本発明は、主に銀からなる金属超微粒子を利用して導電性を発現させる方法に関し、詳しくは従来必要であった焼成工程を必要とせず、安全かつ迅速に高い導電性を得る事ができる導電性発現方法および導電性部材を提供するものである。
導電性部材はブラウン管の電磁遮蔽、建材、電子機器や携帯電話の静電気帯電防止材、曇り防止ガラスの発熱線、回路基板やICカードの配線、樹脂に導電性を付与するためのコーティング、スルーホール、回路自体等の広い分野において用いられている。
特に、半導体デバイス、液晶表示デバイス、プラズマディスプレイ表示デバイス等の製造プロセスにおいては、電極や配線等を形成するため、導電性の金属薄膜を形成する場合がある。これらの製造プロセスにおいて、金属薄膜は、一般に真空蒸着、スパッタリング、CVD法などの薄膜形成方法により形成される。このような薄膜形成方法は、一般に減圧雰囲気下で行われるため、真空チャンバーなどの反応容器内に基板等を設置して行う必要がある。従って、金属薄膜形成の対象物が大きくなると、そのような大きな対象物を収納できる真空チャンバーが必要となり、その製造が困難になるという問題があった。
また、フレキシブルプリント基板の作製において、コンタクトホールやビアホールなどの凹部への導電性部材の形成には、例えば1μm程度の銀粒子を樹脂に混練した銀ペーストが使用される場合もあるが、銀粒子同士の接触により導電性が確保されるため、導電性が低いという問題があった。
特開平3−281783号公報(特許文献1)には、金属超微粒子を分散させたペーストを塗布し、塗布後これを900℃程度の温度で焼成することにより金属薄膜を形成する方法が開示されている。このような方法によれば、ペーストの塗布により金属薄膜を形成することができるので、大面積の金属薄膜を形成したり、複雑な表面形状の基材の上に金属薄膜を形成するのに適している。
また、特開2001−35255号公報(特許文献2)には、半導体基板上に銀配線を形成する際の乾燥・焼成工程で蒸発するような有機溶媒と、粒径0.01μm以下の銀含有超微粒子が混合され、該超微粒子の表面が該有機溶媒で覆われて個々に独立して分散しており、粘度が室温で50mPa・s以下であることを特徴とする銀超微粒子独立分散液が開示されており、300℃で焼成し銀の薄膜とすることにより、きわめて高い導電性を得ている。
これらの金属超微粒子が液体中に分散されている金属コロイド溶液は、減圧雰囲気下で金属を蒸発させて製造されており、単分散性が高く、例えばインクジェット方式等のノズルタイプのパターン形成装置に好適であるが、導電性を得るためには、少なくとも200℃の温度が必要であり、使用できる基材はガラス、ポリイミド、セラミックなどの耐熱性基材に限定されていた。
一方、硝酸銀水溶液等を保護コロイドと呼ばれる分散剤の存在下で還元剤により還元し、分散剤に被覆された金属超微粒子を作製する方法が知られている。
例えば、American Journal of Science,Vol.37,P476−491,1889,M Carey Lea.(非特許文献1)には、金属塩の水溶液に、分散剤としてクエン酸またはその塩を加え、第一鉄イオン等の還元剤を添加した後、脱塩、濃縮することによって、金属コロイド溶液を得る方法が報告されている。また、Experiments in Colloid Chemistry,1940,p.19,Hauser,E.A.and lynn,J.E.(非特許文献2)には、デキストリンを分散剤兼還元剤に用いた金属コロイド溶液を得る方法が報告されている。しかしながら、得られる導電性は低いものであった。
また、良好な導電性を示す、水溶液中で還元された金属超微粒子として例えば、特開2002−338850号公報(特許文献3)には、(チオ)フェノール誘導体の多量体を用いて製造され、温和な条件での焼成により導電性皮膜を得ることができる金属コロイド溶液及びその製造方法が開示されているが、100℃未満での焼成では高い抵抗値しか示さない金属コロイド溶液であった。特開2005−81501号公報(特許文献4)には、低温焼成によって実用的な導電率を達成できる、安定した金属超微粒子及びその製造方法が開示されており、140〜220℃での焼成により、充分実用的な導電率を達成する事が出来るとあるが、やはり、焼成工程が必要であった。
これらの金属コロイド溶液に含まれる金属超微粒子は、一般に分散剤により被覆されているため、乾燥工程により水等の分散媒が蒸発した状態では、該金属超微粒子同士の相互接続が形成されておらず、導電性を示さない、あるいは示したとしても非常に低いものであり、導電性部材として使用するための良好な導電性を得る為には、該分散剤を分解・揮散させ、該金属超微粒子同士の融着による相互接続を形成するために少なくとも30分以上の焼成工程が必要であり、そのための多くのエネルギーが必要であるばかりでなく、耐熱性の点から使用できる基材も限定されるものであった。
この点に関し、特開2006−169613号公報(特許文献5)の実施例においては、脂肪酸類あるいはアミン類から選択された分散剤に被覆されてなる銀ナノ粒子を、水及び/又は有機酸を含むガス雰囲気下で焼成して金属薄膜を得る方法が開示されており、80℃から130℃という比較的低い温度で高い導電性を得ることが出来るとある。しかしながら焼成工程時間として30分を要し、また高温の水蒸気を使用する場合には結露の問題、有機酸を用いる場合には臭気や引火の可能性があるという問題があった。
また、特開2006−313891号公報(特許文献6)においては、金属微粒子層を酸で短時間処理する事により導電性基板を得る方法が開示されているが、より高い導電性が求められていた。
特開平3−281783号公報
特開2001−35255号公報
特開2002−338850号公報
特開2005−81501号公報
特開2006−169613号公報
特開2006−313891号公報
American Journal of Science,Vol.37,P476−491,1889,M Carey Lea.
Experiments in Colloid Chemistry,1940,p.19,Hauser,E.A.and lynn,J.E.
