第1の発明は、マイクロ波発生手段と、前記マイクロ波発生手段からマイクロ波を伝送する導波管と、前記マイクロ波で加熱する被加熱物を収納する加熱室と、前記導波管から前記加熱室に前記マイクロ波を放射するための回転アンテナと、前記回転アンテナを回転駆動する駆動手段と、前記マイクロ波発生手段および前記駆動手段を制御する制御手段を有し、前記制御手段は前記マイクロ波発生手段を断続制御する断続制御部と、前記駆動手段を制御するアンテナ制御部を有し、前記断続制御部によりマイクロ波停止中は前記アンテナ制御部による前記駆動手段の制御を中断する構成としたものであり、この構成により、断続制御部でマイクロ波発生手段を断続制御し、マイクロ波を断続で停止中にはアンテナ制御部による駆動手段の制御を中断するので、マイクロ波を断続して加熱しても断続制御と回転アンテナ制御はそれぞれ独立して制御できるようになり、適切な断続加熱が可能となり通常は加熱室内全体の均一加熱を実現しつつ、目的に応じて局所集中加熱をも実現できる。
第2の発明は、前記アンテナ制御部は、前記回転アンテナを所定時間停止させて局所を加熱する局所加熱モードを有し、前記断続制御部によりマイクロ波停止中は前記回転アンテナの停止時間のカウントを停止する構成としているので、放射アンテナを停止させてい
るときにマイクロ波を断続OFFさせていてもその時間はカウントせず、マイクロ波ON中で回転アンテナを所定時間停止することができる。
第3の発明は、前記アンテナ制御部は、前記回転アンテナを回転させることで加熱箇所を分散させる分散加熱モードを有し、前記断続制御部によりマイクロ波停止中は前記回転アンテナの回転を停止する構成としているので、断続周期と放射アンテナの回転周期が合っても、常に回転アンテナの同じ位置でマイクロ波が放射されることにはならず、マイクロ波ON中、偏りなくマイクロ波を分散させることができる。
第4の発明は、前記加熱室内の温度分布を検出する温度分布検出手段を更に有し、前記局所加熱モードは前記回転アンテナの放射指向性の強い部位を前記温度分布検出手段の検出結果に基づき決定した向きに制御して局所を加熱する構成としたものであり、温度分布検出手段が検出した温度分布に基づき、局所加熱の必要な箇所に回転アンテナの放射指向性の強い部位を向けて局所加熱するので、加熱すべき箇所を適切に加熱することができる。
第5の発明は、前記回転アンテナを複数有する構成としたものであり、この構成により局所加熱をよりきめ細かくすることが可能となり、加熱室内の任意の箇所を局所加熱できる。
第6の発明は、前記断続制御部は、前記温度分布検出手段が検出する初期温度により前記マイクロ波発生手段の断続と連続の切り替えまたは断続時間を切り替える構成としているので、常温品に比べてマイクロ波を吸収しにくい冷凍品が含まれているかどうかで断続と連続の切り替えまたは断続時間を切り替えることができる。
以下本発明の実施の形態を、図面とともに説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1から図3は本発明に係る代表的なマイクロ波加熱装置である電子レンジ31の構成図で、図1は正面から見た断面図、図2は図1のA−A’断面図、図3は図1のB−B’断面図である。
図1に示すように、電子レンジ31は、代表的なマイクロ波発生手段であるマグネトロン32から放射されたマイクロ波を伝送する導波管33と、導波管33の上部に接続され幅方向寸法(約410mm)が奥行き方向寸法(約315mm)より大きい形状の加熱室34と、代表的な被加熱物である食品(図示せず)を載置するため加熱室34内に固定され、セラミックやガラスなどの低損失誘電材料からなるためにマイクロ波が容易に透過できる性質の載置台35と、加熱室34内の載置台35より下方に形成されるアンテナ空間37と、導波管33内のマイクロ波を加熱室34内に放射するため、導波管33からアンテナ空間37にわたり、加熱室34の幅方向に対して対称位置に取り付けられた二つの回転アンテナ38、39と、回転アンテナ38、39を回転駆動できる代表的な駆動手段としてのモータ40、41と、モータ40、41を制御して回転アンテナ38、39の向きを制御する制御手段411と、各回転アンテナ38、39の回転の原点を検出する原点検出機構を構成するフォトインタラプタ36と、加熱室34内の温度分布を検出する温度分布検出手段である赤外線センサ10とを有する。
