以下には、図面を参照して、この発明の具体的な実施形態について説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に係る電気掃除機1の右側面図である。
以下、説明の便宜上、図1において左側を前方、右側を後方、手前側を左、奥側を右、上方を上、下方を下として説明し、電気掃除機1の各構成部材について説明する際も、その方向に従って、前後、左右および上下を区別しながら説明する。
電気掃除機1には、電気掃除機本体2、吸込ホース3、操作部4、吸込パイプ5および吸込具10が含まれている。
電気掃除機本体2には電動送風機(図3の42参照)が内蔵されていて、この電動送風機42により吸引力が発生する。電気掃除機本体2の正面側には吸込ホース3の一端側(後端側)に備えられた接続部6が着脱可能に連結されている。吸込ホース3は、可撓性を有し、任意の形態に曲げることができる。吸込ホース3の他端側(先端側)には操作部4が取り付けられている。操作部4は、吸込ホース3の軸方向に延びるパイプ部7と、パイプ部7から軸方向と交差方向後方へ延び出したグリップ8と、パイプ部7の中心軸に対して、グリップ8と反対側(180°隔たる側)に設けられたサブグリップ9とを具備している。そして、吸込ホース3の先端側と操作部4との間には回動機構11が介在されていて、操作部4と吸込ホース3とは、互いに軸回りに回動自在に連結されている。グリップ8の前方側には操作パネル30が備えられていて、操作パネル30には、後述する複数の操作キーが配列されている。
吸込パイプ5は、操作部4と吸込具10との間を連結する長手の、たとえば樹脂製のパイプである。吸込パイプ5は、その長さ方向ほぼ中央部を境に、先端側(吸込具10が取り付けられた側)12が、後端側(操作部4が接続された側)13内に同軸上に収納され、長さが可変できるように構成されている。この長さの可変は、吸込パイプ5の中央部に備えられたロックボタン14を操作することにより行うことができる。
吸込具10には、ハウジング20と、接続用の筒であるベンド21とが含まれていて、ベンド21は、ハウジング20に対して少なくとも上下方向に回動自在に取り付けられている。
なお、吸込パイプ5の後端側13は、操作部4から取り外し可能であり、操作部4を吸込具10のベンド21と直接連結することも可能である。
なお、図1において、100は、被清掃面としての床面を示している。
図2は、操作パネル30の構成を説明するための平面図である。前述したように、グリップ8の前方側には操作パネル30が配置されている。操作パネル30には、次の5つのキーが配列されている。
「切」キー31は、電気掃除機1の運転(電気掃除機1の全ての運転動作)を終了するときに操作される(押される)キーであり、電気掃除機1への電源供給の遮断信号を入力するためのキーである。
「強/中/弱」キー32は、電気掃除機1に対して運転開始信号を入力するとともに、運転モード(電動送風機42の吸引力の強さ)を入力するためのキーである。
「ブラシ切/入」キー33は、電気掃除機1が動作中(電動送風機42が動作中)において、吸込具10のハウジング20内に内蔵された回転ブラシ25(図4参照)の停止/回転を切り換える信号を入力するためのキーである。
「つける」キー34および「はずす」キー35は、吸込具10のハウジング20に内蔵された回転ブラシ25の周面にウェットシートを巻き付けて拭き掃除モードとする際に押されるとともに、巻き付けたウェットシートを外す際に押されるキーである。
図3は、電気掃除機1の電気的な構成を示すブロック図である。
操作パネル30に配列された5つのキー、すなわち「切」キー31、「強/中/弱」キー32、「ブラシ切/入」キー33、「つける」キー34、および、「はずす」キー35の信号は、それぞれ、制御部40へ与えられる。制御部40は、CPU、ROM、RAM等の電子回路等で構成されており、電気掃除機1の制御中枢として機能する。制御部40は、ドライバ41を介して電動送風機42の駆動を制御する。また、ドライバ43を介してブラシモータ44の駆動を制御する。ブラシモータ44は、吸込具10のハウジング20内に設けられた回転ブラシ25を回転させるためのモータである。
制御部40には、紙パックセンサ45からの信号が与えられる。電気掃除機本体2は、集塵容器として、紙パック、または塵挨を遠心分離して貯留する樹脂容器を択一的にセット可能になっている。そして、紙パックがセットされているか、樹脂容器がセットされているかは、センサ45の信号により判別される。制御部40では、後述するように、紙パックがセットされている場合には、ウェットシートの利用ができないように制御する。
電気掃除機1には、さらに、電源回路46が含まれており、商用電源から供給される電力は、電源回路46を介してドライバ41,43へ供給される。
図4(A)および図4(B)は、吸込具10の右側面縦断面図を示す。吸込具10は、ハウジング20およびベンド21を含んでいる。ハウジング20の前方には、開閉可能なシャッター22が備えられている。ハウジング20とシャッター22とによって収容室23が区画されている。収容室23は、吸込具10が被清掃面100上に配置された清掃可能な状態において、被清掃面100と対向する吸込口24を有する。収容室23内には、吸込口24に臨むように、回転ブラシ25が収容されている。
回転ブラシ25は、図4(A)に示すように、左回りに回転(正回転)し、被清掃面100上の塵挨を収容室23へと掻き上げることができる。収容室23の後方には連通口26が形成されていて、回転ブラシ25により掻き上げられた塵挨や吸い込まれた空気は連通口26を通り、ベンド21内の流路21aを通って電気掃除機本体2(図示1参照)へと吸い込まれる。
回転ブラシ25は、収容室23内において、収容室23の幅方向、すなわちハウジング20の左右方向(紙面に垂直方向)に延びる回転軸27と、回転軸27の周面に植立されたブラシ28(28a,28b)と、回転軸27の周面に植立された絡み防止用ブレードとしてのウイングクロス29とを備えている。
ブラシ28は、突出先端の幅(回転軸27の周方向の寸法)が相対的に広い第1ブラシ28aと、当該幅が相対的に狭い第2ブラシ28bとの2種類が設けられ、回転軸27の回転中心に対して180°隔たる対称位置に対をなすように植立されている。
ウイングクロス29も、回転軸27の回転中心に対して180°隔たる位置に対をなすように植立されている。ウイングクロス29は、柔軟性のある材料、たとえば片面が起毛された起毛布で構成されている。ウイングクロス29は、回転軸27周面からの突出寸法が、ブラシ28の突出寸法よりも大きくされている。
回転ブラシ25が正回転すると、図4(A)に示すように、ウイングクロス29およびブラシ28は回転方向後方側へ撓う。制御部40によりブラシモータ44を制御し、回転ブラシ25を、図4(B)に示すように右回転(逆回転)させることもできる。回転ブラシ25が逆回転中は、図4(B)に示すように、ウイングクロス29およびブラシ28は、正回転時と逆方向に撓う。
