図1に本発明の実施の形態に係る通信システム1を概説するブロック図を示す。図1に例示の通信システム1は、メインユニット100と、通信モジュール200と、配線55〜57とを含んでいる。ここでは7台の通信モジュール200を例示するが、この台数に限定されるものではない。なお、7台の通信モジュール200を符号211〜213,221,222,231,232を以て区別する場合もある。
メインユニット100と通信モジュール200とは双方向に通信可能に構成されている。ここではメインユニット100と通信モジュール200とが配線55、換言すれば通信ライン55を介して有線通信を行う場合を例示する。有線通信方式として例えばI2Cバス方式を採用可能であるが、これに限定されるものではない。また、通信ライン55として、メインユニット100から通信モジュール200へ至る不図示の電力供給ラインを利用することにより、電力線通信(いわゆるPLC(Power Line Communication))を採用することも可能である。また、光通信を利用することも可能である。また、有線通信に代えてまたは加えて、無線通信を行うようにメインユニット100と通信モジュール200とを構成してもよい。
メインユニット100は、当該メインユニット100における各種の処理を行う処理部151を有している。処理部151は例えば、マイクロコンピュータ(換言すればマイクロプロセッサ)と、メモリとを含んで構成可能である。
この場合、マイクロコンピュータが、メモリに予め格納されているプログラムに記述された処理ステップ(換言すれば手順)を実行することにより、各種の処理が行われる。上記メモリは例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)の1つまたは複数を含んで構成される。当該メモリは、上記のように処理部151が実行するプログラムを格納する他に、各種の情報やデータ等を格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。
かかる構成によれば、上記マイクロコンピュータは1つまたは複数の処理ステップに対応する各種手段として機能し、または、上記マイクロコンピュータによって1つまたは複数の処理ステップに対応する各種機能が実現される。なお、上記マイクロコンピュータによって実現される各種の手段または機能の一部または全部を論理回路等によるハードウェアで実現することも可能である。
処理部151は、通信モジュール200との上記通信を行うための通信機能を有している。より具体的には、処理部151は自身のマイクロコンピュータと通信モジュール200との間の通信を担う通信回路(図示略)を有し、かかる通信回路とマイクロコンピュータとによって処理部151の通信機能が実現される。
処理部151は、また、外部のホスト機器等との通信を行うための通信機能を有している。かかる通信機能は上記と同様にして実現可能である。なお、かかる外部通信は、有線通信と無線通信との一方または両方を利用可能であり、また、電力線通信、インターネット等も利用可能である。
メインユニット100は、さらに、モジュール接続部110,120,130と、配線155,161〜163とを有している。ここでは3つのモジュール接続部110,120,130を例示するが、この数に限定されるものではない。
モジュール接続部110,120,130は、通信モジュール200が接続される端子部である。モジュール接続部110,120,130はそれぞれが、出力端子A0と、入力端子A1と、通信端子A2とを有している。出力端子A0はモジュール活性化信号をメインユニット100の外部へ出力するための信号端子であり、入力端子A1はモジュール活性化信号をメインユニット100の内部へ入力するための信号端子である。通信端子A2は、通信モジュール200と通信を行う際の通信パケットの入出力端子である。通信端子A2は、図面では略記しているが、通信方式に応じて1つまたは複数の端子で構成される。
ここで、モジュール活性化信号は、後述の説明から明らかとなるが、通信モジュール200を活性化するための信号、換言すれば通信モジュール200を稼動状態にするための信号である。通信モジュール200が活性状態、換言すれば稼動状態であることにより、例えばメインユニット100との通信が可能になる。ここでは、モジュール活性化信号が、論理信号で採用される第1レベルと第2レベルとのうちの第1レベルによって構成される場合を例示する。この例によれば、出力端子A0が第1レベルになることによりモジュール活性化信号が出力され(換言すればモジュール活性化信号がオンになり)、出力端子A0が第2レベルである場合にはモジュール活性化信号は出力されない(換言すればモジュール活性化信号はオフである)。同様に、入力端子A1が第1レベルにされることによりモジュール活性化信号が入力され、入力端子A1が第2レベルである場合にはモジュール活性化信号の入力はない。
