JP5238656B2 - 樹脂被覆キャリアの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真画像形成の2成分現像剤に用いられる樹脂被覆キャリアの製造方法に関する。
最近のOA(Office Automation)機器の目覚しい発展に伴って、電子写真方式を利用して画像形成処理を行う複写機、プリンタおよびファクシミリ装置などの画像形成装置が広く普及している。
このような電子写真方式を利用する画像形成装置では、画像を形成するために、たとえば、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、定着工程およびクリーニング工程が行われる。帯電工程では、像担持体である感光体の表面を暗所で均一に帯電させる。露光工程では、帯電させた感光体に原稿像の信号光を投射することで、信号光が照射された露光部分の帯電を除去し、感光体の表面に静電荷像(静電潜像)を形成する。現像工程では、感光体表面の静電荷像に静電荷像現像用トナー(以後特に断らない限り単に「トナー」と称す)を供給してトナー像(可視像)を形成する。転写工程では、トナーとは逆極性の電荷を記録媒体に与えることによって、感光体表面のトナー像を記録媒体に転写させる。定着工程では、加熱および加圧などの手段により記録媒体上のトナー像を定着させる。クリーニング工程では、記録媒体に転写されずに感光体表面に残ったトナーを回収する。電子写真方式を利用する画像形成装置は、以上の工程を経て記録媒体上に所望の画像を形成する。
電子写真方式を利用する画像形成装置では、トナー像を現像するための現像剤として、トナーのみを含む1成分現像剤、またはトナーとキャリアとを含む2成分現像剤が用いられる。2成分現像剤は、キャリアによりトナーの撹拌、搬送および帯電という機能が付与される。したがって、2成分現像剤は、トナーがキャリアの機能を併せ持つ必要がないので、トナーを単独で含む1成分現像剤に比べると、機能が分離されて制御性が向上し、高画質画像を得やすいという特徴を有する。キャリアの機能としては、トナーを所望の帯電量に安定して帯電させる機能、およびトナーを感光体に搬送する機能という2つの基本機能が挙げられる。
キャリアは、現像槽内で撹拌され、マグネットローラ上へ搬送され、磁気穂を形成し規制ブレードを通過して再び現像槽内に戻り、繰り返し使用される。キャリアには、このように継続して使用される中で、安定した基本機能を発現させること、特に安定的にトナーを帯電させることが求められる。しかしながら、一般的にキャリアは密度が大きく、トナーとの見掛密度差が大きいので、現像時にトナーとの混合性が低下するおそれがある。
またキャリアは、密度が大きく撹拌トルクも大きいので、現像槽内で撹拌するためには多くの駆動電力を要する。そのため、近年では、画像形成装置の低消費電力化に関するキャリアの改良が進められており、現像槽の撹拌トルクを低減して低消費電力化するために、キャリアを低密度化する検討も多くなされている。さらにはキャリアの耐久性向上によるキャリアの長寿命化といった観点でも低密度のキャリアが検討される傾向にある。キャリアの低密度化を実現するためにはキャリアの芯材そのものを低密度化することが重要である。
このような問題に対し、特許文献1,2には、空隙を設けたキャリア芯材において、キャリア芯材内部の空隙に樹脂を充填して低密度化を図り、そのキャリア芯材の表面をシリコーン樹脂でコートしたキャリアが開示されている。
特開2006−337579号公報 特開2007−57943号公報
しかしながら、特許文献1,2に開示のキャリアのように、キャリア芯材内部の空隙に樹脂を充填するには、多量の樹脂が必要となるので、その分コストがかかるという問題がある。
また、空隙のないキャリア芯材の表面を樹脂で被覆したキャリアに比べれば、キャリアの見掛密度は小さくなるが、空隙に樹脂が入り込んでいないキャリア芯材の表面を樹脂で被覆したキャリアに比べるとキャリアの見掛密度は高くなる。しかし、空隙を有するキャリア芯材に樹脂を単に添加しただけでは、樹脂がキャリア芯材内部の空隙に含浸するので、空隙に樹脂が充填されたキャリアとなり、またキャリア芯材表面を樹脂で被覆するために多量の樹脂が必要となる。
本発明の目的は、内部に空隙を有する多孔質材料で構成されたキャリア芯材を用い、少ない樹脂量で、空隙に樹脂が存在しない樹脂被覆キャリアとすることで、低見掛密度化を達成して、キャリアの長寿命化、撹拌トルクの低減による低消費電力化および良好なトナー帯電安定性を実現することができる樹脂被覆キャリアを製造する製造方法を提供することである。
本発明は、キャリア芯材と、キャリア芯材の表面に形成された樹脂被覆層とを有する樹脂被覆キャリアの製造方法であって、
樹脂および発泡剤が溶剤中に溶解または分散される浸漬液に、内部に空隙を有する多孔質材料で構成されるキャリア芯材を浸漬し、前記空隙に前記浸漬液が含浸された含浸キャリア芯材を得る浸漬工程と、
前記含浸キャリア芯材を、前記溶剤の沸点以上かつ前記発泡剤の分解温度以上の温度下で、撹拌しながら加熱して前記樹脂を前記キャリア芯材表面で膜化させ、前記キャリア芯材表面に樹脂被覆層が形成された樹脂被覆キャリアを得る加熱乾燥工程とを含むことを特徴とする樹脂被覆キャリアの製造方法である。
また本発明は、前記浸漬液は、樹脂として熱硬化性樹脂を含み、
前記浸漬工程では、前記熱硬化性樹脂を含む樹脂および発泡剤が溶剤中に溶解または分散される浸漬液に、前記キャリア芯材を浸漬し、前記熱硬化性樹脂を含む前記浸漬液が前記空隙に含浸された含浸キャリア芯材を得て、
前記加熱乾燥工程は、前記含浸キャリア芯材を、前記溶剤の沸点以上、前記発泡剤の分解温度以上かつ前記熱硬化性樹脂の硬化温度未満で加熱する第1加熱工程と、
第1加熱工程で加熱した含浸キャリア芯材を、前記熱硬化性樹脂の硬化温度以上で加熱する第2加熱工程とを含むことを特徴とする。
また本発明は、前記熱硬化性樹脂が、熱硬化性シリコーン樹脂であることを特徴とする。
また本発明は、キャリア芯材と、キャリア芯材の表面に形成された樹脂被覆層とを有する樹脂被覆キャリアの製造方法であって、
熱硬化性樹脂を含む第1樹脂および発泡剤が第1溶剤中に溶解または分散される第1浸漬液に、内部に空隙を有する多孔質材料で構成されるキャリア芯材を浸漬し、熱硬化性樹脂を含む前記第1浸漬液が前記空隙に含浸された含浸キャリア芯材を得る浸漬工程と、
前記含浸キャリア芯材を、前記第1溶剤の沸点以上かつ前記発泡剤の分解温度以上の温度下で撹拌しながら加熱して、第1樹脂をキャリア芯材表面で膜化させ、キャリア芯材表面に樹脂層が形成された樹脂層形成キャリア芯材を得る第1加熱乾燥工程と、
第2樹脂が第2溶剤中に溶解される第2浸漬液に前記樹脂層形成キャリア芯材を浸漬し、前記樹脂層形成キャリア芯材表面に前記第2浸漬液が付着した浸漬液付着キャリア芯材を得る付着工程と、
前記浸漬液付着キャリア芯材を、前記第2溶剤の沸点以上の温度下で、撹拌しながら加熱して前記第2樹脂を前記浸漬液付着キャリア芯材表面で膜化させ、浸漬液付着キャリア芯材表面に樹脂被覆層が形成された樹脂被覆キャリアを得る第2加熱乾燥工程とを含み、
第1加熱乾燥工程は、前記含浸キャリア芯材を、前記第1溶剤の沸点以上、前記発泡剤の分解温度以上かつ前記熱硬化性樹脂の硬化温度未満で加熱する第1加熱工程と、第1加熱工程で加熱した含浸キャリア芯材を、前記熱硬化性樹脂の硬化温度以上で加熱する第2加熱工程とを含むことを特徴とする樹脂被覆キャリアの製造方法である。
また本発明は、前記第1樹脂および前記第2樹脂が、熱硬化性シリコーン樹脂であることを特徴とする。
本発明によれば、樹脂被覆キャリアの製造方法は、浸漬工程と、加熱乾燥工程とを含む。浸漬工程では、樹脂および発泡剤が溶剤中に溶解または分散される浸漬液に、空隙を有する多孔質材料で構成されるキャリア芯材を浸漬し、空隙に浸漬液が含浸された含浸キャリア芯材を得る。そして加熱乾燥工程では、含浸キャリア芯材を、溶剤の沸点以上かつ発泡剤の分解温度以上の温度下で、撹拌しながら加熱する。浸漬工程で浸漬液がキャリア芯材内部の空隙に含浸するけれども、加熱乾燥工程で発泡剤の分解温度以上で加熱するので、空隙内に含浸してしまった浸漬液を、発泡剤の発泡によって発生するガスの圧力でキャリア芯材表面に押し出すことができ、空隙に樹脂が充填されるのを防止することができる。
