JP2005054228A - 破断分離が容易なコンロッド用超高温熱間鍛造非調質部品及びその製造方法 - Google Patents

破断分離が容易なコンロッド用超高温熱間鍛造非調質部品及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】製造時のばらつきを考慮しても安定して優れた破断分離性を確保できる熱間鍛造部品の提供。
【解決手段】重量%で,C:0.20〜0.60%,Si:0.10〜2.50%,Mn:0.30〜2.00%,P:0.01〜0.20%,Cr:0.05〜2.00%,Al:0.060%以下,V:0.01〜0.50%,N:0.003〜0.020%を含有し,必要に応じてS:0.04〜0.20%,Pb:0.30%以下,Te:0.30%以下,Ca:0.01%以下,Bi:0.30%以下,Mg:0.01%以下,Zr:0.01%以下の1種または2種以上を含有し,残部Fe及び不純物元素からなり,組織がフェライトパーライトであって,オーステナイトの平均結晶粒度番号が2.5番以下であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は,熱間鍛造時に本体とキャップ部が一体で鍛造され,その後強制破断分離して製造されるコネクティングロッドへの使用に適した超高温熱間鍛造非調質部品及びその製造方法に関する。
自動車にはエンジン部品等,数多くの部品が熱間鍛造により製造されている。その中でピストンとクランク軸をつなぐコンロッドは最も重要な部品のひとつであり,かつ1台のエンジンに気筒数のコンロッドが必要なことから,鍛造部品の中のコスト比率も高く,製造コストを低減するための開発が盛んに行われている。そんな中で最近注目されているコンロッドの製造方法として,鍛造時における一体成形方法がある。
コンロッドは,本体とキャップ部の2つの大きな部品からなっている。従来コンロッドは,本体とキャップ部を全く別々に熱間鍛造して製造していた。それに対し,最近新しく試みられている方法では,本体部分とキャップ部を同時に一体部品として鍛造し,その後,2つの部品に強制的に破断分離するという順序で製造される。この方法を採用すると,本体部とキャップ部で別々の鍛造用金型を準備する必要がなく,1台の鍛造プレスで製造でき,かつ本体とキャップ部の合わせ面の加工を省略することができるので,大幅なコスト低減を達成することができる。
しかしながら,この技術を実際に実用化するためには,従来の製造方法では検討する必要がなかった別の問題の解決が必須となる。すなわち,この方法では,鍛造後における強制的な破断分離が必須となるため,この破断分離が容易にでき,かつ破断分離後の破面が変形のない脆性破面になっていることが必要になるからである。
また,一体成形が可能であるだけでは不十分である。すなわち,コンロッドとして使用するためには,当然のごとく必要な強度を確保する必要がある。しかも前記したように低コスト化が狙いであるから,その必要な強度は非調質で達成する必要がある。
以上説明した課題に対し,最近一体成形後強制破断した際に容易に脆性破面が得られる低延性の非調質鋼が多数開発され,例えば,特許文献1,2に示されるような発明が提案されている。これらの提案は成分範囲の最適化によって材料自体を低延性な材料とすることを特徴とするものであり,Si,P等の脆化元素を添加して,破断分離を容易にすることを特徴とするものである。
特開平8−291373号公報 特開平11−199924号公報
しかしながら,前記特許文献に記載の鋼には以下の問題がある。
従来のコンロッドの一体成形を可能にするための破断分離性の改善方法は,成分の最適化によって材料の脆化を図ることが主な特徴であった。確かにこの方法でも,ある程度破断分離性を改善することができた。
しかしながら,発明者等が詳細に調査,検討を行った結果,成分を主体とした破断分離性の改善では限界があり,素材特性のばらつき,製造時の温度条件のばらつき等によって,大量生産した場合において,一部の鍛造部品に破断分離不良が生じるという問題があることが判明した。