なお、説明を簡単にするために、第1レベルと第2レベルとの間での遷移途中の信号レベルおよびその遷移期間は無視することにする。また、第1レベルが論理信号のHighレベル(以下、Hレベルと称する)であり、第2レベルが論理信号のLowレベル(以下、Lレベルと称する)である場合を例示する。但し、第1レベルをLレベルとし、第2レベルをHレベルとすることも可能である。また、モジュール活性化信号は電圧信号で構成される場合を例示するが、電流信号、光信号等を採用することも可能である。
図1の例では、モジュール接続部110の出力端子A0は、配線161を介して、処理部151に接続されている。また、モジュール接続部110の入力端子A1は、配線162を介して、モジュール接続部120の出力端子A0に接続されている。モジュール接続部120の入力端子A1は、配線163を介して、モジュール接続部130の入力端子A0に接続されている。すなわち、3つのモジュール接続部110,120,130は、一のモジュール接続部の入力端子A1が他のモジュール接続部の出力端子A0に接続される形態で以て、順次、接続されている。
なお、上記の処理部151とモジュール接続部110,120,130との接続形態において、処理部151に近い側を前段側または上位側のように表現し、処理部151から遠い側を後段側または下位側のように表現する。また、上記の接続形態において処理部151に最も近いモジュール接続部110を第1段目または第1のモジュール接続部110と称する場合もある。同様に、モジュール接続部120を第2段目または第2のモジュール接続部120と称し、モジュール接続部130を第3段目または第3のモジュール接続部130と称する場合もある。このとき、例えば第2段目のモジュール接続部120は、第1段目のモジュール接続部110の後段のモジュール接続部であり、第3段目のモジュール接続部130の前段のモジュール接続部である。なお、ここでの例では、第3段目のモジュール接続部130が最終段のモジュール接続部である。
モジュール接続部110,120,130の通信端子A2は、処理部151に共通に接続されている。より具体的には、処理部151に接続された配線155が分岐して各モジュール接続部110,120,130の通信端子A2に接続されている。
各モジュール接続部110,120,130は、例えば複数の端子を有する多端子コネクタ部品で構成可能である。この場合、コネクタの端子に上記の各端子A0〜A2が割り当てられる。
モジュール接続部110,120,130には、7台の通信モジュール211〜213,221,222,231,232が、3つの系列210,220,230に分かれて、接続されている。より具体的には、モジュール接続部110には3台の通信モジュール211〜213を含んだ系列210が接続され、モジュール接続部120には2台の通信モジュール221,222を含んだ系列220が接続され、モジュール接続部130には2台の通信モジュール231,232を含んだ系列230が接続されている。なお、系列210,220,230の数、および、各系列210,220,230に含まれる通信モジュール200の数は、ここでの例示に限定されるものではない。
なお、系列210,220,230を、接続相手であるモジュール接続部110,120,130に対応させて称する場合もある。すなわち、系列210を第1段目または第1の系列210と称し、系列220を第2段目または第2の系列220と称し、系列230を第3段目または第3の系列230と称する場合もある。また、モジュール接続部110,120,130について上述した前段側(または上位側)および後段側(または下位側)という表現も、同様に採用する。例えば、第2段目の系列220は、第1段目の系列210の後段の系列であり、第3段目の系列230の前段の系列である。なお、ここでの例では、第3段目の系列230が最終段の系列である。また、系列210,220,230を、モジュール系列210,220,230と称する場合もある。
系列210では、通信モジュール211がメインユニット100に接続され、通信モジュール212が通信モジュール211に接続され、通信モジュール213が通信モジュール212に接続されている。つまり、メインユニット100と通信モジュール211〜213とはディジーチェーン状に、換言すれば数珠繋ぎ状に有線接続されている。同様に、メインユニット100と、第2系列220に含まれる通信モジュール221,222とがディジーチェーン接続されている。また、メインユニット100と、第3系列230に含まれる通信モジュール231,232とがディジーチェーン接続されている。なお、メインユニット100と各通信モジュール211,221,231との間のディジーチェーン接続、および、通信モジュール211〜213,221,222,231,232間のディジーチェーン接続にはそれぞれ、配線55〜57が用いられている。なお、かかる配線形態に鑑み、配線55〜57をディジーチェーン配線55〜57と称する場合もある。