このように、浸漬工程でキャリア芯材内部の空隙に入り込んでしまった樹脂を樹脂被覆層の形成に用いることによって、樹脂被覆キャリアの製造に必要な樹脂量を低減することができる。また、この方法で製造された樹脂被覆キャリアは、空隙に樹脂が存在しないので見掛密度が低い。見掛密度の低い樹脂被覆キャリアは、キャリア芯材内部に樹脂が充填された樹脂被覆キャリアよりも、撹拌時に樹脂被覆キャリアにかかる衝撃が低減されるので、キャリアの長寿命化を達成することができる。また撹拌トルクの低減による低消費電力化を達成することができる。さらにトナーとの見掛密度差が小さいので、現像時において樹脂被覆キャリアとトナーとの混合性が良好になり、長期間にわたって安定してトナーを帯電させることができる。
さらに、加熱乾燥工程で含浸キャリア芯材を溶剤の沸点以上で加熱するので、発泡剤の発泡によって空隙内からキャリア芯材表面に押し出された浸漬液中の溶剤を蒸発させることができ、キャリア芯材表面で樹脂を膜化することができる。そのため、キャリア芯材表面に膜厚の厚い樹脂被覆層が形成された樹脂被覆キャリアが得られる。
また本発明によれば、浸漬液は樹脂として熱硬化性樹脂を含む。そのため、浸漬工程では、空隙に熱硬化性樹脂を含む浸漬液が含浸された含浸キャリア芯材が得られる。加熱乾燥工程は、第1加熱工程と第2加熱工程とを含み、第1加熱工程で、この含浸キャリア芯材を、溶剤の沸点以上、発泡剤の分解温度以上かつ熱硬化性樹脂の硬化温度未満で加熱する。そして、第2加熱工程で、第1加熱工程で加熱した含浸キャリア芯材を、熱硬化性樹脂の硬化温度以上で加熱する。これによって、第1加熱工程で発泡剤の発泡によってキャリア芯材表面に押し出された熱硬化性樹脂を、第2加熱工程でキャリア表面で硬化させることができ、第1加熱工程でキャリア芯材表面に押し出された樹脂が再び空隙に入り込むことを防止することができる。また、キャリア芯材表面に、熱硬化性樹脂が硬化されてなる樹脂被覆層を形成することができるので、樹脂被覆層は強固なものとなる。したがって、さらなるキャリアの長寿命化を達成することができる樹脂被覆キャリアを得ることができる。
また本発明によれば、熱硬化性樹脂は、熱硬化性シリコーン樹脂である。シリコーン樹脂は表面エネルギーが低いので、熱硬化性樹脂が熱硬化性シリコーン樹脂であることによって、樹脂被覆キャリアへのトナーの付着を抑制できる。そのため、トナーとの混合性を一層良好にすることができ、長期間にわたってより安定してトナーを帯電させることができる樹脂被覆キャリアを得ることができる。
また本発明によれば、樹脂被覆キャリアの製造方法は、浸漬工程と、第1加熱乾燥工程と、付着工程と、第2加熱乾燥工程とを含む。浸漬工程では、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂および発泡剤が第1溶剤中に溶解または分散される第1浸漬液に、空隙を有する多孔質材料で構成されるキャリア芯材を浸漬し、熱硬化性樹脂を含む第1浸漬液が空隙に含浸された含浸キャリア芯材を得る。そして第1加熱乾燥工程では、含浸キャリア芯材を、第1溶剤の沸点以上かつ発泡剤の分解温度以上の温度下で、撹拌しながら加熱する。浸漬工程で浸漬液がキャリア芯材内部の空隙に含浸するけれども、第1加熱乾燥工程で発泡剤の分解温度以上で加熱するので、空隙内に含浸してしまった浸漬液を、発泡剤の発泡によって発生するガスの圧力でキャリア芯材表面に押し出すことができ、空隙に第1樹脂が充填されるのを防止することができる。
ここで、加熱乾燥工程は第1加熱工程と第2加熱工程とを含む。第1加熱工程では、この含浸キャリア芯材を、第1溶剤の沸点以上、発泡剤の分解温度以上かつ熱硬化性樹脂の硬化温度未満で加熱し、第2加熱工程では、第1加熱工程で加熱した含浸キャリア芯材を、熱硬化性樹脂の硬化温度以上で加熱する。第2加熱工程において熱硬化性樹脂の硬化温度以上でキャリア芯材を加熱することによって、第1加熱工程で発泡剤の発泡によってキャリア芯材表面に押し出された熱硬化性樹脂を、キャリア表面で硬化させることができ、第1加熱工程で含浸キャリア芯材表面に押し出された第1樹脂が再び空隙に入り込むことを防止することができる。また付着工程で、第2樹脂が第2溶剤中に溶解した第2浸漬液に樹脂層形成キャリア芯材を浸漬し、樹脂層形成キャリア芯材表面に第2浸漬液が付着した浸漬液付着キャリア芯材を得るが、樹脂層が熱硬化性樹脂を含むので、第2浸漬液に樹脂層形成キャリア芯材を浸漬した際に、樹脂層が溶解することを防止することができる。
第2加熱乾燥工程では、浸漬液付着キャリア芯材を、第2溶剤の沸点以上の温度下で、撹拌しながら加熱する。浸漬液付着キャリア芯材を第2溶剤の沸点以上の温度下で加熱するので、第2樹脂が浸漬液付着キャリア芯材表面で膜化し、浸漬液付着キャリア芯材表面に樹脂被覆層が形成される。このように樹脂層の表面に樹脂被覆層を形成することによって、表面が平滑な樹脂被覆層を有し、耐久性に優れる樹脂被覆キャリアを得ることができる。
また、このようにキャリア芯材内部の空隙に入り込んでしまった第1樹脂を樹脂層の形成に用いることによって、樹脂被覆キャリアの製造に必要な樹脂量を低減することができる。また、この樹脂被覆キャリアは、空隙に樹脂が存在しないので見掛密度が低い。見掛密度の低い樹脂被覆キャリアは、キャリア芯材内部に樹脂が充填された樹脂被覆キャリアよりも、撹拌時に樹脂被覆キャリアにかかる衝撃が低減されるので、キャリアの長寿命化を達成することができる。また撹拌トルクの低減による低消費電力化を達成することができる。さらにトナーとの見掛密度差が小さいので、現像時において樹脂被覆キャリアとトナーとの混合性が良好になり、長期間にわたって安定してトナーを帯電させることができる。
また本発明によれば、第1樹脂および第2樹脂は、熱硬化性シリコーン樹脂である。シリコーン樹脂は表面エネルギーが低いので、樹脂被覆層が熱硬化性シリコーン樹脂で形成されることによって、トナーの付着を抑制できる樹脂被覆キャリアとすることができる。また、樹脂層も樹脂被覆層と同様に熱硬化シリコーン樹脂で形成されることによって、樹脂層は、樹脂被覆層との接着性、および連続性を確保することができるので、トナーに対する帯電性が良好で、トナーの付着を抑制できる樹脂被覆キャリアとすることができる。したがって、トナーとの混合性を一層良好にすることができ、長期間にわたってより安定してトナーを帯電させることができる。
本発明の第1の実施形態である樹脂被覆キャリアの製造方法を示す工程図である。 キャリア芯材作製工程S1で得られるキャリア芯材51の構成を示す断面図である。 被覆工程S2で得られる樹脂被覆キャリア50の構成を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態である樹脂被覆キャリアの製造方法を示す工程図である。 被覆工程S12で得られる樹脂被覆キャリア54の構成を示す断面図である。
1、樹脂被覆キャリアの製造方法
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態である樹脂被覆キャリアの製造方法を示す工程図である。本実施形態の樹脂被覆キャリアの製造方法は、キャリア芯材作製工程S1と、被覆工程S2とを含む。
(1)キャリア芯材作製工程
ステップS1のキャリア芯材作製工程では、図2に示すようなキャリア芯材を作製する。図2は、キャリア芯材作製工程S1で得られるキャリア芯材51の構成を示す断面図である。図2に示すように、キャリア芯材51は、内部に空隙51aが形成されて、表面細孔51bを有する多孔質材料で構成されている。キャリア芯材作製工程S1は、秤量工程と、混合工程と、粉砕工程と、造粒工程と、仮焼工程と、焼成工程と、解砕工程と、分級工程とを含む。
[秤量工程、混合工程]
本工程では、キャリア芯材51の複数の原材料を秤量し、混合して金属原料混合物を得る。2種類以上の磁性酸化物を用いる場合には、2種類以上の磁性酸化物の配合比を、磁性酸化物の目的とする組成と一致させて秤量する。
キャリア芯材51の原材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、鉄、銅、ニッケルおよびコバルトなどの磁性金属、ならびにフェライトおよびマグネタイトなどの磁性酸化物などを使用できる。
