第1の発明は、マイクロ波発生手段と、前記マイクロ波発生手段からマイクロ波を伝送する導波管と、前記マイクロ波で加熱する被加熱物を収納する加熱室と、前記加熱室を開閉する開閉手段と、前記開閉手段の開から閉または閉から開への変化を検出する開閉検出手段と、前記導波管から前記加熱室に前記マイクロ波を放射するための回転アンテナと、前記回転アンテナを回転駆動する駆動手段と、前記各回転アンテナが所定の原点角度にあることを検出する原点検出手段と、前記加熱室内の温度分布を検出する温度分布検出手段と、前記マイクロ波発生手段および前記駆動手段を制御する制御手段を有し、前記制御手段は、前記加熱室内の特定の領域に対して前記回転アンテナの放射指向性の強い部分を向けるときの前記回転アンテナの原点からの角度を記憶するアンテナ角度記憶部を有し、前記温度分布検出手段が検出した各検出領域の温度のうち低温部分に前記回転アンテナの放射指向性の強い部分を向けるよう構成されると共に、前記制御手段は、前記回転アンテナを、放射指向性の強い部位を前記温度分布検出手段の検出結果に基づき決定した向きに制御する電波制御モードと、前記原点検出手段から原点信号を入力するまで前記回転アンテナを回転する原点検出モードを有し、前記制御手段は前記開閉検出手段が開から閉または閉から開への変化を検出すると前記原点検出モードで前記回転アンテナの駆動を制御し、前記原点検出モードで回転アンテナを駆動中は前記マイクロ波発生手段を停止させ、前記回転アンテナを1回転させる駆動の出力をしても原点が検出できなかったときには前記駆動手段による駆動を停止して前記マイクロ波発生手段により加熱する構成としたものである。
この構成により、制御手段は加熱室の開閉時に原点検出モードで各回転アンテナの駆動を制御して原点の検出を行ない、この原点検出モードのときは、回転アンテナの向きがわからないのでマイクロ波による加熱を停止するから、不適切な箇所を加熱することがなく、また、加熱開始時にすぐに原点から駆動し始めることができるので加熱開始を待たされることなくすぐに加熱開始でき、電波制御モードのときには、温度分布検出手段の検出結果に基づいて回転アンテナの放射指向性の強い部位を加熱が必要な向きに向けて温度分布を制御でき、通常は加熱室内全体の均一加熱を実現しつつ、目的に応じて局所集中加熱をも実現し、そして回転アンテナを1回転させても原点検出できなかったときには、駆動手段により回転アンテナを駆動することを禁止するので、回転アンテナの駆動手段が故障しているような場合に、駆動出力を続ける危険を避けて、加熱するマイクロ波加熱装置を提供することができる。
第2の発明は、マイクロ波発生手段と、前記マイクロ波発生手段からマイクロ波を伝送する導波管と、前記マイクロ波で加熱する被加熱物を収納する加熱室と、前記加熱室を開閉する開閉手段と、前記開閉手段の開から閉または閉から開への変化を検出する開閉検出手段と、前記導波管から前記加熱室に前記マイクロ波を放射するための回転アンテナと、前記回転アンテナを回転駆動する駆動手段と、前記各回転アンテナが所定の原点角度にあることを検出する原点検出手段と、前記加熱室内の温度分布を検出する温度分布検出手段と、前記マイクロ波発生手段および前記駆動手段を制御する制御手段を有し、前記制御手段は、前記加熱室内の特定の領域に対して前記回転アンテナの放射指向性の強い部分を向けるときの前記回転アンテナの原点からの角度を記憶するアンテナ角度記憶部を有し、前記温度分布検出手段が検出した各検出領域の温度のうち低温部分に前記回転アンテナの放射指向性の強い部分を向けるよう構成されると共に、前記制御手段は、前記回転アンテナを、放射指向性の強い部位を前記温度分布検出手段の検出結果に基づき決定した向きに制御する電波制御モードと、前記原点検出手段から原点信号を入力するまで前記回転アンテナを回転する原点検出モードを有し、前記制御手段は前記開閉検出手段が開から閉または閉から開への変化を検出すると前記原点検出モードで前記回転アンテナの駆動を制御し、前記原点検出モードで回転アンテナを駆動中は前記マイクロ波発生手段を停止させ、前記原点検出モードにおいて前記回転アンテナを1回転させる駆動の出力をしても原点が検出できなかったときに前記マイクロ波発生手段による加熱を禁止するか、前記駆動手段による駆動を停止して前記マイクロ波発生手段により加熱するかを使用者が加熱メニューを選択するメニュー選択手段で選択されたメニューによって切り替える構成としたものである。
