半導体集積回路、液晶パネル、太陽電池及びそのパネル、磁気ディスク等の半導体製品を製造する工程では、不活性ガス雰囲気中でプラズマを発生させ、該プラズマによって半導体製品又は表示装置の各種処理を行う製造設備が広く用いられている。このようなプラズマ処理において、従来は、ヘリウムやアルゴンが不活性ガスとして用いられてきたが、近年は、より高度な処理を行うため、クリプトンやキセノン、ネオンを使用した処理が注目されている。
クリプトンやキセノン、ネオンは、空気中の存在比及び分離工程の複雑さから極めて高価なガス(以下、これらのガスを高付加価値ガスという)であり、このような高付加価値ガスを使用するプロセスを経済的に成立させるためには、使用済みの排ガス中から高付加価値ガスを高回収率で分離精製し、循環再利用することが必須条件である。さらに、回収した高付加価値ガスの不純物濃度は、100ppm以下の高純度が望まれる。
ここで、分離精製の対象となる高付加価値ガスを含む排ガスは、雰囲気ガスである高付加価値ガスと半導体製造設備の真空排気手段に導入される窒素又はアルゴンとが主要ガス成分となった混合ガスの状態となっている。排ガス中のその他の成分としては、半導体の製造目的に応じて添加されるガス成分が含まれる。例えば、プラズマ酸化であれば酸素が含まれ、プラズマ窒化や酸窒化であれば、酸素、窒素、水素、アンモニア、窒素酸化物が含まれる。基体の冷却にヘリウムを使用している場合は、ヘリウムも含まれることになる。
以下、半導体製造装置の工程と、各工程時に排出されるガス成分について、さらに詳細に説明する。まず、プラズマ処理の対象となる基体を挿入する前のチャンバ内は、窒素、アルゴン等のパージガスを通気しながら真空排気することで清浄な窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気とされる。その後、基体が処理チャンバ内に挿入されるが、清浄な窒素又はアルゴン雰囲気を保持するために、窒素又はアルゴンの通気と真空排気は継続される。
次いで、チャンバ内に流通しているガスが窒素又はアルゴンから高付加価値ガスを含む雰囲気ガスに切り替わり、処理チャンバ内が高付加価値ガス雰囲気になった後、プラズマ処理を開始させる。したがって、プラズマ処理中にチャンバから排気されるガスは、主に高付加価値ガスで占められることになるが、製造目的に応じて添加されたガス成分及び反応副生成物も含まれる。
プラズマ処理終了後、半導体製造装置では、高周波印加を停止してプラズマを停止させる。このとき、流通ガスが高付加価値ガスから窒素又はアルゴンに切り替わり、その後基体が取り出される。したがって、この間に排気されるガスは、窒素又はアルゴンが主要ガス成分となるが、系内に残存している高付加価値ガスも含まれる可能性がある。
また、処理チャンバと真空排気システムとの間では、真空排気システムからの不純物の逆拡散を防止するために、工程に関わらず窒素又はアルゴンが通気される。この逆拡散防止用の窒素又はアルゴンは、処理チャンバから排気されたガスと共に排気される。さらに、大気巻き込み防止用として真空ポンプの軸受け部にも窒素又はアルゴンが通気される。この窒素又はアルゴンの一部は、真空排気系内部に流入し、上述のガスと一緒に排気される。
混合ガスから目的とするガス成分を分離精製する方法として、圧力変動吸着分離(PSA)法が広く知られている。例えば、空気を原料として酸素を製品として得る場合には、ゼオライトを吸着剤として用い、加圧下で空気を流通させることで易吸着性ガス成分である窒素を吸着剤に吸着固定させ、難吸着成分である酸素を製品として採取する。次いで、吸着剤層を空気の流通工程(吸着工程)より十分に低い圧力条件下におけば、吸着剤に吸着されていた窒素が脱着する。相対的に高い圧力での吸着工程と相対的に低い圧力での再生工程とを繰り返すPSA操作は、短時間での吸着−再生の切り替えが可能なため、吸着剤当たりの製品発生量を高めやすく、装置をコンパクトにし易いという利点を有している。
また、原料ガス中の微量不純物を除去する方法としては、温度変動吸着分離(TSA)法が広く知られている。例えば、深冷空気分離装置では、原料空気中の微量成分である水分や二酸化炭素を除去するため、TSA法を用いた前処理装置が用いられている。この前処理装置では、活性アルミナやゼオライト等の吸着剤充填層に空気を通気させることにより、易吸着性ガス成分である水や二酸化炭素等の不純物を吸着除去している。吸着飽和に達した吸着剤は、加温されたパージガスを流通させることで容易に再生できる。
