JP5229445B2 - ポリカーボネート樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は透明性、耐熱性、高屈折率、低い光弾性係数、及び低複屈折性を有する新規なポリカーボネート樹脂ならびにその製造方法に関する。このポリカーボネート樹脂は各種光学レンズ、プリズム、光ディスク基板、光ファイバー、光通信用デバイスなどのプラスチック光学製品や光学フィルムに用いる光学材料として好適に利用できるものである。
近年、オプトエレクトロニクスの進歩に伴い、光学的に優れた等方性を有する光学用透明高分子に対する要請が高まっている。
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノールA)をホスゲンあるいは炭酸ジエステルと反応させて得られるポリカーボネート樹脂は、耐熱性透明性にすぐれしかも耐衝撃性等の機械的特性に優れていることから、構造材料はもとより光学材料として各種光学レンズ、プリズム、光ディスク基板、光ファイバーなどのプラスチック光学製品や光学フィルムに幅広く利用されている。
しかし、従来の芳香族ポリカーボネート樹脂は、高光弾性率、低流動性材料であるために成形時の分子配向や残留応力に伴う複屈折が大きいという問題点を有している。そのため、従来の芳香族ポリカーボネート樹脂からなる光学材料を成形する場合には、流動性を向上させるために分子量の比較的低い樹脂を用い、かつ高温で成形することにより製品の複屈折を低減する方法が行われている。しかし、従来の芳香族ホ゜リカーホ゛ネート樹脂では、上記のような手段を用いても複屈折の低減には限界があるため、近年の光学材料用途の広がりに伴い、一部光学材料分野ではさらなる低光弾性係数高流動性材料の開発が強く求められている。そのため複屈折の小さい樹脂の開発が行われてきた。
一方、光学材料の屈折率が高いとレンズエレメントをより曲率の小さい面で実現できるため、この面に発生する収差量を小さくできレンズの枚数の低減レンズの偏心感度の低減、レンズ厚の低減によるレンズ系の小型軽量化ができる。まためがねレンズでは同じ度数のレンズの薄肉化ができるため外観が非常によくなる利点がある。
高屈折率低複屈折の光学樹脂として、側鎖方向に分極率の大きいフルオレン構造を有するビスフェノール類を用いた全芳香族ポリカーボネート樹脂共重合体が検討されている。(特許文献1,2参照)
また、側鎖方向に分極率の大きいフルオレン構造を有し直鎖方向にフェノール骨格を有するエーテルジオール類のホモポリカーボネート樹脂、あるいはそれらとビスフェノール類との共重合体が示されている(特許文献3,4参照)。
更に、側鎖方向に分極率の大きいフルオレン構造を有するビスフェノール類とトリシクロデカン[5.2.1.02,6]ジメタノールとの共重合体も提案されている(特許文献5参照)。
上記のように種々の低複屈折材料の開発が行われているが、これらの技術では屈折率が低かったり、成形性耐熱性が不十分で満足する成形物が得られなかったり着色するなどの問題点があった。
特開平6−25398号公報 特開平7−109342号公報 特開平10−101787号公報 特開平10−101786号公報 特開平2000−169573号公報
本発明の目的は、かかる状況に鑑み、好適な透明性、高い屈折率、耐熱性、低い複屈折性及び低い光弾性係数を有する新規なポリカーボネート樹脂、該ポリカーボネート樹脂の製造方法、並びに該ポリカーボネート樹脂を使用した光学材料を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、式(1)で表される構造単位と下記式(2)で表される構造単位とから構成され、式(1)で表される構造単位が全構造単位中5〜90mol%であり、かつ極限粘度が0.3〜2.0dl/gであるポリカーボネート樹脂によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
Figure 0005229445
(式(1)中、Rは炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数7〜17のアラルキル基及びハロゲンから選ばれる1種を示し、nはRがベンゼン環上に置換している数を示し、0〜4の整数である。Xは炭素1〜4のアルキレン基を示し、pは0〜4の整数である。)
Figure 0005229445
(式中、Yは炭素数0〜20のアルキレン基若しくはシクロアルキレン基又は下記式(3)で表される構造である。)
Figure 0005229445
(3)
(式(3)において、R、R、RおよびRはそれぞれ、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。)
すなわち、本発明は、以下に示すポリカーボネート樹脂、該ポリカーボネート樹脂の製造方法及び該ポリカーボネート樹脂を用いた光学材料に関する。
(1)上記式(1)で表される構造単位と上記式(2)で表される構造単位とから構成され、式(1)で表される構造単位が全構造単位中5〜90mol%であり、かつ極限粘度が0.3〜2.0dl/gであるポリカーボネート樹脂。
(2)上記式(2)で表される構造単位が、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、又は3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンの残基である(1)記載のポリカーボネート樹脂。
(3)光弾性係数が50×10-122/N以下、ガラス転移温度が100℃以上180℃以下、及び屈折率nDが1.57以上である(1)または(2)記載のポリカーボネート樹脂。
(4)下記記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物および下記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物を、重合触媒の存在下、炭酸ジエステルと反応させることを特徴とする(1)に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
Figure 0005229445
(式(4)中、Rは炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数7〜17のアラルキル基及びハロゲンから選ばれる1種を示し、nはRがベンゼン環上に置換している数を示し、0〜4の整数である。Xは炭素1〜4のアルキレン基を示し、pは0〜4の整数である。)
(化5)
HOCH2−Y−CH2OH (5)
(式中、Yは炭素数0〜20のアルキレン基若しくはシクロアルキレン基又は下記式(6)で表される構造である。)
Figure 0005229445
(6)
(式(6)において、R、R、RおよびRはそれぞれ、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。)

