図1は本発明のガス分離装置の一形態例を示す系統図、図2は半導体製造装置の一例を示す系統図である。このガス分離装置は、クリプトン、キセノン及びネオンの少なくとも1種を雰囲気ガスとして使用する半導体製造装置11から排出される排ガス中に含まれる不純物成分を分離除去するとともに、雰囲気ガスとして再利用可能な状態に精製した混合ガスを回収できるように形成されている。
このガス分離装置における主要な機器として、ガス流れの上流側から順に、脱硝工程を行う脱硝触媒反応手段21と、主としてアンモニア及び水蒸気を吸着させて分離する第1吸着分離工程を行う第1吸着分離手段31と、クリプトン、キセノン及びネオンを吸着させて水素やヘリウムを分離する第2吸着分離工程を行う第2吸着分離手段41とを備えている。
さらに、第2吸着分離手段41の後段には、第2吸着分離手段41で回収したガスを更に精製する第3吸着分離工程を行う第3吸着分離手段51が設けられ、脱硝触媒反応手段21の前段には、アンモニア又は窒素酸化物を除去する触媒反応工程を行う触媒反応手段61が設けられている。
図2に示すように、半導体製造装置11は、ガスパネル12からガス供給経路13を通して処理チャンバ14内に所定のガスを供給し、処理チャンバ14内を所定の雰囲気として基体の処理を行うものであって、処理チャンバ14の排気経路15には、前述のように、処理状態に応じた組成の排ガスが排出される。排気経路15には、処理チャンバ14からガスを吸引するためのブースターポンプ16、ブースターポンプ16から吐出された排ガスをガス分離装置に送るための回収用バックポンプ17、ブースターポンプ16から吐出された排ガスを系外に排出するための排気側バックポンプ18が設けられている。
各ポンプ16,17,18には、不純物の逆拡散や大気の巻き込みを防止するためのシールガスを導入するシールガス導入部16a,17a,18aがそれぞれ設けられており、ガス導入部16a,17aからは窒素又はアルゴンが、ガス導入部18aからは窒素がそれぞれ導入されている。
回収用バックポンプ17に吸入された排ガス、すなわち、雰囲気ガスとして用いられたクリプトン、キセノン及びネオンの内の少なくとも1種のガス、パージガスとして用いられた窒素又はアルゴン、ポンプに導入された窒素やアルゴン、そして、基体処理用に添加されたガス及び処理中に反応又は分解により発生したガス、例えば、窒素酸化物、アンモニア、水素、酸素、窒素、水蒸気、二酸化炭素、ヘリウム等を不純物として含む混合ガスからなる排ガスは、回収用バックポンプ17から排ガス回収経路19を通ってガス分離装置に導入される。
なお、雰囲気ガスには、クリプトン、キセノン、ネオンのような高付加価値ガスを単独で用いるほか、これらの混合ガス、さらに、これらとアルゴンとを所定の割合で混合したガスを用いることがある。本発明では、高付加価値ガスとアルゴンとを混合して雰囲気ガスとして用いるときには、この高付加価値ガスとアルゴンとの混合ガスも高付加価値ガスとみなす。高付加価値ガスとアルゴンとを混合した雰囲気ガスを用いた場合は、排ガス中にアルゴンが相当量含まれていることになる。また、各ポンプ16,17,18にシールガスとして窒素を導入している場合には、相当量の窒素も含まれている。
ガス分離装置に導入された排ガスは、最初に触媒反応手段61に導入されて触媒反応工程が行われる。この触媒反応手段61は、反応筒62内に脱硝触媒を充填したものであって、脱硝触媒に排ガスを接触させることにより、排ガス中に含まれる窒素酸化物及びアンモニアとを反応させてこれらの少なくともいずれか一方を排ガス中から除去する。前記脱硝触媒には、一般的に市販されているものを使用することができ、反応温度は、触媒の種類や使用量、窒素酸化物及びアンモニアの濃度や排ガスの流量等の各種操作条件に応じて好適な温度に設定すればよいが、通常は250℃以上、好ましくは300℃程度である。また、触媒反応温度への加熱には、反応筒62の入口部に加熱器を設けて筒内に流入する排ガスを加熱してもよく、反応筒62にヒーター等の加熱手段を設けるようにしてもよい。