半導体製造装置等で使用された高付加価値ガスを再利用するためには、回収した排ガス中に含まれる微量の不純物、反応副生成物、パージガス等の不要なガス成分を取り除く必要がある。排ガス中の不要ガス成分を除去するには、上述の従来技術の組み合わせでもある程度は達成できる。例えば、アンモニア、窒素酸化物、水分(水蒸気)等の微量なガス成分であれば、ゼオライト等の吸着剤を用いたTSA法によって吸着除去できる。
一方、半導体製造装置から排出される排ガス中にアンモニアと窒素酸化物、特に二酸化窒素とが共存している場合、排ガスが流れる配管中でアンモニアと二酸化窒素とが反応して硝酸アンモニウムが生成することがある。この硝酸アンモニウムは、液化点が169.9℃であることから、配管中で硝酸アンモニウムが生成すると、配管壁面や弁等の機器内面に固形物として付着、堆積し、排ガス配管が閉塞したり、機器の動作を阻害するおそれがある。
このため、アンモニアと窒素酸化物とが共存する可能性を有する排ガスを処理する装置では、アンモニア又は窒素酸化物を除去する工程に至るまでの配管を170℃以上に加熱したり、硝酸アンモニウムの分解温度である210℃以上に加熱し、排ガス配管の閉塞や機器の動作不良が発生しないようにしていた(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−342010号公報
図1は、本発明のガス処理装置を、半導体製造装置の排ガスから高付加価値ガスを分離精製して回収する高付加価値ガス回収装置の前処理に組み込んだ一形態例を示す系統図、図2は半導体製造装置の一例を示す系統図である。
本形態例に示す高付加価値ガス回収装置は、半導体製造装置11から排出された排ガス中のアンモニア及び窒素酸化物の少なくともいずれか一方を除去するための触媒反応手段21と、窒素酸化物を還元性物質である水素ガスの存在下で窒素と水蒸気とに転化する窒素酸化物除去手段31と、アンモニア及び水蒸気を吸着剤に吸着させて分離する第1吸着分離手段となるアンモニア除去手段41とを備えた前処理部と、高付加価値ガスを吸着剤に吸着させることによって水素及びヘリウムを分離除去する第2吸着分離手段51と、高付加価値ガス以外のガス成分を吸着剤に吸着させることによって高付加価値ガスを分離回収する第3吸着分離手段61とを備えた分離精製部とを有している。
図2に示すように、半導体製造装置11は、ガスパネル12からガス供給経路13を通して処理チャンバ14内に所定のガスを供給し、処理チャンバ14内を所定の雰囲気として基体の処理を行うものであって、処理チャンバ14の排気経路15には、前述のように、処理状態に応じた組成の排ガスが排出される。通常、排気経路15には、処理チャンバ14からガスを吸引するためのブースターポンプ16、ブースターポンプ16から吐出された排ガスをガス処理装置に送るための回収用バックポンプ17、ブースターポンプ16から吐出された排ガスを系外に排出するための排気側バックポンプ18が設けられている。なお、排気側バックポンプ18は省略することもできる。
各ポンプ16,17,18には、不純物の逆拡散や大気の巻き込みを防止するためのシールガスを導入するシールガス導入部16a,17a,18aがそれぞれ設けられており、ガス導入部16a,17aからは窒素又はアルゴンが、ガス導入部18aからは窒素がそれぞれ導入されている。
回収用バックポンプ17から排ガス回収経路19に排出される排ガスは、雰囲気ガスとして用いられた高付加価値ガスを含むとともに、パージガスとして用いられた窒素又はアルゴン、ポンプに導入された窒素やアルゴン、そして、基体処理用に添加されたガス及び処理中に反応又は分解により発生したガス、例えば、窒素酸化物、アンモニア、水素、酸素、窒素、水蒸気、二酸化炭素、ヘリウム等を不純物として含む混合ガスとなっている。
排ガス回収経路19の排ガスは、半導体製造装置11における排ガス排出部の直近に設けられた触媒反応手段21に導入されて触媒反応工程が行われる。この触媒反応手段21は、反応筒22内に脱硝触媒を充填したものであって、脱硝触媒に排ガスを接触させることにより、排ガス中に含まれる窒素酸化物及びアンモニアとを反応させてこれらの少なくともいずれか一方を排ガス中から除去する。
前記脱硝触媒には、一般的に市販されているものを使用することができ、反応温度は、触媒の種類や使用量、窒素酸化物及びアンモニアの濃度や排ガスの流量等の各種操作条件に応じて好適な温度に設定すればよいが、通常は250℃以上、好ましくは300℃程度である。また、触媒反応温度への加熱には、反応筒22の入口部に加熱器を設けて筒内に流入する排ガスを加熱してもよく、反応筒22にヒーター等の加熱手段を設けるようにしてもよい。