本発明は以上説明した課題を解決するために成されたものであり,その目的は,製造時のばらつきを考慮しても,一部の鍛造部品に破断分離不良が生じるということがなく,確実にコンロッドの一体成形及び分離を可能とする熱間鍛造非調質部品及びその製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するために検討された請求項1記載の発明は,重量%で,C:0.20〜0.60%,Si:0.10〜2.50%,Mn:0.30〜2.00%,P:0.01〜0.20%,Cr:0.05〜2.00%,Al:0.060%以下,V:0.01〜0.50%,N:0.003〜0.020%を含有し,かつSi,Pのうちの1種以上の元素が,Si:0.70〜2.50%,P:0.04〜0.20%の条件を満足し,残部Fe及び不純物元素からなり,組織がフェライトパーライトであって,オーステナイトの平均結晶粒度番号が2.5番以下であることを特徴とする破断分離が容易なコンロッド用超高温熱間鍛造非調質部品である。
本発明において注目すべきことは,成分の最適化に加え,通常より高温での加熱,鍛造(超高温鍛造,詳細は後述)を行って,通常温度で鍛造した場合に比べ結晶粒を粗大化させ,2.5番以下のオーステナイト結晶粒度からなる組織とすることにより,確実に破断分離時の不良発生を防止可能とした点にある。
前記したように,成分の最適化を特徴とする破断分離可能な低延性非調質鋼は,既に特許出願されており,それにより,Si,P等が破断分離性を改善する元素であることが既に知られている。
一方,超高温鍛造については,例えば特開平5−15935号に記載されており,複雑な形状の部品をより小さい変形抵抗で加工可能とすることが可能な技術として,既に公知となっている。
しかしながら,後者の超高温鍛造は,本発明である破断分離性の改善とは全く無関係に開発された技術であり,今までにコンロッドの一体成形に積極的に利用されるという考え方は皆無であった。また,前記した化学成分の最適化による破断分離性の改善のみでは,製造時のばらつきを考慮すると,破断面不良を完全になくすことが難しく,改善の必要があった。
本発明者等は,多数の実験を繰り返し,調査検討を重ねた結果,上記2つの技術を組合せて適用することによって,コンロッドの一体成形後の破断分離をより容易にし,破断面不良の発生を確実に防止することが可能になることを見出し,本発明の完成に到ったものである。
次に本発明である破断分離が容易なコンロッド用超高温熱間鍛造非調質部品の成分範囲の限定理由について説明する。
C:0.20〜0.60%
Cは,侵入型元素であって固溶強化により強度向上に効果のある元素であり,鍛造後に必要な強度を確保するためには,少なくとも0.20%以上含有させる必要がある。しかし,その含有量が増加すると,硬さが高くなって被削性が低下し,鍛造後の仕上加工が難しくなるので,上限を0.60%とした。
Si:0.10(0.70)〜2.50%
Siは,鋼の製造時に脱酸剤として使用するのに有効な元素である。従って,最低でも0.10%以上の含有が必要である。さらに,Siは,フェライト中に固溶して硬度を高めると同時に延性を低下させ,破断分離時に破断面が延性破面となるのを防止し,破断分離性を改善するために不可欠な元素でもある。従って,Siの添加によって,必要な破断分離性を確保する場合には,少なくとも0.70%,好ましくは1.00%の含有が必要である。しかしながら,多量に含有させすぎると,脱炭しやすくなるとともに,熱間加工性が低下するので,上限を2.50%とした。
Mn:0.30〜2.00%
Mnは,鋼材の焼入性を高め,必要な強度を確保するための基本元素であり,0.30%以上の含有が必要である。しかしながら,多量の含有は被削性を低下させて,鍛造後の仕上加工が難しくなるため,その上限を2.00%とした。
P:0.01(0.04)〜0.20%
Pは,粒界に偏析して鋼を脆化させる元素であり,必要な破断分離性を確保するために必要な元素である。但し,本発明では破断分離性改善のためにSiも添加するので,Siの添加のみで破断分離性を確保する場合を考慮し,下限を0.01%とした。但し,Pの含有によって必要とする破断分離性を確保しようとする場合には,最低でも0.04%以上の含有が必要である。しかしながら,Pを多量に含有させると熱間加工性が低下して圧延,鍛造等で所定の加工を安定して割れが発生することなく実施することが難しくなるため,上限を0.20%とした。
Cr:0.05〜2.00%
Crは,Mnと同様に鋼材の焼入性を高め,必要な強度を確保するための基本元素であり,0.05%以上の含有が必要である。しかしながら,添加しすぎると,ベイナイトが生成してフェライトパーライト組織を得ることが困難となり,その結果優れた破断分離性を確保することが難しくなるため,上限を2.00%とした。
Al:0.060%以下
Alは,脱酸のために必要な元素である。しかしながら,Alは鋼中でアルミナとなって存在し,被削性に悪影響を及ぼすとともに,疲労破壊の起点となって疲労特性を低下させるため,脱酸のための最低限の添加に抑える必要があり,上限を0.060%とした。被削性を重視するのであれば,できるだけ添加量を抑えることが好ましい。