図5(A)は、回転ブラシ25が正回転するときのウイングクロス29の広がり具合(遠心力による広がり具合)を示し、図5(B)は、回転ブラシ25が正逆回転(正回転/逆回転を交互に切り換えたとき)するときのウイングクロス29の広がり具合を示す。
図5の(A)および(B)の対比から明らかなように、ウイングクロス29は、回転ブラシ25が正回転/逆回転に交互に切り換わるときに、回転軸27から放射方向に広がり、回転軸27の周面にまとわりついている髪の毛や糸くずなどの長尺塵を回転軸27から浮き上がらせ、長尺塵が回転軸27に絡みつかないように機能し得ることがわかる。
図6(A)および図6(B)は、吸込具10の右側面縦断面図であり、回転ブラシ25の周囲に髪の毛や糸等が絡んだ状態(A)および回転ブラシ25の周囲に絡んだ髪の毛や糸がほどかれて外れる様子(B)を図解的に表わしている。
図6(A)に示すように、回転ブラシ25が正回転し、通常の清掃が行われる間に、回転ブラシ25に髪の毛や糸等が絡む。
そこで、所定のタイミング、たとえば清掃の開始時、すなわち回転ブラシ25を回転開始させる際、あるいは、たとえば特定のスイッチを操作したタイミングに基づき、回転ブラシ25を正回転/逆回転に交互に回転させれば、図6(B)に示すように、回転ブラシ25に絡んだ糸等がほどかれて外れ、外れた糸等は連通口26および流路21aを通って電気掃除機本体2へと吸い込まれる。
この実施形態に係る電気掃除機1では、回転ブラシ25に髪の毛や糸等が絡みつかないように、所定のタイミングで、自動的に、回転ブラシ25を正回転/逆回転させる制御を一定時間行う。かかる制御は、図3で説明した制御部40により実行される。
図7は、図3に示す制御部40により実行される制御動作の一例を示すフローチャートであり、図6で説明したように、回転ブラシ25に絡んだ髪の毛や糸等をほどいて外すための制御内容を表わす。
図3および図6を参照しながら、図7の流れに従って説明をする。
制御部40は、スタート信号が与えられたか否かの判別をする(ステップS1)。この実施形態では、「強/中/弱」キー32が押されることにより、スタート信号が制御部40に与えられるとともに、「強/中/弱」キー32を押す回数に応じて、電動送風機42を強運転→中運転→弱運転→強運転する旨の信号が、サイクリックに切り換えられて制御部40へ与えられる。
制御部40は、スタート信号の入力を判別すると、たとえばRAMに設けられた駆動フラグをオンし(ステップS2)、タイマをスタートさせ(ステップS3)、電動送風機42を強運転させる(ステップS4)。すなわち、この実施形態では、「強/中/弱」キー32が押されると、その押圧回数にかかわらず、まず、電動送風機が強運転される。
そして、ブラシモータ44が、T1秒間正転(ステップS5)、T2秒間停止(ステップS6)、T3秒間逆転(ステップS7)、T4秒間停止(ステップS8)と駆動され、この駆動はタイマが予め定める時間T0 を計時するまで行われる(ステップS9)。
ここに、T1=0.2秒、T2=0.2秒、T3=0.5秒、T4=0.2秒を例示できる。この制御により、電気掃除機1の駆動開始時には、回転ブラシ25がT0 秒間正回転/逆回転が交互に切り換えられ、図6で説明したように、回転ブラシ25に髪の毛や糸が絡んでいても、その絡んだ髪の毛や糸がほどかれる。また、回転ブラシ25の正回転/逆回転と連動して、電動送風機42が強運転されるので、強い吸引力が働き、回転ブラシ25からほどかれる髪の毛や糸等は、確実に電気掃除機本体2へと吸い込まれる。つまり、回転ブラシ25が正回転/逆回転を繰り返し、髪の毛や糸がほどかれる動作と相挨って、強い吸引力が生じるので、髪の毛や糸を回転ブラシ25から離すことができる。
この実施形態では、ステップS3においてタイマをスタートさせ、ステップS9においてタイマがT0 秒を計時したかを判別するようにしているが、タイマに代えて、ステップS5〜S8の処理が何回行われたかを計数するようにして、ステップS5〜S8の動作が所定回数(たとえば5回)行われたときに、処理がステップS10へ進むようにしてもよい。
この実施形態では、回転ブラシ25を駆動させているブラシモータ44の耐久性を向上させるために、回転ブラシ25の正回転/逆回転の切り換え時において、停止時間T2、T4を導入しているが、ブラシモータ44が、停止期間をおかずに回転方向を切り換えても、所望の使用期間を保証できるものであれば、停止時間は設けなくてもよい。また、T1、T2、T3、T4は任意に設定可能である。
ステップS10では、タイマがクリアされて停止され、電動送風機42がオフされ、ブラシモータ44もオフされる。つまり、電気掃除機1の駆動が一旦停止される。そして制御部40は、駆動フラグがオンしているか否かの判別をする。この制御動作では、駆動フラグはステップS2でオンされているので、制御はステップS12へ進み、通常の駆動制御が行われる。すなわち、スタート信号と共に与えられた「強/中/弱」キー32の押圧回数に基づき、入力信号に応じた吸引力になるように電動送風機42が駆動される。
また、通常の駆動制御では、操作パネル30の「ブラシ切/入」キー33が押されるごとに、回転ブラシ25が正回転するか、停止するかが切り換えられる。かかる通常の駆動制御により、電気掃除機1による清掃が実行される。
清掃が終わると、ユーザは操作パネル30の「切」キー31を押す。制御部40は切信号が入力されたことを判別すると(ステップS13でYES)、駆動フラグをオフし、電動送風機42およびブラシモータ44を停止させる。
以上の制御によれば、電気掃除機1の運転開始時に、回転ブラシ25が正回転/逆回転に交互に切り換えられて、電動送風機42が強運転され、回転ブラシ25に絡みついた髪の毛や糸等がほどかれて除去されるので、その後の清掃を、回転ブラシ25に髪の毛や糸等が巻きついていない状態で良好に行うことができる。
電気掃除機1は、スタート信号が与えられたときに、回転ブラシ25を正回転/逆回転させる制御を行うのに代えて、たとえば特定キー(図2の操作パネル30に設けた5つのキー以外のキー)を設け、そのキーが押されたときに、制御部40がそれを判別し(ステップS15)、特定キーの信号入力に応じて、ステップS3〜S10の制御処理が行われる構成としてもよい。
その他のタイミング、たとえば「強/中/弱」キー32が押されて、電動送風機42の吸引力が切り換えられるごとに、あるいは、「ブラシ切/入」キー33が押されて、回転ブラシ25が回転開始されるとき、あるいはその回転が停止されるときに、回転ブラシ25を正逆回転させ、回転ブラシ25に絡んだ髪の毛や糸などをほぐして除去する処理が行われてもよい。
次に、図8〜図14を参照して、上述した電気掃除機1を用い、吸込具10の回転ブラシ25の周面にウェットシートを巻き付けて、拭き掃除を行うための構成および制御動作について説明をする。