反応筒22に流入した排ガス中に共存する窒素酸化物とアンモニアとは、所定温度で脱硝触媒と接触することにより、窒素酸化物である一酸化二窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)とアンモニアとが以下に示すように反応してそれぞれ窒素と水蒸気とに転化する。
3N2O+2NH3 → 4N2+3H2O
6NO+4NH3 → 5N2+6H2O
6NO2+8NH3 → 7N2+12H2O
このとき、排ガス中にアンモニアと酸素とが共存している場合には、アンモニアと酸素との反応も同時に生じて窒素及び水蒸気に転化する。
3O2+4NH3 → 2N2+6H2O
さらに、触媒反応手段21に流入する前に窒素酸化物とアンモニアとが反応して硝酸アンモニウムが生成していた場合は、この硝酸アンモニウムも最終的に窒素と水蒸気とに転化される。
NH4NO3+NO → NO2+N2+2H2O
NO+NH3 → N2+2/3H2O
NO+NO2+2NH3 → N2+3H2O
これらの触媒反応は、排ガス中に窒素酸化物とアンモニアとが共存しているとき、硝酸アンモニウムが既に生成しているとき、アンモニアと酸素とが共存しているときの少なくともいずれか一つの条件を満たしたときに発生する。したがって、排ガス中に窒素酸化物とアンモニアとが共存しているときには、前記触媒反応によっていずれか一方が消滅した時点で触媒反応は終了する。
例えば、窒素酸化物がアンモニアより多く含まれているときには、アンモニアが消滅した時点で余剰の窒素酸化物を残した状態で触媒反応は終了する。また、アンモニアが窒素酸化物より多く含まれているときには、窒素酸化物が消滅した時点で余剰のアンモニアを残した状態で触媒反応は終了する。但し、排ガス中に窒素酸化物が全く含まれていない状態でも、排ガス中にアンモニアと酸素とが共存していれば、両者の反応は発生する。なお、排ガス中に酸素と水素とが共存している場合には、酸素と水素との反応によって水蒸気が発生する。
触媒反応手段21から出口径路23に導出した排ガスは、窒素酸化物除去手段31の入口経路32を通り、該窒素酸化物除去手段31の入口側に接続された水素ガス添加経路33から添加される還元性物質である水素ガスと混合した状態で窒素酸化物除去手段31に導入されて窒素酸化物除去工程が行われる。入口経路32には、流量計(マスフローメーター)32Fが設けられて流量が計測されており、水素ガス添加経路33には流量調節計(マスフローコントローラー)33Fが設けられて水素ガスの流量(添加量)が調節され、窒素酸化物を転化させて除去するのに十分な量の水素ガスを添加するように形成されている。
また、前記出口径路23には、装置の起動時や待機時、すなわち、排ガス中に高付加価値ガスが全く含まれていないときに、排ガスをそのまま系外に排出するためのバイパス経路24や、窒素酸化物除去手段31やアンモニア除去手段41の系内をパージするためのパージガスを導入するパージガス導入経路25が設けられており、各経路には、ガス流れを制御するための開閉弁23V,24V,25Vや逆止弁24Vcがそれぞれ設けられている。
このような配管系において、前記触媒反応手段21を設けていないときには、排ガス回収経路19以降の経路で窒素酸化物及びアンモニアを含む排ガスが接触する可能性のある配管や機器として、バイパス経路24、パージガス導入経路25、窒素酸化物除去手段31の入口経路32、水素ガス添加経路33、各開閉弁23V,24V,25V、逆止弁24Vc、マスフローメーター32F、マスフローコントローラー33Fがあり、従来は、これらに全て加熱手段を付設して所定温度に加熱するとともに、開閉弁等を耐熱仕様とする必要があった。
これに対し、前記触媒反応手段21を設けて排ガス中の窒素酸化物及びアンモニアの少なくともいずれか一方を除去する触媒反応工程を行うことにより、触媒反応手段21より下流側で窒素酸化物とアンモニアとが反応して硝酸アンモニウムを生成することを防止できる。したがって、バイパス経路24、パージガス導入経路25、窒素酸化物除去手段31の入口経路32、水素ガス添加経路33、各開閉弁23V,24V,25V、逆止弁24Vc、マスフローメーター32F、マスフローコントローラー33Fを加熱する必要がなくなり、開閉弁等を耐熱使用とする必要もなくなる。
これにより、配管系を加熱するために要する設備コストや運転コストを大幅に削減することができる。特に、反応筒22を可能な限り半導体製造装置11の近くに設けることにより、加熱が必要な排ガス回収経路19が短くなって配管系の加熱に要するコストを最小限に抑えることができる。
