第1の発明は、鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、交流電源を整流し前記インバータ回路に電力供給する整流手段と、前記インバータ回路を制御する制御手段を有し、前記制御手段は前記加熱コイルの動作周波数および第二高調波の周波数が現在時刻情報を有する標準電波の送信周波数にならないように前記インバータ回路を制御することにより、加熱コイルの動作周波数と第二高調波の周波数が、標準電波の送信周波数に重ならないので、不要輻射雑音の中でも大きな雑音である基本波と第二高調波が標準電波に重畳しても、電波時計に内蔵されたフィルタ回路で、標準電波の信号を判別することが可能となり、標準電波の信号が微弱な状態でも、電波時計が標準電波を受信して現在時刻を更新することができる。
さらに、制御手段が、加熱コイルの両端電圧に相当する電圧が所定値を超えると、加熱コイルの動作周波数および第二高調波の周波数が現在時刻情報を有する標準電波の送信周波数にならないようにインバータ回路を制御することにより、加熱コイルに流れる電流が増えたり、加熱コイルと鍋との磁気的結合が変わり、漏れ磁束が増えたりしても、加熱コイルと共振コンデンサにより発生する共振電圧が増加するので、この共振電圧に相当する値として加熱コイルの両端電圧を検知し、標準電波を打ち消さないレベルの不要輻射雑音のときの両端電圧を所定値にすれば、この所定値を越えたときに加熱コイルに流れる電流の周波数が標準電波の送信周波数に重ならないようにインバータ回路の動作周波数を制御するので、不要輻射雑音の中でも大きな雑音である基本波と第二高調波が標準電波に重畳しても、電波時計に内蔵されたフィルタ回路で送信周波数と関係ない周波数帯の信号を除去し、標準電波の信号を判別することができ、標準電波信号が微弱な場合でも、電波時計は標準電波を受信することができる。
第2の発明は、特に第1の発明の炊飯器のインバータ回路を、少なくとも一つのスイッチング手段と、加熱コイルに並列接続された共振コンデンサで構成することにより、回路構成を簡単にできるので、実装面積を小さくし、コンパクトな炊飯器を提供できる。
第3の発明は、特に第2の発明の炊飯器の加熱コイルの動作周波数を検知する周波数検知手段を有し、制御手段は周波数検知手段が検知した動作周波数と第二高調波の周波数が現在時刻情報を有する標準電波の送信周波数にならないようにインバータ回路を制御することにより、加熱コイルの動作周波数を確実に検知できるので、加熱コイルの動作周波数と第二高調波の周波数が標準電波の送信周波数に確実にあたらないようにすることができる。
第4の発明は、特に第1から第3の発明の炊飯器の加熱コイルの動作周波数はスイッチング手段のオン時間で制御することにより、周波数検知するための回路などを追加する必要がなくなり、回路構成を簡易にすることができる。
第5の発明は、特に第1から第4の発明の炊飯器の交流電源の電源周波数を検知する電源周波数検知手段を有し、電源周波数検知手段が検知した電源周波数に応じて、対象とする標準電波の送信周波数を切り替えることにより、交流電源の周波数地域に含まれる標準電波の送信周波数を判別し、加熱コイルの動作周波数を禁止する周波数の範囲を小さくすることができる。
第6の発明は、特に第1から第5の発明の炊飯器の制御手段が、現在時刻情報を有する標準電波を受信することで現在時刻を設定することにより、加熱コイルを駆動し、鍋を加熱しているときでも、現在時刻情報を更新でき、使用者に常に最新の現在時刻や炊飯終了時刻など時刻に関する最新情報を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の主要部ブロック図である。
図1において、1は鍋で、特に図示していないが、磁性金属や非磁性金属を複数用いた積層体で構成されている。
加熱コイル2は、特に図示していないが鍋1の底面の中央部に対向した第一の加熱コイルと、鍋1の底面のコーナー部に対向した第二の加熱コイルで構成される。
この第一の加熱コイルと第二の加熱コイルは電気的に直列接続している。
特に図示しないが、第一の加熱コイルは渦巻き状の形状をしており、鍋1の底面中央部に一定の距離で配置される。第二の加熱コイルは第一の加熱コイルの同心円状の外側に配置され、鍋1の底面のコーナー部に一定の距離をおいて配置されている。
加熱コイル2は複数の銅線を束ねたリッツ線を更に20数本で撚った線で構成されており、高周波電流が流れた時の電流分布を均一にしている。
3はインバータ回路で、共振コンデンサ4とスイッチング手段5で構成されている。