「ウェットシート」は、昨今、主として個人住宅のフローリング等を清掃するのに利用されている清掃用シートで、一般に、不織布に水分およびアルコール分が含浸された清掃用のシートである。たとえば「クイックルワイパ」(登録商標)がよく知られている。ウェットシートは、専用の器具(棒の先に長方形の装着板が設けられたもの)に取り付け、フローリング等の床面を拭くのに利用されている。
本願出願人は、かかるウェットシートを、電気掃除機に装着できるようにして、電気掃除機によって、ウェットシートによる拭き掃除も行えるようにすることを考え、かかる構成を既に提案している(特許文献3参照)。
この実施形態は、既提案とは異なり、電気掃除機の吸込具10に設けられた回転ブラシ25にウェットシートを巻き付けることによって、ウェットシートを利用した拭き掃除が行える構成および制御方法を提案するものである。
図8A〜図8Dは、吸込具10に、ウェットシート50を装着して拭き掃除を行う手順を表わす図である。
図8Aに示すように、床面100にウェットシート50を拡げて置き、ウェットシート50の先端寄りの位置に回転ブラシ25が対向するように、ウェットシート50上に吸込具10を載せる。その状態で、操作パネル30(図2参照)「つける」キー34を押す。
この操作に応じ、回転ブラシ25および電動送風機42が所定の態様で駆動されて、図8Bに示すように、回転ブラシ25の周面にウェットシート50が巻き付けられる。より具体的には、「つける」キー34の押圧に応じて、回転ブラシ25が所定の回転速度で正回転される。これにより、ウェットシート50は、その先端側から回転する回転ブラシ25の周面に巻き付けられて、図8Bに示すように、回転ブラシ25に巻き回された状態となる。
ウェットシート50には、水分およびアルコール分が含浸されているため、回転ブラシ25に巻き付けられる際に、ウェットシート50に遠心力が作用し、含浸している水分やアルコール分の一部がウェットシート50から飛散する。そのため、飛散する水分やアルコール分が床面100に飛び散らないように、連通口26からベンド21内へ吸い込まれるように、電動送風機42が動作されるのが望ましい。その際、電動送風機42の吸引力が強く、ウェットシート50から飛散する水分やアルコール分が電気掃除機本体2内にまで達すると好ましくない。
そこで、電動送風機42がごく弱い吸引力を生じ、飛散する水分やアルコール分は吸込具10の連通口26からベンド21の前方寄りの位置まで入り、ベンド21の下方側に形成された小孔51から落滴し、そこに配置された吸湿部材52に捕獲されるようにするのが望ましい。
図8Cに示すように、回転ブラシ25にウェットシート50が巻き付けられた後は、回転ブラシ25が所定の回転速度で正回転され、かつ、電動送風機により所定の吸引力が発生されることにより、ウェットシート50によって床面100の拭き掃除を行うことができる。拭き掃除期間中は、ウェットシート50から水分やアルコール分が飛散することはない。ウェットシート50から水分やアルコール分が飛散するのは、ウェットシート50を回転ブラシ25に巻き付ける際のみである。
拭き掃除が終了したときには、操作パネル30の「はずす」キー35が押される。これに応じて、制御部40によって、回転ブラシ25が正回転/逆回転を交互にするように駆動制御され、かつ、吸引力が強になるように電動送風機42が駆動される。
回転ブラシ25は、その周囲に髪の毛や糸くずが絡まった場合に、正回転/逆回転されると、絡まった髪の毛や糸がほどけて外れる旨説明した。同様に、図8Dに示すように、回転ブラシ25が正回転/逆回転を回転され、吸引力が強にされると、巻きついたウェットシートが自動的に回転ブラシ25から離れて、電気掃除機本体2へ吸い込まれる。
図9に、回転ブラシ25が正回転/逆回転するとき、回転ブラシ25に巻きついたウェットシート50が外れていく様子を図解的に示す。
図9の(A)は、回転ブラシ25が正回転中のウェットシート50を示し、(B)(C)は、回転ブラシ25が正回転/逆回転交互に反転することにより、回転ブラシ25の周面から外れるウェットシート50の様子を示す。
図10は、図3に示す制御部40によって実行される拭き掃除モードの制御内容を表わすフローチャートである。図3に示すブロック図および図8A〜図9を必要に応じて参照しながら、図10の流れに従って拭き掃除モードの制御内容を説明する。
制御部40により、操作パネル30に設けられた「つける」キー34が押されて、「つける」キーからの信号入力ありか否かの判別がされる(ステップS21)。
「つける」キー34の信号入力ありと判別されたときには、「強/中/弱」キー32および「ブラシ切/入」キー33からの入力の受付は禁止し(ステップS22)、電動送風機42が微弱運転され(ステップS23)、紙パックセンサ45がオンか否かの判別がされる(ステップS24)。
紙パックセンサ45は、電気掃除機本体2に紙パックがセットされているとオフするセンサであり、センサ45がオンであれば、紙パックではなく樹脂容器が集塵機能としてセットされていると判別されて、拭き掃除モードが進行する。
センサ45がオンでなければ、電気掃除機本体2に紙パックがセットされていると判別され、拭き掃除モードには進めない。
この点については、後に詳述する。
次いで、ブラシモータ44が、回転速度N1で正回転される(ステップS25)。
このときのブラシモータ44の回転速度N1は、回転ブラシ25を回転させ、その周面にウェットシート50を巻き付け、巻き付けられたウェットシートを回転させながら拭き掃除を行うのに適した回転速度である。具体的には、通常の回転速度よりもやや低い、遅めの回転速度で回転ブラシ25が回転されるように、ブラシモータ44の回転速度N1が制御される。よって、ウェットシート50が回転ブラシ25に巻き付けられ、ウェットシート50が巻き付けられた回転ブラシ25が回転され、フローリング等の拭き掃除が行われる。その際、電動送風機42は、微弱な吸引力を発生しており、被清掃面100(フローリング等)に存在する塵挨は、ウェットシート50で拭き取られるほか、電気掃除機本体2へも吸引されて捕獲される。
拭き掃除が終了し、「はずす」キー35が押されると、制御部40は、はずす信号ありとの判別をし(ステップS26でYES)、カウンタを「1」とし(ステップS27)、電動送風機42の吸引力を強にし(ステップS28)、ブラシモータ44をT1秒間正回転させ(ステップS29)、次いでブラシモータ44をT2秒間停止させ(ステップS30)、ブラシモータ44をT3秒間逆回転させ(ステップS31)、ブラシモータ44をT4秒間停止させる(ステップS32)というブラシモータ44の正回転および逆回転処理を行って、カウンタが所定の値か否かの判別をする(ステップS33)。このとき、カウンタは「1」であるから、ステップS27に戻り、カウンタを「1」インクリメントして(ステップS27)、ブラシモータ44の正回転および逆回転処理を行う。