窒素酸化物除去手段31は、脱硝触媒反応筒34内に脱硝触媒を充填したものであって、脱硝触媒には、前記反応筒22に使用した脱硝触媒と同じものを同じようにして用いることができ、加熱も同じようにしてできる。還元性物質として水素ガスを排ガスに添加したときには、下記に示す脱硝触媒反応により、排ガス中に含まれる一酸化二窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO2)を、それぞれ窒素と水蒸気とに転化する。また、酸素が含まれているときには、酸素と水素との反応も同時に発生する。
2NO+2H2 → N2+2H2O
2NO2+4H2 → N2+4H2O
N2O+H2 → N2+H2O
O2+2H2 → 2H2O
この窒素酸化物除去手段31による窒素酸化物除去工程は、排ガス中に窒素酸化物が全く含まれていない場合や、前記触媒反応手段21で窒素酸化物が除去された場合でも、半導体製造装置11での処理が特定されていない場合には、排ガス中に窒素酸化物がアンモニアより多く含まれている可能性があり、窒素酸化物は、通常の吸着分離では排ガス中から分離除去することが困難であるから、僅かでも窒素酸化物が含まれている場合があることを考慮して分離装置上流側に設けておく必要がある。
窒素酸化物除去手段31で窒素酸化物を除去し、さらに、酸素が含まれている場合には酸素もある程度除去した状態で脱硝筒出口径路35に導出された排ガスは、第1圧縮機35Cによりアンモニア除去手段41の第1導入経路42に送り出され、第1導入経路42を通ってアンモニア除去手段41に導入され、このアンモニア除去手段41でアンモニアや水蒸気を除去するアンモニア除去工程(第1吸着分離工程)が行われる。
アンモニア除去手段41は、一対の第1吸着筒43a,43b内に、アンモニア及び水蒸気を易吸着性ガス成分とする第1吸着剤を充填し、TSA操作によってアンモニア及び水蒸気を分離除去するものであって、相対的に低い温度で行う吸着工程で第1吸着剤にアンモニア及び水蒸気を吸着させることによって排ガス中からアンモニア及び水蒸気を除去し、相対的に高い温度で行う再生工程で第1吸着剤に吸着しているアンモニア及び水蒸気を第1吸着剤から脱着させて第1吸着剤を再生するように形成されている。なお、排ガス中に二酸化炭素が含まれている場合は、この二酸化炭素も第1吸着剤に吸着して同時に排ガス中から分離除去される。
前記第1吸着筒43a,43bには、両第1吸着筒43a,43bを吸着工程と再生工程とに切換使用するための入口側経路44a,44bと、出口側経路45a,45b及び再生経路46a,46bとがそれぞれ設けられている。さらに、入口側経路44a,44bには、各第1吸着筒43a,43bの再生工程時に排出されるガスを系外に排気するための排気経路47が設けられ、出口側経路45a,45bには、吸着工程で第1吸着剤に吸着しなかったガス成分を導出する第1導出経路48が設けられ、再生経路46a,46bには再生工程で使用する再生ガスを導入するための再生ガス導入経路49が設けられている。なお、図示は省略するが、アンモニア除去手段41の各経路には、両第1吸着筒43a,43bを吸着工程と再生工程とに交互に切り換えるための弁がそれぞれ設けられている。
前記第1吸着剤としては、活性炭、シリカゲル、各種ゼオライト等を使用することができ、特に、カリウムイオン交換A型ゼオライトは、水蒸気及びアンモニアだけでなく、二酸化炭素も十分に吸着する能力を有しながら、高付加価値ガスをほとんど吸着しないという性質を有しているので、これを吸着剤として採用することにより、高付加価値ガスの回収をより効率よく行うことができる。
アンモニア除去手段41において、例えば、図1において左側の一方の第1吸着筒43aが吸着工程を行っている場合、前記脱硝筒出口径路35に導出されて第1圧縮機35Cから送り出された排ガスは、第1導入経路42から入口側経路44aを通って第1吸着筒43aに導入され、排ガス中の水蒸気やアンモニア、二酸化炭素が第1吸着剤に吸着されて分離除去される。水蒸気やアンモニア、二酸化炭素が除去された排ガスは、出口側経路45aから第1導出経路48に導出する。
他方の第1吸着筒43bでは再生工程が行われており、所定温度に加温された再生ガスが再生ガス導入経路49から再生経路46bを通して第1吸着筒43b内に導入され、第1吸着剤を加温することによって水蒸気やアンモニア、二酸化炭素を脱着させ、入口側経路44bから排気経路47を通して系外に排出する。