この構成により、制御手段は加熱室の開閉時に原点検出モードで各回転アンテナの駆動を制御して原点の検出を行ない、この原点検出モードのときは、回転アンテナの向きがわからないのでマイクロ波による加熱を停止するから、不適切な箇所を加熱することがなく、また、加熱開始時にすぐに原点から駆動し始めることができるので加熱開始を待たされることなくすぐに加熱開始でき、電波制御モードのときには、温度分布検出手段の検出結果に基づいて回転アンテナの放射指向性の強い部位を加熱が必要な向きに向けて温度分布を制御でき、通常は加熱室内全体の均一加熱を実現しつつ、目的に応じて局所集中加熱をも実現し、そして回転アンテナを1回転させても原点検出できなかったときに、メニュー選択手段により選択されたメニューによって、マイクロ波の発生を禁止するか、マイクロ波により加熱するかを切り替えるので、回転アンテナの角度により電波分布に大きな影響を与えないメニューは加熱するなど、最低限の機能は提供できる。
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定される物ではない。
(実施の形態1)
図1から図3は本発明に係る代表的なマイクロ波加熱装置である電子レンジ31の構成図で、図1は正面から見た断面図、図2は図1のA−A’断面図、図3は図1のB−B’断面図である。
図1に示すように、電子レンジ31は、代表的なマイクロ波発生手段であるマグネトロン32から放射されたマイクロ波を伝送する導波管33と、導波管33の上部に接続され幅方向寸法(約410mm)が奥行き方向寸法(約315mm)より大きい形状の加熱室34と、代表的な被加熱物である食品(図示せず)を載置するため加熱室34内に固定され、セラミックやガラスなどの低損失誘電材料からなるためにマイクロ波が容易に透過できる性質の載置台35と、加熱室34内の載置台35より下方に形成されるアンテナ空間37と、導波管33内のマイクロ波を加熱室34内に放射するため、導波管33からアン
テナ空間37にわたり、加熱室34の幅方向に対して対称位置に取り付けられた二つの回転アンテナ38、39と、回転アンテナ38、39を回転駆動できる代表的な駆動手段としてのモータ40、41と、モータ40、41を制御して回転アンテナ38、39の向きを制御する制御手段411と、各回転アンテナ38、39の回転の原点を検出する原点検出機構を構成するフォトインタラプタ36と、加熱室34内の温度分布を検出する温度分布検出手段である赤外線センサ10とを有する。
また、電子レンジ31は、図2に示すように加熱室34を開閉する開閉手段であるドア64、ドア64の開閉を検出する開閉検出手段であるラッチスイッチ65を備えている。そして、設定手段63がドア64の下部に配置されている。ラッチスイッチ65はドア64の開から閉または閉から開への変化を検出し、制御手段411にドア64の開閉に関する情報を送っている。設定手段63は、使用者が、食品や調理内容に応じて様々な調理メニューを選択できるものである。この選択結果に基づき、制御手段411はマグネトロン32やモータ40、41を制御することができる。
回転アンテナ38、39は、放射指向性を有する構成である。本実施の形態1の電子レンジ31は、回転アンテナ38、39のうちの少なくとも一方の放射指向性の強い部位を所定の向きに制御して特定の食品を集中加熱する構成としている。具体的にどのように制御しているかについては後述する。
また、回転アンテナ38、39は、導波管33と加熱室底面42との境界面に設けられた直径約30mmで略円形の結合孔43、44を貫通する直径約18mmで略円筒状の導電性材料から成る結合部45、46と、結合部45、46の上端にかしめや溶接などで電気的に接続されて一体化され、概ね垂直方向よりも水平方向に広い面積を有する導電性材料から成る放射部47、48とを備える。
また、回転アンテナ38,39は、結合部45、46の中心が回転駆動の中心となるようにモータ40、41のシャフト49、50に嵌合された構成としている。放射部47、48は回転の方向に対して形状が一定ではないために放射指向性がある構成としている。
回転アンテナ38、39の回転の中心は加熱室34内の中心から略等距離に配置する。この構成により、アンテナが一つの構成では通常は加熱しにくい加熱室内の中央付近を、回転アンテナ38、39の放射指向性の強い部分を中央付近に向けることにより加熱可能とするものである。
導波管33は、図3のように上から見てT字型を成し、左右対称な形状であるため、マグネトロン32から結合部45、46までの距離が等しく、かつ結合部45、46は加熱室34の幅方向に対しても対称位置に取り付けられているので、マグネトロン32から放射されるマイクロ波は導波管33、回転アンテナ38、39を介して加熱室34内にほぼ均等に分配される。