また、電子レンジ31は、図2に示すようにドア64を備えている。そして、設定手段63がドア64の下部に配置されている。設定手段63は、使用者が、食品や調理内容に応じて様々な調理メニューを選択できるものである。この選択結果に基づき、制御手段4
11はマグネトロン32やモータ40、41を制御することができる。
回転アンテナ38、39は、放射指向性を有する構成である。本実施の形態1の電子レンジ31は、回転アンテナ38、39のうちの少なくとも一方の放射指向性の強い部位を所定の向きに制御して特定の食品を集中加熱する構成としている。具体的にどのように制御しているかについては後述する。
また、回転アンテナ38、39は、導波管33と加熱室底面42との境界面に設けられた直径約30mmで略円形の結合孔43、44を貫通する直径約18mmで略円筒状の導電性材料から成る結合部45、46と、結合部45、46の上端にかしめや溶接などで電気的に接続されて一体化され、概ね垂直方向よりも水平方向に広い面積を有する導電性材料から成る放射部47、48とを備える。
また、回転アンテナ38,39は、結合部43、44の中心が回転駆動の中心となるようにモータ40、41のシャフト49、50に嵌合された構成としている。放射部47、48は回転の方向に対して形状が一定ではないために放射指向性がある構成としている。
回転アンテナ38、39の回転の中心は加熱室34内の中心から略等距離に配置する。この構成により、アンテナが一つの構成では通常は加熱しにくい加熱室内の中央付近を、回転アンテナ38、39の放射指向性の強い部分を中央付近に向けることにより加熱可能とするものである。
導波管33は、図3のように上から見てT字型を成し、左右対称な形状であるため、マグネトロン32から結合部45、46までの距離が等しく、かつ結合部45、46は加熱室34の幅方向に対しても対称位置に取り付けられているので、マグネトロン32から放射されるマイクロ波は導波管33、回転アンテナ38、39を介して加熱室34内にほぼ均等に分配される。
放射部47、48は同一の形状で、放射部上面51、52が略四辺形にRを有する形状で、そのうち対向する2辺には加熱室底面42側に曲げられた放射部曲げ部53、54を有し、その2辺の外側へのマイクロ波の放射を制限する構成である。加熱室底面42と放射部上面51、52までの距離は約10mm程度とし、放射部曲げ部53、54は、それよりも約5mm程度低い位置に引き下げられている。
そして,残る2辺は結合部45、46から端部までの水平方向の長さが異なり、結合部の中心からの長さが75mm程度の端部55、56、結合部の中心からの長さが55mm程度の端部57、58を構成している。また端部の幅方向の寸法はいずれも80mm以上としている。この構成において回転アンテナ38、39は、結合部45、46から端部57、58の方向への放射指向性を強くすることができる。
この構成において一般的な食品を均一に加熱する場合は、従来の電子レンジと同様、特に置き場所にこだわる必要はなく、回転アンテナ38、39も従来同様に一定回転させてよい。一方、集中加熱する場合は、加熱室34内の中央付近を加熱する場合、制御手段411は、図4に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58を、加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の略中央という所定の向きに向けるように制御する。
回転アンテナ38、39の端部57、58が加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の略中央を向くとき、端部57、58の方向への放射指向性が強いので、特に端部57、58の方向からマイクロ波が放射されその方向に位置する食品を集中的に加熱することができる。
また、加熱室34内の左側付近を加熱する場合、制御手段411は、図5に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58を、左向き(加熱室34をドア64側から見て左側)に向けるように制御する。