磁性酸化物であるフェライトは、一般にMO・Feなる組成をもつ一群の鉄酸化物である。Mとしては、たとえば、Fe2+,Mn2+,Mg2+,Co2+,Ni2+,Cu2+,Zn2+などの2価の金属イオンが挙げられる。フェライトは、これらの2価の金属イオンを含む金属酸化物と酸化鉄との粉末を混合し、圧縮成形後、焼成することによって得られるが、前記金属酸化物は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。金属酸化物が混合組成であることによって、キャリア芯材51における磁気的特性の制御可能範囲が広くなる。
Mの原材料としては、Fe2+を含む金属酸化物であればFeが好適である。Mn2+を含む金属酸化物であればMnCOが好適であるが、Mnなどでもよい。Mg2+を含む金属酸化物であればMgCOおよびMg(OH)などが好適である。
フェライトには、軟磁性を示すソフトフェライトと、硬磁性を示すハードフェライトとがあるが、本実施形態において磁性酸化物は、ソフトフェライトであることが好ましい。ハードフェライトは磁石であるため残留磁化が大きく、磁性酸化物がハードフェライトであると、樹脂被覆キャリア粒子同士が互いに付着して、現像剤としての流動性が低下したり、樹脂被覆キャリア50がマグネットローラから離れにくくなるおそれがあるが、磁性酸化物がソフトフェライトであることによって、10emu/g以下まで残留磁化を小さくでき、現像剤としての流動性が良好で、マグネットローラなどから離れやすい樹脂被覆キャリア50とすることができる。
次に、金属原料混合物中に樹脂粒子を添加する。ここで添加する樹脂粒子としては、ポリエチレンおよびアクリルなどの炭素系の樹脂粒子が挙げられる。炭素系樹脂粒子は、後述する仮焼工程にて燃焼し、燃焼時に発生するガスによって、仮焼粉中に中空構造を形成させる。
樹脂粒子としては、体積平均粒子径が2〜8μmであるものを使用できる。また、樹脂粒子の添加量は、キャリア芯材51の原材料(金属原料混合物)の全量に対して0.1〜20wt%が好ましい。
[粉砕工程]
本工程では、金属原料混合物および樹脂粒子を、振動ミルなどの粉砕機中に導入し、金属原料混合物および樹脂粒子の体積平均粒子径が0.5〜2.0μm、好ましくは1μmとなるまで粉砕する。次いで、この粉砕物に水と、0.5〜2wt%のバインダと、0.5〜2wt%の分散剤とを加えることで、固形分濃度が50〜90wt%のスラリーとし、該スラリーをボールミルなどで湿式粉砕する。ここで、バインダとしては、ポリビニルアルコールなどが好ましく、分散剤としては、ポリカルボン酸アンモニウムなどが好ましい。
[造粒工程]
本工程では、湿式粉砕されたスラリーを噴霧乾燥機に導入し、100〜300℃の熱風中に噴霧して乾燥させ、体積平均粒子径10〜200μmの造粒粉を得る。得られた造粒粉は、本製造方法で製造される樹脂被覆キャリア50の体積平均粒子径を考慮して、それを外れる粗粒および微粉を、振動ふるいで除外して粒度調整する。具体的には、樹脂被覆キャリア50の体積平均粒子径は25〜50μmが好ましいことから、当該造粒粉の体積平均粒子径を15〜100μmに調整しておくことが好ましい。
[仮焼工程]
本工程では、前記造粒粉を、800℃〜1000℃に加熱した炉に投入し、大気下で仮焼して仮焼品とする。このとき、樹脂粒子が燃焼し発生するガスにより造粒粉中に中空構造が形成される。
[焼成工程]
本工程では、中空構造が形成された仮焼品を、1100〜1250℃に加熱した炉に投入して焼成し、フェライト化して焼成物とする。焼成時の温度が高いと鉄の酸化が進行し、磁力が低下することから、キャリア芯材51の残留磁化はたとえば焼成温度で調整することができる。該焼成時の雰囲気は、キャリア芯材原材料のうち、磁性酸化物などの金属原料の種類によって適宜選択される。たとえば、金属原料がFeおよびMn(モル比100:0〜50:50)である場合は窒素雰囲気とする。金属原料がFe,MnおよびMgの場合は窒素雰囲気や酸素分圧調製雰囲気が好ましく、金属原料がFe,MnおよびMgの場合であってMgのモル比が30%を超える場合は大気雰囲気でもよい。
[解砕工程、分級工程]
本工程では、焼成工程で得られた焼成物をハンマーミルなどによる解粒で粗粉砕し、次に気流分級機で1次分級する。さらに振動ふるいまたは超音波ふるいにて粒度をそろえた後、磁場選鉱機にかけて非磁性成分を除去することによって、内部に空隙51aを有したキャリア芯材51を得る。
このようにして得られたキャリア芯材51は、見掛密度が1.6g/cm以上2.0g/cm以下であり、表面細孔51bの面積平均径が0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。表面細孔51bの面積平均径が1.0μmを越えると、キャリア芯材51内部の空隙51aが多すぎるので、得られる樹脂被覆キャリア50の耐久性およびトナー帯電性が低下する。また、後述する被覆工程で、凹んだ樹脂被覆層がキャリア芯材51表面に形成されるので、トナー帯電性が低下したり、トナー成分が付着するおそれがある。表面細孔51bの面積平均径が0.1μm未満であると、キャリア芯材51内部の空隙51aが少なすぎるので、充分に見掛密度の低い樹脂被覆キャリア50を得ることができない。表面細孔51bの面積平均径が0.1μm以上1.0μm以下であることによって、耐久性およびトナー帯電性が良好な、充分に見掛密度の低い樹脂被覆キャリア50を得ることができる。ここで、表面細孔51bの面積平均径とは、キャリア芯材51の表面に形成される表面細孔51bを小径側から積算した累積面積分布において、全表面細孔に対する累積面積の面積百分率が50%になる円相当径である。
(2)被覆工程
ステップS2の被覆工程では、図3に示すような樹脂被覆キャリア50を作製する。図3は、被覆工程S2で得られる樹脂被覆キャリア50の構成を示す断面図である。樹脂被覆キャリア50は、像担持体である感光体上に形成された静電潜像を現像して可視像化する電子写真方式の現像剤に用いられるものであり、トナーを所望の帯電量に安定して帯電させる機能、およびトナーを感光体に搬送する機能という2つの基本機能を有する。被覆工程S2は、キャリア芯材作製工程S1で得られたキャリア芯材51の表面に樹脂被覆層52を形成する工程であり、浸漬工程S2−1と、加熱乾燥工程S2−2とを含む。
[浸漬工程]
ステップS2−1の浸漬工程では、樹脂を含む樹脂被覆層組成物と、前記樹脂を溶かすトルエンなどの溶剤と、発泡剤とを含む浸漬液に、内部に空隙51aを有する多孔質磁性材料からなるキャリア芯材51を浸漬させて、含浸キャリア芯材を得る。含浸キャリア芯材は、キャリア芯材51表面に浸漬液が付着するとともに、表面細孔51bを介して空隙51a内に浸漬液が入り込んだものである。空隙51aに入り込んだ浸漬液は、後述する加熱乾燥工程S2−2で、発泡剤の発泡によってキャリア芯材51表面に押し出される。浸漬液の添加量は、100重量部のキャリア芯材51に対して5重量部以上30重量部以下が好ましい。またキャリア芯材51を塗布液に浸漬させる時間は、30秒間以上20分間以下が好ましい。
樹脂被覆層組成物を構成する樹脂としては、シリコーン樹脂やアクリル樹脂などの公知の樹脂を使用できるが、熱硬化性樹脂であることが好ましく、熱硬化シリコーン樹脂であることがより好ましい。シリコーン樹脂は表面エネルギーが低いので、樹脂被覆層組成物を構成する樹脂が熱硬化性シリコーン樹脂であることによって、樹脂被覆キャリア50へのトナーの付着を抑制できる。そのため、トナーとの混合性を一層良好にすることができ、長期間にわたってより安定してトナーを帯電させることができる樹脂被覆キャリア50を得ることができる。本実施形態では、樹脂被覆層組成物を構成する樹脂として熱硬化性樹脂である熱硬化シリコーン樹脂を用いており、熱硬化性樹脂を用いる場合には、加熱乾燥工程S2−2は、図1のように第1加熱工程S2−2−(a)と、第2加熱工程S2−2−(b)とを含む。樹脂の添加量は、100重量部のキャリア芯材51に対して1重量部以上30重量部以下が好ましい。
樹脂被覆層組成物としては、樹脂とともに導電性粒子やカップリング剤を用いることが好ましい。これによって、樹脂被覆キャリア50は、トナーへの電荷付与性が向上されたものとなる。