反応筒62に流入した排ガス中に共存する窒素酸化物とアンモニアとは、所定温度で脱硝触媒と接触することにより、窒素酸化物である一酸化二窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)とアンモニアとが反応してそれぞれ窒素と水蒸気とに転化する。
3N2O+2NH3 → 4N2+3H2O
6NO+4NH3 → 5N2+6H2O
6NO2+8NH3 → 7N2+12H2O
このとき、排ガス中にアンモニアと酸素とが共存している場合には、アンモニアと酸素との反応も同時に生じて窒素及び水蒸気に転化する。
3O2+4NH3 → 2N2+6H2O
さらに、触媒反応手段61に流入する前に窒素酸化物とアンモニアとが反応して硝酸アンモニウムが生成していた場合は、この硝酸アンモニウムも最終的に窒素と水蒸気とに転化される。
NH4NO3+NO → NO2+N2+2H2O
NO+NH3 → N2+2/3H2O
NO+NO2+2NH3 → N2+3H2O
これらの触媒反応は、排ガス中に窒素酸化物とアンモニアとが共存しているとき、硝酸アンモニウムが既に生成しているとき、アンモニアと酸素とが共存しているときの少なくともいずれか一つの条件を満たしたときに発生し、例えば、排ガスにアンモニアが全く含まれていないときには、硝酸アンモニウムも生成しないので、これらの触媒反応は発生せず、不要な工程となるが、半導体製造装置11での処理が特定されていない場合には、排ガス中に窒素酸化物とアンモニアとが共存する可能性があるため、装置最上流部に設けておくことが好ましい。
排ガス中に窒素酸化物とアンモニアとが共存しているときには、前記触媒反応によっていずれか一方が消滅した時点で触媒反応は終了する。例えば、窒素酸化物がアンモニアより多く含まれているときには、アンモニアが消滅した時点で余剰の窒素酸化物を残した状態で触媒反応は終了する。また、アンモニアが窒素酸化物より多く含まれているときには、窒素酸化物が消滅した時点で余剰のアンモニアを残した状態で触媒反応は終了する。但し、排ガス中に窒素酸化物が全く含まれていない状態でも、排ガス中にアンモニアと酸素とが共存していれば、両者の反応は発生する。なお、排ガス中に酸素と水素とが共存している場合には、酸素と水素との反応によって水蒸気が発生する。
このような触媒反応手段61を設けて排ガス中の窒素酸化物及びアンモニアの少なくともいずれか一方を除去する触媒反応工程を行うことにより、触媒反応手段61より下流側で窒素酸化物とアンモニアとが反応して硝酸アンモニウムを生成することを防止できる。
すなわち、半導体製造装置11から排出される排ガス中に窒素酸化物、特に二酸化窒素とアンモニアとが共存している場合、排ガスが流れる配管中で二酸化窒素とアンモニアとが反応して硝酸アンモニウムが生成し、配管壁面や弁等の機器内面に固形物として付着、堆積し、排ガス配管が閉塞したり、機器の動作を阻害するおそれがある。
このため、従来は、硝酸アンモニウムの液化点を超える170℃以上、あるいは、硝酸アンモニウムの分解温度である210℃以上に配管や機器を加熱し、排ガス配管の閉塞や機器の動作不良が発生しないようにしていた。しかし、弁や計器類を含めた排ガス配管系全体を常に加温している必要があるだけでなく、弁等も耐熱仕様にする必要があり、さらに、断熱構造を採用するなど、設備コストや運転コストが大幅に上昇するといった問題があった。
これに対し、排ガス回収経路19に触媒反応手段61を設置して窒素酸化物及びアンモニアの少なくともいずれか一方を除去することにより、触媒反応手段61から下流側の配管系で硝酸アンモニウムが生成することがなくなるので、配管や機器を加熱する必要がなくなる。特に、反応筒62を可能な限り半導体製造装置11の近くに設けることにより、排ガス中に窒素酸化物とアンモニアとが共存している場合でも、硝酸アンモニウムの生成に起因する不都合を避けるために加熱が必要な排ガス回収経路19を短くすること、あるいは、加熱手段を省略又は簡略化することが可能となり、配管系の加熱に要するコスト上昇を最小限に抑えることができる。
