JP4676817B2 - 破断分割性に優れたコネクティングロッド用鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車のエンジン部品であるコネクティングロッド(略称:コンロッド)を製造するのに好適に用いることのできる鋼に関するものである。
ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関には、ピストンとクランクシャフトとの間を連結し、ピストンの往復運動をクランクシャフトに伝えて回転運動に変換する部品としてコンロッドが用いられている。コンロッドは、クランクシャフトに組み付けるための概略円形の貫通孔を備えた部品であり、この組み付けや保守のための取り外しを容易にするために貫通孔部分が2つの概略半円に分離(分割)するように構成されている。分離したコンロッドのうちピストンと直結する側はコンロッド本体と称され、残りはコンロッドキャップと称される。このようなコンロッドは、例えばコンロッド本体とコンロッドキャップを別個に熱間鍛造した後、切削による合わせ面の加工を施すことによって製造されており、更に必要に応じてズレを防止するためノックピン加工が施される場合もある。しかしこうした加工を施すと、材料の歩留まり量が低下する他、多数の工程を経るためにコストが上昇するという問題があった。そこでコンロッドを一体で熱間鍛造し、機械加工[クランクシャフトに組み付けるための貫通孔形成加工(穴開け加工)やボルト穴加工等]した後、貫通孔部分が2つの概略半円に分離(分割)するように冷間で破断分割し、最後にクランクシャフトを挟んで破断面を嵌合し、ボルトで締結して組立てる方法が検討されている。この方法によれば、破断面に対して切削による合わせ面の加工を施す必要がなくなる。
ところが、従来のコンロッド用鋼を冷間で破断分割すると、靱延性が良好であるため、破断面の塑性変形量が大きくなって嵌合できなかったり、貫通孔部分の塑性変形量が大きくなって仕上げ加工量が増大する等の不具合があった。そこで本出願人らは、靭性や延性を低くし、破断分割性に優れた熱間鍛造用非調質鋼を先に提案している(特許文献1)。この熱間鍛造用非調質鋼では、ある程度の大きさ(幅1μm以上)の硫化物系介在物を利用してクラックを進展させると共に、該硫化物系介在物を球状化してクラック先端での応力を増大させて脆性的な破断を促進している。そしてこの文献には、硫化物系介在物を球状化するために、例えばCaを添加することが開示されている。しかしCa利用による硫化物系介在物の球状化では、S量が多くなると球状化による破断分割性改善効果(破断分割時の塑性変形量低下効果)が飽和する。そのためこの特許文献1のS量は0.11%止まりである。
特開2000−73141号公報([特許請求の範囲]、[0001]、[0004]など)
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来とは異なる機構によってコンロッドの破断分割性(破断分割時の塑性変形量低下効果)を高めることにある。本発明の他の目的は、S量の多少によらず破断分割性(破断分割時の塑性変形量低下効果)に優れたコンロッド用鋼を提供することにある。
本発明者らは、コンロッドの破断分割性を改善すべく検討を重ねてきた。その結果、鋼中に存在する酸化物系介在物の組成を適切に制御すれば、コンロッド用鋼の破断分割性を改善できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明に係る破断分割性に優れたコンロッド用鋼とは、C:0.1〜0.5%(質量%の意味。以下同じ)、Si:0.1〜2%、Mn:0.5〜2%、P:0.15%以下(0%を含まない)、S:0.06〜0.2%、N:0.02%以下(0%を含まない)、Ca:0.0001〜0.005%およびAl:0.001〜0.02%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼に含まれる酸化物系介在物を最大のものから5個選択したとき、これら5個の酸化物系介在物が、図1の斜線で囲まれた領域の組成を満足する点に要旨を有する。
更に他の元素として、(a)Cr:2%以下(0%を含まない)、(b)V:0.5%以下(0%を含まない)、(c)Ti:0.1%以下(0%を含まない)、B:0.1%以下(0%を含まない)、Mg:0.005%以下(0%を含まない)、Pb:0.4%以下(0%を含まない)およびBi:0.2%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上、等を含むことが好ましい。