放射部47、48は同一の形状で、放射部上面51、52が略四辺形にRを有する形状で、そのうち対向する2辺には加熱室底面42側に曲げられた放射部曲げ部53、54を有し、その2辺の外側へのマイクロ波の放射を制限する構成である。加熱室底面42と放射部上面51、52までの距離は約10mm程度とし、放射部曲げ部53、54は、それよりも約5mm程度低い位置に引き下げられている。
そして,残る2辺は結合部45、46から端部までの水平方向の長さが異なり、結合部の中心からの長さが75mm程度の端部55、56、結合部の中心からの長さが55mm程度の端部57、58を構成している。また端部の幅方向の寸法はいずれも80mm以上
としている。この構成において回転アンテナ38、39は、結合部45、46から端部57、58の方向への放射指向性を強くすることができる。
この構成において一般的な食品を均一に加熱する場合は、従来の電子レンジと同様、特に置き場所にこだわる必要はなく、回転アンテナ38、39も従来同様に一定回転させてよい。一方、集中加熱する場合は、加熱室34内の中央付近を加熱する場合、制御手段411は、図4に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58を、加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の略中央という所定の向きに向けるように制御する。
回転アンテナ38、39の端部57、58が加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の略中央を向くとき、端部57、58の方向への放射指向性が強いので、特に端部57、58の方向からマイクロ波が放射されその方向に位置する食品を集中的に加熱することができる。
また、加熱室34内の左側付近を加熱する場合、制御手段411は、図5に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58を、左向き(加熱室34をドア64側から見て左側)に向けるように制御する。
回転アンテナ38、39の端部57、58が、両方とも、加熱室34をドア64側から見て左側を向くとき、各アンテナは端部57、58の方向への放射指向性が強いので、特に端部57、58の方向からマイクロ波が放射されその方向に位置する食品を集中的に加熱することができる。
同様に、加熱室34内の右側付近を加熱する場合、制御手段411は、図6に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58を、右向き(加熱室34をドア64側から見て右側)に向けるように制御する。
回転アンテナ38、39の端部57、58が両方とも、加熱室34をドア64側から見て右側を向くとき、各アンテナは端部57、58の方向への放射指向性が強いので、特に端部57、58の方向からマイクロ波が放射されその方向に位置する食品を集中的に加熱することができる。
また、加熱室34内の前方中央付近を加熱する場合、制御手段411は、図7に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58を、加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の前方(加熱室34内の中央前方付近)に向けるように制御する。
図7に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58が、加熱室34内の中央前方付近を向くとき、各アンテナは端部57、58の方向への放射指向性が強いので、特に端部57、58の方向からマイクロ波が放射されその方向に位置する食品を集中的に加熱することができる。
また、加熱室34内の後方中央付近を加熱する場合、制御手段411は、図8に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58を、加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の後方(加熱室34内の中央後方付近)に向けるように制御する。
図8に示すように、回転アンテナ38、39の端部57、58が、加熱室34内の中央後方付近を向くとき、各アンテナは端部57、58の方向への放射指向性が強いので、特に端部57、58の方向からマイクロ波が放射されその方向に位置する食品を集中的に加熱することができる。