本発明の目的は、主に銀からなる金属超微粒子を利用して導電性を発現させる方法において、従来必要であった焼成工程を必要とせずに高い導電性を得る事ができる導電性発現方法及び導電性部材を提供するものである。
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
1.基材上に、分散媒である水及び/または有機溶媒中に金属コロイドとして分散されている主に銀からなる金属超微粒子を付与し、基材上に設けられた、分散媒が取り除かれ固形化した金属超微粒子付与部分である金属超微粒子含有部に導電性を発現する方法であり、該金属超微粒子含有部に炭素数3以上のジカルボン酸を含有する60℃以上の水溶液を接触させることで処理する事を特徴とする導電性発現方法。
2.基材上に無機微粒子と無機微粒子に対し80質量%以下の樹脂バインダーを含有する多孔質の下塗層を有する上記1に記載の導電性発現方法。
3.上記1あるいは2に記載された導電性発現方法により導電性を発現させた導電性部材。
本発明によれば、従来必要であった焼成工程を必要とせずに、安全かつ迅速に高い導電性を得ることが可能となり、生産性良く導電性部材を得ることが出来る。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における導電性部材とは、例えば微細配線、アンテナ、電磁波シールド、アドレス電極などの導電性パターン、バンプ等の端子、複数層からなるプリント配線基板における配線パターンおよび配線層間のコンタクトホールやビアホール、電池電極、電子部品の電極、帯電防止層等を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。また、導電性に関しては、本発明の導電性発現方法により得られた導電性部材に、更に無電解メッキや電解メッキを行い、増強する事も任意に行うことが出来る。
本発明における、水及び/または有機溶媒中に金属コロイドとして分散されている主に銀からなる金属超微粒子とは、いわゆる金属コロイド溶液が含有する金属超微粒子であって、分散している金属超微粒子の平均一次粒子径は、金属コロイドとして安定した分散状態を保持する観点より、平均一次粒子径が200nm以下で有ることが好ましく、100nm以下である事がより好ましく、更に50nm以下である事が特に好ましい。ここで平均一次粒子径とは、金属超微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として平均し求めたものである。
本発明における金属コロイド溶液中に含まれる好ましい主に銀からなる金属超微粒子の含有量は、金属コロイド溶液全体の質量に対して1質量%から95質量%が好ましく、より好ましくは、3質量%から90質量%である。
主に銀からなる金属超微粒子の分散媒は水及び/または有機溶媒であり、水のみ、水と有機溶媒の混合物、有機溶媒のみの構成を挙げることが出来る。用いられる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、t−ブチルアルコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のグリコールエーテルエステル類、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミド類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トリデカン、テトラデカン、トリメチルペンタン等の長鎖アルカン類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の環状アルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類等を挙げることが出来る。
有機溶媒は、それぞれ1種を単独で使用できる他、2種以上を混合使用することもできる。また、石油蒸留物、例えばミネラルスピリットとして知られる150〜190℃の留分(芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素の混合体)も用いる事が出来る。好ましい例として、例えばインクジェット方式に適した分散媒としては、水とグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、2−ピロリドンの混合物や、テトラデカン、ミネラルスピリットの単独使用等を挙げる事が出来る。スピンコート方式に適した分散媒としては、アセトン、トルエン等を挙げる事が出来、スクリーン印刷方式に適した分散媒としては、テルピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等を挙げることが出来、また、後述する下塗層を膨潤または溶解する有機溶剤を併用することも好ましい態様の一つとして挙げることが出来る。
主に銀からなる金属超微粒子は、不活性ガス中で金属を蒸発させガスとの衝突により冷却・凝縮し回収するガス中蒸発法、真空中で金属を蒸発させ有機溶剤と共に回収する金属蒸気合成法、レーザー照射のエネルギーにより液中で蒸発・凝縮させ回収するレーザーアブレーション法、水溶液中で金属イオンを還元し生成・回収する化学的還元法、有機金属化合物の熱分解による方法、金属塩化物の気相中での還元による方法、酸化物の水素中還元法、紫外線や超音波、マイクロウェーブ等のエネルギーを利用する方法等、公知の種々の方法により製造された金属超微粒子を好ましく用いることが出来る。
本発明における金属超微粒子は、高い導電性、価格、生産性、扱いやすさ等の点から主に銀からなる。主に銀からなるとは、金属コロイド溶液中に含まれる全金属超微粒子の50質量%以上が銀である事であり、好ましくは70質量%以上である。銀以外に含まれる好ましい金属としては、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、ニッケル、ビスマスを挙げることが出来、特に銀特有のマイグレーション抑制の為には、金、銅、白金、パラジウムが好ましい。銀以外の金属を含有せしめる方法としては、例えば特開2000−90737号公報に開示されているが如く銀超微粒子中にパラジウムを含有せしめる方法、特開2001−35255号公報に開示されているが如く別々に作製された銀超微粒子とパラジウム超微粒子を混合する方法でも良い。また、金属超微粒子を含有するインクとしてはCima NanoTech社の銀ナノ粒子インクの如く、銅を含む金属コロイドを例示することも出来る。
金属超微粒子は安定な金属コロイドを形成するために、分散剤で被覆する事が一般的に行われる。例えば、American Journal of Science,Vol.37,P476−491,1889,M Carey Lea.に記載される方法においてはクエン酸が分散剤となっており、Experiments in Colloid Chemistry,1940,p.19,Hauser,E.A.and lynn,J.E.に記載される方法においてはデキストリンが分散剤となっている。他に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等の各種界面活性剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カラギーナン、アラビアゴム、アルブミン、ポリエチレンイミン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース類等の水溶性高分子類等を用いる事が出来る。これら分散剤の含有量は、金属超微粒子100質量%に対し、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
金属コロイド溶液には増粘剤、帯電防止剤、UV吸収剤、可塑剤、高分子バインダー等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよく、例えば、UV硬化樹脂成分を含ませることにより、UV印刷あるいはUVインクジェット方式によるパターン形成に適した特性(UV硬化特性)をもたせることも出来る。
