以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る走行支援装置のブロック構成図である。図1に示す走行支援装置Mは、合流車両および車線走行車両のそれぞれに搭載されて互いに車車間通信を行い、合流車両が高速道路の合流車線から走行車線へ合流する際の走行を支援するものである。本実施形態において「走行車線」は、特許請求の範囲における「車線」あるいは「本線」に相当する。また「合流車線」は、特許請求の範囲における「支線」に相当する。
図1に示すように、走行支援装置Mは、ECU(electronic control unit)1、車車間通信部2、車速センサ3、ミリ波レーダ4、ナビゲーションシステム5、およびセンター通信部6を備えている。車車間通信部2、車速センサ3、ミリ波レーダ4、ナビゲーションシステム5、およびセンター通信部6は、それぞれECU1に接続されている。
ECU1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random AccessMemory)などを含むコンピュータから構成されている。ECU1は、車車間通信によって他車から送信される走行状態信号などを取得する。また、ECU1は、走行支援装置Mが備える車速センサ3やミリ波レーダ4などから出力される走行状態信号を取得する。ここで「走行状態信号」とは、自車の車速を示す「車速信号」、自車から自車の前方に位置する他車までの車間距離を示す「車間距離信号」、および自車の位置を示す「位置信号」である。
また、ECU1は、取得したこれらの走行状態信号などに基づいて所定の処理を実行し、合流車両が合流する際の走行を支援する。さらに、ECU1は、走行支援装置Mが備える車速センサ3やミリ波レーダ4などから取得した走行状態信号などを車車間通信部2へ出力する。
ECU1は、基準車両設定部11、走行状態取得部12、走行支援部13、およびシステム制御部14を備えている。次に、ECU1が備える各構成要素について説明する。
基準車両設定部11は、他車から送信された支援開始信号を車車間通信部2を介して取得すると、自車を基準車両に設定する。基準車両設定部11は、走行車線を走行する車線走行車両の中から合流車両が合流する位置の基準となる基準車両を設定する基準車両設定手段に相当する。
走行状態取得部12は、車車間通信部2を介して他車から走行状態信号を受信することにより、他車の走行状態を取得する。また、走行状態取得部12は、車速センサ3、ミリ波レーダ4、ナビゲーションシステム5から走行状態信号を取得し、取得した走行状態信号を車車間通信部2やセンター通信部6へ出力する。走行状態取得部12は、基準車両、基準車両に対する先行車両、および基準車両に対する後続車両の走行状態を取得する走行状態取得手段に相当する。
走行支援部13は、走行状態取得部12によって取得された走行状態信号に基づいて所定の処理を実行することにより、合流車両が走行車線へ合流する際の合流速度や、合流車両が合流する位置を設定する。走行支援部13は、走行状態取得部12によって取得された各車両の走行状態に基づいて合流車両の走行を支援する支援手段に相当する。
システム制御部14は、ECU1が行う処理手順を記憶して処理を制御する。システム制御部14には、本実施形態における合流支援に対応した処理手順が、合流支援サービスシステムとして記憶されている。システム制御部14は、自車が合流車線から走行車線へ合流する際、合流支援サービスシステムを起動する。また、システム制御部14は、合流支援サービスシステムの対象となる車両をグループ化するためのグループNoや、処理内容を規定するカウント番号を生成し、車車間通信部2を介して対象車両へ送信する。さらに、システム制御部14は、車車間通信部2を介してグループNoを受信する。また、システム制御部14は、受信したカウント番号をカウンターにセットすることにより、ECU1による処理を制御する。カウント番号に応じた処理の詳細については、後述の走行支援装置Mの動作において説明する。
また、システム制御部14には、合流支援サービスシステム以外にも、車車間通信を用いた他の走行支援に対応する処理手順が、他のサービスシステムとして記憶されている。これらのサービスシステムは、必要に応じて随時アップデート可能な構成となっている。また、制御部14に記憶された各サービスシステムには、それぞれ固有のサービスID(identification)や、システムバージョンが付されている。