なお、各モジュール系列210,220,230におけるディジーチェーン接続形態において、メインユニット100に近い側を前段側または上位側のように表現し、メインユニット100から遠い側を後段側または下位側のように表現する。また、上記のディジーチェーン接続形態において、メインユニット100に最も近い通信モジュール211,221,231を第1段目または第1の通信モジュール211,221,231と称する場合もある。同様に、通信モジュール212,222,232を第2段目または第2の通信モジュール212,222,232と称し、通信モジュール213を第3段目または第3の通信モジュール213と称する場合もある。このとき、例えば系列210において、第2段目の通信モジュール212は、第1段目の通信モジュール211の後段の通信モジュールであり、第3段目の通信モジュール213の前段の通信モジュールである。また、ここでの例示では、通信モジュール213,222,232が系列210,220,230における最終段の通信モジュールである。なお、モジュール系列に含まれる通信モジュール200が1台だけである場合、当該通信モジュール200は、第1段目の通信モジュールであるとともに、最終段の通信モジュールである。
図2および図3に通信モジュール200を概説するブロック図を示す。なお、図2には説明を分かりやすくするために配線55〜57も併記している。また、図3には通信モジュール200中の一部の要素を抜き出して図示している。図1に加え、図2および図3も参照して、通信モジュール200を説明する。
通信モジュール200は、当該通信モジュール200における各種の処理を行う処理部251を有している。処理部251は例えばマイクロコンピュータとメモリとを含んで構成可能である。
この場合、マイクロコンピュータが、メモリに予め格納されているプログラムに記述された処理ステップ(換言すれば手順)を実行することにより、各種の処理が行われる。上記メモリは例えばROM、RAM、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM等)の1つまたは複数を含んで構成される。当該メモリは、上記のように処理部251が実行するプログラムを格納する他に、各種の情報やデータ等を格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。
かかる構成によれば、上記マイクロコンピュータは1つまたは複数の処理ステップに対応する各種手段として機能し、または、上記マイクロコンピュータによって1つまたは複数の処理ステップに対応する各種機能が実現される。なお、上記マイクロコンピュータによって実現される各種の手段または機能の一部または全部を論理回路等によるハードウェアで実現することも可能である。
通信モジュール200は、さらに、モジュールアドレス(以下、単にアドレスとも称する)を格納するためのメモリ252を有している。モジュールアドレスは、通信システム1において各通信モジュール200を他の通信モジュール200と識別するための識別情報である。各通信モジュール200にはそれぞれ固有のモジュールアドレスが割り当てられる(後述する)。モジュールアドレスはID等と称される場合もある。
メモリ252は、処理部251が、より具体的には処理部251の上記マイクロコンピュータがアクセス可能に設けられている。メモリ252は例えばRAM、EPROM等の書き換え可能なメモリで構成可能である。なお、ここでは説明を分かりやすくするために、モジュールアドレスを格納するメモリ252が処理部251の上記メモリとは別個に設けられている場合を例示する。しかし、例えば処理部251の上記メモリの一部の記憶領域を、モジュールアドレスを格納するためのメモリ252として利用する構成であっても構わない。
処理部251は、メインユニット100との上記通信を行うための通信機能を有している。より具体的には、処理部251は自身のマイクロコンピュータとメインユニット100との間の通信を担う通信回路(図示略)を有し、かかる通信回路とマイクロコンピュータとによって処理部251の通信機能が実現される。
かかる通信機能に関し、通信モジュール200は、通信端子B2,C2と、配線255とを有している。前段側の通信端子B2は、メインユニット100とのディジーチェーン接続、または前段の通信モジュール200とのディジーチェーン接続に用いられる。後段側の通信端子C2は、後段の通信モジュール200とのディジーチェーン接続に用いられる。より具体的には、前段側通信端子B2は、通信ライン55を介してメインユニット100の通信端子A2、または、前段の通信モジュール200の後段側通信端子C2に接続される。配線255は、通信端子B2,C2を相互に接続するとともに、処理部251に、より具体的には上記通信回路に接続されており、通信ラインを構成している。
かかる構成の場合、例えばモジュール系列210の通信モジュール211〜213とメインユニット100とは、外観的には、図1に例示されるように通信ライン55によってディジーチェーン接続される。これに対し、各通信モジュール211〜213の処理部251とメインユニット100の処理部151とは、通信形式としては、配線155,55,255で構成される通信ラインに対して並列的にバス接続されている。他のモジュール系列220,230についても同様である。