本発明において、金属コロイド溶液は、低粘度の溶液状態から高粘度のペースト状態まで任意の形態に調整される。具体的には、基材上に金属超微粒子を付与する方法に適した粘度、表面張力、金属超微粒子の大きさ・含有率等が調整される。例えば、グラビア印刷、インクジェット方式を用いる場合には、粘度を1〜100mPa・sの範囲に調整することが好ましく、凸版印刷やスクリーン印刷を用いる場合には、10〜500Pa・sの範囲に調整することが好ましい。
高粘度のペースト状態に調整する場合には、金属超微粒子の濃度を高くするだけでは所望の粘度を得ることは困難であるため、高分子バインダーとして、例えばセルロース樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等を含むことが好ましい。
本発明に用いられる金属コロイド溶液には、公知あるいは市販の金属超微粒子が含まれるコロイド、インクあるいはペーストを広く用いることも出来る。
本発明において、金属超微粒子を付与するとは、これを含有する、いわゆる金属コロイド溶液を、例えばディスペンサーを用い、凹部への充填・凸部の形成・パターンの形成を行うこと、サーマルあるいはピエゾ、マイクロポンプ、静電気などにより液滴を飛翔させる機構を持つインクジェット方式を用い、凹部への充填・凸部の形成・パターンの形成を行うこと、凸版印刷、フレキソ印刷、平版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等の印刷方法を用いパターンの形成を行うこと、グラビアロール方式、スロットダイ方式、スピンコート方式等を用い塗層の形成を行うこと、間欠塗工ダイコーター等を用い部分的な塗層の形成を行うこと、あるいは金属コロイド溶液へ基材をディップし塗層の形成を行うこと等、公知の様々な方法を用いて基材上に所望する形状となる様に金属超微粒子を付着させることを意味する。
本発明における金属超微粒子含有部とは、本発明による導電性発現方法を用い導電性部材となる部位より分散媒が取り除かれ固形化した部分である。具体的には、分散媒を吸収する事が出来ない基材を用いた場合には分散媒が揮散し固形化している状態、あるいは基材上に設けられた多孔質の下塗層等による下塗層を有する基材を用いた場合には分散媒が下塗層へ吸収され分散物である金属超微粒子が下塗層上にケーキとして固形化している状態、あるいは多孔質の下塗層等による下塗層に分散媒の一部が吸収され、更に分散媒が揮散し固形化した状態等である。この金属超微粒子含有部に含まれている主に銀からなる金属超微粒子は、その凝集を抑制するために用いられる分散剤により金属超微粒子が被覆されているため各々が隔たった状態になっており、導電性は無いか非常に低い。
そのため、従来は焼成を行うことにより、この分散剤を加熱分解し金属超微粒子の被覆を消失させる事により、金属超微粒子同士を接触させ、更に融合(金属超微粒子は融点が低くなることが知られている)させる事により導電性を発現させていた。これに対し本発明においては、焼成ではなく、金属超微粒子含有部を炭素数3以上のジカルボン酸を含有する60℃以上の水溶液で処理することにより、導電性を発現させる。
本発明において、処理する、とは炭素数3以上のジカルボン酸を含有する60℃以上の水溶液と、主に銀からなる金属超微粒子含有部とを接触させる事を示し、基材上に設けられた金属超微粒子含有部に、炭素数3以上のジカルボン酸を含有する60℃以上の水溶液を(例えばインクジェット方式やディスペンサーを用い)付着させる方法や、炭素数3以上のジカルボン酸を含有する60℃以上の水溶液に、基材上に設けられた金属超微粒子含有部を浸漬する方法等を用いることが出来る。また、炭素数3以上のジカルボン酸を含有する60℃未満の水溶液を付着させた後に加熱を行い、該水溶液を60℃以上としてもよい。これらの方法を用いることにより、焼成工程と比較し少ない消費エネルギーで導電性部材を得ることが出来る。
本発明において、固形化している金属超微粒子含有部を、炭素数3以上のジカルボン酸を含有する60℃以上の水溶液で処理することが必要である。導電性を発現させるためには金属超微粒子同士の接触が必要であり、このためには金属超微粒子同士の距離が短い方が良いと考えられる。そのため、固形化していることが好ましい。また、金属コロイド溶液に炭素数3以上のジカルボン酸を加えると、金属超微粒子の金属コロイド溶液中における分散安定性が低下するだけではなく、その金属コロイド溶液から作製された金属超微粒子含有部の導電性は無いか非常に低い。これは、金属コロイド溶液から作製された金属超微粒子含有部において、炭素数3以上のジカルボン酸を含む事は金属超微粒子と分散剤以外の余剰な物質となり、金属超微粒子同士の間隔を広げ導電性を更に低下させるためと考えられる。よって、導電性部材となる部位より分散媒を取り除き、固形化した金属超微粒子含有部に対して、炭素数3以上のジカルボン酸を含有する60℃以上の水溶液で処理することで、本発明の効果ははじめて得られるものである。
本発明において、導電性が発現する理由は定かではないが、炭素数3以上のジカルボン酸をブレーンステッド酸として見た場合に、その酸の共役塩基と銀との間には塩あるいは錯塩を形成することが可能であるため、主に銀からなる金属超微粒子の表面に塩を形成する形で吸着することが可能ではないかと考えられる。この吸着力により、元々表面に吸着していた金属超微粒子同士の接触を妨げている分散剤が剥離し、これにより金属超微粒子同士の接触とその融合を生じさせているのではないかと推測している。
モノカルボン酸の酢酸やプロピオン酸等を用いた場合、得られる導電性が低いだけでなく、強い臭気をもつため周辺環境を不快なものとし、引火などの危険性も持つため安全性の観点からも使用は好ましくない。また、ジカルボン酸でも炭素数が2のシュウ酸は毒物であるため、安全性の観点から使用は好ましくない。
また、本発明において、炭素数3以上のジカルボン酸を含有する水溶液の温度は、高い導電性を得るために重要な因子であり、60℃以上が必要であり、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。上限は沸点である。温度の低い水溶液に長時間浸漬しても、温度の高い水溶液に浸漬して得られる導電性には到達しないため、温度は重要な因子であり、該水溶液の温度を60℃以上とすることにより、はじめて良好な導電性を得ることが出来るものである。
炭素数3以上のジカルボン酸を含有する水溶液の温度を60℃以上とすることにより、導電性が向上する理由も定かではないが、炭素数3以上のジカルボン酸が金属超微粒子の表面にて銀と塩を形成し分散剤を剥離させる速度、分散剤が剥離した金属超微粒子同士の融合が生じる速度、剥離した分散剤が水溶液へ移動する速度、これらの速度は温度が高くなると速くなると推測され、相乗効果により著しい導電性の向上が観察されるのではないかと推測している。
本発明に用いる炭素数3以上のジカルボン酸としては、臭気や引火性が無く、毒性も低く安全に使用できるものが好ましく、更には水に対する溶解度の高いものが好ましく、溶解性の点から炭素数は8以下が好ましい。具体例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラコン酸、イタコン酸、メサコン酸等を例示することが出来る。特に好ましい化合物として、マロン酸、マレイン酸、グルタル酸、リンゴ酸、酒石酸を例示することが出来る。また、これらの酸より1種または2種以上を組み合わせて用いる事が出来る。
炭素数3以上のジカルボン酸を金属超微粒子含有部に作用させるために用いられる水溶液の濃度としては、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上であり、特に好ましくは10質量%以上であり、上限は溶解度により制限される。濃度は高い方がより高い導電性を得ることが出来るため好ましい。
