本発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を収納する加熱室と、マイクロ波発生手段と、前記マイクロ波発生手段からマイクロ波を伝送する導波管と、前記導波管から前記加熱室内にマイクロ波を放射する回転アンテナと、前記回転アンテナの周囲に前記回転アンテナよりも低い位置に配置された発熱体と、前記発熱体の位置を規制するために前記加熱室壁面に取り付けられた誘電材料からなる発熱体保持手段と、前記加熱室内に配置され被加熱物を載置する載置台と、前記載置台上の前記被加熱物を置くべき場所を指示すると共に、前記発熱体の内側で前記回転アンテナと対向する場所を指示する指示手段と、前記回転アンテナを回転駆動する駆動手段と、前記駆動手段を制御して前記回転アンテナの停止位置を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記回転アンテナの指向性の強い端部を前記発熱体保持手段に向けて停止させた状態で前記回転アンテナの指向性の強い端部からマイクロ波を放射するよう制御する構成としたものである。
この構成により、回転アンテナの停止位置によって加熱分布を制御することができ、回転アンテナの周囲に発熱体があっても狙い通りの加熱分布を実現することができると共に、特に、回転アンテナの指向性の強い端部から放射される大部分のマイクロ波を発熱体に
邪魔されずに被加熱物に到達させることができる。さらに、この構成により、発熱体の内側で回転アンテナと対向する場所はマイクロ波が到達できるので、マイクロ波が到達する場所を被加熱物を置くべき場所として指示することで、使用者の意識を喚起でき、確実にマイクロ波を当てることができる領域に被加熱物を置いてもらえるので、狙い通りの加熱分布を実現することができる。
また、この構成により、発熱体保持手段が誘電材料からなるためにマイクロ波帯における比誘電率が空気の比誘電率(=1)よりも大きく、比誘電率の平方根により発熱体保持手段内を通過するマイクロ波の波長が圧縮されるので、あたかも空間が広くなる効果があり、回転アンテナの指向性の強い端部から放射される大部分のマイクロ波を発熱体に邪魔されずに被加熱物に到達させることができる。
また、本発明の一態様として、上記のマイクロ波加熱装置において、前記発熱体保持手段は、発熱体を回転アンテナから遠い方向へと位置規制する構成としたものも含まれる。
この構成により、発熱体の取り付けばらつきによって発熱体が回転アンテナに近づいてしまうことがなく、回転アンテナから放射されたマイクロ波を発熱体に邪魔されずに被加熱物に到達させることができる。
また、本発明の一態様として、上記のマイクロ波加熱装置において、発熱体保持手段は、発熱体を回転アンテナに近い方向へも位置規制する構成としたものも含まれる。
この構成により、発熱体の取り付けばらつきによって発熱体が回転アンテナから離れすぎてしまうことがなく、回転アンテナから放射されたマイクロ波をねらい以上に過剰に被加熱物に到達させることを防ぐことができる。
また、本発明の一態様として、上記のマイクロ波加熱装置において、指示手段は、載置台上に描かれたマーキングで場所を指示するとしたものも含まれる。
この構成により、使用者がマーキングを見ることで容易に置くべき場所を認識することができる。
また、本発明の一態様として、上記のマイクロ波加熱装置において、指示手段は、載置台上に施された凹部または凸部で場所を指示する構成としたものも含まれる。
この構成により、使用者が凹部または凸部に触れることで容易に置くべき場所を認識することができる。
さらに、本発明の一態様として、上記のマイクロ波加熱装置において、載置台を照らす照明手段を有し、指示手段は、前記照明手段により載置台上を照らすことで場所を指示する構成としたものも含まれる。
この構成により、使用者が照らされた場所を見ることで容易に置くべき場所を認識することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1〜図7は実施の形態1におけるマイクロ波加熱装置を示す。図1、図2は、実施の
形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジの概略構成を示す図であり、図1は上方から見た平断面図、図2は正面から見た正断面図である。
図1において、本実施形態の電子レンジは、代表的なマイクロ波発生手段であるマグネトロン1と、マグネトロン1から放射されるマイクロ波を伝播する導波管2と、導波管2の上部に接続された加熱室3と、加熱室3内に固定されて代表的な被加熱物である食品4を載置する載置台5と、載置台5より下方に形成されたアンテナ空間6と、加熱室3の中心から略等距離の底面に設けた2つの結合孔7、7と、アンテナ空間6内に配されて結合孔7、7を中心に回転可能な回転アンテナ8、8と、嵌合させた駆動軸を介して回転アンテナ8、8を駆動する駆動手段としてのモータ9、9と、モータ9、9の回転、停止を制御する制御手段10を備える構成である。
また、本実施形態の電子レンジは、設定手段11を備え、使用者が食品や調理内容に応じて調理メニューを選択することができる。そして、この選択結果に基づき、制御手段10はマグネトロン1を制御してマイクロ波の発生や停止を行うとともに、モータ9を制御して回転アンテナ8、8の回転や停止を制御する。これにより、載置台5に載置された食品4の加熱、調理を行うことができる。
回転アンテナ8は、略L字型をしたパッチアンテナであり、L字形に沿う長手方向を有する平板状の導電性材料から成る放射部81と、結合孔7を貫通して放射部81と電気的及び機械的に一体化された円筒状の導電性材料から成る結合部82から構成されている。
図3は、放射部81の具体的な形状を例示する平面図である。
図3において、放射部81の結合部82の中心からL字形に沿う長辺81aの長手方向の端部84までの長さは50mmである。一方、長辺の幅30mmの中心線である一点鎖線(以下、基準線という)に沿って結合部82の中心から35mmの位置で角度83.62°をなしてL字状に曲がり、そこから45mm行ったところの放射部81のL字形に沿う短辺81bの端部83の沿面が、結合部82を中心とする半径60mmからなる円弧の一部をなすように構成されている。
放射部81の平面視全体形状をL字型と把握した場合、長辺81aは、結合部82と結合した第1の部分として定義づけられ、一方、短辺81bは、当該第1の部分と交差した第2の部分として定義づけられる。尚、放射部の各部分(第1の部分、第2の部分)の長手方向の長さは、上述したように、放射部の幅方向の中心に位置した一点鎖線で示した基準線の長手方向の長さによって定義づけることができる。