車車間通信部2は、他車との車車間通信を行うものである。車車間通信部2は、他車に搭載された走行支援装置との間で無線通信手段により双方向通信することにより、走行状態信号などを受信し、受信した走行状態信号などをECU1へ出力する。また、車車間通信部2は、ECU1の走行状態取得部12から出力される走行状態信号などを取得し、取得した走行状態信号などを他車へ送信する。車車間通信部2は、車車間通信手段に相当する。
車速センサ3は、自車の車速を検出するものである。車速センサ3は、自車の車速を検出すると、検出した自車の車速を示す車速信号を生成し、生成した車速信号をECU1へ出力する。
ミリ波レーダ4は、自車から自車の前方に位置する他車までの車間距離を検出するものである。ミリ波レーダ4は、自車の前方の所定範囲においてミリ波を走査してその反射波を受信することにより、車間距離を検出する。ミリ波レーダ4による車間距離の検出は、所定時間ごとに行われる。ミリ波レーダ4は、検出した車間距離を示す車間距離信号を生成し、ECU1へ出力する。
ナビゲーションシステム5は、地図データベース(以下の説明においては「データベース」を「DB」という。)、GPS(Global Positioning System)受信機、入出力装置などを備えて構成されている。ナビゲーションシステム5は、地図DBやGPS受信機により自車の位置を検出するものである。ナビゲーションシステム5は、自車の位置を検出すると、検出した自車の位置を示す位置信号を生成し、ECU1へ出力する。また、ナビゲーションシステム5は、自車の走行に関する情報をドライバに対して表示および音声案内する機能も有している。
センター通信部6は、後述するセンターとの通信を行うものである。センター通信部6は、センターとの間で無線通信手段により双方向通信する機能を有している。センター通信部6は、ECU1の走行状態取得部12から出力される走行状態信号を取得し、取得した走行状態信号をセンターへ送信する。また、センター通信部6は、センターから発信される交通情報などを受信し、受信した情報をECU1へ出力する。
以上の構成を備える走行支援装置Mを用いた走行支援システムによる走行支援について、以下に説明する。図2は、本実施形態に係る走行支援装置を用いた走行支援システムのブロック構成図である。
図2に示すように、走行支援システムSは、車両に搭載された走行支援装置と、センター7により構成されている。図2に示す例では、ある車両に備えられた第1の走行支援装置M1と、他の車両に備えられた第2の走行支援装置M2とを示している。この第1の走行支援装置M1および第2の走行支援装置M2は、上述した走行支援装置Mと同様の構成を有している。
センター7は、交通情報DB21、地図DB22、配信データ解析部23、および交通情報提供部24を備えている。
交通情報DB21は、高速道路上の走行状況や渋滞情報などの交通情報を格納している。交通情報としては、たとえば高速道路上に設定された複数の道路リンクについての、道路リンクごとの車線走行車両の平均車速などが挙げられる。また、この交通情報は、VICS(登録商標。Vehicle Information and Communication Systems)センターやプローブ交通情報センターなどの他の情報センタとの通信によって所定時間ごとに更新される。
地図DB22は、地図データを格納している。また、この地図データにおける道路は複数の道路リンクに区切られている。地図DB22には、複数の道路リンクについての道路リンク長などが格納されている。
配信データ解析部23は、交通情報提供部24から出力される合流車両Aや車線走行車両B〜Eの位置に基づいて、配信すべき交通情報データを決定する。より具体的には、配信データ解析部23は、車線走行車両の位置に応じたエリアの交通情報や道路リンク長を交通情報DB21や地図DB22から取得し、取得した交通情報など交通情報提供部24へ出力する。