触媒反応手段61から出口径路63に導出した排ガスは、脱硝触媒反応手段21の入口経路22を通り、該脱硝触媒反応手段21の入口側に接続された還元性物質添加経路23から添加される還元性物質、例えば水素やアンモニアと混合した状態で脱硝触媒反応手段21に導入されて脱硝工程が行われる。入口経路22には、流量計(マスフローメーター)22Fが設けられて流量が計測されており、還元性物質添加経路23には流量調節計(マスフローコントローラー)23Fが設けられて還元性物質の流量(添加量)が調節され、窒素酸化物を転化させて除去するのに十分な量の還元性物質を添加するように形成されている。
脱硝触媒反応手段21は、脱硝触媒反応筒24内に脱硝触媒を充填したものであって、脱硝触媒には、前記反応筒62に使用した脱硝触媒と同じものを同じようにして用いることができ、加熱も同じようにしてできる。還元性物質として水素を排ガスに添加したときには、下記に示す脱硝触媒反応により、排ガス中に含まれる一酸化二窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO2)を、それぞれ窒素と水蒸気とに転化する。また、酸素が含まれているときには、酸素と水素との反応も同時に発生する。
2NO+2H2 → N2+2H2O
2NO2+4H2 → N2+4H2O
N2O+H2 → N2+H2O
O2+2H2 → 2H2O
この脱硝触媒反応手段21による脱硝工程は、排ガス中に窒素酸化物が全く含まれていない場合には不要な工程であるが、前述のように、半導体製造装置11での処理が特定されていない場合には、排ガス中に窒素酸化物が含まれている可能性があり、窒素酸化物は、通常の吸着分離では排ガス中から分離除去することが困難であるから、僅かでも窒素酸化物が含まれている場合があることを考慮して分離装置上流側に設けておく必要がある。
脱硝触媒反応手段21で窒素酸化物を除去し、さらに、酸素が含まれている場合には酸素もある程度除去した状態で脱硝筒出口径路25に導出された排ガスは、第1圧縮機25Cにより第1吸着分離手段31の第1導入経路32に送り出され、第1導入経路32を通って第1吸着分離手段31に導入され、この第1吸着分離手段31でアンモニアや水蒸気を除去する第1吸着分離工程が行われる。
第1吸着分離手段31は、一対の第1吸着筒33a,33b内に、アンモニア及び水蒸気を易吸着性ガス成分とする第1吸着剤を充填し、TSA操作によってアンモニア及び水蒸気を分離除去するものであって、相対的に低い温度で行う吸着工程で第1吸着剤にアンモニア及び水蒸気を吸着させることによって排ガス中からアンモニア及び水蒸気を除去し、相対的に高い温度で行う再生工程で第1吸着剤に吸着しているアンモニア及び水蒸気を第1吸着剤から脱着させて第1吸着剤を再生するように形成されている。なお、排ガス中に二酸化炭素が含まれている場合は、この二酸化炭素も第1吸着剤に吸着して同時に排ガス中から分離除去される。
前記第1吸着筒33a,33bには、両第1吸着筒33a,33bを吸着工程と再生工程とに切換使用するための入口側経路34a,34bと、出口側経路35a,35b及び再生経路36a,36bとがそれぞれ設けられている。さらに、入口側経路34a,34bには、各第1吸着筒33a,33bの再生工程時に排出されるガスを系外に排気するための排気経路37が設けられ、出口側経路35a,35bには、吸着工程で第1吸着剤に吸着しなかったガス成分を導出する第1導出経路38が設けられ、再生経路36a,36bには再生工程で使用する再生ガスを導入するための再生ガス導入経路39が設けられている。なお、図示は省略するが、第1吸着分離手段31の各経路には、両第1吸着筒33a,33bを吸着工程と再生工程とに交互に切り換えるための弁がそれぞれ設けられている。
前記第1吸着剤としては、活性炭、シリカゲル、各種ゼオライト等を使用することができ、特に、カリウムイオン交換A型ゼオライトは、水蒸気及びアンモニアだけでなく、二酸化炭素も十分に吸着する能力を有しながら、高付加価値ガスをほとんど吸着しないという性質を有しているので、これを吸着剤として採用することにより、高付加価値ガスの回収をより効率よく行うことができる。