回転アンテナ38、39の端部57、58が、両方とも、加熱室34をドア64側から見て左側を向くとき、各アンテナは端部57、58の方向への放射指向性が強いので、特に端部57、58の方向からマイクロ波が放射されその方向に位置する食品を集中的に加熱することができる。
同様に、加熱室34内の右側付近を加熱する場合、制御手段411は、図6に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58を、右向き(加熱室34をドア64側から見て右側)に向けるように制御する。
回転アンテナ38、39の端部57、58が両方とも、加熱室34をドア64側から見て右側を向くとき、各アンテナは端部57、58の方向への放射指向性が強いので、特に端部57、58の方向からマイクロ波が放射されその方向に位置する食品を集中的に加熱することができる。
また、加熱室34内の前方中央付近を加熱する場合、制御手段411は、図7に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58を、加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の前方(加熱室34内の中央前方付近)に向けるように制御する。
図7に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58が、加熱室34内の中央前方付近を向くとき、各アンテナは端部57、58の方向への放射指向性が強いので、特に端部57、58の方向からマイクロ波が放射されその方向に位置する食品を集中的に加熱することができる。
また、加熱室34内の後方中央付近を加熱する場合、制御手段411は、図8に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58を、加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の後方(加熱室34内の中央後方付近)に向けるように制御する。
図8に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58が、加熱室34内の中央後方付近を向くとき、各アンテナは端部57、58の方向への放射指向性が強いので、特に端部57、58の方向からマイクロ波が放射されその方向に位置する食品を集中的に加熱することができる。
以上のように、本実施の形態1の電子レンジ31は、局所的に加熱したい場所に応じて回転アンテナの向きを制御するものであり。回転アンテナ38、39を所定の向きに向けるためには、モータ40、41としてステッピングモータを用いるとか、あるいは一定回転のモータであっても基準位置を検出して通電時間を制御するなどの手段が考えられる。
本実施の形態1の電子レンジ31では、モータ40、41としてステッピングモータを用いており、各モータのシャフト40、41にそれぞれ原点検出機構を設けている。図9は図1のD−D’断面図であり、この原点検出機構は、図9に示すように、シャフトを中心軸とする円板36aと、フォトインタラプタ36とにより構成される。円板36aには、矩形状のスリット36bが設けられている。
円板36aは、回転アンテナ38、39を回転させるモータのシャフト49、50の軸にそれぞれ共通に取り付けられていて、発光素子と受光素子とを備えたフォトインタラプ
タ36の光路を遮るように回転するものである。
この構成により、スリット36bがフォトインタラプタ36の光路を通過するときは、前記光路を遮るものが無いので、スリットの通過時点を検出することができる。従って、スリット36bの位置を回転アンテナ38、39の原点と設定しておくことで、各モータに取り付けられたフォトインタラプタ36により回転アンテナの原点を検出することができるものである。
また、制御手段411は、原点検出機構で検出できる原点を基準として、回転アンテナ38、39の指向性の強い部分を局所加熱箇所に集中させるときの回転アンテナ38、39の角度(停止位置)を予め記憶しているアンテナ角度記憶部を有している。回転アンテナ38、39の動作を制御して局所加熱を実行する際には、アンテナ角度記憶部の情報が参照される。
