以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、鉄骨ユニット工法にて構築された二階建てユニット式建物に具体化されている。図4はユニット式建物の概要を示す図、図5は建物ユニットの構成を示す斜視図である。
図4に示すように、ユニット式建物10は複数の建物ユニット20を結合させてなる建物本体11と、この建物本体11の上方に配設される屋根12とにより構成されている。建物ユニット20は工場にて予め製造されるもので、工場からトラック等で建築現場に運搬された後、その現場で結合(据付)作業が実施されるようになっている。
図5に示すように、建物ユニット20において、その四隅には柱21が配され、各柱21の上端部及び下端部がそれぞれ四本の天井大梁22及び床大梁23に連結されている。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。天井大梁22(詳細には、溝形鋼のウエブ)には複数箇所に梁貫通孔22aが設けられており、その梁貫通孔22aの直径は例えば100mmとなっている。
建物ユニット20の長辺部の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。同じく建物ユニット20の長辺部の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25と床小梁26とはそれぞれ同間隔でかつ各々上下に対応する位置に水平に設けられている。図示は省略するが、天井小梁25によって天井材が支持され、床小梁26によって床材が支持される。
次に、ユニット式建物10の間取りレイアウトについて説明する。図1はユニット式建物10の一階部分の概略を平面図、図2は同一階部分の概略を示す正面図である。
図1、図2に示すように、ユニット式建物10は、その一階部分に一階屋内空間30を有しており、一階屋内空間30には、第2屋内空間部としての部屋31が複数設けられているとともに、第1屋内空間部としての廊下32が部屋31に隣接して設けられている。この場合、廊下32は、部屋31の出入口を介して複数の部屋31と通じており、部屋31に対する共用空間となっている。なお、各部屋31は、それぞれリビングやダイニング、トイレ等になっている。部屋31や廊下32の上方には天井裏空間36が設けられており、それら部屋31や廊下32と(すなわち一階屋内空間30)と天井裏空間36とは天井により仕切られている。
天井裏空間36は、一階部分の天井と二階部分の床との間に形成された階間空間となっており、一階部分の建物ユニット20の天井大梁22や二階部分の建物ユニット20の床大梁23によって水平方向に仕切られている。この場合、天井裏空間36は一階部分において建物ユニット20ごとに隣接して形成されていることになり、それら隣接する天井裏空間36同士は、天井大梁22に形成された梁貫通孔22aにより連通されている。ちなみに、天井大梁22及び床大梁23の高さ(梁背ともいう)は例えば200mmとなっている。
ユニット式建物10には、部屋31と廊下32とを仕切る仕切壁38が空間仕切部として設けられており、仕切壁38には、部屋31と廊下32とを連通する空気流通部39が形成されている。空気流通部39は、通気口として仕切壁38に形成されていたり、部屋31の出入口を開閉するドアにアンダーカットやガラリとして形成されていたりしている。この場合、廊下32は空気流通部39を介して複数の部屋31と連通されており、それら部屋31と廊下32との間では空気流通部39を通じて空気が流通する。なお、隣接する部屋31同士も仕切壁38により仕切られており、その仕切壁38にも空気流通部39が形成されている。これにより、隣接する部屋31同士の間でも空気流通部39を通じて空気が流通する。
本実施形態では、ユニット式建物10において、その建物10内の空調及び換気を行う空調換気システムが構築されている。空調換気システムは、廊下32の換気を行う換気装置41と、部屋31の空調を行う空調室内機42と、廊下32の空気を還気(リターンエアともいう)として空調室内機42に供給するリターンチャンバ43とを含んで構成されており、第一種機械換気システムとなっている。
空調換気システムについて、図1、図2を参照しつつ説明する。