共振コンデンサ4は、図1に示すように加熱コイル2に並列接続している。本実施の形態では高周波電流が流れても損失の少ないポリプロピレンコンデンサを使用している。
スイッチング手段5は、MOSFETやIGBTなどの半導体素子と、この半導体素子に逆接続した逆接続ダイオードで構成されている。MOSFETやIGBTは耐圧が高く、高周波のスイッチングが可能で、ゲート端子に電圧を印加することで大電流を流すことができるので、パワートランジスタに比べ省電力で大電流を流すことができるという利点がある。なお、本実施の形態では、この半導体素子にIGBTを使用している。
一般的にこのようなインバータ回路の構成は、加熱コイル2と共振コンデンサ3で並列共振回路を構成しているため、1石電圧共振形インバータといわれている。
6は炊飯器に電力を供給する交流電源である。交流電源6の電源周波数は、東日本地域では50Hz、西日本地域では60Hzとなっている。
7は整流手段で、ダイオードブリッジ8、チョークコイル9、コンデンサ10で構成されている。ここで、コンデンサ10の容量は数μFと小さく、底加熱コイル2に電流を流すとリプルが生じる。本実施の形態では、このリプル電圧波形は交流電源6を全波整流し
た時の電圧波形と同じとなる。
11は制御手段で、オン時間設定手段12、パルス発生手段13、同期信号発生手段14、駆動回路15により構成されている。
オン時間設定手段12は、マイクロコンピュータ18内部のROMなどで構成され、あらかじめ、炊飯工程、保温工程などで使用するオン時間を予め記憶しておき、底加熱コイル2を駆動するのにあわせて、パルス発生手段13に8bitのデジタルデータを出力する。
パルス発生手段13は、マイクロコンピュータ18内部のPWM出力機能を有するタイマー回路などで構成されている。パルス発生手段13を構成するタイマー回路は同期信号発生手段14の出力エッジによってカウントをスタートし、オン時間設定手段12により設定されたオン時間をカウントし、そのカウントが終了するまで、駆動回路15にオン信号としてハイ信号を出力する。
同期信号発生手段14は、コンパレータや抵抗分圧回路などで構成され、(C2)端子を所定の比率で抵抗分圧した電圧と、(CE)端子を所定の比率で抵抗分圧した電圧をコンパレータによって比較し、(C2)端子の分圧電圧の方が高いときにハイ信号をパルス発生手段13に出力し、(C2)端子の分圧電圧の方が低いときにロー信号をパルス発生手段13に出力する。
駆動回路15は、特に図示しないがNPNトランジスタとPNPトランジスタで構成されたプッシュプル回路で構成され、パルス発生手段13の出力がハイの間、スイッチング手段5を構成するIGBTのゲート端子に電圧を印加し、IGBTをオンし、パルス発生手段13がロー出力しているときはIGBTのゲート端子の電圧を0Vにして、IGBTをオフにする。なお、これは一例でプッシュプル回路を構成する部品はMOSFETなどで構成しても構わない。
入力手段16は、複数のモーメンタリスイッチで構成されている。各スイッチが使用者により押されると、マイクロコンピュータ18はスイッチが押されたことを検知し、各スイッチに応じて、所定の動作をおこなう。
表示手段17は、LCDや赤、緑、橙などの複数のLEDで構成されている。マイクロコンピュータ18は、炊飯中や保温中などの炊飯器の状態に応じて、LCDの表示内容や点灯するLEDを設定している。
マイクロコンピュータ18には、前にも述べたように、その機能の一部を、オン時間設定手段12、パルス発生手段13に利用している。マイクロコンピュータ18は4MHz発振子と32.728kHz発振子で動作する。LCD表示部を制御するLCD表示手段、LCD内部の時計表示を行う計時手段、炊飯工程を制御する炊飯工程制御手段などを構成している。
特に図示しないが、本実施の形態の炊飯器では、それ以外にも、LCD、LEDなどの表示手段17を制御するため機能や、LCD内部の時計表示を行う計時機能や、炊飯シーケンスや保温シーケンスを実行するためのシーケンス制御機能を有している。
図2は本実施の形態の炊飯器の要部断面構成図である。図面を簡潔にするために、電気的接続のためのリード線や、部品を固定するためのネジは省略している。図2において、21は炊飯器のボディ(本体)である。ボディ21には、その上面を覆う蓋22が開閉自
在に設置されている。ボディ21の収納部23は、その底部と側面部に加熱コイル2を配設し、加熱コイル2の外周側に放射状にフェライトコア24を配設する。加熱コイル2は鍋1の底部の中心の略真下に中心を有する巻き線である。
