本発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波発生手段と、前記マイクロ波発生手段からマイクロ波を伝送する導波管と、前記マイクロ波で加熱する被加熱物を収納する加熱室と、前記導波管から前記加熱室に前記マイクロ波を放射するための少なくとも2つの回転アンテナと、前記回転アンテナを回転駆動する駆動手段と、前記駆動手段を制御して前記回転アンテナの向きを制御する制御手段と、前記加熱室壁面上で前記回転アンテナの駆動領域に配置された分布変更手段とを有する構成としたマイクロ波加熱装置であって、前記分布変更手段は、前記加熱室壁面の一部を塑性加工することで構成すると共に、前記加熱室の外向きに突出する形状で、かつ、前記2つの回転アンテナ間の中央に配置し、前記導波管の一面を兼用した前記加熱室壁面に構成し、前記分布変更手段と整合素子を兼ねる構成としたものである。
この構成により、回転アンテナの向きを制御して加熱分布を制御するだけでなく、加熱室壁面上で回転アンテナの駆動領域に配置された分布変更手段を有することにより、加熱
室形状で決まる定在波分布や回転アンテナの指向性に影響を与えることができるので、狙い通りの加熱分布を実現することができる。
また、この構成により、極めて簡単に実現できるとともに、加熱室形状を一部変更することになるので容易に定在波分布に影響を与えて加熱分布を変更することができる。
また、この構成により、もともと加熱室を形成するために必要な加熱室壁面に、さらに分布変更手段と整合素子の二つの機能を併せ持たせることができ、別部品を増やさなくて済む。
また、この構成により、2つの回転アンテナ間の中央においては、分布変更手段によりアンテナと加熱室壁面の距離が遠くなり、マイクロ波が伝送される空間が広くなるので、アンテナからのマイクロ波が通りやすくなり、局部的な集中加熱能力を高めることができる。通常は、加熱室の中央に一つ(一皿、カップ一杯など)の食品を置かれる頻度が高く、加熱室中央を集中加熱したいという場合が多く、また2つの回転アンテナが加熱室底面に左右対称に配置されることが多いと考えられるので、2つの回転アンテナ間の中央の局部的な集中加熱能力を高めることが効果的である。
また、本発明の一態様として、上記のマイクロ波加熱装置において、分布変更手段は、略半球状でかつ回転アンテナの回転中心側を平らな形状に構成したものも含まれる。
この構成により、分布変更手段を加熱室壁面をしぼって形成する場合には半球状にするのは容易であるし、半球状であれば各方向に対してエッジができにくいのでエッジへの電界集中によるスパークを起こしにくいなどの効果がある。また分布変更手段は回転アンテナの回転中心側を平らにすることにより半球をカットしたような形状となり、平らな部分で回転アンテナの回転中心である結合部からの距離を長めに確保できることと、点ではなく面で対向させることができることにより、特に回転アンテナの回転中心である結合部と分布変更手段の間のスパークを起こしにくいなどの効果がある。
さらに、本発明の一態様として、上記のマイクロ波加熱装置において、制御手段は、回転アンテナが分布変更手段にかかる向きで停止させる構成としたものも含まれる。
この構成により、最も分布変更手段の効果を高めることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1、図2は、本発明に係る実施形態のマイクロ波加熱装置である電子レンジの概略構成を示す図であり、図1は上方から見た平断面図、図2は正面から見た正断面図である。
図1において、本実施形態の電子レンジは、代表的なマイクロ波発生手段であるマグネトロン1と、マグネトロン1から放射されるマイクロ波を伝播する導波管2と、導波管2の上部に接続された加熱室3と、加熱室3内に固定されて代表的な被加熱物である食品4を載置する載置台5と、載置台5より下方に形成されたアンテナ空間6と、加熱室3の中心から略等距離の底面に設けた2つの結合孔7、7と、アンテナ空間6内に配されて結合孔7、7を中心に回転可能な回転アンテナ8、8と、嵌合させた駆動軸を介して回転アンテナ8、8を駆動する駆動手段としてのモータ9、9と、モータ9、9の回転、停止を制御する制御手段10を備える構成である。