そして、カウンタが予め設定された値、たとえば「5」になるまで、ブラシモータ44の正回転および逆回転が交互に繰り返される。
ブラシモータ44の正回転および逆回転の繰り返しにより、回転ブラシ25が正回転および逆回転されて、回転ブラシ25に巻きついているウェットシート50がほぐれて外され、電動送風機42による強吸引力によって、回転ブラシ25から外れたウェットシート50は電気掃除機本体2へと吸い込まれる。
そしてステップS33において、カウンタが予め設定された値になったときには、ブラシモータ44および電動送風機42がオフされて(ステップS34)、拭き掃除モードは終了する。
図1に示す電気掃除機本体2は、集塵機能として、紙パックをセットすることができるとともに、塵挨を遠心分離して貯留する樹脂容器であるいわゆるサイクロンユニットをセットすることもできる。いずれがセットされているかは、内蔵のセンサ15により検知することができ、上述の実施形態では、紙パックがセットされている場合には、ウェットシート50を用いた拭き掃除モードは拒否されるため、ウェットシート50が紙パック内に吸い込まれることはない。従って、ウェットシート50の水分による紙パックの破れを防止できる。
次に、図1に示す電気掃除機本体2とは異なる種類の電気掃除機本体を参照して、電気掃除機本体に、紙パックをセットした場合と、サイクロンユニットをセットした場合とを、どのようにセンサで判別するかについて、その構成を具体的に説明する。
図11は、電気掃除機本体60において、紙パック61がセットされた状態の断面図であり、図12は、電気掃除機本体60において、サイクロンユニット62がセットされた状態の断面図である。
図11および図12を参照して、電気掃除機本体60には電動送風機63が内蔵されている。電動送風機63の前方側には集塵空間64が形成されている。集塵空間64は、気密空間となっていて、吸込ホース3が取り付けられる入口65から入った空気は、集塵空間64外部に漏れることなく、電動送風機63で吸引されて出口66から電動送風機63へと流れる。このため、入口65の周囲にはたとえばシールパッキン67が備えられている。
図11に示すように、紙パック61がセットされた場合には、紙パック61の口紙61aがシールパッキン67に圧接され、入口65の周囲が密封される。そして電動送風機63が駆動されると、集塵空間64内全体(グレーで着色した領域)が負圧となる。この領域内に、センサ45が配置されている。
一方、図12に示すように、サイクロンユニット62がセットされた場合には、サイクロンユニット62の入口68がシールパッキン67に圧接されて、入口65がシールされる。サイクロンユニット62は、その内部空間が気密的に構成されている。よって電動送風機63が動作されると、その吸引力によってサイクロンユニット62の内部空間(グレーで示した領域)は負圧となるが、集塵空間64全体が負圧になるわけではない。
このため、センサ45は、図13に示すように、紙パック61がセットされた場合(A)と、サイクロンユニット62がセットされた場合(B)とで、異なる状態となる。
図13を参照して、集塵空間64を構成する壁面641には、センサ45用の取付孔642が形成されている。取付孔642にはシールパッキン643を介してホルダ71が装着されている。ホルダ71はたとえば円筒状のスライド室72を備えており、スライド室72内に摺動自在にピストン73が設けられている。ピストン73は、コイルばね74によって、図において左方向にスライドするように付勢されている。
ピストン73が(B)に示すように左方向にスライドした状態では、ピストン73の作用杆75がホルダ71から左方へ突出し、マイクロスイッチ76のアクチュエータ77を変位させて、マイクロスイッチ76をたとえばオン状態としている。
ところで、紙パックがセットされた状態では、(A)に示すように、集塵空間64内全体が負圧となる。このため、スライド室72内における集塵空間64と連通した空間(ピストン73の右側の空間)は負圧となり、この負圧によりピストン73は、コイルばね74の弾力に抗して右側へスライドされて(A)の状態となる。よって作用杆75がアクチュエータ77から離れて、マイクロスイッチ76はたとえばオフ状態に切り換わる。
一方、サイクロンユニットがセットされた状態(B)では、集塵空間64全体が負圧となるわけではなく、上述したようにサイクロンユニット62内の空間のみが負圧となるので、ピストン73は右方向へスライドされない。
以上の原理により、マイクロスイッチ76のオンまたはオフを判別することによって、紙パックがセットされているか否かを検出することができる。
なお、紙パックがセットされているか否かを検出するセンサ45の構成は、図13に示すものに限らず、他の構成を採用することも可能である。
ところで、ウェットシート50を巻き付ける際には、専用のキーである「つける」キー34を押せばよいが、ユーザが誤ってたとえば「強/中/弱」キー32を押してウェットシート50を装着しようとする場合も考えられる。そこでそのような操作をしても、ウェットシート50の巻き付けが行われないようにした、いわゆるポカよけ機構を有する変形例について、以下説明をする。
図14は、ポカよけ機構が付加された吸込具10の右側面縦断面図である。図14に示す吸込具10には、ハウジング20内に形成された収容室23内に、連通口26の入口に関連して、引っ掛かりリブ55が設けられている。この引っ掛かりリブ55がポカよけのための邪魔部材である。この実施形態では、吸込具10は、ウェットシート50を巻き付ける際には、図において右回転(逆回転)される。回転ブラシ25が逆回転すると、その周囲にウェットシート50が良好に巻き回される(図14(B))。
一方、回転ブラシ25が正回転する場合は、ウェットシート50は巻き付けることができない。なぜなら、図14(A)に示すように、正回転する回転ブラシ25にウェットシート50を巻き付けようとすると、回転ブラシ25に案内されるウェットシート50が引っ掛かりリブ55の下端とぶつかり、ウェットシート50は回転ブラシ25の周面ではなく、連通口26方向へ案内される。
電気掃除機1において、「ブラシ切/入」キー33によって回転ブラシ33が回転されるときには、回転ブラシ25は正回転される。よって、ユーザが誤って「ブラシ切/入」キー33を押し、ウェットシート50を巻き付けようとしても、ウェットシート50は回転ブラシ25に巻きつくことなく、集塵室へと回収される。
図15は、ポカよけのための邪魔部材の他の例を示す。図5の構成では、収容室23内に、回転ブラシ25の周面と対向するように、斜め起毛布56が設けられている。斜め起毛布56は、正回転する回転ブラシ25により逆毛が立つように毛並みが植立されている。よって、正回転する回転ブラシ25にウェットシート50を巻きつけようとしても、巻きつきが阻止される(図15(A))。