両第1吸着筒43a,43bは、前記各経路に設けられている弁をあらかじめ設定されたタイミングで開閉することによって吸着工程と再生工程とに交互に切換えられ、排ガス中の水蒸気、アンモニア、二酸化炭素の吸着除去を連続的に行う。アンモニア除去手段41で水蒸気及びアンモニア、更に二酸化炭素が除去された排ガスは、排ガス中に元から不純物として含まれている水素及びヘリウムに加えて前記窒素酸化物除去工程で添加された水素を含み、シールガスとして用いた窒素やアルゴン、高付加価値ガス以外の雰囲気ガス成分としてのアルゴン等を含んだ状態となる。
アンモニア除去手段41の吸着工程で第1導出経路48に導出された排ガスは、第1バッファタンク48Bを介して第2吸着分離手段51の第2導入経路52に流入し、第2圧縮機52C,第2バッファタンク52Bを通って第2吸着分離手段51に導入され、脱着回収工程を含む第2吸着分離工程が行われる。なお、起動時や待機中で第1導出経路48に高付加価値ガスが全く含まれないガスが導出されるときには、排気経路48aを通して系外にガスを排出する。
第2吸着分離手段51は、一対の第2吸着筒53a,53b内に、高付加価値ガスを易吸着性ガス成分とする第2吸着剤を充填し、該第2吸着剤に対して難吸着成分である水素及びヘリウムをPSA操作によって分離除去するものであって、相対的に高い圧力で行う吸着工程で第2吸着剤に高付加価値ガスを吸着させるとともに、第2吸着剤に吸着しなかった水素及びヘリウムを吸着筒から排出することによって排ガス中から除去し、相対的に低い圧力で行う再生工程で第2吸着剤に吸着している高付加価値ガスを脱着させるとともに、出口側からパージガスを吸着筒53a,53b内に導入して高付加価値ガスを回収するとともに第2吸着剤を再生するように形成されている。
前記第2吸着筒53a,53bには、両第2吸着筒53a,53bを吸着工程と再生工程とに切換使用するための入口側経路54a,54bと、出口側経路55a,55b及びパージガス入口経路56a、56bとがそれぞれ設けられている。さらに、入口側経路54a,54bには、各第2吸着筒の再生工程時に排出される高付加価値ガスを回収するための回収経路57及び第1バッファタンク48Bに循環させるための第1循環経路58が設けられ、出口側経路55a,55bには、吸着工程で第1吸着剤に吸着しなかった水素やヘリウムを、第3バッファタンク59Bから流量調節計(マスフローコントローラー)59Fを介して排出する第2導出経路59と、再生工程で使用するパージガスを流量調節計(マスフローコントローラー)60Fを介して第3バッファタンク59Bに導入するためのパージガス導入経路60とが設けられている。なお、図示は省略するが、第2吸着分離手段51の各経路には、両第2吸着筒53a,53bを吸着工程と再生工程とに交互に切り換えるための弁がそれぞれ設けられている。
前記第2吸着剤には、平衡分離型吸着剤である活性炭を使用することが好ましい。この活性炭は、PSA操作の吸着工程のような比較的高圧下での平衡吸着量として高付加価値ガスの吸着量が多く(易吸着性)、窒素の吸着量が少なく(難吸着性)、水素及びヘリウムをほとんど吸着しないという特性を有しており、前記排ガス中の水素、ヘリウム、窒素を分離除去するのに最適である。
また、パージガス導入経路60から導入するパージガスとしては、水素及びヘリウムを含まないガス、後段の第3吸着分離手段61で容易に分離可能で除去対象不純物が少ないガス、例えば高純度アルゴンや高純度窒素、高純度酸素等を使用することができるが、通常は、第2吸着分離手段51で処理するガス中に比較的多量に存在するガス、例えば、雰囲気ガスとして高付加価値ガスとアルゴンとの混合ガスを用いている場合には高純度アルゴンを使用することが好ましい。なお、PSA操作を適当に設定することにより、前記条件に該当しないガスをパージガスとして使用することも可能であるが、最終的な高付加価値ガスの回収効率が低下したり、不純物が混入したりすることがあるので好ましくない。
第2吸着分離手段51において、例えば、図1において左側の一方の第2吸着筒53aが吸着工程を行っている場合、前記アンモニア除去手段41から第1導出経路48に導出された排ガスは、第2導入経路52の第2圧縮機52Cで所定の吸着工程圧力に昇圧され、第2バッファタンク52Bから入口側経路54aを通って一方の第2吸着筒53a内に導入され、排ガス中の高付加価値ガスが第2吸着剤に吸着されて筒内に保持され、第2吸着剤に吸着しなかった水素やヘリウム、第2吸着剤に吸着し難い窒素やアルゴンが出口側経路55aから導出され、第3バッファタンク59B、流量調節計59Fを通って第2導出経路59から排出される。