導電性粒子としては、たとえば、導電性カーボンブラック、導電性酸化チタンおよび酸化錫などの酸化物が用いられる。少ない添加量で導電性を発現させるには、カーボンブラックが好適であるが、カラートナーに対しては樹脂被覆キャリア50の樹脂被覆層52からのカーボン脱離が懸念される場合がある。このような場合には、アンチモンをドープした導電性酸化チタンなどが好適である。導電性粒子の添加量は、樹脂100重量部に対して1重量部以上20重量部以下が好ましい。
カップリング剤としては、シランカップリング剤およびチタンカップリング剤をあげることができる。カップリング剤の添加量は、樹脂100重量部に対して1重量部以上20重量部以下が好ましい。
発泡剤は、後述する加熱乾燥工程S2−2で所定の温度(分解温度)以上で加熱することで分解され、発泡してガスを発生する。このガスの圧力によって、キャリア芯材51の空隙51aに入り込んだ浸漬液が表面細孔51bを介してキャリア芯材51表面に押し出される。
発泡剤としては公知の発泡剤が使用でき、たとえば、炭酸水素ナトリウム(NaHCO、分解温度:140〜170℃、発生ガス量:120ml/g)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT、分解温度:205℃、発生ガス量:260ml/g)、アゾジカルボンアミド(ADCA、分解温度:200〜210℃、発生ガス量:270ml/g)、p,p'-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH、分解温度:155〜160℃、発生ガス量:115〜125ml/g)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA、分解温度:245℃、発生ガス量:90ml/g)などが挙げられる。
このように、発泡剤は種類によって発生ガス量が異なるので、発泡剤の添加量は発生ガス量によって適宜調整する必要がある。また、表面細孔51bの面積平均径の大きいキャリア芯材51ほど、空隙51aに多くの浸漬液が含浸しており、空隙51aに入り込んだ浸漬液をキャリア芯材51表面に押し出すために高いガス圧力が必要となるので、発泡剤の添加量はキャリア芯材51の表面細孔51bの面積平均径によっても適宜調整する必要がある。
また、キャリア芯材51内部の空隙の割合の大きいキャリア芯材51ほど、空隙51aに多くの浸漬液が含浸しており、空隙51aに入り込んだ浸漬液をキャリア芯材51表面に押し出すために高いガス圧力が必要となるので、発泡剤の添加量はキャリア芯材51内部の空隙の割合によっても適宜調整してよい。
たとえば、表面細孔51bの面積平均径が1.0μmのキャリア芯材51と発生ガス量200ml/gの発泡剤とを用いる場合は、発泡剤の添加量は100重量部のキャリア芯材51に対して0.1重量部以上5重量部以下が好ましく、表面細孔51bの面積平均径が0.6μmのキャリア芯材51と発生ガス量100ml/gの発泡剤とを用いる場合は、発泡剤の添加量は100重量部のキャリア芯材51に対して0.5重量部以上5重量部以下が好ましい。
また、発泡剤の体積平均粒子径は、1μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましい。これによって、キャリア芯材51内部の空隙51aに発泡剤を入り込み易くすることができる。
本工程では、浸漬液をキャリア芯材51内部の空隙51aにすばやく含浸させるために、まずキャリア芯材51内部の空気を取り除き、その後、浸漬液とキャリア芯材51との混合を真空中で行うことが好ましい。具体的には、キャリア芯材51を入れた容器を減圧し、その状態で浸漬液を投入することによって、空隙51aに含まれる気泡の少ない含浸キャリア芯材を得ることができる。これによって、得られる樹脂被覆キャリア50の表面細孔51bの面積平均径を、浸漬液に添加する発泡剤の添加量によって安定して制御できるので、得られる樹脂被覆キャリア50の見掛密度のバラツキが少なくなり、品質が安定する。キャリア芯材51を入れた容器内の圧力は、10mmHg以上20mmHg以下に調整することが好ましい。またこのように減圧した場合、キャリア芯材51の浸漬液への浸漬時間は、30秒間以上10分間以下が好ましい。
ステップS2−2の加熱乾燥工程では、浸漬工程S2−1で得られた含浸キャリア芯材を撹拌しながら加熱することによって、キャリア芯材51表面に樹脂被覆層52を形成し、樹脂被覆キャリア50を得る。熱硬化性シリコーン樹脂を用いる本実施形態では、加熱乾燥工程S2−2は、第1加熱工程S2−2−(a)と、第2加熱工程S2−2−(b)とを含む。
[第1加熱工程]
ステップS2−2−(a)の第1加熱工程では、含浸キャリア芯材を、溶剤の沸点以上、発泡剤の分解温度以上かつ熱硬化性樹脂の硬化温度未満で加熱する。浸漬工程S2−1で浸漬液がキャリア芯材51内部の空隙51aに含浸するけれども、本工程で含浸キャリア芯材を発泡剤の分解温度以上で加熱するので、空隙51a内に含浸してしまった浸漬液を、発泡剤の発泡によって発生するガスの圧力でキャリア芯材51表面に押し出すことができ、空隙51aに樹脂が充填されるのを防止することができる。
このようにキャリア芯材51内部の空隙51aに入り込んでしまった樹脂を樹脂被覆層52の形成に用いることによって、樹脂被覆キャリア50の製造に必要な樹脂量を低減することができる。また、この方法で製造される樹脂被覆キャリア50は、空隙51aに樹脂が存在しないので見掛密度が低い。見掛密度の低い樹脂被覆キャリア50は、キャリア芯材内部に樹脂が充填された樹脂被覆キャリアよりも、撹拌時に樹脂被覆キャリアにかかる衝撃が低減されるので、キャリアの長寿命化を達成することができる。また撹拌トルクの低減による低消費電力化を達成することができる。さらにトナーとの見掛密度差が小さいので、現像時において樹脂被覆キャリア50とトナーとの混合性が良好になり、長期間にわたって安定してトナーを帯電させることができる。
さらに、本工程で含浸キャリア芯材を溶剤の沸点以上で加熱するので、発泡剤の発泡によって空隙51a内からキャリア芯材51表面に押し出された浸漬液中の溶剤を蒸発させることができ、キャリア芯材51表面で樹脂を膜化することができる。そのため、キャリア芯材51表面に膜厚の厚い樹脂被覆層52が形成された樹脂被覆キャリア50が得られる。
このように、浸漬液を空隙51aから押し出し、キャリア芯材51表面で樹脂を膜化するためには、発泡剤の分解温度と、熱硬化性樹脂の硬化温度と、溶剤の沸点とを考慮して浸漬液の構成成分を選択することが重要となる。たとえば発泡剤の分解温度は、溶剤の沸点よりも大きいことが好ましく、発泡剤の分解温度と溶剤の沸点との差が10℃以上100℃以下であることが好ましい。発泡剤の分解温度と溶剤の沸点との差が10℃未満であると、溶剤が留去されて浸漬液の粘度がある程度高まる前に空隙51a内の発泡剤が発泡するので、含浸キャリア芯材表面に押し出された浸漬液が固化することなく、再び空隙51aに入り込むおそれがある。また、発泡剤の分解温度と溶剤の沸点との差が100℃を超えると、空隙51a内の発泡剤が発泡した時点で、含浸キャリア芯材表面の浸漬液の粘度が不所望に高く、空隙51a内の発泡剤が発泡しても、空隙51a内の浸漬液が含浸キャリア芯材表面に押し出されにくくなり、空隙51a内に樹脂などの樹脂被覆層組成物が残留するおそれがある。
また、熱硬化性樹脂の硬化温度は、発泡剤の分解温度および溶剤の沸点よりも高く、熱硬化性樹脂の硬化温度と、発泡剤の分解温度または溶剤の沸点との差が5℃以上であることが好ましい。この差が5℃未満であると、第1加熱工程で熱硬化性樹脂の硬化が起こり、含浸キャリア芯材表面に押し出される前に空隙51a内で熱硬化性樹脂が硬化し、発泡剤が発泡しても浸漬液が含浸キャリア芯材表面に押し出されないおそれがある。
さらに、浸漬液において樹脂と溶剤との割合は、1:9〜2:3が好ましい。浸漬液における樹脂の量が多すぎると、浸漬液の粘度が高くなりすぎ、空隙51a内の発泡剤が発泡しても、空隙51a内の浸漬液が含浸キャリア芯材表面に押し出されにくくなり、空隙51a内に樹脂などの樹脂被覆層組成物が残留するおそれがある。浸漬液における樹脂の量が少なすぎると、浸漬液の粘度が高くなるのが遅くなるので、空隙51a内の発泡剤が発泡して空隙51a内の浸漬液が含浸キャリア芯材表面に押し出されても、含浸キャリア芯材表面に押し出された浸漬液が固化することなく、再び空隙51aに入り込むおそれがある。