また、この場合、上記のようにメインユニット100の通信ライン155は3つのモジュール接続部110,120,130に接続されているので、各種コマンド(後述のアドレス登録コマンドを含む)等の通信パケットは全ての通信モジュール200へ向けて同時発信される。すなわちブロードキャストされる。
通信モジュール200は、さらに、前段側入力端子B1と、前段側出力端子B0と、後段側出力端子C0と、後段側入力端子C1とを有している。前段側の端子B1,B0は、メインユニット100とのディジーチェーン接続、または、前段の通信モジュール200とのディジーチェーン接続に用いられる。後段側の端子C0,C1は、後段の通信モジュール200とのディジーチェーン接続に用いられる。より具体的には、前段側入力端子B1は配線56を介してメインユニット100の出力端子A0または前段の通信モジュール200の後段側出力端子C0に接続され、前段側出力端子B0は配線57を介してメインユニット100の入力端子A1または前段の通信モジュール200の後段側入力端子C1に接続される。
入力端子B1,C1はモジュール活性化信号を通信モジュール200の内部へ入力するための信号端子であり、出力端子B0,C0はモジュール活性化信号を通信モジュール200の外部へ出力するための信号端子である。このため、モジュール活性化信号のオン/オフに応じて、端子B1,B0,C0,C1の電圧レベルも第1レベルまたは第2レベルになる。なお、信号端子B1,B0,C0,C1に接続される配線56,57は、モジュール活性化信号を伝送するための信号ラインである。
端子B1,B0,C0,C1は、処理部251に接続されている。なお、処理部251は、例えば、上記マイクロコンピュータと入力端子B1,C1との間にそれぞれモジュール活性化信号の受信回路(図示略)を含み、また、例えば、上記マイクロコンピュータと出力端子B0,C0との間にそれぞれモジュール活性化信号の送信回路(図示略)を含む。
ここで、後段側入力端子C1に後段の通信モジュール200の端子B0が接続されていない場合、当該入力端子C1はHレベルに設定される、換言すれば固定される。他方、後段側入力端子C1に後段の通信モジュール200の端子B0が接続されている場合、当該入力端子C1は接続相手の端子B0の信号レベルに従って、HレベルとLレベルとによるレベル遷移が可能である。かかる構成は、例えば図3に概説するようにスイッチング部260を採用することにより、実現可能である。
より具体的には、スイッチング部260は、処理部251内における後段側入力端子C1の接続先を、Hレベルを与える電源部へ至る経路と、マイクロコンピュータへ至る経路とのいずれかに切り替える。この際、スイッチング部260は制御信号S260に基づいて、切り替え動作を行う。切り替え制御信号S260は、後段側入力端子C1に後段の通信モジュール200が接続されているか否かの検出結果を示す信号である。後段の通信モジュール200の接続検出は例えば機械的、電気的、光学的等の既知の手法によって可能である。これにより、後段に通信モジュール200が検出されない場合、後段側入力端子C1は上記電源部によってHレベルにプルアップされる。逆に、後段に通信モジュール200が検出された場合、後段側入力端子C1はマイクロコンピュータへ至る経路に接続される。
図3では説明を分かりやすくするためにスイッチング部260を模式的に図示しているが、スイッチング部260は各種の素子または回路によって構成可能である。また、ここでは処理部251に、スイッチング部260、上記電源部、プルアップ抵抗、入力端子C1に繋がる通信モジュール200の検出部(図示略)が設けられるものとする。
なお、前段側の端子B0,B1,B2は例えば多端子コネクタ部品の端子に割り当てることが可能である。また、処理部251と端子B0,B1とを繋ぐ配線および処理部251と端子B2とを繋ぐ配線255を通信モジュール200の筐体外部へ引き出し、これらの配線の先端に上記コネクタ部品を設けてもよい。かかる場合、通信モジュール200の端子B0,B1,B2を有するコネクタ部品と、メインユニット100の端子A0,A1,A2を有するコネクタ部品とを直接、接続することができる。すなわち、配線55〜57を、メインユニット100および通信モジュール200とは別部材として準備する必要が無くなる。上記の種々の態様は後段側の端子C0,C1,C2についても同様である。
ところで、上記のように、モジュール接続部110,120の入力端子A1は、モジュール接続部120,130の出力端子A0にそれぞれ接続されている。このため、通信モジュール211,221の前段側出力端子B0は、メインユニット100内の配線162,163を介して、通信モジュール221,231の前段側入力端子B1に接続される。すなわち、各系列210,220,230の第1段目の通信モジュール211,221,231は、一の通信モジュールの前段側出力端子B0がメインユニット100内の配線162,163を介して他の通信モジュールの前段側入力端子B1に接続される形態で以て、順次接続されている。