他方の第2吸着筒53bでは、脱着回収工程を含む再生工程が行われており、第2吸着筒53b内が所定の再生工程圧力に減圧されて第2吸着剤に吸着している高付加価値ガスが脱着するとともに、第3バッファタンク59B内のガスの一部がパージガスとしてパージガス入口経路56bから第2吸着筒53b内に導入され、第2吸着剤から脱着した高付加価値ガスを入口側経路54bから導出させる。このとき、第3バッファタンク59Bには、パージガス導入経路60から流量調節計60Fを介して水素やヘリウムを含まないガスが導入されており、吸着工程で一方の第2吸着筒53aから導出されるガスよりも水素やヘリウムの含有量が少ないガスがパージガスとして他方の第2吸着筒53bに導入されている。
この再生工程において、再生工程開始直後は、第2吸着筒53b内の第2吸着剤に吸着されていないガス、すなわち、水素、ヘリウム、窒素等の高付加価値ガス以外の難吸着性ガスが含まれているガスが第2吸着筒53bから入口側経路54bに導出されるので、このときに導出されたガスは、第1循環経路58を通して圧力の低い第1バッファタンク48Bに循環させている。また、再生工程終了直前に第2吸着筒53bから入口側経路54bに導出されるガスも、第3バッファタンク59Bから第2吸着筒53bに導入されたパージガスが、第2吸着剤から脱着した高付加価値ガスと共に入口側経路54bに導出される可能性があるので、このときに入口側経路54bに導出されるガスも第1循環経路58を通して第1バッファタンク48Bに循環させている。
このように、再生工程開始直後、終了直前に入口側経路54bに導出されるガスを第1バッファタンク48Bに循環させ、中間段階の脱着回収工程で入口側経路54bに導出されるガスのみを回収経路57に回収することにより、水素、ヘリウム、窒素等の不純物成分を含むガスを第1バッファタンク48Bに循環させ、前記排ガスと合流させて第2吸着分離手段51で再び処理することにより、高付加価値ガスの回収率向上及び純度向上を図ることができる。
両第2吸着筒53a,53bは、前記各経路に設けられている弁をあらかじめ設定されたタイミングで開閉することによって吸着工程と再生工程とに交互に切換えられ、排ガス中の水素やヘリウム、窒素の分離除去を連続的に行う。第2吸着分離手段51の再生工程における中間段階で回収経路57に導出された排ガスの組成は、パージガスとして使用した窒素やアルゴンが高付加価値ガスに混合した状態となっており、その他のガス成分はほとんど除去された状態となっている。この排ガスは、回収経路57から第4バッファタンク57Bに回収され、第3吸着分離手段61の第3導入経路62、第3圧縮機62C、第5バッファタンク62Bを通って第3吸着分離手段61に導入され、第3吸着分離工程が行われる。
第3吸着分離手段61は、一対の第3吸着筒63a、63b内に、高付加価値ガスを難吸着性ガス成分とし、窒素や酸素を難吸着性ガス成分とする第3吸着剤を充填し、該第3吸着剤に対して易吸着性ガス成分である窒素や酸素をPSA操作によって分離除去するものであって、相対的に高い圧力で行う吸着工程で窒素や酸素を第3吸着剤に吸着させるとともに、第3吸着剤に吸着しなかった高付加価値ガスを第3吸着筒63a、63bから回収することによって高付加価値ガスと窒素や酸素とを分離し、相対的に低い圧力で行う再生工程で第3吸着剤に吸着している窒素や酸素を脱着させて第3吸着剤を再生するように形成されている。
第3吸着筒63a、63bには、両第3吸着筒63a、63bを吸着工程と再生工程とに切換使用するための入口側経路64a、64bと、出口側経路65a、65b及びパージガス入口経路66a,66bとがそれぞれ設けられている。さらに、入口側経路64a、64bには、各第3吸着筒63a、63bの再生工程時に導出されるガスを排気又は前記第4バッファタンク57Bに循環させるための排気循環経路67,67aが設けられ、出口側経路65a、65bには、吸着工程で第3吸着剤に吸着しなかったガス、すなわち、高付加価値ガスを第6バッファタンク68Bを介して導出する第3導出経路68が設けられている。なお、図示は省略するが、第3吸着分離手段61の各経路には、両第3吸着筒63a、63bを吸着工程と再生工程とに交互に切り換えるための弁がそれぞれ設けられている。
