JP5240427B2 - 鋳造部品の欠陥部補修方法及び鋳造部品 - Google Patents
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鋳造部品の表面に現出された凹状の鋳巣及びその周辺に高密度エネルギービームを照射し再溶融すると、溶融池内に鋳造部品の内部に圧縮されていたガスが噴出し、溶融金属が凝固した後、図3に示すような、内部欠陥(ピンホール15)として残留してしまう。
すなわち、アルミニウム合金からなるダイカスト粗材に代表される鋳造部品は、鋳造時の空気の巻き込みや水素ガスの固溶限が低いことによりその内部に多量のガスが圧縮されて含有してしまっている。そのために、高密度エネルギービームを用いて鋳巣及びその周辺を再溶融すると、鋳造部品の内部に圧縮されていたガスが開放されて溶融池内に噴出するようになる。
すると、図3に示すように、溶融池4内に噴出されたガスは、溶融金属の粘性が高いために、ガス自身の浮力だけでは外部に排出されないために、溶融金属の凝固後に、多数のピンホール15として残留してしまう。なお、これらピンホール15は、鋳造部品1のガス含有量に依存するが、製品規格を満足できない内径(φ):0.5mm〜1.0mm程度の大きさのものがある。
また、本発明の鋳造部品は、鋳造部品の表面に現出した欠陥部及びその周辺を溶融しながら、溶融池に高圧ガスを噴射することで溶融金属をその内部に発生したピンホールと共に外部に排出して、内部欠陥が抑制された健全層を内面に有する凹部を形成し、その後、該凹部に、前記健全層の厚さの範囲内で溶融し肉盛してなる補修部を有し、前記健全層の厚さは、前記凹部の最深部から周縁部に向かって薄く形成されることを特徴としている。
これにより、欠陥部を補修した後、補修部の内部に、製品規格を満足できないような大きさのピンホールが残留されることはない。
なお、本発明の鋳造部品の欠陥部補修方法及び鋳造部品の各種態様およびそれらの作用については、以下の発明の態様の項において詳しく説明する。
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。なお、各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付して、必要に応じて他の項を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施の形態等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要件を付加した態様も、また、各項の態様から構成要件を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項乃至(3)項の各々が、請求項1乃至3の各々に相当し、(7)項乃至(10)項の各々が、請求項4乃至7に相当する。
従って、(1)項の鋳造部品の欠陥部補修方法では、第1ステップでは、溶融時、溶融池内に鋳造部品内に圧縮されていたガスが噴出し、製品規格を満足できないような大きさのピンホールを含む多数のピンホールが発生しても、ほとんどのピンホールは、高圧ガスの噴射により溶融金属と共に外部に排出される。これと同時に、凹部の内面に、内部欠陥が抑制された、すなわち、製品規格を満足できない大きさのピンホールが残留しない健全層を形成する。
次に、第2ステップでは、健全層の厚さの範囲内で溶融して肉盛するので、肉盛時に、鋳造部品を溶融することで新たなガスが噴出することなく、肉盛層に製品規格を満足できないような大きさのピンホールが残留することはない。
従って、(2)項の鋳造部品の欠陥部補修方法では、健全層の厚さは、溶融時に溶融池内に発生するピンホールの大きさ、すなわち、製品規格を満足するピンホールの大きさの上限値より小さい値に設定するので、健全層に、製品規格を満足できないような大きさのピンホールが残留することはない。
(4)前記高密度エネルギー熱源は、YAGレーザビームであることを特徴とする(3)項に記載の鋳造部品の欠陥部補修方法。
従って、(3)項及び(4)項の鋳造部品の欠陥部補修方法では、 第1及び第3ステップにおいては、同一の高密度エネルギー熱源であるYAGレーザビームが使用されるので、既存のレーザ肉盛装置を使用することができ、実用化が容易である。
従って、(5)項の鋳造部品の欠陥部補修方法では、例えば、製品規格を満足するピンホールの大きさの上限値が内径(φ):0.3mmである場合、健全層には、少なくとも製品規格を満足できない0.3mmより大きいピンホールが残留されることはない。
従って、(6)項の鋳造部品の欠陥部補修方法では、第1ステップで噴射される高圧ガスは、第2ステップの肉盛時に使用されるシールドガスと同一種類であるので、既存のレーザ肉盛装置を使用することができ、実用化が容易である。
従って、(7)項の鋳造部品の欠陥部補修方法では、鋳造で成形されるシリンダブロックのシール面に現出された欠陥部を補修することができる。
従って、(8)項の鋳造部品では、従来、シール面に現出された欠陥部が原因で廃棄されていた鋳造部品を製品として取り扱うことができるので、歩留まりが良くなり、生産効率を大幅に向上させることができる。
従って、(9)項の鋳造部品では、補修部は、他部位に比べて組織が微細化され、しかも、製品規格を満足できない内径(φ):0.3mmより大きいピンホールは残留されないので、強度的にも他部位と遜色ない。
従って、(10)項の鋳造部品では、シリンダブロックに、そのシール面に現出された欠陥部を補修してなる補修部が備えられている。
本発明の実施の形態に係る鋳造部品の欠陥部補修方法は、図1(a)に示すような、ダイカスト鋳造法によって成形された鋳造部品1(アルミニウム合金)のシール面6に現出した凹状の鋳巣(欠陥部)2を補修するものである。また、本欠陥部補修方法が採用される鋳造部品としては、エンジンの構成部品であるシリンダブロックが代表的である。