交通情報提供部24は、各車両の走行支援装置から出力される走行状態信号を受信し、受信した走行状態信号を配信データ解析部23へ出力する。また、交通情報提供部24は、配信データ解析部23から出力された交通情報などを取得し、取得した交通情報などを各車両へ配信する。
以上の構成を備えた走行支援システムSでは、図2に示すように、各車両に搭載された第1の走行支援装置M1および第2の走行支援装置M2は、双方向通信可能な構成とされている。また、第1の走行支援装置M1および第2の走行支援装置M2のそれぞれは、センター7と双方向通信可能な構成とされている。
このような走行支援システムSによる走行支援における走行支援装置Mの動作について、主に図3〜図6を参照しながら説明する。
まず、図3に示すように、サービスIDおよびグループNoなどの送受信が行われる(S1)。このステップS1では、自車が合流車線に進入し、所定の速度または位置に達すると、自車は合流車両であるとして図1のシステム制御部14によって合流支援サービスシステムが起動される。また、システム制御部14によって、合流支援サービスシステムのサービスID、グループNoおよびカウント番号0が生成される。このグループNoは、サービスIDに対応して生成されるが、生成される番号はランダムな数値である。
ここで、この合流支援サービスシステムにおいて、システム制御部14が生成するカウント番号は0〜4の5種類である。それぞれのカウント番号に応じて、次の処理が行われる。
カウント番号0では、自車を基準車両に設定し、自車の車速信号、および自車から前方直近に位置する他車までの車間距離信号を取得する。また、前方直近に位置する他車へカウント番号1を、後方直近に位置する他車へカウント番号2を送信する。カウント番号0は、走行支援の開始を示す支援開始信号に相当する。
カウント番号1では、自車の車速信号および自車から前方直近に位置する他車までの車間距離信号を取得する。また、前方直近に位置する他車の車速信号を受信および取得する。また、後方直近に位置する他車に対して、取得した車速信号および車間距離信号とともにカウント番号3を送信する。
カウント番号2では、自車の車速信号および自車から前方直近に位置する他車までの車間距離信号を取得する。また、前方直近に位置する他車に対して、取得した車速信号および車間距離信号とともにカウント番号4を送信する。
カウント番号3または4では、他車から送信された車速信号および車間距離信号を受信および取得するとともに、フラグが立っているか否かを判断する。また、フラグが立っていなければフラグを立て、フラグが立っていれば合流速度を設定し、グループ化を行う。
ステップS1において生成されたサービスID、グループNoおよびカウント番号0は、車車間通信部2を介して送信される。また、送信されたサービスID、グループNoおよびカウント番号0は、車線走行車両の中で自車に最も近い車線走行車両の走行支援装置によって受信される。
次に、システム制御部14によって、グループNoに応じたロック処理が行われる(S2)。この処理は、サービスIDおよびグループNoを受信した場合に、自車が他のサービスやグループNoに組み込まれるのを防ぐ処理である。グループNoを受信すると、この合流支援サービスシステムが終了してロックが解除されるまで、自車が他のサービスシステムやグループNoに組み込まれることが防止される。
次に、走行状態取得部12によって、自車、および先行車両の走行状態が取得される(S3)。ここでは、受信するカウント番号に応じて、自車の車速信号、および自車から前方直近に位置する他車までの車間距離信号などが取得される。また、カウント番号が0である場合、自車は基準車両に設定される。また、取得した車速信号や車間距離信号とともに所定のカウント番号が送信される。
次に、走行支援部13によって、合流速度が設定される(S4)。ここでは、ステップS3において取得した各車両の走行状態に基づいて所定の処理が行われることにより、合流車両が走行車線へ合流する際の合流速度が演算され、設定される。また、設定された合流速度を示す合流速度信号が生成される。
次に、走行支援部13によって、グループ化が行われる(S5)。ここでは、ステップS3において取得した各車両の走行状態に基づいて所定の処理が行われることにより、合流車両が合流する位置を設定する。具体的には、合流車両が自車の前方および後方のいずれの位置に合流するかが判断される。また、この判断結果に基づいて前方直近に位置する他車および後方直近に位置する他車のいずれかにグループNoが送信されることにより、そのグループNoを受信した他車はグループ化される。