第1加熱工程S2−2−(a)の時間は、10分間以上120分間以下が好ましい。第1加熱工程の時間が10分間未満であると、発泡しない発泡剤が残り、空隙51a内に浸漬液が残留する。第1加熱工程の時間が120分間を超えると、エネルギーが多く必要で、かつ時間がかかるために効率が悪い。
なお、含浸キャリア芯材表面の発泡剤は、含浸キャリア芯材内部の発泡剤よりも早く発泡する。そのため、含浸キャリア芯材表面の発泡剤が発泡して含浸キャリア芯材表面に凹凸が形成されても、含浸キャリア芯材表面の発泡剤よりも後で発泡する空隙51aの発泡剤の発泡によって含浸キャリア芯材表面に押し出された樹脂によって凹凸が低減される。
[第2加熱工程]
ステップS2−2−(b)の第2加熱工程では、第1加熱工程S2−2−(a)で加熱した含浸キャリア芯材を、熱硬化性樹脂の硬化温度以上で加熱する。これによって、キャリア芯材51表面に膜厚の厚い樹脂被覆層52が形成された樹脂被覆キャリア50を得ることができる。第1加熱工程S2−2−(a)で含浸キャリア芯材表面に押し出された熱硬化性樹脂を本工程で硬化させることによって、第1加熱工程S2−2−(a)で含浸キャリア芯材表面に押し出された樹脂が再び空隙51aに入り込むことを防止することができる。また、硬化された樹脂を含むことで、強固な樹脂被覆層52を形成することができる。したがって、さらなるキャリアの長寿命化を達成することができる樹脂被覆キャリア50を得ることができる。このようにキャリア芯材51内部の空隙51aに入り込んだ樹脂を樹脂被覆層52の形成に用いることによって、樹脂被覆キャリア50の製造に必要な樹脂量を低減することができる。
なお、樹脂被覆層組成物が熱硬化性樹脂を含まない場合は、含浸キャリア芯材を、溶剤の沸点以上、かつ発泡剤の分解温度以上で加熱することによって、キャリア芯材51表面に樹脂被覆層52を形成でき、樹脂被覆キャリア50を得ることができる。この場合、含浸キャリア芯材の加熱温度の上限は、溶剤の沸点または発泡剤の分解温度よりも50℃高い温度である。上記加熱温度の上限を越える温度で含浸キャリア芯材を加熱すると、浸漬液の粘度が不所望に早い時点で高くなるので、空隙51a内の発泡剤が発泡しても、空隙51a内の浸漬液が含浸キャリア芯材表面に押し出されにくくなる。
また、樹脂被覆層組成物が熱硬化性樹脂を含まない場合は、樹脂被覆キャリア50を熱風球形化装置などで球形化処理してもよい。それによって、含浸キャリア芯材表面の発泡剤が発泡することで形成される凹凸を、さらに低減させることができる。
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態である樹脂被覆キャリアの製造方法を示す工程図である。本実施形態の樹脂被覆キャリアの製造方法は、キャリア芯材作製工程S11と、被覆工程S12とを含む。
(1)キャリア芯材作製工程
ステップS11のキャリア芯材作製工程は、前述のキャリア芯材作製工程S1と同様である。
(2)被覆工程
ステップS12の被覆工程では、図5に示すような樹脂被覆キャリア54を作製する。図5は、被覆工程S12で得られる樹脂被覆キャリア54の構成を示す断面図である。樹脂被覆キャリア54は、キャリア芯材51表面に、第1樹脂層55および第2樹脂層56からなる樹脂被覆層57が形成される。被覆工程S12は、キャリア芯材作製工程S11で得られたキャリア芯材51の表面に樹脂被覆層57を形成する工程であり、浸漬工程S12−1と、第1加熱乾燥工程S12−2と、付着工程S12−3と、第2加熱乾燥工程S12−4とを含む。
[浸漬工程]
ステップS12−1の浸漬工程では、熱硬化性樹脂を含む樹脂および発泡剤が溶剤中に溶解または分散される第1浸漬液に、キャリア芯材51を浸漬し、空隙51aに第1浸漬液が含浸された含浸キャリア芯材を得る。第1浸漬液の原料およびキャリア芯材51の浸漬条件などは、前述の浸漬工程S2−1での浸漬液の原料およびキャリア芯材51の浸漬条件などと同様であるが、本実施形態では、樹脂被覆層組成物である樹脂は熱硬化性樹脂を含む樹脂を用いる。
[第1加熱乾燥工程]
ステップS12−2の第1加熱乾燥工程では、樹脂層形成キャリア芯材を得る。本工程での含浸キャリア芯材の加熱条件などは、前記加熱乾燥工程S2−2での含浸キャリア芯材の加熱条件などと同様である。
[付着工程]
ステップS12−3の付着工程では、樹脂が溶剤中に溶解される第2浸漬液に樹脂層形成キャリア芯材を浸漬する。これによって、樹脂層形成キャリア芯材表面に第2浸漬液が付着した浸漬液付着キャリア芯材が得られる。第2浸漬液は、発泡剤を含まないこと以外は第1浸漬液と同様である。
なお、第1浸漬液に溶解させる熱硬化性樹脂を熱硬化性シリコーン樹脂とした場合は、第2浸漬液にも熱硬化性シリコーン樹脂を含む樹脂を溶解させることが好ましい。シリコーン樹脂は表面エネルギーが低いので、樹脂被覆層57が熱硬化性シリコーン樹脂を含む樹脂で形成されることによって、トナーの付着を抑制できる樹脂被覆キャリア54とすることができる。また、樹脂層も樹脂被覆層57と同様に熱硬化シリコーン樹脂を含む樹脂で形成されることによって、樹脂層は、樹脂被覆層57との接着性、および連続性を確保することができるので、トナーに対する帯電性が良好で、トナーの付着を抑制できる樹脂被覆キャリア54とすることができる。したがって、トナーとの混合性を一層良好にすることができ、長期間にわたってより安定してトナーを帯電させることができる。
前述のように、本実施形態では、樹脂被覆層組成物である樹脂として熱硬化性樹脂を含む樹脂を用いるが、これは、樹脂層形成キャリア芯材を第2浸漬液に浸漬させた際に、樹脂層形成キャリア芯材表面の第1樹脂層が、第2浸漬液に溶解しないようにするためである。第2浸漬液に樹脂層形成キャリア芯材を浸漬する時間は、30秒間以上30分間以下が好ましい。
[第2加熱乾燥工程]
ステップS12−4の第2加熱乾燥工程では、浸漬液付着キャリア芯材を、溶剤の沸点以上の温度下で撹拌しながら加熱して、樹脂を浸漬液付着キャリア芯材表面で膜化させて浸漬液付着キャリア芯材表面に第2樹脂層56を形成させ、キャリア芯材51表面に樹脂被覆層57が形成された樹脂被覆キャリア54を得る。
第1加熱乾燥工程S12−2で得られた樹脂層形成キャリア芯材の表面は、発泡剤の発泡によって凹凸が形成されている場合があるが、付着工程S12−3および第2加熱乾燥工程S12−4を行い、第1樹脂層55表面を第2樹脂層56で被覆することによって、表面の平滑な樹脂被覆層57を有し、耐久性に優れる樹脂被覆キャリア54を得ることができる。また、このように第1樹脂層55表面の凹凸を第2樹脂層56で被覆するので、第1の実施形態の浸漬液よりも第1浸漬液に添加する発泡剤の量を多くし、または発生ガス量の多い発泡剤を用い、空隙51aから確実に浸漬液を押し出すようにすることができる。
上記の方法で製造された樹脂被覆キャリア54は、第1加熱乾燥工程S12−2において、浸漬工程S12−1で浸漬液がキャリア芯材51内部の空隙51aに含浸してしまった浸漬液を、発泡剤の発泡によって発生するガスの圧力でキャリア芯材51表面に押し出すことができ、空隙51aに樹脂が充填されるのを防止することができるので、前述の樹脂被覆キャリア50と同様に見掛密度が低くなる。
このようにして得られる樹脂被覆キャリア50,54は、その体積平均粒子径が25〜50μmであることが好ましい。体積平均粒子径が25μm以上である樹脂被覆キャリア50,54は、静電潜像が形成される像担持体にキャリア自身が付着する現象であるキャリア付着が少なく、画像品質が低下するのを防止することができる。また、体積平均粒子径が50μm以下である樹脂被覆キャリア50,54は、トナー保持能力が高く、トナーによる形成画像の粒状性の悪化を抑制することができる。したがって、体積平均粒子径が25〜50μmの樹脂被覆キャリア50,54は、高精細な高画質画像を形成することができる。
2、2成分現像剤
2成分現像剤は、前述した樹脂被覆キャリア50または樹脂被覆キャリア54と、結着樹脂および着色剤を含むトナーとで構成される。樹脂被覆キャリア50および樹脂被覆キャリア54は、トナーとの見掛密度差が小さいので、現像時においてトナーとの混合性が良好になり、長期間にわたって安定してトナーを帯電させることができる。そのため、長期間にわたって高画質な画像を安定して形成することができる。以下、樹脂被覆キャリア50を用いる場合について記載する。