第1吸着分離手段31において、例えば、図1において左側の一方の第1吸着筒33aが吸着工程を行っている場合、前記脱硝筒出口径路25に導出されて第1圧縮機25Cから送り出された排ガスは、第1導入経路32から入口側経路34aを通って第1吸着筒33aに導入され、排ガス中の水蒸気やアンモニア、二酸化炭素が第1吸着剤に吸着されて分離除去される。水蒸気やアンモニア、二酸化炭素が除去された排ガスは、出口側経路35aから第1導出経路38に導出する。
他方の第1吸着筒33bでは再生工程が行われており、所定温度に加温された再生ガスが再生ガス導入経路39から再生経路36bを通して第1吸着筒33b内に導入され、第1吸着剤を加温することによって水蒸気やアンモニア、二酸化炭素を脱着させ、入口側経路34bから排気経路37を通して系外に排出する。両第1吸着筒33a,33bは、前記各経路に設けられている弁をあらかじめ設定されたタイミングで開閉することによって吸着工程と再生工程とに交互に切換えられ、排ガス中の水蒸気、アンモニア、二酸化炭素の吸着除去を連続的に行う。
第1吸着分離手段31で水蒸気及びアンモニア、更に二酸化炭素が除去された排ガスは、排ガス中に元から不純物として含まれている水素及びヘリウムに加えて前記脱硝工程で添加された水素を含み、シールガスとして用いた窒素やアルゴン、高付加価値ガス以外の雰囲気ガス成分としてのアルゴン等を含んだ状態となる。
第1吸着分離手段31の吸着工程で第1導出経路38に導出された排ガスは、第1バッファタンク38Bを介して第2吸着分離手段41の第2導入経路42に流入し、第2圧縮機42C,第2バッファタンク42Bを通って第2吸着分離手段41に導入され、脱着回収工程を含む第2吸着分離工程が行われる。
第2吸着分離手段41は、一対の第2吸着筒43a,43b内に、高付加価値ガス(クリプトン、キセノン及びネオン)を易吸着性ガス成分とする第2吸着剤を充填し、該第2吸着剤に対して難吸着成分である水素及びヘリウムをPSA操作によって分離除去するものであって、相対的に高い圧力で行う吸着工程で第2吸着剤に高付加価値ガスを吸着させるとともに、第2吸着剤に吸着しなかった水素及びヘリウムを吸着筒から排出することによって排ガス中から除去し、相対的に低い圧力で行う再生工程で第2吸着剤に吸着している高付加価値ガスを脱着させるとともに、出口側からパージガスを吸着筒43a,43b内に導入して高付加価値ガスを回収するとともに第2吸着剤を再生するように形成されている。
前記第2吸着筒43a,43bには、両第2吸着筒43a,43bを吸着工程と再生工程とに切換使用するための入口側経路44a,44bと、出口側経路45a,45b及びパージガス入口経路46a、46bとがそれぞれ設けられている。さらに、入口側経路44a,44bには、各第2吸着筒の再生工程時に排出される高付加価値ガスを回収するための回収経路47及び第1バッファタンク38Bに循環させるための第1循環経路48が設けられ、出口側経路45a,45bには、吸着工程で第1吸着剤に吸着しなかった水素やヘリウムを、第3バッファタンク49Bから流量調節計(マスフローコントローラー)49Fを介して排出する第2導出経路49と、再生工程で使用するパージガスを流量調節計(マスフローコントローラー)50Fを介して第3バッファタンク49Bに導入するためのパージガス導入経路50とが設けられている。なお、図示は省略するが、第2吸着分離手段41の各経路には、両第2吸着筒43a,43bを吸着工程と再生工程とに交互に切り換えるための弁がそれぞれ設けられている。
前記第2吸着剤には、平衡分離型吸着剤である活性炭を使用することが好ましい。この活性炭は、PSA操作の吸着工程のような比較的高圧下での平衡吸着量として高付加価値ガスの吸着量が多く(易吸着性)、窒素の吸着量が少なく(難吸着性)、水素及びヘリウムをほとんど吸着しないという特性を有しており、前記排ガス中の水素、ヘリウム、窒素を分離除去するのに最適である。