金属超微粒子含有部を炭素数3以上のジカルボン酸を含有する60℃以上の水溶液に浸漬すると、数秒程度で導電性が発現し、時間の経過と共に導電性が向上する。1時間を超えて浸漬を行っても、導電性の向上は余り見られず、金属超微粒子含有部の基材からの剥離が発生する可能性もある。そのため、生産性を勘案すると、浸漬時間は1秒以上30分以下が好ましく、より好ましくは10秒以上10分以下である。
導電性部材を形成する基材としては、ポリエチレン・ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル・塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、トリアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、セロファン、ナイロン、スチレン系樹脂、ABS樹脂等の各種樹脂類、石英ガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、パイレックス(登録商標)等のホウケイ酸ガラス、サファイア等の各種ガラス、AlN、Al2O3、SiC、SiN、MgO、BeO、ZrO2、Y2O3、ThO2、CaO、GGG(ガドリウム・ガリウム・ガーネット)、単結晶シリコン、多結晶シリコン等の無機材料、紙、各種金属等を挙げることができ、必要に応じそれらを併用してもよい。なお、前記基材の形状は円盤状、カード状、シート状などいずれの形状であってもよい。また、例えば電子部品のリード線やバンプなどの電気的端子部分等であってもよく、積層コンデンサやタンタルコンデンサ、薄膜抵抗の接合部分、TFT電極、太陽電池の集電電極、有機FETのゲート電極等、導電性が必要とされる部分すべてが本発明に用いる基材となり得る。また用途に応じこれら基材を適宜組み合わせる事が出来、例えば、銅箔とポリイミドを積層したフレキシブルプリント基板材料や、紙とポリオレフィン樹脂を積層したポリオレフィン樹脂被覆紙を用いる事が出来る。また、例えばアルミナ粉とバインダーの混合物スラリーをキャスティングして製造される基板用のグリーンシートや、チタン酸バリウム粉とバインダーの混合物スラリーをキャスティングして製造される積層セラミックコンデンサー用のグリーンシート等も好ましく用いる事が出来る。
基材と本発明により導電性が発現した金属超微粒子含有部との間に高い導電性が要求されない場合は、基材と導電性部材間の接着力の向上を目的として、下塗層が形成されていてもよい。下塗層は一般的に絶縁性であるため、基材と導電性が発現した金属超微粒子含有部との導電性を低下させる。下塗層の材料としては、例えば、ゼラチン、カラギーナン、各種ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルコール可溶性ナイロン、N−メチロールアクリルアミド、ポリ塩化ビニリデン、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の高分子化合物、熱硬化性または光・電子線硬化樹脂、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ゲルマニウム系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、イミダゾールシラン系カップリング剤などの表面改質剤等が挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いる事が出来る。
下塗層に上記ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性樹脂を用いる場合には、耐水性を向上させる目的で適当な硬膜剤を用い、硬膜することも好ましい。硬膜剤としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル)尿素、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、N−メチロール化合物、イソシアナート類、アジリジン化合物類、カルボジイミド系化合物類、エポキシ化合物、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いる事が出来る。
金属コロイド溶液の濡れ広がりを抑制し微細な導電性部材の形成を容易とするために、金属コロイド溶液中の分散媒を下塗層が膨潤あるいは溶解して吸収する機能を下塗層に持たせることもより好ましい態様の一つである。例えば金属コロイド溶液の分散媒に水が用いられる場合には、下塗層にゼラチン、カラギーナン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等、各種水溶性樹脂と、耐水性を付与するための硬膜剤を適宜1種類以上を組み合わせて用いることが出来る。また、金属コロイド溶液の分散媒に有機溶媒が用いられている場合には、下塗層に、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、アクリルエステル樹脂、非晶質ポリエステル樹脂等を用いる事が出来る。下塗層の好ましい層厚(乾燥時)は、一般に0.01〜50μmが好ましく、1〜40μmがより好ましく、5〜30μmが特に好ましい。
また、基材上に多孔質の下塗層を設け、該下塗層の微細空隙による毛細管現象を用いて金属コロイド溶液中の分散媒を吸収させることがより好ましい。一般的に、樹脂の膨潤による場合よりも多孔質の下塗層の方が分散媒の吸収速度が速く、分散媒の種類を問わない傾向にあるため、金属コロイド溶液のにじみや広がりを抑制する効果が高く、微細な導電性部材を形成する上でより好ましい。また、金属コロイド溶液中の分散媒に溶解している過剰な分散剤等が多孔質の下塗層に吸収されるため、形成される金属超微粒子含有部における金属超微粒子同士の間隔がより緻密となり、炭素数3以上のジカルボン酸を含有する60℃以上の水溶液で処理した際に得られる導電性が多孔質の下塗層を設けない場合と比較し、より高くなるため好ましい。
多孔質の下塗層は、微粒子と微粒子に対し80質量%以下の樹脂バインダーを含有し、用いられる微粒子としては、公知の微粒子を広く用いる事が出来る。例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、ジルコニア、セリウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、非晶質合成シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、アルミナ水和物、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、水酸化マグネシウム等の無機微粒子、アクリルあるいはメタクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、スチレン/ブタジエン系樹脂、ポリスチレン/アクリル系樹脂、ポリスチレン/イソプレン系樹脂、メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、尿素樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の少なくとも1種以上の樹脂からなる真球状あるいは不定型の無孔質あるいは多孔質の有機微粒子等を挙げることが出来る。無論、上記した無機微粒子の1種以上と有機微粒子の1種以上を混合して用いることもできる。
特に、無機微粒子と樹脂バインダーを含有する多孔質の下塗層が好ましく、無機微粒子としては、平均二次粒子径を500nm以下とした非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物等の無機微粒子が好ましい。
本発明でいう平均二次粒子径とは、透過型電子顕微鏡による写真撮影で求めることが出来るが、簡易的にはレーザー散乱式の粒度分布計(例えば、(株)堀場製作所製、LA910)を用いて、個数メジアン径として測定することが出来る。