(1)トナー
トナーは、トナー母粒子を含み、トナー母粒子は結着樹脂および着色剤を必須成分とし、それ以外に、電荷制御剤、離型剤などを含む。また、トナーは、粒子径の異なる2種類以上の外添剤を含む。
(結着樹脂)
結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、黒トナー用またはカラートナー用の公知の結着樹脂を使用することができる。たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。また、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応を行って得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(着色剤)
着色剤としては、所望の色に応じて種々の着色剤を用いることができ、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、ブラックトナー用着色剤などが挙げられる。着色剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。
着色剤はマスターバッチの形態で使用されてもよい。着色剤のマスターバッチは、一般的なマスターバッチと同様にして製造できる。たとえば、合成樹脂の溶融物と着色剤とを混練して着色剤を合成樹脂中に均一に分散させた後、得られる溶融混練物を造粒することによって製造できる。合成樹脂には、トナーの結着樹脂と同種のものか、またはトナーの結着樹脂に対して良好な相溶性を有するものが使用される。このとき、合成樹脂と着色剤との使用割合は、特に制限されないが、好ましくは合成樹脂100重量部に対して、30〜100重量部である。また、マスターバッチは、粒径2〜3mm程度に造粒される。
着色剤の使用量は、特に制限されないが、好ましくは結着樹脂100重量部に対して5〜20重量部である。これはマスターバッチ量ではなく、マスターバッチに含まれる着色剤そのものの量である。着色剤をこの範囲で用いることによって、トナーの各種物性を損なうことなく、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
(電荷制御剤)
電荷制御剤は、トナーの摩擦帯電性を制御することを目的として添加される。電荷制御剤としては、この分野で常用される正電荷制御用または負電荷制御用の電荷制御剤を使用できる。正電荷制御用の電荷制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
負電荷制御用の電荷制御剤としては、たとえば、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。この中でもホウ素化合物は重金属を含まないものとして特に好ましい。
正電荷制御用電荷制御剤と負電荷制御用電荷制御剤とは、それぞれの用途に応じて使い分ければよい。電荷制御剤は、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。電荷制御剤の使用量は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部である。
(離型剤)
離型剤としては、この分野で常用されるものが使用でき、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。なお、誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。離型剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部である。
(外添剤)
トナーの外添剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。本実施形態では、粒子径の異なる2種類以上の外添剤を併用し、少なくとも1種類の1次粒子径の体積平均粒子径が0.1〜0.2μmである。外添剤として、少なくとも1種類の1次粒子径が0.1〜0.2μmであるものを用いると、特にカラートナーにおいて、転写性が向上するとともに、外添剤のキャリア表面への付着による帯電低下を引き起こすことなく、長期的かつ安定的にトナーを帯電させことができる。外添剤の使用量は、特に制限されないが、好ましくはトナーが100重量部に対して0.1〜3.0重量部である。
これらトナーの原料は、外添剤を除いて、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミルおよびQ型ミキサなどの混合機により混合され、得られる原料混合物は2軸混練機、1軸混練機および連続式2本ロール型混練機などの混練機によって70〜180℃程度の温度にて溶融混練された後、冷却固化される。冷却固化後のトナーの原料の溶融混練物は、カッターミル、フェザーミルなどによって粗粉砕される。得られる粗粉砕物は、微粉砕される。微粉砕には、ジェットミル、流動層型ジェット粉砕機などが用いられる。これらの粉砕機は、複数の方向からトナー粒子を含む気流を衝突させることによってトナー粒子同士を衝突させてトナー粒子の粉砕を行うものである。これによって、特定の粒度分布を有する非磁性のトナー母粒子を製造できる。トナー母粒子の粒子径は、特に限定されるものではないが、体積平均粒子径が3〜10μmの範囲が好ましい。さらに必要に応じて分級などの粒度調整を行ってもよい。このように製造されたトナー母粒子に対して上記外添剤を公知の方法で添加する。なお、トナーの製造方法は上記に限定されるものではない。
(2)2成分現像剤
2成分現像剤は、上記樹脂被覆キャリア50と上記トナーとを混合することによって製造される。トナーと樹脂被覆キャリア50との混合割合は、特に制限はないが、高速画像形成装置(A4サイズの画像で40枚/分以上)に用いることを考慮すると、樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径/トナーの体積平均粒子径が5以上の状態で、樹脂被覆キャリア50の総表面積(全樹脂被覆キャリア粒子の表面積の総和)に対するトナーの総投影面積(全トナー粒子の投影面積の総和)の割合((トナーの総投影面積/樹脂被覆キャリア50の総表面積)×100)が30〜70%になればよい。これによって、トナーの帯電性が充分良好な状態で安定的に維持され、高速画像形成装置においても高画質画像を安定的に、かつ長期的に形成できる好適な2成分現像剤として使用できる。
たとえば、トナーの体積平均粒子径が6.5μm、樹脂被覆キャリア50の体積平均粒子径が50μm、樹脂被覆キャリア50の総表面積に対するトナーの総投影面積の割合を30〜70%にすると、2成分現像剤において樹脂被覆キャリア100重量部に対してトナー2.2〜5.3重量部程度を含むようになる。このような2成分現像剤で高速現像すると、トナー消費量とトナーの消費に応じて現像装置の現像槽に供給されるトナー供給量とがそれぞれ最大になり、それでも需給バランスが損なわれることがない。そして、2成分現像剤における樹脂被覆キャリア50の量が2.2〜5.3重量部程度よりも多くなると、帯電量がより低くなる傾向があり所望の現像特性が得られないばかりか、トナー供給量よりもトナー消費量の方が多くなり、トナーに充分な電荷を付与できなくなり、画質の劣化を招く。反対に、樹脂被覆キャリア50の量が少ない場合は帯電量が高くなる傾向があり、樹脂被覆キャリア50からトナーが電界によって分離しにくくなり、結果として画質の劣化を招く。
本実施形態において、トナーの総投影面積は、以下のように算出する。トナーの比重を1.0とし、コールターカウンタ(商品名:コールターカウンタ・マルチサイザーII、ベックマン・コールター社製)で得られた体積平均粒子径を基に算出する。すなわち、混合するトナー重量に対するトナー個数を算出し、トナー個数×トナー面積(円と仮定して算出)をトナー総投影面積とする。同様に、樹脂被覆キャリア50の表面積はマイクロトラック(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装株式会社製)より得られた粒子径を基に混合する樹脂被覆キャリア重量から総表面積を算出する。このときの樹脂被覆キャリア50の比重は3.7とする。上記で得られた、(トナーの総投影面積/樹脂被覆キャリア50の総表面積)×100で混合比を算出する。