以上のように、本実施の形態1の電子レンジ31は、局所的に加熱したい場所に応じて回転アンテナの向きを制御するものであり。回転アンテナ38、39を所定の向きに向けるためには、モータ40、41としてステッピングモータを用いるとか、あるいは一定回転のモータであっても基準位置を検出して通電時間を制御するなどの手段が考えられる。
本実施の形態1の電子レンジ31では、モータ40、41としてステッピングモータを用いており、各モータのシャフト40、41にそれぞれ原点検出機構を設けている。図9は図1のD−D’断面図であり、この原点検出機構は、図9に示すように、シャフトを中心軸とする円板36aと、フォトインタラプタ36とにより構成される。円板36aには、矩形状のスリット36bが設けられている。
円板36aは、回転アンテナ38、39を回転させるモータのシャフト49、50の軸にそれぞれ共通に取り付けられていて、発光素子と受光素子とを備えたフォトインタラプタ36の光路を遮るように回転するものである。
この構成により、スリット36bがフォトインタラプタ36の光路を通過するときは、前記光路を遮るものが無いので、スリットの通過時点を検出することができる。従って、スリット36bの位置を回転アンテナ38、39の原点と設定しておくことで、各モータに取り付けられたフォトインタラプタ36により回転アンテナの原点を検出することができるものである。
また、制御手段411は、原点検出機構で検出できる原点を基準として、回転アンテナ38、39の指向性の強い部分を局所加熱箇所に集中させるときの回転アンテナ38、39の角度(停止位置)を予め記憶しているアンテナ角度記憶部を有している。回転アンテナ38、39の動作を制御して局所加熱を実行する際には、アンテナ角度記憶部の情報が参照される。
なお、ここまで、回転アンテナが二つの場合について説明してきたが、回転アンテナの数はこれに限られず二個以上の複数個でも良く、例えば、図10に示すように、三つの回転アンテナを有する構成としても良い。図10に示す状態では、各回転アンテナの端部が、加熱室内の中央付近を向いており、その中央付近に位置する食品を集中的に加熱することができる。
次に、図11を参照して、本実施の形態1の電子レンジ31が備える温度検出手段について説明する。この温度検出手段は、基板19上に一列に並んで設けられた複数の赤外線検出素子13と、基板19全体を収納するケース18と、ケース18を赤外線検出素子13が並んでいる方向と垂直に交わる方向に移動させるステッピングモータ11と、を備えるものである。
基板19上には、赤外線検出素子13を封入する金属製のカン15と、赤外線検出素子の動作を処理する電子回路20とが設けられている。また、カン15には赤外線が通過するレンズ14が設けられている。また、ケース18には、赤外線を通過させる赤外線通過孔16と、電子回路20からのリード線を通過させる孔17とが設けられている。
この構成により、ステッピングモータ11が回転運動することで、ケース18を、赤外線検出素子13が一列に並んでいる方向とは垂直方向に移動させることができる。
図12は、図1中のC−C’断面における赤外線温度検出スポットを説明する図である。図に示すように、本実施の形態1の電子レンジ31は、温度検出手段のステッピングモータ11が往復回転動作することにより、加熱室34内のほぼ全ての領域の温度分布を検
出することができるものである。
具体的には、例えば、まず図12中のA1〜A4の領域の温度分布を、温度検出手段が有する一列に並んだ温度検出素子13(例えば、赤外線センサ)が同時に検出する。次に、ステッピングモータ11が回転動作しケース18が移動するとき、温度検出素子13がB1〜B4の領域の温度分布を検出する。さらに、ステッピングモータ11が回転動作してケース18が移動するとき、温度検出素子13がC1〜C4の領域の温度分布を検出し、同様に、D1〜D4の領域の温度分布が検出される。
また、上述の動作に続けて、ステッピングモータ11が逆回転することで、D1〜D4の領域側から、C1〜C4、B1〜B4、A1〜A4の順に、温度分布を検出する。温度分布検出手段は、以上の動作を繰り返すことで、加熱室34内の全体の温度分布を検出することができる。
次に、図13を参照して、制御手段411の概略構成を説明する。制御手段411は、電波制御モード411aと原点検出モード411bよりなる。そして電波制御モード411aは、回転アンテナ38、39の動作を制御するアンテナ制御部101と、加熱室34内に載置された被加熱物が食品であるか否かを判定する食品判定部102と、加熱処理のうち初期段階の終了を判定する加熱初期段階終了判定部103と、加熱処理全体の終了を判定する加熱終了判定部104とを有する構成である。