この形状によると、結合部82を中心とする放射部81の回転直径は120mmとなり、これはマイクロ波の波長(一波長)に相当し、加熱室4の広さからアンテナが回転する際の直径がマイクロ波の一波長以下に制限される場合であっても、使用することが可能な寸法である。
すなわち、本実施形態において、放射部81は、第1の部分(長辺81a)と第2の部分(短辺81b)という互いに交差する二つの部分を有しているため、回転直径で制約された狭い空間でも、単なる回転直径または回転半径よりも、実質的に大きな長さ(基準線に沿った長さ)が確保されている。具体的には図3において、回転半径は60mmだが、半径に対応した実質的な放射部の長さは35+45mm=80mmである。従って狭い空間でも、指向性の強いマイクロ波を放射することが可能となると考えられる。
ただし放射部81はL字型のために、放射部全体としての最も指向性が強い向きは長手
方向からは少し曲げられて、実矢線85のような向きとなる。またその次に指向性が強い向きは破線86である。よって本実施の形態の回転アンテナにおいて指向性の強い端部は、端部851、861ということができる。
次に代表的な発熱体であるシーズヒータ12について説明する。図1、図2において、シーズヒータ12は、加熱室の外部に配置されて電力供給される給電部12aと、加熱室内の発熱部12bを有し、発熱部12bは回転アンテナ8の駆動領域13の周囲かつ回転アンテナ8の放射部81よりK(約5mm程度)だけ低い位置に配置され、コーナー部12c、12d、12e、12fによって加熱室3の四隅で曲げられている。シーズヒータは載置台上の食品を焼き上げるためのヒータなので、実験結果に基づいてできるだけ焼きムラが無いような位置に配置される。
次に代表的な発熱体保持手段であるガイシ14について図4に構成を示した。図4は図1の右側のガイシ14を正面から見た図で、ガイシ14は誘電材料からなり、シーズヒータ12の発熱部12bを保持するものであるが、発熱部12bの位置を規制するために規制部14a、14b、14c、14dを有している。規制部14aは発熱部12bが下に下がらないように規制するもの、規制部14bは発熱部12bが左に行かない(回転アンテナ側に近寄らない)ように規制するもの、規制部14cは発熱部12bが上に上らない(放射部よりも食品側に近寄らない)ように規制するもの、規制部14dは発熱部12bが右に行かないように規制するものであり、ガイシ14は加熱室底面301にビス15で固定されている。
図5は図1と合わせて回転アンテナの停止位置について説明する図である。
まず第一に回転アンテナの指向性の強い向き(図1の実矢線85)が発熱体から遠い向きを向いている場合は特に問題はない。例えば図1のように左の回転アンテナの指向性の強い向き85が右側を向いているとか、右の回転アンテナの指向性の強い向き85が左側を向いている場合がこれにあたる。
次に回転アンテナの指向性の強い向き(実矢線85)が発熱体に近い向きを向いているとき(つまり左の回転アンテナの指向性の強い向きが左を向くとか、右の回転アンテナの指向性の強い向きが右を向くとか)は、発熱体の導体部分(本実施の形態のシーズヒータでは外部全体)が邪魔となるから、発熱体までの距離によってマイクロ波の放射のしやすさが変わってくる。しかし本実施の形態では、制御手段が回転アンテナ8、8の停止位置を制御することができるので、発熱体までの距離が長くなる向きで回転アンテナ8、8を停止させている。図1、図5の場合、左の回転アンテナは、駆動領域13から明らかなようにコーナー部12cまでの距離が遠いので、指向性が強い向きが実矢線85aになる向きで図3の端部851を停止させる。また同様に、右の回転アンテナの場合はコーナー部12e、12fまでの距離が遠いので、指向性が強い向きが実矢線85b、または実矢線85cになる向きで端部851を停止させる。
また、右の回転アンテナの場合は、給電部12aがあることで発熱体が存在しない空間16が存在し、ここでは発熱体が邪魔にならないので、指向性が強い向きが実矢線85dになる向きでも端部851を停止させている。
さらに、左の回転アンテナは指向性が強い向きが実矢線85e、右の回転アンテナは指向性が強い向きが実矢線85fの向きでも停止させている。これはガイシ14の向きであるが、ガイシ14は誘電材料からなり、マイクロ波帯における比誘電率が空気の比誘電率(=1)よりも大きい。セラミック、ガラス、樹脂などで、電子レンジ内で使える誘電材料の比誘電率は10以下で、特に2から4程度が一般的である。また比誘電率をεとする
とその領域を通過するマイクロ波の波長は1/√εに圧縮されることが知られており、逆に言えばその領域の大きさが√ε倍に広がったことと同じことになる。たとえばガイシ14の比誘電率ε=4とすると、ガイシ14のある領域は実際の寸法の2倍の広さがあることになり、その結果発熱体までの距離が周辺に比べて遠いことになる。
図6は載置台5を上から見た図であり、分かりやすくするために本当は見えない回転アンテナ8、8の駆動領域13、13と、発熱部12bの駆動領域17を破線で示している。そして載置台5は、全体が暗めの背景色18に白い色のマーキング19a、19b、19c、19dを食品を置くべき代表的な指示手段として構成したものである。中でもマーキング19a、19bは、駆動領域13、17からも明らかなように、発熱部12bの内側で回転アンテナ8、8のそれぞれと対向する場所を指示しており、マーキング19c、19dは回転アンテナ8、8の中間領域を指示している。
以上、本実施の形態においては、回転アンテナ8、8の停止位置を制御するので回転アンテナ8、8の周囲にシーズヒータ12があってもシーズヒータ12が邪魔になりにくい向きで回転アンテナ8、8を停止させてマイクロ波を放射しやすくできるとともに、加熱分布を制御することができ、狙い通りの加熱分布を実現することができる。
特に、シーズヒータ12を回転アンテナ8、8よりも低い位置に配置する構成により、回転アンテナ8、8から放射されたマイクロ波はシーズヒータ12に邪魔されずに食品4に到達させることができる。
また、制御手段10は、回転アンテナ8、8の指向性の強い端部851をシーズヒータ12までの距離が遠い向き(実矢線85a、85b、85c)で停止させる構成によって、回転アンテナ8、8の指向性の強い端部851から放射される大部分のマイクロ波をシーズヒータ12に邪魔されずに食品4に到達させることができる。
また、制御手段10は、回転アンテナ8、8の指向性の強い端部851をシーズヒータ12の給電部12aに向けて停止させる構成により、シーズヒータ12の給電部12aはシーズヒータ12が加熱室壁面を貫通して加熱室3の外側で給電する構成となり、必然的に回転アンテナ8、8からシーズヒータ12までの距離が遠くなるので回転アンテナ8、8の指向性の強い端部851から放射される大部分のマイクロ波をシーズヒータ12に邪魔されずに食品4に到達させることができる。