(5)上記(1)〜(3)何れかに記載のポリカーボネート樹脂からなる光学材料。
(6)上記(1)〜(3)何れかに記載のポリカーボネート樹脂からなる光学レンズ。
(7)上記(1)〜(3)何れかに記載のポリカーボネート樹脂からなる光学フィルム。
本発明のポリカーボネート樹脂を使用することにより、透明性、耐熱性、高屈折率、低い光弾性係数及び低複屈折性を有する各種レンズ、プリズム、光ディスク基板及び光ファイバー等のプラスチック光学製品や光学フィルムを製造することが出来る。
以下、本発明に係わるポリカーボネート樹脂並びにこの製造方法等を具体的に説明する。
1.ポリカーボネート樹脂
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記式(1)で表される構造単位(以下、構造単位1ともいう)と下記式(2)で表される構造単位(以下、構造単位2ともいう)とから構成される共重合体である。
Figure 0005229445
(式(1)中、Rは炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数7〜17のアラルキル基及びハロゲンから選ばれる1種を示し、nはRがベンゼン環上に置換している数を示し、0〜4の整数である。Xは炭素1〜4のアルキレン基を示し、pは0〜4の整数である。)
Figure 0005229445
(式中、Yは炭素数0〜20のアルキレン基若しくはシクロアルキレン基又は下記式(3)で表される構造である。)
Figure 0005229445
(3)
(式(3)において、R、R、RおよびRはそれぞれ、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。)
ここで、式(1)中、Rは炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数7〜17のアラルキル基及びハロゲンから選ばれる1種を示し、nはRがベンゼン環上に置換している数を示し、0〜4の整数である。Xは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、pは0〜4の整数である。好ましくは、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数7〜13のアラルキル基及びハロゲンから選ばれる1種を示す。更に好ましくは、Rは、メチル、シクロヘキシル、又はフェニルである。
nは、好ましくは0〜4の整数である。好ましくは、Xは炭素数1〜4のアルキレン基であり、pは0〜4の整数である。
このような構造単位(1)の具体例としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセナフテンや、1,1−ビス(4−クレゾール)アセナフテンや、1,1−ビス(フェノキシエタノール)アセナフテン等の残基が挙げられる。これらは、2種以上含有していても良く、特に1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセナフテンが好ましい。
式(2)中、Yは炭素数0〜20のアルキレン基若しくはシクロアルキレン基又は下記式(3)で表される構造である。
Figure 0005229445
(3)
(式(3)において、R、R、RおよびRはそれぞれ、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。)
このような構造単位(2)の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールのような直鎖ジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、
4,10−ジメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、4,4,10,10−テトラメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10−デカメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、3,9−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキソスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジエチルエチル)-2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジプロピルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン1,4−シクロヘキサンジオール(トランス体、シス体あるいはその混合物)のような環状ジオールの残基が挙げられる。これらジヒドロキシ化合物は1種類でもよいし、二種類以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも特に、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、(3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン)から選ばれるジヒドロキシ化合物の残基であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、上記式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位とが、ランダム、ブロックあるいは交互に結合した共重合体であり、その平均分子量(Mw)は、20000〜200000、好ましくは30000〜100000である。
更に、本発明の効果を損なわない範囲で、構造単位(1)および構造単位(2)以外のカーボネート単位が含まれていても構わない。
式(1)で表される構造単位(「構造単位(1)」)と式(2)で表される構造単位(「構造単位(2)」)とからなる共重合体において、構造単位(1)の割合(mol%)は、〔構造単位(1)/(構造単位(1)+構造単位(2))〕として、5〜90mol%であることが好ましい。この構造単位(1)の割合が、5mol%以上であると、耐熱性が向上するため好ましい。
この構造単位(1)の割合が10〜85mol%であるものが、光学物性と成形加工性のバランスが良好で、特に好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、湿式成形、押出成形、圧縮成形、インフレーション成形、射出成形等の公知の方法で成形可能である。特に、射出成形により成形して充分な強度を得るためには、ポリカーボネート樹脂の固有粘度は、0.30〜2.0dl/gであることが好ましく、さらには1.04〜1.5dl/gであることが好ましい。固有粘度が0.30dl/g以上であると、十分な強度が得られる。固有粘度が2.0dl/g以下であると、溶融粘度が高くなりすぎす、流動性が良好で成形が容易になる。