V:0.01〜0.50%
Vは熱間鍛造後の冷却時に鋼中でV炭窒化物となって析出し,析出強化によって疲労強度を向上させる元素であり,非調質で使用可能とするために不可欠となる元素である。従って,その含有率の下限を0.01%とした。しかしながら,多量に含有しても効果が飽和し,コスト高となるため,上限を0.50%とした。
N:0.003〜0.020%
Nは,鋼中でV等と結合して炭窒化物となって存在し,この炭窒化物によって鋼を析出強化させ,強度向上に効果のある元素であり,含有率の下限を0.003%とした。しかしながら,多量に含有させると,鋳片,鋼塊内にブローホ−ルが生成し,鍛造時における割れ発生の原因となるため,上限を0.020%とした。
なお,Si,Pの限定理由の箇所でも記載したが,本発明では破断分離性を改善することを最重要視しているため,破断分離性を改善する元素であるSi,Pの少なくとも一方が,Si:0.7〜2.5%,P:0.04〜0.20%の条件を満足していることが必要である。
次に,請求項1の発明の化学成分以外の条件の限定理由について説明する。
組織をフェライトパーライトとしたのは,本発明は,Si,Pの添加によって鋼材を脆化させ,破断分離性を改善させることを特徴としているが,この効果がフェライトパーライト組織である場合に最も効果的となるからである。従って,例えばMn,Crの添加量を増加させ,焼入性が高くなって鍛造後の冷却時にベイナイトが生成したような場合には,Si,Pの添加による脆化効果が低下し,優れた破断分離性を確保することが難しくなる。よって,鍛造品のサイズとMn,Cr量の最適化によってベイナイトが生成しないようにすることが必要である。
次に平均結晶粒度番号を2.5番以下としたのは,2.5番以下の粗粒にしないと,通常の鍛造温度による加工で得られる3〜6番程度の結晶粒からなる鍛造品と比較して,明確な破断分離性の改善が得られないためである。なお,本発明で規定している結晶粒度とは,JISG0551で規定された方法によって測定することのできるオーステナイト結晶粒度を意味する。
また,本発明は,請求項2に記載した発明のように,S,Pb,Te,Ca,Bi,Mg,Zrを添加して,破断分離性を劣化することなく被削性を改善することができる。以下,その限定理由について説明する。
S,Pb,Te,Ca,Bi,Mg,Zrは,被削性を改善する効果のある元素である。本発明は,破断分離した合わせ面については,勿論そのままで使用されるが,他の鍛造品の表面については,最終製品の形状とするために,当然の如く機械加工が施されるため,被削性を良好な状態にしておく必要がある。
そこで,前記した元素を必要に応じて添加することによって,被削性を改善することとしたものである。但し,添加量が多すぎても,熱間加工性が低下する原因となるため,上限をSは0.20%,Pb,Te,Biは0.30%,Ca,Mg,Zrは0.01%とした。また,Sの下限を0.04%としたのは,Sは添加しなくても不純物として少量含有しているため,0.04%以上添加しないと,不純物レベルで含有している鋼と比較して,被削性改善効果が得られないためである。
次に,請求項3に記載した破断分離が容易なコンロッド用超高温鍛造非調質部品の製造方法の製造条件及びその限定理由について説明する。
通常の熱間鍛造では,1000〜1200℃程度の温度にて加熱及び鍛造されることが普通である。しかしながら,それでは,平均結晶粒度番号が安定して2.5番以下となる鍛造品を製造することはできない。粗大粒からなる鍛造品を製造するには,通常に比べ温度の高い超高温度領域で鍛造することによって可能となる。具体的には,下限温度が固相線温度×0.94又は1250℃の何れか高い方とし,上限温度が液相線温度×0.98となる温度で加熱及び鍛造するという超高温鍛造を実施することにより達成される。
下限温度を固相線温度×0.94又は1250℃の何れか高い方としたのは,これより低い温度になると,前記した通り,2番以下の平均結晶粒度からなる非調質部品を安定して製造することが困難となり,優れた破断分離性を得ることが難しくなるためである。また,上限を液相線温度×0.98としたのは,これ以上温度が高いと溶融部分の割合が高くなりすぎて,鍛造すること自体が難しくなるためである。
なお,鍛造する鋼材の液相線温度,固相線温度は,棒状素材を用い,一方向凝固試験を行うことにより求めることができる。