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ、及びその他に大別することができる。
湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシールとして、水澤化学工業(株)からミズカシルとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、東ソー・シリカ(株)からニップゲルとして、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェットとして、水澤化学工業(株)からミズカシルとして市販さている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。沈降法シリカあるいはゲル法シリカがより好ましく、沈降法シリカが特に好ましい。
本発明に用いられる湿式法シリカ粒子としては、平均一次粒子径50nm以下、好ましくは3〜40nmであり、かつ平均凝集粒子径が5〜50μmである湿式法シリカ粒子が好ましい。
ここでいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として平均粒子径を求めたものである。また、平均凝集粒子径とは、粉体として供給される湿式シリカの平均粒子径を示し、例えばコールターカウンター法で求めることが出来る。
平均凝集粒子径が5〜50μmである湿式法シリカ粒子を、平均二次粒子径500nm以下とするために分散が行われる。分散された湿式法シリカの平均二次粒子径は500nm以下、好ましくは10〜300nm、透明性の観点から更に好ましくは20〜200nmである。分散方法としては、水性媒体中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用され、これにはビーズミルなどのメディアミルを用いることが好ましい。ビーズミルは密閉されたベッセル内に充填されたビーズとの衝突により顔料粉砕を行うものであり、(株)シンマルエンタープライゼスよりダイノミルとして、浅田鉄工(株)よりグレンミルとして、アシザワ・ファインテック(株)よりスターミルとして市販されている。メディアミル等を用いて分散した後、更に高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を用いて分散することが好ましい。
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。
本発明に用いられる気相法シリカの平均一次粒子径は30nm以下が好ましく、より高い透明性が必要な場合には、15nm以下が好ましい。更に好ましくは平均一次粒子径が3〜15nmでかつBET法による比表面積が200m2/g以上(好ましくは250〜500m2/g)のものを用いることである。
本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
平均二次粒子径500nm以下とするために分散が行われる。分散された気相法シリカの平均二次粒子径は500nm以下、好ましくは10〜300nm、更に好ましくは20〜200nmである。分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと水を主体とする分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。
平均二次粒子径500nm以下の湿式法シリカあるいは気相法シリカのスラリーを製造する際に、スラリーの高濃度化や分散安定性を向上させるため、公知の種々の方法を用いても良い。例えば、特開2002−144701号公報、特開2005−1117号公報に記載されているが如くアルカリ性化合物の存在下で分散する方法、カチオン性化合物の存在下で分散する方法、シランカップリング剤存在下で分散する方法等を挙げることが出来る。
上記湿式法シリカあるいは気相法シリカの分散に使用するカチオン性化合物としては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性および分散液粘度の面で、これらのカチオンポリマーの分子量は、2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。
上記湿式法シリカあるいは気相法シリカの分散に使用するシランカップリング剤としては、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム基を有するシランカップリング剤が好ましく用いられる。
本発明に用いられるアルミナは、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましく、数μmから数十μmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で平均二次粒子径500nm以下、好ましくは20〜300nm程度まで粉砕することが好ましい。
本発明に用いられるアルミナ水和物はAl2O3・nH2O(n=1〜3)の構成式で表され、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。アルミナ水和物の平均二次粒子径は500nm以下、好ましくは20〜300nmである事が好ましい。
本発明に用いられる上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等の公知の分散剤によって、水を主体とする分散媒中に分散されたスラリーの形態から使用される。
本発明において、多孔質の下塗層を構成する微粒子とともに用いられる樹脂バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、シリル変性ポリビニルアルコールなど、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂系などの水性接着剤、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂などの合成樹脂系接着剤等を単独であるいは混合して用いることができる。この他、公知の天然、あるいは合成樹脂バインダーを単独であるいは混合して用いることは特に限定されない。
多孔質の下塗層に微粒子と共に用いられる樹脂バインダーとしては、ポリビニルアルコールが好ましく、特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分ケン化または完全ケン化したポリビニルアルコールである。平均重合度200〜5000のものが好ましい。
これら無機微粒子あるいは有機微粒子に対する樹脂バインダーの含有量は特に限定されないが、無機微粒子を用い多孔質の下塗層を形成するためには、樹脂バインダーの含有量は、無機微粒子に対して80質量%以下、更には3〜80質量%の範囲が好ましく、より好ましくは5〜60質量%の範囲であり、特に好ましくは10〜40質量%の範囲である。有機微粒子においては、有機微粒子同士の結着により多孔質の下塗層を形成する事も可能であるため、樹脂バインダーの含有量についての下限は無く、有機微粒子に対して0〜80質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0〜60質量%の範囲であり、特に好ましくは0〜40質量%の範囲である。
本発明は、多孔質の下塗層を構成する上記樹脂バインダーと共に必要に応じ硬膜剤を用いることもできる。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル)尿素、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩類の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。硬膜剤の使用量は特に限定されないが、樹脂バインダーに対して、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。
