JP5218805B2 - 振動低減機構およびその諸元設定方法 - Google Patents
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Description
付加梁2は本体梁1よりも断面性能が小さくされ、この振動系ではその付加梁2自体が回転慣性質量ダンパー3と直列に設置された付加バネとして機能するものである。なお、付加梁2のバネ定数k0は、付加梁2の中央部に加力Pを載荷したときに鉛直変位δが生じたとすると、k0=P/δ として求められるものである。
付加減衰4は回転慣性質量ダンパー3と並列に設置されるものであるが、付加梁2自体にダンパーを組み込むなどして減衰性能をもたせれば他には格別の付加減衰を必要とせず、その場合には省略しても良い。
すなわち、図2に示す本実施形態の回転慣性質量ダンパー3はボールネジ機構を利用したものであって、ボールネジ機構を構成しているネジ軸6を、ボールナット7および回転自在ピン7aを介して本体梁1および付加梁2に対してそれぞれ回転自在に連結し、ネジ軸6には円盤状のフライホイールとして機能する錘5を一体に回転するように固定したものである。
この回転慣性質量ダンパー3は、本体梁1が振動して付加梁2との間でそれらが離接するような上下方向の相対変位が生じると、ネジ軸6がボールナット7に対して軸方向(上下方向)に相対変位しつつ自転して錘5を回転(自転)させ、その錘5の回転慣性モーメントと回転角加速度とによって錘5に生じる回転運動の変化を慣性力として利用し、振動低減効果を得るものである。
x=αθ
の関係があるとき、摩擦等による回転ロスを無視すると、この回転慣性質量ダンパー3の上下方向の慣性力(制御力)Pは次式で表される。
そのため、たとえば図3に示すように、錘5の上面や下面の外周部に対して適宜のサブウエイト8を装着可能としておけば、それらサブウエイト8の増減や質量ならびに中心からの距離の調整によって最適な回転慣性質量Ψ0を容易にかつより幅広く設定することができる。
すなわち、一般に質量mとバネkによる振動系における固有角振動数ωは
ω2=k/m
なる関係で定まるのと同様に、本実施形態のような回転慣性質量ダンパー3と付加バネとしての付加梁2とによる振動系においては、その固有角振動数ω0は回転慣性質量Ψ0および付加梁2のバネ定数k0との関係により
ω0 2=k0/Ψ0なる関係で定まる。したがって、その固有角振動数ω0を本体梁1の固有1次角振動数ω1に一致させれば、つまり
ω0 2=k0/Ψ0=ω1 2の関係が成り立つように回転慣性質量Ψ0およびバネ定数k0の値を設定すれば、従来のTMDを設置した場合と同様に本体梁1の1次モードでの振動を大きく低減させることができる。
勿論、本体梁1に対して交通振動や機械振動等の加振力が直接作用する場合のみならず、本体梁1がその固定端から加速度加振される場合にも回転慣性質量ダンパー3は有効に機能するから、地震等による本体梁1の上下方向の振動に対しても優れた低減効果を発揮する。
図1に示した実施形態では本体梁1の両端と付加梁2の両端をそれぞれ独立に支持するものとしたが、図4に示すように付加梁2の両端部を本体梁1の両端部に対して接合したり、逆に、本体梁1の両端部を付加梁2の両端部に対して接合して、双方を構造的に一体化しても良い。
また、図1に示した実施形態では本体梁1の下方に付加梁2を添わせて並設したが、図5に示すように付加梁2を本体梁1の直交方向に架設して双方の中央部どうしを交差させ、その交差部に回転慣性質量ダンパー3を設置することでも良い。
なお、いずれにしても、回転慣性質量ダンパー3は本体梁1と付加梁2のスパン中央部に設置することが好ましいが、厳密に中央部とすることはなく中央部からずれた位置に設置することでも良いし、あるいは複数の回転慣性質量ダンパー3を梁軸方向に分散配置することでも良い。