また、本実施形態の電子レンジは、設定手段11を備え、使用者が食品や調理内容に応じて調理メニューを選択することができる。そして、この選択結果に基づき、制御手段10はマグネトロン1を制御してマイクロ波の発生や停止を行うとともに、モータ9を制御して回転アンテナ8、8の回転や停止を制御する。これにより、載置台5に載置された食品4の加熱、調理を行うことができる。
回転アンテナ8は、略L字型をしたパッチアンテナであり、L字形に沿う長手方向を有する平板状の導電性材料から成る放射部81と、結合孔7を貫通して放射部81と電気的及び機械的に一体化された円筒状の導電性材料から成る結合部82から構成されている。
図3は、放射部81の具体的な形状を例示する平面図である。
図3において、放射部81の結合部82の中心からL字形に沿う長辺81aの長手方向の端部84までの長さは50mmである。一方、長辺の幅30mmの中心線である一点鎖線(以下、基準線という)に沿って結合部82の中心から35mmの位置で角度83.62°をなしてL字状に曲がり、そこから45mm行ったところの放射部81のL字形に沿う短辺81bの端部83の沿面が、結合部82を中心とする半径60mmからなる円弧の一部をなすように構成されている。
放射部81の平面視全体形状をL字型と把握した場合、長辺81aは、結合部82と結合した第1の部分として定義づけられ、一方、短辺81bは、当該第1の部分と交差した第2の部分として定義づけられる。尚、放射部の各部分(第1の部分、第2の部分)の長手方向の長さは、上述したように、放射部の幅方向の中心に位置した一点鎖線で示した基準線の長手方向の長さによって定義づけることができる。
この形状によると、結合部82を中心とする放射部81の回転直径は120mmとなり、これはマイクロ波の波長(一波長)に相当し、加熱室4の広さからアンテナが回転する際の直径がマイクロ波の一波長以下に制限される場合であっても、使用することが可能な寸法である。
すなわち、本実施形態において、放射部81は、第1の部分(長辺81a)と第2の部分(短辺81b)という互いに交差する二つの部分を有しているため、回転直径で制約された狭い空間でも、単なる回転直径または回転半径よりも、実質的に大きな長さ(基準線に沿った長さ)が確保されている。具体的には図3において、回転半径は60mmだが、半径に対応した実質的な放射部の長さは35+45mm=80mmである。従って狭い空間でも、指向性の強いマイクロ波を放射することが可能となると考えられる。
ただし放射部81はL字型のために、放射部全体としての指向性は長手方向からは少し曲げられて、実矢線85のような向きとなる。
次に分布変更手段12について説明する。特に図1の実矢線13、13の方向から見た断面図を図4に示す(ちなみに図2は図1の実矢線14、14の方向から見た断面図)。本実施の形態において、分布変更手段12は、加熱室壁面301上で図1の2つの回転アンテナのうち右側の回転アンテナ8の駆動領域15に配置されている。また分布変更手段12は、導波管2の一面を兼用した部分の加熱室壁面301の一部を塑性加工することで形成してある。この実施の形態では加熱室壁面301を、加熱室3の外向き(図4の下向き)すなわち導波管2の内向きに突出させるようにしぼることによって形成してある。これにより、分布変更手段12は、導波管2内では整合素子を兼ねる構成となっている。また、分布変更手段12は、略半球状でかつ回転アンテナの回転中心側を平らな形状16に構成している。
次に、分布変更手段12の効果について説明する。
まず、分布変更手段12を回転アンテナ8の駆動領域15に配置したので、分布変更手段12が有ることで加熱室3形状で決まる定在波分布や回転アンテナ8の指向性に影響を与えることができ、狙い通りに加熱分布を変更することができる。特にパッチアンテナのような回転アンテナ8から放射されるマイクロ波は、回転アンテナ8の放射部81と、放射部81が対向する加熱室壁面301との距離によって放射のしやすさや指向性などの特性が大きく変化する。たとえば図1、図4のように分布変更手段12を回転アンテナ8の駆動領域15に構成すると、図4(a)に示す瞬間位置の時には回転アンテナ8が分布変更手段12に対向する位置に無いので、分布変更手段12の影響が少ない。ところが、図4(b)のように回転アンテナ8が分布変更手段12に対向する位置にあると、放射部81の終端84と加熱室壁面301との距離が広くなる(実矢線17)ので、こちら側(分布変更手段12のある側)にマイクロ波が出やすくなり、その結果、放射指向性が変化すると考えられる。具体的には、放射部81と加熱室壁面301のフラットな部分との距離が約10mmで、分布変更手段12の深さが約12mmとすると、実矢線17の距離は計22mmとなり分布変更手段12が無い場合に比べて二倍以上の広さになる。