以下に、通信システム1の動作を説明する。まずは、図4および図5のフローチャートを参照して各通信モジュール200単位での動作を説明し、その後、図6〜図13の模式図を参照して通信システム1全体の動作を説明する。
図4のフローチャートに例示する処理ST100は、処理ステップ(以下、単にステップとも称する)ST101〜ST107を含んでいる。
通信モジュール200の処理部251は、電源投入等によって起動し、リセット状態になる(ステップST101)。なお、かかるリセット処理ステップST101の開始を、例えばメインユニット100が通信モジュール200の通信機能や不図示のリセット専用ラインを用いて指示するように、通信システム1を構成することも可能である。
ステップST101の後、ステップST102において、処理部251は初期化処理を実行する。当該初期化処理には、例えば、メインユニット100との通信機能を初期設定する処理、各端子B1,C0,C1,B0の電圧レベルを初期設定する処理等が含まれる。
ステップST102の後、ステップST103において、処理部251は、前段側入力端子B1がHレベルか否かを判別し、Hレベルになるまで待機する。前段側入力端子B1がHレベルに遷移することにより、ステップST103は終了する。
次のステップST104において、処理部251は、自身のモジュールアドレスとして所定のアドレスを設定し、メモリ252(図2参照)へ格納する。この所定アドレスとは、固有のモジュールアドレスが未登録状態である場合に、後述のアドレス登録コマンドを受信するために用いる暫定的なアドレスである。かかるアドレスの具体的内容は、メインユニット100の処理部151と通信モジュール200の処理部251との間で予め規定されており、処理部151,251に組み込まれている。
ステップST104の後、ステップST105において、処理部251はアドレス登録コマンドを受信するまで待機する。
ここで、アドレス登録コマンドについて説明する。アドレス登録コマンドは、メインユニット100の処理部151によって生成される。アドレス登録コマンドは、例えば、送信先の通信モジュール200のアドレスと、当該送信先モジュール200に対して割り当てる固有のモジュールアドレスのデータとを含んだフォーマットをしている。なお、送信先のモジュールアドレスには、上記の予め規定されている所定のアドレスに設定される。
アドレス登録コマンドは、通信ライン155および各モジュール接続部110,120,130の通信端子A2を介してメインユニット100から出力される。すなわち、アドレス登録コマンドは、メインユニット100と通信モジュール200との上記通信機能によって送受信される。
なお、通信モジュール200の処理部251は、メインユニット100から送信されてくる各種コマンド(アドレス登録コマンドを含む)中の送信先アドレスと、メモリ252に格納している自身のモジュールアドレスとを比較することにより、そのコマンドが自身宛のものであるか否かを判定する。
アドレス登録コマンドの受信により、ステップST105は終了する。
ここで、上記ステップST103〜ST105により、固有のモジュールアドレスが未登録であり、かつ、前段側入力端子B1がHレベルである場合に、アドレス登録コマンドを通信機能によって受信する処理(以下、アドレス登録コマンド受信処理と称する)が行われる。
次のステップST106において、処理部251は、受信したアドレス登録コマンドに従って、固有のモジュールアドレスをメモリ252に格納する処理(以下、アドレス登録処理と称する)を行う。より具体的には、処理部251は、受信したアドレス登録コマンド中から上記の登録すべきモジュールアドレスを抽出し、当該抽出したアドレスをメモリ252に格納する。なお、ステップST106の後に、アドレスの登録終了を通信機能を用いてメインユニット100へ通知する処理を含んでもよい。
ステップST106の後、ステップST107において、処理部251は、後段側出力端子C0をLレベルからHレベルへ遷移させる制御(以下、後段側出力制御処理と称する)を行う。ここでは、ステップST107の終了後、換言すれば処理ST100の終了後も、後段側出力端子C0はHレベルに維持されるものとする。なお、当該ステップST107は、アドレス登録コマンドの受信処理ST103〜ST105の後であれば実行可能である。このため、例えばステップST106,ST107を上記とは逆の順序で実行してもよい。
図5のフローチャートは、上記の処理ST100が終了した後に行われる処理ST200を概説している。ここで例示する処理ST200はステップST201〜ST203を含んでいる。
ステップST201において、通信モジュール200の処理部251は、アドレスの登録が終了しているか否かを判別し、終了するまで待機する。アドレス登録の終了により、ステップST201は終了する。
ステップST201の後、ステップST202において、処理部251は、後段側入力端子C1がHレベルであるか否かを判別し、Hレベルになるまで待機する。当該端子C1がHレベルになることにより、ステップST202は終了する。
