本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
先ず、本発明に係る路面標示材料用着色材について述べる。
本発明に係る路面標示材料用着色材は、芯粒子である無機粒子の粒子表面に糊剤が被覆されており、該糊剤被覆に有機顔料が付着している複合粒子粉末からなる。
なお、本発明に係る路面標示材料用着色材は、目的とする色相を得るために、芯粒子である無機粒子の粒子表面に有機顔料からなる有色付着層を複数設けても良い。例えば、無機粒子の粒子表面が糊剤で被覆され、該被覆糊剤に有機顔料が付着している有色付着層(以下、「第一有色付着層」という)が形成され(以下、第一有色付着層が形成されている無機粒子を「中間粒子」という)、更に、第一有色付着層の表面に糊剤が被覆され、当該被覆糊剤に有機顔料が付着している有色付着層(以下、「第二有色付着層」という)が形成されている形態をいう。必要に応じて、同様にして、更に、有色付着層を形成してもよい。(以下、二層以上の有色付着層を形成した複合粒子粉末を「複数の有色付着層を有する複合粒子粉末」という。)
本発明における無機粒子としては、二酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化亜鉛等の白色顔料、シリカ微粒子(シリカ粉、ホワイトカーボン、微粉ケイ酸、珪藻土等)、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、タルク及び透明性酸化チタン等の体質顔料、チタンイエロー等の無機顔料が挙げられる。これらは、単独で用いても、混合して用いてもよい。得られる路面標示材料の隠蔽率及び再帰反射性を考慮すれば、無機粒子としては、二酸化チタンが最も好ましい。
無機粒子の粒子形状は、球状、粒状、多面体状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、鱗片状及び板状等のいずれの形状であってもよい。
無機粒子粉末の粒子サイズは、平均粒子径0.01〜10.0μmが好ましい。平均粒子径が10.0μmを超える場合には、得られる路面標示材料用着色材が粗大粒子となり、着色力が低下するため好ましくない。平均粒子径が0.01μm未満の場合には、粒子の微細化により凝集を起こしやすくなるため、無機粒子の粒子表面への糊剤による均一な被覆処理及び有機顔料による均一な付着処理が困難となる。より好ましくは0.02〜9.5μm、更により好ましくは0.03〜9.0μmである。
本発明における無機粒子粉末のBET比表面積値は0.5m2/g以上が好ましい。BET比表面積値が0.5m2/g未満の場合には、無機粒子が粗大であったり、粒子及び粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、得られる路面標示材料用着色材は粗大粒子となり着色力が低下する。得られる路面標示材料用着色材の着色力を考慮すると、BET比表面積値は、より好ましくは1.0m2/g以上、更により好ましくは1.5m2/g以上である。無機粒子の粒子表面への糊剤による均一な被覆処理及び有機顔料による均一な付着処理を考慮すると、その上限値は500m2/gが好ましく、より好ましくは400m2/g、更により好ましくは300m2/gである。
本発明における無機粒子粉末の屈折率は、目的とする路面標示材料用着色材の用途に応じて適宜選択すればよい。得られる路面標示材料用着色材の発色性と再帰反射性を考慮すれば、屈折率が2.0以上の白色顔料と屈折率が2.0未満の体質顔料とを混合して用いることが好ましい。また、殊に、高い再帰反射性を必要とする路面標示材料を得るためには、無機粒子粉末の屈折率は高い方が好ましく、その場合、2.0以上が好ましく、より好ましくは2.2以上である。
本発明における無機粒子粉末の色相は、目的とする路面標示材料用着色材の色相に応じて適宜選択すればよいが、L*値は70.0以上であり、C*値は70.0以下が好ましい。調色性を考慮すれば、C*値は20.0以下がより好ましく、更により好ましくは15.0以下、最も好ましくは10.0以下である。
本発明における無機粒子粉末の隠蔽力は、目的とする路面標示材料用着色材の用途に応じて適宜選択すればよいが、微妙な色相や付着する有機顔料の原色により近い色相を必要とする用途の場合、400cm2/g未満が好ましく、より好ましくは300cm2/g以下、更に好ましくは200cm2/g以下である。高い隠蔽力が必要な用途の場合、400cm2/g以上が好ましく、より好ましくは600cm2/g以上、更に好ましくは800cm2/g以上である。
本発明における無機粒子粉末の耐光性は、後述する評価方法により、ΔE*値の下限値は通常5.0を超え、上限値は12.0、好ましくは11.0、より好ましくは10.0である。
本発明における糊剤としては、無機粒子の粒子表面へ有機顔料を付着できるものであれば何を用いてもよく、好ましくはアルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤、オリゴマー又は高分子化合物の一種又は二種以上である。無機粒子の粒子表面への有機顔料の付着強度を考慮すれば、より好ましくはアルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤である。更により好ましくはアルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物である。
本発明における有機ケイ素化合物としては、化1で表わされるアルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物、化2で表わされるポリシロキサン、化3で表わされる変成ポリシロキサン、化4で表わされる末端変成ポリシロキサン並びに化5で表されるフルオロアルキルシラン又はこれらの混合物を用いることができる。
アルコキシシランとしては、具体的には、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
無機粒子の粒子表面への有機顔料の付着強度を考慮すると、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランから生成するオルガノシラン化合物がより好ましく、最も好ましくはメチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランから生成するオルガノシラン化合物である。
無機粒子の粒子表面への有機顔料の付着強度を考慮すると、メチルハイドロジェンシロキサン単位を有するポリシロキサン、ポリエーテル変成ポリシロキサン及び末端がカルボン酸で変成された末端カルボン酸変成ポリシロキサンが好ましい。
フルオロアルキルシランとしては、具体的には、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルロデシルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
無機粒子の粒子表面への有機顔料の付着強度を考慮すると、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物が好ましく、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物が最も好ましい。
カップリング剤のうち、シラン系カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェイト)チタネート、テトラ(2−2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロボキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
ジルコネート系カップリング剤としては、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