一方、回転ブラシ25が逆回転する場合は、回転ブラシ25の周囲に巻きつこうとするウェットシート50の巻きつきは阻止されず、ウェットシート50は回転ブラシ25の周面にスムーズに巻きつく(図15(B))。
このように、斜め起毛布56を用いることによっても、正回転する回転ブラシ25へのウェットシート50の巻きつきを阻止することができる。
図16は、ポカよけのための邪魔部材のさらに他の例を示す図である。図16のポカよけ機構は、吸込具10を構成するシャッター22にエアインテーク57を形成したものである。
電動送風機が動作して吸引力が発生されている状態では、吸込口24から空気が吸い込まれるとともに、エアインテーク57からも補助的に空気が吸い込まれる。エアインテーク57から吸い込まれる空気は、回転ブラシ25の上面側を、図において左から右方向へと流れる。
回転ブラシ25が正回転しているときに、ウェットシート50を巻き付けようとしても、ウェットシート50はエアインテーク57から流入する吸引風により回転ブラシ25への巻きつきを阻害される(図16(A))。
一方、回転ブラシ25が逆回転している場合は、回転ブラシ25周面への巻きつき方向とエアインテーク57から吸い込まれる吸引風の方向とが同方向となり、ウェットシート50は回転ブラシ25の周面に良好に巻き回される(図16(B))。
以上説明した図14〜図16のように、通常の清掃時の回転ブラシ25の回転方向である正回転とは反対の逆回転時に、ウェットシート50を回転ブラシ25周面に巻き付ける構成とし、かつ、回転ブラシ25が正回転時には、ウェットシートの巻きつきを阻止する邪魔部材(たとえば引っ掛かりリブ55、斜め起毛布56またはエアインテーク57等)を設けることによって、いわゆるポカよけ機構を搭載した吸込具10を実現することができる。
上述した実施形態では、吸込具10の回転ブラシ25は、ウイングクロス29を備えているので、ウイングクロス29の作用により、回転ブラシ25に巻きついた髪の毛、糸、ウェットシート50等を容易に外せる旨説明したが、回転ブラシ25にウイングクロス29が備えられていない場合であっても、回転ブラシ25に巻き付いた髪の毛、糸、ウェットシート等を自動的に外すことが可能である。なぜなら、回転ブラシ25を所定の態様で正回転/逆回転交互に切り換え、その際に電動送風機による吸引力を強とすることによって、回転ブラシに巻きついた髪の毛、糸、ウェットシート等が徐々にほぐれ、ほぐれた髪の毛、糸、ウェットシート等は、強い吸引力で吸引されるので、回転ブラシから外れるからである。
以下には、図面を参照して、この発明の他の実施形態について説明をする。
尚、前述した実施形態と同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。
図17は、操作パネル200の構成を説明するための平面図である。前述した実施形態と同様に、グリップ8の前方側には操作パネル200が配置されている。操作パネル200には、次の5つのキーが配列されている。
「切」キー201は、電気掃除機1の運転(電気掃除機1の全ての運転動作)を終了するときに操作される(押される)キーであり、電気掃除機1への電源供給の遮断信号を入力するためのキーである。
「強/中/弱」キー202は、電気掃除機1に対して運転開始信号を入力するとともに、運転モード(電動送風機42の吸引力の強さ)を入力するためのキーである。
「ブラシ切/入」キー203は、電気掃除機1が動作中(電動送風機42が動作中)において、吸込具10のハウジング20内に内蔵された回転ブラシ25(図4参照)の停止/回転を切り換える信号を入力するためのキーである。
「つける/ふく」キー204および「はずす」キー205は、吸込具10のハウジング20に内蔵された回転ブラシ25の周面にシートを巻き付けて拭き掃除モードとする際に押されるとともに、巻き付けたシートを外す際に押されるキーである。
図18は、電気掃除機1の電気的な構成を示すブロック図である。
操作パネル200に配列された5つのキー、すなわち、「切」キー201、「強/中/弱」キー202、「ブラシ切/入」キー203、「つける/ふく」キー204、および、「はずす」キー205の信号は、それぞれ、制御部40へ与えられる。制御部40は、CPU、ROM、RAM等の電子回路等で構成されており、電気掃除機1の制御中枢として機能する。制御部40は、ドライバ41を介して電動送風機42の駆動を制御する。また、ドライバ43を介してブラシモータ44の駆動を制御する。ブラシモータ44は、吸込具10のハウジング20内に設けられた回転ブラシ25を回転させるためのモータである。
制御部40には、紙パックセンサ45からの信号が与えられる。電気掃除機本体2は、集塵容器として、紙パック、または塵埃を遠心分離して貯留する樹脂容器を択一的にセット可能になっている。そして、紙パックがセットされているか、樹脂容器がセットされているかは、センサ45の信号により判別される。制御部40では、後述するように、紙パックがセットされている場合には、シートの利用ができないように制御する。
電気掃除機1には、さらに、電源回路46が含まれており、商用電源から供給される電力は、電源回路46を介してドライバ41、43へ供給される。
この実施形態に係る電気掃除機1でも、前述の実施形態に係る電気掃除機と同様に、回転ブラシ25に髪の毛や糸等が絡みつかないように、所定のタイミングで、自動的に、回転ブラシ25を正回転/逆回転させる制御を一定時間行う。かかる制御は、図18で説明した制御部40により実行される。
図19は、図18に示す制御部40により実行される制御動作の一例を示すフローチャートであり、前述の実施形態に係る図6で説明したように、回転ブラシ25に絡んだ髪の毛や糸等をほどいて外すための制御内容を表わす。また、回転ブラシ25外周にシートを巻き付けて掃除を行ったまま、シートを外し忘れて絨毯等を掃除しようとした際に、シートを外すための制御も行う。
図18および図6を参照しながら、図19の流れに従って説明する。
制御部40は、スタート信号が与えられたか否かの判別をする(ステップS101)。この実施形態では、「強/中/弱」キー202が押されることにより、スタート信号が制御部40に与えられるとともに、「強/中/弱」キー202を押す回数に応じて、電動送風機42を強運転→中運転→弱運転→強運転する旨の信号が、サイクリックに切り換えられて制御部40へ与えられる。
制御部40は、スタート信号の入力を判別すると、たとえばRAMに設けられた駆動フラグをオンし(ステップS102)、タイマをスタートさせ(ステップS103)、電動送風機42を強運転させる(ステップS104)。すなわち、この実施形態では、「強/中/弱」キー202が押されると、その押圧回数にかかわらず、まず、電動送風機が強運転される。
そして、ブラシモータ44が、T1秒間正転(ステップS105)、T2秒間停止(ステップS106)、T3秒間逆転(ステップS107)、T4秒間停止(ステップS108)と駆動され、この駆動はタイマが予め定める時間T0を計時するまで行われる(ステップS109)。