なお、ステップST201,ST202を上記とは逆の順序で実行してもよい。
ステップST202の後、ステップST203において、処理部251は、前段側出力端子B0をLレベルからHレベルへ遷移させる。
かかるステップST201〜ST203により、上記アドレス登録処理の後であって後段側入力端子C1がHレベルである場合に、前段側出力端子B0をLレベルからHレベルに遷移させる制御(以下、前段側出力制御処理と称する)が行われる。ここでは、ステップST203の終了後、換言すれば処理ST200の終了後も、前段側出力端子B0はHレベルに維持されるものとする。
次に、図6〜図13の模式図を参照して、通信システム1における各通信モジュール200の動作を説明する。図6〜図13には、端子B1,C0,C1,B0とこれに関連する要素を抽出して図示している。また、図6〜図13には、通信モジュール200を模式的に表す太枠内に端子B1,C0,C1,B0の信号レベルを記入している。
図6は、ステップST101、すなわちリセット処理における各通信モジュール200の状態を示している。
リセット状態の通信モジュール200は、他の通信モジュール200等が接続されていない場合、前段側入力端子B1はLレベルになり、後段側入力端子C1はHレベルになり、出力端子C0,B0の電圧レベルは不定状態(Xレベルと表現することにする)になる。但し、他の通信モジュール等と接続されて通信システム1を構成している状態では、次のようになる。
第1段目の系列210の第1段目の通信モジュール211は、図6に示すように、前段側入力端子B1がHレベルになる。これは、当該端子B1が接続されている、第1段目のモジュール接続部110の出力端子A0が、メインユニット100においてHレベルによってプルアップされているからである。なお、図6等の例示ではHレベルにプルアップするための電源部と、プルアップ抵抗とはメインユニット100の処理部151に設けられている。
また、単体状態ではXレベル(不定レベル)になる端子C0,B0は、他のモジュールが接続されている場合には、接続先の端子B1,C1と同じ電圧レベルになる(図6参照)。
図7は、ステップST102、すなわち初期化処理における各通信モジュール200の状態を示している。かかる初期化では、各通信モジュール200において、出力端子C0,B0がLレベルに設定される。これに伴って、出力端子C0,B0の接続先である、他の通信モジュール200の入力端子B1,C1もLレベルになる。
但し、図7に示すように、各モジュール系列210,220,230の最終段を成す通信モジュール213,222,232では、後段側入力端子C1はHレベルになる。これは、上記のように、各通信モジュール200は、後段側入力端子C1に他の通信モジュール200が接続されていない場合には当該入力端子C1がHレベルに設定されるように、構成されているからである。
各通信モジュール200は、ステップST102の後、ステップST103において前段側入力端子B1がHレベルになるまで待機する。
図8および図9は、第1段目の系列210の通信モジュール211〜213がステップST103〜ST107を実行する状態、すなわちアドレス登録コマンド受信処理、アドレス登録処理および後段側出力制御を実行する状態を示している。
より具体的には、上記のように、第1段目の通信モジュール211の前段側入力端子B1はメインユニット100によってHレベルにされる。つまり、メインユニット100から当該端子B1にモジュール活性化信号が入力される。これにより、通信モジュール211において、アドレス登録コマンド受信処理が開始され、アドレス登録処理と後段側出力制御処理とが実行される。その後、通信モジュール211の動作は処理ST200(図5参照)へ移行するが、後段側入力端子C1がLレベルであるため、ステップST202において当該端子C1がHレベルに遷移するまで待機する。
後段側出力制御処理の実行により、図8に示すように、通信モジュール211の後段側出力端子C0がLレベルからHレベルに遷移される。これに連動して、後段の通信モジュール212の前段側入力端子B1がLレベルからHレベルに遷移する。つまり、第2段目の通信モジュール212にモジュール活性化信号が入力される。換言すれば、信号レベル遷移が連動することにより、モジュール活性化信号が第1段目の通信モジュール211から第2段目の通信モジュール212へ伝達される。
モジュール活性化信号を取得した第2段目の通信モジュール212は、アドレス登録コマンド受信処理と、アドレス登録処理と、後段側出力制御処理とを実行する。図9に示すように、後段側出力制御処理により通信モジュール212の後段側出力端子C0がLレベルからHレベルに遷移し、これにより第3段目の通信モジュール213へモジュール活性化信号が伝達される。通信モジュール212は、その後、処理ST200(図5参照)を開始するが、前段の通信モジュール211と同様にステップST202での待機状態になる。
第3段目の通信モジュール213も、モジュール活性化信号の受信によりステップST103〜ST107を実行し、その後、処理ST200を開始する。