オリゴマーとしては、分子量300以上、10,000未満のものが好ましく、高分子化合物としては、分子量10,000以上、100,000程度のものが好ましい。無機粒子への均一な被覆処理を考慮すれば、液状、もしくは、水又は各種溶剤に可溶なオリゴマー又は高分子化合物が好ましい。
糊剤の被覆量は、糊剤被覆無機粒子粉末に対してC換算で0.01〜15.0重量%が好ましい。0.01重量%未満の場合には、無機粒子粉末100重量部に対して1重量部以上の有機顔料を付着させることが困難であるとともに、表面活性度を所望の値にまで低減することが困難となる。15.0重量%までの糊剤の被覆によって無機粒子粉末100重量部に対して有機顔料を1〜500重量部付着させることができるため、必要以上に被覆する意味がない。より好ましくは0.02〜12.5重量%、最も好ましくは0.03〜10.0重量%である。
本発明における有機顔料としては、一般に塗料及び樹脂組成物の着色剤として用いられている赤色系有機顔料、青色系有機顔料、黄色系有機顔料、緑色系有機顔料、橙色系有機顔料、褐色系有機顔料及び紫色系有機顔料等の各種有機顔料を使用することができる。
殊に、黄鉛代替を目的とした黄色系路面標示材料用着色材(本発明6)の場合には、「道路標示黄色」の色相に調色するため、黄色系有機顔料、橙色系有機顔料及び赤色系有機顔料から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
各種有機顔料の中で、赤色系有機顔料としては、キナクリドンレッド等のキナクリドン顔料、パーマネントカーミン、パーマネントレッド等のアゾ系顔料、縮合アゾレッド等の縮合アゾ顔料及びペリレンレッド等のペリレン顔料を用いることができる。青色系有機顔料としては、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー等のフタロシアニン系顔料及びアルカリブルーを用いることができる。黄色系有機顔料としては、ハンザエロー等のモノアゾ系顔料、ベンジジンエロー、パーマネントエロー等のジスアゾ系顔料及び縮合アゾイエロー等の縮合アゾ顔料を用いることができる。緑色系有機顔料としては、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料を用いることができる。橙色系有機顔料としては、パーマネントオレンジ、リソールファストオレンジ、バルカンファストオレンジ等のアゾ系顔料を用いることができる。褐色系有機顔料としては、パーマネントブラウン、パラブラウン等のアゾ系顔料を用いることができる。紫色系有機顔料としては、ファストバイオレット等のアゾ系顔料を用いることができる。
なお、要求される色相に応じて前記各有機顔料を混合して用いてもよい。また、求められる色相及び特性等に応じて同系色の色であっても二種以上を用いてもよい。
なお、複数の有色付着層を有する路面標示材料用着色材において、第一有色付着層に付着させる有機顔料と第二有色被覆層以降に付着させる有機顔料は同一であっても、同色で異種類の有機顔料、異色の有機顔料でもいずれでもよい。
全有機顔料の付着量は、無機粒子粉末100重量部に対して1〜500重量部が好ましい。1重量部未満の場合には、無機粒子の粒子表面に付着する有機顔料が少なすぎるため、本発明の目的とする着色力の大きい路面標示材料用着色材を得ることが困難となる。500重量部を超える場合には、有機顔料の付着量が多いため有機顔料が脱離しやすくなり、その結果、路面標示材料中における分散性が低下し、均一な色相を得ることが困難となる。より好ましくは5〜400重量部であり、更により好ましくは10〜300重量部である。
複数の有色付着層を有する路面標示材料用着色材においては、各有色付着層における有機顔料の付着量は、所望の色相及び特性に応じて前記有機顔料全体での付着量の上限値を超えない範囲で適量を付着させればよい。
本発明に係る路面標示材料用着色材の粒子形状や粒子サイズは、芯粒子である無機粒子の粒子形状や粒子サイズに大きく依存し、芯粒子に相似する粒子形態を有している。
即ち、本発明に係る路面標示材料用着色材の平均粒子径は0.01〜10.0μmが好ましい。路面標示材料用着色材の平均粒子径が10.0μmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎるため、着色力が低下する場合がある。平均粒子径が0.01μm未満の場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすくなるため、路面標示材料中における分散が困難となる場合がある。より好ましくは0.02〜9.5μm、更により好ましくは0.03〜9.0μmである。
本発明に係る路面標示材料用着色材のBET比表面積値は0.5〜500m2/gが好ましい。BET比表面積値が0.5m2/g未満の場合には、粒子が粗大であったり、粒子及び粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、着色力が低下する場合がある。より好ましくは1.0〜400m2/g、更により好ましくは1.5〜300m2/gである。
本発明に係る路面標示材料用着色材の明度は、目的とする路面標示材料用着色材の色相によって大きく異なるため、一概には限定できないが、明度の高いものほど夜間における視認性に優れるため、殊に、黄色系路面標示材料の場合、L*値は40.0以上が好ましく、より好ましくは50.0以上、更により好ましくは60.0以上である。
本発明に係る路面標示材料用着色材の着色力は、後述する評価方法において、110%以上が好ましく、より好ましくは115%以上、更により好ましくは120%以上である。
本発明に係る路面標示材料用着色材の隠蔽力は、200cm2/g以上が好ましい。得られる路面標示材料の隠蔽率を考慮すれば、400cm2/g以上がより好ましく、更により好ましくは600cm2/g以上、最も好ましくは800cm2/g以上である。
本発明に係る路面標示材料用着色材の表面活性度は、後述する評価方法において、2%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下である。表面活性度が2.0%を超える場合には、路面標示材料用着色材の表面活性が高すぎるため、路面標示材料に含有されている樹脂を劣化させ、路面標示材料の色相を変化させたり、強度の低下を引き起こしたりする。
本発明に係る路面標示材料用着色材の耐熱性は、後述する評価方法において、180℃以上が好ましい。殊に、JIS K 5665(3種)に規定されている溶融式の路面標示塗料に用いられる場合には、190℃以上が好ましく、より好ましくは200℃以上、更により好ましくは210℃以上である。この場合、耐熱温度が190℃未満の場合には、加熱溶融中に塗料が変色してしまう場合がある。
本発明に係る路面標示材料用着色材の耐光性は、後述する評価方法において、ΔE*値で5.0以下が好ましく、より好ましくは4.0以下である。耐光性がΔE*値で5.0を超える場合には、路面標示材料用着色材が紫外線等によって変色しやすく、これを用いて得られた路面標示材料は、敷設後の経時変化に伴う色相変化が大きくなるため好ましくない。
本発明に係る路面標示材料用着色材の有機顔料の脱離率は20%以下が好ましく、より好ましくは15%以下である。有機顔料の脱離率が20%を超える場合には、脱離した有機顔料により塗料中での均一な分散が阻害される場合があるとともに、脱離した部分の無機粒子の色相が粒子表面に現れるため、均一且つ目的とする色相を得ることが困難となる。
本発明に係る路面標示材料用着色材は、必要により、無機粒子の粒子表面をあらかじめ、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物より選ばれる少なくとも1種からなる中間被覆物で被覆しておいてもよく、中間被覆物で被覆しない場合に比べ、無機粒子の粒子表面からの有機顔料の脱離をより低減することができるとともに、耐熱性及び耐光性が向上する。また、これを着色材として用いることにより、より優れた耐摩耗性を有する路面標示材料を得ることができる。
