオン成分と反対の電荷を持つ第二イオン成分と、を有し、該イオン固定粒子は該エラストマーに化学結合されており、該第一イオン成分の電荷は隣接する電極の極性と同じであることが望ましい。
イオン固定粒子に固定された第一イオン成分の電荷は、隣接する電極の極性と同じである。すなわち、プラス側の電極と第一誘電層との間に配置される第二誘電層においては、第一イオン成分はプラス電荷を有する。つまり、当該第二誘電層は、陽イオンが金属酸化物粒子に固定化されたイオン固定粒子を含む。同様に、マイナス側の電極と第一誘電層との間に配置される第二誘電層においては、第一イオン成分はマイナス電荷を有する。つまり、当該第二誘電層は、陰イオンが金属酸化物粒子に固定化されたイオン固定粒子を含む。以下、模式図を用いて、本態様の第二誘電層を備えるトランスデューサの構成および動作を説明する。
図3に、第三実施形態のトランスデューサの電圧印加前の状態における断面模式図を示す。図4は、同トランスデューサの電圧印加時の状態における断面模式図を示す。但し、図3、図4は、第三実施形態のトランスデューサを模式的に示すものであり、本発明のトランスデューサを何ら限定するものではない。
図3に示すように、トランスデューサ1は、第一誘電層10と、陽イオン固定誘電層23と、陰イオン固定誘電層24と、プラス電極31と、マイナス電極32と、を備えている。陽イオン固定誘電層23は、第一誘電層10の上面に配置されている。プラス電極31は、陽イオン固定誘電層23の上面に配置されている。つまり、陽イオン固定誘電層23は、第一誘電層10とプラス電極31との間に介装されている。陽イオン固定誘電層23は、エラストマー230と、陽イオン固定粒子231と、陰イオン成分232と、を有している。陽イオン固定粒子231は、陽イオン成分が固定化された金属酸化物粒子である。陽イオン固定粒子231は、エラストマー230に化学結合されている。
同様に、陰イオン固定誘電層24は、第一誘電層10の下面に配置されている。マイナス電極32は、陰イオン固定誘電層24の下面に配置されている。つまり、陰イオン固定誘電層24は、第一誘電層10とマイナス電極32との間に介装されている。陰イオン固定誘電層24は、エラストマー240と、陰イオン固定粒子241と、陽イオン成分242と、を有している。陰イオン固定粒子241は、陰イオン成分が固定化された金属酸化物粒子である。陰イオン固定粒子241は、エラストマー240に化学結合されている。陽イオン固定誘電層23および陰イオン固定誘電層24の体積抵抗率は、第一誘電層10の体積抵抗率よりも、2桁以上小さい。陽イオン固定誘電層23および陰イオン固定誘電層24は、本発明の第二誘電層に含まれる。
図4に示すように、プラス電極31とマイナス電極32との間に電圧が印加されると、陽イオン固定誘電層23においては、陰イオン成分232がプラス電極31側へ移動する。一方、陽イオン固定粒子231は、エラストマー230と結合されている。このため、陽イオン成分は、ほとんど移動しない。同様に、陰イオン固定誘電層24においては、陽イオン成分242がマイナス電極32側へ移動する。一方、陰イオン固定粒子241は、エラストマー240と結合されている。このため、陰イオン成分は、ほとんど移動しない。また、第一誘電層10においては、分極により、陽イオン固定誘電層23との界面付近にプラス電荷が、陰イオン固定誘電層24との界面付近にマイナス電荷が、各々蓄えられる。このように、トランスデューサ1においては、陽イオン固定誘電層23、陰イオン固定誘電層24、およびこれらと接する第一誘電層10の界面付近に、多くの電荷が蓄えられる。したがって、プラス電極31およびマイナス電極32から、誘電層10、23、24を圧縮するように、大きな静電引力が発生する。これにより、誘電層10、23、24は上下方向に圧縮され、その分だけ、図4中白抜き矢印で示すように、左右方向に伸長する。
ここで、第一誘電層10の電気抵抗は大きい。このため、蓄えられた電荷は、第一誘電層10内を移動しにくい。したがって、いわゆる漏れ電流は少なく、それによるジュール熱も発生しにくい。また、陽イオン固定誘電層23においては、隣接するプラス電極31の極性と同じ陽イオン成分が、金属酸化物粒子を介してエラストマー230に固定される。このため、陽イオン成分は、第一誘電層10側(プラス電極31と反対方向)に移動しにくい。同様に、陰イオン固定誘電層24においては、隣接するマイナス電極32の極性と同じ陰イオン成分が、金属酸化物粒子を介してエラストマー240に固定される。このため、陰イオン成分は、第一誘電層10側(マイナス電極32と反対方向)に移動しにくい。このように、陽イオン固定誘電層23および陰イオン固定誘電層24から、第一誘電層10へ、イオン成分が移動するおそれは小さい。したがって、第一誘電層10の電気抵抗は低下しにくい。つまり、第一誘電層10は、経時劣化しにくく、高い耐絶縁破壊性を維持することができる。このように、第三実施形態のトランスデューサによると、第二誘電層が、エラストマーに固定されたイオン成分を有するため、大きな静電引力が発生し、発生力が大きくなる。