また、ステップS5ではグループ化された車両が前方直近に位置する他車および後方直近に位置する他車のいずれであるかを示す合流位置信号が生成される。この合流位置信号は、合流車両が基準車両の前方および後方のいずれに合流するかを示す信号である。
次に、グループNoなどの送受信が行われる(S6)。ここでは、ステップS4において生成された合流速度信号とステップS1において受信されたグループNoとが、ステップS5において生成された合流位置信号とともに車車間通信部2を介して送受信される。
ステップS5,S6におけるグループNoの送受信によって、自車、前方直近に位置する他車および後方直近に位置する他車のいずれかの車両、および合流車両は、固有のグループNoにグループ化される。よって、これらの3台の車両は、他のサービスシステムやグループNoに組み込まれることが防止される。
次に、走行車線への合流が行われる(S7)。ここでは、走行支援部13によって、自車の走行が支援される。より具体的には、ステップS4において設定された合流速度にて、合流位置信号が示す基準車両の前方または後方に合流するように、自車の走行を制御する走行支援信号が生成される。また、生成された走行支援信号が図示しない車両制御部へ出力されることにより、自車は車両制御部に制御されて、自動的に走行車線へ合流する。
そして、ロックが解除される(S8)。ここでは、ナビゲーションシステム5によって検出した位置などによって合流の完了が検知され、グループ化された車両間において、システム制御部14と車車間通信部2とを介してロック解除信号が送受信される。これによって、合流支援サービスシステムは終了し、グループ化されていた各車両は、他のサービスシステムやグループNoに組み込まれたり、自由に走行することが可能となる。
次に、上述したステップS3における走行状態の取得、ステップS4における合流速度の設定、およびステップS5におけるグループ化の各処理について詳述する。
ステップS3における走行状態の取得では、図4に示す各処理が行われる。まず、カウント番号が判断される(S11)。
ステップS11においてカウント番号が0であると判断された場合、自車は基準車両に設定される(S12)。ここでは、車線走行車両の中で合流車両に最も近い車線走行車両が基準車両として設定される。
続いて、車速および車間距離が取得される(S13)。ここでは、車速センサ3から出力された自車の車速信号が取得される。また、ミリ波レーダ4から出力された、自車から前方直近に位置する他車までの車間距離信号が取得される。また、前方直近に位置する他車へカウント番号1が送信される。また、後方直近に位置する他車へカウント番号2が送信される。
ステップS11においてカウント番号が1また2であると判断された場合、車速および車間距離が取得される(S14)。ここでは、車速センサ3から出力された自車の車速信号が取得される。また、ミリ波レーダ4から出力された、自車から前方直近に位置する他車までの車間距離信号が取得される。また、ステップS11においてカウント番号が1であると判断された場合は、前方直近に位置する他車の車速信号が受信および取得される。
続いて、車速信号および車間距離信号の送受信が行われる(S15)。ここでは、ステップS14で取得した車速信号および車間距離信号とともに、所定のカウント番号が送信される。ステップS11においてカウント番号が1であった場合は、取得した車速信号および車間距離信号とともに、カウント番号3を、後方直近に位置する他車へ送信する。
ステップS11においてカウント番号が3または4であると判断された場合、フラグが立っているか否かが判断される(S16)。
ステップS16においてフラグが立っていないと判断された場合、フラグが立てられる(S17)。また、フラグが立てられると、ステップS11の処理に戻る。
ステップS15の処理が終了するか、またはステップS16においてフラグが立っていると判断されると、図4に示す走行状態の取得処理は終了する。