鍋1は、ステンレス、鉄、銅などの磁性体によって形成される。鍋1は、上端開口部に外側にせり出したフランジ25を有し、フランジ25を収納部23の上端から浮き上がった状態で載置することにより、収納部23に着脱自在に収納される。従って、鍋1は収納時に、収納部23との間に隙間を有する。
蓋22には着脱自在な蓋加熱板26が設定されている。蓋加熱板26はステンレスなどの金属で形成されている。
27は蓋加熱コイルで蓋22に内蔵され、蓋加熱板26を誘導加熱する。
28は第一の回路基板でスイッチ、LCD、マイクロコンピュータ18などで構成されている。
29は第二の回路基板で、特に図示しないが、スイッチング手段5を構成するIGBT、共振コンデンサ4、整流手段7を構成するダイオードブリッジ8、チョークコイル9、コンデンサ10などが搭載されている。
30は巻き取り式の電源コード収納部で、第二の回路基板29にリード線を介して電気的に接続している。電源コード収納部30はストッパーとばねを用いて電源コードを巻き取ることを可能にしている。
31は温度検知手段で、サーミスタで構成され、鍋1の底部の略中心に配置されている。サーミスタは温度で抵抗値が変わるので、このサーミスタと所定の抵抗値を有する抵抗で分圧回路を構成し、所定の電圧をこの分圧回路の両端に供給することで、サーミスタの抵抗値をアナログ電圧に変換できる。図1に示したマイクロコンピュータ18は、内蔵されたAD変換器を用いてこのアナログ電圧から温度を推定する。
32は冷却手段でDCブラシレスモータの回転子にファンを取り付けたファンモータで構成されている。このファンモータは図1に示したマイクロコンピュータ18でオンオフ制御される。
第一の回路基板28と第二の回路基板29は、特に図示しないが、リード線で電気的に接続しており、マイクロコンピュータ18内部に構成されたオン時間設定手段12、パルス発生手段13により、IGBTをオンオフ制御し、加熱コイル2に高周波電流を流す。加熱コイル2は高周波電流が流れると交番磁界を発生させ、この交番磁界により鍋1に渦電流が流れ、鍋1が発熱する。
以上のように、本実施の形態の炊飯器は、鍋1を誘導加熱し、鍋1内の調理物を加熱調理する。ここで調理物は、炊飯前の米と水又は炊き上がったご飯等である。
図3は本実施の形態の炊飯器のスイッチング手段4のオン時間と底加熱コイル2の動作周波数の基本波と第二高調波の関係を示したグラフである。このとき交流電源6の電圧は100Vである。図3(a)は底加熱コイル2の動作周波数の基本波とスイッチング手段4のオン時間の関係を示している。図3(b)は底加熱コイル2の動作周波数の第二高調波とスイッチング手段4の関係を示している。このとき、交流電源7の電源電圧はAC100V一定である。
図3に示すように、オン時間と底加熱コイル2の動作周波数の基本波と第二高調波はほぼ比例関係にある。また、底加熱コイル2の第二高調波は基本波の2倍である。つまり、オン時間を設定することにより底加熱コイル2の動作周波数の基本波と第二高調波を設定することが可能となる。
なお、図3において、オン時間がTon1の時、底加熱コイル2の動作周波数が60kHzになり、オン時間がTon2の時、底加熱コイル2の動作周波数が40kHzになり、オン時間がTon3の時、底加熱コイル2の動作周波数の第二高調波が60kHzになり、オン時間がTon4の時、底加熱コイル2の動作周波数の第二高調波が40kHzになる。
つまり、オン時間をTon2からTon3の間に設定すれば、底加熱コイル2の動作周波数の基本波と第二高調波が、現在時刻情報を有する標準電波の送信周波数にあたることはない。
図4は、本実施の形態の炊飯器のスイッチング手段5のオン時間と交流電源6から供給される入力電流の関係を示したグラフである。図4に示しているように、オン時間が長くなるほど入力電流が大きくなる。本実施の形態の炊飯器では、炊飯や保温状態に応じて最適な入力電流になるように所定のオン時間を設定している。
図5は本実施の形態の炊飯器の主要回路の動作波形を示している。
一般的に誘導加熱を利用した炊飯器においては、交流電源7の周波数(50Hzまたは60Hz)に対し、スイッチング手段6のオンオフの周波数は20kHz以上と400倍以上の高周波である。(a)はオン時間設定手段17の8bit出力を示している。(b)はパルス発生手段22の出力波形を示している。(c)はスイッチング手段6に流れる電流波形を示している。(d)は(CE)端子の電圧波形と(C2)端子の電圧波形を示している。(e)は同期信号発生手段23の出力波形を示しており、(CE)端子の電圧が、(C2)端子の電圧より小さい時にハイを出力し、その所定時間後にパルス発生手段22がハイ出力になる。(f)は加熱コイル2に流れる電流波形を示している。