また、パージガス導入経路50から導入するパージガスとしては、水素及びヘリウムを含まないガス、後段の第3吸着分離手段51で容易に分離可能で除去対象不純物が少ないガス、例えば高純度アルゴンや高純度窒素、高純度酸素等を使用することができるが、通常は、第2吸着分離手段41で処理するガス中に比較的多量に存在するガス、例えば、雰囲気ガスとして高付加価値ガスとアルゴンとの混合ガスを用いている場合には高純度アルゴンを使用することが好ましい。なお、PSA操作を適当に設定することにより、前記条件に該当しないガスをパージガスとして使用することも可能であるが、最終的な高付加価値ガスの回収効率が低下したり、不純物が混入したりすることがあるので好ましくない。
第2吸着分離手段41において、例えば、図1において左側の一方の第2吸着筒43aが吸着工程を行っている場合、前記第1吸着分離手段31から第1導出経路38に導出された排ガスは、第2導入経路42の第2圧縮機42Cで所定の吸着工程圧力に昇圧され、第2バッファタンク42Bから入口側経路44aを通って一方の第2吸着筒43a内に導入され、排ガス中の高付加価値ガスが第2吸着剤に吸着されて筒内に保持され、第2吸着剤に吸着しなかった水素やヘリウム、第2吸着剤に吸着し難い窒素やアルゴンが出口側経路45aから導出され、第3バッファタンク49B、流量調節計49Fを通って第2導出経路49から排出される。
他方の第2吸着筒43bでは、脱着回収工程を含む再生工程が行われており、第2吸着筒43b内が所定の再生工程圧力に減圧されて第2吸着剤に吸着している高付加価値ガスが脱着するとともに、第3バッファタンク49B内のガスの一部がパージガスとしてパージガス入口経路46bから第2吸着筒43b内に導入され、第2吸着剤から脱着した高付加価値ガスを入口側経路44bから導出させる。このとき、第3バッファタンク49Bには、パージガス導入経路50から流量調節計50Fを介して水素やヘリウムを含まないガスが導入されており、吸着工程で一方の第2吸着筒43aから導出されるガスよりも水素やヘリウムの含有量が少ないガスがパージガスとして他方の第2吸着筒43bに導入されている。
この再生工程において、再生工程開始直後は、第2吸着筒43b内の第2吸着剤に吸着されていないガス、すなわち、水素、ヘリウム、窒素等の高付加価値ガス以外の難吸着性ガスが含まれているガスが第2吸着筒43bから入口側経路44bに導出されるので、このときに導出されたガスは、第1循環経路48を通して圧力の低い第1バッファタンク38Bに循環させている。また、再生工程終了直前に第2吸着筒43bから入口側経路44bに導出されるガスも、第3バッファタンク49Bから第2吸着筒43bに導入されたパージガスが、第2吸着剤から脱着した高付加価値ガスと共に入口側経路44bに導出される可能性があるので、このときに入口側経路44bに導出されるガスも第1循環経路48を通して第1バッファタンク38Bに循環させている。
このように、再生工程開始直後、終了直前に入口側経路44bに導出されるガスを第1バッファタンク38Bに循環させ、中間段階の脱着回収工程で入口側経路44bに導出されるガスのみを回収経路47に回収することにより、水素、ヘリウム、窒素等の不純物成分を含むガスを第1バッファタンク38Bに循環させ、前記排ガスと合流させて第2吸着分離手段41で再び処理することにより、高付加価値ガスの回収率向上及び純度向上を図ることができる。
両第2吸着筒43a,43bは、前記各経路に設けられている弁をあらかじめ設定されたタイミングで開閉することによって吸着工程と再生工程とに交互に切換えられ、排ガス中の水素やヘリウム、窒素の分離除去を連続的に行う。第2吸着分離手段41の再生工程における中間段階で回収経路47に導出された排ガスの組成は、パージガスとして使用した窒素やアルゴンが高付加価値ガスに混合した状態となっており、その他のガス成分はほとんど除去された状態となっている。この排ガスは、回収経路47から第4バッファタンク47Bに回収され、第3吸着分離手段51の第3導入経路52、第3圧縮機52C、第5バッファタンク52Bを通って第3吸着分離手段51に導入され、第3吸着分離工程が行われる。