これによれば、本体梁1の振動が小梁10を介して回転慣性質量ダンパー3に伝達されて回転慣性質量ダンパー3が支障なく機能することはもとより、本体梁1の梁成の範囲内に付加梁2を納めることが可能であるので、上記各実施形態のように本体梁1の下方や上方に付加梁2の設置スペースを確保する必要はないし、有効階高が実質的に小さくなってしまうようなこともなく、付加梁2および回転慣性質量ダンパー3を設置するうえでの建築計画上あるいは構造計画上の制約が少ない。
なお、その場合、本体梁1の振動を回転慣性質量ダンパー3に確実に伝達するためには小梁10を本体梁1に対して剛接合する必要があるが、小梁10全体を本体梁1に単に剛接合した場合には小梁10の剛性によって回転慣性質量ダンパー3の作動が拘束されることも想定されるから、そのような場合には小梁10を端部10aと本体部10bとにより構成して本体部10bを端部10aに対してピン接合することが好ましく、そのためにはたとえば図示例のように端部10aと本体部10bとをウェブどうしをボルト締結するに留めて実質的に相対回転が可能なピン接合とし、それによって回転慣性質量ダンパー3の作動が小梁10によって拘束されない構造とすることが好ましい。
また、小梁10が不要な場合や、小梁10を設置できない場合には、本体梁1の振動を回転慣性質量ダンパー3に対して伝達するための適宜の部材(たとえば上記の小梁10における端部10aに相当する部材)のみを設置すれば良い。
図7は、図6に示した実施形態の場合と同様に付加梁2を本体梁1の側部に設置して、付加梁2と小梁10との間に回転慣性質量ダンパー13を設置するものであるが、その回転慣性質量ダンパー13は両端部に錘14を装着した棒体15の中央部を2点で支持して、梃子の原理を利用して棒体15を天秤のように揺動させる構成のものとされている。
すなわち、その回転慣性質量ダンパー13は、付加梁2の上面および小梁10の下面にそれぞれガセットプレート16,17が固定されて、それらガセットプレート16,17が付加梁2の長さ方向に若干の間隔(たとえば100mm程度)をおいて上下から対向配置されており、それらガセットプレート16,17の双方に同軸状態で形成した貫通孔に棒体15の中心部を挿通させた構成とされている。なお、棒体15はガセットプレート16,17に対して揺動可能な状態で緩挿するが、軸方向の位置ずれを拘束し、かつ貫通孔に対してがたつきが生じないようにしておく。
これによれば、本体梁1の振動により小梁10と付加梁2とが上下方向に相対変位を生じた際には棒体15が鉛直面内において揺動してその両端部に取り付けた錘14が上下方向に振られて鉛直面内において回転(揺動)し、それによりボールネジ式のものと同様に錘14の回転による回転慣性質量Ψ0が生じて振動低減効果が得られる。
図1(a)に示した振動低減機構は図8(a)に示すような振動モデルとして表されるので、振動低減対象の本体梁1としての構造体への変位加振入力f(t)を
f(t)=f0・eiωt
として想定する。
本体梁のスパン(全長)をLとし、その本体梁の中央部が負担する質量m1を梁負担分の1/2とし、本体梁(本体バネ)のバネ定数をk1、本体梁の固有角振動数をω1、付加梁(付加バネ)のバネ定数をk0、回転慣性質量ダンパーによる回転慣性質量をΨ0とし、回転慣性質量Ψ0と付加バネk0とにより定まる固有角振動数ω0を本体梁の固有角振動数ω1と同調させるべく
ω0 2=k0/Ψ0=ω1 2(=k1/m1)
となるように諸元を設定する。
本外梁の曲げ剛性をEI1とし、付加梁の曲げ剛性をEI2とすると、回転慣性質量Ψ0は Ψ0=m1・EI2/EI1 である。付加減衰h0は h0=c0/(2Ψ0ω1) である。
付加梁の断面H−350×350×12×19、I2=3.98×104cm4、k0=48EI2/L3=6.8kN/cmとする。
回転慣性質量ダンパーとしてボールネジ式の市販製品を用い、そのネジ軸の外径40mm、リード20mm、定格荷重59.7kN、錘としての円盤状のフライホイールをPL−19×220φ、質量5.7kg、Iθ=0.343ton・cm2、Ψ0=3.38tonとする。
付加減衰c0はc0=0.2×2Ψ0ω1=18ton/sec=0.18kN/kineとする。