以下に本発明に係る実施例および比較例を記載する。本発明はその要旨を超えない限り、本実施例に限定されるものではない。以下において、「部」は「重量部」を示す。また、特に断らない限り「%」は「重量%」を示す。
なお、実施例および比較例で用いた、キャリア芯材の見掛密度、キャリア芯材の表面細孔の面積平均径、キャリアの体積平均粒子径は、以下のようにして測定した。
[キャリア芯材および樹脂被覆キャリアの見掛密度]
キャリア芯材の見掛密度は、JIS Z2504 2000に準拠して測定した。樹脂被覆キャリアの見掛密度も同様にして測定した。
[樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径]
エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテルHLB13.6)5% 10mLに測定試料約10〜15mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散した。このうち約1mLをマイクロトラックMT3000(日機装株式会社)の所定箇所に加えた後、1分間撹拌し散乱光強度が安定したのを確認して測定を行った。
[キャリア芯材の表面細孔の面積平均径]
電子顕微鏡(商品名:VE−9500、株式会社キーエンス製)によって1000倍の倍率でキャリア芯材を写真撮影した。次いで、キャリア芯材の中心からキャリア芯材の半径の1/2の領域を撮影写真よりトリミングし、その領域から画像解析ソフト(商品名:A像くん、旭化成エンジニアリング株式会社製)によって、キャリア芯材の表面細孔の輪郭を抽出して解析することにより、キャリア芯材の表面細孔合計面積、面積平均径を算出した。このような解析を50粒子について行い、平均値をそのキャリア芯材の表面細孔合計面積、面積平均径とした。
実施例および比較例で用いた現像剤に含まれる樹脂被覆キャリアおよびトナーの作製方法について説明する。なお、実施例および比較例の樹脂被覆キャリアの製造方法などを表1に示す。
Figure 0005238656
(実施例1)
<樹脂被覆キャリアの作製>
[秤量工程、混合工程]
キャリア芯材の原材料として、微粉砕したFeとMgCOとを準備し、モル比でFe:MgCO=80:20となるように秤量し、混合して金属原料混合物を得た。キャリア芯材の全原材料に対して5wt%に相当する体積平均粒子径5μmのポリエチレン樹脂粒子(商品名:LE−1080、住友精化株式会社製)と、1.5wt%に相当するポリカルボン酸アンモニウム系分散剤と、0.05wt%に相当するSNウェット980(湿潤剤、サンノプコ株式会社製)と、0.02wt%に相当するポリビニルアルコール(バインダ)とを水中に添加して水溶液を調製した。
[粉砕工程]
前記水溶液に金属原料混合物を投入して撹拌し、濃度75wt%のスラリーを得た。このスラリーを湿式ボールミルにて湿式粉砕し、体積平均粒子径が1μmとなるまでしばらく撹拌した。
[造粒工程]
スプレードライヤーにて該スラリーを噴霧し、体積平均粒子径10〜200μmの乾燥した造粒品を得た。網目61μmの篩網を用いてこの造粒品から粗粒を分離した。
[仮焼工程]
大気下において乾燥造粒品を900℃で加熱することで仮焼し、樹脂粒子成分を分解させて仮焼品とした。
[焼成工程]
1160℃の窒素雰囲気下で仮焼品を5時間焼成してフェライト化させ、焼成品とした。
[解砕工程、分級工程]
焼成品をハンマーミルで解砕して、風力分級機を用いて微粉を除去し、網目54μmの振動ふるいで粒度調整することによってキャリア芯材C1を得た。得られたキャリア芯材C1は、見掛密度が1.80g/cmであり、表面細孔の面積平均径が0.60μmである。
[浸漬工程]
架橋型シリコーン樹脂A(商品名:KR240、硬化温度:200℃、信越化学工業株式会社製)4.0部をトルエン(沸点:110.8℃)15部に溶解し、そこに導電性粒子(商品名:VULCAN XC−72、キャボット株式会社製)0.20部と、カップリング剤(商品名:AY43−059、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.20部と、個数平均粒径を0.3μm以下に調整した炭酸水素ナトリウム(商品名:セルマイク266、分解温度:140〜170℃、三協化成社製)0.4部とを、内添または分散させて浸漬液Aを調製した。
100部のキャリア芯材C1を入れた浸漬塗工装置の撹拌容器を20mmHg以下に減圧した状態で、浸漬液Aを19.8部添加することにより、浸漬液Aにキャリア芯材C1を浸漬し、含浸キャリア芯材C1を得た。浸漬時間は、20分間である。
[第1加熱工程]
撹拌容器を170℃に加熱して、含浸キャリア芯材C1を1時間加熱撹拌し、トルエンを留去した。
[第2加熱工程]
第1加熱工程で加熱した含浸キャリア芯材C1を、硬化温度200℃、硬化時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmのふるいにかけることによって、実施例1の樹脂被覆キャリアを得た。得られた実施例1の樹脂被覆キャリアは、体積平均粒子径が45μmであり、見掛密度は1.73g/cmで、キャリア芯材粒子表面は樹脂で完全に覆われていた。そのため、キャリアの長寿命化および良好なトナー帯電安定性を実現する樹脂被覆キャリアとなる。
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、キャリア芯材C1を得た。
[浸漬工程]
架橋型シリコーン樹脂A(商品名:KR240、信越化学工業株式会社製)4.0部をトルエン(沸点:110.8℃)15部に溶解し、そこに導電性粒子(商品名:VULCAN XC−72、キャボット株式会社製)0.20部と、カップリング剤(商品名:AY43−059、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.20部と、個数平均粒径を0.3μm以下に調整した炭酸水素ナトリウム(商品名:セルマイク266、三協化成社製)0.4部とを内添または分散させて第1浸漬液Aを調製した。
100部のキャリア芯材C1を入れた浸漬塗工装置の撹拌容器を20mmHg以下に減圧した状態で、第1浸漬液Aを19.8部添加することにより、第1浸漬液Aにキャリア芯材C1を浸漬し、含浸キャリア芯材C1を得た。
[第1加熱工程]
撹拌容器を170℃に加熱して、含浸キャリア芯材C1を1時間加熱撹拌し、トルエンを留去した。
[第2加熱工程]
第1加熱工程で加熱した含浸キャリア芯材C1を、硬化温度200℃、硬化時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmのふるいにかけることによって、樹脂層形成キャリア芯材C2を得た。
[付着工程]
架橋型シリコーン樹脂A(商品名:KR240、信越化学工業株式会社製)4.0部をトルエン15部に溶解し、そこに導電性粒子(商品名:VULCAN XC−72、キャボット株式会社製)0.20部、およびカップリング剤(商品名:AY43−059、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.20部を内添または分散させることで第2浸漬液Aを調製した。
浸漬塗工装置の撹拌容器内で、100部の樹脂層形成キャリア芯材C2と、19.4部の第2浸漬液Aとを混合して、浸漬液付着キャリア芯材C1を得た。
[第3加熱工程]
撹拌容器を170℃に加熱して、浸漬液付着キャリア芯材C1を1時間加熱撹拌し、トルエンを留去した。
[第4加熱工程]
第3加熱工程で加熱した浸漬液付着キャリア芯材C1を、硬化温度200℃、硬化時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmのふるいにかけることで、実施例2の樹脂被覆キャリアを得た。得られた実施例2の樹脂被覆キャリアは、体積平均粒子径が46μmで、見掛密度は1.62g/cmで、キャリア芯材粒子表面は被覆樹脂で平滑に覆われていた。そのため、キャリアの長寿命化および良好なトナー帯電安定性を実現する樹脂被覆キャリアとなる。
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、キャリア芯材C1を得た。