なお、ここまで、回転アンテナが二つの場合について説明してきたが、回転アンテナの数はこれに限られず二個以上の複数個でも良く、例えば、図10に示すように、三つの回転アンテナを有する構成としても良い。図10に示す状態では、各回転アンテナの端部が、加熱室内の中央付近を向いており、その中央付近に位置する食品を集中的に加熱することができる。
次に、図11を参照して、本実施の形態1の電子レンジ31が備える温度検出手段について説明する。この温度検出手段は、基板19上に一列に並んで設けられた複数の赤外線検出素子13と、基板19全体を収納するケース18と、ケース18を赤外線検出素子13が並んでいる方向と垂直に交わる方向に移動させるステッピングモータ11と、を備えるものである。
基板19上には、赤外線検出素子13を封入する金属製のカン15と、赤外線検出素子の動作を処理する電子回路20とが設けられている。また、カン15には赤外線が通過するレンズ14が設けられている。また、ケース18には、赤外線を通過させる赤外線通過孔16と、電子回路20からのリード線を通過させる孔17とが設けられている。
この構成により、ステッピングモータ11が回転運動することで、ケース18を、赤外線検出素子13が一列に並んでいる方向とは垂直方向に移動させることができる。
図12は、図1中のC−C’断面における赤外線温度検出スポットを説明する図である。図に示すように、本実施の形態1の電子レンジ31は、温度検出手段のステッピングモータ11が往復回転動作することにより、加熱室34内のほぼ全ての領域の温度分布を検出することができるものである。
具体的には、例えば、まず図12中のA1〜A4の領域の温度分布を、温度検出手段が有する一列に並んだ温度検出素子13(例えば、赤外線センサ)が同時に検出する。次に、ステッピングモータ11が回転動作しケース18が移動するとき、温度検出素子13がB1〜B4の領域の温度分布を検出する。さらに、ステッピングモータ11が回転動作してケース18が移動するとき、温度検出素子13がC1〜C4の領域の温度分布を検出し、同様に、D1〜D4の領域の温度分布が検出される。
また、上述の動作に続けて、ステッピングモータ11が逆回転することで、D1〜D4の領域側から、C1〜C4、B1〜B4、A1〜A4の順に、温度分布を検出する。温度分布検出手段は、以上の動作を繰り返すことで、加熱室34内の全体の温度分布を検出することができる。
次に、図13を参照して、制御手段411の概略構成を説明する。制御手段411は、加熱室34内に載置された被加熱物が食品であるか否かを判定する食品判定部101と、マグネトロン32を制御するマグネトロン制御部102と、回転アンテナ38、39の動作を制御するアンテナ制御部103とを有する構成である。
食品判定部101は、加熱開始初期の温度分布を記憶する初期温度分布記憶部104を有する。食品判定部101は、検出した温度分布と初期温度分布記憶部104で記憶している初期温度分布との差を算出し、その差に基づき食品かどうかを判定するものである。これは温度を検出した領域が、被加熱物を載せる載置台であるのか又は加熱対象である食品であるのかを判定するのであるが、載置台はマイクロ波を透過してほとんど温度上昇しないが、食品はマイクロ波を吸収して温度上昇しやすい、その特性の違いにより判別するものである。
マグネトロン制御部102は、加熱終了判定部105と断続制御部106と冷凍判定部107を有する。加熱終了判定部105は、例えば、被加熱物の温度分布のうち最高温度が予め設定された設定温度を超えるときに加熱処理を終了すると判定する判定条件や、食品と判定した箇所の平均温度が設定温度を越えるときに加熱処理を終了する判定条件や、また、被加熱物の最高温度が所定温度に到達するのに要する時間を測定し、その要した時間の一定の割合(例えば50%)を追加加熱時間として加熱処理し、その後追加加熱時間が終了したときに加熱処理を終了したり、またはそれらの組み合わせの構成等により、加熱処理の終了を判定するものであり、それは加熱メニューによって加熱終了の判定方法が異なるものであるが、加熱終了と判定すればマグネトロン32を停止する。