食品判定部102は、被加熱物の初期温度分布を記憶する初期温度分布記憶部108と、被加熱物の単位時間あたりの温度上昇率を算出する温度上昇率算出部109と、を有し、算出した温度上昇率が所定以上の場合に、被加熱物が食品であると判定するものである。これは、すなわち、温度を検出した領域が、被加熱物を載せる載置台であるのか又は加熱対象である食品であるのかを判定するものである。これは載置台はマイクロ波を透過してほとんど温度上昇しないが、食品はマイクロ波を吸収して温度上昇しやすい、その特性の違いにより判別するものである。
加熱初期段階終了判定部103は、例えば、加熱開始から所定時間が経過した場合に加熱初期段階が終了したと判定する判定条件や、被加熱物の最高温度が所定温度以上に到達した場合に加熱初期段階が終了したと判定する判定条件や、また、加熱開始から被加熱物の温度変化の最高値が所定以上である場合に加熱初期段階が終了したと判定する判定条件を用いて、加熱処理の初期段階が終了したことを判定するものである。
加熱終了判定部104は、例えば、被加熱物の温度分布のうち最高温度が予め設定された設定温度を超えるときに加熱処理を終了すると判定する判定条件や、食品と判定した箇所の平均温度が設定温度を越えるときに加熱処理を終了する判定条件や、また、被加熱物の最高温度が所定温度に到達するのに要する時間を測定し、その要した時間の一定の割合(例えば、50%)を追加加熱時間として加熱処理し、その後追加加熱時間が終了したときに加熱処理を終了する構成等により、加熱処理の終了を判定するものである。
アンテナ制御部101は、加熱室内を均一加熱させるべく回転アンテナ38、39の動作を制御する分散加熱モード制御部105と、被加熱物の低温部分を加熱すべく回転アンテナ38、39の動作を制御する局所加熱(スポット加熱)モード制御部106と、加熱室内に載置された被加熱物の低温部を検出する低温部抽出部107とを有する構成である。
分散加熱モード制御部105は、例えば、マイクロ波発振中に所定の位置で停止させることで局所的な加熱のできる二つの回転アンテナ38、39を、その停止位置を刻々と変
化させることで分散加熱を実現したり、回転アンテナ38、39を連続的に回転させることで分散加熱を実現したり、また、回転アンテナ38、39の停止位置をランダムに変えることで分散加熱を実現する構成である。
局所加熱モード制御部106は、低温部抽出部107より最低温度箇所の情報を得て、局所加熱すべく回転アンテナ38、39の向きを制御する構成である。例えば、最低温度箇所が、図12中のB2、B3、C2、C3のいずれかであれば、回転アンテナ38、39が中央を加熱する向き、すなわち図4に示した停止位置に回転アンテナ38、39を停止させる。
また、最低温度箇所が、図12中のB1、C1のいずれかであれば、回転アンテナ38,39が左方向を加熱する向き、すなわち図5に示した停止位置に回転アンテナ38、39を停止させる。また、最低温度箇所が、図12中のB4、C4のいずれかであれば、回転アンテナ38,39が右方向を加熱する向き、すなわち図6に示した停止位置に回転アンテナ38、39を停止させる。
また、最低温度箇所が、図12中のA2、A3のいずれかであれば、回転アンテナ38,39が前方を加熱する向き、すなわち図7に示した停止位置に回転アンテナ38、39を停止させる。また、最低温度箇所が、図12中のD2、D3のいずれかであれば、回転アンテナ38,39が後方を加熱する向き、すなわち図8に示した向きに回転アンテナ38、39を停止させる。
以上のように、電波制御モード411aは、温度検出手段が検出した最低温度箇所に応じて、回転アンテナ38、39の停止位置を制御するものであるが、このとき、回転アンテナが所定の位置に停止したまま加熱室内にマイクロ波を放射しつづけると、回転アンテナ自体が昇温し過ぎて融解する恐れがある。
この点を鑑みて、電波制御モード411aの局所加熱モード制御部106は、上述の局所加熱モード時に、回転アンテナを目標角度(停止位置)を中心として所定角度(例えば、±5度)程度往復揺動させるものである。これにより、局所的加熱効果に影響を与えることなく回転アンテナの劣化を防止することができる。また、マイクロ波放射中に回転アンテナが停止しつづけることで、回転アンテナの一部にマイクロ波が集中しすぎて、過剰加熱することを防止する。この往復揺動動作は、局所加熱開始時から行っても良いが、局所加熱開始時から所定時間経過後(例えば、30秒〜1分後)に開始する構成としてもよい。