ここに、T1=0.2秒、T2=0.2秒、T3=0.5秒、T4=0.2秒を例示できる。この制御により、電気掃除機1の駆動開始時には、回転ブラシ25がT0秒間正回転/逆回転が交互に切り換えられ、図6で説明したように、回転ブラシ25に髪の毛や糸が絡んでいても、その絡んだ髪の毛や糸がほどかれる。また、回転ブラシ25の正回転/逆回転と連動して、電動送風機42が強運転されるので、強い吸引力が働き、回転ブラシ25からほどかれる髪の毛や糸等は、確実に電気掃除機本体2へ吸い込まれる。つまり、回転ブラシ25が正回転/逆回転を繰り返し、髪の毛や糸がほどかれる動作と相挨って、強い吸引力が生じるので、髪の毛や糸を回転ブラシ25から離すことができる。
また、回転ブラシ25外周にシートを巻き付けて拭き掃除を行ったまま、シートを外し忘れていた場合には、後述するように、回転ブラシ25が正回転/逆回転をすることにより、シートの巻き付きが緩み、電動送風機42の強い吸引力によりシートが吸引される。従って、シートを外し忘れてシートを巻き付けた状態のまま、絨毯等の被掃除面を掃除する不具合を解消することができる。
この実施形態では、ステップS103においてタイマをスタートさせ、ステップS109においてタイマがT0秒を計時したかを判別するようにしているが、タイマに代えて、ステップS105〜S108の処理が何回行われたかを計数するようにして、ステップS105〜S108の動作が所定回数(たとえば5回)行われたときに、処理がステップS110へ進むようにしてもよい。
この実施形態では、回転ブラシ25を駆動させているブラシモータ44の耐久性を向上させるために、回転ブラシ25の正回転/逆回転の切り換え時において、停止時間T2、T4を導入しているが、ブラシモータ44が、停止期間をおかずに回転方向を切り換えても、所望の使用期間を保証できるものであれば、停止時間は設けなくてもよい。また、T1、T2、T3、T4は任意に設定可能である。
次に、制御はステップS110へ進み、通常の駆動制御が行われる。すなわち、スタート信号と共に与えられた「強/中/弱」キー202の押圧回数に基づき、入力信号に応じた吸引力になるように電動送風機42が駆動される。
また、通常の駆動制御では、操作パネル200の「ブラシ切/入」キー203が押されるごとに、回転ブラシ25が正回転するか、停止するかが切り換えられる。かかる通常の食おう制御により、電気掃除機1の夜清掃が実行される。
清掃が終わると、ユーザは操作パネル200の「切」キー201を押す。制御部40は切信号が入力されたことを判別すると(ステップS111でYES)、駆動フラグをオフし、電動送風機42およびブラシモータ44を停止させる。
以上の制御によれば、電動送風機1の運転開始時に、回転ブラシ25が正回転/逆回転に交互に切り換えられて、電動送風機42が強運転され、回転ブラシ25に絡みついた髪の毛や糸等がほどかれて除去されるので、その後の清掃を、回転ブラシ25に髪の毛や糸等が巻きついていない状態で良好に行うことができる。
また、シートを回転ブラシ25から外し忘れてシートを巻き付けたまま絨毯等の被掃除面を掃除する不具合を開所することができる。
電気掃除機1は、スタート信号が与えられたときに、回転ブラシ25を正回転/逆回転させる制御を行うのに代えて、たとえば特定キー(図17の操作パネル200に設けた5つのキー以外のキー)を設け、そのキーが押されたときに、制御部40がそれを判別し(ステップS113)、特定キーの信号入力に応じて、ステップS103〜S110の制御処理が行われる構成としてもよい。
その他のタイミング、たとえば「強/中/弱」キー202が押されて、電動送風機42の吸引力が切り換えられるごとに、あるいは、「ブラシ切/入」キー203が押されて、回転ブラシ25が回転開始されるとき、あるいはその回転が停止されるときに、回転ブラシ25を正逆回転させ、回転ブラシ25に絡んだ髪の毛や糸などをほぐして除去する処理が行われてもよい。
次に、図20〜図23を参照して、上述した電気掃除機1を用い、吸込具10の回転ブラシ25の周面にシートを巻き付けて、拭き掃除を行うための構成および制御動作について説明をする。
「シート」は、布や紙、例えばフローリングシートなどの塵埃を吸着し得る吸着シートである。
本願出願人は、かかるシートを、電気掃除機に装着できるようにして、電気掃除機によって、シートによる拭き掃除も行えるようにすることを考え、かかる構成を既に提案している(特許文献4参照)。
この実施形態は、電気掃除機の吸込具10に設けられた回転ブラシ25にシートを巻き付けることによって、シートを利用した拭き掃除が行える構成および制御方法を提案するものである。
図20A〜図20Dは、吸込具10に、シート50を装着して拭き掃除を行う手順を表わす図である。
図20Aに示すように、床面100にシート50を広げて置き、シート50の先端寄りの位置に回転ブラシ25が対面するように、シート50上に吸込具10を載せる。その状態で、操作パネル200(図17参照)「つける/ふく」キー204を押す。
この操作に応じ、回転ブラシ25および電動送風機42が所定の態様で駆動されて、図20Bに示すように、回転ブラシ25の周面にシート50が巻き付けられる。より具体的には、「つける/ふく」キー204の押圧に応じて、回転ブラシ25が所定の回転速度で正回転される。これにより、シート50は、その先端側から回転する回転ブラシ25の周面に巻き付けられて、図20Bに示すように、回転ブラシ25に巻き回された状態となる。
電動送風機42は、ブラシモータ44の起動から所定時間、本実施形態では、回転ブラシ25にシートが巻き付けられた状態となるまでに要する時間を所定時間とし、具体的には、略2秒経過後に起動するようになっている。
回転ブラシ25と同時に電動送風機42が駆動された場合には、回転ブラシ25にシート50が巻き付けられる際に、電動送風機42によりシート50が吸引され、特に連通口26に対向するシートの中央部分が強く吸引されてシート50が回転ブラシ25外周に均一に巻き付けられない場合がある。
本実施形態では、回転ブラシ25にシートが巻き付けられた後に、電動送風機42が起動されるため、電動送風機42の吸引力によりシート50が均一に巻き付けられないという課題を解決することができる。
図20Cに示すように、回転ブラシ25にシート50が巻き付けられた後は、回転ブラシ25が所定の回転速度で正回転され、かつ、電動送風機により所定の吸引力が発生されることにより、シート50によって床面100の拭き掃除を行うことができる。
この拭き掃除状態において、「ブラシ切/入」キー203が操作可能となる。シート50を巻き付ける際、シート50が回転ブラシ25に対してまっすぐに巻き付けられず、斜めに巻き付けられたり、拭き掃除をしている間に、シート50が回転ブラシ25に対して偏るなどして、回転ブラシ25に対してシート50が不均一になる場合があり、この場合、回転ブラシ25を回転させると、振動を大きく感じる場合がある。