空調換気システムにおいて、換気装置41は、廊下32の上方における天井裏空間36に換気設備として設置されている。換気装置41には取込用ダクト51及び排出用ダクト52が接続されており、それら取込用ダクト51及び排出用ダクト52はそれぞれ屋外に通じている。また、換気装置41には吹出グリル53及び吸込グリル54が設けられており、それら吹出グリル53及び吸込グリル54は、それぞれ廊下32の天井に配置されるとともに廊下32に通じている。なお、吹出グリル53及び吸込グリル54は、換気装置41に一体化されていなくてもよく、その場合はダクトを通じて換気装置41に接続されている構成とする。
ちなみに、換気装置41は、図1に示すように、屋内外を仕切る外壁の近傍に設置されている。したがって、換気装置41に接続されている取込用ダクト51及び排出用ダクト52は短くても屋外にそれぞれ通じる構成となっているが、図2では、取込用ダクト51及び排出用ダクト52が屋外に通じていることを示すべく、図示の便宜上、それらダクト51,52を長く図示している。
換気装置41は、取込ファン56を有しており、取込ファン56の回転に伴って、取込用ダクト51を通じて外気を取り込むとともにその外気を吹出グリル53から廊下32に吹き出させる。また、換気装置41は、排気ファン57を有しており、排気ファン57の回転に伴って、吸込グリル54から廊下32の空気を内気として吸い込むとともにその内気を排気として排出用ダクト52を通じて屋外に排出する。ちなみに、換気装置41に出入りする空気量は、取込ファン56及び排気ファン57の回転速度や回転量によって調整される。なお、換気装置41は、廊下32に代えて又は加えて玄関ホール等を対象とした外気導入及び排気を行ってもよい。
リターンチャンバ43は、換気装置41と同様に、廊下32の上方における天井裏空間36に空気供給設備として設置されており、ここでは1つの建物ユニット20内に収められている。リターンチャンバ43には、還気グリル61が設けられているとともに、空調室内機42に通じる還気用ダクト62がリターンダクトとして接続されている。なお、還気グリル61は、リターンチャンバ43とは一体化されずに独立して天井に取り付けられていてもよく、その場合はダクトを通じてリターンチャンバ43に接続されている構成とする。
リターンチャンバ43は、還気ファン63を有しており、還気ファン63の回転に伴って、還気グリル61から廊下32の空気を還気として取り込むとともにその還気を還気用ダクト62から空調室内機42に供給する。ちなみに、リターンチャンバ43に出入りする空気量は、還気ファン63の回転速度や回転量によって調整される。
空調室内機42は、空調設備としてユニット式建物10内に複数設けられている。それら空調室内機42は、部屋31の上方における天井裏空間36に部屋31ごとに設置されており、いわゆる隠蔽型ハウジングエアコンとなっている。また、ここではリターンチャンバ43と異なる建物ユニット20内に収められている。空調室内機42は、少なくとも1つの還気用ダクト62を介してリターンチャンバ43と接続されている。本実施形態では、例えば3つの還気用ダクト62によりリターンチャンバ43と接続されている。この場合、1つの還気用ダクト62により接続されている場合に比べて、リターンチャンバ43から空調室内機42に送る空気量を大きくすることが可能となっている。
空調室内機42には、部屋31に通じる給気用ダクト65がサプライダクトとして接続されており、給気用ダクト65の先端には給気グリル66が設けられている。給気グリル66は、部屋31の天井に取り付けられており、ここでは空調室内機42と同一の建物ユニット20内に収められている。本実施形態では、例えば2つの給気用ダクト65が空調室内機42に接続されており、各給気用ダクト65のそれぞれに給気グリル66が設けられている。これにより、給気グリル66から供給された空気が部屋31内の全体に行き渡りやすくなっている。なお、給気グリル66は給気用ダクト65を介さずに空調室内機42に直接取り付けられていてもよい。
空調室内機42は、給気ファン67を有しており、給気ファン67の回転に伴って、リターンチャンバ43から供給された空気を給気として給気用ダクト65及び給気グリル66を通じて部屋31に供給する。また、空調室内機42は、空気を加熱又は冷却する温度調整部68を有しており、給気を温度調整部68により加熱又は冷却することで空調用空気を生成し、その空調用空気を温風又は冷風として部屋31に供給する。例えば、部屋31を暖房する場合には給気グリル66から温風を供給し、部屋31を冷房する場合には給気グリル66から冷風を供給する。ちなみに、空調室内機42に出入りする空気量は、給気ファン67の回転速度や回転量によって調整される。
