JP5232626B2 - 出没式筆記具 - Google Patents
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Description
このような出没式筆記具によれば、後方へ付勢されている押子(30)を、所定量スライドさせる構造であるため、後方へスライドした押子(30)が、所定の被当接部に当接した際に、当接音を発生する。なお、前記被当接部は、特許文献1には説明が省略されているが、一般的な多色出没式筆記具の構造によれば、各押子(30)における操作突部(32)の前端側部分を当接させるように、軸筒の内面に形成されていた。
押子が付勢部材の付勢力によって後方へスライドし被当接部材に当接した際、この当接音を、耳障りに感じることの少ない重厚な音質とすることができる。
この出没式筆記具Aは、先端口11からボールペン用リフィール21の筆記部21aやシャープペンシル用リフィール22の筆記部22aを出没させる軸筒10と、この軸筒10の後端側に配設された複数の押子30及び開閉操作機能付クリップ40と、後方へスライドした際の押子30又は開閉操作機能付クリップ40のクリップ支持体41を当接させるための被当接部材60とを備え、選択された一つの押子30または開閉操作機能付クリップ40を、軸方向へのスライド操作により、前進位置と後退位置との間で移動させる。
また、上記後退位置とは、押子30又は開閉操作機能付クリップ40が、軸方向への後退スライドにより筆記部21a(又は22a)を先端口11内へ没入させるとともに、押子30の後端部または開閉操作機能付クリップ40におけるクリップ支持体41の後端部を、後述する被当接部材60に当接させて静止した状態である。
図示例によれば、案内孔12は、ボールペン用リフィール21に対応する押子30を進退可能に係合させるための孔であり、案内孔13は開閉操作機能付クリップ40を進退可能に係合させるための孔である。これら案内孔12,13の各々は、軸方向へ延びる平面視略長尺矩形状に形成されている。
各係止部14は、押子30又は開閉操作機能付クリップ40が前進位置にて軸筒軸心方向へ沈み込んだ際、この押子30又はクリップ支持体41の後端部を係止させるように、軸筒10の内周面に段部状に形成されている。この係止部14は、案内孔12又は13を間に挟むようにして一対に配設されている。
なお、図示を省略しているが、このボールペン用リフィール21は、例えば黒色や赤色、青色等、異なるインク色のものが複数用いられる。そして、これら複数のボールペン用リフィール21は、軸筒10後端側に断面放射状に配設される。
このシャープペンシル用リフィール22は、開閉操作機能付クリップ40が前進位置にてノック操作された際に、筆記部21aから鉛芯を繰り出すように構成してある。
付勢部材51aは、ボールペン用リフィール21を後方へ弾発するコイルスプリングであり、図4(a)に示すように、その伸縮方向の両端側に端部座巻部51a1,51a1を有するとともに、これら端部座巻部51a1,51a1間の略中央に中間座巻部51a2を有する。
前記座巻部51a1,51a1,51a2の各々は、付勢部材51aを構成する巻き線部分を、数巻き(例えば2〜8巻き)程度、前後に略密着させた部分である。
すなわち、押子30よりも開閉操作機能付クリップ40の重量が大きいため、前記のようにシャープペンシル用リフィール22の付勢部材51bの弾発力を強めに設定して、押子30と開閉操作機能付クリップ40との作動性のバランスを良好にしている。
この押子本体31の材質は、合成樹脂材料であればよく、本実施の形態の好ましい一例によれば、ポリアセタール(POM)が用いられている。
この押子本体31の後端側には、軸筒10外へ露出するように隆起した操作部31aが設けられる。更に、この押子本体31の最後端部には、後述する被当接部材60に当接されるように、後方向きの突起31bが設けられる。
なお、この突起31bの先端を角状に形成し、前記当接面積を更に小さくすることも可能であるが、本実施の形態の好ましい一例によれば、その突端面の比較的面積の小さな平坦面31b1(図2参照)とすることで、この突起31bが経たりや磨耗等により変形してしまうのを防いでいる。