このような場合には、使用者が、「ブラシ切/入」キー203を操作して、回転ブラシ25の回転を停止させ、停止させた状態で拭き掃除を行う。回転ブラシ25は被掃除面との摩擦抵抗により回転し、シート50全周を利用して拭き掃除を行うことができる。
吸込具10には、被掃除面との接触を検出する図示しないセンサが設けられており、吸込具10が被掃除面から持ち上げられた際には、回転ブラシ25の回転を停止し、回転ブラシ25に手指等が接触してけが等が生じるのを防止している。吸込具10を被掃除面から持ち上げた状態で、電動送風機42の駆動を継続する構成では、回転ブラシ25外周に巻き付けられたシートの端部が連通口26近傍に位置した場合、シート端部が吸引力によりばたついて異音が生じる虞がある。
本実施形態では、吸込具10を被掃除面から持ち上げた際には、ブラシモータ44と電動送風機42を停止させ、シート端部のばたつきによる異音の発生を防止している。
拭き掃除が終了したときには、操作パネル200の「はずす」キー205が押される。これに応じて、制御部40によって、電動送風機42が吸引力が強になるように駆動され、電動送風機42の起動から所定時間、本実施形態では、電動送風機42が強の吸込力になるまでの時間、具体的には、約2秒経過後に、回転ブラシ25が正回転/逆回転を交互にするように駆動制御される。
回転ブラシ25は、その周囲に髪の毛や糸くずが絡まった場合に、正回転/逆回転されると、絡まった髪の毛や糸がほどけて外れる旨説明した。同様に、図20Dに示すように、回転ブラシ25が正回転/逆回転で回転され、吸引力が強にされると、巻きついたシートが自動的に回転ブラシ25から離れて、電気掃除機本体2へ吸い込まれる。
図21に、回転ブラシ25が正回転/逆回転するとき、回転ブラシ25に巻きついたシート50が外れていく様子を図解的に示す。
図21の(A)は、回転ブラシ25が正回転中のシート50を示し、(B)(C)は、回転ブラシ25が正回転/逆回転交互に反転することにより、回転ブラシ25の周面から外れるシート50の様子を示す。
図22および図23は、図18に示す制御部40によって実行される拭き掃除モードおよびシート外しモードの制御内容を表わすフローチャートである。図19に示すブロック図および図20A〜図21を必要に応じて参照しながら、図22および図23の流れに従って拭き掃除モードの制御内容を説明する。
制御部40により、操作パネル200に設けられた「つける/ふく」キー204が押されて、「つける/ふく」キーからの信号入力ありか否かの判別がされる(ステップS121)。
「つける/ふく」キー204の信号入力ありと判別されたときには、「強/中/弱」キー202および「ブラシ切/入」キー203からの入力の受付は禁止し、紙パックセンサ45がオンか否かの判別がされる(ステップS122)。
紙パックセンサ45は、電気掃除機本体2に紙パックがセットされているとオフするセンサであり、センサ45がオンであれば、紙パックではなく樹脂容器が集塵機能としてセットされていると判別されて、拭き掃除モードが進行する。
センサ45がオンでなければ、電気掃除機本体2に紙パックがセットされていると判別され、拭き掃除モードには進めない。
次いで、ブラシモータ44が、回転速度N1で正回転される(ステップS123)。
このときのブラシモータ44の回転速度N1は、回転ブラシ25を回転させ、その周面にシート50を巻き付け、巻き付けられたシートを回転させながら拭き掃除を行うのに適した回転速度である。具体的には、通常の回転速度よりも低い、遅めの回転速度で回転ブラシ25が回転されるように、ブラシモータ44の回転速度N1が制御される。よって、シート50が回転ブラシ25に巻き付けられる。
シート50を回転ブラシ25に巻き付ける際、シート50の巻き付けに偏りが生じる場合があり、シート50を巻き付けていない場合に比較し、振動が大きくなりやすく、また、被掃除面との接触抵抗が大きく、ブラシモータ44の負荷が大きくなる課題がある。
この課題を解決するために、回転ブラシ25は、シート50を巻き付けた状態では、通常の回転速度よりも低い回転速度で回転するように制御されている。
次いで、タイマがスタートされ(ステップS124)、タイマが所定時間、本実施形態では、回転ブラシ25にシート50が巻き付けられた状態となるまでに要する時間、より具体的には、約2秒経過したか否か判断し(ステップS125)、所定時間経過すれば、電動送風機42を微弱な吸引力で動作させ(ステップS126)、フローリング等の拭き掃除が行われる。拭き掃除の際には、電動送風機42は、微弱な吸引力を発生しており、被清掃面100(フローリング等)に存在する塵埃は、シート50で拭き取られるほか、電気掃除機本体2へも吸引されて捕獲される。
拭き掃除が終了すると、ユーザは操作パネル200の「切」キー201を押す。制御部40は、切信号が入力されたことを判別すると(ステップS127でYES)、電動送風機42およびブラシモータ44を停止させる。
次に、図23に基づいて、シート外しモードを説明する。
拭き掃除が終了し、「はずす」キー205が押されると、制御部40は、はずす信号ありとの判別をし(ステップS131でYES)、電動送風機42の吸引力を強にし(ステップS132)、電動送風機42の起動から所定時間、本実施形態では、電動送風機42の吸引力が増大するまでに要する時間、より具体的には、約2秒経過したか否か判別する(ステップS133およびS134)。所定時間経過していれば、ブラシモータ44をT1秒間正回転させ(ステップS135)、次いでブラシモータ44をT2秒間停止させ(ステップS136)、ブラシモータ44をT3秒間逆回転させ(ステップS137)、ブラシモータ44をT4秒間停止させる(ステップS138)というブラシモータ44の正回転および逆回転処理を行って、タイマが一定時間経過したか否かの判断をする(ステップS139)。
そして、ブラシモータ44が起動してから一定時間が経過するまで、例えば5秒経過するまで、ブラシモータ44の正回転および逆回転が交互に繰り返される。
ブラシモータ44の正回転および逆回転の繰り返しにより、回転ブラシ25が正回転および逆回転されて、回転ブラシ25に巻き付いているシート50がほぐれて外され、電動送風機42による強吸引力によって、回転ブラシ25から外れたシート50は電気掃除機本体2へと吸い込まれる。
そして、ステップS139において、一定時間経過すると、ブラシモータ44および電動送風機42がオフされて(ステップS140)、シート外しモードは終了する。
図1に示す電気掃除機本体2は、集塵機能として、紙パックをセットすることができるとともに、塵埃を遠心分離して貯留する樹脂容器であるいわゆるサイクロンユニットをセットすることもできる。いずれがセットされているかは、内蔵のセンサ15により検出することができ、上述の実施形態では、紙パックがセットされている場合には、シート50を用いた拭き掃除モードは拒否されるため、シート50が紙パック内に吸い込まれることはない。従って、シート50により紙パックが早期に一杯になったり、シート50が通気抵抗となって吸引力が低下するのを防止できる。