但し,固相線に近い温度まで加熱すると,鍛造素材の一部が溶融しはじめ,固相線温度を越えて加熱すると,溶融する部位が増加していく。このような素材を鍛造すると,鍛造後に空孔が残留し,必要な強度の確保が難しくなる。そのため,超高温鍛造時においては,素材表面の大部分(85%以上,特に固相線を超える温度に加熱する場合には,90%以上)が金型に接触しているような高い静水圧状態で鍛造することにより,空孔が減少するように工夫して鍛造することとした。これにより空孔の発生が抑制され,品質の良い非調質部品の製造が可能となる。
以上説明した条件で超高温鍛造することにより,空孔が少なく,かつ2番以下の結晶粒度からなる鍛造品が得られるため,前述の脆化元素の添加による効果との組合せによって,破断分離性の優れた鍛造品を製造することができる。
次に,本発明からなる熱間鍛造非調質部品を使用した場合に得られる効果について,実施例を示すことにより説明する。表1は供試材として用いた鋼の化学成分を示すものである。
Figure 2005054228
表1において,1〜6鋼は本発明の成分範囲の条件を満足する鋼であり,7鋼は,破断分離性を改善するための元素であるSi,Pの含有率が低い比較鋼である。また,表1には,固相線温度,液相線温度を併記するが,これは,後述のφ65の鍛伸丸棒をさらに鍛伸し,機械加工して準備したφ15×250mmの棒状素材を用い,一方向凝固試験を行って,測定した温度である。
供試材は,表1に示す成分からなる鋼を30kgVIM溶解炉にて溶解し,製造された鋼塊を直径65mmの丸棒に鍛伸し,空冷することにより準備した。得られた材料を用い,後述の超高温鍛造を実施し,破断分離性の評価を行った。
超高温鍛造は,前記鍛伸材から,直径60mm,高さ90mmの円筒型試験片を準備し,これを後述の表2に示す加熱温度,鍛造前温度の条件(表2に示した温度は,各試験No.毎の試験結果の平均値,但し,可能な範囲で温度条件がばらつかないようにして実施)で高さが30mmとなるまで据込み鍛造した。鍛造は,通常の温度と固相線温度との中間の温度で1条件,固相線温度と液相線温度×0.98の間の中間温度で1条件の合計2条件を1〜7鋼のそれぞれについて行った。また,通常の鍛造温度で行った場合との比較を行うため,本発明の成分範囲の条件を満足する鋼の中から5鋼を選択し,これに通常温度で鍛造を行った場合についても同様の評価を行った。
次に破断分離性の評価方法について説明する。破断分離性の評価としては,まず前記鍛造後の試験片から,JIS4号Vノッチシャルピー衝撃試験片を作製し,破面の脆性破面率を測定することによる評価を行った。また,試験後の残材よりJISG0551に基づく方法でオーステナイト結晶粒度を測定した。
但し,シャルピー衝撃試験による評価では後述の試験結果に示すようにある程度以上に優れた破断分離性が得られる場合には,脆性破面率が100%となり,差異を明確に評価することができない。そこで,より正確に破断分離性の評価を行うため,前記据込み後の供試材から,厚さ10mm,縦横共50mmの正方形の試験片を作製し,この試験片の中心に直径30mmの穴をあけて,穴の左右対称の位置に深さ1mm,角度45度の切欠(切欠部底の半径は0.2mm)をつけた試験片を用意した。この試験片の穴部にくさびを入れて,油圧プレスで12000mm/minの速度で両側共に切欠部から破壊するまで荷重を負荷した。破壊後破面を合わせて当接させて元の形状を再現した状態で固定し,破面に対し直角方向の穴径を測定し,破断分離前に測定しておいた直径との差によって破断分離性を評価した。
なお,本発明では,製造時のばらつきを考慮しても問題が生じることのない優れた破断分離性を得ることを目的としているので,この評価は,各条件毎に20個ずつ行い,得られたデータのうち穴径の変化が最も大きかったものの値を表2に示した。
Figure 2005054228
表2から明らかなように,本発明の実施例である試験No.1〜12は,脆性破面率が全て100%となり,かつ穴径の変化も0.04mm以下と優れた破断分離性を示していた。特に固相線温度を超える温度で鍛造した実施例である試験No.2,4,6,8,10,12は穴径の変化が0.02mm以下となり良好な結果が得られた。
これに対し,脆化元素であるSi,Pの含有率が低い7鋼を鍛造して得られた結果である試験No.13,14は,結晶粒度番号については,本発明の実施例である試験No.1〜12の結果とほぼ同等であったが,脆性破面率,穴径の変化のいずれかの値が劣る結果が得られた。また,5鋼を通常の温度で鍛造した実施例である試験No.15,16は結晶粒度番号が4.4〜5.2と細かくなり,破断分離性が低下する結果となった。