本発明によれば、鋼中に存在する酸化物系介在物の組成を所定の範囲内に制御しているため、コンロッド用鋼の破断分割性を高めることができる。
Alキルド鋼では、鋼中にAlを主体とする酸化物系介在物が形成され、Siキルド鋼では、鋼中にSiOを主体とする酸化物系介在物が形成される。本発明者らがこれら酸化物系介在物の組成と破断分割性の関係について検討したところ、酸化物系介在物がAlを主体とする場合やSiOを主体とする場合には破断分割性(破断分割時の靭性変形量低下効果)が未だ不充分であることが判明した。そして酸化物系介在物のうち、前記AlおよびSiOに加えてCaOにも着目し、これら三成分に偏りが生じないようにすると破断分割性(破断分割時の靭性変形量低下効果)がさらに向上することを見出した。
Al、SiOおよびCaOの割合を定量的に示すと、例えば、図1(三成分系状態図)の斜線で囲まれた領域を満足すればよい。より具体的には、鋼に含まれる酸化物系介在物のうち最大のものから5個選択したとき、これら5個の酸化物系介在物が、図1の斜線で囲まれた領域の組成を満足すればよい。酸化物系介在物が大きくなるほど、コンロッド用鋼の破断分割性に及ぼす影響が大きくなるからである。
図1の斜線で囲まれた領域の組成を満足する酸化物系介在物の個数は、多い方が好ましく、例えば最大のものから7個(特に10個)選択したとき、これら7個(特に10個)の酸化物系介在物全てが上記領域の組成を満足していることがより好ましい。
なお、酸化物系介在物の大きさは、観察面に現れる酸化物系介在物の面積に基づくものとする。また最大の酸化物系介在物とは、観察面に現れる面積が1μm以上の酸化物系介在物の平均面積(=酸化物系介在物の合計面積/個数)に対して100倍以下の面積を有するもののうち最大の面積を有するものを意味する。平均面積に対して100倍を超える酸化物系介在物は、実質的に殆ど存在しないが、存在した場合には異常介在物として無視してよい。
鋼に含まれる酸化物系介在物の大きさと組成を測定するには、鋼材の破断面(圧延方向に直交する断面)を電子線マイクロプローブX線分析計(ElectronProbe X‐rayMicro Analysis:EPMA)で観察すればよい。例えば、加速電圧20kV、試料電流1ナノA(nA)、倍率2000〜3000倍、観察視野面積0.5〜5cmの条件でEPMA観察を行い、面積の大きいものから順に酸化物系介在物を選択し、選択した酸化物系介在物それぞれについて、その中央の組成を特性X線の波長分散分光によって定量すればよい。分析対象元素は、Al、Si、Ca、およびO(酸素)であり、既知物質を用いて各元素のX線強度と元素濃度の関係を予め検量線として求めておけば、分析対象とする介在物から得られたX線強度から前記介在物に含まれる元素濃度を決定できる。
最大の酸化物系介在物の円相当径は、例えば30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。また、円相当径が5μm以上の酸化物系介在物の平均アスペクト比(長径/短径)は、例えば20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であることが推奨される。
次に、本発明に係る鋼の成分組成について説明する。上述した如く本発明の鋼は、特定の組成を有する酸化物系介在物を含む点にポイントがあるが、こうした酸化物系介在物の組成を適切に制御するためにはSiは0.1〜2%、Caは0.0001〜0.005%、Alは0.001〜0.02%の範囲で含有する必要がある。
Si、CaおよびAlは、所望の組成を有する酸化物系介在物を形成し、破断分割性の向上に寄与する元素である。またSiは、鋼材溶製時に脱酸剤として作用する他、フェライトに固溶して固溶強化を示すため、強度を向上するのにも有効な元素であり、Alは、結晶粒を微細化して疲労特性の向上にも寄与する元素である。
こうした効果を発揮させるには、Siは0.1%以上、好ましくは0.15%以上、より好ましくは0.20%以上とする。しかしSi量が過剰になると、SiOが多く生成して酸化物系介在物の組成を適切に制御できず破断分割性が劣化する。またSiOが多く生成して凝集すると、SiOを生成核とする硫化物系介在物も粗大化し、切削加工性が低下する。従ってSi量は2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下とする。