イオン固定粒子を構成する金属酸化物粒子は、絶縁性が高いという観点から、チタン、ジルコニウム、およびケイ素から選ばれる一種以上の元素を含むものが望ましい。例えば、二酸化チタン(TiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、シリカ(SiO)等、各々単独の酸化物粒子や、これらの複合粒子(TiO/ZrO、TiO/SiO等)が挙げられる。後述するように、金属酸化物粒子としては、有機金属化合物の加水分解反応(ゾルゲル法)により製造されるものが望ましい。
第二誘電層の透明性や、耐絶縁破壊性を考慮すると、イオン固定粒子は、エラストマー中にできるだけ均一に分散されていることが望ましい。また、イオン固定粒子の粒子径はできるだけ小さい方が望ましい。このような観点から、イオン固定粒子を構成する金属酸化物粒子のメジアン径は、5nm以上100nm以下であることが望ましい。30nm以下、なかでも、10〜20nm程度がより好適である。金属酸化物粒子の粒子径については、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察により測定することができる。また、小角X線散乱法により測定してもよい。
なお、金属酸化物粒子が、有機金属化合物の加水分解反応により製造される場合、ゾル中の金属酸化物粒子の粒子径と、第二誘電層中の金属酸化物粒子の粒子径と、は等しくなると推定される。したがって、ゾル中の金属酸化物粒子の粒子径を、第二誘電層中の金属酸化物粒子の粒子径として採用してもよい。ゾル中の金属酸化物粒子の粒子径は、例えば、日機装(株)製のレーザー回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置を用いて測定することができる。また、ゾルを乾固して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定することができる。
イオン固定粒子を構成する第一イオン成分は、第二イオン成分の対イオンである。イオン固定粒子は、例えば、ゾルゲル法により得られる金属酸化物粒子に、固定化前の第一イオン成分および第二イオン成分を有する反応性イオン性液体を反応させて、合成することができる。以下、イオン固定粒子の製造方法の一例を説明する。
まず、有機金属化合物をキレート化する(キレート化工程)。キレート化することにより、水との急激な反応を抑制し、粒子径の小さな金属酸化物粒子を、凝集させることなく製造することができる。有機金属化合物は、目的とする金属酸化物粒子の種類に応じて、金属アルコキシド化合物や金属アシレート化合物の中から、適宜選択すればよい。金属アルコキシド化合物としては、テトラn−ブトキシチタン、テトラn−ブトキシジルコニウム、テトラn−ブトキシシラン、テトラi−プロポキシチタン、テトラエトキシシラン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタンブトキシドダイマー等が挙げられる。また、金属アシレート化合物としては、ポリヒドロキシチタンステアレート、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート等が挙げられる。
キレート剤としては、例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等のβ−ジケトン、アセト酢酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル等のβ−ケト酸エステル、トリエタノールアミン、乳酸、2-エチルヘキサンー1,3ジオール、1,3へキサンジオール等を用いることができる。キレート剤は、第二誘電層を製造する際に、エラストマーの架橋前ポリマーを溶解する溶剤と同じものが望ましい。
次に、有機金属化合物のキレート化物に、反応性イオン性液体と、所定の有機溶剤と、水とを添加する(イオン固定化工程)。これにより、有機金属化合物の加水分解反応が進行して、金属酸化物粒子が生成されると共に、生成した金属酸化物粒子と、反応性イオン性液体中の第一イオン成分と、が反応して、金属酸化物粒子に第一イオン成分が固定化される。