中間被覆物による被覆量は、中間被覆物が被覆された無機粒子粉末に対してAl換算、SiO2換算又はAl換算量とSiO2換算量との総和で0.01〜20重量%が好ましい。0.01重量%未満である場合には、有機顔料の脱離率の低減効果及び耐光性向上効果が得られない。0.01〜20重量%の被覆量により、有機顔料の脱離率低減効果、耐熱性及び耐光性向上効果が十分に得られるため、20重量%を超えて必要以上に被覆する意味がない。
本発明4に係る中間被覆物で被覆されている路面標示材料用着色材は、中間被覆物で被覆されていない本発明に係る路面標示材料用着色材の場合とほぼ同程度の粒子サイズ、BET比表面積値、明度、着色力、隠蔽力及び表面活性度を有している。また、有機顔料の脱離率は15%以下が好ましく、より好ましくは10%以下であり、耐光性は、ΔE*値で4.0以下が好ましく、より好ましくは3.0以下である。耐熱性は、中間被覆物で被覆されていない本発明に係る路面標示材料用着色材に比べて5〜10℃程度向上する。
本発明に係る路面標示材料用着色材は、必要により、路面標示材料用着色材の粒子表面を、更に、脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤によって被覆しておいてもよく、脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤によって被覆しない場合に比べ、表面活性度を低減できるとともに、これを用いた路面標示材料の耐摩耗性が向上する。
本発明における脂肪酸としては、飽和又は不飽和の脂肪酸を用いることができ、炭素数12〜22のものが好ましい。
本発明における脂肪酸金属塩としては、飽和又は不飽和の脂肪酸と金属との塩類を用いることができ、炭素数12〜18の脂肪酸とマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等のアルカリ土類金属、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属及び亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、鉛、スズ等の金属との塩類を用いることが好ましい。得られる路面標示材料の耐摩耗性を考慮すれば、ステアリン酸のアルカリ土類金属塩又はステアリン酸亜鉛が好ましい。
本発明におけるシランカップリング剤としては、樹脂組成物に一般的に配合されているものを用いることができ、たとえば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジクロロシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤の被覆量は、脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤被覆路面標示材料用着色材に対してC換算で0.1〜10.0重量%が好ましい。0.1重量%未満の場合には、表面活性度をより低減することが困難であるとともに、路面標示材料の耐摩耗性改善効果が得られない。10.0重量%を超える場合には、表面活性度の低減効果及び路面標示材料の耐摩耗性改善効果が飽和するため、必要以上に被覆する意味がない。より好ましくは0.2〜7.5重量%、最も好ましくは0.3〜5.0重量%である。
脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤で被覆された路面標示材料用着色材は、本発明1に係る路面標示材料用着色材とほぼ同程度の粒子サイズ、BET比表面積値、明度、着色力、隠蔽力、耐熱性、耐光性及び有機顔料の脱離率を有している。また、表面活性度は1.5%以下が好ましく、より好ましくは1.0%以下である。
次に、本発明に係る路面標示材料用着色材を配合した路面標示材料について述べる。
本発明に係る路面標示材料用着色材を配合した路面標示材料のうち、JIS K 5665(1種)に規定されているペイント式常温用路面標示材料の場合、隠蔽率は0.80以上が好ましく、より好ましくは0.85以上であり、耐アルカリ性は4又は5が好ましく、より好ましくは5であり、耐摩耗性は400mg以下が好ましく、より好ましくは350mg以下であり、耐光性はΔE*値で5.0以下が好ましく、より好ましくは4.0以下であり、耐老化性はΔE*値で2.5以下が好ましく、より好ましくは2.0以下である。また、黄色系路面標示材料の場合、再帰反射性は、後述する評価方法により、3又は4が好ましく、より好ましくは4である。
また、上記JIS K 5665(1種)に規定されているペイント式常温用路面標示材料のうち、路面標示材料用着色材として本発明に係る粒子表面が中間被覆物によって被覆された本発明4に係る路面標示材料用着色材を配合した路面標示材料の場合には、耐光性及び耐摩耗性が向上し、耐光性ΔE*値は4.0以下が好ましく、より好ましくは3.0以下であり、耐摩耗性は350mg以下が好ましく、より好ましくは300mg以下である。
また、上記JIS K 5665(1種)に規定されているペイント式常温用路面標示材料のうち、路面標示材料用着色材として路面標示材料用着色材の粒子表面が脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤によって被覆された路面標示材料用着色材を配合した路面標示材料の場合には、耐摩耗性が向上し、耐摩耗性は300mg以下が好ましく、より好ましくは250mg以下である。
本発明に係る路面標示材料用着色材を配合した路面標示材料のうち、JIS K 5665(2種)に規定されているペイント式加熱用路面標示材料の場合、隠蔽率は0.80以上が好ましく、より好ましくは0.85以上であり、耐アルカリ性は4又は5が好ましく、より好ましくは5であり、耐摩耗性は350mg以下が好ましく、より好ましくは300mg以下であり、耐光性ΔE*値は5.0以下が好ましく、より好ましくは4.0以下であり、耐老化性はΔE*値で2.5以下が好ましく、より好ましくは2.0以下である。また、黄色系路面標示材料の場合、再帰反射性は、後述する評価方法により、3又は4が好ましく、より好ましくは4である。
また、上記JIS K 5665(2種)に規定されているペイント式加熱用路面標示材料のうち、路面標示材料用着色材として本発明に係る粒子表面が中間被覆物によって被覆された本発明4に係る路面標示材料用着色材を配合した路面標示材料の場合には、耐光性及び耐摩耗性が向上し、耐光性ΔE*値は4.0以下が好ましく、より好ましくは3.0以下であり、耐摩耗性は300mg以下が好ましく、より好ましくは250mg以下である。
また、上記JIS K 5665(2種)に規定されているペイント式加熱用路面標示材料のうち、路面標示材料用着色材として路面標示材料用着色材の粒子表面が脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤によって被覆された路面標示材料用着色材を配合した路面標示材料の場合には、耐摩耗性が向上し、耐摩耗性は250mg以下が好ましく、より好ましくは200mg以下である。
本発明に係る路面標示材料用着色材を配合した路面標示材料のうち、JIS K 5665(3種)に規定されている溶融式路面標示材料の場合、耐アルカリ性は4又は5が好ましく、より好ましくは5であり、耐摩耗性は200mg以下が好ましく、より好ましくは180mg以下であり、耐光性ΔE*値は5.0以下が好ましく、より好ましくは4.0以下であり、耐老化性はΔE*値で2.5以下が好ましく、より好ましくは2.0以下である。また、黄色系路面標示材料の場合、再帰反射性は、後述する評価方法により、3又は4が好ましく、より好ましくは4である。