ここで、空調室内機42と給気グリル66とは同一の建物ユニット20内に収められているため、それら空調室内機42と給気グリル66とを接続する給気用ダクト65は前記同一の建物ユニット20内に配設されている。これに対して、空調室内機42とリターンチャンバ43とは異なる建物ユニット20にそれぞれ収められているため、それら空調室内機42とリターンチャンバ43とを接続する還気用ダクト62は複数の建物ユニット20に跨って配設されている。
この場合、還気用ダクト62は、図1に示す隣接する建物ユニット20の境界線L(ユニットドッキングラインLともいう)において天井大梁22の梁貫通孔22aに挿通されている。このため、例えば還気用ダクト62が梁貫通孔22aに挿通されずに天井大梁22の下方に配設されている場合とは異なり、還気用ダクト62を隠すために部屋31や廊下32の天井を全体的に低くしたり下がり天井を形成したりする必要がない。換言すれば、天井裏空間36を極力小さくすることで、部屋31や廊下32を極力大きく確保することができる。なお、還気用ダクト62は、梁貫通孔22aに挿通させるために、外径(呼び径ともいう)が梁貫通孔22aの直径より小さくなっている。例えばその外径は、梁貫通孔22aの直径100mmに対して92mmとなっている。
また、還気用ダクト62は、断熱処理(又は保温処理)が施されていない無断熱ダクトとなっている。これは、部屋31の暖房又は冷房が行われる場合でも、部屋31に供給される給気の加熱又は冷却が空調室内機42により行われるため、空調室内機42に取り込まれる前の空気が還気用ダクト62内で温度変化することを許容しているためである。したがって、還気用ダクト62を梁貫通孔22aに挿通させるには、単にその外径が梁貫通孔22aの直径より小さければよい。
ちなみに、給気用ダクト65は、断熱材(又は保温材)により断熱処理が施されている断熱ダクトとなっている。これは、部屋31の暖房又は冷房が行われる場合に、空調室内機42で加熱又は冷却された給気が給気用ダクト65内で温度変化することを許容すると、部屋31の暖房又は冷房を好適に行うことができないためである。したがって、もし空調室内機42と給気グリル66とが異なる建物ユニット20にそれぞれ収められているなら、断熱材が支障となって給気用ダクト65を梁貫通孔22aに挿通させることができず、給気用ダクト65を天井大梁22の下方に配設することで部屋31や廊下32の天井が全体的又は部分的に低くなるといった不都合が生じると考えられる。
続いて、空調換気システムの電気的構成について説明する。
図2に示すように、ユニット式建物10には、制御装置として、CPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを有するコントローラ71が備えられており、コントローラ71には、換気装置41、空調室内機42及びリターンチャンバ43が接続されている。コントローラ71は、指令信号を出力することでそれら換気装置41、空調室内機42及びリターンチャンバ43の動作制御を行うことで、全館換気や個別換気、全館空調、個別空調などを行う。なお、空調室内機42については部屋31ごとに個別に動作制御を行う。
例えば、コントローラ71から換気装置41に対して指令信号が出力された場合、換気装置41においては、取込ファン56及び排気ファン57の動作制御が行われる。この場合、廊下32を対象とした空気の換気量が調整される。
コントローラ71からリターンチャンバ43に対して指令信号が出力された場合、リターンチャンバ43においては、還気ファン63の動作制御が行われ、廊下32から空調室内機42に供給される空気量の調整が行われる。また、リターンチャンバ43には還気用ダクト62の開閉を行う還気用開閉装置73が設けられており、リターンチャンバ43に前記指令信号が入力されることで還気用開閉装置73の動作制御が行われる。つまり、空調室内機42に対する還気供給の停止制御が行われる。
コントローラ71から空調室内機42に対して指令信号が出力された場合、空調室内機42においては、給気ファン67の動作制御が行われ、部屋31に供給される給気量の調整が行われる。また、この場合、温度調整部68の動作制御が行われ、部屋31に供給される給気の温度調整が行われる。なお、空調室内機42には給気用ダクト65の開閉を行う開閉弁が設けられていてもよく、この場合は、前記指令信号に基づいて開閉弁の開閉制御が行われることで、給気を吹き出す給気グリル66の選択が行われる。