Caは0.0001%以上、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.001%以上とする。しかし過剰に含有すると、鋳造時にノズルを閉塞することがあるため、上限は0.005%とする。Ca量は、好ましくは0.004%以下、より好ましくは0.003%以下である。
Alは0.001%以上、好ましくは0.0015%以上、より好ましくは0.0020%以上である。しかし過剰に含有するとAlが多く生成して酸化物系介在物の組成を適切に制御できず破断分割性が劣化する。またAlが多く生成して凝集すると、該Alを生成核として成長する硫化物系介在物も粗大化し、切削加工性が低下する。従ってAl量は0.02%以下、好ましくは0.015%以下、より好ましくは0.01%以下とする。
なお、酸化物系介在物の組成を所定の範囲内に制御するには、SiとCaをバランスよく含有するのがよく、SiはCaに対して、質量基準で50倍以上(好ましくは100倍以上、より好ましくは150倍以上)、3000倍以下(好ましくは1000倍以下、より好ましくは500倍以下)とするのがよい。一方Alは、Caに対して、質量基準で1.3倍以上(好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2.0倍以上)、15倍以下(好ましくは10倍以下、より好ましくは5倍以下)とするのがよい。
本発明のコンロッド用鋼は、上記元素の他に、基本元素として次に示す元素を含有する。
C:0.1〜0.5%
Cは、金属組織中のパーライト量を増大させ、パーライト組織中におけるセメンタイト間のラメラー間隔を広げることによりパーライト強度を低下させて破断分割性を向上させる元素である。また所望の強度を確保するためにも重要な元素である。従ってC量は少なくとも0.1%とする。C量は、好ましくは0.15%以上であり、より好ましくは0.20%以上である。しかしC量が過剰になると切削加工性が低下してくるので、C量の上限は0.5%とする。C量は、好ましくは0.45%以下であり、より好ましくは0.4%以下である。
Mn:0.5〜2%
Mnは、Sと結合して硫化物系介在物(例えば、MnS等)を形成する元素であり、切削加工時には該硫化物系介在物に応力が集中することで切削加工性が向上する。また、溶製時に脱酸および脱硫元素としても作用する元素であり、更にパーライト焼入性を高めてパーライト量を増加させ、パーライト組織中のラメラー間隔を狭くすることにより耐力や疲労強度等の強度を増大させる元素である。従ってMn量は0.5%以上、好ましくは0.7%以上、より好ましくは0.9%以上とする。しかしMn量が過剰になると、金属組織中にベイナイトが生成し、破断分割性および切削加工性が低下するため、上限は2%とする。Mn量は、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.3%以下とする。
P:0.15%以下(0%を含まない)
Pは、鋼材に不可避的に含まれる不純物であり、その含有量が多いと鋼材の熱間加工性が低下する。従ってP量は0.15%以下、好ましくは0.13%以下、より好ましくは0.10%以下とする。なお、Pは粒界に偏析して靭性や延性を低下させるため、破断分割性を向上するのに有用である。こうした観点からPを所定量以上含有させてもよく、例えば0.01%以上程度、好ましくは0.015%以上程度、さらに好ましくは0.020%以上程度とする。
S:0.06〜0.2%
Sは、硫化物系介在物を形成して切削加工性を向上させるのに作用する元素である。従ってS量は0.06%以上、好ましくは0.07%以上、より好ましくは0.08%以上である。しかしS量が過剰になると、熱間加工時に割れなどが生じる。従ってS量は0.2%以下、好ましくは0.18%以下、より好ましくは0.15%以下とする。
N:0.02%以下(0%を含まない)
Nは、鋼材に不可避的に含まれる不純物であり、その含有量が多いと鋼材の加工性に悪影響を及ぼすことがある。従ってN量は0.02%以下、好ましくは0.015%以下、より好ましくは0.01%以下とする。なお、Nは、AlやVと窒化物を形成して結晶粒の粗大化を防止し、靭性や疲労特性を向上させるのに有効である。こうした観点からNを所定量以上含んでもよく、例えば0.002%以上程度、好ましくは0.0025%以上程度、より好ましくは0.0030%以上程度とする。