図5の動作波形について、図1を用いて説明する。
たとえば、図1の入力手段16により、炊飯スタートのスイッチが押されると、制御手段11が入力手段16の信号を検知し、炊飯工程を開始する。炊飯工程が開始されると、マイクロコンピュータ18で構成されたオン時間設定手段12がスイッチング手段5のオン時間Tonを設定し、同じくマイクロコンピュータ18で構成されたパルス発生手段13が、図4(b)のように、ハイパルス幅Tonのハイパルスを駆動手段15に出力する。
駆動手段15はハイ信号を受けて、スイッチング手段5を構成するIGBTのゲート端子に約20Vの電圧を印加する。IGBTはゲート端子に20V電圧を印加されると、コレクタ−エミッタ間をオンし、加熱コイル2が通電状態となり、図4(f)のように加熱コイル2に電流が流れる。加熱コイル2はインダクタンス成分を有するので、加熱コイル2に流れる電流は時間とともに右肩上がりに上昇する波形となる。
t1において、設定されたオン時間Tonが経過すると、パルス発生手段13はロー信号を駆動手段15に出力する。駆動手段15は、このロー信号を受けてIGBTのゲート端子に0Vを印加しIGBTのコレクタ−エミッタ間をオープンにし、加熱コイル2の通
電経路を遮断する。しかし、加熱コイル2はインダクタンス成分を有するため、このインダクタンス分と共振コンデンサ4とで図4(f)のt1からt2期間に示したような共振波形が発生する。
このとき、同期信号発生手段14は、加熱コイル2のインダクタンス成分と共振コンデンサ4からなる共振電圧に相当する図4(d)に示したスイッチング手段5のコレクタ電圧((CE)端子の電圧)と、整流手段7の出力電圧((C2)端子の電圧)を比較し、(CE)端子の電圧が(C2)端子の電圧より高いときはロー信号をパルス発生手段13に出力する。
t2において、共振現象により、(CE)端子電圧が(C2)端子電圧より低くなると、同期信号発生手段14は図4(e)のようにハイ信号をパルス発生手段13に出力する。
t3では、パルス信号発生手段13は同期信号発生手段14のローからハイへのエッジをトリガにして、再びオン時間設定手段12が設定したオン時間Tonでハイパルスを出力する。
以上のようにt0点からt3までの期間を一周期として加熱コイル2に高周波電流を流すことで鍋1が誘導加熱される。
図5に示すように本実施の形態の炊飯器では、オン時間設定手段17の8bit出力が変化すると、パルス発生手段22のハイパルス期間が変化する。
図5(f)に示したように、加熱コイルの電流波形はおおよそ三角波の波形となっている。また、正方向と負方向の電流の面積が異なることから、2次成分の高調波を含んでいる。このため、外来への電磁波として加熱コイルの動作周波数の2倍の周波数の電磁波が漏えいすることになる。
つまり、加熱コイルの漏れ磁界により生じる電磁波の基本動作周波数と2倍周波数を、標準電波の送信周波数にならないようにすることで、標準電波の送信信号が乱れることを防止することができる。
図6は本実施の形態の炊飯器の温度検知手段のタイムチャートとスイッチング手段のオン時間のタイムチャートを示している。(a)は温度検知手段が検知した鍋底温度のタイムチャートを示している。(b)はスイッチング手段のオン時間のタイムチャートを示している。
図6(b)のスイッチング手段のオン時間のタイムチャートは、縦軸でスイッチング手段のオン時間を示し、横軸に、このオン時間でスイッチング手段をオンオフし加熱コイルに高周波電流を流す期間を示している。
図1から図6を用いて、本実施の形態の炊飯器の動作を説明する。
図6のT0において、図2に示した炊飯器の蓋内に配置された第一の回路基板30に実装された複数のモーメンタリスイッチ(入力手段)のうち、炊飯スタートを意味するモーメンタリスイッチを押すと、図1に示した制御手段11を構成するマイクロコンピュータ18が入力手段16の信号を検知し、炊飯シーケンスを開始する。
炊飯シーケンスは複数のサブシーケンスから構成されている。本実施の形態では、前炊
き行程、炊飯量判定行程、沸騰維持行程、追い炊き行程で構成されている。
T0からT2までの期間は前炊き行程に該当する。前炊き行程では、T0からT1の期間にお米に水が吸収されやすい温度まで、スイッチング手段5のオン時間をTon5にして、加熱コイル1に高周波電流を供給する。加熱コイル1は図3に示したようにTon5の場合は約33kHzで動作する。加熱コイル1が33kHzで動作する導通比は10秒/16秒である。T1で図2に示した温度検知手段41が60度を検知すると、マイクロコンピュータ18は予めプログラムされた内容に従って、スイッチング手段5のオン時間はTon5にして、加熱コイルが33kHzで動作する導通比を可変にし、約60度の温度を、T2までの期間、維持するように制御する。