また、コントローラ71には、部屋31や廊下32における空気の温度を検出する温度センサ75と、部屋31や廊下32において発生した臭いを検出する臭気センサ76とが接続されている。それら温度センサ75及び臭気センサ76は例えば各部屋31や廊下32にそれぞれ設けられており、温度センサ75は温度を示す検出信号をコントローラ71に対して出力し、臭気センサ76は部屋31や廊下32での臭気発生を検出した場合に検出信号をコントローラ71に対して出力する。
次いで、空調換気システムによるユニット式建物10内の換気及び空調について説明する。
まず、空調換気システムにより全館換気が行われる場合、廊下32が換気装置41による換気対象とされるとともに、全ての部屋31がリターンチャンバ43及び空調室内機42による換気対象とされる。具体的には、換気装置41により廊下32に外気が導入され、その廊下32の空気がリターンチャンバ43及び空調室内機42により各部屋31のそれぞれに分配される。そして、空調室内機42からの給気に伴って各部屋31の空気は空気流通部39を通じて廊下32にそれぞれ流れ込み、その流れ込んだ空気が換気装置41により廊下32から屋外に排出される。つまり、廊下32を対象として外気導入と排気とが行われるとともに廊下32と部屋31との間で空気循環が行われることで、全館換気が行われる。
なお、全館換気は24時間換気として常時行われており、その換気回数は、部屋31や廊下32を含んだユニット式建物10内の全体を換気対象として例えば0.5回/h以上となっている。ユニット式建物10が中規模の住宅であれば、廊下32には例えば80m3/h程度の量の外気が換気装置41により導入されており、廊下32は常に新鮮な空気で充足されている。また、廊下32から部屋31にはその外気量以上の空気がリターンチャンバ43及び空調室内機42により供給されている。この場合、ユニット式建物10内において空気循環が好適に行われるため、ユニット式建物10内の空気が全体的に十分に攪拌される。また、この場合、部屋31と廊下32との圧力バランスが良好に保たれるため、空気循環経路(換気経路ともいう)が乱れにくくなっている。
ちなみに、換気装置41は、外気の熱と内気の熱とを交換する熱交換部を有しており、換気に伴って廊下32や部屋31の温度が大きく変化してしまうことを熱交換部の熱交換機能により抑制している。
空調換気システムにより個別換気が行われる場合、全館換気と同様に廊下32が換気対象とされる一方で、全館換気のように全ての部屋31が換気対象とされるのではなく特定の部屋31が換気対象とされる。また、特定の部屋31が非換気対象とされるとともにその他の部屋31が換気対象とされることもある。
例えば、ユニット式建物10内のいずれかの部屋31において臭気が発生した場合、その臭気発生元である部屋31が非換気対象とされる。この場合、コントローラ71は、臭気が発生した部屋31を臭気センサ76の検出信号に基づいて非換気対象に設定し、リターンチャンバ43における還気用開閉装置73の動作制御を行うことで、非換気対象に対応した空調室内機42への還気供給を停止させる。これにより、非換気対象への給気が停止され、非換気対象と廊下32との間での空気循環が生じにくくなり、臭気発生元からその他の空間への臭気拡散が抑制される。なお、部屋31において煙が発生した場合にその煙発生元である部屋31が非換気対象とされてもよい。
また、ユニット式建物10内のいずれかの部屋31の温熱環境が低下した場合(例えば窓が開放されているなどの場合)、その温熱環境が低下した部屋31が非換気対象とされる。例えば、複数の部屋31のうちほかと比べて室内温度が高温または低温となっている部屋31が非換気対象とされる。この場合、コントローラ71は、温熱環境が低下した部屋31を温度センサ75の検出信号に基づいて非換気対象に設定し、非換気対象に対応した空調室内機42への空気供給を停止させる。これにより、非換気対象の温熱環境がその他の空間の温熱環境を低下させることが抑制される。
なお、空気流通部39には、その空気流通部39の開閉を行う開閉装置が設けられていてもよい。この場合、非換気対象に設定された部屋31を対象として、その部屋31の空気流通部39が開閉装置により閉鎖されることで、非換気対象と廊下32との間での空気循環をより確実に停止させることができ、ひいては、非換気対象からその他の空間に臭気が拡散したり温熱環境が広範囲にわたって低下したりすることをより確実に抑制できる。