固有粘度とは高分子同士の接触による影響が無視できるような希薄溶液において求めた高分子の単位濃度あたりの粘度増加率をいう。
本発明におけるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、100℃以上180℃以下であることが好ましく、より好ましくは105℃以上165℃以下である。ガラス転移温度が100℃以上だと耐熱性が良好となり、種々の用途に使用出来る。また、ガラス転移温度が180℃以下だと、流動性が良好で、成形加工し易いので好ましい。また、流動性を確保するために低分子量に抑えることは、脆くなるため好ましくない。
2.ポリカーボネート樹脂の製造方法
本発明のポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAと炭酸エステル形成化合物からポリカーボネートを製造する際に用いられている公知の方法、例えば、ビスフェノール類とホスゲンあるいはホスゲン誘導体との反応(ホスゲン法)、ビスフェノール類とビスアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)法により製造できる。
ホスゲン法とエステル交換法では、製造しやすさを考慮した結果、エステル交換法の方が好ましい。
具体的には、本発明中のポリカーボネート樹脂は、下記のジヒドロキシ化合物を原料として製造される。
Figure 0005229445
(式(4)中、Rは炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数7〜17のアラルキル基及びハロゲンから選ばれる1種を示し、nはRがベンゼン環上に置換している数を示し、0〜4の整数である。Xは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、pは0〜4の整数である。)
(化12)
HOCH2−Y−CH2OH (5)
(式中、Yは炭素数0〜20のアルキレン基若しくはシクロアルキレン基又は下記式(6)で表される構造である。)
Figure 0005229445
(6)
(式(6)において、R、R、RおよびRはそれぞれ、水素原子または炭素数1〜5の1価のアルキル基である。)
ここで、式(1)中、Rは炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数7〜17のアラルキル基及びハロゲンから選ばれる1種を示し、nはRがベンゼン環上に置換している数を示し、0〜4の整数である。Yは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、pは0〜4の整数である。好ましくは、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数7〜13のアラルキル基及びハロゲンから選ばれる1種を示す。更に好ましくは、Rは、メチル、シクロヘキシル、又はフェニルである。
nは、好ましくは0〜4の整数である。好ましくは、Xは炭素数1〜4のアルキレン基であり、pは0〜4の整数である。
このような構造単位(1)の具体例としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセナフテンや、1,1−ビス(4−クレゾール)アセナフテンや、1,1−ビス(フェノキシエタノール)アセナフテン等の残基が挙げられる。これらは、2種以上含有していても良く、特に1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセナフテンが好ましい。
式(5)で表されるジヒドロキシ化合物としては、具体的にはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールのような直鎖ジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、4,10−ジメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、4,4,10,10−テトラメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10−デカメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、3,9−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキソスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジエチルエチル)-2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジプロピルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン1,4−シクロヘキサンジオール(トランス体、シス体あるいはその混合物)のような環状ジヒドロキシ化合物が挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも特に、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール 、 (3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン)から選ばれるジヒドロキシ化合物の残基であることが好ましい。
一方、炭酸エステル形成化合物としては、例えばホスゲンや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネートなどのビスアリルカーボネートが挙げられる。これらの化合物は2種類以上併用して使用することも可能である。
エステル交換法においては、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物と式(5)で表されるジヒドロキシ化合物とビスアリールカーボネートとを混合し、減圧下で高温において反応させる。反応は通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度において行われ、また減圧度は最終で好ましくは1mmHg以下にして、エステル交換反応により生成した該ビスアリールカーボネートから由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は反応温度や減圧度などによって左右されるが、通常1〜4時間程度である。反応は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく。また、所望に応じ、分子量調節剤、酸化防止剤や分岐化剤を添加して反応を行ってもよい。
本発明において、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂共重合体に、上記の特定の化合物と共にその物性を損なわない範囲で目的に応じ、各種公知の添加剤を加えることが望ましい。
酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−メチル−4−エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−メチル−4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ,ジノニルフェニル)ホスファイト、ビス(モノノニルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジメチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4−t−ブチル−6−メチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジメチルフェニル)ヘキシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ヘキシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ステアリルホスファイト等のホスファイト化合物;ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス[2−メチル−4−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]ブタン等のヒンダードフェノール系化合物;5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン等が挙げられる。これらは、単独、あるいは2種以上併用して用いてもよい。
これらの酸化防止剤の添加量は、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂共重合体100重量%に対して0.005〜0.1重量%、好ましくは、0.01〜0.08重量%、さらに好ましくは、0.01〜0.05重量%であり、これより少ないと所望の効果が得られず、過剰では耐熱物性、機械的物性が低下し適当ではない。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(5−メチル―2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2,4−ジヒドロキソベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらは、単独、あるいは2種以上併用して用いてもよい。
離型剤としては、一般的に使用されているものでよく、例えば、天然、合成パラフィン類、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス類、蜜蝋、ステアリン酸、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニン、ラウリル酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等の脂肪酸エステル等が挙げられ、これらは、単独、あるいは2種以上併用して用いてもよい。
その他難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、高分子改質剤、滑剤、可塑剤等必要に応じて単独または組み合わせて用いることができる。
本発明はまた、上述の本発明のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学材料を提供する。
上記光学材料としては、各種光学レンズ、プリズム、光ディスク基板、光ファイバー、光通信用デバイスなどのプラスチック光学製品や光学フィルムなどを例示することができる。本発明のポリカーボネート樹脂を上記の用途に供する場合、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光色素やフォトクロ色素等の色素、屈折率調整剤、無機微粒子などを添加したPC樹脂組成物として使用することができる。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
1)極限粘度:ウベローデ粘度管使用。20℃、0.5%ジクロロメタン溶液、ハギンズ定数0.45で測定。
2)ガラス転移温度(Tg):示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した。
3)全光線透過率:日本電色工業(株)製MODEL1001DPにより測定した。
4)屈折率:ポリカーボネート3mm厚×8mm×8mmの直方体にプレス成形し、ATAGO株式会社製屈折率計により測定した。
5)複屈折:日本分光(株)製エリプソメーターにより測定した。
〈実施例1〉
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセナフテン(以下ANBPと略す。)9.313kg(25.275モル)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(以下TCDDMと略す)8.448kg(43.04モル)、ジフェニルカーボネート(以下DPCと略す)15.00kg(70.01モル)、及び炭酸水素ナトリウム0.000574g(6.8マイクロモル)を攪拌機及び留出装置付きの50L反応機にいれ、窒素雰囲気760mmHgの下1時間かけて215℃に加熱し攪拌した。
その後、15分かけて減圧度を150mmHgに調整し、215℃、150mmHgの条件下で20分間保持しエステル交換反応を行った。さらに37.5℃/hrの速度で240℃まで昇温し、240℃150mmHgで10分間保持した。その後、10分かけて120mmHgに調整し、240℃120mmHgで70分間保持した。その後、10分かけて100mmHgに調整し、240℃100mmHgで10分間保持した。更に40分かけて1mmHg以下とし、その条件下で10分間攪拌した。反応終了後、反応機内に窒素を吹き込み加圧にし、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出した。得られたポリカーボネート樹脂の極限粘度0.66、Tg=128℃であった。このポリカーボネート10.0kgを100℃で24時間真空乾燥し、樹脂に対してアデカスタブPEP36(旭電化工業株式会社)製を500ppm
、HP136(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)200ppm、グリセリンモノステアレートを300ppm添加して押出し機により250℃で混練りしてペレタイズしてペレットを得た。このペレットの極限粘度0.64であった。該ペレットを100℃で24時間真空乾燥した後、シリンダー温度250℃、金型温度120℃で射出成形して直径が9.4mm両凸面の局率半径が5.0mmの両凸レンズを得た。また、得られた樹脂レンズの光学特性を測定したところ屈折率1.576、光弾性係数11×10-122/N、複屈折15nmであり、複屈折のきわめて小さい実質的な光学ひずみのないレンズであることが確認された。また、全光線透過率を測定したところ89%であった。
