JP5234904B2 - 被削性に優れた機械構造用鋼 - Google Patents
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C:0.15〜0.5%(質量%の意味、鋼の化学成分について以下同じ)、
Si:0.01〜2%、
Mn:0.1〜2%、
Cr:0.01〜2%、
P:0.1%以下(0%を含まない)、
S:0.01〜0.3%、
Al:0.001〜0.01%、
O:0.001〜0.02%、
N:0.001〜0.025%
を含有し、さらに
Ca:0.0001〜0.01%およびZr:0.01〜0.2%の少なくとも1種を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、
鋼中の酸化物系介在物の合計100質量%に対して、MgO量が0.1〜10質量%である点に要旨を有する。
Cは、最終製品(部品)の強度を確保するために重要な元素である。しかしC量が過剰であると、鋼の靱性が低下すると共に、硬くなりすぎて被削性(特に工具寿命)が低下する。そこでC量を、0.15%以上(好ましくは0.20%以上)、0.5%以下(好ましくは0.45%以下)とした。
Siは、脱酸元素として有効である上に、固溶強化によって部品強度を向上させる作用を有する。しかしSi量が過剰であると、被削性に悪影響を及ぼす。そこでSi量を、0.01%以上(特に固溶強化の観点から、好ましくは0.2%以上)、2%以下(好ましくは1.5%以下)とした。
Mnは、鋼の焼入性を向上させて強度増大に寄与する上に、硫化物系介在物を形成して被削性を向上させる重要な元素である。しかしMn量が過剰であると、かえって被削性が低下する。そこでMn量を、0.1%以上(好ましくは0.6%以上)、2%以下(好ましくは1.5%以下)とした。
Crは、鋼の焼入性を向上させて強度増大に寄与する元素である。しかしCr量が過剰であると、被削性が低下する。そこでCr量を、0.01%以上(好ましくは0.1%以上)、2%以下(好ましくは1%以下)とした。
Pは、粒界偏析を起こして耐衝撃性を劣化させる元素であるため、その量は、できる限り低いことが好ましい。そこでP量を、0.1%以下(好ましくは0.05%以下)と定めた。但しPは、鋼に不可避的に混入するため、工業生産上、その量を0%にすることは困難である。
Sは、MnS等の硫化物系介在物を形成し、被削性を向上させるのに有効な元素である。しかしS量が過剰になると、熱間または冷間鍛造時の割れの起点となって、変形能が低下する。そこでS量を、0.01%以上(好ましくは0.04%以上)、0.3%以下(好ましくは0.15%以下)とした。
溶鋼中のAlは、炉の耐火物からMgの溶出を促進して、鋼中のMgO量を増加させるため、鋼の被削性に悪影響を及ぼす。またAl量が増加すると、鋼中のO量が減少するためMnSが低温で生成する。その結果、MnSが微細化され、被削性に悪影響を及ぼす。さらにAlは、硬質なAl系酸化物を形成することによっても、被削性に悪影響を及ぼす。そこで本発明においてAl量は、できる限り低いことが好ましい。そこでAl量を、0.01%以下(好ましくは0.005%以下)とした。しかし工業生産上、Al量を0%にすることは困難である。そこで生産コスト等の観点からAl量の下限を、0.001%と定めた。なお機械構造用鋼は、通常Alキルド鋼であり、そのAl量は、通常0.02%程度以上である。そのため従来の機械構造用鋼はMgO量が多く、Pbフリーでは、充分な被削性を確保することができなかった。
O量が過剰であると、被削性(特に工具寿命)が劣化する。そこでO量を、0.02%以下(好ましくは0.005%以下)とした。なお本発明では、鋼中のMgO量を低減させるために、スラグ塩基度を下げているので、鋼のO量は0.001%以上に増加する。
Nは、AlやTi等と窒化物を形成して、オーステナイト結晶粒を微細化し、その結果、靱性や疲労強度を向上させる作用を有する。しかしN量が過剰であると、かえって靱性が低下する。そこでN量を、0.001%以上(好ましくは0.002%以上、より好ましくは0.003%以上)、0.025%以下(好ましくは0.02%以下)とした。
CaおよびZrは、MnS中に固溶して、MnSの球状化を促進させる作用を有し、その結果、被削性(特に工具寿命)を向上させるために重要な元素である。逆に言えば、CaおよびZrの双方が無い場合、MnSが細長く伸びて、MnSの被削性向上効果が低下する。そこで本発明では、CaおよびZrの少なくとも1種を必須元素とした。しかし溶鋼中でCaおよびZr量が過剰であると、炉の耐火物中のMgが還元・溶出し、鋼中のMgO量が増大する。そこでCa量を、0.0001%以上(好ましくは0.0005%以上)、0.01%以下(好ましくは0.005%以下)と、Zr量を、0.01%以上(好ましくは0.02%以上)、0.2%以下(好ましくは0.15%以下)とした。
Ti、V、Mo、Nb、CuおよびNiは、強度を向上させるために有効な元素であり、必要に応じて鋼に含有させても良い。強度の観点から、Ti量は、好ましくは0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)であり、V量は、好ましくは0.03%以上(より好ましくは0.06%以上)であり、Mo量は、好ましくは0.05%以上(より好ましくは0.10%以上)であり、Nb量は、好ましくは0.010%以上(より好ましくは0.025%以上)であり、Cu量は、好ましくは0.02%以上(より好ましくは0.1%以上)であり、Ni量は、好ましくは0.02%以上(より好ましくは0.1%以上)である。