樹脂バインダーとしてケン化度が80%以上の部分ケン化または完全ケン化したポリビニルアルコールを用いる場合には、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩類が好ましく、ホウ酸が特に好ましく、使用量はポリビニルアルコールに対し、40質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。
多孔質の下塗層の層厚(乾燥時)は、一般に1〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
下塗層には必要に応じ、防腐剤、界面活性剤、着色染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、粘度安定剤などを添加することもできる。
下塗層は、上述した様な下塗層の材料、または微粒子と樹脂バインダー等を適当な溶媒に溶解または分散させて塗布液を調製し、該塗布液をカーテン方式、エクストルージョン方式、スロットダイ方式、グラビアロール方式、スプレー方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、スピンコート方式等による塗布、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット方式等によるパターンの形成等、公知の各種塗布方法を利用して、基材表面の全面、あるいは必要とされる部位への選択的な塗布を行い、形成することができる。
金属超微粒子含有部を炭素数3以上のジカルボン酸を含有する60℃以上の水溶液で処理し、導電性部材とした後は水洗することも好ましく行われ、更に、導電性部材を封止する樹脂成分(例えば前述の下塗層に用いる成分)を含んだ塗液を導電性部材が形成されている基材の全面あるいは必要な部分に(例えばスクリーン印刷方式、インクジェット方式、ディスペンサー方式などにより)塗布を行い、作製された導電性部材を保護することも好ましく行う事が出来る。
形成された導電性部材の導電性をより高めるために、更に水分を供給することも好ましい。これには基材温度を周囲温度よりも下げることにより基材表面の相対湿度を高くする方法、あるいは単純に周辺雰囲気の湿度を高くする方法がある。この場合、温度は10〜90℃が好ましく、40〜90℃がより好ましい。重量絶対湿度Hとして0.01kg/kgD.A.以上であることが好ましく、0.02kg/kgD.A.以上であることがより好ましい。例えば、50℃80%RH(重量絶対湿度H=0.067kg/kgD.A.)条件下に30分程度暴露するという比較的穏和かつ短時間の条件でも十分な効果があるため、結露防止も容易であり、必要なエネルギーも少量で済ませることが出来る。なお、本発明による導電性発現を行わず、金属超微粒子含有部を同じ条件下に暴露しても高い導電性を得ることは出来ない。
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。なお、%は質量%を示す。
<水系銀コロイド液1の作製>
デキストリン3.5gをイオン交換水31.5gに溶解した水溶液と、硝酸銀8.5gをイオン交換水41.5gに溶解した水溶液とを混ぜ合わせ、撹拌しながら2規定の水酸化ナトリウム水溶液38gを1分かけゆっくりと滴下した。1時間後、撹拌を停止し、12時間放置した。その後、複数回のデカンテーションを行い、得られた沈殿物25gにイオン交換水25gを加え、再分散を行った後、遠心分離を行い、固形沈殿物を得た。この固形沈殿物に7gのイオン交換水を添加し、固形分38%、比重1.4の水系銀コロイド液1を得た。
得られた水系銀コロイド液1の一部を採取し濃硝酸を加え、硝酸銀にした後、沃化カリウム水溶液を用いて滴定を行い、銀濃度を求めた。求められた銀濃度は32%であり、固形分38%との差分に相当する6%は銀以外の分散剤等の含有量に相当する。また電子顕微鏡にて観察した結果、銀超微粒子の平均一次粒子径は約20nmであった。
<金属超微粒子含有部1の作製>
水系銀コロイド液1を易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製)上にワイヤーバーを用いて塗布し50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部1を得た。蛍光X線分析装置(理学電機工業(株)製 RIX1000)を用いて測定された銀の量は1m2あたり2.0gであった。
<金属超微粒子含有部2の作製>
金属超微粒子含有部1を100℃1時間加熱し、金属超微粒子含有部2を得た。
<金属超微粒子含有部3の作製>
金属超微粒子含有部1を90℃に加熱した純水が入った容器に、純水に触れないように吊り下げて入れ、容器ごと90℃の温浴にいれて30分間保持し、金属超微粒子含有部3を得た。容器内部の温度は85℃であり、金属超微粒子含有部1は水蒸気に暴露されていた。
<金属超微粒子含有部4の作製>
金属超微粒子含有部1を90℃に加熱した30%酢酸水溶液が入った容器に、30%酢酸水溶液に触れないように吊り下げて入れ、容器ごと90℃の温浴にいれて30分間保持し、金属超微粒子含有部4を得た。容器内部の温度は85℃であり、金属超微粒子含有部1は酢酸蒸気と水蒸気に暴露されていた。
<金属超微粒子含有部5の作製>
水系銀コロイド液1を1g取り、これにDL−リンゴ酸0.1gを加え、溶解した。この銀コロイド液を易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製)上にワイヤーバーを用いて塗布し50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部5を得た。蛍光X線分析装置を用いて測定された銀の量は1m2あたり1.9gであった。
<金属超微粒子含有部6の作製>
金属超微粒子含有部1を、50℃に温調された下記組成の処理液1に180秒間浸漬し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部6を得た。
<処理液1>
純水 100g
<金属超微粒子含有部7の作製>
金属超微粒子含有部1を、50℃に温調された下記組成の処理液2に120秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部7を得た。
<処理液2>
1規定度硫酸水溶液 100g
<金属超微粒子含有部8の作製>
金属超微粒子含有部1を、70℃に温調された下記組成の処理液3に180秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部8を得た。
<処理液3>
30%酢酸水溶液 100g
<金属超微粒子含有部9の作製>
金属超微粒子含有部1を、50℃に温調された下記組成の処理液4に180秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部9を得た。
<処理液4>
30%乳酸水溶液 100g
<金属超微粒子含有部10の作製>
金属超微粒子含有部1を、50℃に温調された下記組成の処理液5に180秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部10を得た。
<処理液5>
マレイン酸 20g
純水 80g
<金属超微粒子含有部11の作製>
金属超微粒子含有部1を、50℃に温調された下記組成の処理液6に180秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部11を得た。
<処理液6>
L−酒石酸 20g
純水 80g
<金属超微粒子含有部12の作製>
金属超微粒子含有部1を、50℃に温調された下記組成の処理液7に180秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部12を得た。