また、上記JIS K 5665(3種)に規定されている溶融式路面標示材料のうち、路面標示材料用着色材として本発明に係る粒子表面が中間被覆物によって被覆された本発明4に係る路面標示材料用着色材を配合した路面標示材料の場合には、耐光性及び耐摩耗性が向上し、耐光性ΔE*値は4.0以下が好ましく、より好ましくは3.0以下であり、耐摩耗性は180mg以下が好ましく、より好ましくは160mg以下である。
また、上記JIS K 5665(3種)に規定されている溶融式路面標示材料のうち、路面標示材料用着色材として路面標示材料用着色材の粒子表面が脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤によって被覆された路面標示材料用着色材を配合した路面標示材料の場合には、耐摩耗性が向上し、耐摩耗性は160mg以下が好ましく、より好ましくは140mg以下である。
本発明に係る路面標示材料中における路面標示材料用着色材の配合割合は、目的とする路面標示材料の色相に応じて路面標示材料構成基材に対して0.1〜60重量%の範囲で使用することができる。殊に、JIS K5665(1種)及びJIS K 5665(2種)に規定されているペイント式路面標示材料の場合は、路面標示材料構成基材に対して5〜60重量%の範囲で使用することができ、JIS K 5665(3種)に規定されている溶融式路面標示材料の場合は、路面標示材料構成基材に対して0.5〜30重量%の範囲で使用することができる。
路面標示材料構成基材としては、路面標示材料用着色材、樹脂、充填材の他、路面標示材料の種類に応じて必要により、ガラスビーズ(反射材)、可塑剤、溶剤、消泡剤、界面活性剤、助剤等が配合される。
樹脂としては、路面標示用塗料に一般的に使用されている植物油変性アルキド樹脂、ウレタン化アルキド樹脂、ビニル化アルキド樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、石油樹脂、ロジン及びその誘導体、テルペン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、フタル酸樹脂、フェノール樹脂、天然ゴム、合成ゴム、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性マレイン酸樹脂、水溶性アルキッド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性ウレタンエマルジョン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル樹脂等を単独、もしくは2種以上を混合して用いることができる。
充填材としては、路面標示用塗料に一般的に使用されている炭酸カルシウム、タルク、硅石粉、ガラスビーズ等の体質顔料を用いることができる。
溶剤としては、路面標示用塗料に一般的に使用されているトルエン、キシレン、シンナー等の芳香族系溶剤、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等を単独、もしくは2種以上を混合して用いることができる。
次に、本発明に係る路面標示材料用着色材の製造法について述べる。
本発明に係る路面標示材料用着色材は、無機粒子粉末と糊剤とを混合し、無機粒子の粒子表面を糊剤によって被覆し、次いで、糊剤によって被覆された無機粒子粉末と有機顔料を混合することによって得ることができる。まず、無機粒子の粒子表面を糊剤によって均一に被覆することにより、効果的に粒子の表面活性度を低減することができるとともに、次の有機顔料付着工程において、糊剤が被覆された無機粒子表面へ有機顔料をより均一、且つ、強固に付着させることができる。
無機粒子の粒子表面への糊剤による被覆は、無機粒子粉末と糊剤又は糊剤の溶液とを機械的に混合攪拌したり、無機粒子粉末に糊剤の溶液又は糊剤を噴霧しながら機械的に混合攪拌すればよい。添加した糊剤は、ほぼ全量が無機粒子粉末の粒子表面に被覆される。
なお、糊剤としてアルコキシシラン又はフルオロアルキルシランを用いた場合、被覆されたアルコキシシラン又はフルオロアルキルシランは、その一部が被覆工程を経ることによって生成する、アルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物又はフルオロアルキルシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物として被覆されていてもよい。この場合においても、その後の有機顔料の付着に影響することはない。
糊剤を均一に無機粒子の粒子表面に被覆するためには、無機粒子粉末の凝集をあらかじめ粉砕機を用いて解きほぐしておくことが好ましい。
無機粒子粉末と糊剤との混合攪拌、有機顔料と粒子表面に糊剤が被覆されている無機粒子粉末との混合攪拌をするための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることができ、ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
前記ホイール型混練機としては、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。前記ボール型混練機としては、振動ミル等がある。前記ブレード型混練機としては、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウターミキサー等がある。前記ロール型混練機としては、エクストルーダー等がある。
無機粒子粉末と糊剤との混合攪拌時における条件は、無機粒子粉末の粒子表面に糊剤ができるだけ均一に被覆されるように、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200Kg/cm)、好ましくは98〜1470N/cm(10〜150Kg/cm)、より好ましくは147〜980N/cm(15〜100Kg/cm)、処理時間は5分〜24時間、好ましくは10分〜20時間の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
糊剤の添加量は、無機粒子粉末100重量部に対して0.15〜45重量部が好ましい。0.15〜45重量部の添加量により、無機粒子粉末100重量部に対して有機顔料を1〜500重量部付着させることができる。
無機粒子の粒子表面に糊剤を被覆した後、有機顔料を添加し、混合攪拌して糊剤被覆に有機顔料を付着させる。必要により更に、乾燥乃至加熱処理を行ってもよい。
有機顔料は、少量ずつを時間をかけながら、殊に5分〜24時間、好ましくは5分〜20時間程度をかけて添加するか、若しくは、無機粒子粉末100重量部に対して5〜25重量部の有機顔料を、所望の添加量となるまで分割して添加することが好ましい。また、複数の有機顔料を用いて調色を行う場合には、調色に用いる有機顔料を各色毎、別々に添加・付着処理する方が好ましい。同時に添加した場合、混合装置内への粉体の付着等が生じ、均一な色調の処理粉体が工業的に得られにくい。
混合攪拌時における条件は、有機顔料が均一に付着するように、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200Kg/cm)、好ましくは98〜1470N/cm(10〜150Kg/cm)、より好ましくは147〜980N/cm(15〜100Kg/cm)、処理時間は5分〜24時間、好ましくは10分〜20時間の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
有機顔料の添加量は、無機粒子粉末100重量部に対して1〜500重量部であり、好ましくは5〜400重量部、より好ましくは10〜300重量部である。
本発明に係る路面標示材料用着色材は、前記処理工程を経ることによって、添加した有機顔料が微細化されて均一、且つ緻密に糊剤を介して体質顔料の粒子表面に付着層を形成しているものである。
乾燥乃至加熱処理を行う場合の加熱温度は、通常40〜150℃が好ましく、より好ましくは60〜120℃であり、加熱時間は、10分〜12時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