T2からT3までの期間は炊飯量判定行程に該当する。炊飯量判定行程では、スイッチング手段5のオン時間をTon6にして、加熱コイルに高周波電流を供給する。オン時間が長いので加熱コイルに供給される電流も増加し、誘導加熱量も大きくなる。つまり、鍋の温度も急激に上昇する。本実施の形態では、スイッチング手段5のオン時間をTon6にして加熱コイル1駆動を開始してから、温度検知手段41が100度を検知するまでの経過時間(T2からT3までの時間)から、マイクロコンピュータ18が炊飯量を判定し、その後の沸騰維持行程における加熱コイル1の導通比、追い炊き行程における加熱コイル1駆動の導通比を設定する。
T3からT4までの期間は沸騰維持行程に該当する。沸騰維持行程では、マイクロコンピュータ18はスイッチング手段5のオン時間をTon5に設定し、10秒/16秒の導通比で加熱コイル2を駆動する。加熱コイル2を駆動して鍋1を誘導加熱し続けると、鍋1内に残っていた水も蒸発し、鍋1の温度は100度を超え、T4では130度に達する。温度検知手段41が130度を検知すると、マイクロコンピュータ18はスイッチング手段5をオフして、加熱コイル1の駆動を停止するとともに沸騰維持行程を終了し、追い炊き行程に移行する。
T4からT5までの期間は追い炊き行程に該当する。追い炊き行程では、マイクロコンピュータ18はスイッチング手段5のオン時間をTon5に設定し、2秒/16秒の導通比で加熱コイル2を高周波スイッチングする。マイクロコンピュータ18はT4からの経過時間を計時し、T5に達すると炊飯シーケンスを終了し、炊飯終了をブザー報知する。
同時にT5においてマイクロコンピュータ18は保温シーケンスを開始し、スイッチング手段5のオン時間をTon7に設定し、1秒/16秒の導通比で加熱コイル2を高周波スイッチングして、鍋1を誘導加熱する。
以上のように、図6においては、スイッチング手段5のオン時間がTon5、Ton6、Ton7と複数設定されている。
前にも記したように、スイッチング手段5のオン時間と加熱コイル2の動作周波数および第2高調波の周波数の関係は図3のグラフに示している。
図3のグラフにおいて、Ton5のオン時間で加熱コイルを高周波スイッチングした場合の動作周波数は約33kHzで第2高調波の周波数は約66kHzとなる。
Ton6のオン時間で加熱コイルを高周波スイッチングした場合の動作周波数は約26kHzで第2高調波の周波数は約52kHzとなる。
Ton7のオン時間で加熱コイルを高周波スイッチングした場合の動作周波数は約37
kHzで第2高調波の周波数は約74kHzとなる。
いずれのオン時間で加熱コイル2を駆動しても、加熱コイル2の動作周波数と第二高調波の周波数は、標準電波の送信周波数40kHzと60kHzに対し、1kHz以上離れている。加熱コイル2の動作周波数と第二高調波の周波数を標準電波の送信周波数からどれだけ離すかについては、特に限定しないが、本実施の形態では電波時計が有するノイズフィルタの性能を考慮して1kHz以上離すようにしている。
以上のように本実施の形態の炊飯器では、加熱コイル2の動作周波数と第2高調波の周波数は、全て標準電波の送信周波数(40kHzと60kHz)を避けており、炊飯開始から保温中まで標準電波の送信周波数と加熱コイル2から発生する不要輻射ノイズの周波数が同じになることはないので、電波時計は標準電波信号を受信しやすくなる。
なお、本実施の形態では一石電圧共振型のインバータについて説明したが、インバータ回路の構成はこれに限定するものではなく、たとえば2石のハーフブリッジ型のインバータや4石のフルブリッジ型のインバータでも構わない。
また、本実施の形態は本発明の炊飯器の請求項1、2および7の一例である。
(実施の形態2)
図7は、本発明の第2の実施の形態における炊飯器の主要部ブロック図である。
図7において、71は入力電流検知手段で、交流電源6から供給される入力電流を検知している。特に図示していないが、カレントトランスを用いて入力電流を所定の比率で数mAの電流に変換し、カレントトランスの二次側に接続された負荷抵抗と整流ダイオードと電解コンデンサを用いて直流電圧に変換している。