図10および図11は、第1段目の系列210の各通信モジュール211〜213が処理ST200、すなわち前段側出力制御処理を実行する状態を示している。
モジュール系列210の最終段を成す通信モジュール213は、上記のように、後段側入力端子C1はHレベルに設定されている。このため、当該通信モジュール213は、ステップST201,ST202を経て、ステップST203において前段側出力端子B0をLレベルからHレベルへ遷移させる(図10参照)。
通信モジュール213の前段側出力端子B0のレベル遷移に連動して、図10に示すように、前段の通信モジュール212の後段側入力端子C1がLレベルからHレベルに遷移する。ステップST202で待機状態にある通信モジュール212は、後段側入力端子C1がHレベルに遷移したことにより、ステップST203へ移行して自身の前段側出力端子B0をLレベルからHレベルへ遷移させる(図11参照)。これに連動して、前段の通信モジュール211も、ステップST202での待機状態を脱し、ステップST203において前段側出力端子B0をLレベルからHレベルへ遷移させる(図11参照)。
ここで、上記のように、第1段目の系列210の通信モジュール211の前段側出力端子B0は、メインユニット100を介して、第2段目の系列220の通信モジュール221の前段側入力端子B1に接続されている。このため、図11に示すように、通信モジュール211の前段側出力端子B0のレベル遷移に連動して、通信モジュール221の前段側入力端子B1がLレベルからHレベルへ遷移する。これにより、通信モジュール221がアドレス登録コマンド受信処理(ステップST103〜ST105)を開始する。
かかる形態に鑑みると、系列220の第1段目の通信モジュール221には、前段の系列210の第1段目の通信モジュール211からモジュール活性化信号が伝送されることになる。
また、第2段目の系列220へのモジュール活性化信号の伝送、すなわち通信モジュール221の前段側入力端子B1のレベル遷移は、前段の系列210の通信モジュール213,212,211の前段側出力端子B0のレベル遷移の連鎖に拠る。かかる形態に鑑みると、通信モジュール213,212,211における前段側出力制御処理ST200の実行は、最終段の通信モジュール213まで到達したモジュール活性化信号を第1段目の通信モジュール211へ返送する処理に相当する。
モジュール活性化信号が入力された第2段目の系列220では、通信モジュール221,222が、第1段目の系列210の通信モジュール211〜213と同様に動作する(図12参照)。また、上記と同様にして、第2段目の系列220から第3段目の系列230へモジュール活性化信号が伝達される。そして、第3段目の系列230の通信モジュール231,232が上記と同様に動作する(図13参照)。
なお、メインユニット100は、例えば、通信モジュール200からアドレス登録終了の通知が送信されなくなった状態を以て、全ての通信モジュール200にアドレスが登録されたと判断することが可能である。あるいは、メインユニット100において最終段のモジュール接続部130の入力端子A1と処理部252とを接続することにより、当該端子A1にモジュール活性化信号が伝達したことを以て、全ての通信モジュール200でアドレス登録が終了したと判断することも可能である。但し、前者の判断手法によれば、例えばモジュール接続部110,120だけに通信モジュール200が接続される場合にも対応可能であり、利便性が高い。
通信モジュール200によれば、モジュールアドレスの登録にディップスイッチ等のスイッチ部品を利用しない。このため、通信モジュール200および通信システム1の小型化を図ることができる。
また、上記のようにモジュールアドレスの登録はメインユニット100と通信モジュール200とによって自動的に行われる。このため、ユーザによるアドレス登録作業は不要であるし、モジュールアドレスの重複登録を防止することができる。これにより、簡便な通信システム1を提供することができる。
また、後段側出力制御処理ST107の実行により、モジュール活性化信号が、ディジーチェーン接続された複数の通信モジュール200の間を前段側から順に伝送される。このため、前段側の通信モジュール200から順次、アドレス登録処理が実行される。したがって、複数の通信モジュール200に対して自動的にモジュールアドレスを登録することができる。かかる点においても通信システム1は簡便である。
また、前段側出力制御処理ST200の実行により、モジュール活性化信号が、ディジーチェーン接続された複数の通信モジュール200の間を後段側から前段側へ向けて返送される。第1段目の通信モジュール200へ返送されたモジュール活性化信号は、他のモジュール系列へ入力されて、当該系列の通信モジュール200に自動的にアドレス登録処理を開始させる。したがって、個々の系列210,220,230を識別することなく、全ての通信モジュール200についてアドレス登録することができる。かかる点においても通信システム1は簡便である。