第3吸着分離手段51は、一対の第3吸着筒53a、53b内に、高付加価値ガスを難吸着性ガス成分とし、窒素や酸素を難吸着性ガス成分とする第3吸着剤を充填し、該第3吸着剤に対して易吸着性ガス成分である窒素や酸素をPSA操作によって分離除去するものであって、相対的に高い圧力で行う吸着工程で窒素や酸素を第3吸着剤に吸着させるとともに、第3吸着剤に吸着しなかった高付加価値ガスを第3吸着筒53a、53bから回収することによって高付加価値ガスと窒素や酸素とを分離し、相対的に低い圧力で行う再生工程で第3吸着剤に吸着している窒素や酸素を脱着させて第3吸着剤を再生するように形成されている。
第3吸着筒53a、53bには、両第3吸着筒53a、53bを吸着工程と再生工程とに切換使用するための入口側経路54a、54bと、出口側経路55a、55b及びパージガス入口経路56a,56bとがそれぞれ設けられている。さらに、入口側経路54a、54bには、各第3吸着筒53a、53bの再生工程時に導出されるガスを排気又は前記第4バッファタンク47Bに循環させるための排気循環経路57,57aが設けられ、出口側経路55a、55bには、吸着工程で第3吸着剤に吸着しなかったガス、すなわち、高付加価値ガスを第6バッファタンク58Bを介して導出する第3導出経路58が設けられている。なお、図示は省略するが、第3吸着分離手段51の各経路には、両第3吸着筒53a、53bを吸着工程と再生工程とに交互に切り換えるための弁がそれぞれ設けられている。
さらに、前記第4バッファタンク47Bには、高付加価値ガス導入源71から導入弁72Vを介して第4バッファタンク47Bに高付加価値ガスを導入する高付加価値ガス導入経路72と、第3圧縮機52Cから吐出されたガスの一部を抜き出して第4バッファタンク47Bに循環させる第1分析経路73と、第6バッファタンク58B内のガスの一部を抜き出して第4バッファタンク47Bに循環させる第2分析経路74とが設けられ、第1分析経路73及び第2分析経路74には、第1分析計73A及び第2分析計74Aがそれぞれ設けられ、第1分析計73Aの分析結果に基づいて前記導入弁72Vを開閉制御するように形成している。
第3吸着分離手段51で使用する第3吸着剤には、速度分離型吸着剤であるゼオライト4A(Na−A型ゼオライト)を使用することが好ましい。このゼオライト4Aは、比較的分子径の大きい高付加価値ガスに比べて高付加価値ガスより分子径の小さい窒素や酸素を吸着しやすいという特性を有している。この特性は、一般に速度分離型と呼ばれる分離特性であり、適当な吸着時間を選定すれば、窒素や酸素を選択的に吸着させながら、高付加価値ガスを吸着させない状態にすることが可能である。
第3吸着分離手段51において、例えば、図1において左側の一方の第3吸着筒53aが吸着工程を行っている場合、前記第2吸着分離手段41から回収経路47に導出されたガスは、第3導入経路52の第3圧縮機52Cで所定の吸着工程圧力に昇圧され、第5バッファタンク52Bから入口側経路54aを通って一方の第3吸着筒53a内に導入され、ガス中の窒素や酸素が第3吸着剤に吸着されて筒内に保持され、第3吸着剤に吸着しなかった高付加価値ガスが出口側経路55aから第6バッファタンク58Bに導出される。
他方の第3吸着筒53bでは再生工程が行われており、第3吸着筒53b内を所定の再生工程圧力に減圧して第3吸着剤に吸着している窒素や酸素を脱着させるとともに、第6バッファタンク58内の高付加価値ガスの一部をパージガス入口経路56bからパージガスとして導入し、第3吸着剤から脱着した窒素や酸素を入口側経路54bを通して排気循環経路57に導出させる。
この再生工程において、再生工程の開始直後には、第3吸着筒53b内の第3吸着剤に吸着されていないガス、すなわち、高付加価値ガスを多く含むガスが排気循環経路57に導出されるので、このときに導出されたガスは、前記第4バッファタンク47Bに循環回収される。また、再生工程終了直前に第3吸着筒53bから排気循環経路57に導出されるガスも、第6バッファタンク58Bから第3吸着筒53bに導入されたパージガスが、第3吸着剤から脱着した窒素や酸素と共に排気循環経路57に導出される可能性があるので、このときに排気循環経路57に導出されるガスも第4バッファタンク47Bに循環回収するようにしている。