この往復揺動動作を実行するために、電波制御モード411aは、回転アンテナ38、39が停止することを許容する上限時間を予め記憶する停止上限時間記憶部と、回転アンテナが停止している時間をカウントする停止時間計時部と、回転アンテナ38、39を往復揺動させる角度を記憶する往復角度記憶部と、を有している。
また、局所加熱開始時から所定時間経過後(例えば、30秒〜1分後)に回転アンテナを所定角度(例えば、5度)だけ回転させる構成としても良い。
一方、原点検出モード411bは、フォトインタラプタ36からの信号により原点を検出するモードであり、モータ40、41を回転させながらフォトインタラプタ36からの信号を受信して、受光の入力が確認できた角度を原点として記憶するものである。
原点検出モード中は、回転アンテナ38、39の角度を特定することができず、このままマイクロ波を発振すると不本意な加熱状態を起こし不良の原因となってしまうことがあ
る。そこで、制御手段411は、電波制御モードと原点検出モードを切り替え、原点検出モード中で回転アンテナを駆動している間は、マグネトロンの動作を停止する制御を行う。
原点検出は、電源投入から1回行えばよいようなものであるが、モータのすべりなどで少しずつ角度がずれていく場合があるので、制御手段411は、ドア64の開閉時にラッチスイッチ65(図2参照)が開から閉または閉から開への変化を検知する信号を受けて、原点検出モード411bを実行し、各回転アンテナの原点を検出する。これにより加熱前にドア64を開けて食品を加熱室34内に入れる際に常に回転アンテナの原点を合わせることができるので、加熱開始時にすぐに原点から駆動し始めることができ、加熱開始前に原点検出のための待機時間が発生するのを防ぐことできる。また、加熱終了後にドア64を開けて食品を取り出す際に回転アンテナの原点を合わせ、原点を合わせた状態で非加熱時に待機し、次の加熱に備えるようにしても同様の効果が得られる。また、制御手段411は、原点検出モードで原点が見つからなかった場合には、エラーと判定してそれ以降の加熱処理の実行を禁止するメニューと、回転アンテナ38,39を停止させた状態で加熱処理を実行するメニューと、を有するものである。この構成により、調理メニューに応じて、例えば、加熱室34内の温度分布の偏っていても構わないメニュー(単に加熱処理できればムラがあっても良い場合等)のときは、回転アンテナ38、39の動作を停止したまま加熱処理を実行するので、ユーザに対して最低限の機能を提供することができる。
なお、原点が検出できない場合は、回転アンテナ38、39を駆動するモータ40、41が故障している場合もあり、その状態のまま回転アンテナ38、39を動作させることはよくないので、回転アンテナ38、39の動作は停止させるものである。
一方、加熱室34内の温度分布が偏っていたのではユーザが所望する出来栄えの加熱処理を実現することができないメニューのときは、加熱処理の実行自体を禁止するものである。
また、制御手段411は、加熱開始の初期段階においては分散加熱モードで加熱室34全体を均一加熱し、加熱室34内の温度分布に差が生じはじめたときに局所加熱モードに移行するものとしても良い。加熱開始の初期段階では加熱室34内の温度分布に差がないので、分散加熱モードが効率よく加熱室34全体を昇温させることができる。
また、制御手段411は、加熱開始の初期段階においては、まず、加熱室34内の中央付近を局所的に加熱するものとしても良い。通常、加熱室内の温度分布に差がない状態から加熱処理を開始すると、加熱室の中央付近が最も昇温しにくい。従って、まず、加熱室34内の中央付近を局所加熱し、その後、分散加熱を行って加熱室全体の均一加熱を行うことで、効率よく加熱室全体を均一加熱することができる。
また、各回転アンテナ38,39を駆動するモータ40、41は、例えば、ステッピングモータとしても良い。このとき、制御手段411は、各回転アンテナ38、39に取り付けられた各ステッピングモータに対してパルスを入力するタイミングを、各ステッピングモータ毎に時間差を設けて同時にならないように制御すると良い。同時にパルスを入力すると、そのタイミングで必要な電流が増大し、電子レンジ31に大電流に対応可能な回路を設置しなければならなくなるが、時間差を設けてパルスを入力することで回路が大型化するのを防止できる。
次に、本実施の形態1の電子レンジ31の動作について説明する。まず、加熱初期段階時の動作について、図14を参照して説明する。