反応性イオン性液体に含まれる第一イオン成分は、生成される金属酸化物粒子の水酸基(−OH)と反応可能な反応基を有する。反応基としては、例えば、アルコキシシリル基(−Si(OR):Rはアルキル基)が挙げられる。このような第一イオン成分を含む反応性イオン性液体としては、例えば、次式(2)、(3)に示すものが挙げられる。式(2)の反応性イオン性液体においては、陽イオンが第一イオン成分、陰イオンが第二イオン成分になる。また、式(3)の反応性イオン性液体においては、陽イオンが第二イオン成分、陰イオンが第一イオン成分になる。
Figure 0005559229
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例えば、本工程において、金属酸化物粒子として二酸化チタン(TiO)が生成される場合、TiOと上記式(2)の反応性イオン性液体とが反応すると、TiOに式(2)の陽イオンが固定された陽イオン固定粒子が生成される。この場合に生成される陽イオン固定粒子の模式図を、図5に示す(符合は前出図3参照)。なお、陽イオン固定粒子231において、陽イオン(第一イオン成分)は、TiO(金属酸化物粒子)の表面に化学結合されていてもよく、内部に化学結合されていてもよい。
有機溶剤は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類等を使用すればよい。例えば、IPAを添加すると、キレート化物と水との親和性が向上し、金属酸化物粒子の核が生成されやすくなる。また、MEKを添加すると、第二誘電層を製造する際に、イオン固定粒子を含むゾルと、エラストマーの架橋前ポリマーを溶解した溶液と、の相溶性を向上させることができる。また、使用する有機溶剤の種類や添加量により、生成される金属酸化物粒子の粒子径が変化する。例えば、メジアン径が10〜20nm程度の金属酸化物粒子を生成したい場合には、IPAとMEKとを、IPAのモル数/MEKのモル数=0.6程度になるように添加し、かつ、IPAの添加量を、使用した有機金属化合物のモル数の7〜10倍量にするとよい。水は、有機金属化合物の加水分解に必要な量を添加すればよい。
以上説明したように、キレート化工程、イオン固定化工程を経て、イオン固定粒子および第二イオン成分を含むゾルが得られる。得られたゾルは、そのまま第二誘電層の製造に用いてもよいが、さらにエージング処理を施してから、第二誘電層の製造に用いることが望ましい。エージング処理は、ゾルを40℃程度の温度下で、数時間静置して行えばよい。エージング処理を行うと、金属酸化物粒子内部に残存する水酸基の数を、減少させることができる。このため、ゾルの保存時におけるイオン固定粒子同士の凝集を、抑制することができる。
イオン固定粒子を含む第二誘電層は、イオン固定粒子および第二イオン成分を含むゾルと、エラストマーの架橋前ポリマーを溶解した溶液と、を混合した混合液を成膜して形成される。すなわち、混合液を基材(第一誘電層でもよい)上に塗布し、塗膜を加熱して架橋させることにより、第二誘電層を形成することができる。混合液には、必要に応じて、架橋剤等を配合してもよい。架橋時に、イオン固定粒子の表面の水酸基とエラストマーの官能基とが反応することにより、イオン固定粒子がエラストマーに化学結合される。
第二誘電層において、イオン固定粒子の含有量は、エラストマーの100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であることが望ましい。イオン固定粒子の含有量が1質量部未満の場合には、静電引力を大きくする効果が小さい。一方、イオン固定粒子の含有量が10質量部を超えると、静電引力を大きくする効果が飽和して、いわゆる漏れ電流が多くなる。
<電極>
本発明のトランスデューサにおいて、一対の電極は、バインダーおよび導電材を含む。バインダーとしては、樹脂やエラストマーを用いることができる。伸縮しても電気抵抗が増加しにくい電極を形成するという観点から、バインダーとしては、エラストマーが好適である。エラストマーとしては、シリコーンゴム、NBR、EPDM、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリルゴム、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン等の架橋ゴム、およびスチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。また、エポキシ基変性アクリルゴム、カルボキシル基変性水素化ニトリルゴム等のように、官能基を導入するなどして変性したエラストマーを用いてもよい。