なお、糊剤としてアルコキシシラン及びフルオロアルキルシランを用いた場合には、これらの工程を経ることにより、最終的にはアルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物又はフルオロアルキルシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物となって被覆されている。
複数の有色付着層を有する路面標示材料用着色材は、無機粒子粉末と糊剤とを混合し、無機粒子の粒子表面を糊剤によって被覆し、次いで、糊剤によって被覆された無機粒子粉末と有機顔料とを混合して糊剤被覆に有機顔料を付着させて第一有色付着層を形成する(中間粒子)。次いで、前記第一有色付着層を形成した中間粒子と糊剤とを混合し、更に、糊剤被覆中間粒子と有機顔料とを混合して第一有色付着層上に糊剤を介して有機顔料を付着させることによって得ることができる。前記各工程における糊剤との混合処理及び有機顔料との混合処理は上記各処理と同様にして行えばよい。なお、必要に応じて糊剤による被覆及び有機顔料の付着を繰り返すことによって3層以上の有色付着層を形成した路面標示材料用着色材を得ることができる。
無機粒子粉末は、必要により、糊剤との混合撹拌に先立って、あらかじめ、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物より選ばれる少なくとも一種からなる中間被覆物で被覆しておいてもよい。
中間被覆物による被覆は、無機粒子粉末を分散して得られる水懸濁液に、アルミニウム化合物、ケイ素化合物又は当該両化合物を添加して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記無機粒子の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物より選ばれる少なくとも一種からなる中間被覆物で被覆し、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を施してもよい。
アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩等が使用できる。
ケイ素化合物としては、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等が使用できる。
路面標示材料用着色材を脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤によって被覆する場合は、路面標示材料用着色材と脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤とを加熱しながら機械的に混合攪拌すればよい。
脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤の添加量は、路面標示材料用着色材100重量部に対して0.13〜67重量部が好ましい。0.13〜67重量部の添加量により、路面標示材料用着色材の表面活性度をより低減できるとともに、これを用いた路面標示材料の耐摩耗性を向上することができる。
加熱温度は、40℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上、最も好ましくは60℃以上であり、その上限値は、150℃又は被覆する脂肪酸、脂肪酸金属塩及びカップリング剤の融点もしくは沸点である。
<作用>
本発明において最も重要な点は、無機粒子の粒子表面が糊剤によって被覆されていると共に、該被覆に有機顔料が付着している本発明に係る路面標示材料用着色材を配合した路面標示材料は、経時に伴う色相変化が抑制され、且つ、再帰反射性に優れるという事実である。
本発明に係る路面標示材料用の経時に伴う色相変化が抑制されている理由として、本発明者は下記のように推定している。
路面標示材料の色相変化を引き起こす要因としては、紫外線や酸性雨等による着色顔料の変色及び樹脂の劣化、及び、着色顔料の表面活性による樹脂の劣化等が考えられる。本発明に係る路面標示材料用着色材は、有機顔料に比べて耐光性に優れている無機粒子の粒子表面を糊剤で被覆し、該被覆糊剤を介して有機顔料を付着させることによって、有機顔料単体に比べてより優れた耐光性を有しているとともに、表面活性の高い無機粒子の表面を糊剤で被覆し、該被覆を介して有機顔料を付着することで粒子表面の活性度が低減されている。その結果、本発明の路面標示材料用着色材を配合した路面標示材料は、着色材の耐光性の向上と表面活性度低減との相乗効果によって、経時による色相変化が抑制できたものと思われる。
殊に、有機顔料として黄色系有機顔料を付着させた場合には、再帰反射性に優れた路面標示材料用着色材が得られる。更に、無機粒子として酸化チタンを用い、且つ、有機顔料として黄色系有機顔料を付着させた場合には、再帰反射性に優れると共に隠蔽性に優れた路面標示材料用着色材が得られる。
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
粒子の平均粒子径は、いずれも電子顕微鏡写真に示される粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
比表面積値は、BET法により測定した値で示した。
中間被覆物によって被覆された無機粒子の粒子表面に存在するAl量及びSi量は、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
無機粒子の粒子表面に被覆されている糊剤の被覆量、路面標示材料用着色材に付着している有機顔料の付着量及び路面標示材料用着色材の粒子表面に被覆されている脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤の量は、「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定することにより求めた。
無機粒子粉末、有機顔料及び路面標示材料用着色材の色相は、試料0.5gとヒマシ油0.5mlとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製し、該塗布片について、「分光測色計 CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いて測定を行い、JIS Z 8929に定めるところに従って表色指数で示した。なお、C*値は彩度を表し、下記数1に従って求めることができる。
<数1>
C*値=((a*値)2+(b*値)2)1/2
路面標示材料用着色材の着色力は、まず下記に示す方法に従って作製した原色エナメルと展色エナメルのそれぞれを、キャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布して塗布片を作製し、該塗布片について、「分光測色計 CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いてL*値を測色し、その差をΔL*値とした。
次いで、路面標示材料用着色材の標準試料として、路面標示材料用着色材と同様の割合で有機顔料と無機粒子粉末とを単に混合した混合顔料を用いて、上記と同様にして原色エナメルと展色エナメルの塗布片を作製し、各塗布片のL*値を測色し、その差をΔLs*値とした。
得られた路面標示材料用着色材のΔL*値と標準試料のΔLs*値を用いて下記数2に従って算出した値を着色力(%)として示した。
<数2>
着色力(%)=100+{(ΔLs*値−ΔL*値)×10}
原色エナメルの作製:
上記試料粉体10gとアミノアルキッド樹脂16g及びシンナー6gとを配合して3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いで、ペイントシェーカーで45分間混合分散した後、アミノアルキッド樹脂50gを追加し、更に5分間ペイントシェーカーで分散させて、原色エナメルを作製した。