72は入力電流設定手段で、炊飯シーケンスや保温シーケンスの各工程で使用する入力電流を設定する。本実施の形態では、この入力電流の設定値をマイクロコンピュータ73内のROMに予め記憶しておき、マイクロコンピュータ73が所定の工程で所定の入力電流設定値をオン時間設定手段74に出力する。
マイクロコンピュータ73は、その機能の一部を入力電流設定手段72とオン時間設定手段74とパルス発生手段13に利用している。
オン時間設定手段74は入力電流検知手段71の出力値と入力電流設定手段72の入力電流設定値を比較し、入力電流検知手段71の出力値が入力電流設定手段72の入力電流設定値になるようにスイッチング手段5のオン時間を変更する。
75は制御手段で、入力電流設定手段72、オン時間設定手段74、パルス発生手段13を構成するマイクロコンピュータ73と、同期信号発生手段14、駆動回路15より構成されている。
76は零電圧検知手段で、特に図示していないが、交流電源6の(u)極が抵抗を介してトランジスタのベース端子に接続している。このトランジスタのコレクタ端子は交流電源6からスイッチング電源を介して生成される5V電源と、抵抗を介して接続しており、(u)極の電位がもう一方の極より高いときにローを、低いときにハイをマイクロコンピュータ73に出力する。
その他の構成については、図1と同様であり、本実施の形態での説明は省略する。
図8は、本実施の形態の炊飯器におけるスイッチング手段5のオン時間の設定方法の一例を示したフローチャートである。
本実施の形態の炊飯器の動作作用について、図7、図8と図3、図4、図6を用いて説明する。
たとえば、図6のタイムチャートにおいて、炊飯シーケンスの前炊き行程が開始されると、ステップ81で、入力電流設定手段72は前炊き行程で使用する入力電流設定値Iin5を設定する。
ステップ82では、オン時間設定手段71がオン時間の初期値として図3、図4のグラフに示したTon1を設定する。
ステップ83では、入力電流検知手段71が検知した入力電流値Iinを、零電圧検知手段76の出力値がハイエッジになってから所定の経過時間後に、マイクロコンピュータ73が入力する。
ステップ84では、入力電流値Iinが基準値Iin2より小さいかを判定する。このとき、基準値Iin2は加熱コイル2の動作周波数を無視して調整できる入力電流の上限値である。
ステップ84で、Iin<Iin2であると判定されると、ステップ85に移行し、オン時間設定手段74がスイッチング手段5のオン時間をTon=Ton+ΔTonに変更し、その後ステップ83に移行する。このときΔTonはオン時間の変化量であり、マイクロコンピュータ73内部のROMに予め記憶された値となっている。
ステップ84で、Iin<Iin2ではないと判定されると、ステップ86に移行し、オン時間設定手段74が設定しているオン時間Tonが、ある既定のオン時間Ton2より大きいかどうかを判定する。このとき既定のオン時間Ton2は、加熱コイル2の動作周波数が標準電波の送信周波数と同じになると想定されるオン時間である。
Ton<Ton2である場合、ステップ87に移行し、オン時間設定手段74がスイッチング手段5のオン時間をTon=Ton8とする。Ton8のオン時間で加熱コイル2を駆動した場合、加熱コイル2の動作周波数は標準電波の送信周波数より低くなる。Ton8をこのように既定値としてマイクロコンピュータ73のROMに記憶しておく。
Ton<Ton2でない場合、およびステップ87の次は、ステップ88に移行する。ステップ88では、入力電流検知手段71が検知した入力電流値Iinを、零電圧検知手段76の出力値がハイエッジになってから所定の経過時間後に、マイクロコンピュータ73が入力する。
ステップ89では、入力電流検知手段71が検知した入力電流値Iinと入力電流設定手段72が設定した入力電流設定値Iin5を比較し、Iin<Iin5であるかどうかを判定する。
入力電流値Iin<入力電流設定値Iin5である場合、ステップ90に移行し、オン時間設定手段74がオン時間TonをTon+ΔTonに更新する。その後、ステップ88に移行する。
入力電流値Iin<入力電流設定値Iin5ではない場合、ステップ91に移行し、オン時間TonをTon−ΔTonに更新する。その後、ステップ88に移行する。
以上のように、入力電流値Iinが基準値Iin2より小さい間は、スイッチング手段5のオン時間を自由に設定し、基準値Iin2以上になると、オン時間の下限値としてTon8を設定し、加熱コイル2の動作周波数が50kHzにならないようにしている。