これらの図に示されるように、本実施形態の振動低減機構を設置することにより、本体梁の固有角振動数ω1近傍における応答倍率が85〜90%も低減し、しかもダンパー反力は加振力よりも小さいことがわかる。
したがって、本実施形態の振動低減機構によれば、梁有効質量m1=40tonの10%以下の回転慣性質量Ψ0=3.38tonを付加するのみで既往の手法では得られない優れた振動低減効果が得られ、しかもそのためには実際に回転させる錘の質量はわずか5.7kgであって回転慣性質量Ψ0のさらに1/600程度であり、かつ、構造体に作用する加振力よりダンパー負担力が小さいことからダンパー耐力を容易に設定できるものであり、以上のことから梁を対象とする振動低減機構として極めて有効なものである。
このように、天秤式の回転慣性質量ダンパーは、ボールネジ式の市販製品と比べた場合、同等の性能を得るための錘の所要質量はやや大きくなるが、構成が簡単であるし、現場での組立も容易であるので、コストを大幅に軽減できる利点がある。
通常のTMDによる場合には、1tonもの付加質量を設置したにも拘わらず、図9(a)に示すように回転慣性質量ダンパーを用いる場合に比べて応答倍率の低減効果で劣るばかりでなく、図9(b)に示すように付加質量の変位応答倍率が格段に大きくなるという欠点があり、しかも所要コストは本実施形態に比べて大きいものとなる。
また、梁断面を単に拡大することでは、図9(a)に示すように梁全体の高剛性化により固有振動数が短周期化するだけで応答倍率は半減する程度に過ぎない。しかもそのための所要コストは、本実施形態のように小断面の付加梁と簡易な回転慣性質量ダンパーを設置する場合と同等程度であり、このことから既往の手法はいずれも費用対効果の点で本発明に比ぶべくもないものである。
2 付加梁
3 回転慣性質量ダンパー
4 付加減衰
5 錘
6 ネジ軸
7 ボールナット
8 サブウエイト
10 小梁
13 回転慣性質量ダンパー
14 錘
15 棒体
16,17 ガセットプレート
Claims (3)
- 構造物の梁を対象としてその上下方向の曲げ振動を低減させるための振動低減機構であって、
振動低減対象の本体梁に添わせてもしくは交差させて該本体梁に対する相対変位を生じて付加バネとして機能する付加梁を設置し、それら本体梁と付加梁との間に、本体梁の上下方向の曲げ振動によって作動して錘の回転による回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーを介装するとともに、該回転慣性質量ダンパーによる回転慣性質量と該回転慣性質量ダンパーに対して直列に設置されて付加バネとして機能する前記付加梁のバネ定数とにより定まる上下方向の固有振動数を本体梁の上下方向の固有振動数に同調させてなることを特徴とする振動低減機構。 - 請求項1記載の振動低減機構であって、
本体梁に添わせて設置する付加バネとしての付加梁を本体梁の側方に並設するとともに、本体梁から側方に向けて突出する小梁を設けて、該小梁の端部と付加梁との間に回転慣性質量ダンパーを設置することにより、本体梁と付加梁との間に介装する回転慣性質量ダンパーをそれら本体梁と付加梁との間に前記小梁を介して設置してなることを特徴とする振動低減機構。 - 構造物の梁を対象としてその上下方向の曲げ振動を低減させるための振動低減機構の諸元設定方法であって、
振動低減対象の本体梁に添わせてもしくは交差させて該本体梁に対する相対変位を生じて付加バネとして機能する付加梁を設置し、それら本体梁と付加梁との間に、本体梁の上下方向の曲げ振動によって作動して錘の回転による回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーを介装するとともに、該回転慣性質量ダンパーによる回転慣性質量と該回転慣性質量ダンパーに対して直列に設置されて付加バネとして機能する前記付加梁のバネ定数とにより定まる上下方向の固有振動数を本体梁の上下方向の固有振動数に同調させるように回転慣性質量ダンパーと付加梁の諸元を設定することを特徴とする振動低減機構の諸元設定方法。
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