また、分布変更手段12を加熱室壁面301をしぼることで構成するので、極めて簡単に実現できるとともに、明らかに加熱室3形状を一部変更することになる(たとえば本実施の形態の場合は、加熱室が広くなる)ので容易に定在波分布に影響を与えて加熱分布を変更することができる。また、分布変更手段12を導波管2の一面を兼用した加熱室壁面301に構成し、導波管2内に突出させることで導波管2内の整合素子を兼ねる構成となっている。従来の整合素子は、導波管壁面の一部をしぼる構成として知られているが、加熱室壁面と兼用する加熱室壁面301ではなく、導波管壁面201側に構成するものが知られている。整合素子により、導波管2内のマイクロ波の伝送しやすさが変化し、マグネトロン1から加熱室側を見たインピーダンスを調節できるので、マグネトロン1側のインピーダンスとマグネトロン1から加熱室側を見たインピーダンスを一致させる(整合させる)ように構成することで、効率的にマイクロ波を伝送することができる。しかし従来のように導波管壁面201側に整合素子を構成すると加熱室3内の形状には変化が無いので加熱分布はそのままであり、加熱分布を変更するには別の工夫が必要となる。よって本実施の形態により、もともと加熱室3を形成するために必要な加熱室壁面301に、さらに分布変更手段と整合素子の二つの機能を併せ持たせることができ、別部品を増やさなくても実現可能となる。
また、分布変更手段12は、略半球状でかつ回転アンテナの回転中心側を平らな形状16に構成している。このように、分布変更手段12を加熱室壁面をしぼって形成する場合には半球状にするのは容易であるし、半球状であれば各方向に対してエッジができにくいのでエッジへの電界集中によるスパークを起こしにくいなどの効果がある。また回転アンテナの回転中心側を平らにすることにより半球をカットしたような形状となり、平らな部分で回転アンテナの回転中心である結合部からの距離を長めに確保できることと、点ではなく面で対向させることができることにより、特に回転アンテナの回転中心である結合部と分布変更手段の間のスパークを起こしにくいなどの効果がある。
図5は、回転アンテナの放射部の変形例を示す平面図であり、(a)は鎌状に形成した短辺を有することにより、短辺端部の沿面長さを大きくして、端部先端側から放射されるマイクロ波の指向性を強くしたものである。また、(b)はT字形に沿う短辺を形成することで、短辺端部の沿面長さを更に大きくし、端部先端側から放射されるマイクロ波の指向性を強くしたものである。(c)は短辺をピッケル状に形成することにより、短辺端部の沿面長さを大きくするとともに、短辺の幅を細身にしてマイクロ波の電界を集中させ、
放射指向性を高めようとするものである。
なお、本実施の形態によれば、回転アンテナを平らな板状のパッチアンテナで説明したが、これに限定されるものではなく、加熱室壁面との距離により加熱分布が変わりうるアンテナであれば、加熱室壁面上で回転アンテナの駆動領域に分布変更手段を構成することで同様の効果が得られる。
また、本実施の形態によれば、回転アンテナを二つの例で構成しているが、もちろんこれに限定されるものではなく、アンテナが一つでも良いし、3つ以上でも良い。
(実施の形態2)
図6、図7は本発明に係る代表的なマイクロ波加熱装置である電子レンジ21の構成図で、図6は上方から見た平断面図、図2は図1の実矢線22から見た正断面図である。