<処理液7>
DL−リンゴ酸 30g
純水 70g
<金属超微粒子含有部13の作製>
金属超微粒子含有部1を、70℃に温調された処理液1に180秒間浸漬し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部13を得た。
<金属超微粒子含有部14の作製>
金属超微粒子含有部1を、70℃に温調された処理液5に180秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部14を得た。
<金属超微粒子含有部15の作製>
金属超微粒子含有部1を、70℃に温調された処理液6に180秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部15を得た。
<金属超微粒子含有部16の作製>
金属超微粒子含有部1を、85℃に温調された処理液6に60秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部16を得た。
<金属超微粒子含有部17の作製>
金属超微粒子含有部1を、70℃に温調された処理液7に60秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部17を得た。
<金属超微粒子含有部18の作製>
含まれている金属超微粒子の平均一次粒子径が約7nmであり、金属分が全て銅からなる有機溶剤系銅ナノインク(アルバックマテリアル(株)製 Cu1T)を易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製)上にワイヤーバーを用いて塗布し70℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部18を得た。蛍光X線分析装置を用いて測定された銅の量は1m2あたり1.5gであった。
<金属超微粒子含有部19の作製>
金属超微粒子含有部18を、85℃に温調された処理液6に60秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部19を得た。
<金属超微粒子含有部20の作製>
含まれている金属超微粒子の平均粒子径が約10nmであり、金属分が全て銀からなる有機溶剤系銀ナノインク(アルバックマテリアル(株)製 AG1TeH)を易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製)上にワイヤーバーを用いて塗布し70℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部20を得た。蛍光X線分析装置を用いて測定された銀の量は1m2あたり3.3gであった。
<金属超微粒子含有部21の作製>
金属超微粒子含有部20を100℃1時間加熱し、金属超微粒子含有部21を得た。
<金属超微粒子含有部22の作製>
金属超微粒子含有部20を90℃に加熱した純水が入った容器に、純水に触れないように吊り下げて入れ、容器ごと90℃の温浴にいれて30分間保持し、金属超微粒子含有部22を得た。容器内部の温度は85℃であり、金属超微粒子含有部20は水蒸気に暴露されていた。
<金属超微粒子含有部23の作製>
金属超微粒子含有部20を90℃に加熱した30%酢酸水溶液が入った容器に、30%酢酸水溶液に触れないように吊り下げて入れ、容器ごと90℃の温浴にいれて30分間保持し、金属超微粒子含有部23を得た。容器内部の温度は85℃であり、金属超微粒子含有部20は酢酸蒸気と水蒸気に暴露されていた。
<金属超微粒子含有部24の作製>
金属超微粒子含有部20を、50℃に温調された処理液1に180秒間浸漬し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部24を得た。
<金属超微粒子含有部25の作製>
金属超微粒子含有部20を、50℃に温調された処理液4に180秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部25を得た。
<金属超微粒子含有部26の作製>
金属超微粒子含有部20を、70℃に温調された処理液4に180秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部26を得た。
<金属超微粒子含有部27の作製>
金属超微粒子含有部20を、50℃に温調された処理液7に180秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部27を得た。
<金属超微粒子含有部28の作製>
金属超微粒子含有部20を、85℃に温調された処理液7に60秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部28を得た。
<金属超微粒子含有部29の作製>
<基材1の作製>
水に沈降法シリカ(吸油量200ml/100g、平均一次粒子径16nm、平均凝集粒子径9μm)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液を作製した。次に得られた予備分散物をビーズミル(0.3mmφジルコニアビーズ使用)で処理して、固形分濃度30%の無機微粒子分散液1を得た。分散されたシリカの平均二次粒子径は250nmであった。
上記無機微粒子分散液1と他の薬品を50℃で混合して下記組成の多孔質層形成塗液1を作製した。
<多孔質層形成塗液1>
無機微粒子分散液1 (シリカ固形分として) 100g
ポリビニルアルコール 16g
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ホウ酸 3g
ノニオン性界面活性剤 0.3g
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
固形分濃度は12%になるように水で調整した。
多孔質層形成塗液1を、易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製)上に無機微粒子として1m2あたり20gとなるように塗布・乾燥し、厚み30μmの多孔質層を持つ基材1を得た。
水系銀コロイド液1を基材1上にワイヤーバーを用いて塗布し50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部29を得た。蛍光X線分析装置を用いて測定された銀の量は1m2あたり4.7gであった。
<金属超微粒子含有部30の作製>
金属超微粒子含有部29を100℃1時間加熱し、金属超微粒子含有部30を得た。
<金属超微粒子含有部31の作製>
金属超微粒子含有部29を90℃に加熱した純水が入った容器に、純水に触れないように吊り下げて入れ、容器ごと90℃の温浴にいれて30分間保持し、金属超微粒子含有部31を得た。容器内部の温度は85℃であり、金属超微粒子含有部29は水蒸気に暴露されていた。
<金属超微粒子含有部32の作製>
金属超微粒子含有部29を90℃に加熱した30%酢酸水溶液が入った容器に、30%酢酸水溶液に触れないように吊り下げて入れ、容器ごと90℃の温浴にいれて30分間保持し、金属超微粒子含有部32を得た。容器内部の温度は85℃であり、金属超微粒子含有部29は酢酸蒸気と水蒸気に暴露されていた。
<金属超微粒子含有部33の作製>
金属超微粒子含有部29を、70℃に温調された処理液3に180秒間浸漬し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部33を得た。
<金属超微粒子含有部34の作製>
金属超微粒子含有部29を、50℃に温調された処理液6に180秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部34を得た。
<金属超微粒子含有部35の作製>
金属超微粒子含有部29を、70℃に温調された処理液6に180秒間浸漬し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部35を得た。