また、シーズヒータ12の位置を規制するために加熱室底面301に取り付けられた誘電材料からなるガイシ14を有し、制御手段10は、回転アンテナ8、8の指向性の強い端部851をガイシ14に向けて停止させる構成により、ガイシ14が誘電材料からなるためにマイクロ波帯における比誘電率が空気の比誘電率(=1)よりも大きく、比誘電率の平方根によりガイシ14内を通過するマイクロ波の波長が圧縮されるので、あたかも空間が広くなる効果があり、回転アンテナ8、8の指向性の強い端部851から放射される大部分のマイクロ波をシーズヒータ12に邪魔されずに被加熱物に到達させることができる。
また、シーズヒータ12の位置を規制するために加熱室壁面に取り付けられた誘電材料からなるガイシ14を有し、ガイシ14は、シーズヒータ12を回転アンテナ8、8から遠い方向へと位置規制する構成により、シーズヒータ12の取り付けばらつきによってシーズヒータ12が回転アンテナ8、8に近づいてしまうことがなく、回転アンテナ8、8から放射されたマイクロ波をシーズヒータ12に邪魔されずに食品4に到達させることができる。
また、ガイシ14は、シーズヒータ12を回転アンテナ8、8に近い方向へも位置規制する構成としたものも含まれる。
この構成により、シーズヒータ12の取り付けばらつきによってシーズヒータ12が回転アンテナ8、8から離れすぎてしまうことがなく、回転アンテナ8、8から放射されたマイクロ波をねらい以上に過剰に食品4に到達させることを防ぐことができる。
また、加熱室内に配置され被加熱物を載置する載置台5と、載置台5上の食品4を置くべき場所を指示する指示手段としてマーキング19a、19b、19c、19dを有し、とりわけマーキング19a、19bはシーズヒータ12の内側で回転アンテナ8、8と対向する場所を指示することにより、シーズヒータ12の内側で回転アンテナ8、8と対向する場所はマイクロ波が到達できるので、マイクロ波が到達する場所を食品4を置くべき場所として指示することで、使用者の意識を喚起でき、確実にマイクロ波を当てることができる領域に食品4を置いてもらえるので、狙い通りの加熱分布を実現することができる。
また、本実施の形態により、指示手段として、載置台5上に描かれたマーキングの色の違いで場所を指示する構成としたので、使用者がマーキングの色の違いを見ることで容易に置くべき場所を認識することができる。その結果、少なくともマーキングから外れた端には置きにくくなるので、端のシーズヒータ12にかかるような位置に置かれることでマイクロ波が到達せずに失敗する確率を格段に減らすことができて、狙い通りの加熱分布を実現することができる。
なお、マーキングは色の違いでなくても、同じ色の濃淡であるとかドットの粗密であってもよく、目で見てわかる指示手段であれば良い。
なお、本実施の形態により、複数の回転アンテナ8、8が対向する場所の中間領域をマーキング19c、19dで指示するので、中間領域は複数の回転アンテナ8、8から等しくマイクロ波を照射でき、マイクロ波を合算することによって他の領域以上に加熱できる場所となる。また、食品を一つだけ置く場合に、マーキング19a、19bだけではどこに置くべきか迷うことになるが、マーキング19c、19dがあれば自然とマーキング19c、19dの間の中央に置けば良いと言う意識が働き、置きやすくなる。また食品を二つ置く場合には、マーキング19a、19bが左右対称に配置されているためそれぞれそこに置けば良いと言う意識が働き、置きやすい。さらに食品を三つ置く場合には、マーキング19a、19bにそれぞれ一つと、マーキング19c、19d間に一つとで、横並びに3つ置こうという意識が働き、置きやすいし、3つだからといって端におこうと言う意識を妨げることができて失敗しにくい。
図7は、回転アンテナの放射部の変形例を示す平面図であり、(a)は鎌状に形成した短辺を有することにより、短辺端部の沿面長さを大きくして、端部先端側から放射されるマイクロ波の指向性を強くしたものである。また、(b)はT字形に沿う短辺を形成することで、短辺端部の沿面長さを更に大きくし、端部先端側から放射されるマイクロ波の指向性を強くしたものである。(c)は短辺をピッケル状に形成することにより、短辺端部の沿面長さを大きくするとともに、短辺の幅を細身にしてマイクロ波の電界を集中させ、放射指向性を高めようとするものである。いずれの場合も放射部全体としての最も指向性が強い向きは実矢線85、その次に指向性が強い向きは破線86である。
また、本実施の形態によれば、回転アンテナを二つの例で構成しているが、もちろんこれに限定されるものではなく、1つでも良いし3つ以上でも良い。
(実施の形態2)
図8〜図12は実施の形態2を示す。図8は、本発明に係る実施形態2のマイクロ波加熱装置である電子レンジの概略構成を示す図であり、上方から見た平断面図である。
本実施の形態の電子レンジは、代表的なマイクロ波発生手段であるマグネトロン20と、マグネトロン20から放射されるマイクロ波を伝播する導波管21と、導波管21の上部に接続された加熱室22と、加熱室22の底面を為す加熱室底面221の中心から略等距離に設けた回転アンテナ23を備える構成である。
回転アンテナ23は、いわゆるスロットアンテナであり、平らな円板状の導電性材料にスロット(孔)24を有する放射部25と、放射部25と電気的及び機械的に一体化された円筒状の導電性材料から成る結合部26から構成されている。本実施の形態の回転アンテナ23は、結合部26からスロット(孔)24側の端部27へ、つまり実矢線28の方向に放射指向性が高くなる特性を有している。
発熱体および発熱体保持手段については図9、図10も用いて説明する。図9は図8の実矢線29、29から見た断面図、図10は図8の実矢線30、30から見た断面図である。
シーズヒータ31は、加熱室の外部に配置されて電力供給される給電部311と、加熱室内の発熱部312を有し、発熱部312は回転アンテナ23の駆動領域32(放射部25が円形なのでその外形に一致)の周囲に配置され、大部分が回転アンテナ23の放射部25よりLだけ高い位置にあるが、発熱部312を曲げて構成した二箇所の低部313だけは放射部25よりM(約5mm程度)だけ低くしてある。
次に発熱体保持手段であるガイシ33について説明する。ガイシ33は誘電材料からなり、シーズヒータ31の発熱部312を保持するものであるが、発熱部312の位置を規制するために規制部34a、34bを有している。規制部34aは発熱部312が下に下がらないように規制するもの、規制部34bは発熱部312が回転アンテナ23側に近寄らないように外向きに規制するものであり、ガイシ33は加熱室底面221にビス35で固定されている。