また、後段側出力制御処理は、コマンドを利用せずに、後段側出力端子C0をHレベルに設定するだけで済む。このため、後段側出力制御処理に相当する処理を通信モジュール200の通信機能を用いてコマンドで行う場合に比べて、処理部251の処理負荷を軽減することができる。前段側出力制御処理についても同様である。
また、アドレス登録処理の実行を指示するアドレス登録コマンドとモジュール活性化信号とは、いずれもメインユニット100で発行されるが、上記のように別々の通信経路を介して各通信モジュールへ至る。このとき、アドレス登録処理を実行させる通信モジュールは、モジュール活性化信号によって、より具体的には前段側入力端子B1をHレベルに設定することによって、指定される。したがって、メインユニット100は、アドレス登録処理を実行させる通信モジュール200を、アドレス登録コマンドにおいて個々に指定する必要がない。また、アドレス登録コマンドにおいて系列210,220,230を指定する必要もない。したがって、メインユニット100の処理部151の処理負荷を軽減することができる。また、上記のようにアドレス登録コマンドを全ての通信モジュール200に対してブロードキャストすることが可能になる。
また、通信モジュール200の後段側入力端子C1は、後段の通信モジュール200が接続されていない場合には、Hレベルに設定される。このため、最終段の通信モジュール213,222,232に前段側出力制御処理を自動的に開始させることができる。これにより、簡便な通信システムを提供することができる。また、ユーザは、最終段の通信モジュール213,222,232に対して最終段であることの設定作業をする必要がない。この点においても通信システム1は簡便である。
また、メインユニット100がモジュール接続部110,120,130を接続する配線162,163を内蔵している。このため、通信モジュール200をメインユニット100に接続するだけで、通信モジュール211,221の前段側出力端子B0と、通信モジュール221,231の前段側入力端子B1とが接続される。したがって、モジュール系列210,220,230間の上記接続形態を簡単に得ることができる。かかる点においても通信システム1は簡便である。
図14に、通信システム1を応用した電力量監視システム2を概説するブロック図を示す。図14には、電力供給の主幹回路300が2つの100V供給系統と、1つの200V供給系統とを有する場合を例示している。また、図14の例では、一方の100V供給系統から3本の電力供給ライン311〜313が分岐し、他方の100V供給系統から2本の電力供給ライン321,322が分岐し、200V供給系統から2本の電力供給ライン331,332が分岐している。各電力供給ライン311〜313,321,322,331,332には分岐箇所付近に分岐ブレーカ301が挿入されている。
なお、電力供給ライン311〜313を第1または第1段目の分岐系列310と称し、電力供給ライン321,322を第2または第2段目の分岐系列320と称し、電力供給ライン331,332を第3または第3段目の分岐系列330と称することにする。
図14に例示の電力量監視システム2では、第1の分岐系列310に対して上記通信システム1の第1のモジュール系列210が設けられ、第2の分岐系列320に対して第2のモジュール系列220が設けられ、第3の分岐系列330に対して第3のモジュール系列230が設けられている。
図14に例示するように、通信モジュール211は、電力供給ライン311に取り付けられた電流測定器(例えばCTセンサ)401に接続されており、当該電流測定器401とともに電力測定モジュール400を構成している。同様に、各通信モジュール200と電流測定器401とを含んで電力測定モジュール400が構成され、かかる電力測定モジュール400が電力供給ライン311〜313,321,322,331,332のそれぞれに対して設けられている。
各電力測定モジュール400において、通信モジュール200の処理部251(図2参照)は、例えば、電流測定器401で測定された電流値と、対象となる分岐系列の電圧値(既知である)とから電力量を算出し、算出データを通信機能を利用してメインユニット100へ送信する。なお、メインユニット100は、各電力測定モジュール400から収集したデータ、情報等を外部のホスト機器へ送信してもよい。この外部通信には、例えば、主幹回路300を利用した電力線通信を利用可能である。
電力量監視システム2によれば、通信システム1が採用されているので、上記の種々の効果を享受することができる。
なお、上記では各分岐系列310,320,330が主幹回路300の各供給系統に対応付けられる場合を例示したが、かかる例示に限定されるものではない。例えば部屋毎のように電力供給先毎に、分岐系列310,320,330を選定してもよい。
また、上記の電力量監視システム2は、通信システム1を適用したセンサシステムの一例に過ぎない。すなわち、上記例示の電流測定器401に代えて各種センサを通信モジュール200と組み合わせてセンサモジュールを構成することにより、種々のセンサシステムを提供することができる。