上述した実施形態では、吸込具10の回転ブラシ25は、ウイングクロス29を備えているので、ウイングクロス29の作用により、回転ブラシ25に巻きついた髪の毛、糸、シート40等を容易に外せる旨説明したが、回転ブラシ25にウイングクロス29が備えられていない場合であっても、回転ブラシ25に巻きついた髪の毛、糸、シート等を自動的に外すことが可能である。なぜなら、回転ブラシ25を所定の態様で正回転/逆回転交互に切り換え、その際に電動送風機による吸引力を強とすることによって、回転ブラシに巻きついた髪の毛、糸、シート等が徐々にほぐれ、ほぐれた髪の毛、糸、シート等は、強い吸引力で吸引されるので、回転ブラシから外れるからである。
ウェットシートを回転ブラシに巻き付けて拭き掃除をする場合、掃除をしていると、次第にウェットシートの表面が乾いてきて、ウェットシートの効果がなくなってくる。ウェットシートの利点は、水分により微細な塵埃を吸着しやすく、乾いたシートより塵埃の吸着効率が高い点がある。従って、ウェットシート表面が乾いてくると、拭き掃除の効果、効率が低下してくる。しかし、巻き付けられたウェットシートの内側には十分に水分が含まれており、この水分を有効に利用することが好ましい。
そのために、掃除の開始時には、ウェットシートから水分が飛び散って掃除機本体に水分が吸引されるのを防ぐために、回転ブラシ25を最低速で回転させ、ウェットシートの外側が乾いてくるに従って、回転ブラシ25の回転数を増加させ、内側の水分を遠心力を利用して外周側へ滲み出させるようにすることが考えられる。
図24は、拭き掃除モード時に、制御部によって回転ブラシ25の回転数を次第に増加させる制御内容を表すフローチャートである。図18に示すブロック図および図20A〜図21を必要に応じて参照しながら、図24の流れに従って拭き掃除モードの制御内容を説明する。
制御部40により、操作パネル200に設けられた「つける/ふく」キー204が押されて、「つける/ふく」キーからの信号入力ありか否かの判別がされる(ステップS141)。
「つける/ふく」キー204の信号入力ありと判別されたときには、「強/中/弱」キー202および「ブラシ切/入」キー203からの入力の受付は禁止し、紙パックセンサ45がオンか否かの判別がされる(ステップS142)。
紙パックセンサ45は、電気掃除機本体2に紙パックがセットされているとオフするセンサであり、センサ45がオンであれば、紙パックではなく樹脂容器が集塵機能としてセットされていると判別されて、拭き掃除モードが進行する。
センサ45がオンでなければ、電気掃除機本体2に紙パックがセットされていると判別され、拭き掃除モードには進めない。
次いで、ブラシモータ44が、最も低い回転速度N1で正回転される(ステップS143)。
このときのブラシモータ44の回転速度N1は、回転ブラシ25を回転させ、その周面にウェットシート50を巻き付け、巻き付けられたウェットシートを回転させながら拭き掃除を行い、回転させた状態で巻き付けられたウェットシートから水分があまり飛び散らない程度の回転速度である。具体的には、通常の回転速度よりも低い、遅めの回転速度で回転ブラシ25が回転されるように、ブラシモータ44の回転速度N1が制御される。よって、ウェットシート50が回転ブラシ25に巻き付けられる。
ウェットシート50を回転ブラシ25に巻き付ける際、ウェットシート50の巻き付けに偏りが生じる場合があり、ウェットシート50を巻き付けていない場合に比較し、振動が大きくなりやすく、また、被掃除面との接触抵抗が大きく、ブラシモータ44の負荷が大きくなる課題がある。
この課題を解決するために、回転ブラシ25は、ウェットシート50を巻き付けた状態では、通常の回転速度よりも低い回転速度で回転するように制御されている。
次いで、タイマがスタートされ(ステップS144)、タイマが所定時間、本実施形態では、回転ブラシ25にウェットシートが巻き付けられた状態となるまでに要する時間、より具体的には、約2秒経過したか否か判別し(ステップS145)、所定時間経過すれば、電動送風機42を微弱な吸引力で動作させ(ステップS146)、フローリング等の拭き掃除が行われる。拭き掃除の際には、電動送風機42は、微弱な吸引力を発生しており、被清掃面100(フローリング等)に存在する塵挨は、ウェットシート50で拭き取られるほか、電気掃除機本体2へも吸引されて捕獲される。
次いで、タイマがスタートされ(ステップS147)、掃除を開始してウェットシート50の表面が乾燥してくる程度の時間、より具体的には、約10秒が経過すると(ステップS148)、ブラシモータ44の回転数を増加させる(ステップS149)。ブラシモータ44の回転数の増大により回転ブラシ25の回転数が増加し、遠心力が増大することによって、回転ブラシ25に巻き付けられたウェットシート50の内側の水分が表面に滲み出し、その水分を利用して継続して拭き掃除を行う。
ステップS147からステップS149を繰り返して、ウェットシート50の内側の水分を有効に利用して拭き掃除を行い、ウェットシート50を巻き付けた状態で大きな振動が起きない程度の回転数までブラシモータ44の回転数が増大すると、ブラシモータ44の回転数の増加を停止する(ステップS150)。
ステップS143におけるブラシモータ44の最低回転数、ステップS148で増加させるブラシモータ44の回転数、ステップS147からステップS149を繰り返す回数、及びステップS150におけるブラシモータ44の回転数の増加を停止する際のブラシモータ44の回転数は、この制御内容を採用する構成に応じて適宜設定される。
拭き掃除が終了すると、ユーザは操作パネル200の「切」キー31を押す。制御部40は、切信号が入力されたことを判別すると(ステップS151でYES)、電動送風機42及びブラシモータ44を停止させる(ステップS152)。
尚、この制御内容において、回転ブラシ25にウェットシートでなく、フローリングシートなどの吸着シートを巻き付けて拭き掃除を行う場合が想定される。この場合には、シートからの水分の飛び散りがないため、ブラシモータ44の回転数を徐々に増大させる必要はない。
従って、吸込具10の吸引された空気が通過する適宜位置、例えばベンド21に、水分を検出する水分センサを配設し、シート50を巻き付けてから所定の時間の間に水分センサが水分を検出した場合には、上述した制御内容を行い、水分センサが水分を検出しなかった場合には、ブラシモータ44の回転数を徐々に増大させるステップS147からステップS149を省略してステップS150に移行するようになし得る。
この発明は、以上説明した種々の実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。