次に回転アンテナ23の停止位置制御について説明する。本実施の形態では図8のように加熱室22が横長の長方形状であり、一つの回転アンテナ23を一定回転させるだけでは、庫内に均等にマイクロ波を放射するのが難しい。つまり、加熱室22の前と後ろ(図8の下と上)は回転アンテナ23からの距離が短いのでマイクロ波が届きやすいが、加熱室22の右とか左(図8の右と左)は回転アンテナ23からの距離が長いのでマイクロ波が届きにくい。そこで本実施の形態では、右と左にだけシーズヒータ31の発熱部312に低部313を設けて、放射部25の端部27より高さを低くすることでマイクロ波の妨げにならないようにしており、かつ制御手段(図示せず)によって回転アンテナ23の端部27が、右向き(図8、図9の向き)および左向き(図示せず)の状態では、他の向きと比較して長時間停止させるような制御を行っている。
図11は、加熱室22の側壁面の要部断面図で、加熱室22内に光を照射するLED等からなる照明手段36が回動自在に設けられている。
また、照明手段36は、加熱室22の右側の側壁面222の上部に三角柱状の突起223を加熱室22内に突出して設け、この突起223の内部に設けられている。突起223の下面には窓224が切り欠かれており、照明手段36からの光が加熱室22内に投光されるようになっている。照明手段36は首振り機構37によって首振り可能となっている
。
図12は、載置台38を上から見た図であり、分かりやすくするために本当は見えない回転アンテナ23の駆動領域32を破線で示している。そして載置台38は照明手段36に照らされるもので、照明手段36が首振り機構37によって首を振るのに合わせて照らされるスポットポイント39が実矢線40のように順次位置を変えることにより、食品を置くべき領域を指示するものである。即ちスポットポイント39は代表的な指示手段といえる。
以上、本実施の形態において、回転アンテナ23の指向性の強い端部27をシーズヒータ31の低部313に向けて、端部27を低部313よりも高い位置で停止させる構成により、回転アンテナ23の指向性の強い端部27から放射される大部分のマイクロ波を低部313に邪魔されずに食品に到達させることができる。
また、本実施の形態により、回転アンテナ23の向きによって加熱分布を制御するにあたり、食品を置くべき場所としてスポットポイント39で指示するので、置くべき場所を明確にできるとともに、確実にマイクロ波を当てることができる領域にのみ食品を置いてもらえるように使用者の意識を喚起できる。その結果、少なくともスポットポイントから外れた四隅に置きにくくなるので、四隅に置かれることによる失敗の確率を格段に減らすことができて、狙い通りの加熱分布を実現することができる。
また、本実施の形態により、指示手段として、載置台38を照らす照明手段36を有し、指示手段は、照明手段36により載置台38上を照らすことで生じるスポットポイント39によって場所を指示する構成としたので、使用者が照らされたスポットポイント39を見ることで容易に置くべき場所を認識することができる。
なお、本実施の形態のように、スポットポイント39によって指示する場合は、首振り機構37の制御方法によっては目的に応じて照らす場所を変えることも可能である。たとえば食品の個数を設定できるとすれば、1個と設定したときは中間領域に円を描くような照らし方を行い、2個と設定したときは2つの円を描くような照らし方を行うなどの制御も可能である。設定内容やメニューによって変えても良い。
また本実施の形態では小さなスポットポイント39を順次移動させたが、一度に全体をカバーできるような大きな領域を照らす構成にしても良い。この場合は首振り機構を不要にできる。
(実施の形態3)
図13〜図20は実施の形態3を示す。図13、図14は本発明に係る代表的なマイクロ波加熱装置である電子レンジ41の構成図で、図13は上方から見た平断面図、図14は図13の実矢線42から見た正断面図である。
図13に示すように、電子レンジ41は、代表的なマイクロ波発生手段であるマグネトロン43から放射されたマイクロ波を伝送する導波管44と、導波管44の上部に接続され幅方向寸法(約410mm)が奥行き方向寸法(約315mm)より大きい形状の加熱室45と、代表的な被加熱物である食品(図示せず)を載置するため加熱室45内に固定され、セラミックやガラスなどの低損失誘電材料からなるためにマイクロ波が容易に透過できる性質の載置台46と、加熱室45内の載置台46より下方に形成されるアンテナ空間47と、導波管44内のマイクロ波を加熱室45内に放射するため、導波管44からアンテナ空間47にわたり、加熱室45の幅方向に対して対称位置に取り付けられた二つの回転アンテナ48、49と、回転アンテナ48、49を回転駆動できる代表的な駆動手段
としてのモータ50、51と、モータ50、51を制御して回転アンテナ48、49の向きを制御する制御手段52と、各回転アンテナ48、49の回転の原点を検出する原点検出機構を構成するフォトインタラプタ53と、加熱室45内の温度分布を検出する温度分布検出手段である赤外線センサ54とを有する。
また、電子レンジ41は、ドア55を備えている。そして、このドア55の下部に設定手段(図示せず)が配置されている。設定手段(図示せず)は、使用者が、食品や調理内容に応じて様々な調理メニューを選択できるものである。この選択結果に基づき、制御手段52はマグネトロン43やモータ50、51を制御することができる。
回転アンテナ48、49は、放射指向性を有する構成である。本実施の形態の電子レンジ41は、回転アンテナ48、49のうちの少なくとも一方の放射指向性の強い部位を所定の向きに制御して特定の食品を集中加熱する構成としている。具体的にどのように制御しているかについては後述する。
また、回転アンテナ48、49は、導波管44と加熱室壁面451との境界面に設けられた直径約30mmで略円形の結合孔56、57を貫通する直径約18mmで略円筒状の導電性材料から成る結合部58、59と、結合部58、59の上端にかしめや溶接などで電気的に接続されて一体化され、概ね垂直方向よりも水平方向に広い面積を有する導電性材料から成る放射部60、61とを備える。
また、回転アンテナ48、49は、結合部58、59の中心が回転駆動の中心となるようにモータ50、51のシャフト62、63に嵌合された構成としている。放射部60、61は回転の方向に対して形状が一定ではないために放射指向性がある構成としている。