さらに、前記第4バッファタンク57Bには、高付加価値ガス導入源71から導入弁72Vを介して第4バッファタンク57Bに高付加価値ガスを導入する高付加価値ガス導入経路72と、第3圧縮機62Cから吐出されたガスの一部を抜き出して第4バッファタンク57Bに循環させる第1分析経路73と、第6バッファタンク68B内のガスの一部を抜き出して第4バッファタンク57Bに循環させる第2分析経路74とが設けられ、第1分析経路73及び第2分析経路74には、第1分析計73A及び第2分析計74Aがそれぞれ設けられ、第1分析計73Aの分析結果に基づいて前記導入弁72Vを開閉制御するように形成している。
第3吸着分離手段61で使用する第3吸着剤には、速度分離型吸着剤であるゼオライト4A(Na−A型ゼオライト)を使用することが好ましい。このゼオライト4Aは、比較的分子径の大きい高付加価値ガスに比べて高付加価値ガスより分子径の小さい窒素や酸素を吸着しやすいという特性を有している。この特性は、一般に速度分離型と呼ばれる分離特性であり、適当な吸着時間を選定すれば、窒素や酸素を選択的に吸着させながら、高付加価値ガスを吸着させない状態にすることが可能である。
第3吸着分離手段61において、例えば、図1において左側の一方の第3吸着筒63aが吸着工程を行っている場合、前記第2吸着分離手段51から回収経路57に導出されたガスは、第3導入経路62の第3圧縮機62Cで所定の吸着工程圧力に昇圧され、第5バッファタンク62Bから入口側経路64aを通って一方の第3吸着筒63a内に導入され、ガス中の窒素や酸素が第3吸着剤に吸着されて筒内に保持され、第3吸着剤に吸着しなかった高付加価値ガスが出口側経路65aから第6バッファタンク68Bに導出される。
他方の第3吸着筒63bでは再生工程が行われており、第3吸着筒63b内を所定の再生工程圧力に減圧して第3吸着剤に吸着している窒素や酸素を脱着させるとともに、第6バッファタンク68内の高付加価値ガスの一部をパージガス入口経路66bからパージガスとして導入し、第3吸着剤から脱着した窒素や酸素を入口側経路64bを通して排気循環経路67に導出させる。
この再生工程において、再生工程の開始直後には、第3吸着筒63b内の第3吸着剤に吸着されていないガス、すなわち、高付加価値ガスを多く含むガスが排気循環経路67に導出されるので、このときに導出されたガスは、前記第4バッファタンク57Bに循環回収される。また、再生工程終了直前に第3吸着筒63bから排気循環経路67に導出されるガスも、第6バッファタンク68Bから第3吸着筒63bに導入されたパージガスが、第3吸着剤から脱着した窒素や酸素と共に排気循環経路67に導出される可能性があるので、このときに排気循環経路67に導出されるガスも第4バッファタンク57Bに循環回収するようにしている。
このように、再生工程開始直後及び終了直前に排気循環経路67に導出される高付加価値ガス含有ガスを第4バッファタンク57Bに循環回収して再処理を行い、中間段階で排気循環経路67に導出されるガスを経路67aから系外に排出することにより、高付加価値ガスの回収率向上を図ることができる。
両第3吸着筒63a、63bは、前記各経路に設けられている弁をあらかじめ設定されたタイミングで開閉することによって吸着工程と再生工程とに交互に切換えられ、ガス中の窒素や酸素の吸着除去を連続的に行う。第3吸着筒63a、63bの吸着工程で第6バッファタンク68Bに導出されたガスは、これまでの各工程で、排ガス中から窒素酸化物、アンモニア、水素、酸素、窒素、水蒸気、二酸化炭素、ヘリウム等の不純物が100ppm以下まで除去され、雰囲気ガスとして使用可能な状態の高付加価値ガスとなっている。
なお、雰囲気ガスとして高付加価値ガスとアルゴンとの混合ガスを使用するときには、第2吸着分離手段51のパージガスとしてアルゴンを使用することにより、第6バッファタンク68B内のガスを高付加価値ガスとアルゴンとの混合ガスにすることができる。このときの高付加価値ガスとアルゴンとの組成比は、高付加価値ガス導入経路72からの高付加価値ガスの導入量を制御することによって所定の組成比に調節することができる。
第6バッファタンク68B内のガス(高付加価値ガス)は、その一部が分析のために前記第2分析経路74に抜き出され、第2分析計74Aで組成分析が行われた後、第4バッファタンク57Bに循環する。第6バッファタンク68Bから第3導出経路68に導出された高付加価値ガスは、流量調節計(マスフローコントローラー)68Fで流量調節されて精製器75に導入され、この精製器75で更に高度に精製された後、前記ガスパネル12から前記半導体製造装置11に供給されて循環再利用される。