図6に示すように、電子レンジ21は、代表的なマイクロ波発生手段であるマグネトロン23から放射されたマイクロ波を伝送する導波管24と、導波管24の上部に接続され幅方向寸法(約410mm)が奥行き方向寸法(約315mm)より大きい形状の加熱室25と、代表的な被加熱物である食品(図示せず)を載置するため加熱室25内に固定され、セラミックやガラスなどの低損失誘電材料からなるためにマイクロ波が容易に透過できる性質の載置台26と、加熱室25内の載置台26より下方に形成されるアンテナ空間27と、導波管24内のマイクロ波を加熱室25内に放射するため、導波管24からアンテナ空間27にわたり、加熱室25の幅方向に対して対称位置に取り付けられた二つの回転アンテナ28、29と、回転アンテナ28、29を回転駆動できる代表的な駆動手段としてのモータ30、31と、モータ30、31を制御して回転アンテナ28、29の向きを制御する制御手段32と、各回転アンテナ28、29の回転の原点を検出する原点検出機構を構成するフォトインタラプタ33と、加熱室25内の温度分布を検出する温度分布検出手段である赤外線センサ34とを有する。
また、電子レンジ21は、ドア35を備えている。そして、設定手段(図示せず)がドア35の下部に配置されている。設定手段(図示せず)は、使用者が、食品や調理内容に応じて様々な調理メニューを選択できるものである。この選択結果に基づき、制御手段32はマグネトロン23やモータ30、31を制御することができる。
回転アンテナ28、29は、放射指向性を有する構成である。本実施の形態の電子レンジ21は、回転アンテナ28、29のうちの少なくとも一方の放射指向性の強い部位を所定の向きに制御して特定の食品を集中加熱する構成としている。具体的にどのように制御しているかについては後述する。
また、回転アンテナ28、29は、導波管24と加熱室壁面251との境界面に設けられた直径約30mmで略円形の結合孔36、37を貫通する直径約18mmで略円筒状の導電性材料から成る結合部38、39と、結合部38、39の上端にかしめや溶接などで電気的に接続されて一体化され、概ね垂直方向よりも水平方向に広い面積を有する導電性材料から成る放射部40、41とを備える。
また、回転アンテナ28、29は、結合部38、39の中心が回転駆動の中心となるようにモモータ30、31のシャフト42、43に嵌合された構成としている。放射部40、41は回転の方向に対して形状が一定ではないために放射指向性がある構成としている。
回転アンテナ28、29の回転の中心は加熱室25内の中心から略等距離に配置する。
この構成により、アンテナが一つの構成では通常は加熱しにくい加熱室内の中央付近を、回転アンテナ28、29の放射指向性の強い部分を中央付近に向けることにより加熱可能とするものである。
導波管24は、図6のように上から見てT字型を成し、左右対称な形状であるため、マグネトロン23から結合部38、39までの距離が等しく、かつ結合部38、39は加熱室25の幅方向に対しても対称位置に取り付けられているので、マグネトロン23から放射されるマイクロ波は導波管24、回転アンテナ28、29を介して加熱室25内にほぼ均等に分配される。
放射部40、41は同一の形状で、放射部上面44、45が略四辺形の形状で、そのうち3辺には加熱室壁面251側に曲げられた放射部曲げ部46を有し、その3辺の外側へのマイクロ波の放射を制限する構成である。加熱室壁面251と放射部上面44、45までの距離は約10mm程度とし、放射部曲げ部46は、それよりも約5mm程度低い位置に引き下げられている。また残る1辺の端部47の幅寸法は80mm以上としている。この構成において回転アンテナ28、29は、いわゆる回転導波管タイプのアンテナとなり、結合部38、39から端部47の方向への放射指向性を強くすることができる。分布変更手段48は、導波管24の上面を兼ねている加熱室壁面251を導波管24側にしぼった構成で、回転アンテナ28、29間の中央に配置し、回転アンテナ28、29が図6、図7のように向き合ったときに端部47に対向する構成で、かつ導波管24がT字型に分岐する分岐点に位置している。
この構成において一般的な食品を均一に加熱する場合は、従来の電子レンジと同様、特に置き場所にこだわる必要はなく、回転アンテナ28、29も従来同様に一定回転させてよい。一方、集中加熱する場合は、特に加熱室25内の中央付近を加熱する場合は、制御手段32は、図6、図7に示すように、回転アンテナ28、29の端部47を、加熱室25の幅方向の略中央かつ奥行き方向の略中央という所定の向きに向けるように制御する。