回転アンテナ48、49の回転の中心は加熱室45内の中心から略等距離に配置する。この構成により、アンテナが一つの構成では通常は加熱しにくい加熱室内の中央付近を、回転アンテナ48、49の放射指向性の強い端部60a、61aを中央付近に向けることにより加熱可能とするものである。
導波管44は、図13のように上から見てT字型を成し、左右対称な形状であるため、マグネトロン43から結合部58、59までの距離が等しく、かつ結合部58、59は加熱室45の幅方向に対しても対称位置に取り付けられているので、マグネトロン43から放射されるマイクロ波は導波管44、回転アンテナ48、49を介して加熱室45内にほぼ均等に分配される。
放射部60、61は同一の形状で、放射部上面64、65が略四辺形の形状で、そのうち3辺には加熱室壁面451側に曲げられた放射部曲げ部66を有し、その3辺の外側へのマイクロ波の放射を制限する構成である。加熱室壁面451と放射部上面64、65までの距離は約10mm程度とし、放射部曲げ部66は、それよりも約5mm程度低い位置に引き下げられている。また残る1辺の端部60a、61aの幅寸法は80mm以上としている。この構成において回転アンテナ48、49は、いわゆる回転導波管タイプのアンテナとなり、結合部58、59から端部60a、61aの方向への放射指向性を強くすることができる。
この構成において一般的な食品を均一に加熱する場合は、従来の電子レンジと同様、特に置き場所にこだわる必要はなく、回転アンテナ48、49も従来同様に一定回転させてよい。一方、集中加熱する場合は、特に加熱室45内の中央付近を加熱する場合は、制御手段52は、図13、図14に示すように、回転アンテナ48、49の端部60a、61aを、加熱室45の幅方向の略中央かつ奥行き方向の略中央という所定の向きに向けるよ
うに制御する。
回転アンテナ48、49の端部60a、61aが加熱室45の幅方向の略中央かつ奥行き方向の略中央を向くとき、端部60a、61aの方向への放射指向性が強いので、特に端部60a、61aの方向からマイクロ波が放射されその方向に位置する食品を集中的に加熱することができる。
また、加熱室45内の左側付近を加熱する場合、制御手段52は、回転アンテナ48、49の端部60a、61aを、左向き(加熱室45をドア55側から見て左側)に向けるように制御すればよい。
同様に、加熱室45内の右側付近を加熱する場合、制御手段52は、回転アンテナ48、49の端部60a、61aを、右向き(加熱室45をドア55側から見て右側)に向けるように制御すればよい。
また、加熱室45内の前方中央付近を加熱する場合、制御手段52は、回転アンテナ48、49の端部60a、61aを、加熱室45の幅方向の略中央かつ奥行き方向の前方(加熱室45内の中央前方付近)に向けるように制御すればよい。
また、加熱室45内の後方中央付近を加熱する場合、制御手段52は、回転アンテナ48、49の端部60a、61aを、加熱室45の幅方向の略中央かつ奥行き方向の後方(加熱室45内の中央後方付近)に向けるように制御すればよい。
以上のように、本実施の形態の電子レンジ41は、局所的に加熱したい場所に応じて回転アンテナの向きを制御するものであり。回転アンテナ48、49を所定の向きに向けるためには、モータ50、51としてステッピングモータを用いるとか、あるいは一定回転のモータであっても基準位置を検出して通電時間を制御するなどの手段が考えられる。
本実施の形態の電子レンジ41では、モータ50、51としてステッピングモータを用いており、各モータのシャフト62、63にそれぞれ原点検出機構を設けている。この原点検出機構は、図15に示すように、シャフトを中心軸とする円板62aと、フォトインタラプタ53とにより構成される。円板62aには、矩形状のスリット62bが設けられている。
円板62aは、回転アンテナ48、49を回転させるモータのシャフト62、63の軸にそれぞれ共通に取り付けられていて、発光素子と受光素子とを備えたフォトインタラプタ53の光路を遮るように回転するものである。
この構成により、スリット62bがフォトインタラプタ53の光路を通過するときは、前記光路を遮るものが無いので、スリットの通過時点を検出することができる。従って、スリット62bの位置を回転アンテナ48、49の原点と設定しておくことで、各モータに取り付けられたフォトインタラプタ53により回転アンテナの原点を検出することができるものである。
また、制御手段52は、原点検出機構で検出できる原点を基準として、回転アンテナ48、49の指向性の強い部分を局所加熱箇所に集中させるときの回転アンテナ48、49の角度(停止位置)を予め記憶しているアンテナ角度記憶部を有している。回転アンテナ48、49の動作を制御して局所加熱を実行する際には、アンテナ角度記憶部の情報が参照される。
なお、ここまで、回転アンテナが二つの場合について説明してきたが、回転アンテナの数はこれに限られず二個以上の複数個でも良く、例えば、三つの回転アンテナを有する構成としても良い。
次に、図16を参照して、本実施の形態の電子レンジ41が備える温度分布検出手段である赤外線センサ54について説明する。この赤外線センサ54は、基板70上に一列に並んで設けられた複数の赤外線検出素子71と、基板70全体を収納するケース72と、ケース72を赤外線検出素子71が並んでいる方向と垂直に交わる方向に移動させるステッピングモータ73と、を備えるものである。
基板70上には、赤外線検出素子71を封入する金属製のカン74と、赤外線検出素子71の動作を処理する電子回路75とが設けられている。また、カン74には赤外線が通過するレンズ76が設けられている。また、ケース72には、赤外線を通過させる赤外線通過孔77と、電子回路75からのリード線を通過させる孔78とが設けられている。
この構成により、ステッピングモータ73が回転運動することで、ケース72を、赤外線検出素子71が一列に並んでいる方向とは垂直方向に移動させることができる。
図17は、赤外線温度検出スポットを説明する図である。図に示すように、本実施の形態の電子レンジ41は、赤外線センサ54のステッピングモータ73が往復回転動作することにより、加熱室45内のほぼ全ての領域の温度分布を検出することができるものである。
具体的には、例えば、まず図17中のA1〜A4の領域の温度分布を、赤外線センサ54が有する一列に並んだ赤外線検出素子71が同時に検出する。次に、ステッピングモータ73が回転動作しケース72が移動するとき、赤外線検出素子71がB1〜B4の領域の温度分布を検出する。さらに、ステッピングモータ73が回転動作してケース72が移動するとき、赤外線検出素子71がC1〜C4の領域の温度分布を検出し、同様に、D1〜D4の領域の温度分布が検出される。