空調換気システムにより全館空調が行われる場合、全館換気と同様に廊下32及び全ての部屋31が換気対象とされるとともに、全ての部屋31が空調対象とされる。具体的には、空調室内機42において給気の加熱又は冷却が行われることで、各部屋31には温風又は冷風が供給される。この場合、温風又は冷風により部屋31の温度調整が直接行われるとともに、部屋31と廊下32との間で生じる空気循環により廊下32の温度調整が部屋31の温度に応じて行われる。つまり、全館空調により、全ての部屋31及び廊下32をまとめて空調することができる。
例えば、図3(a)に示すように、冬期について、暖房が行われることで部屋31の温度が一定に保たれている場合、廊下32は部屋31に近い温度に調整されるとともに温度変化が小さくされる。すなわち、部屋31の暖房設定温度が一定であれば、実際に空調室内機42の暖房運転が行われている場合の廊下32の温度は、暖房運転が停止されている場合に比べて高くなるとともにその変化量が小さくなる。これは、暖房時には、給気グリル66から吹き出される温風により部屋31の温度が上昇するとともにその部屋31の空気が空気流通部39を通じて流れ込み、部屋空間の温度上昇に伴って廊下空間も温度上昇するためである。これにより、上記のように、暖房時には部屋31だけでなく廊下32においても暖房効果(温度改善効果)が得られる。
また、図3(b)に示すように、夏期について、冷房が行われることで部屋31の温度が一定に保たれている場合、廊下32は部屋31に近い温度に調整されるとともに温度変化が小さくされる。すなわち、部屋31の冷房設定温度が一定であれば、実際に空調室内機42の冷房運転が行われている場合の廊下32の温度は、冷房運転が停止されている場合に比べて低くなるとともにその変化量が小さくなる。これは、冷房時には、給気グリル66から吹き出される冷風により部屋31の温度が低下するとともにその部屋31の空気が空気流通部39を通じて流れ込み、部屋空間の温度低下に伴って廊下空間も温度低下するためである。これにより、上記のように、冷房時には部屋31だけでなく廊下32においても冷房降下(温度改善効果)が得られる。
なお、部屋31と廊下32との温度差の緩和効果は、空調室内機42から部屋31に供給される給気量が多いほど高められる。実際には、還気用ダクト62や給気用ダクト65の直径サイズ等を考慮すると、部屋31に対する給気量は500m3/h程度が適当とされる。
空調換気システムにより個別空調が行われる場合、全館空調のように全ての部屋31が空調対象とされるのではなく、特定の部屋31が空調対象とされる。また、特定の部屋31が非空調対象とされるとともにその他の部屋31が空調対象とされることもある。例えば、人がいる部屋31が空調対象とされる。この場合でも、空調室内機42により空調対象の温度調整が行われるとともに、それに合わせて廊下32の温度調整も行われる。つまり、個別空調により、特定の部屋31及び廊下32をまとめて空調することができる。
なお、個別空調が行われる場合に、非空調対象とされた部屋31の空気流通部39が閉鎖される構成であれば、空調対象や廊下32から非空調対象に空気が流れ込むことが抑制されるため、空調対象及び廊下32の空調を効率良く行うことができる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
換気装置41により廊下32の換気が行われるとともにリターンチャンバ43及び空調室内機42により複数の部屋31への給気が行われ、さらに、複数の部屋31から廊下32に空気流通部39を通じて空気が流れ込むため、各部屋31と廊下32との間で空気循環が生じ、各部屋31及び廊下32を含んだユニット式建物10内全体を好適に換気したり冷暖房したりすることができる。つまり、全館換気及び全館空調を行うことができる。ここで、廊下32は共用空間となっているため、複数の部屋31に外気を導入しなくても単に廊下32だけに外気を導入することで、廊下32に加えて各部屋31の空気環境を好適な状態に維持することができる。
また、外気が導入される廊下32と空調用空気が給気として供給される部屋31とが異なる空間であるため、外気の導入と空調用空気の給気とが同一の空間に対して行われる場合とは異なり、空調用空気を部屋31及び廊下32を含んだユニット式建物10内全体に行き渡らせることができる。これにより、ユニット式建物10において屋内空間全体の換気及び空調を好適に行うことができる。