展色エナメルの作製:
上記原色エナメル12gとアミラックホワイト(二酸化チタン分散アミノアルキッド樹脂)40gとを配合し、ペイントシェーカーで15分間混合分散して、展色エナメルを作製した。
無機粒子粉末及び路面標示材料用着色材の隠蔽力は、上記で得られた原色エナメルを用いて、JIS K 5101 8.2のクリプトメーター法に従って得られた値で示した。
無機粒子粉末、有機顔料及び路面標示材料用着色材の耐光性は、前述の着色力を測定するために作製した原色エナメルを、冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS G3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して塗膜を形成し、得られた測定用塗布片の半分を金属製フォイルで覆い、「アイ スーパーUVテスター SUV−W13」(岩崎電気株式会社製)を用いて、紫外線を照射強度100mW/cm2で6時間連続照射した後、金属製フォイルで覆うことによって紫外線が照射されなかった部分と紫外線照射した部分との色相(L*値、a*値、b*値)をそれぞれ測定し、紫外線が照射されなかった部分の測定値を基準に、下記数3に従って算出したΔE*値によって示した。
<数3>
ΔE*値=((ΔL*値)2+(Δa*値)2+(Δb*値)2)1/2
ΔL*値: 比較する試料の紫外線照射有無のL*値の差
Δa*値: 比較する試料の紫外線照射有無のa*値の差
Δb*値: 比較する試料の紫外線照射有無のb*値の差
路面標示材料用着色材の表面活性度は、下記に示した残存溶剤量を測定することによって評価した。
まず、試料粉末1gと溶剤(MEK)10gを秤り取り、試料粉末を溶剤中に3時間浸漬した後、24時間風乾し、更に、60℃で24時間乾燥し、乾燥後の試料粉末のカーボン量を「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定し、残存カーボン量を定量して求めた。残存カーボン量が少ないほど溶剤の残存が少なく、粉体の表面活性が抑制されていることを示す。
路面標示材料用着色材の耐熱性は、熱分析装置SSC5000(セイコー電子工業株式会社製)を用いて被測定粒子粉末の示差走査熱量測定(DSC)を行い、得られた該DSCチャート上に示されるピークを形成する2つの変曲点のうち、最初の変曲点を構成する2つの曲線のそれぞれについて接線を引き、両接線の交点に対応する温度を読み取って、その温度で示した。
路面標示材料用着色材に付着している有機顔料の脱離率(%)は、下記の方法により求めた値で示した。有機顔料の脱離率が0%に近いほど、路面標示材料用着色材の粒子表面からの有機顔料の脱離量が少ないことを示す。
被測定粒子粉末3gとエタノール40mlを50mlの沈降管に入れ、20分間超音波分散を行った後、120分静置し、比重差によって被測定粒子粉末と脱離した有機顔料を分離した。次いで、この被測定粒子粉末に再度エタノール40mlを加え、更に20分間超音波分散を行った後120分静置し、被測定粒子粉末と脱離した有機顔料を分離した。この被測定粒子粉末を100℃で1時間乾燥させ、前述の「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定し、下記数4に従って求めた値を有機顔料の脱離率(%)とした。
<数4>
有機顔料の脱離率(%)={(Wa−We)/Wa}×100
Wa:路面標示材料用着色材の有機顔料付着量
We:脱離テスト後の路面標示材料用着色材の有機顔料付着量
路面標示材料の隠蔽率は、後述する処方によって調製した各塗料を用いてJIS K5665に従って試験片を作製し、JIS Z8722に規定されている反射率測定装置を用いて三刺激値を測定し、隠蔽率を求めた。
路面標示材料の耐アルカリ性は、後述する処方によって調製した各塗料を用いてJIS K 5665に従って試験片の作製及び評価を行った。また、試験片のアルカリ溶液への浸漬前後の色相(L*値、a*値、b*値)をそれぞれ測定し、アルカリ溶液に浸漬する前の測定値を基準に、下記数5に従ってΔE*値を算出し、下記基準により耐アルカリ性の優劣を判定した。
<数5>
ΔE*値=((ΔL*値)2+(Δa*値)2+(Δb*値)2)1/2
ΔL*値:比較する試料片のアルカリ溶液浸漬前後のL*値の差
Δa*値:比較する試料片のアルカリ溶液浸漬前後のa*値の差
Δb*値:比較する試料片のアルカリ溶液浸漬前後のb*値の差
5:試料片の塗膜に膨れ、割れ、はがれ及び穴が認められず、且つ、ΔE*値が3.0以下であった。
4:試料片の塗膜に膨れ、割れ、はがれ及び穴が認められず、且つ、ΔE*値が4.0以下であった。
3:試料片の塗膜に膨れ、割れ、はがれ及び穴が認められず、且つ、ΔE*値が5.0以下であった。
2:試料片の塗膜に膨れ、割れ、はがれ及び穴は認められないが、ΔE*値が5.0を超える値であった。
1:試料片の塗膜に膨れ、割れ、はがれまたは穴が認められた。
路面標示材料の耐摩耗性は、後述する処方によって調製した各塗料を用いてJIS K 5665に従って試験片の作製及び測定を行った。
路面標示材料の耐光性は、後述する処方によって調製した各塗料をガラス板(約200×100×2mm)に塗布した試験片の半分を金属製フォイルで覆い、「アイ スーパーUVテスター」(SUV−W13(岩崎電気株式会社製))を用いて、紫外線を照射強度100mW/cm2で6時間連続照射した後、金属製フォイルで覆うことによって紫外線が照射されなかった部分と紫外線照射した部分との色相(L*値、a*値、b*値)をそれぞれ測定し、紫外線が照射されなかった部分の測定値を基準に、前記数3に従って算出したΔE*値によって示した。
路面標示材料の耐老化性は、後述する処方によって調製した各塗料をガラス板(約200×100×2mm)に塗布した試験片を温度60℃、相対湿度90%の環境下に1ヶ月間放置し、放置前後の色相(L*値、a*値、b*値)をそれぞれ測定し、下記数6に従って算出したΔE*値によって示した。
<数6>
ΔE*値=((ΔL*値)2+(Δa*値)2+(Δb*値)2)1/2
ΔL*値:比較する試料の放置前後のL*値の差
Δa*値:比較する試料の放置前後のa*値の差
Δb*値:比較する試料の放置前後のb*値の差
路面標示材料の再帰反射性は、後述する処法によって調製した各塗料をガラス板(約200×100×2mm)に塗布した試験片を作製し、該試験片を暗室中で黒い布の上に置いて、30Wの蛍光灯を、試験片に対して約30℃の角度、2mの距離で照射し、下記基準により再帰反射性の優劣を判定した。
4:再帰反射性が充分である(黄色に見える)
3:再帰反射性がある(若干白っぽく見える)
2:再帰反射性がわずかにある(白っぽく見える)
1:再帰反射性がない(白色に見える)
<路面標示材料用着色材の製造>
酸化チタン粒子粉末(粒子形状:粒状、平均粒子径0.238μm、BET比表面積値11.6m2/g、L*値96.31、a*値1.06、b*値−1.66、C*値1.97、隠蔽力1,490cm2/g、屈折率:2.71、耐光性ΔE*値6.86)20kgを凝集を解きほぐすために、純水150lに攪拌機を用いて邂逅し、更に「TKパイプラインホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)を3回通して酸化チタン粒子粉末を含むスラリーを得た。
次いで、この酸化チタン粒子粉末を含むスラリーを横型サンドグラインダー「マイティーミルMHG−1.5L」(井上製作所株式会社製)を用いて軸回転数2000rpmにおいて5回パスさせて、酸化チタン粒子粉末を含む分散スラリーを得た。
得られた分散スラリーの325mesh(目開き44μm)における篩残分は0%であった。この分散スラリーを濾別、水洗して、酸化チタン粒子粉末のケーキを得た。この酸化チタン粒子粉末のケーキを120℃で乾燥した後、乾燥粉末11.0kgをエッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入し、294N/cm(30Kg/cm)で30分間混合撹拌を行い、粒子の凝集を軽く解きほぐした。