本発明のコンロッド用鋼は上記元素を含有するものであり、残部はFeおよび不可避不純物(例えば、OやCu、Niなど)からなるものである。不可避不純物の中でも、O(酸素)含有量は0.0003〜0.003%の範囲とすることが好ましい。酸素量が多くなると、鋼中に含まれる酸化物系介在物量が多くなるからである。より好ましい酸素量は0.0005%以上(更に好ましくは0.0010%以上)、0.0025%以下(更に好ましくは0.0020%以下)である。
上記コンロッド用鋼を成形加工して得られるコンロッドは、酸化物系介在物の成分組成が適切に調整されているため、破断分割性に優れたものとなり、しかもSを適量添加しても酸化物系介在物の組成が適切に制御されているため、粗大な硫化物系介在物は生成せず、その結果、切削加工性にも優れたものとなる。
本発明のコンロッド用鋼は、上記元素を含むものであるが、更に他の元素として、強度を高めるためにCrやV等を含むことが好ましく、また切削加工性を高めるためにTi、B、Mg、PbおよびBiよりなる群から選択される1種以上等を含むことが好ましい。こうした元素を添加する場合に推奨する範囲を以下に説明する。
Cr:2%以下(0%を含まない)
Crは、Mnと同様にパーライト焼入れ性を高めて耐力や疲労強度等の強度上昇に寄与する元素である。こうした作用を有効に発揮させるには0.01%以上含有することが好ましい。Cr量は、より好ましくは0.03%以上であり、更に好ましくは0.07%以上である。しかしCr量が過剰になると硬さが大幅に上昇したり、金属組織中にベイナイトが生成して切削加工性に悪影響を及ぼすため、上限は2%とする。Cr量は、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1%以下である。
V:0.5%以下(0%を含まない)
Vは、フェライト中に微細な炭化物、窒化物もしくは炭窒化物として析出し、耐力や疲労強度等の強度上昇に寄与し、更にフェライトを脆化させて破断分割性を向上する元素である。また、Vは焼入れ性を高める元素である。こうした作用を有効に発揮させるには0.05%以上含有することが好ましい。V量はより好ましくは0.10%以上であり、更に好ましくは0.15%以上である。しかし過剰に含有させても効果が飽和し、コスト上昇を招くので、上限は0.5%とする。V量は、好ましくは0.4%以下であり、より好ましくは0.3%以下である。
Ti:0.1%以下(0%を含まない)、B:0.1%以下(0%を含まない)、Mg:0.005%以下(0%を含まない)、Pb:0.4%以下(0%を含まない)、Bi:0.2%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上
Ti、B、Mg、PbおよびBiは、いずれも切削加工性を向上させる元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、Ti:0.005%以上(より好ましくは0.010%以上、更に好ましくは0.015%以上)、B:0.0005%以上(より好ましくは0.0010%以上、更に好ましくは0.0015%以上)、Mg:0.0002%以上(より好ましくは0.0005%以上、更に好ましくは0.0010%以上)、Pb:0.01%以上(より好ましくは0.015%以上、更に好ましくは0.020%以上)、Bi:0.005%以上(より好ましくは0.010%以上、更に好ましくは0.02%以上)とすることがよい。
しかし多過ぎてもその効果が飽和し、コスト上昇を招くので、Ti:0.1%以下(より好ましくは0.05%以下、更に好ましくは0.03%以下)、B:0.1%以下(より好ましくは0.05%以下、更に好ましくは0.03%以下)、Mg:0.005%以下(より好ましくは0.004%以下、更に好ましくは0.003%以下)、Pb:0.4%以下(より好ましくは0.3%以下、更に好ましくは0.2%以下)、Bi:0.2%以下(より好ましくは0.18%以下、更に好ましくは0.15%以下)に抑えることがよい。
これらの元素はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を含有すればよい。
本発明のコンロッド用鋼を製造するには、鋼に含まれる酸化物系介在物の組成を制御する必要があり、この介在物の組成制御のためには溶製時のAl、SiおよびCaの割合を適切に調整する必要がある。例えば、溶製時におけるスラグ中のAl含有量とスラグの塩基度(CaO/SiO)を適切に制御すれば、酸化物系介在物の組成が前記範囲に収まるようになる。