導電材の種類は、特に限定されない。カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト等の導電性炭素粉末、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金等の金属粉末等から、適宜選択すればよい。また、銀被覆銅粉末など、金属で被覆された粒子からなる粉末を用いてもよい。これらの一種を単独で、あるいは二種以上を混合して用いればよい。
例えば、金属で被覆される粒子が金属以外の粒子の場合、金属だけで構成する場合と比較して、導電材の比重を小さくすることができる。よって、塗料化した場合に、導電材の沈降が抑制されて、分散性が向上する。また、粒子を加工することにより、様々な形状の導電材を容易に製造することができる。また、導電材のコストを低減することができる。被覆する金属としては、先に列挙した銀等の金属材料を用いればよい。また、金属以外の粒子としては、カーボンブラック等の炭素材料、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物、シリカ等の無機物、アクリルやウレタン等の樹脂等を用いればよい。
電極は、バインダーおよび導電材に加えて、必要に応じて分散剤、補強剤、可塑剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。例えば、バインダーとしてエラストマーを用いる場合、当該エラストマー分のポリマーを溶剤に溶解したポリマー溶液に、導電材、必要に応じて添加剤を添加して、攪拌、混合することにより、導電塗料を調製することができる。調製した導電塗料を、第一あるいは第二誘電層の一面に直接塗布することにより、電極を形成すればよい。あるいは、離型性フィルムに導電塗料を塗布して電極を形成し、形成した電極を、第一あるいは第二誘電層の一面に転写してもよい。
導電塗料の塗布方法としては、既に公知の種々の方法を採用することができる。例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、リソグラフィー等の印刷法の他、ディップ法、スプレー法、バーコート法等が挙げられる。例えば、印刷法を採用すると、塗布する部分と塗布しない部分との塗り分けを、容易に行うことができる。また、大きな面積、細線、複雑な形状の印刷も容易である。印刷法の中でも、高粘度の塗料が使用でき、塗膜厚さの調整が容易であるという理由から、スクリーン印刷法が好適である。
<トランスデューサの製造方法>
本発明のトランスデューサは、次のように製造することができる。第一の製造方法としては、まず、第一誘電層と第二誘電層とを別々に製造する。次に、第一誘電層と第二誘電層とを貼り合わせて積層体を製造する。最後に、積層体の表裏両面に電極を形成すればよい。
第二の方法としては、まず、第一誘電層、第二誘電層の各々について、所定の原料を含むエラストマー組成物を調製する。次に、金型中に、第一誘電層のエラストマー組成物と、第二誘電層のエラストマー組成物と、を積層し、プレス架橋することにより積層体を製造する。最後に、積層体の表裏両面に電極を形成すればよい。
第三の方法としては、まず、第一誘電層を、エラストマーの架橋前ポリマー等の原料を所定の溶剤中に溶解した溶液を基材上に塗布し、塗膜を加熱して架橋させることにより形成する。次に、第二誘電層を、第二誘電層を形成するための原料液を基材上に塗布し、塗膜を加熱して架橋させることにより形成する。そして、形成した第一誘電層と第二誘電層とを貼り合わせ、基材を剥離することにより、積層体を製造する。最後に、積層体の表裏両面に電極を形成すればよい。
上記第三実施形態のように、第二誘電層が、ポリマーに固定されたイオン成分を含む場合には、電極の極性と、電極に隣接する第二誘電層中の固定されたイオン成分の電荷と、が同じになるように、電圧を印加する。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
<アクチュエータの製造>
[第一誘電層]