〈実施例2〉
ANBPを8.269kg(22.44mol)、シクロヘキサンジメタノール(シストランス混合物)を7.552kg(52.36mol)、DPCを16.423kg(76.68モル)使用した以外は実施例1と同様に行った。得られた樹脂レンズの光学特性を測定したところ屈折率1.585、光弾性係数17×10-122/N、複屈折20nmであり、複屈折のきわめて小さい実質的な光学ひずみのないレンズであることが確認された。また、全光線透過率を測定したところ89%であった。
〈実施例3〉
ANBPを14.348kg(38.94mol)、2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンを8.941g(29.37mol)ジフェニルカーボネート(以下DPCと略す)15.00kg(70.01モル)使用した以外は実施例1と同様に行った。得られた樹脂レンズの光学特性を測定したところ屈折率1.575、光弾性係数25×10-122/N、複屈折23nmであり、複屈折のきわめて小さい実質的な光学ひずみのないレンズであることが確認された。また、全光線透過率を測定したところ89%であった。
〈比較例1〉
ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂として、ユーピロンH−4000(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)を用いた。該ペレットを100℃で24時間真空乾燥した後、シリンダー温度255℃、金型温度120℃で射出成形し、直径が9.4mm両凸面の曲率半径が5.0mmの両凸レンズを得た。得られた樹脂レンズの光学特性を測定したところ屈折率1.584、光弾性係数78×10-122/N、複屈折230nmであり、複屈折の大きい光学ひずみも大きいレンズであることが確認された。また、全光線透過率を測定したところ89%であった。
〈比較例2〉
ゼオネックス330R(日本ゼオン株式会社製)を用いた。該ペレットを100℃で24時間真空乾燥した後、シリンダー温度260℃、金型温度100℃で射出成形し、直径が9.4mm両凸面の曲率半径が5.0mmの両凸レンズを得た。得られた樹脂レンズの光学特性を測定したところ屈折率1.530、光弾性係数3.2×10-122/N、複屈折45nmであり、複屈折のきわめて小さい光学ひずみのないレンズであるが屈折率が1.53と低かった。また、全光線透過率を測定したところ90%であった。
本発明のポリカーボネート樹脂は、アセナフテン骨格を持つ新規なモノマーからなる樹脂である。本発明により、透明性、耐熱性、高屈折率、低い光弾性係数、低複屈折性を有する新規なポリカーボネート樹脂が得られる。このポリカーボネート樹脂は各種レンズ、プリズム、光ディスク基板、光ファイバーなどのプラスチック光学製品および光学フィルムに好適に利用できるものである。
Figure 0005229445

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表される構造単位と下記式(2)で表される構造単位とから構成され、式(1)で表される構造単位が全構造単位中5〜90mol%であり、かつ極限粘度が0.3〜2.0dl/gであるポリカーボネート樹脂。
    Figure 0005229445

    (式(1)中、Rは炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数7〜17のアラルキル基及びハロゲンから選ばれる1種を示し、nはRがベンゼン環上に置換している数を示し、0〜4の整数である。Xは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、pは0〜4の整数である。)
    Figure 0005229445
    (式(2)中、Yは炭素数0〜20のアルキレン基若しくはシクロアルキレン基又は下記式(3)で表される構造である。)
    Figure 0005229445
    (3)
    (式(3)において、R、R、RおよびRはそれぞれ、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。)
  2. 式(2)で表される構造単位が、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、又は3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンの残基である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
  3. 光弾性係数が50×10-122/N以下、ガラス転移温度が100℃以上180℃以下、及び屈折率nDが1.57以上である請求項1または2記載のポリカーボネート樹脂。
  4. 下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物および下記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物を、重合触媒の存在下、炭酸ジエステルと反応させることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
    Figure 0005229445
    (式(4)中、Rは炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数7〜17のアラルキル基及びハロゲンから選ばれる1種を示し、nはRがベンゼン環上に置換している数を示し、0〜4の整数である。Xは炭素1〜4のアルキレン基を示し、pは0〜4の整数である。)
    (化4)
    HOCH2−Y−CH2OH (5)
    (式(5)中、Yは炭素数0〜20のアルキレン基若しくはシクロアルキレン基又は下記式(6)で表される構造である。)
    Figure 0005229445
    (6)
    (式(6)において、R、R、RおよびRはそれぞれ、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。)
  5. 請求項1〜3何れか1項記載のポリカーボネート樹脂からなる光学材料。
  6. 請求項1〜3何れか1項記載のポリカーボネート樹脂からなる光学レンズ。
  7. 請求項1〜3何れか1項記載のポリカーボネート樹脂からなる光学フィルム。
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