続いて、図3のステップS4における合流速度の設定処理では、主に走行支援部13によって、図5に示す各処理が行われる。まず、センター7より自車の位置に応じたエリアの交通情報や道路リンク長が取得される(S21)。ここで取得される交通情報には、この道路リンクや、その前方の道路リンクにおける走行車両の平均車速情報や渋滞情報などが含まれる。
次に、ステップS21で取得された道路リンクにおける平均車速情報が示す平均車速と、ステップS11〜S17の処理において取得した自車、前方直近に位置する他車、および後方直近に位置する他車の平均車速との差が10km/h以上であるか否かが判断される(S22)。
ステップS22において平均車速の差は10km/h以上であると判断されると、車速に重みをつけた合流速度が演算される(S23)。ここでは、道路リンクの平均車速よりも、前方直近に位置する他車、前方2台目に位置する他車、および後方直近に位置する他車の平均車速に重みをつけた演算により、合流速度が演算される。たとえば、合流速度=(道路リンク平均車速+各車両平均車速×2)÷3として、合流速度が演算される。
ステップS22において平均車速の差は10km/h未満であると判断されると、平均車速によって合流速度が演算される(S24)。ここでは、前方直近に位置する他車、前方2台目に位置する他車、および後方直近に位置する他車の平均車速として、合流速度が演算される。
次に、ステップS23またはステップS24で演算された合流速度は、前方直近に位置する他車の車速よりも大きいか否かが判断される(S25)。図5においては、前方直近に位置する他車を「第1先行車」と表わしており、以下の説明で参照する図面においても同様とする。
ステップS23またはステップS24で演算された合流速度は前方直近に位置する他車の車速よりも大きいと判断されると、その合流速度が前方2台目に位置する他車の車速よりも大きいか否かが判断される(S26)。図5においては、前方2台目に位置する他車を「第2先行車」と表わしており、以下の説明で参照する図面においても同様とする。
ステップS23またはステップS24で演算された合流速度は前方2台目に位置する他車の車速よりも大きいと判断されると、前方直近に位置する他車および前方2台目に位置する他車の車速の平均車速として、合流速度が再演算される(S27)。
ステップS25およびステップS26において、ステップS23またはステップS24で演算した合流速度は前方直近に位置する他車の車速以下であると判断されたり、前方2台目に位置する他車の車速以下であると判断されると、合流速度の再演算は行われずに次のステップへ移行する。
ステップS25〜S27のようにして、前方直近に位置する他車および前方2台目に位置する他車の少なくとも一方より合流速度を小さくすることにより、合流の際に合流車両が前方の車両に接近しすぎることが防止される。
続いて、ステップS21において取得した道路リンク長に基づいて、自車が位置する道路リンクの道路リンク長が500m未満であるか否かが判断される(S28)。
ステップS28において、自車が位置する道路リンクの道路リンク長は500m未満であると判断されると、前方の道路リンクにおける平均車速は現在の道路リンクにおける平均車速未満であるか否かが判断される(S29)。
ステップS29において、前方の道路リンクにおける平均車速が、現在の道路リンクにおける平均車速未満であると判断されると、合流速度を低減する演算が行われることにより、合流速度が設定される(S30)。ここではたとえば、合流速度が3km/h減算されて、合流速度が設定される。
ステップS28において自車が位置する道路リンクの道路リンク長が500m以上であると判断されたり、ステップS29において前方の道路リンクにおける平均車速が現在の道路リンクにおける平均車速以上であると判断されると、合流速度を低減する演算は行われないまま、合流速度が設定される。
ステップS28〜S30のようにして、道路リンク長が短い場合、センター7から取得した前方の道路リンクの交通情報を加味することで、現在の道路リンクが短い場合に、車線走行車両が前方の道路リンクを走行する車両に接近しすぎることを抑制できる。
続いて、図3のステップS5におけるグループ化処理では、主に走行支援部13によって、図6に示す各処理が行われる。まず、前方直近に位置する他車の車速は、前方2台目に位置する他車の車速よりも小さいか否かが判断される(S31)。