次のようにして、第一誘電層を作製した。まず、カルボキシル基変性水素化ニトリルゴム(ランクセス社製「テルバン(登録商標)XT8889」)100質量部と、シリカ(日本アエロジル(株)製「Aerosil(登録商標)380」)10質量部と、をロール練り機にて混練りした。次に、混練りした材料を、アセチルアセトンに溶解した。続いて、この溶液に、有機金属化合物のテトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン15質量部を混合して、液状のエラストマー組成物を調製した。調製したエラストマー組成物の固形分濃度は、12質量%である。ここで、アセチルアセトンは、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムを溶解させる溶媒であると共に、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタンのキレート剤である。その後、エラストマー組成物を基材上に塗布し、乾燥させた後、150℃で約60分間加熱して、第一誘電層を得た。第一誘電層としては、膜厚が異なる三種類を作製した。各々の膜厚は、36μm、18μm、9μmである。第一誘電層の体積抵抗率は、2×1014Ω・cmであった。
[第二誘電層]
(1)イオン成分を含まない第二誘電層
第二誘電層の一つとして、イオン成分を含まない第二誘電層(以下、実施例において「中抵抗誘電層」と称す)を作製した。中抵抗誘電層は、シリカを配合せず、有機金属化合物のテトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタンの配合量を5質量部に変更した以外は、上記第一誘電層と同様にして作製した。作製した中抵抗誘電層の体積抵抗率は、2×1012Ω・cmであった。
(2)陽イオン固定誘電層
第二誘電層の一つとして、次のようにして、陽イオン固定誘電層を作製した。まず、有機金属化合物のテトラi−プロポキシチタン0.01molに、アセチルアセトン0.02molを加えてキレート化した。次に、得られたキレート化物に、上記式(2)に示した反応性イオン性液体0.002mol、イソプロピルアルコール(IPA)5ml(0.083mol)、メチルエチルケトン(MEK)10ml(0.139mol)、および水0.04molを添加して、陽イオンが固定されたTiO粒子(陽イオン固定粒子)、および陰イオンを含むゾルを得た。そして、得られたゾルを、40℃下で2時間静置して、エージング処理した。
次に、エージング後のゾル20質量部と、第一誘電層の作製に用いた、カルボキシル基変性水素化ニトリルゴムのアセチルアセトン溶液(シリカ含有)100質量部と、を混合し、さらに架橋剤として、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタンのアセチルアセトン溶液(濃度20質量%)を3質量部添加して、混合液を調製した。そして、調製した混合液を基材上に塗布し、乾燥させた後、150℃で約60分間加熱して、陽イオン固定誘電層を得た。陽イオン固定誘電層における陽イオン固定粒子の含有量は、6.6質量部とした。陽イオン固定誘電層としては、膜厚が異なる二種類を作製した。一方の膜厚は18μm、他方の膜厚は9μmである。陽イオン固定誘電層の体積抵抗率は、9×1011Ω・cmであった。
(3)陰イオン固定誘電層
第二誘電層の一つとして、陰イオン固定誘電層を作製した。陰イオン固定誘電層は、反応性イオン性液体の種類を上記式(3)に示したものに変更した以外は、上記陽イオン固定誘電層と同様にして作製した。作製過程で得られたゾルは、陰イオンが固定されたTiO粒子(陰イオン固定粒子)、および陽イオンを含む。作製した陰イオン固定誘電層の膜厚は、9μmである。陰イオン固定誘電層の体積抵抗率は、2×1011Ω・cmであった。
[実施例1のアクチュエータ]
基材から剥離した第一誘電層(膜厚9μm)の表面を覆うように陽イオン固定誘電層(膜厚9μm)を、裏面を覆うように陰イオン固定誘電層(膜厚9μm)を貼着した。そして、陽イオン固定誘電層、陰イオン固定誘電層の各々から基材を剥離することにより、三層構造の誘電層を作製した。また、アクリルゴムポリマー溶液にカーボンブラックを混合、分散させて導電塗料を調製した。そして、導電塗料を、作製した三層構造の誘電層の表裏両面にスクリーン印刷して、電極を形成した。このようにして、実施例1のアクチュエータを製造した。実施例1のアクチュエータにおける第一誘電層の厚さ比率は、0.33である。実施例1のアクチュエータは、本発明のトランスデューサに含まれる。
[実施例2のアクチュエータ]
第一誘電層の膜厚を18μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のアクチュエータを製造した。実施例2のアクチュエータにおける第一誘電層の厚さ比率は、0.5である。実施例2のアクチュエータは、本発明のトランスデューサに含まれる。
[実施例3のアクチュエータ]