また断続制御部106は加熱中でもマグネトロン32をON/OFFすることがあり、その制御を行うものである。マグネトロン32を断続するのかしないのか、またON時間やOFF時間は加熱メニューによって異なるものであり、その制御を行う。特に常温の食品を加熱するような場合には断続を行うことはなく、冷凍食品を加熱する場合には、加熱の途中で断続を行うものである。そしてマグネトロンを断続OFFしている間は、アンテナ制御部103にすべての制御を中断させる。
冷凍判定部107は加熱室34内で加熱する食品が冷凍食品か常温食品かを判定するものであり、温度分布検出手段10で検出した加熱初期の温度分布により、その最低温度が所定温度(例えば0℃)以下であれば冷凍食品を加熱されていると判定する。冷凍と判定すると断続制御部106は加熱途中でマグネトロン32を断続する。また加熱終了判定部105も常温食品の場合と冷凍食品の場合では、加熱終了の判定方法を切り替えるものである。
アンテナ制御部103は、分散加熱モード制御部108と、局所加熱モード制御部109と、いずれのモード制御部を採用してアンテナを制御するかを判定するモード判定部110と、モード判定部の判定によりモードを切替える切替部111を有する構成である。
分散加熱モード制御部108は、二つの回転アンテナ38、39を一定回転で回転させることにより、放射指向性の強い部位の位置を時々刻々変化させることで、マイクロ波を分散させるようにモータ40、41を制御するものである。ただし、断続制御部106によりマグネトロン32を断続OFFとしている間は、回転を停止させ次に断続ONになったときに続きで動き始める。
局所加熱モード制御部106は、二つの回転アンテナ38、39を所定角度に停止して、放射指向性の強い部位の位置を所定時間固定してマイクロ波を局所に集中させて加熱制
御を行う。図4〜図8で示したような向きで二つの回転アンテナ38、39を停止させると、特定の部分を局所加熱できるものであり、その回転アンテナの角度はアンテナ角度記憶部112に予め記憶されている。ただ長時間停止させ続けると加熱しすぎる危険もあるので、所定時間停止すれば1回転させるように動作する。ただし、断続制御部106によりマグネトロン32を断続OFFしている間は、停止している時間のカウントを中断する。そして次に断続ONになったら続きのカウントをする。即ち、マグネトロン32をONしている間のみで所定時間をカウントするのである。
また局所加熱モード制御部109は、低温部抽出部113を備えていて、低温部抽出部113は食品判定部101で食品と判定した箇所のうち、温度分布検出手段10による検出温度が低温の部分を抽出する。そして局所加熱モード制御部109は、その低温部分の場所を局所加熱するための二つのアンテナ38、39の角度をアンテナ角度記憶部112より抽出し、その角度で所定時間停止するように二つのモータ40、41を制御するものである。
モード判定部110は、分散加熱モード制御部108と局所加熱モード制御部109のいずれで二つのアンテナ38、39の回転を制御するのかを判定するものである。加熱開始当初は食品全体は同じような温度であるから、局所を加熱する必要はなく、マイクロ波を分散させるように分散加熱モード制御部105を選択するように切替部108を制御する。分散加熱モード制御部105でマイクロ波を分散させながら加熱していると、やがて食品の中で高温部分と低温部分の温度差が生じ始めることが多いので、モード判定部107が切替部108を作動させて局所加熱モード制御部106に切替え、低温部を局所加熱するようにして温度上昇させ、温度差を低減するように制御する。
その制御は、食品判定部101で食品と判定した箇所の温度の最高と最低の差が所定以上なければ分散加熱モード制御部108で制御し、所定以上になると局所加熱モード制御部109に切り替える。そして、温度差が所定以上になり局所加熱モード制御部108で低温部を局所加熱すると、温度差が小さくなり再び所定以下になれば分散加熱モード制御部105に戻して制御する。
次に、本実施の形態1の電子レンジ31の動作について図14〜図16のフローチャートを参照して説明する。加熱を開始すると、まず温度分布検出手段10により初期の温度分布、即ち各温度検出箇所の初期温度T0を検出する(S201)。そして被加熱物が冷凍であるか常温であるかの判定をする(S202)。冷凍判定は冷凍判定部107が行い、S201で検出した温度分布により、その最低温度が所定温度(例えば0℃)以下であれば冷凍食品と判定する。