ステップS31において、前方直近に位置する他車の車速は、前方2台目に位置する他車の車速よりも小さいと判断されると、前方直近に位置する他車がグループ化される(S32)。
ステップS31において、前方直近に位置する他車の車速は、前方2台目に位置する他車の車速よりも大きいと判断されると、後方直近に位置する他車がグループ化される(S33)。
また、ステップS31において、前方直近に位置する他車の車速と前方2台目に位置する他車の車速とは等しいと判断されると、前方直近に位置する他車の位置が自車および前方2台目に位置する他車のいずれに寄っているかが判断される(S34)。言い換えれば、前方直近に位置する他車から前方2台目に位置する他車までの車間距離は、自車から前方直近に位置する他車までの車間距離よりも大きいか否かを判断する。
ステップS34において、前方直近に位置する他車の位置は真ん中であるか自車に寄っていると判断されると、前方直近に位置する他車がグループ化される(S32)。
ステップS34において、前方直近に位置する他車の位置が前方2台目に位置する他車に寄っていると判断されると、後方直近に位置する他車がグループ化される(S33)。
また、ステップS32,S33では、グループ化とともに、グループ化された車両が前方直近に位置する他車および後方直近に位置する他車のいずれであるかを示す合流位置信号が生成される。
以上の一連の処理によって、合流車線を走行中の合流車両が合流車線から走行車線へ合流する際の走行支援が行われる。
次に、道路においてこのような走行支援が行われる場合の、走行支援装置Mによる一連の処理を、図7〜図9を参照しながら説明する。図7は、道路において走行支援が行われる状態を示す平面図である。
図7に示すように、合流車両Aが高速道路の合流車線を走行し、複数の車線走行車両B〜Fなどが走行車線を走行している。車線走行車両Bは、車線走行車両B〜Fの中で合流車両Aに最も近いため、基準車両に相当する。合流車両Aは、走行車線の外側である合流車線を走行しながら走行車線へ合流しようとしている。
以下の説明においては、車線走行車両Bを基準車両Bともいう。また、基準車両Bの前方直近に位置する車線走行車両Cを第1先行車両Cという。また、基準車両Bの後方直近に位置する車線走行車両Dを第1後続車両Dという。また、第1先行車両Cの前方に位置する車線走行車両Eを第2先行車両Eという。
各車両A〜Eには、上述した走行支援装置Mと同様の構成を有する走行支援装置Ma〜Meが搭載されている。以下の説明においては、走行支援装置Maを合流車両走行支援装置Ma、走行支援装置Mbを基準車両走行支援装置Mb、走行支援装置Mcを第1先行車両走行支援装置Mc、走行支援装置Mdを第1後続車両走行支援装置Md、走行支援装置Meを第2先行車両走行支援装置Meという。
まず、図8に示すように、合流車両走行支援装置MaによってサービスID、グループNoおよびカウント番号0が生成され、車線走行車両B〜Eの中で合流車両Aに最も近い車線走行車両Bの基準車両走行支援装置Mbによって受信される(S41)。これによって、また、基準車両走行支援装置Mbは、ロック処理を行うとともに、自車Bを基準車両に設定する。
次に、基準車両走行支援装置Mbによって、基準車両Bの車速信号および基準車両Bと第1先行車両Cとの車間距離信号が取得される(S42)。さらに、基準車両走行支援装置Mbから第1先行車両走行支援装置Mcへカウント番号1が送信される。また、基準車両走行支援装置Mbから第1後続車両走行支援装置Mdへカウント番号2が送信される。
次に、第1先行車両走行支援装置Mcによって受信されたカウント番号1がカウンターへセットされると、第1先行車両Cの車速信号、第1先行車両Cと第2先行車両Eとの車間距離信号が取得される。また、第2先行車両走行支援装置Meから送信された第2先行車両Eの車速信号が走行支援装置Mcによって受信され、取得される(S43)。
次に、第1先行車両走行支援装置Mcによって取得された車速信号および車間距離信号が、カウント番号3とともに基準車両走行支援装置Mbへ送信される(S44)。
また、第1後続車両走行支援装置Mdによって受信されたカウント番号2がカウンターへセットされると、第1後続車両Dの車速信号、第1後続車両Dと基準車両Bとの車間距離信号が取得される。(S45)。