さらに、屋内空間全体の換気及び空調が好適に行われることで、ユニット式建物10における温熱的快適性を全体的に向上させることができる。また、例えば部屋31と廊下32との間の温度差が緩和されるため、住人等が部屋31と廊下32との間を移動しても、その移動に伴うヒートショックやコールドショックの発生を抑えることができる。加えて、全館空調ではなく全館換気が行われている場合であっても、部屋31と廊下32との温度差を緩和することができる。
なお、例えば外気の導入と空調用空気の給気とが共に廊下32に対して行われる場合は、空調用空気が部屋31に流れ込む前に屋外に排出されるおそれがあり、この場合、全館換気や全館空調の状態が良好ではなくなってしまう。
部屋31ごとに設置されている空調室内機42はコントローラ71により個別に動作制御が行われるため、特定の部屋31を対象とした個別空調を行うことができる。また、リターンチャンバ43から各空調室内機42への空気供給はコントローラ71により個別に制御されるため、特定の部屋31を対象とした個別換気を行うことができる。したがって、空調及び換気に関して部屋31の使い勝手を向上させることができる。また、例えば人がいる部屋31だけを空調対象とすることで省エネ効果を得ることができる。
空調室内機42、給気グリル66及び給気用ダクト65が1つの建物ユニット20におさめられている。このため、給気用ダクト65を極力短くしたり断熱処理が必要な給気用ダクト65の箇所を極力小さくしたりすることができ、ひいては、空調換気システムの構成の簡易化を図ることができる。また、空調室内機42、給気グリル66及び給気用ダクト65を付加した状態で建物ユニット20を工場で製造することができるため、建築現場においてそれら空調室内機42、給気グリル66及び給気用ダクト65を建物ユニット20に取り付ける作業を行う必要がない。したがって、建築現場におけるユニット式建物10の構築作業の容易化を図ることができる。
還気用ダクト62が建物ユニット20における天井大梁22の梁貫通孔22aを貫通しているため、異なる建物ユニット20にそれぞれ収められているリターンチャンバ43と空調室内機42とを還気用ダクト62により接続することができる。したがって、ユニット式建物10において部屋31や廊下32等のレイアウトに合わせてリターンチャンバ43や空調室内機42を好適に配置することができる。
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、廊下32の空気が空調室内機42に供給される構成としたが、廊下32の空気に加えて又は代えて部屋31の空気が空調室内機42に供給される構成としてもよい。例えば、図6に示すように、空調室内機42には各部屋31のうち特定の部屋31Aに通じる部屋空間用ダクト81が接続され、空調室内機42の給気ファン67が回転することで部屋空間用ダクト81を通じて部屋31Aの空気が還気として空調室内機42に吸い込まれる構成とする。この例では、部屋空間用ダクト81の先端には部屋31Aの天井に取り付けられた部屋空間グリル82が設けられているが、部屋空間グリル82は部屋空間用ダクト81を介さずに空調室内機42と一体的に設けられていてもよい。
空調室内機42には、還気用ダクト62及び部屋空間用ダクト81の少なくとも一方を閉鎖する還気用開閉装置83が設けられている。また、部屋31Aには、回転することで室内の空気を屋外に排出する換気扇84が排気装置として設けられている。還気用開閉装置73及び換気扇84はコントローラ71と電気的に接続されており、そのコントローラ71によりそれぞれ動作制御が行われる。なお、部屋31Aとしては、トイレ等といった臭気の発生しやすい部屋が設定される。また、各部屋31の全てが特定の部屋31Aとされていてもよく、この場合は、全ての部屋31Aに部屋空間用ダクト81が通じているとともに換気扇84が設けられている。
例えば部屋31Aにおいて臭気が発生した場合、コントローラ71は図7に示すような臭気拡散規制処理を行う。コントローラ71は、まず、部屋31Aにおいて臭気が発生したか否かを判定し(ステップS101)、臭気が発生している場合、臭気排出処理を実行するか否かの判定(ステップS102)や、空気循環処理を実行するか否かの判定(ステップS104)を行う。臭気排出処理を実行する場合(ステップS103)、換気扇84を駆動させる。この場合、部屋31Aの空気は空気流通部39を通じて廊下32へ流れ出るのではなく換気扇84により屋外に排出されるため、臭気が廊下32等へ拡散することを抑制できる。