また、上述の動作に続けて、ステッピングモータ73が逆回転することで、D1〜D4の領域側から、C1〜C4、B1〜B4、A1〜A4の順に、温度分布を検出する。赤外線センサ54は、以上の動作を繰り返すことで、加熱室45内の全体の温度分布を検出することができる。
次に、図14を参照して、制御手段52の概略構成を説明する。制御手段52は、回転アンテナ48、49の動作を制御するアンテナ制御部521と、加熱室45内に載置された被加熱物が食品であるか否かを判定する食品判定部522と、加熱処理のうち初期段階の終了を判定する加熱初期段階終了判定部523と、加熱処理全体の終了を判定する加熱終了判定部524とを有する構成である。
食品判定部522は、被加熱物の初期温度分布を記憶する初期温度分布記憶部528と、被加熱物の単位時間あたりの温度上昇率を算出する温度上昇率算出部529と、を有し、算出した温度上昇率が所定以上の場合に、被加熱物が食品であると判定するものである。これは、すなわち、温度を検出した領域が、被加熱物を載せる載置台であるのか又は加熱対象である食品であるのかを判定するもので、載置台はマイクロ波を透過してほとんど温度上昇しないが、食品はマイクロ波を吸収して温度上昇しやすい、その特性の違いにより判別するものである。
加熱初期段階終了判定部523は、例えば、加熱開始から所定時間が経過した場合に加
熱初期段階が終了したと判定する判定条件や、被加熱物の最高温度が所定温度以上に到達した場合に加熱初期段階が終了したと判定する判定条件や、また、加熱開始から被加熱物の温度変化の最高値が所定以上である場合に加熱初期段階が終了したと判定する判定条件を用いて、加熱処理の初期段階が終了したことを判定するものである。
加熱終了判定部524は、例えば、被加熱物の温度分布のうち最高温度が予め設定された設定温度を超えるときに加熱処理を終了すると判定する判定条件や、食品と判定した箇所の平均温度が設定温度を越えるときに加熱処理を終了する判定条件や、また、被加熱物の最高温度が所定温度に到達するのに要する時間を測定し、その要した時間の一定の割合(例えば、50%)を追加加熱時間として加熱処理し、その後追加加熱時間が終了したときに加熱処理を終了する構成等により、加熱処理の終了を判定するものである。
アンテナ制御部521は、加熱室内を均一加熱させるべく回転アンテナ48、49の動作を制御する分散加熱モード制御部525と、被加熱物の低温部分を加熱すべく回転アンテナ48、49の動作を制御する局所加熱(スポット加熱)モード制御部526と、加熱室内に載置された被加熱物の低温部を検出する低温部抽出部527とを有する構成である。
分散加熱モード制御部525は、例えば、マイクロ波発振中に所定の位置で停止させることで局所的な加熱のできる二つの回転アンテナ48、49を、その停止位置を刻々と変化させることで分散加熱を実現したり、回転アンテナ58、59を連続的に回転させることで分散加熱を実現したり、また、回転アンテナ48、49の停止位置をランダムに変えることで分散加熱を実現する構成である。
局所加熱(スポット加熱)モード制御部526は、低温部抽出部527より最低温度箇所の情報を得て、局所加熱すべく回転アンテナ48、49の向きを制御する構成である。例えば、最低温度箇所が、図17中のB2、B3、C2、C3のいずれかであれば、回転アンテナ48、49が中央を加熱する向き、すなわち図13、図14に示した停止位置に回転アンテナ48、49を停止させる。
また、最低温度箇所が、図17中のB1、C1のいずれかであれば、回転アンテナ48、49が左方向を加熱する向きに回転アンテナ48、49を停止させる。また、最低温度箇所が、図17中のB4、C4のいずれかであれば、回転アンテナ48、49が右方向を加熱する向きに回転アンテナ48、49を停止させる。
また、最低温度箇所が、図17中のA2、A3のいずれかであれば、回転アンテナ48、49が前方を加熱する向きに回転アンテナ48、49を停止させる。また、最低温度箇所が、図17中のD2、D3のいずれかであれば、回転アンテナ48、49が後方を加熱する向きに回転アンテナ48、49を停止させる。
以上のように、制御手段52は、温度検出手段が検出した最低温度箇所に応じて、回転アンテナ48、49の停止位置を制御するものであるが、このとき、回転アンテナが所定の位置に停止したまま加熱室内にマイクロ波を放射しつづけると、回転アンテナ自体が昇温し過ぎて融解する恐れがある。
この点を鑑みて、制御手段52の局所加熱(スポット加熱)モード制御部526は、上述の局所加熱モード時に、回転アンテナ48、49を目標角度(停止位置)を中心として所定角度(例えば、±5度)程度往復揺動させるものである。これにより、局所的加熱効果に影響を与えることなく回転アンテナの劣化を防止することができる。また、マイクロ波放射中に回転アンテナが停止しつづけることで、回転アンテナの一部にマイクロ波が集
中しすぎて、過剰加熱することを防止する。この往復揺動動作は、局所加熱開始時から行っても良いが、局所加熱開始時から所定時間経過後(例えば、30秒〜1分後)に開始する構成としてもよい。
この往復揺動動作を実行するために、制御手段52は、回転アンテナ48、49が停止することを許容する上限時間を予め記憶する停止上限時間記憶部と、回転アンテナ48、49が停止している時間をカウントする停止時間計時部と、回転アンテナ48、49を往復揺動させる角度を記憶する往復角度記憶部と、を有している。
また、局所加熱開始時から所定時間経過後(例えば、30秒〜1分後)に回転アンテナ48、49を所定角度(例えば、5度)だけ回転させる構成としても良い。
また、制御手段52は、回転アンテナ48、49が所定の停止位置(角度)にあるときを原点として記憶している。そして、制御手段52は、例えば、加熱処理実行前または加熱処理実行後に回転アンテナ48、49の原点を確認する原点検出モードを実行する。
原点検出モード中は、回転アンテナ48、49の角度を特定することができず、このままマイクロ波を発振すると不本意な加熱状態を起こし不良の原因となってしまうことがある。そこで、制御手段52は、原点検出モード中で回転アンテナを駆動している間は、マグネトロンの動作を停止する制御を行う。
また、制御手段52は、原点検出モードを加熱処理終了後に行い、原点を検出した状態で非加熱時に待機する。これにより、加熱処理を開始する前に原点検出のための待機時間が発生するのを防ぐことできる。
また、制御手段52は、原点検出モードで原点が見つからなかった場合には、エラーと判定してそれ以降の加熱処理の実行を禁止するメニューと、回転アンテナ48、49を停止させた状態で加熱処理を実行するメニューと、を有するものである。この構成により、調理メニューに応じて、例えば、加熱室45内の温度分布の偏っていても構わないメニュー(単に加熱処理できればムラがあっても良い場合等)のときは、回転アンテナ48、49の動作を停止したまま加熱処理を実行するので、ユーザに対して最低限の機能を提供することができる。