次に、第1後続車両走行支援装置Mdによって取得された車速信号および車間距離信号が、カウント番号4とともに基準車両走行支援装置Mbへ送信される(S46)。
こうして、ステップS41〜S46の処理において、基準車両走行支援装置Mbによって、基準車両B、第1先行車両C、第2先行車両E、および第1後続車両Dについての車速信号が取得される。また、基準車両Bと第1先行車両C、第1先行車両Cと第2先行車両E、および第1後続車両Dと基準車両Bの車間距離を示す車間距離信号が取得される。言い換えれば、基準車両走行支援装置Mbは、基準車両B、第1先行車両C、第1後続車両Dおよび第2先行車両Eの走行状態を取得する。
次に、図9に進み、基準車両走行支援装置Mbによって、基準車両Bが位置する道路リンクにおける平均車速情報や道路リンク長が取得される(S47)。
続いて、基準車両走行支援装置Mbによって、ステップS44およびステップS46において送信された各車両B〜Eの走行状態信号と、ステップS47において取得された平均車速情報とに基づいて、合流速度が演算される(S48)。ここでは、基準車両走行支援装置Mbは、基準車両B、第1先行車両C、および第1後続車両Dの車速信号に基づいて、合流車両Aが走行車線へ合流する際の合流速度を演算する。
次に、基準車両走行支援装置Mbによって、基準車両Bが位置する道路リンクの道路リンク長や、その道路リンクにおける平均車速情報およびその前方の道路リンクにおける平均車速情報などに基づいて、合流速度が設定される。(S49)。また、設定された合流速度を示す合流速度信号が生成される。
次に、基準車両走行支援装置Mbによって、第1先行車両Cおよび第1後続車両Dのいずれかがグループ化され、合流位置信号が生成される(S50)。
続いて、基準車両走行支援装置Mbによって、ステップS49において生成された合流速度信号とステップS41において受信されたグループNoとが、ステップS50において生成された合流速度信号とともに、合流車両走行支援装置Maへ送信される(S51)。
次に、合流車両走行支援装置Maによって合流車両Aの走行が支援され、合流車両Aは自動的に走行車線へ合流する(S52)。
そして、合流車両走行支援装置Maによってロック解除信号が生成され、基準車両走行支援装置Mbおよびグループ化された車両の走行支援装置(第1先行車両走行支援装置Mcまたは第1後続車両走行支援装置Md)へ送信され、ロックが解除される(S53)。
このように、本実施形態に係る走行支援装置Mによれば、走行車線を走行する車線走行車両B〜Eの中から合流車両Aが合流する位置の基準となる基準車両Bが設定される。また、通常、基準車両Bの前後には先行車両および後続車両が存在する。このうち、基準車両の前方直近に位置する第1先行車両Cおよび後方直近に位置する第1後続車両Dは、たとえば車速や基準車両Bとの車間距離が場合によって異なっていることが考えられる。このため、基準車両B、第1先行車両Cおよび第1後続車両Dの走行状態によって、走行車線への合流に適した速度や位置は異なる。よって、基準車両B、第1先行車両Cおよび第1後続車両Dの走行状態に基づいて合流車両Aの走行が支援されることにより、スムーズな合流が可能となる。
また、基準車両B、第1先行車両Cおよび第1後続車両Dの走行状態のみに基づいて合流車両が合流すると、第1先行車両Cの前方に位置する第2先行車両Eの位置や速度などによっては、第1先行車両Cと第2先行車両Eとが接近しすぎる場合がある。よって、基準車両B、第1先行車両Cおよび第1後続車両Dの走行状態のみならず、第2先行車両Eの走行状態にも基づいて合流車両Aの走行が支援されることにより、走行車線を走行する車両同士が接近しすぎることを抑制できる。
また、本実施形態に係る走行支援装置Mによれば、車線走行車両B〜Eの速度に基づいて設定された合流速度にて合流車両Aが合流するため、車線走行車両B〜Eの速度に合わせた合流が可能となり、合流車両Aは基準車両Bの前方または後方にスムーズに合流できる。
また、本実施形態に係る走行支援装置Mによれば、車線走行車両B〜Eの中で合流車両Aに最も近い車線走行車両を基準車両Bとして設定するため、合流に必要な速度や位置の調整量を最小限に抑えることができ、スムーズに合流できる。