詳細に説明すれば、この開閉操作機能付クリップ40は、前記押子30と略同様に軸筒10に対し進退するように設けられたクリップ支持体41と、該クリップ支持体41に対し揺動可能に支持された中間支持部材42と、該中間支持部材42における揺動支点部よりも後方側を軸筒遠心方向へ付勢する付勢部材43(図示例によればコイルスプリング)と、中間支持部材42に対し一体的に嵌合された金属製のクリップ部44とを具備し、クリップ部44の後端部が軸筒求心方向へ押圧された際に、クリップ部44の前端側を軸筒10外周面から離間させ、その押圧力が解除された際には、前記付勢部材43の付勢力によって元の状態(図1に示す状態)に復帰するようになっている。
クリップ支持体41の最後端部には、上記押子30における突起31bと略同様に、他の部分に比して著しく断面積が縮小された突起41aを有する。
この環状部材61は、軸筒10後端側の段状部分に環状に装着され、後述する有底筒状部62の筒部62aに押圧されることで、前後方向および周方向へ不動となるように固定される。
この底部62bは、本実施の形態の好ましい一例によれば、合成樹脂材料(詳細にはメタクリル酸メチル樹脂(略称PMMA))としているが、上記環状部材61や筒部62a同様の真鍮材とすることも可能である。
また、底部62bの他例としては、圧入や嵌合によって筒部62aの後端部に接続される構成であってもよい。
押子30(又は開閉操作機能付クリップ40)は、前方へスライド操作されると上記前進位置で係止部14に係止され、軸筒10前端から筆記部21a(又は22a)を突出した状態を維持する。
この係止状態は、前記押子30(又は開閉操作機能付クリップ40)が、前方へスライド操作された他の押子30(又は開閉操作機能付クリップ40)に干渉されることで、解除される。
この際の当接音は、耳障りに感じることの少ない重厚な低音、詳細には比較的周波数の低い音質となる。
この音質は、その当接する部材が合成樹脂材料で且つ比較的断面積の小さい突起31b(41a)と真鍮材である環状部材61であることに起因している。
更に、本実施の形態の好ましい一例では、被当接部材60が後方へ底部を向けた筒状であって且つ軸筒10の後端部を密閉していることにより、その密閉空間に前記当接音が閉じ込めるようにして、その音質をより重厚感のあるものにしている。
なお、図示例によれば、シャープペンシル用リフィール22側の付勢部材51bは、中間座巻部のないスプリングとしているが、このシャープペンシル用リフィール22側においても、前記付勢部材51aと同様の作用を得るために中間座巻部を設けてもよい。
より詳細に説明すれば、出没式筆記具Bにおける開閉操作機能付クリップ40’のクリップ支持体41’は、上述したクリップ支持体41から突起41aを省くとともに、後端側の凹部41bを軸筒10内後端側の凸部15(合成樹脂部分)に当接させるようにしている。
すなわち、開閉操作機能付クリップ40’の場合は、押子30よりも重量が大きく且つ金属製のクリップ部44を具備した構成であるため、金属製の被当接部材60に当接させる構造としなくても比較的重厚感のある当接音を得ることができる。
(実施例)
この実験に用いた実施例は、上記構成の出没式筆記具Bである。
この出没式筆記具Bにおいて、押子30を後方へ付勢する付勢部材51aは、例えば図4(a)に示すもののように、中間座巻部51a2を有するコイルスプリングである。筆記部21aが没入状態にある際に、前記コイルスプリング(付勢部材51a)のセット荷重は、約8.9gである。
この実験に用いた比較例は、図9に示すように、合成樹脂製の押子130の前端側部分を、合成樹脂製の軸筒110の周壁に当接するように構成してある。図9中の符号xで示す箇所が、押子130と軸筒110の当接箇所である。なお、押子130の後端側には当接箇所がない。
この比較例において押子130を後方へ付勢する付勢部材151aは、例えば図4(a)に示すもののように、中間座巻部を有するコイルスプリングである。筆記部21aが没入状態にある際に、前記コイルスプリング(付勢部材151a)のセット荷重は、約24gである。