次に温度分布検出手段10により温度分布、即ち各温度検出箇所の温度Tを検出する(S203)。そして食品ポイント判定を行う(S204)。食品ポイント判定は食品判定部101により判定するもので、S203で検出した温度TとS201で検出した初期温度T0との差を算出し、更に経過時間tで除算することで、単位時間当たりの温度上昇率を算出する。この算出値が予め設定した温度上昇率ΔTaより大きければ、その温度検出箇所は食品であると判定する。
次にS204で食品と判定した箇所の温度Tfの中から最高温度Tfmaxと最低温度Tfminを抽出し、その温度差(Tfmax−Tfmin)を算出して、それがあらかじめ定めた所定の温度差Tbより大きいかどうかを判定する(S205)。そして温度差が所定値より大きければ(S205−Yes)、局所加熱モード制御部109により二つのアンテナ38、39を制御し局所加熱を行う(S206)。温度差が所定値より大きくなければ(S205−No)、分散加熱モード制御部108により二つのアンテナ38、
39を制御して分散加熱を行う。
そして加熱終了判定部102により加熱終了するかどうかを判定する。この加熱終了判定については、S203で検出した温度分布Tの中から食品の最高温度Tfmaxが予め定めた設定温度Tfsを超えたかどうかを判定する(S208)。まだ超えていなければ(S208−No)、加熱を継続するためにS203に戻って処理を繰り返す。予め定めた設定温度Tfsを超えた場合には(S208−Yes)、S202で冷凍品と判定したかどうかにより分岐する(S209)。そしてS202での判定で冷凍ではないと判定していた場合には(S209−No)、加熱を終了する。そしてS202で冷凍であると判定していた場合には(S209−Yes)、所定時間の追加加熱を行う。そのために追加加熱時間をカウントする追加加熱タイマーに追加加熱時間を設定する(S210)。追加加熱時間については、加熱開始から食品の最高温度Tfmaxが設定温度Tfsを超えるまでに要した時間に所定の比率(例えば50%)を乗算した時間である。
加熱終了の判定として、初期に冷凍であったかどうかで分岐するのは、常温食品に比較して冷凍食品は食品全体の中での温度差が生じやすい。それは冷凍品はマイクロ波を吸収しにくいため、温度上昇しにくいが、冷凍品が解けると吸収しやすくなるので、解け始めたら解けているところにマイクロ波が集中しやすく急激に温度上昇して、温度差が生じやすいというものである。したがって、初期に冷凍であった場合には、食品の最高温度が設定温度を超えても、まだ十分温度上昇していない部位が残っているため、追加加熱をすることで、全体の温度を上昇させるようにする。
その追加加熱の制御の動作について、図15を用いて説明する。追加加熱は、食品内で温度差が生じているため、マグネトロン32を断続運転することで、マイクロ波の照射と高温部から低温部への熱伝導を組み合わせて制御することで、高温部をそれ以上あまり温度上昇させずに、低温部の温度を上昇させる。
追加加熱を始めると、まず断続制御部106によりマグネトロン制御部102がマグネトロン32にOFF出力する(S301)。そして断続ONや断続OFFの時間をカウントする断続タイマーに断続OFF時間(例えば10秒)を設定する(S302)。
次に温度分布検出手段10により温度分布、即ち各温度検出箇所の温度Tを検出する(S303)。次にマグネトロン出力が断続ON中か断続OFF中かで処理を分岐するためマグネトロンがONしているかどうかを判定する(S304)。マグネトロンをON出力しているのであれば(S304−Yes)、以下のように追加加熱に入る前と同様のアンテナ制御を行う。即ち、図14のS204で食品と判定した箇所の温度Tfの中から最高温度Tfmaxと最低温度Tfminを抽出し、その温度差(Tfmax−Tfmin)を算出して、それがあらかじめ定めた所定の温度差Tbより大きいかどうかを判定する(S305)。そして温度差が所定値より大きければ(S305−Yes)、局所加熱モード制御部109により二つのアンテナ38、39を制御し局所加熱を行う(S306)。温度差が所定値より大きくなければ(S305−No)、分散加熱モード制御部108により二つのアンテナ38、39を制御して分散加熱を行う。