基準値Iin2は、本実施の形態では定常動作中に使用されるIinよりも小さい値にしている。つまり過渡状態で使われるため、加熱コイル2の動作周波数も標準電波の送信周波数を瞬時に通過することになり、標準電波への影響が極めて小さくなる。ただし、この設定方法は一例であり、限定するものではない。
図4に示したように、スイッチング手段5のオン時間を長くするほど、入力電流は大きくなる。スイッチング手段5のオン時間や入力電流が大きくなるということは、加熱コイル2に流れる高周波電流も大きくなることを示している。この傾向は、実験的にも確認できているし、スイッチング手段5のオン時間が増えて加熱コイル2への通電時間が長くなることからも明らかである。
加熱コイル2に流れる高周波電流が大きくなると、加熱コイル2から発生する不要輻射ノイズも大きくなる。このことは実験的に確認しているし、電流が増え電力が増えると、比率は違えどもノイズも増加する傾向があるのは一般的な傾向である。
つまり、加熱コイル2の高周波電流が小さければ加熱コイル2から発生する不要輻射も小さくなるので、加熱コイル2の高周波電流に相当するパラメータとして、交流電源6から炊飯器に供給される入力電流を検知し、所定の入力電流以上になったときに加熱コイル2の動作周波数が標準電波の送信周波数にならないようにすることで、加熱コイル2に供給する電流を初めから大きくする必要がなくなり、起動時にスイッチング手段5を構成するIGBTに過大な短絡電流を流すことがなくなり、加熱コイル2の起動時の性能を維持しながら電波時計への妨害を抑えることができる。
また、零電圧検知手段76は交流電源6の零電圧を検知するので、零電圧検知手段76の周期をマイクロコンピュータ73のカウンタで計測することで交流電源6の電源周波数を検知することができる。日本の電源周波数は50Hz地域と60Hz地域があり、一般的に東日本地域が50Hz地域、西日本地域が60Hzとなっている。一方、標準電波の送信周波数も福島県と、佐賀県と福岡県の県境から発信されており、福島県からは40kHzの標準電波が発信され、佐賀県と福岡県の県境からは60kHzの標準電波が発信されている。従って、交流電源6の電源周波数を検知することで、より受信しやすい標準電波の送信周波数を推定することができるので、受信しにくい方の標準電波の送信周波数に加熱コイル2の動作周波数または第二高調波が重なっても、電波時計は標準電波を受信することができる。
以上のように、交流電源6の電源周波数を検知することで、受信しやすい標準電波の送信周波数を判定し、この送信周波数と加熱コイル2の動作周波数または第二高調波が重ならないようにすることで、加熱コイル2の動作周波数の禁止範囲を最低限にすることができる。
(実施の形態3)
図9は、本発明の第3の実施の形態における炊飯器の主要部ブロック図である。
図9において、101はコイル電流検知手段で、加熱コイル2に流れる高周波電流を検
知している。特に図示していないが、カレントトランスを用いて加熱コイル2に流れる電流を所定の比率で数mAの電流に変換し、カレントトランスの二次側に接続された負荷抵抗と整流ダイオードと電解コンデンサを用いて直流電圧に変換している。
102はコイル電流設定手段で、炊飯シーケンスや保温シーケンスの各工程で使用する加熱コイル2の高周波電流を設定する。本実施の形態では、この加熱コイル2の高周波電流の設定値をマイクロコンピュータ103内のROMに予め記憶しておき、マイクロコンピュータ103が所定の工程で所定のコイル電流設定値をオン時間設定手段104に出力する。
マイクロコンピュータ103は、その機能の一部をコイル電流設定手段102とオン時間設定手段104とパルス発生手段13に利用している。
オン時間設定手段104はコイル電流検知手段101の出力値とコイル電流設定手段102が設定したコイル電流設定値を比較し、コイル電流検知手段101の出力値が、コイル電流設定手段102が設定したコイル電流設定値になるようにスイッチング手段5のオン時間を変更する。
105は制御手段で、コイル電流設定手段102、オン時間設定手段104、パルス発生手段13を構成するマイクロコンピュータ103と、同期信号発生手段14、駆動回路15より構成されている。
その他の構成については、図7と同様であり、本実施の形態での説明は省略する。
以上のように、加熱コイル2に流れる高周波電流を検知することで、所定のコイル電流以上になったときに加熱コイル2の動作周波数が標準電波の送信周波数にならないようにすることで、加熱コイル2に供給する電流を初めから大きくする必要がなくなり、起動時にスイッチング手段5を構成するIGBTに過大な短絡電流を流すことがなくなり、加熱コイル2の起動時の性能を維持しながら電波時計への妨害を抑えることができる。