まず、電源の投入(S300)後、ドア64が開閉されラッチスイッチ65がドア64の開から閉または閉から開への変化を検出すると(S301)、原点検出モード411bにて原点検出を行う。原点検出が終了すればモータを原点の状態にして待機する。このとき例えばモータを1回点以上回しても原点が検出できなければ原点検出でエラーが発生したものとして記憶しておく(S302)。次に使用者がボタンを押すなど加熱開始の指示をしたかどうかを判定する(S303)。加熱開始の指示がなければ、加熱開始の指示があるまでS303の判定を繰り返す。加熱開始の指示があればS304に進む。
S304ではS302で原点検出したときにエラーが発生したかどうかを判定し、エラーがなければマグネトロン32がマイクロ波を発生させ、そのマイクロ波が導波菅を介して加熱室34内に伝送するなど、加熱を開始する。このとき、温度分布検出手段は、加熱初期時点での加熱室34内の温度分布を検出し、電波制御モード411aは温度分布の検出結果を記憶する(S305)。
次に、電波制御モード411aは、分散加熱を実現するために、例えば、回転アンテナ38、39を一定速度で回転させる(S306)。一定時間経過後、温度分布検出手段は、再び加熱室34内の温度分布を検出する(S307)。
そして、電波制御モード411aの加熱初期段階終了判定部103は、S305の段階で検出した加熱初期段階での加熱室内の温度分布と、S307の段階で検出した一定時間経過後の加熱室内の温度分布とを参照して、一定の加熱初期段階終了の判定条件が見たされているか否かを判断する。判定条件が具備されていなかった場合は(S308−No)、続けて加熱室34内を分散加熱し、所定時間経過後に再び加熱室34内の温度分布を検出する。
判定条件が具備されていた場合は(S308−Yes)、温度検出手段が温度を検出した各領域が、食品が載置された領域であるか否かを判定するステップに移行する。このステップでは、例えば、温度を検出した各領域の単位時間あたりの温度上昇率を参照し、所定値以上である場合には、その領域に食品が載置されていると判断する。また、温度を検出した各領域について初期温度を参照し、その初期温度がマイナスだった場合(例えば、冷凍食品等が想定される)に、その領域は食品が載置されている領域と判断しても良い。このように、S309のステップにおいては、加熱室34内の全領域のうち、食品が載置されている領域と、食品が載置されていないその他の領域とを判別し、電波制御モード411aに記憶しておく(S309)。
S304の判定で原点検出エラーが記憶されていた場合には、S351に進む。そこで使用者が加熱しようとしている加熱メニューが温度分布をあまり気にしなくても構わない例えば飲物の加熱などのような加熱許可メニューかどうかを判定する(S351)。そして加熱許可メニューであれば、温度分布を検出しながら(S352)、加熱終了かどうかを判定する(S353)。加熱終了の判定は最高温度が所定温度に達したかどうかなどである。終了と判定すれば、S301に戻る。
S351の判定で、使用者が選択した加熱メニューが温度分布を非常に気にしなければならない例えば冷凍品の解凍などのような場合には、使用者にエラーを報知して(S354)、加熱動作を停止しS301に戻る。
加熱初期段階が終了すると、電子レンジ31は、続けて、加熱フィードバック段階へ移行する。図15を参照して、加熱フィードバック段階の動作について説明する。電子レンジ31の温度分布検出手段は、加熱初期段階が終了した後、加熱室34内の全体の温度分布を検出する(S107)。そして、加熱室34内で食品が載置されていると判定されて
いる領域内での最低温度の領域を抽出、すなわち、食品箇所のうち最低温度箇所を抽出する(S108)。
その最低温度箇所が図13中のB2、B3、C2、C3のいずれかの領域であるか否かを判定する(S109)。最低温度箇所がB2、B3、C2、C3のいずれかの領域であった場合は(S109−Yes)、電波制御モード411aは、回転アンテナ38、39が加熱3室34内の中央を加熱する向き、すなわち図4に示した停止位置に回転アンテナ38、39を停止させるように動作制御を実行する(S117)。
最低温度箇所がB2、B3、C2、C3のいずれの領域でもなかった場合は(S109−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がB1、C1のいずれかである否かを判定する(S110)。
最低温度箇所がB1、C1、のいずれかの領域であった場合は(S110−Yes)、電波制御モード411aは、回転アンテナ38、39が加熱室34内の左方向を加熱する向き、すなわち図5に示した停止位置に回転アンテナ38、39を停止させるように動作制御を実行する(S118)。