スラグ中のAl含有量は、スラグの塩基度に応じてコントロールする必要があるが、例えば30質量%以下(好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下)、5質量%以上(好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上)である。
スラグ中のAl含有量を30質量%以下に調整するには、溶製に使用する鍋として、その壁面にAl含有鋼が実質的に付着していないものを使用する必要がある。通常の生産工程では、Al含有鋼(Alキルド鋼)を含む複数の鋼種間で共通の鍋を使用しているため、過去のAl含有鋼が少なからず鍋の壁面に残留している。そのため通常通りにコンロッド用鋼を溶製すると、残留Al含有鋼に由来するAlが多くなり、スラグ中のAl含有量は30質量%を超えるようになる。そこで本発明のコンロッド用鋼を製造する際には、Al付着量の少ない鍋を使用することが推奨される。
一方、スラグの塩基度(CaO/SiO)も、Alの含有量に応じてコントロール必要があるが、例えば0.5以上(好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上)、2.5以下(好ましくは2.3以下、より好ましくは2.0以下)程度である。
溶製して得られた溶鋼は、公知の手順で鋳造すればよく、例えば造塊法や連続鋳造法を採用できる。連続鋳造法では、例えばブルーム連鋳機で鋳造した後、必要に応じて熱間で分塊圧延し、更なる圧延(例えば、棒鋼圧延など)することでコンロッド用鋼(例えば、棒鋼など)を得る。
得られたコンロッド用鋼は、例えば次の手順でコンロッドに成形加工する。上記コンロッド用鋼(例えば、棒鋼など)を熱間加工(例えば、熱間鍛造など)してコンロッドの外形を形成し、クランクシャフトに組み付けるための貫通孔を切削形成することによって粗形コンロッドを得る。そしてこの粗形コンロッドの貫通孔部分が2つの概略半円に分離するように破断分割することにより、破断分割型コンロッドを得ることができる。このようにして得られる破断分割型コンロッドは、貫通孔部分の塑性変形量が少ないため、嵌合性に優れており、また貫通孔部分の仕上げ加工量も低減できる。
なお、本発明のコンロッド用鋼のうち、CrやVを含むコンロッド用鋼からコンロッドを製造する際には、上記熱間加工後、室温まで空冷すればよく、焼入れ焼き戻しの調質処理は不要である。CrやVを含むことで焼入れ性が向上し、調質処理をしなくてもコンロッドとして要求される強度を満足できるからである。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
表1に示した成分組成(残部は、Feおよび不可避不純物)の鋼を転炉で溶製し、ブルーム連鋳機で鋳造した後、分塊圧延、棒鋼圧延してφ50mmの棒鋼を得た。但し、表1に示したNo.1〜6については、壁面にAl含有鋼が実質的に付着していない鍋を使用し、No.7については、壁面にAl含有鋼が付着している鍋を使用した。壁面にAl含有鋼が実質的に付着していない鍋としては、前チャージにAlキルド鋼以外の鋼を溶製した鍋を用い、壁面にAl含有鋼が付着している鍋としては、前チャージにAlキルド鋼を溶製した鍋を用いた。転炉溶製時におけるスラグ中のAl含有量と塩基度を測定し、結果を下記表2に示す。
次に、得られた棒鋼を、1200℃で30分加熱保持した後、板状に熱間鍛造し、次いで300℃まで冷却速度1.5℃/secで冷却し、更に室温まで空冷して板材を得た。
得られた板材を切削加工して試験片を切り出し、破断分割試験した。試験片の形状を図2に示す。図2中、(a)は試験片を圧延方向から見た図、(b)は試験片を圧延方向に対して垂直方向から見た図を夫々示している。図2中、aは切欠、bはボルト穴、cは圧延方向に対して垂直な方向であることを示す矢印を夫々示している。試験片は、70mm×65mm×厚み22mmの板状で、中央にはφ38mmの円筒状に抜き取られている。抜き取り部の端部には、切欠a(Kt=5.4)が設けられている。また、試験片には圧延方向に対して垂直方向cに沿ってボルト穴b(φ8.0mm)が設けている。
破断分割試験は、次の手順で行った。切欠部に対して垂直方向の最大内径を、投影機を用いて測定した。次いで、冶具を用いて切欠部から破断分割した後、トルク4kg・cmでボルト締結し、破断前に測定した位置と同じ位置で内径を測定する。破断分割前後における内径差を寸法変化として算出し、破断分割性を評価した。破断分割性は内径差が0に近づくほど良好である。算出した内径差を下記表2に示す。