以上説明した結果より,本発明により破断分離性を大幅に改善できることが実証されたので,表1に示す1鋼と同等の成分を有する鋼をさらに追加して準備し,実際に小型乗用車用コンロッドを本体部とキャップ部が一体となった状態で超高温鍛造により製造(加熱温度の狙い値1380℃,鍛造前温度の狙い値1350℃,鍛造後自然空冷)し,破断分離させ,分離面の状態を評価した。
なお,鍛造は,鍛造後の製品に空孔が生じて,強度が低下するのを防止するため,素材表面と金型の接触面が92%と高い静水圧条件下で鍛造し,鍛造後の製品の評価を行った。評価は,複数個製造した場合の品質ばらつきを評価するため,同時に100個の試作を行った。その結果,全て正常に破断分離できることが確認できた。
これに対し,同じ鋼を用い同じ形状のコンロッドを1200℃加熱,1150℃鍛造,鍛造後自然空冷の条件で製造して,鍛造温度の差異による影響を評価した。その結果,脆化元素の効果によって,大部分の鍛造品は正常に破断できたが,その中の5個について破断分離面に延性破面が認められ,異常がみられた。
そこで,試験後鍛造品を切断し,結晶粒度番号を測定した結果,前者の超高温鍛造品が1.4であったのに対し,後者の通常鍛造品は4.6と大きな差異がみられた。この結果より結晶粒の粗粒化が破断分離性の改善に大きく関係していることが確認できた。
さらに,超高温鍛造品については,同時に光学顕微鏡で穿孔の有無についても調査(倍率200倍で100個中,10個を無作為に選択し,1個につき5視野観察した。)したが,固相線を若干上回る高い温度に加熱鍛造しているにもかかわらず,穿孔率は0.2〜0.4%と低い値に抑えられていた。これは,鍛造時に素材と金型の接触面積率を92%と高くして,成形したことによる効果によるものと考えられる。
また,試作した超高温鍛造によるコンロッドについて,コラム部の座屈強度を同時に通常の鍛造温度で製造したコンロッドと比較測定した結果,大きな差異はなく,ほぼ同等の強度が得られることが確認できた。
これは,前記した通り,空孔の少ない鍛造品が得られていることも,大きな要因と考えられる。従って,本発明によるコンロッドは,通常条件の鍛造品と比較して,同等の強度を有しつつ,破断分離性を改善できることが確認できた。
本発明の効果に関して,本発明の超高温鍛造は,鍛造荷重低下と複雑形状製品の製造を可能にするために開発された技術であり,従来はコンロッドの破断分離性の向上のために積極的に適用されることはなかった。しかし,前記したように,超高温鍛造を利用して粗大粒からなる鍛造部品を製造することによって破断分離性が大幅に改善できることが明らかになった。
特に,従来から提案されている脆化元素を添加した材料に超高温鍛造を組合せて実施することによって,製造時のばらつきを考慮しても安定して優れた破断分離性を得ることができ,コンロッドの低コスト化に大きく貢献することができる。

Claims (3)

  1. 重量%で,C:0.20〜0.60%,Si:0.10〜2.50%,Mn:0.30〜2.00%,P:0.01〜0.20%,Cr:0.05〜2.00%,Al:0.060%以下,V:0.01〜0.50%,N:0.003〜0.020%を含有し,かつSi,Pのうちの1種以上の元素が,Si:0.70〜2.50%,P:0.04〜0.20%の条件を満足し,残部Fe及び不純物元素からなり,組織がフェライトパーライトであて,オーステナイトの平均結晶粒度番号が2.5番以下であることを特徴とする破断分離が容易なコンロッド用超高温熱間鍛造非調質部品。
  2. 請求項1に記載の熱間鍛造非調質部品に加えて,さらにS:0.04〜0.20%,Pb:0.30%以下,Te:0.30%以下,Ca:0.01%以下,Bi:0.30%以下,Mg:0.01%以下,Zr:0.01%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする破断分離が容易なコンロッド用超高温熱間鍛造非調質部品。
  3. 請求項1又は2に記載の非調質部品を製造する方法であって,請求項1又は2に記載の成分からなる鋼材を,下限温度が固相線温度×0.94又は1250℃の何れか高い方とし,上限温度が液相線×0.98となるように加熱し,前記範囲の温度域で,素材表面の85%以上が金型に接触するように超高温鍛造することを特徴とする破断分離が容易なコンロッド用超高温熱間鍛造非調質部品の製造方法。
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