Se、Te、Bi、REMおよびBは、被削性を向上させるために有効な元素であり、必要に応じて鋼に含有させても良い。なお希土類元素(REM)は、Sc、Yおよびランタノイドの15元素を含む。工業的にはREMとして、ミッシュメタルを用いる。被削性の観点から、Seは、好ましくは0.001%以上(より好ましくは0.005%以上)であり、Te量は、好ましくは0.001%以上(より好ましくは0.005%以上)であり、Biは、好ましくは0.005%以上(より好ましくは0.010%以上)であり、REM量は、好ましくは0.0001%以上(より好ましくは0.001%以上)であり、B量は、好ましくは0.0005%以上(より好ましくは0.002%以上)である。
表1および2に示す化学成分組成の鋼を溶製した。そして塩基度の低い組成の造滓剤、或いは、塩基度の高い組成の造滓剤を適宜用いて、溶鋼処理時のスラグ塩基度を変化させた。各鋼のスラグから、直接分析したスラグ塩基度の値を、表3および表4に示す。次いで溶鋼を鋳造し、80mmφの棒鋼に圧延して、供試材を作製した。各供試材で、MgO量(質量%)、MnSの平均サイズ(μm2)、MnSのアスペクト比を測定した。また下記のような切削試験(ドリル試験および超硬旋削試験)を行った。これらの結果も併せて表3および表4に示す。
MgO量の測定は、エネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて行った。詳細には、鋼材中から無作為に10個の酸化物系介在物を抽出した。通常は、研磨面において10mm×10mmの領域を観察すれば、10〜30個程度の酸化物系介在物を見出すことができる。研磨面(観察領域)は任意の断面をとることができるが、圧延方向に対して平行であることが好ましい。酸化物と硫化物との位置関係が分かりやすいからである。次いで、上記のように抽出した10個の酸化物系介在物を、EDSで定量分析して、各介在物に含まれる金属元素の割合を求めた。これらの割合から、MgはMgOに、AlはAl2O3に、CaはCaOに、MnはMnOに、SiはSiO2に、ZrはZrO2になると想定して、これら想定酸化物の合計100質量%に対するMgO量を、各酸化物系介在物について求めた。なおMn等は硫化物となる場合もあるが、酸化物系介在物を観察しているため、全て酸化物となると想定した。また酸化物は黒色に、硫化物は灰色に見えるため、酸化物と硫化物とは明確に区別できる。このようにして求めた各介在物のMgO量から計算した平均値を、その鋼の「MgO量」とした。
D/4部(D:板厚)の縦断面にて、倍率1000倍で1mm2の視野を光学顕微鏡で観察し、1μm以上の各硫化物系介在物の面積を観察した。各面積の平均値を、鋼の「MnSの平均サイズ」とした。さらに各硫化物系介在物の長径および長径方向に直交する方向の幅を測定し、これから各アスペクト比(長径/幅)を求めた。各アスペクト比の平均値を、鋼の「MnSのアスペクト比」とした。
10mmφのストレートドリル(SKH51、表面コーティング無し)を、切削速度:20m/min、送り:0.2mm/rev、被削鋼材の厚さ:40mm、乾式(切削油無し)の条件で用いて、ドリル試験を行った。ドリル試験は、被削鋼材に深さ30mmの穴(未貫通)を次々と開けてゆき、そして工具寿命として、ドリルが焼き付いて、穴が開けられなくなるまでのドリル穴の総長さを測定した。
超硬工具P10(JIS B4053)のチップを、切削速度:150m/min、切込み量:1.5mm、送り:0.25mm/rev、乾式(切削油無し)の条件で用いて、超硬旋削試験を行った。そして工具寿命として、工具側面の摩耗長さが0.2mmになるまでの切削時間を測定した。
Claims (4)
- C:0.15〜0.5%(質量%の意味、鋼の化学成分について以下同じ)、
Si:0.01〜2%、
Mn:0.1〜2%、
Cr:0.01〜2%、
P:0.1%以下(0%を含まない)、
S:0.01〜0.3%、
Al:0.001〜0.01%、
O:0.001〜0.02%、
N:0.001〜0.025%
を含有し、さらに
Zr:0.01〜0.2%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、
鋼中の酸化物系介在物の合計100質量%に対して、MgO量が0.1〜10質量%であることを特徴とする被削性に優れた機械構造用鋼。 - Ca:0.0001〜0.01%をさらに含有する請求項1に記載の機械構造用鋼。
- Ti:0.2%以下(0%を含まない)、
V:0.5%以下(0%を含まない)、
Mo:1%以下(0%を含まない)、
Nb:0.1%以下(0%を含まない)、
Cu:1%以下(0%を含まない)、および
Ni:2%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含有する請求項1または2に記載の機械構造用鋼。 - Se:0.01%以下(0%を含まない)、
Te:0.01%以下(0%を含まない)、
Bi:0.1%以下(0%を含まない)、
希土類元素:0.01%以下(0%を含まない)、および
B:0.005%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含有する請求項1〜3のいずれかに記載の機械構造用鋼。
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