前進位置にある押子30(又は130)の係止状態を、開閉操作機能付クリップ40のノック操作(シャープペンシルを突出させる操作)により解除し、その解除操作の直前から押子30(又は130)が後退した直後までの間、音圧レベルの変化波形を記録する。被試験品(実施例又は比較例)とマイクの距離は30cmとした(図6参照)。
マイク、測定器、及び実験場所等は、以下の通りである。
マイク:ブリュエル・ケアー社製Type4190
プリアンプ:ブリュエル・ケアー社製Type2669
音響分析装置:ブリュエル・ケアー社製Type3560B
実験場所:無響室内
実施例(本願発明品)については、図7に示す音圧レベルの波形が得られた。この波形において、比較的大きな最初の山p1は、開閉操作機能付クリップ40の前方へのスライドにより生じた音と考えられる。
比較的大きな2番目の山p2は、押子30の後端が被当接部材60に当接した際の音と考えられる。
比較的大きな3番目以降の山p2〜p7は、被当接部材60に当接した押子30が跳ね返って再度当接した際の音と考えられ、複数回繰り返されたものと考えられる。
最初の当接による山p2から最後の当接による山p7までの時間は、20msec以上であった。
聴覚的には、当接音全体が比較的長く余韻のある音として聞こえた。
比較的大きな2番目の山p2’は、押子130の前端側が軸筒110の周壁の当接箇所xに当接した際の音と考えられる。
比較的大きな3番目以降の山p3’〜p4’は、当接箇所xにおいて押子30が跳ね返って再度当接した際の音と考えられ、複数回繰り返されたものと考えられる。
最初の当接による山p2’から最後の当接による山p4’までの時間は、20msec以下であり、当接回数が実施例の場合よりも少なかった。
聴覚的には、当接音全体が比較的短かく鋭い音として聞こえた。
なお、上記実験では、実施例と比較例の双方で中間座巻部を有するコイルスプリング(図4(a)参照)を用いたが、仮に、実施例として中間座巻部を有するコイルスプリング(図4(a)参照)を用いるとともに比較例として中間座巻部を有さないコイルスプリング(図4(b)参照)を用いた場合には、前述した最初の当接による山から最後の当接による山までの時間は、中間座巻部を有するコイルスプリングを用いた実施例の方が、一層顕著に長くなるものと予想できる。
30:押子 31b:突起
40:開閉操作機能付クリップ(押子) 41:クリップ支持体
41a:突起 51:付勢部材
60:被当接部材 61:環状部材
62:有底筒状部 A:出没式筆記具
Claims (5)
- 合成樹脂製の押子が前方へスライド操作されることで筆記部を軸筒前端から突出し、同押子を付勢部材の付勢力によって後方へスライドさせることで前記筆記部を軸筒内へ没入するようにした出没式筆記具において、
軸筒の後端部には、後方へスライドした際の前記押子を当接させるように、開口部を前方へ向けるとともに底部を後方へ向けた有底筒状の被当接部材が設けられ、
この被当接部材は、少なくとも前記押子により当接される部分が金属材料によって形成され、軸筒後端部に対し前後方向へ不動であって、且つ軸筒後端部を密閉するようにして固定されていることを特徴とする出没式筆記具。 - 前記被当接部材は、その周壁部分の略全域が金属材料によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の出没式筆記具。
- 前記被当接部材は、前記押子に当接されるように軸筒後端側に環状に装着された環状部材と、該環状部材を後方から押圧するようにして軸筒後端側に螺合された有底筒状部とを具備してなることを特徴とする請求項1又は2記載の出没式筆記具。
- 前記金属材料が真鍮材であることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の出没式筆記具。
- 前記押子の後端側に後方向きの突起を設け、この突起の突端を前記被当接部材に当接するようにしたことを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の出没式筆記具。
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