次に、メチルトリエトキシシラン(商品名:TSL8123:GE東芝シリコーン株式会社製)110gを、エッジランナーを稼動させながら上記酸化チタン粒子粉末に添加し、588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で30分間混合攪拌を行った。なお、このときの撹拌速度は22rpmで行った。
次に、有機顔料Y−1(種類:ジスアゾ系有機黄色顔料、粒子形状:粒状、平均粒子径0.15μm、BET比表面積値41.7m2/g、L*値69.51、a*値38.31、b*値76.96、耐光性ΔE*値18.25)4,400gを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に392N/cm(40Kg/cm)の線荷重で30分間、混合攪拌を行い、次いで、有機顔料R−1(種類:縮合多環系有機赤色顔料、粒子形状:粒状、平均粒子径0.10μm、BET比表面積値89.8m2/g、L*値37.81、a*値44.03、b*24.09、耐光性ΔE*値15.47)110gを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に392N/cm(40Kg/cm)の線荷重で20分間、混合攪拌を行い、メチルトリエトキシシラン被覆の上に有機顔料Y−1及び有機顔料R−1を付着させた後、乾燥機を用いて105℃で60分間加熱処理を行い、複合粒子粉末を得た。なお、このときの撹拌速度は22rpmで行った。
得られた複合粒子粉末からなる路面標示材料用着色材は、平均粒子径が0.240μmの粒状粒子粉末であった。BET比表面積値は16.4m2/g、明度L*値は68.59、着色力は137%、隠蔽力は1,405cm2/g、表面活性度は1.14%、耐熱性は235℃、耐光性ΔE*値は2.41であり、有機顔料の脱離率は7.4%であった。メチルトリエトキシシランから生成したオルガノシラン化合物の被覆量はC換算で0.07重量%であり、付着している有機顔料の量は、C換算で16.52重量%(酸化チタン粒子粉末100重量部に対して有機顔料Y−1と有機顔料R−1の総量で41重量部に相当する)であった。
電子顕微鏡写真観察の結果、有機顔料がほとんど認められないことから、有機顔料のほぼ全量がメチルトリエトキシシランから生成するオルガノシラン化合物被覆に付着していることが認められた。
<路面標示材料用着色材を含む路面標示用塗料(1種)の製造>
前記路面標示材料用着色材を含む、路面標示用塗料構成基材を下記配合割合でボールミルを用いて混練し、路面標示用塗料(1種)を得た。
路面標示材料用着色材 15.0重量部、
アルキッド樹脂 16.0重量部、
添加剤 3.0重量部、
溶剤(トルエン) 35.0重量部、
重質炭酸カルシウム 15.0重量部、
タルク 16.0重量部。
上記で得られた路面標示用塗料を用いて試料片を作製し、各種試験を行った。
得られた路面標示材料の隠蔽率は0.97、耐アルカリ性は5であり、耐摩耗性は310mgであり、耐光性はΔE*値で3.19であり、耐老化性はΔE*値で1.94であり、再帰反射性は4であった。
<路面標示材料用着色材を含む路面標示用塗料(2種)の製造>
前記路面標示材料用着色材を含む、路面標示用塗料構成基材を下記配合割合でボールミルを用いて混練し、路面標示用塗料(2種)を得た。
路面標示材料用着色材 15.0重量部、
アルキッド樹脂 16.0重量部、
添加剤 3.0重量部、
溶剤(トルエン) 25.0重量部、
重質炭酸カルシウム 16.0重量部、
タルク 25.0重量部。
上記で得られた路面標示用塗料を用いて試料片を作製し、各種試験を行った。
得られた路面標示材料の隠蔽率は0.98、耐アルカリ性は5であり、耐摩耗性は277mgであり、耐光性はΔE*値で3.16であり、耐老化性はΔE*値で1.92であり、再帰反射性は4であった。
<路面標示材料用着色材を含む路面標示用塗料(3種)の製造>
前記路面標示材料用着色材を含む、路面標示用塗料構成基材を下記配合割合で160〜190℃の温度範囲で加熱混練し、路面標示用塗料(3種)を得た。
路面標示材料用着色材 5.0重量部、
石油樹脂 12.0重量部、
ロジン変性マレイン酸樹脂 6.0重量部、
可塑剤 3.0重量部、
ガラスビーズ 16.0重量部、
重質炭酸カルシウム 38.0重量部、
寒水石 20.0重量部。
上記で得られた路面標示用塗料を用いて試料片を作製し、各種試験を行った。
得られた路面標示材料の耐アルカリ性は5であり、耐摩耗性は145mgであり、耐光性はΔE*値で3.01であり、耐老化性はΔE*値で1.89であり、再帰反射性は4であった。
前記実施の形態に従って、種々の路面標示材料用着色材及び路面標示用塗料を作成した。
芯粒子1〜6:
芯粒子粉末として表1に示す特性を有する無機粒子粉末を用意した。
芯粒子7:
芯粒子1の酸化チタン粒子粉末20kgと水150lとを用いて、酸化チタン粒子粉末を含むスラリーを得た。得られた酸化チタン粒子粉末を含む再分散スラリーのpH値を、水酸化ナトリウム水溶液を用いて10.5に調整した後、該スラリーに水を加えスラリー濃度を98g/lに調整した。このスラリー150lを加熱して60℃とし、このスラリー中に1.0mol/lのアルミン酸ナトリウム溶液5444ml(酸化チタン粒子粉末に対してAl換算で1.0重量%に相当する)を加え、30分間保持した後、酢酸を用いてpH値を7.5に調整した。この状態で30分間保持した後、濾過、水洗、乾燥、粉砕して粒子表面がアルミニウムの水酸化物により被覆されている酸化チタン粒子粉末を得た。
このときの製造条件を表2に、得られた表面処理済み酸化チタン粒子粉末の諸特性を表3に示す。
芯粒子8〜12:
芯粒子2〜6の各無機粒子粉末を用い、表面被覆物の種類及び量を種々変化させた以外は、前記芯粒子7と同様にして粒子表面が被覆物で被覆されている無機粒子粉末を得た。
このときの製造条件を表2に、得られた表面処理済み無機粒子粉末の諸特性を表3に示す。
尚、表面処理工程における被覆物の種類のAはアルミニウムの水酸化物であり、Sはケイ素の酸化物を表わす。
有機顔料:
有機顔料として表4に示す諸特性を有する有機顔料を用意した。
実施例1〜14、比較例1及び2:
芯粒子の種類、糊剤による被覆工程における糊剤の種類、添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間、有機顔料の付着工程における有機顔料の種類、添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間を種々変化させた以外は、前記発明の実施の形態と同様にして路面標示材料用着色材を得た。
このときの製造条件を表5に、得られた路面標示材料用着色材の諸特性を表6に示す。
なお、実施例3では、芯粒子粉末100.0重量部に対して、エッジランナーを稼動させながら、まず、有機顔料Y−2:20.0重量部を添加した後、有機顔料R−1:0.6重量部を添加した。実施例4では、芯粒子粉末100.0重量部に対して、有機顔料Y−1:150.0重量部を25.0重量部づつ6回に分けて添加した。実施例6では、芯粒子粉末100.0重量部に対して、有機顔料R−1:100.0重量部を100分かけて添加した。実施例8では、エッジランナーを稼動させながら、芯粒子粉末100.0重量部に対して、まず、有機顔料Y−1:60.0重量部を添加した後、有機顔料R−2:1.5重量部を添加した。
また、実施例13では、芯粒子として、芯粒子1:57.5重量部、芯粒子4:17.7重量部及び芯粒子5:24.8重量部を混合したものを用いた。実施例14では、芯粒子として、芯粒子5:50.0重量部と芯粒子7:50.0重量部を混合したものを用いた。
比較例3(特開平4−132770号公報 実施例1の追試実験)