また、本実施形態に係る走行支援装置Mによれば、走行車線に隣接する合流車線を走行中の合流車両Aが走行車線へ合流する際、走行車線を走行する車両同士が接近しすぎることを抑制しながら、スムーズな合流が可能となる。
また、本実施形態に係る走行支援装置Mによれば、道路に走行支援システムが組み込まれていなくても、車車間通信によって走行支援が可能となる。これによって、路車間通信などを用いずに車載装置同士の車車間通信による走行支援が可能となり、道路管理者のシステム整備負担を抑制できる。
また、本実施形態に係る走行支援装置Mによれば、システムサービスに応じたグループNoを生成し、このグループNoを受信した車両同士が、他のシステムサービスにグループ化されることが防止される。また、ロック解除信号の誤受信が防止される。また、サービスシステム起動車(上記実施形態では合流車両A)がサービスシステム外の走行をした際、フェールセーフ通信の送り先が特定できる。
このような例を、図10および図11を用いて説明する。図10(a)では合流車両Aが合流車線から走行車線へ合流する際、基準車両Bおよび第1先行車両CがグループGにグループ化されている。図10(b)に示すように、合流車両Aが合流を完了すると、合流車両Aから基準車両Bおよび第1先行車両Cへ、ロック解除信号が送信される。基準車両Bおよび第1先行車両Cがロック解除信号を受信すると、合流支援サービスシステムは終了し、グループGに組み込まれていた車両A〜Cは図10(c)に示すように自由な走行が可能となる。
また、図11に示す例では、車両A〜Cは合流サービスシステムSV1に対応するグループG1に組み込まれており、車両D,Eは他のサービスシステムSV2に対応するグループG2に組み込まれている。この状況において、グループG1とG2との間で行われる車車間通信においては、それぞれのサービスシステムSV1,SV2に影響を与えない範囲での行動や通信が行われる。
具体的には、車両A〜Cの走行支援装置は、グループG1のグループNoを受信してロック処理を行った後に車車間通信によりサービスシステムSV2についてのカウント番号を受信すると、受信したカウント番号から、サービスシステムSV1やグループG1に影響なく行動できるか否かを判断する。この判断の結果、車両A〜Cの走行支援装置は、行動できる場合はサービスシステムSV2のカウント番号に応じた行動を行い、行動できない場合はグループG1にロック中であることを示すロック信号を車両D,Eの走行支援装置へ送り返す。
なお、合流支援サービスシステム以外のサービスシステムとしては、たとえば自動車線変更サービスシステムや交差点情報サービスシステムなどが挙げられる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態では、基準車両走行支援装置Mbの走行状態取得部12は、基準車両Bの前方直近に位置する第1先行車両Cおよび後方直近に位置する第1後続車両Dの走行状態と、第1先行車両Cの前方に位置する第2先行車両Eの走行状態とに基づいて合流車両Aの走行を支援する場合について説明したが、第2先行車両Eに替えて、第1後続車両Dの後方に位置する第2後続車両F(図7参照)の走行状態に基づいて支援を行ってもよい。このようにすれば、第1後続車両Dの後方に位置する第2後続車両Fと第1後続車両Dとが接近しすぎることを抑制できる。
また、上記実施形態では、走行車線を走行する車両の位置や速度によってグループ化する車両を決定したが、位置や速度に限らず、たとえば車両の加速度を走行状態として取得してグループ化対象車を決定してもよい。また、上記実施形態では、走行支援部13による自動制御にて合流車両Aが走行車線へ合流する場合について説明したが、走行支援部13からナビゲーションシステム5へ合流速度信号や合流位置信号を出力し、ナビゲーションシステムの表示や音声案内によってドライバに合流速度や合流位置を報知することにより走行支援を行ってもよい。
また、上記実施形態では高速道路の合流車線から走行車線へ合流する場合について説明したが、車車間通信を用いた本発明は、たとえば一般道における合流や車線変更において適用してもよい。この場合、合流先の車線や車線変更先の車線が、特許請求の範囲における「車線」に相当する。