なお、本実施の形態では、不活性ガス供給装置は、ガスの噴射圧を適宜調節することが可能となっており、鋳巣2及びその周辺を溶融する際、不活性ガスを高圧で溶融池4に噴射して、溶融金属を外部に排出するようにしている。
本発明の実施の形態に係る欠陥部補修方法では、図1(a)に示すように、鋳造部品1のシール面6に現出され、内径(φ):1.0mm程度で、深さ:0.5mm〜1.0mm程度の凹状の鋳巣2を補修するものとする。
まず、図1(b)に示すように、凹状の鋳巣2に加工ノズル3を対向させて配置し、加工ノズル3からYAGレーザビーム5を照射して、内径(φ):1.0mm程度で、深さ:0.5mm〜1.0mm程度の凹状の鋳巣2に対して、内径(φ):2.0mm程度で、深さ:1.0mm〜1.5mm程度で内面が球面状の凹部11を形成すべく溶融する(第1ステップに相当)。YAGレーザ出力は2.0kW〜2.5kWである。なお、図1(b)の符号15は、溶融池4内に発生したピンホールを示している。
次に、図1(c)に示すように、YAGレーザビーム5による溶融工程と同時に、不活性ガスを不活性ガス供給装置から加工ノズル3を経由して噴射圧0.4MPaで溶融池4に噴射する(第1ステップに相当)。噴射時間は0.2秒〜0.4秒である。図1(c)に示す矢印は、加工ノズル3内の高圧ガスの流れを示している。
なお、健全層10の厚みは、溶融時、溶融池4内に発生するピンホール15の大きさに基いて設定される。例えば、本実施の形態では、製品規格を満足するピンホール15の大きさの上限値が内径(φ):0.3mmに設定されているために、健全層10は、その厚みが0.1mm〜0.3mmの範囲内になるように形成される。従って、健全層10には、少なくとも、製品規格を満足できない0.3mmよりも大きいピンホール15が残留されなくなる。なお、健全層10の厚みの管理は、溶融時のレーザ条件及び不活性ガスの噴射条件によって管理される。
なお、肉盛レーザ条件は、YAGレーザ出力:500W〜600W,粉末材:Al系合金,粉末供給量0.1g/s,レーザ照射時間:0、2秒〜0.5秒,シールドガスの流量:20リットル/sである。
そのため、シリンダブロックのシール面には、内径(φ):2.0mm程度で、厚さ:0.5mm〜1.0mm程度の肉盛層(補修部)17(図1(e)参照)が形成される。該肉盛層17は、他の部位に比べて組織が微細化されており、色彩コントラストが他部位と異なっている。
要するに、本発明の実施の形態において最も特徴とするところは、鋳巣2及びその周辺をYAGレーザビーム5により溶融する際に、高圧ガスの噴射により溶融金属をピンホール15と共に外部に排出し、しかも、凹部11の内面に健全層10を形成するところにある。これにより、まず、溶融時に溶融池4内に発生した多数のピンホール15を外部に排出することでき、さらに、凹部11に肉盛する際、健全層10の形成により鋳造部品1からの新たなガスの噴出を防ぐことができるので、肉盛層17にピンホール15が残留されないのである。
さらに、本発明の実施の形態に係る鋳造部品の欠陥部補修方法は、既存のレーザ肉盛装置によって具現化することができるので、実用化が容易である。
また、本発明の実施の形態では、鋳巣2及びその周辺の溶融工程及び凹部11の肉盛工程には、高密度エネルギー熱源としてYAGレーザビーム5を使用しているが、補修する対象によって、電子ビーム、CO2レーザビームやルビーレーザビーム等を採用しても良く、さらに、アーク溶接、TIG溶接やMIG溶接等を使用しても良く、高密度エネルギー熱源の種類が限定されることはない。
さらに、本発明の実施の形態では、溶融池4に高圧で噴射されるガスは、不活性ガスを使用しており、これが最良の形態であるが、単に、外気を圧縮して高圧で噴射しても良い。
Claims (7)
- 鋳造部品の表面に現出した欠陥部を補修する鋳造部品の欠陥部補修方法であって、
前記欠陥部及びその周辺を溶融しながら、溶融池に高圧ガスを噴射することで溶融金属をその内部に発生したピンホールと共に外部に排出して、内部欠陥が抑制された健全層を内面に有する凹部を形成する第1ステップと、
次に、前記凹部に、前記健全層の厚さの範囲内で溶融して肉盛し、前記欠陥部を補修する第2ステップと、を備え、
前記健全層の厚さは、前記凹部の最深部から周縁部に向かって薄く形成されることを特徴とする鋳造部品の欠陥部補修方法。 - 前記健全層の厚さは、製品規格に定められた許容ピンホール径に基いて設定されることを特徴とする請求項1に記載の鋳造部品の欠陥部補修方法。
- 前記第1及び第2ステップでは、同一の高密度エネルギー熱源が使用されることを特徴とする請求項1または2に記載の鋳造部品の欠陥部補修方法。
- 前記鋳造部品は、シリンダブロックであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鋳造部品の欠陥部補修方法。
- 鋳造部品の表面に現出した欠陥部及びその周辺を溶融しながら、溶融池に高圧ガスを噴射することで溶融金属をその内部に発生したピンホールと共に外部に排出して、内部欠陥が抑制された健全層を内面に有する凹部を形成し、その後、該凹部に、前記健全層の厚さの範囲内で溶融し肉盛してなる補修部を有し、
前記健全層の厚さは、前記凹部の最深部から周縁部に向かって薄く形成されることを特徴とする鋳造部品。 - 前記補修部は、他部位に比べて組織が微細化されていることを特徴とする請求項5に記載の鋳造部品。
- 前記鋳造部品は、シリンダブロックであることを特徴とする請求項5または6に記載の鋳造部品。
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