基材から剥離した第一誘電層(膜厚18μm)の表面にのみ陽イオン固定誘電層(18μm)を貼着し、陽イオン固定誘電層から基材を剥離することにより、二層構造の誘電層を作製した。そして、実施例1と同じ導電塗料を、作製した二層構造の誘電層の表裏両面にスクリーン印刷して、電極を形成した。このようにして、実施例3のアクチュエータを製造した。実施例3のアクチュエータにおける第一誘電層の厚さ比率は、0.5である。実施例3のアクチュエータは、本発明のトランスデューサに含まれる。
[実施例4のアクチュエータ]
第一誘電層および陽イオン固定誘電層の膜厚を、各々9μmに変更した以外は、実施例3と同様にして、実施例4のアクチュエータを製造した。実施例4のアクチュエータにおける第一誘電層の厚さ比率は、0.5である。実施例4のアクチュエータは、本発明のトランスデューサに含まれる。
[実施例5のアクチュエータ]
基材から剥離した第一誘電層(膜厚9μm)の表裏両面を覆うように、中抵抗誘電層(膜厚9μm)を貼着し、中抵抗誘電層から基材を剥離することにより、三層構造の誘電層を作製した。そして、実施例1と同じ導電塗料を、作製した三層構造の誘電層の表裏両面にスクリーン印刷して、電極を形成した。このようにして、実施例5のアクチュエータを製造した。実施例5のアクチュエータにおける第一誘電層の厚さ比率は、0.33である。実施例5のアクチュエータは、本発明のトランスデューサに含まれる。
[比較例1のアクチュエータ]
第二誘電層を用いずに、アクチュエータを製造した。すなわち、第一誘電層(膜厚36μm)の表裏両面に、実施例1と同じ導電塗料を直接スクリーン印刷して、電極を形成した。このようにして、比較例1のアクチュエータを製造した。
[比較例2のアクチュエータ]
第一誘電層の膜厚を9μmに変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例2のアクチュエータを製造した。
表1に、製造したアクチュエータにおける誘電層の構成を示す。
Figure 0005559229
<アクチュエータの評価>
[絶縁破壊強度の測定]
実施例1〜3、比較例1のアクチュエータの絶縁破壊強度を測定した。まず、測定装置および測定方法について説明する。図6に、測定装置に取り付けられたアクチュエータの表側正面図を示す。図7に、図6のVII−VII断面図を示す。
図6、図7に示すように、アクチュエータ5の上端は、測定装置における上側チャック52により把持されている。アクチュエータ5の下端は、下側チャック53により把持されている。アクチュエータ5は、予め上下方向に延伸された状態で、上側チャック52と下側チャック53との間に、取り付けられている(延伸率25%)。上側チャック52の上方には、ロードセル(図略)が配置されている。
アクチュエータ5は、誘電層50と一対の電極51a、51bとからなる。誘電層50は、自然状態で、縦50mm、横25mmの矩形板状を呈している。誘電層50の構成は、アクチュエータごとに異なる(表1参照)。電極51a、51bは、誘電層50を挟んで表裏方向に対向するよう配置されている。電極51a、51bは、自然状態で、各々、縦40mm、横25mm、厚さ約10μmの矩形板状を呈している。電極51a、51bは、上下方向に10mmずれた状態で配置されている。つまり、電極51a、51bは、誘電層50を介して、縦30mm、横25mmの範囲で重なっている。電極51aの下端には、配線(図略)が接続されている。同様に、電極51bの上端には、配線(図略)が接続されている。電極51a、51bは、各々の配線を介して、電源(図略)に接続されている。電圧印加時には、表側の電極51aがプラス極、裏側の電極51bがマイナス極になる。
絶縁破壊強度の測定は、電極51a、51b間に印加する電圧を段階的に増加して、誘電層50が破壊されるまで行った。そして、印加電圧を誘電層50の全体の厚さで除した値を、みかけの電界強度とした。また、上記式(1)から、第一誘電層に印加される電圧を算出し、当該電圧を第一誘電層の厚さで除した値を、第一誘電層に印加される電界強度とした。図8に、実施例1〜3および比較例1のアクチュエータにおける、みかけの電界強度と、第一誘電層に印加される電界強度と、の関係を示す。