なお、原点が検出できない場合は、回転アンテナ48、49を駆動するモータ50、51が故障している場合もあり、その状態のまま回転アンテナ48、49を動作させることは問題があるので、回転アンテナ48、49の動作は停止させるものである。
一方、加熱室45内の温度分布が偏っていたのではユーザが所望する出来栄えの加熱処理を実現することができないメニューのときは、加熱処理の実行自体を禁止するものである。
また、制御手段52は、加熱開始の初期段階においては分散加熱モードで加熱室45全体を均一加熱し、加熱室45内の温度分布に差が生じはじめたときに局所加熱モードに移行するものとしても良い。加熱開始の初期段階では加熱室45内の温度分布に差がないので、分散加熱モードが効率よく加熱室45全体を昇温させることができる。
また、制御手段52は、加熱開始の初期段階においては、まず、加熱室45内の中央付近を局所的に加熱するものとしても良い。通常、加熱室内の温度分布に差がない状態から加熱処理を開始すると、加熱室の中央付近が最も昇温しにくい。従って、まず、加熱室45内の中央付近を局所加熱し、その後、分散加熱を行って加熱室全体の均一加熱を行うこ
とで、効率よく加熱室全体を均一加熱することができる。
また、各回転アンテナ48、49を駆動するモータ50、51は、例えば、ステッピングモータとしても良い。このとき、制御手段52は、各回転アンテナ48、49に取り付けられた各ステッピングモータに対してパルスを入力するタイミングを、各ステッピングモータ毎に時間差を設けて同時にならないように制御すると良い。同時にパルスを入力すると、そのタイミングで必要な電流が増大し、電子レンジ41に大電流に対応可能な回路を設置しなければならなくなるが、時間差を設けてパルスを入力することで回路が大型化するのを防止できる。
次に、本実施の形態の電子レンジ41の動作について説明する。まず、加熱初期段階時の動作について、図18を参照して説明する。
まず、加熱処理が開始されると、マグネトロン43がマイクロ波を発生させ、そのマイクロ波が導波管44を介して加熱室45内に伝送される(S101)。このとき、赤外線センサ54は、加熱初期時点での加熱室45内の温度分布を検出し、制御手段52は温度分布の検出結果を記憶する(S102)。
次に、制御手段52は、分散加熱を実現するために、例えば、回転アンテナ48、49を一定速度で回転させる(S103)。一定時間経過後、赤外線センサ54は、再び加熱室45内の温度分布を検出する(S104)。
そして、制御手段52の加熱初期段階終了判定部523は、S102の段階で検出した加熱初期段階での加熱室45内の温度分布と、S104の段階で検出した一定時間経過後の加熱室45内の温度分布とを参照して、一定の加熱初期段階終了の判定条件が満たされているか否かを判断する。判定条件が具備されていなかった場合は(S105−No)、続けて加熱室45内を分散加熱し、所定時間経過後に再び加熱室45内の温度分布を検出する。
判定条件が具備されていた場合は(S105−Yes)、赤外線センサ54が温度を検出した各領域が、食品が載置された領域であるか否かを判定するステップに移行する。このステップでは、例えば、温度を検出した各領域の単位時間あたりの温度上昇率を参照し、所定値以上である場合には、その領域に食品が載置されていると判断する。また、温度を検出した各領域について初期温度を参照し、その初期温度がマイナスだった場合(例えば、冷凍食品等が想定される)に、その領域は食品が載置されている領域と判断しても良い。このように、S106のステップにおいては、加熱室45内の全領域のうち、食品が載置されている領域と、食品が載置されていないその他の領域とを判別し、制御手段52に記憶しておく。(S106)。
加熱初期段階が終了すると、電子レンジ41は、続けて、加熱フィードバック段階へ移行する。図19を参照して、加熱フィードバック段階の動作について説明する。電子レンジ41の赤外線センサ54は、加熱初期段階が終了した後、加熱室45内の全体の温度分布を検出する(S107)。そして、加熱室45内で食品が載置されていると判定されている領域内での最低温度の領域を抽出、すなわち、食品箇所のうち最低温度箇所を抽出する(S108)。
その最低温度箇所が図17中のB2、B3、C2、C3のいずれかの領域であるか否かを判定する(S109)。最低温度箇所がB2、B3、C2、C3のいずれかの領域であった場合は(S109−Yes)、制御手段52は、回転アンテナ48、49が加熱室45内の中央を加熱する向き、すなわち図13、図14に示した停止位置に回転アンテナ4
8、49を停止させるように動作制御を実行する(S117)。
最低温度箇所がB2、B3、C2、C3のいずれの領域でもなかった場合は(S109−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がB1、C1のいずれかである否かを判定する(S110)。
最低温度箇所がB1、C1、のいずれかの領域であった場合は(S110−Yes)、制御手段52は、回転アンテナ48、49が加熱室45内の左方向を加熱する向きに回転アンテナ48、49を停止させるように動作制御を実行する(S118)。
最低温度箇所がB1、C1のいずれの領域でもなかった場合は(S110−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がB4、C4のいずれかである否かを判定する(S111)。
最低温度箇所がB4、C4、のいずれかの領域であった場合は(S111−Yes)、制御手段52は、回転アンテナ48、49が加熱室45内の右方向を加熱する向きに回転アンテナ48、49を停止させるように動作制御を実行する(S119)。
最低温度箇所がB4、C4のいずれの領域でもなかった場合は(S111−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がA2、A3のいずれかである否かを判定する(S112)。
最低温度箇所がA2、A3、のいずれかの領域であった場合は(S112−Yes)、制御手段52は、回転アンテナ48、49が加熱室45内の前方向を加熱する向きに回転アンテナ48、49を停止させるように動作制御を実行する(S120)。
最低温度箇所がA2、A3のいずれの領域でもなかった場合は(S112−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がD2、D3のいずれかであるか否かを判定する(S113)。