これに対して、空気循環処理を実行する場合(ステップS105)、還気用開閉装置73の動作制御を行うことで、廊下32Aから空調室内機42への還気を停止させるとともに部屋31から空調室内機42への還気を行わせる。この場合、部屋31Aの空気は空気流通部39を通じて廊下32に流れ出るのではなく部屋空間用ダクト81から空調室内機42に取り込まれるため、空調室内機42を通じた部屋31の空気循環が行われる。これにより、臭気が廊下32等へ拡散することを抑制できる。
なお、空調室内機42には臭いを除去する消臭フィルタ等の消臭手段が設けられているとよい。この場合、単に、空調室内機42が部屋31を一度取り込んでから再び部屋31Aに供給することで、部屋31Aに対して消臭効果を付与することができる。
また、上記のような部屋31Aの空気が廊下32に流れ出ないようにする処理は、部屋31Aにおいて臭気が発生した場合に実行されるだけでなく、部屋31Aの温熱環境が著しく低下した場合などに実行されてもよい。
(2)ユニット式建物10内の所定空間における温度を調整することを目的として、コントローラ71により部屋31への給気量制御が行われる構成としてもよい。この構成が、図8に示すような2つのフロアを有する2階建てのユニット式建物10に適用される場合、部屋31ごとやフロアごとの空調や換気をゾーン空調やゾーン換気として行うことが可能となる。
2階建てのユニット式建物10には、一階部分の一階屋内空間30とともに二階部分の二階屋内空間90が設けられており、二階屋内空間90も一階屋内空間30と同様に部屋31及び廊下32を有している。また、ユニット式建物10には、一階屋内空間30と二階屋内空間90とを連通する連通空間として階段空間91が設けられており、住人等は階段空間91に設置された階段を昇降することで一階屋内空間30と二階屋内空間90とを行き来することができる。さらに、階段空間91は仕切り壁38に形成された空気流通部39により、隣接する部屋31や廊下32と連通されている。なお、一階屋内空間30と二階屋内空間90とは階段空間91に代えて又は加えて吹き抜け空間により連通されていてもよい。
二階部分において二階屋内空間90の上方には屋根裏空間92が設けられており、その屋根裏空間92には、一階部分の天井裏空間36と同様に換気装置41、空調室内機42及びリターンチャンバ43とが設けられている。ここで、一階部分及び二階部分のそれぞれにおいて、リターンチャンバ43は廊下32の近傍に配置されている。なお、リターンチャンバ43は、廊下32から取り込んだ還気の温度を検出する還気温度検出部を有しているとともに、リターンチャンバ43及び空調室内機42は、部屋31に供給する給気量を調整する給気量調整部を有している。給気量調整部は、例えば給気ファン67の回転速度を調整する機能を有している。
上記実施形態と同様に、換気装置41、空調室内機42及びリターンチャンバ43はそれぞれ給気量調整手段としてのコントローラ71と電気的に接続されており、コントローラ71により図9に示すような空調換気制御処理が行われる。
コントローラ71は、温度センサ75や還気温度検出部の検出結果により一階屋内空間30と二階屋内空間90との温度差や部屋31と廊下32との温度差等を取得し、それら温度差に基づいて、ユニット式建物10における空調が必要であるか否かを判定する(ステップS201)。空調が必要でない場合は全館換気を行わせ(ステップS207)、必要である場合は個別空調が必要であるか否かを判定する(ステップS202)。個別空調が必要ない場合は全館空調を行わせ(ステップS203)、個別空調が必要である場合は、一階屋内空間30又は二階屋内空間90を空調対象とした個別空調(ステップS205)、又は少なくとも1つの部屋31を空調対象とした個別空調(ステップS206)を行わせる。
一階屋内空間30及び二階屋内空間90を含んで全館空調が行われる場合、リターンチャンバ43が階段空間91の近傍に設置されているため、階段空間91の空気がリターンチャンバ43に取り込まれやすくなっている。したがって、階段空間91を介した一階屋内空間30と二階屋内空間90との空気の対流が促進される。しかしながら、暖房時には二階屋内空間90に暖気が溜まりやすく、冷房時には一階屋内空間30に冷気が溜まりやすいため、一階屋内空間30と二階屋内空間90との間で生じる温度差が大きくなってしまうことがある。コントローラ71は、前記温度差が例えば3℃より大きくなった場合に個別空調が必要であると判定する(ステップS204のYES判定)。