最低温度箇所がB1、C1のいずれの領域でもなかった場合は(S110−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がB4、C4のいずれかである否かを判定する(S111)。
最低温度箇所がB4、C4、のいずれかの領域であった場合は(S111−Yes)、電波制御モード411aは、回転アンテナ38、39が加熱室34内の右方向を加熱する向き、すなわち図6に示した停止位置に回転アンテナ38、39を停止させるように動作制御を実行する(S119)。
最低温度箇所がB4、C4のいずれの領域でもなかった場合は(S111−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がA2、A3のいずれかである否かを判定する(S112)。
最低温度箇所がA2、A3、のいずれかの領域であった場合は(S112−Yes)、電波制御モード411aは、回転アンテナ38、39が加熱室34内の前方向を加熱する向き、すなわち図7に示した停止位置に回転アンテナ38、39を停止させるように動作制御を実行する(S120)。
最低温度箇所がA2、A3のいずれの領域でもなかった場合は(S112−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がD2、D3のいずれかであるか否かを判定する(S113)。
最低温度箇所がD2、D3、のいずれかの領域であった場合は(S113−Yes)、電波制御モード411aは、回転アンテナ38、39が加熱室34内の後方向を加熱する向き、すなわち図8に示した停止位置に回転アンテナ38、39を停止させるように動作制御を実行する(S121)。
最低温度箇所がD2、D3のいずれの領域でもなかった場合は(S113−No)、続けて、電波制御モード411aは、回転アンテナ38、39を一定回転させて加熱室34内を均一加熱する分散加熱モードに移行する(S114)。
電波制御モード411aは、S114、S117〜S121のいずれかステップを実行
した後に、終了判定を行う(S115)。例えば、食品の温度分布のうち最高温度が予め設定された設定温度を超えるときに加熱処理を終了すると判定する加熱処理終了判定条件や、食品と判定した箇所の平均温度が設定温度を越えるときに加熱処理を終了すると判定する加熱処理終了判定条件を満たしているか否かを判定する。
加熱処理終了判定条件を満たしていた場合は(S115−Yes)、図14に示すS301に進み、ドア64の開閉が検知されると(S301)、原点検出モード411bにより原点検出処理を行い、原点検出状態で加熱開始指示を待機する。
加熱処理終了判定条件を満たしていない場合は(S115−No)、S107のステップの段階に移行し、再びS107以降のステップを繰り返す。
以上のように、本実施の形態1の電子レンジ31は、二つの回転アンテナにより加熱室34内の特定の箇所を集中的に加熱することができるものであり、加熱処理中に被加熱物である食品の温度分布を検出し、その食品の最低温度箇所にスポットを当てて局所的に加熱することができるので、食品をムラなく加熱処理することができる。
また、局所的加熱と分散加熱とを食品の温度分布に応じて切り換えることができ、すなわち必要な箇所にマイクロ波を集中させることができるので、効率よく短時間で食品を加熱することができる。
そして、回転アンテナの駆動の基準となる原点を検出する処理は、開閉検出手段がドアの開から閉または閉から開への変化を検出した際に実施しているので使用者が加熱指示をしたときには、原点で待機していて、待ち時間なくすぐに加熱開始できる。
また、本発明は上記実施の形態で説明したマイクロ波加熱装置の各手段の動作をマイクロコンピュータに実行させるプログラムとしても提供するものである。プログラムであるので、電気・情報機器、コンピュータ、サーバー等のハードリソースを協働させて本発明のマイクロ波加熱装置の一部あるいは全てを容易に実現することができる。また記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることでプログラムの配布が簡単にできる。
なお、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。例えば図15において説明した加熱フィードバック段階の動作制御については、食品の最低温度箇所を探索する順序はこれに限られず、結果として食品全体を探索するものであれば他の順序で実行しても良い。