<金属超微粒子含有部36の作製>
<水系銀コロイド液2の作製>
硫酸第一鉄七水和物43gをイオン交換水100gに溶解した水溶液と、クエン酸ナトリウム二水和物66gをイオン交換水100gに溶解した水溶液を混合し、5規定の水酸化ナトリウム水溶液でpHを6に調整した。撹拌を行いながら、硝酸銀11gをイオン交換水100gに溶解した水溶液を徐々に添加し、クエン酸鉄を保護コロイドとして持つ銀超微粒子を含む金属コロイド水溶液を得た。この金属コロイド水溶液を一晩放置し、デカンテーションを行った後、1規定の硝酸アンモニウム水溶液を300g添加し、デカンテーションを3回実施し、過剰の塩類を除去した後、遠心分離を行い、固形沈殿物を得た。この固形沈殿物に5gのイオン交換水を添加し、固形分55%、比重1.7の水系銀コロイド液2を得た。
得られた水系銀コロイド液2の一部を採取し濃硝酸を加え、硝酸銀にした後、沃化カリウム水溶液を用いて滴定を行い、銀濃度を求めた。求められた銀濃度は45%であり、固形分55%との差分に相当する10%は銀以外の分散剤等の含有量に相当する。また電子顕微鏡にて観察した結果、銀超微粒子の平均粒子径は約10nmであった。
水系銀コロイド液2を基材1上にワイヤーバーを用いて塗布し50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部36を得た。蛍光X線分析装置を用いて測定された銀の量は1m2あたり8.8gであった。
<金属超微粒子含有部37の作製>
金属超微粒子含有部36を100℃1時間加熱し、金属超微粒子含有部37を得た。
<金属超微粒子含有部38の作製>
金属超微粒子含有部36を、50℃に温調された処理液1に180秒間浸漬し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部38を得た。
<金属超微粒子含有部39の作製>
金属超微粒子含有部36を、70℃に温調された処理液7に180秒間浸漬し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部39を得た。
<金属超微粒子含有部40の作製>
<水系銀コロイド液3の作製>
硫酸第一鉄七水和物43gをイオン交換水100gに溶解した水溶液と、クエン酸ナトリウム二水和物66gをイオン交換水100gに溶解した水溶液を混合し、5規定の水酸化ナトリウム水溶液でpHを6に調整した。撹拌を行いながら、硝酸銀10.5gと硝酸パラジウム0.68gをイオン交換水100gに溶解した水溶液を徐々に添加し、クエン酸鉄を保護コロイドとして持つ銀パラジウム超微粒子を含む金属コロイド水溶液を得た。この金属コロイド水溶液を一晩放置し、デカンテーションを行った後、1規定の硝酸アンモニウム水溶液を300g添加し、デカンテーションを3回実施し、過剰の塩類を除去した後、遠心分離を行い、固形沈殿物を得た。この固形沈殿物に5gのイオン交換水を添加し、固形分52%、比重1.6の水系銀コロイド液3を得た。
得られた水系銀コロイド液3の一部を採取し濃硝酸を加え、硝酸銀にした後、沃化カリウム水溶液を用いて滴定を行い、銀濃度を求めた。求められた銀濃度は41%であった。更に、蛍光X線分析装置を用いパラジウムの濃度を測定すると2%の結果を得た。双方を合計すると43%であり、固形分52%との差分に相当する9%は銀、パラジウム以外の分散剤等の含有量に相当する。また電子顕微鏡にて観察した結果、銀パラジウム超微粒子の平均粒子径は約10nmであった。
水系銀コロイド液3を基材1上にワイヤーバーを用いて塗布し50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部40を得た。蛍光X線分析装置を用いて測定された銀の量は1m2あたり8gであった。
<金属超微粒子含有部41の作製>
金属超微粒子含有部40を100℃1時間加熱し、金属超微粒子含有部41を得た。
<金属超微粒子含有部42の作製>
金属超微粒子含有部40を、50℃に温調された処理液1に180秒間浸漬し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部42を得た。
<金属超微粒子含有部43の作製>
金属超微粒子含有部40を、70℃に温調された処理液7に180秒間浸漬した後、2秒間温純水に浸漬し表面に付着した処理液を洗浄し、50℃で乾燥を行い、金属超微粒子含有部43を得た。
<金属超微粒子含有部44の作製>
金属超微粒子含有部6を、50℃80%RH(重量絶対湿度H=0.067kg/kgD.A.)の高湿条件下にて30分間放置し、金属超微粒子含有部44を得た。
<金属超微粒子含有部45の作製>
金属超微粒子含有部17を、50℃80%RHの高湿条件下にて30分間放置し、金属超微粒子含有部45を得た。
金属超微粒子含有部1から45について、以下の評価を行い、その結果を表1に示す。
<導電性>
金属超微粒子含有部1から45各々について、シート抵抗値を測定器((株)ダイアインスツルメンツ製 ロレスターGP)を用いて測定した。測定環境は23℃50%RHとした。各金属超微粒子含有部について、塗布されている銀量より算出される理論的なシート抵抗値と、実際に測定されたシート抵抗値との比較を行った。理論的なシート抵抗値算出について例示すると、例えば金属超微粒子含有部1に塗布されている銀量は2gであり、計算される厚みは比重の10.5で除して1.905×10-5cmとなる。シート抵抗値は銀の体積抵抗値1.59×10-6Ω・cmをこの厚みで除して得られ、その値は0.083Ω/□と算出される。
この理論的なシート抵抗値に対し、以下の基準に従って導電性を評価した。
◎ :理論的なシート抵抗値の10倍未満
○ :理論的なシート抵抗値の10倍以上30倍未満
× :理論的なシート抵抗値の30倍以上
××:測定不能(オーバーレンジ)
例えば、金属超微粒子含有部1において、測定されたシート抵抗値が、0.83Ω/□未満であれば◎、0.83Ω/□以上2.49Ω/□未満であれば○、2.49Ω/□以上であれば×、測定不能(オーバーレンジ)であれば××の評価となる。
表1より、水系銀コロイド液1からなる金属超微粒子含有部1〜17について、比較例の金属超微粒子含有部1〜4より判るように、乾燥あるいは加熱、水蒸気、有機酸蒸気の暴露により高い導電性を示す事は無く、比較例の金属超微粒子含有部5より判るように、コロイド溶液中にDL−リンゴ酸を加えても導電性は示さず、比較例の金属超微粒子含有部6と13より判るように、水では60℃以上であっても高い導電性を示す事はない。比較例の金属超微粒子含有部7〜12と実施例の金属超微粒子含有部14〜17の比較より判るように、炭素数3以上のジカルボン酸を含有する60℃以上の水溶液で処理すると高い導電性を示すことが判る。また、金属超微粒子が銅である比較例の金属超微粒子含有部18、19は導電性を示さなかった。市販の有機溶剤系銀ナノインクを用いて作成した金属超微粒子含有部20〜28についても、同様の結果であり、実施例の金属超微粒子含有部28は本発明の導電性発現方法により高い導電性を示すことが判る。下塗層として多孔質の下塗層を有する金属超微粒子含有部29〜35について、多孔質の下塗層を有していても、比較例の金属超微粒子含有部29〜34より判るように、乾燥あるいは加熱、水蒸気、有機酸蒸気の暴露により高い導電性を示す事は無く、酒石酸水溶液の温度が低いと高い導電性は示さない。これに対し、実施例の金属超微粒子含有部35は高い導電性を示し、多孔質の下塗層を持たない金属超微粒子含有部15より高い導電性を示していることが判る。金属超微粒子含有部36〜39より、多孔質の下塗層を有した場合に、異なる銀コロイド溶液である水系銀コロイド液2を用いても同様の結果を示し、金属超微粒子含有部40〜43より、銀の一部をパラジウムに置き換えた水系銀コロイド液3においても同様の結果であることが判る。金属超微粒子含有部6、17、44、45より、本発明による導電性発現を行った後に、更に高湿環境下に暴露することにより、より高い導電性を示すことが判る。