[浸漬工程]
架橋型シリコーン樹脂B(商品名:KR350、硬化温度200℃、信越化学工業株式会社製)3.0部をトルエン(沸点:110.8℃)15部に溶解し、そこに導電性粒子(商品名:VULCAN XC−72、キャボット株式会社製)0.15部と、カップリング剤(商品名:Z−6001、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.15部と、p,p'-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(商品名:セルマイクS、三協化成社製、分解温度155〜160℃)0.5部とを内添または分散または溶解させて第1浸漬液Cを調製した。
100部のキャリア芯材C1を入れた浸漬塗工装置の撹拌容器に大気圧条件下で第1浸漬液Cを18.8部添加することにより、第1浸漬液Cにキャリア芯材C1を30分間、浸漬し、含浸キャリア芯材C3を得た。
[第1加熱工程]
撹拌容器を170℃に加熱して、含浸キャリア芯材C3を1時間加熱撹拌し、トルエンを留去した。
[第2加熱工程]
第1加熱工程で加熱した含浸キャリア芯材C3を、硬化温度200℃、硬化時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmのふるいにかけることによって、樹脂層形成キャリア芯材C3を得た。
[付着工程]
架橋型シリコーン樹脂B(商品名:KR350、信越化学工業株式会社製)3.0部をトルエン15部に溶解し、そこに導電性粒子(商品名:VULCAN XC−72、キャボット株式会社製)0.15部、およびカップリング剤(商品名:Z−6001、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.15部を内添または分散または溶解させることで第2浸漬液Cを調製した。
浸漬塗工装置の撹拌容器内で、100部の樹脂層形成キャリア芯材C3と、18.3部の第2浸漬液Cとを混合して、浸漬液付着キャリア芯材C3を得た。
[第3加熱工程]
撹拌容器を170℃に加熱して、浸漬液付着キャリア芯材C3を1時間加熱撹拌し、トルエンを留去した。
[第4加熱工程]
第3加熱工程で加熱した浸漬液付着キャリア芯材C3を、硬化温度200℃、硬化時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmのふるいにかけることで、実施例3の樹脂被覆キャリアを得た。得られた実施例3の樹脂被覆キャリアは、体積平均粒子径が45.5μmで、見掛密度は1.68g/cmで、キャリア芯材粒子表面は被覆樹脂で平滑に覆われていた。そのため、キャリアの長寿命化および良好なトナー帯電安定性を実現する樹脂被覆キャリアとなる。
(比較例1)
実施例1と同様の方法で、キャリア芯材C1を得た。
[浸漬工程]
架橋型シリコーン樹脂A(商品名:KR240、信越化学工業株式会社製)4.0部をトルエン15部に溶解し、そこに導電性粒子(商品名:VULCAN XC−72、キャボット株式会社製)0.20部、およびカップリング剤(商品名:AY43−059、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.20部を内添または分散させることで浸漬液Bを調製した。
100部のキャリア芯材C1を入れた浸漬塗工装置の撹拌容器に大気圧条件下で浸漬液Bを19.4部添加することにより、浸漬液Bにキャリア芯材C1を浸漬し、含浸キャリア芯材C2を得た。
[第1加熱工程]
撹拌容器を170℃に加熱して、含浸キャリア芯材C2を1時間加熱撹拌し、トルエンを留去した。
[第2加熱工程]
第1加熱工程で加熱した含浸キャリア芯材C2を、硬化温度200℃、硬化時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmのふるいにかけることで、比較例1の樹脂被覆キャリアを得た。得られた比較例1の樹脂被覆キャリアは、体積平均粒子径が45μm、見掛密度は2.20g/cmで、キャリア芯材粒子表面は樹脂で不均一に被覆されていた。そのため、キャリアの長寿命化および良好なトナー帯電安定性を実現する樹脂被覆キャリアとはいえない。
(比較例2)
浸漬工程で、浸漬塗工装置の撹拌容器を20mmHg以下に減圧した状態で、キャリア芯材C1と浸漬液Bとの混合を行う以外は、比較例1と同様の方法で比較例2の樹脂被覆キャリアを得た。得られた比較例2の樹脂被覆キャリアは、体積平均粒子径が44μmで、見掛密度は2.37g/cmで、キャリア芯材粒子表面はほとんど樹脂で覆われておらず、樹脂がキャリア芯材粒子内に浸み込んだ状態であった。
50 樹脂被覆キャリア
51 キャリア芯材
51a 空隙
51b 表面細孔
52 樹脂被覆層

Claims (5)

  1. キャリア芯材と、キャリア芯材の表面に形成された樹脂被覆層とを有する樹脂被覆キャリアの製造方法であって、
    樹脂および発泡剤が溶剤中に溶解または分散される浸漬液に、内部に空隙を有する多孔質材料で構成されるキャリア芯材を浸漬し、前記空隙に前記浸漬液が含浸された含浸キャリア芯材を得る浸漬工程と、
    前記含浸キャリア芯材を、前記溶剤の沸点以上かつ前記発泡剤の分解温度以上の温度下で、撹拌しながら加熱して前記樹脂を前記キャリア芯材表面で膜化させ、前記キャリア芯材表面に樹脂被覆層が形成された樹脂被覆キャリアを得る加熱乾燥工程とを含むことを特徴とする樹脂被覆キャリアの製造方法。
  2. 前記浸漬液は、樹脂として熱硬化性樹脂を含み、
    前記浸漬工程では、前記熱硬化性樹脂を含む樹脂および発泡剤が溶剤中に溶解または分散される浸漬液に、前記キャリア芯材を浸漬し、前記熱硬化性樹脂を含む前記浸漬液が前記空隙に含浸された含浸キャリア芯材を得て、
    前記加熱乾燥工程は、前記含浸キャリア芯材を、前記溶剤の沸点以上、前記発泡剤の分解温度以上かつ前記熱硬化性樹脂の硬化温度未満で加熱する第1加熱工程と、
    第1加熱工程で加熱した含浸キャリア芯材を、前記熱硬化性樹脂の硬化温度以上で加熱する第2加熱工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆キャリアの製造方法。
  3. 前記熱硬化性樹脂が、熱硬化性シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂被覆キャリアの製造方法。
  4. キャリア芯材と、キャリア芯材の表面に形成された樹脂被覆層とを有する樹脂被覆キャリアの製造方法であって、
    熱硬化性樹脂を含む第1樹脂および発泡剤が第1溶剤中に溶解または分散される第1浸漬液に、内部に空隙を有する多孔質材料で構成されるキャリア芯材を浸漬し、熱硬化性樹脂を含む前記第1浸漬液が前記空隙に含浸された含浸キャリア芯材を得る浸漬工程と、
    前記含浸キャリア芯材を、前記第1溶剤の沸点以上かつ前記発泡剤の分解温度以上の温度下で撹拌しながら加熱して、第1樹脂をキャリア芯材表面で膜化させ、キャリア芯材表面に樹脂層が形成された樹脂層形成キャリア芯材を得る第1加熱乾燥工程と、
    第2樹脂が第2溶剤中に溶解される第2浸漬液に前記樹脂層形成キャリア芯材を浸漬し、前記樹脂層形成キャリア芯材表面に前記第2浸漬液が付着した浸漬液付着キャリア芯材を得る付着工程と、
    前記浸漬液付着キャリア芯材を、前記第2溶剤の沸点以上の温度下で、撹拌しながら加熱して前記第2樹脂を前記浸漬液付着キャリア芯材表面で膜化させ、浸漬液付着キャリア芯材表面に樹脂被覆層が形成された樹脂被覆キャリアを得る第2加熱乾燥工程とを含み、
    第1加熱乾燥工程は、前記含浸キャリア芯材を、前記第1溶剤の沸点以上、前記発泡剤の分解温度以上かつ前記熱硬化性樹脂の硬化温度未満で加熱する第1加熱工程と、第1加熱工程で加熱した含浸キャリア芯材を、前記熱硬化性樹脂の硬化温度以上で加熱する第2加熱工程とを含むことを特徴とする樹脂被覆キャリアの製造方法。
  5. 前記第1樹脂および前記第2樹脂が、熱硬化性シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂被覆キャリアの製造方法。
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