次に、破断分割後における試験片のうち、破断面の最表面に現れる酸化物系介在物の大きさと組成を、EPMAで観察した。EPMAは、日本電子社の「JXA8900型EPMA(装置名)」を用い、加速電圧20kV、試料電流1nA、倍率2000〜3000倍、観察視野面積0.5cmの条件でEPMA観察を行い、面積の大きいものから順に酸化物系介在物を選択した。選択した酸化物系介在物のそれぞれについて、上述した手順で定量分析した。
面積の大きいものから順に酸化物系介在物を10個選択し、これらの組成を三成分系状態図上にプロットした分布図を図3〜9に示す。
一方、棒鋼圧延して得られたφ50mmの棒鋼を、長さ40mmに切断し、1200℃で30分加熱保持した後、室温まで空冷して棒鋼を得た。
得られた棒鋼の切断面にフライス加工した後、該フライス加工面に、下記の条件で穴空け加工し、工具が折損または溶損するまでに加工した距離(合計長さ)を測定して切削加工性(工具寿命)を評価した。
穴あけ加工は、切削工具としてSKH51(φ10ストレートドリル)を用い、切削速度30m/min、送り0.21mm、穴深さ30mmとし、潤滑状態を乾式で行った。穴空け位置はD/4とした(Dは、棒鋼の直径)。結果を下記表2に示す。
Figure 0004676817
Figure 0004676817
表1〜2および図3〜9から次のように考察できる。No.1〜5は、本発明で規定する要件を満足する例であり、10個全ての酸化物系介在物の成分組成が本発明で規定する範囲を満たしている。従って破断分割性に優れており、これらの例は切削加工性も良好である。一方、No.6〜7は、本発明で規定する要件を満足しない例であり、酸化物系介在物の成分組成が、本発明で規定する範囲から外れている。特に、No.6の例は、Sを多めに含有しているが、酸化物系介在物がAlを主体とする硬質なものになっている。従って破断分割性が悪く、切削加工性も悪い。
図1は、酸化物系介在物の組成を示す三成分系状態図である。 図2は、破断分割試験用試験片の概略説明図である。 図3は、No.1における酸化物系介在物の組成分布を示す三成分系状態図である。 図4は、No.2における酸化物系介在物の組成分布を示す三成分系状態図である。 図5は、No.3における酸化物系介在物の組成分布を示す三成分系状態図である。 図6は、No.4における酸化物系介在物の組成分布を示す三成分系状態図である。 図7は、No.5における酸化物系介在物の組成分布を示す三成分系状態図である。 図8は、No.6における酸化物系介在物の組成分布を示す三成分系状態図である。 図9は、No.7における酸化物系介在物の組成分布を示す三成分系状態図である。

Claims (4)

  1. C :0.1〜0.5%(質量%の意味。以下同じ)、
    Si:0.1〜2%、
    Mn:0.5〜2%、
    P :0.15%以下(0%を含まない)、
    S :0.06〜0.2%、
    N :0.02%以下(0%を含まない)、
    Ca:0.0001〜0.005%および
    Al:0.001〜0.02%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、
    該鋼に含まれる酸化物系介在物であって、観察面に現れる面積が1μm 2 以上の酸化物系介在物の平均面積に対して100倍以下の面積を有するもののうち最大のものから5個選択したとき、これら5個の酸化物系介在物が、図1の斜線で囲まれた領域の組成を満足することを特徴とする破断分割性に優れたコネクティングロッド用鋼。
  2. 更に他の元素として、Cr:2%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載のコネクティングロッド用鋼。
  3. 更に他の元素として、V:0.5%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または2に記載のコネクティングロッド用鋼。
  4. 更に他の元素として、
    Ti:0.1%以下(0%を含まない)、
    B :0.1%以下(0%を含まない)、
    Mg:0.005%以下(0%を含まない)、
    Pb:0.4%以下(0%を含まない)および
    Bi:0.2%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を含む請求項1〜3のいずれかに記載のコネクティングロッド用鋼。
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