300mlの水に0.066モルに相当するアセトアセト2,5−ジメトキシ−クロロアニリドを等モルの水酸化ナトリウムで溶解し、全量を500mlにした。これに二酸化チタン粒子粉末(芯粒子1)24.5gを加えて攪拌しながら、0.15モル相当の酢酸100mlを滴下して、カップラー溶液を調整した。次いで、この溶液に、0.03モルに相当する3,3−ジクロロベンジジンのテトラゾ化水溶液250mlを約2時間かけて滴下し、滴下終了後、液温を90℃に上げ、60分間攪拌を続けた後、濾過、水洗し、90℃で乾燥して複合顔料を得た。ここで合成した有機色素はジスアゾ顔料C.I.Pigment Yellow 83であり、得られた複合顔料の組成は、無機顔料:有機顔料=1:1であった。
<比較例4> (特開平7−331113号公報 実施例2の追試実験)
下記配合割合に従って、原材料をハイスピードミキサーを用いて混合して顔料組成物を製造した。回転数1000rpmで、室温下45分攪拌混合した後、顔料組成物を取り出した。
有機顔料Y−2(縮合多環系黄色顔料) 41.0重量部、
有機顔料R−1(縮合多環系赤色顔料) 1.5重量部、
芯粒子1(二酸化チタン) 32.5重量部、
芯粒子4(炭酸カルシウム) 10.0重量部、
芯粒子5(沈降性硫酸バリウム) 14.0重量部、
シランカップリング剤 1.0重量部。
比較例3及び比較例4で得られた着色材の諸特性を表6に示す。
<複数の有色付着層を有する路面標示材料用着色材>
実施例15:
芯粒子1の酸化チタン粒子粉末20kgを凝集を解きほぐすために、純水150lに攪拌機を用いて邂逅し、更に「TKパイプラインホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)を3回通して酸化チタン粒子粉末を含むスラリーを得た。
次いで、この酸化チタン粒子粉末を含むスラリーを横型サンドグラインダー「マイティーミルMHG−1.5L」(井上製作所株式会社製)を用いて軸回転数2000rpmにおいて5回パスさせて、酸化チタン粒子粉末を含む分散スラリーを得た。
得られた分散スラリーの325mesh(目開き44μm)における篩残分は0%であった。この分散スラリーを濾別、水洗して、酸化チタン粒子粉末のケーキを得た。この酸化チタン粒子粉末のケーキを120℃で乾燥した後、乾燥粉末11.0kgをエッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入し、294N/cm(30Kg/cm)で30分間混合撹拌を行い、粒子の凝集を軽く解きほぐした。
次に、メチルハイドロジェンポリシロキサン(商品名:TSF484:GE東芝シリコーン株式会社製)220gを、エッジランナーを稼動させながら上記酸化チタン粒子粉末に添加し、588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で20分間混合攪拌を行った。なお、このときの撹拌速度は22rpmで行った。
次に、有機顔料Y−1:5,500gを、エッジランナーを稼動させながら20分間かけて添加し、更に588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で30分間、混合攪拌を行い、メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆の上に有機顔料Y−1が付着している中間粒子1を得た。なお、このときの撹拌速度は22rpmで行った。
メチルハイドロジェンポリシロキサンの被覆量と有機顔料Y−1の付着量とを確認するために、得られた中間粒子1の一部を分取し、乾燥機を用いて105℃で60分間加熱処理を行った。メチルハイドロジェンポリシロキサンの被覆量は、C換算で0.53重量%であり、有機顔料Y−1の付着量はC換算で19.08重量%(酸化チタン粒子粉末100重量部に対して50重量部に相当する)であった。電子顕微鏡写真観察の結果、有機顔料Y−1がほとんど認められないことから、有機顔料Y−1のほぼ全量がメチルハイドロジェンポリシロキサン被覆層に付着していることが認められた。
次に、ジメチルポリシロキサン(商品名:TSF451:GE東芝シリコーン株式会社製)220gを、エッジランナーを稼動させながら上記中間粒子1に添加し、588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で30分間混合攪拌を行い、表面にジメチルポリシロキサンが被覆されている中間粒子1を得た。なお、この時の攪拌速度は22rpmで行った。
次に、有機顔料R−1:165gを、エッジランナーを稼動させながら20分間かけて添加し、更に294N/cm(30Kg/cm)の線荷重で20分間混合攪拌を行い、有機顔料Y−1付着層にジメチルポリシロキサンを介して有機顔料R−1を付着させた後、乾燥機を用いて105℃で60分間熱処理を行って、路面標示材料用着色材を得た。なお、この時の攪拌速度は22rpmで行った。
電子顕微鏡写真観察の結果、有機顔料R−1がほとんど認められないことから、有機顔料R−1のほぼ全量が、ジメチルポリシロキサン被覆層に付着していることが認められた。
このときの製造条件を表7及び表8に、得られた複合粒子からなる路面標示材料用着色材の諸特性を表9に示す。
実施例16〜20:
第一有色付着層の付着工程における芯粒子の種類、糊剤の種類及び添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間、有機顔料の種類及び添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間並びに第二有色付着層の付着工程における中間粒子の種類、糊剤の種類及び添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間、有機顔料の種類及び添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間を種々変化させた以外は、前記実施例15と同様にして路面標示材料用着色材を得た。
中間粒子6では、芯粒子として、芯粒子1:50.0重量部と芯粒子5:50.0重量部を混合したものを用いた。
このときの製造条件を表7及び表8に、得られた複合粒子からなる路面標示材料用着色材の諸特性を表9に示す。
実施例21:
実施例4で得られた路面標示材料用着色材2kgに2−エチルヘキサン酸100gを添加し、ヘンシェルミキサーを用いて攪拌しながら30分かけて120℃まで昇温し、この状態で30分間保持した後、更に30分かけて室温まで冷却することによって表面被覆路面標示材料用着色材を得た。
このときの製造条件を表10に、得られた表面被覆路面標示材料用着色材の諸特性を表11に示す。
実施例22〜26:
路面標示材料用着色材の種類及び脂肪酸、脂肪酸金属塩及びカップリング剤の種類及び被覆量、ヘンシェルミキサーによる被覆工程における混練温度及び混練時間を種々変化させた以外は、実施例21と同様にして粒子表面が被覆物で被覆されている路面標示材料用着色材を得た。
このときの製造条件を表10に、得られた表面被覆路面標示材料用着色材の諸特性を表11に示す。
<路面標示用塗料(1種)>
実施例27〜53、比較例5〜10:
路面標示材料用着色材の種類を種々変化させた以外は、前記発明の実施の形態と同様にして路面標示用塗料(1種)を得た。
このときの製造条件を表12に、得られた路面標示用塗料(1種)の諸特性を表13に示す。
<路面標示用塗料(2種)>
実施例54〜80、比較例11〜16:
路面標示材料用着色材の種類を種々変化させた以外は、前記発明の実施の形態と同様にして路面標示用塗料(2種)を得た。
このときの製造条件を表14に、得られた路面標示用塗料(2種)の諸特性を表15に示す。
<路面標示用塗料(3種)>
実施例81〜107、比較例17〜22:
路面標示材料用着色材の種類を種々変化させた以外は、前記発明の実施の形態と同様にして路面標示用塗料(3種)を得た。
このときの製造条件を表16に、得られた路面標示用塗料(3種)の諸特性を表17に示す。