一方、マグネトロン出力が断続OFF中の場合(S304−No)、アンテナ制御は行わないので、S305〜S307の処理は行わない。したがって、アンテナ38、39は停止し、また停止中の時間もカウントしない。
次に断続タイマーの時間をカウントする(S308)。そして設定した時間が経過したかどうかを判定する(S309)。経過していれば(S309−Yes)、マグネトロン出力を切り替えるために現在のマグネトロン出力がONなのかOFFなのかを判定する(
S310)。現在のマグネトロン出力がONであれば(S310−Yes)、マグネトロン32への出力をOFFに切り替える(S311)、そして断続タイマーに断続OFF時間(例えば10秒)を設定する(S312)。一方、現在のマグネトロン出力がOFFであった場合(S310−No)、マグネトロン32への出力をONに切り替える(S313)、そして断続タイマーに断続ON時間(例えば10秒)を設定する(314)。また、断続タイマーの設定した時間がまだ経過していなければ(S309−No)、マグネトロン32の出力は切り替えず、ON/OFFの状態を継続するため、S310〜S314の処理は行わない。このようにS308〜S314の処理を行うことで、所定の断続ON時間、断続OFF時間でマグネトロン出力をON/OFFに切り替えることができる。
次に追加加熱タイマーをカウントする(S315)。追加加熱タイマーは図14のS210で追加加熱時間を設定したものである。この追加加熱タイマーが経過したかどうかを判定する(S316)。経過していれば(S316−Yes)、加熱終了と判定し加熱を終了する。まだ経過してなければ(S316−No)、S303に戻り温度分布の検出から処理を繰り返すものである。
次に図14のS206、図15のS306で説明した局所過熱の制御の動作について図15のフローチャートを用いて説明する。ここで局所加熱は温度分布検出手段10が検出した温度に基づき、食品の低温部分にアンテナの指向性の強い部位を向けての所定時間(例えば10秒)停止と1回転とを繰り返して低温部分を局所加熱する。この処理は図14、図15に示すように、加熱中繰り返し行う処理である。またこの処理は、マグネトロン32が断続OFF中には行われない処理である。
まず局所でアンテナを停止している時間をカウントする停止タイマーの時間をカウントする(S401)。この停止時間は後述するS416で設定するものである。次に、停止タイマーに設定した時間が経過したかどうかを判定する(S402)。まだ経過していなければ(S402−No)、アンテナは局所加熱のために指向性の強い部位を目的の角度に向けて停止中であり、その場合には特に状態を変えることは必要ないので、そのまま処理を終了する。
停止タイマーに設定した時間が経過すると(S402−Yes)、次にアンテナが1回転したかどうかを判定する(S403)。アンテナがまだ1回転終わっていなければ(S403−No)、継続してアンテナに回転出力し(S410)処理を終了する。アンテナが1回転終わっていれば(S403−Yes)、食品の低温部分を局所加熱するように以下のようにアンテナの角度を制御する。
まず図14のS204で食品ポイントと判定した温度検出箇所のうち最も低い温度の箇所を抽出する(S404)。
その最低温度箇所が図12中のB2、B3、C2、C3のいずれかの領域であるか否かを判定する(S405)。最低温度箇所がB2、B3、C2、C3のいずれかの領域であった場合は(S405−Yes)、アンテナ制御部103は、回転アンテナ38、39が加熱室34内の中央を加熱する向き、すなわち図4に示した停止位置をアンテナ角度記憶部112から選び、そこに回転アンテナ38、39を停止させるように動作制御を実行する(S411)。
最低温度箇所がB2、B3、C2、C3のいずれの領域でもなかった場合は(S405−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がB1、C1のいずれかであるか否かを判定する(S406)。
最低温度箇所がB1、C1のいずれかの領域であった場合は(S406−Yes)、アンテナ制御部103は、回転アンテナ38、39が加熱室34内の左方向を加熱する向き、すなわち図5に示した停止位置をアンテナ角度記憶部112から選び、そこに回転アンテナ38、39を停止させるように動作制御を実行する(S412)。