(実施の形態4)
図10は、本発明の第4の実施の形態における炊飯器の主要部ブロック図である。
図10において、111は両端電圧検知手段で、スイッチング手段5を構成するIGBTのコレクタ−エミッタ間の電圧を検知する。特に図示していないが、コレクタ−エミッタ間に複数の抵抗を直列接続して構成される抵抗分圧回路と、この抵抗分圧回路により分圧された出力電圧をピークホールドするためのトランジスタとコンデンサを用いたエミッタフォロア回路で構成されている。
なお、図10の(CE)端子の電圧は、(C2)端子の電圧に加熱コイル2の両端電圧を足したものなので、IGBTのコレクターエミッタ間の電圧を検知することは、加熱コイル2の両端電圧を検知することに相当するといえる。
112は両端電圧設定手段で、炊飯シーケンスや保温シーケンスの各工程で加熱コイル2を駆動する際に発生するスイッチング手段5の両端電圧値を設定する。本実施の形態では、このスイッチング手段5の両端電圧の設定値をマイクロコンピュータ113内のROMに予め記憶しておき、マイクロコンピュータ113が所定の工程で所定の両端電圧設定値をオン時間設定手段114に出力する。
マイクロコンピュータ113は、その機能の一部を両端電圧設定手段112とオン時間
設定手段114とパルス発生手段13に利用している。
オン時間設定手段114は両端電圧検知手段111の出力値と両端電圧設定手段112が設定した両端電圧設定値を比較し、両端電圧検知手段111の出力値が、両端電圧設定手段112が設定した両端電圧設定値になるようにスイッチング手段5のオン時間を変更する。
115は制御手段で、両端電圧設定手段112、オン時間設定手段114、パルス発生手段13を構成するマイクロコンピュータ113と、同期信号発生手段14、駆動回路15より構成されている。
その他の構成については、図7と同様であり、本実施の形態での説明は省略する。
図11(a)は、鍋1を図2に示したように配置した時のスイッチング手段5を構成するIGBTのコレクタ−エミッタ間の電圧(両端電圧)と加熱コイル2に流れる高周波電流の関係を示している。図11(b)は、鍋1を図2に示したように配置した時のスイッチング手段5を構成するIGBTのコレクタ−エミッタ間の電圧(両端電圧)と加熱コイル2の動作周波数の関係を示している。
図11に示すように、スイッチング手段5の両端電圧と加熱コイル2の高周波電流と動作周波数には相関関係があるので、スイッチング手段5の両端電圧を検知することで、加熱コイル2に流れる電流を推定でき、所定の両端電圧値以上になったときに加熱コイル2の動作周波数が標準電波の送信周波数にならないようにすることで、加熱コイル2に供給する電流を初めから大きくする必要がなくなり、起動時にスイッチング手段5を構成するIGBTに過大な短絡電流を流すことがなくなり、加熱コイル2の起動時の性能を維持しながら電波時計への妨害を抑えることができる。
また、図11に示したように両端電圧検知手段111の検知電圧によって加熱コイル2の動作周波数を推定することができるので、両端電圧検知手段111を加熱コイル2の動作周波数を検知する周波数検知手段として利用してもよい。
周波数検知手段として利用することにより、標準電波の送信周波数にならないようにスイッチング手段5のオン時間を制御することできるので、確実に標準電波の送信周波数と加熱コイル2の動作周波数をずらすことができ、電波時計の受信性能を確保することができる。
なお、本実施の形態は本発明の炊飯器の請求項5と請求項6の説明に相当する。
(実施の形態5)
図12は、本発明の第5の実施の形態における炊飯器の主要部ブロック図である。
図12において、121は電波受信手段で、特に図示していないが標準電波を受信するためのアンテナと受信信号を解読するための解読用ICで構成され、解読した現在時刻情報をデジタル信号にしてマイクロコンピュータ122に送信している。マイクロコンピュータは、この信号を受けて、表示手段17を構成するLCDの時刻表示部に現在時刻を表示する。
123は制御手段で、入力電流設定手段72、オン時間設定手段74、パルス発生手段13を構成するマイクロコンピュータ122と、同期信号発生手段14、駆動回路15より構成されている。
その他の構成については、図7と同様であり、本実施の形態での説明は省略する。
以上のように、炊飯器に電波時計の機能を内蔵した場合においても、加熱コイル2の動作周波数と第二高調波の周波数を標準電波の送信周波数からずらすので、炊飯や保温中に電波時計の受信機能を確保することができる。