最低温度箇所がD2、D3、のいずれかの領域であった場合は(S113−Yes)、制御手段52は、回転アンテナ48、49が加熱室25内の後方向を加熱する向きに回転アンテナ48、49を停止させるように動作制御を実行する(S121)。
最低温度箇所がD2、D3のいずれの領域でもなかった場合は(S113−No)、続けて、制御手段52は、回転アンテナ48、49を一定回転させて加熱室45内を均一加熱する分散加熱モードに移行する(S114)。
制御手段52は、S114、S117〜S121のいずれかステップを実行した後に、終了判定を行う(S115)。例えば、食品の温度分布のうち最高温度が予め設定された設定温度を超えるときに加熱処理を終了すると判定する加熱処理終了判定条件や、食品と判定した箇所の平均温度が設定温度を越えるときに加熱処理を終了すると判定する加熱処理終了判定条件を満たしているか否かを判定する。
加熱処理終了判定条件を満たしていた場合は(S115−Yes)、加熱処理を終了する(S116)。加熱処理終了判定条件を満たしていない場合は(S115−No)、S107のステップの段階に移行し、再びS107以降のステップを繰り返す。
以上のように、本実施の形態の電子レンジ41は、二つの回転アンテナ48、49により加熱室45内の特定の箇所を集中的に加熱することができるものであり、加熱処理中に
被加熱物である食品の温度分布を検出し、その食品の最低温度箇所にスポットを当てて局所的に加熱することができるので、食品をムラなく加熱処理することができる。
また、局所的加熱と分散加熱とを食品の温度分布に応じて切り換えることができ、すなわち必要な箇所にマイクロ波を集中させることができるので、効率よく短時間で食品を加熱することができる。
なお、図19において説明した加熱フィードバック段階の動作制御については、食品の最低温度箇所を探索する順序はこれに限られず、結果として食品全体を探索するものであれば他の順序で実行しても良い。
なお、加熱フィードバック制御に関しては、たとえば加熱室45内の各領域(A1〜A4、B1〜B4、C1〜C4、D1〜D4)を、中央領域A(B2、B3、C2、C3)と左側領域B(B1、C1)と右側領域C(B4、C4)と前方領域D(A2、A3)と後方領域E(D2、D3)とに分類し、その分類した領域内の食品箇所の平均温度に基づいて加熱フィードバックを行うようにしても良い。この場合は、分類した一定領域内(A〜E)の食品箇所の平均温度に基づいて、局所加熱箇所を決定するので、食品の一箇所だけが極端に低い場合であっても、食品全体として加熱が必要な箇所に対して集中加熱を行うことができる。
次に、発熱体について説明する。本実施の形態では発熱体としてヒータ線の外側をガラス管で覆った管ヒータ79を、前後に2本有する構成としており、かつ図14に示すとおり、回転アンテナ48、49の放射指向性の強い端部60a、61aと比較してヒータ線は高さがN(約10mm)だけ低い位置に配置されている。
また図20(a)は載置台46を上から見た図であり、図20(b)は図20(a)の実矢線461、461からみた断面図である。分かりやすくするために本当は見えない回転アンテナ48、49の駆動領域481、491と管ヒータ79を破線で示している。そして載置台46は、フラット面462に代表的な凹部または凸部であるところの段部463(上から見たら凹部、下から見たら凸部)を、指示手段として施してある。段部463は、駆動領域481、491の外側で、かつ管ヒータ79よりも内側に配置している。
以上、本実施の形態において、管ヒータ79のヒータ線を回転アンテナ48、49の放射指向性の強い端部60a、61aよりも低い位置に配置する構成により、回転アンテナ48、49の端部60a、61aから放射されたマイクロ波は管ヒータ79の導体部分のヒータ線に邪魔されずに食品に到達させることができる。
また、本実施の形態において、載置台46上の食品を置くべき場所を指示する指示手段として段部463を有し、段部463は管ヒータ79の内側で回転アンテナ48、49と対向する場所を指示する構成としている。管ヒータ79の内側で回転アンテナ48、49と対向する場所は管ヒータ79がほとんど邪魔にならずにマイクロ波が到達できるので、マイクロ波が到達する場所を食品を置くべき場所として指示することで、使用者の意識を喚起でき、確実にマイクロ波を当てることができる領域に食品を置いてもらえるので、狙い通りの加熱分布を実現することができる。
また、本実施の形態により、指示手段として、載置台46上に施された凹部または凸部からなる段部463で場所を指示する構成としたので、使用者が段部463に触れることで容易に置くべき場所を認識することができる。
なお、本実施の形態の段部463は、図20(b)のように平らな板を部分的に押し出
したような形状のため上から見ると凹部でありかつ下から見ると凸部となっているが、上下逆でも良いし、そのほかにも、平らな板に溝を掘ったようなもの(上から見ると凹部で下から見るとフラット)とか、平らな板に出っ張りをつけたようなもの(上から見ると凸部で下から見るとフラット)とかも考えられる。また、段部が一周つながっていなくても、何ヶ所か飛び飛びの凹部または凸部で配置しても良いし、もちろん凹部と凸部を同一面上に配置することも考えられる。
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
特に、アンテナについて、複数のアンテナが異なる構成でも良いし、パッチアンテナ・回転導波管・スロットアンテナだけでなくほかのアンテナで構成しても良い。また指示手段を複数組み合わせることなども容易に考えられる。
また、指示手段のその他の方法として、載置台にシールのような別部品を貼り付ける構成でも良い。もちろん、載置台上に直接指示するのでなく、使用者が食品を置いたあとの状態をCCDカメラで撮影して画面表示し、画面上で指示するなどの間接的な指示の方法でも良い。
また、アンテナ及び発熱体は加熱室の底部に設けたが上部や側面等であっても良く、この場合は当然のことながら発熱体とアンテナの相対的位置関係は、発熱体がアンテナの加熱室側とは反対側に位置することになり、これも発熱体がアンテナよりも低い位置にあることを意味するものとする。
更に本各実施の形態で説明した各々の構成は他の実施の形態に適用しても良いものであり、これも本発明の一例と成るものであって保護を求める範囲に含まれる。例えば実施の形態3で説明した赤外線センサと制御手段による制御や原点検出構成を実施の形態1と実施の形態2に適用する、或は実施の形態1または実施の形態2に示す指示手段を実施の形態2に適用することなどである。