図8に示すように、比較例1のアクチュエータは、みかけの電界強度が100V/μmで、絶縁破壊した。比較例1のアクチュエータは、第二誘電層を備えていない。よって、みかけの電界強度と、第一誘電層に印加される電界強度と、は一致する。これに対して、実施例1〜3のアクチュエータは、第二誘電層を備えている。したがって、みかけの電界強度が100V/μmであっても、実際に第一誘電層に印加される電界強度は、それより大きくなる。実施例1のアクチュエータにおいては、第一誘電層に印加される電界強度が300V/μmになるまで、絶縁破壊しなかった。実施例2のアクチュエータにおいては、第一誘電層に印加される電界強度が200V/μmになるまで、絶縁破壊しなかった。実施例3のアクチュエータにおいては、第一誘電層に印加される電界強度が170V/μmになるまで、絶縁破壊しなかった。
このように、電極と第一誘電層との間に第二誘電層を介装させることにより、第一誘電層が本来有する耐絶縁破壊性を発揮させることができ、その結果、アクチュエータの耐絶縁破壊性が向上することが確認された。
[発生力の測定]
実施例1、4、5および比較例2のアクチュエータについて、印加電圧に対する発生力を測定した。発生力の測定は、絶縁破壊強度の測定と同じ装置を用いて行った(図6、図7参照)。電極51a、51b間に電圧を印加すると、電極51a、51b間に静電引力が生じて、誘電層50を圧縮する。これにより、誘電層50の厚さは薄くなり、延伸方向(上下方向)に伸長する。誘電層50の伸長により、上下方向の延伸力は減少する。電圧印加時に減少した延伸力を、ロードセルにより測定して、発生力とした。発生力の測定は、印加電圧を段階的に増加させて、誘電層50が破壊されるまで行った。図9に、実施例1、4、5および比較例2のアクチュエータにおける、みかけの電界強度と発生力との関係を示す。
図9に示すように、同じ電界強度で比較した場合、実施例1、4、5のアクチュエータの方が、比較例2のアクチュエータよりも、発生力が大きくなった。また、実施例1、4、5のアクチュエータの方が、印加可能な電圧が大きくなった。特に、イオン成分を含む第二誘電層を備える実施例1、4のアクチュエータにおいては、大きな発生力が得られた。なかでも、三層構造の実施例1のアクチュエータにおいては、電界強度が小さくても、大きな発生力が得られた。
このように、電極と第一誘電層との間に第二誘電層を介装させることにより、より大きな力が得られることが確認された。また、第二誘電層がイオン成分を含む場合には、発生力がより大きくなることが確認された。
本発明のトランスデューサは、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ等、あるいは音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカ、マイクロフォン、ノイズキャンセラ等として、広く用いることができる。なかでも、産業、医療、福祉ロボットやアシストスーツ等に用いられる人工筋肉、電子部品冷却用や医療用等の小型ポンプ、および医療用器具等に用いられる柔軟なアクチュエータ、として好適である。
1:トランスデューサ、10:第一誘電層、20、21、22:第二誘電層、23:陽イオン固定誘電層(第二誘電層)、24:陰イオン固定誘電層(第二誘電層)、30a、30b:電極、31:プラス電極、32:マイナス電極、230:エラストマー、231:陽イオン固定粒子、232:陰イオン成分、240:エラストマー、241:陰イオン固定粒子、242:陽イオン成分。
5:アクチュエータ、50:誘電層、51a、51b:電極、52:上側チャック、53:下側チャック。

Claims (5)

  1. エラストマーを含み体積抵抗率が1012Ω・cm以上の第一誘電層と、
    該第一誘電層の表裏両側に配置され、バインダーおよび導電材を含む一対の電極と、
    該第一誘電層の表裏少なくとも一方において該電極と該第一誘電層との間に介装され、エラストマーを含み該第一誘電層よりも体積抵抗率が2桁以上小さい第二誘電層と、
    を備えることを特徴とするトランスデューサ。
  2. 前記第二誘電層は、前記第一誘電層の表裏両面に配置される請求項1に記載のトランスデューサ。
  3. 前記第一誘電層および前記第二誘電層の全体厚さに対する該第一誘電層の厚さ比率は、0.1以上0.75以下である請求項1または請求項2に記載のトランスデューサ。
  4. 前記第一誘電層の厚さは、5μm以上50μm以下である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のトランスデューサ。
  5. 前記第二誘電層は、イオン成分を含む請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のトランスデューサ。
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