また、半導体製造装置11に高付加価値ガスを供給しない待機中には、流量調節計(マスフローコントローラー)76Fから高付加価値ガス循環経路76を通して第1バッファタンク48B及び第4バッファタンク57Bに高付加価値ガスを循環させるようにしている。
前記精製器75には、チタン、バナジウム、ジルコニウム、鉄、ニッケル等の金属あるいは合金を用いたゲッター式精製器が好適に用いられ、この精製器75で高付加価値ガスを精製することによって高付加価値ガス中に極微量に残存していた不純物の濃度を更に減少させることができる。
本形態例に示すように、触媒反応手段21、窒素酸化物除去手段31、アンモニア除去手段41を備えた前処理部でアンモニアや窒素酸化物を除去した後、第2吸着分離手段51、第3吸着分離手段61を備えた分離精製部で高付加価値ガスを分離精製することにより、プラズマ酸化、プラズマ窒化、プラズマ酸窒化等の処理を行う半導体製造装置11から排出される混合ガス(排ガス)に最大で数%の単位で含まれると想定される窒素酸化物、アンモニア、水素、酸素、窒素、水蒸気、二酸化炭素、ヘリウム等の不純物を100ppm以下に除去したて高付加価値ガスを効率よく分離回収することができる。
したがって、本形態例は、一つの半導体製造装置で酸化、窒化、酸窒化の各工程を行うときの排ガスを処理する場合や、酸化、窒化、酸窒化の各工程は別の半導体製造装置で行うが、排ガスはまとめて排出して処理する場合に対応可能であり、半導体製造装置で酸化、窒化、酸窒化の各工程のいずれか一つの工程しか行わない場合でも、処理工程の追加や変更にもそのまま対応することができる。
なお、雰囲気ガスとして高付加価値ガスとアルゴンとの混合ガスを使用するとともに、各ポンプのシールガスや第2吸着分離手段51のパージガスにアルゴンを使用し、排ガス中の不純物酸素や不純物窒素を窒素酸化物除去手段31、アンモニア除去手段41及び第2吸着分離手段51で分離除去できるときには、第3吸着分離手段61を省略することが可能である。
また、本発明のガス処理装置は、上記形態例に示すようなガス分離精製装置の前処理以外に、排ガスの除害処理を行う除害装置の前段に配置することによっても、前記同様に硝酸アンモニウムの生成を防止できるので、排ガスを排出する装置から除害装置に至る配管系全体を加熱する必要がなくなる。さらに、高温で処理を行う触媒反応手段21と窒素酸化物除去手段31とを一つのユニットとして構成することもできる。
11…半導体製造装置、12…ガスパネル、13…ガス供給経路、14…処理チャンバ、15…排気経路、16…ブースターポンプ、17…回収用バックポンプ、18…排気側バックポンプ、16a,17a,18a…シールガス導入部、19…排ガス回収経路、21…触媒反応手段、22…反応筒、23…出口径路、24…バイパス経路、25…パージガス導入経路、23V,24V,25V…開閉弁、24Vc…逆止弁、31…窒素酸化物除去手段、32…入口経路、32F…流量計(マスフローメーター)、33…水素ガス添加経路、33F…流量調節計(マスフローコントローラー)、34…脱硝触媒反応筒、35…脱硝筒出口径路、35C…第1圧縮機、41…アンモニア除去手段(第1吸着分離手段)、42…第1導入経路、43a,43b…第1吸着筒、44a,44b…入口側経路、45a,45b…出口側経路、46a,46b…再生経路、47…排気経路、48…第1導出経路、48B…第1バッファタンク、49…再生ガス導入経路、51…第2吸着分離手段、52…第2導入経路、52B…第2バッファタンク、52C…第2圧縮機、53a,53b…第2吸着筒、54a,54b…入口側経路、55a,55b…出口側経路、56a、56b…パージガス入口経路、57…回収経路、57B…第4バッファタンク、58…第1循環経路、59…第2導出経路、59B…第3バッファタンク、59F…流量調節計(マスフローコントローラー)、60…パージガス導入経路、60F…流量調節計(マスフローコントローラー)、61…第3吸着分離手段、62…第3導入経路、62B…第5バッファタンク、62C…第3圧縮機、63a、63b…第3吸着筒、64a、64b…入口側経路、65a、65b…出口側経路、66a,66b…パージガス入口経路、67,67a…排気循環経路、68…第3導出経路、68B…第6バッファタンク、68F…流量調節計(マスフローコントローラー)、71…高付加価値ガス導入源、72…高付加価値ガス導入経路、72V…導入弁、73…第1分析経路、73A…第1分析計、74…第2分析経路、74A…第2分析計、75…精製器、76…高付加価値ガス循環経路、76F…流量調節計(マスフローコントローラー)