個別空調として、一階屋内空間30を空調対象とする場合、例えば暖房時において一階部分の廊下32が暖まりにくい場合、一階屋内空間30と二階屋内空間90との温度差が例えば3℃より大きければ、コントローラ71は、二階部分の部屋31に対する給気量を減少させる。この場合、二階屋内空間90における空気循環量が低下するため、一階屋内空間30の暖気が二階屋内空間90に向かって上昇することを抑制できる。つまり、部屋31に搬送される熱量を小さくすれば空気循環が停滞するため、暖気の分散や浪費を抑制できる。その結果、暖気が溜まることで一階屋内空間30が暖まりやすくなり、一階屋内空間30の温度が二階屋内空間90の温度に近づくことになる。
一方、個別空調として、二階屋内空間90を空調対象とする場合、例えば冷房時において二階部分の廊下32が冷えにくい場合、一階屋内空間30と二階屋内空間90との温度差が例えば3℃大きければ、コントローラ71は、一階部分の部屋31に対する給気量を減少させる。この場合、一階屋内空間30における空気循環量が低下するため、二階屋内空間90の冷気が一階屋内空間30に向かって降下することを抑制できる。つまり、部屋31に搬送される冷気を小さくすれば空気循環が停滞するため、冷気の分散や浪費を抑制できる。その結果、冷気が溜まることで二階屋内空間90が冷えやすくなり、二階屋内空間90の温度が一階屋内空間30の温度に近づくことになる。
複数の部屋31のいずれかの温度調整を特に効率的に行う場合、例えば同一の部屋31に人が長時間継続して居る場合、コントローラ71は、その部屋31を対象として個別空調を行う必要があると判定する(ステップS204のNO判定)。この場合、部屋31への給気量を減少させることで搬送熱量を小さくし、部屋31と廊下32との空気循環を停滞させる。この結果、部屋31の温度を一定に保たれやすくなる。
また、全館換気を行う場合、一階屋内空間30と二階屋内空間90との温度差や、部屋31と廊下32との温度差が例えば3℃より大きければ、コントローラ71は、屋内空間30への給気量を増加させることでユニット式建物10における空気循環量を増加させる。この場合、ユニット式建物10内における搬送熱量が大きくなり、屋内空間における空気循環が促進される。したがって、屋内空間における温度差が減少し、全館換気に伴って人に意図しない冷たい風や温かい風が吹き付けられることを抑制できる。したがって、コールドドラフトの発生を抑制できる。
(3)上記実施形態では、廊下32が第1屋内空間部とされるとともに部屋31が第2屋内空間部とされる構成としたが、廊下32が第2屋内空間部とされるとともに部屋31が第1屋内空間部とされる構成としてもよい。具体的には、換気装置41は部屋31の換気を行い、空調室内機42は廊下32の空調を行い、リターンチャンバ43は部屋31の空気を換気として空調室内機42に供給する構成とする。この構成では、空気流通部39を介して部屋31から廊下32に空気が流れ込むことで空気循環が行われるのではなく、空気流通部39を介して廊下32から部屋31に空気が流れ込むことで空気循環が行われる。したがって、この構成でも、部屋31及び廊下32をまとめて空調及び換気を行うことができる。
(4)上記実施形態では、ユニット式建物10において空調室内機42が部屋31ごとに設置されているが、空調室内機42が1つだけ設置されていてもよい。この場合、各部屋31に通じている各給気用ダクト65は1つの空調室内機42にそれぞれ接続されており、セントラル空調システムが構築されていることになる。この場合でも、空調室内機42が、各部屋31に供給される給気の給気量や温度を個別に調整する機能を有することで、個別空調及び個別換気を行うことが可能となる。
(5)上記実施形態では、ユニット式建物10にて構築されている空調換気システムとして、第一種機械換気システムが採用されているが、第二種機械換気システムや第三種機械換気システムが採用されていてもよい。例えば、第二種機械換気システムが採用された場合、換気装置41には取込ファン56だけが設けられていてもよく、第三種機械換気システムが採用された場合、換気装置41には排気ファン57だけが設けられていてもよい。
10…ユニット式建物、20…建物ユニット、21…柱、23…天井大梁(構造体)、31…部屋(第2屋内空間部)、32…廊下(第1屋内空間部)、36…天井裏空間、38…仕切壁(空間仕切部)、39…空気流通部、41…換気装置(換気設備)、42…空調室内機(空調設備)、43…リターンチャンバ(空気供給設備)、62…還気用ダクト(通気用ダクト)、65…給気用ダクト(給気ダクト)、71…コントローラ(制御装置、給気量調整手段)、76…臭気センサ(臭気検出手段)、84…換気扇(排気装置)。