最低温度箇所がB1、C1のいずれの領域でもなかった場合は(S406−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がB4、C4のいずれかであるか否かを判定する(S407)。
最低温度箇所がB4、C4のいずれかの領域であった場合は(S407−Yes)、アンテナ制御部103は、回転アンテナ38、39が加熱室34内の右方向を加熱する向き、すなわち図6に示した停止位置をアンテナ角度記憶部112から選び、そこに回転アンテナ38、39を停止させるように動作制御を実行する(S413)。
最低温度箇所がB4、C4のいずれの領域でもなかった場合は(S407−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がA2、A3のいずれかであるか否かを判定する(S408)。
最低温度箇所がA2、A3のいずれかの領域であった場合は(S408−Yes)、アンテナ制御部103は、回転アンテナ38、39が加熱室34内の前方向を加熱する向き、すなわち図7に示した停止位置をアンテナ角度記憶部112から選び、そこに回転アンテナ38、39を停止させるように動作制御を実行する(S414)。
最低温度箇所がA2、A3のいずれの領域でもなかった場合は(S408−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がD2、D3のいずれかであるか否かを判定する(S409)。
最低温度箇所がD2、D3のいずれかの領域であった場合は(S409−Yes)、アンテナ制御部103は、回転アンテナ38、39が加熱室34内の後方向を加熱する向き、すなわち図8に示した停止位置をアンテナ角度記憶部112から選び、そこに回転アンテナ38、39を停止させるように動作制御を実行する(S415)。
最低温度箇所がD2、D3のいずれの領域でもなかった場合は(S409−No)、アンテナを停止して局所加熱できる領域ではないので、回転アンテナ38、39には回転出力し(S410)、処理を終了する。
S411〜S415のいずれかの処理で回転アンテナ38、39を停止させる制御を行ったら、そこから停止タイマーに回転アンテナの停止時間(例えば10秒)を設定し(S416)、処理を終了する。
この図16の処理は、図14、図15に示すように食品の温度差があれば加熱終了するまで繰り返し行うことになるので、常に低温部分を加熱するように制御が働き、温度差を低減して全体が均一な温度分布となる。
そして、図15においてマグネトロン32が断続OFF中であれば、図16の処理は行われないので、回転アンテナ38、39が停止中であっても停止タイマーはカウントされない。また二つの回転アンテナが回転中であっても、回転出力がされないので回転は停止する。そして断続OFFから断続ONに切り替わると、図16の処理が行われるので、二つの回転アンテナ38、39が停止中であれば途中から停止タイマーのカウントを再開し、二つの回転アンテナ38、39が回転中に停止していたのであれば、そこから回転を再
開するものである。
以上のように、本実施の形態1の電子レンジ31は、断続制御部106でマグネトロン32を断続制御し、マイクロ波を断続で停止中にはアンテナ制御部103による回転アンテナ38、39の制御を中断するので、マイクロ波を断続して加熱しても断続制御と回転アンテナ制御はそれぞれ独立して制御できるようになり、適切な断続加熱が可能となる。
なお、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
例えば、図16において説明したアンテナ制御の動作については、食品の最低温度箇所を探索する順序はこれに限られず、結果として食品全体を探索するものであれば他の順序で実行しても良い。
またマイクロ波を断続する条件を被加熱物が冷凍品である場合で、検出した温度が背低温度を超えた場合として説明したが、これは本発明を限定するものでなく、加熱開始の最初から断続加熱してもよいし、常温品でも断続加熱してもよいし、また常温品と冷凍品で断続のON/OFF時間を別に設定してもよい。