このように、再生工程開始直後及び終了直前に排気循環経路57に導出される高付加価値ガス含有ガスを第4バッファタンク47Bに循環回収して再処理を行い、中間段階で排気循環経路57に導出されるガスを経路57aから系外に排出することにより、高付加価値ガスの回収率向上を図ることができる。
両第3吸着筒53a、53bは、前記各経路に設けられている弁をあらかじめ設定されたタイミングで開閉することによって吸着工程と再生工程とに交互に切換えられ、ガス中の窒素や酸素の吸着除去を連続的に行う。第3吸着筒53a、53bの吸着工程で第6バッファタンク58Bに導出されたガスは、これまでの各工程で、排ガス中から窒素酸化物、アンモニア、水素、酸素、窒素、水蒸気、二酸化炭素、ヘリウム等の不純物が100ppm以下まで除去され、雰囲気ガスとして使用可能な状態の高付加価値ガスとなっている。
なお、雰囲気ガスとして高付加価値ガスとアルゴンとの混合ガスを使用するときには、第2吸着分離手段41のパージガスとしてアルゴンを使用することにより、第6バッファタンク58B内のガスを高付加価値ガスとアルゴンとの混合ガスにすることができる。このときの高付加価値ガスとアルゴンとの組成比は、高付加価値ガス導入経路72からの高付加価値ガスの導入量を制御することによって所定の組成比に調節することができる。
第6バッファタンク58B内のガス(高付加価値ガス)は、その一部が分析のために前記第2分析経路74に抜き出され、第2分析計74Aで組成分析が行われた後、第4バッファタンク47Bに循環する。第6バッファタンク58Bから第3導出経路58に導出された高付加価値ガスは、流量調節計(マスフローコントローラー)58Fで流量調節されて精製器75に導入され、この精製器75で更に高度に精製された後、前記ガスパネル12から前記半導体製造装置11に供給されて循環再利用される。
また、半導体製造装置11に高付加価値ガスを供給しない待機中には、流量調節計(マスフローコントローラー)76Fから高付加価値ガス循環経路76を通して第1バッファタンク38B及び第4バッファタンク47Bに高付加価値ガスを循環させるようにしている。
前記精製器75には、チタン、バナジウム、ジルコニウム、鉄、ニッケル等の金属あるいは合金を用いたゲッター式精製器が好適に用いられ、この精製器75で高付加価値ガスを精製することによって高付加価値ガス中に極微量に残存していた不純物の濃度を更に減少させることができる。
本形態例に示すように、触媒反応手段61、脱硝触媒反応手段21、第1吸着分離手段31、第2吸着分離手段41及び第3吸着分離手段51をこの順に配置し、触媒反応工程、脱硝工程、第1吸着分離工程、第2吸着分離工程及び第3吸着分離工程を順次行うことにより、プラズマ酸化、プラズマ窒化、プラズマ酸窒化等の処理を行う半導体製造装置11から排出される混合ガス(排ガス)に最大で数%の単位で含まれると想定される窒素酸化物、アンモニア、水素、酸素、窒素、水蒸気、二酸化炭素、ヘリウム等の不純物を100ppm以下に除去したて高付加価値ガスを効率よく分離回収することができる。
したがって、本形態例に示す分離装置は、一つの半導体製造装置で酸化、窒化、酸窒化の各工程を行うときの排ガスを処理する場合や、酸化、窒化、酸窒化の各工程は別の半導体製造装置で行うが、排ガスはまとめて排出する場合に対応可能であり、酸化、窒化、酸窒化の各工程のいずれか一つの工程しか行わない場合でも、この構成のガス分離装置を設置しておくことにより、半導体製造装置における処理工程の追加や変更にもそのまま対応することができる。
なお、排ガス中に窒素酸化物とアンモニアとが共存する可能性が全くないときには、触媒反応手段61を省略することが可能である。また、雰囲気ガスとして高付加価値ガスとアルゴンとの混合ガスを使用するとともに、各ポンプのシールガスや第2吸着分離手段41のパージガスにアルゴンを使用し、排ガス中の不純物酸素や不純物窒素を脱硝触媒反応手段21、第1吸着分離手段31及び第2吸着分離手段41で分離除去できるときには、第3吸着分離手段51を省略することが可能である。