回転アンテナ28、29の端部47が加熱室25の幅方向の略中央かつ奥行き方向の略中央を向くとき、端部47の方向への放射指向性が強いので、特に端部47の方向からマイクロ波が放射されその方向に位置する食品を集中的に加熱することができる。
また、加熱室25内の左側付近を加熱する場合、制御手段32は、回転アンテナ28、29の端部47を、左向き(加熱室25をドア35側から見て左側)に向けるように制御すればよい。
同様に、加熱室25内の右側付近を加熱する場合、制御手段32は、回転アンテナ28、29の端部47を、右向き(加熱室25をドア35側から見て右側)に向けるように制御すればよい。
また、加熱室25内の前方中央付近を加熱する場合、制御手段32は、回転アンテナ28、29の端部47を、加熱室25の幅方向の略中央かつ奥行き方向の前方(加熱室25内の中央前方付近)に向けるように制御すればよい。
また、加熱室25内の後方中央付近を加熱する場合、制御手段32は、回転アンテナ28、29の端部47を、加熱室25の幅方向の略中央かつ奥行き方向の後方(加熱室25内の中央後方付近)に向けるように制御すればよい。
以上のように、本実施の形態の電子レンジ21は、局所的に加熱したい場所に応じて回転アンテナの向きを制御するものであり。回転アンテナ28、29を所定の向きに向ける
ためには、モータ30、31としてステッピングモータを用いるとか、あるいは一定回転のモータであっても基準位置を検出して通電時間を制御するなどの手段が考えられる。
本実施の形態の電子レンジ21では、モータ30、31としてステッピングモータを用いており、各モータのシャフト42、43にそれぞれ原点検出機構を設けている。この原点検出機構は、図8に示すように、シャフトを中心軸とする円板49aと、フォトインタラプタ33とにより構成される。円板49aには、矩形状のスリット49bが設けられている。
円板49aは、回転アンテナ28、29を回転させるモータのシャフト42、43の軸にそれぞれ共通に取り付けられていて、発光素子と受光素子とを備えたフォトインタラプタ33の光路を遮るように回転するものである。
この構成により、スリット49bがフォトインタラプタ33の光路を通過するときは、前記光路を遮るものが無いので、スリットの通過時点を検出することができる。従って、スリット49bの位置を回転アンテナ28、29の原点と設定しておくことで、各モータに取り付けられたフォトインタラプタ33により回転アンテナの原点を検出することができるものである。
また、制御手段32は、原点検出機構で検出できる原点を基準として、回転アンテナ28、29の指向性の強い部分を局所加熱箇所に集中させるときの回転アンテナ28、29の角度(停止位置)を予め記憶しているアンテナ角度記憶部を有している。回転アンテナ28、29の動作を制御して局所加熱を実行する際には、アンテナ角度記憶部の情報が参照される。
なお、ここまで、回転アンテナが二つの場合について説明してきたが、回転アンテナの数はこれに限られず二個以上の複数個でも良く、例えば、三つの回転アンテナを有する構成としても良い。
次に、図9を参照して、本実施の形態の電子レンジ21が備える温度分布検出手段である赤外線センサ34について説明する。この赤外線センサ34は、基板50上に一列に並んで設けられた複数の赤外線検出素子51と、基板50全体を収納するケース52と、ケース52を赤外線検出素子51が並んでいる方向と垂直に交わる方向に移動させるステッピングモータ53と、を備えるものである。
基板50上には、赤外線検出素子51を封入する金属製のカン54と、赤外線検出素子の動作を処理する電子回路55とが設けられている。また、カン54には赤外線が通過するレンズ56が設けられている。また、ケース52には、赤外線を通過させる赤外線通過孔57と、電子回路55からのリード線を通過させる孔58とが設けられている。
この構成により、ステッピングモータ53が回転運動することで、ケース52を、赤外線検出素子51が一列に並んでいる方向とは垂直方向に移動させることができる。
図10は、赤外線温度検出スポットを説明する図である。図に示すように、本実施の形態の電子レンジ21は、赤外線センサ34のステッピングモータ53が往復回転動作することにより、加熱室25内のほぼ全ての領域の温度分布を検出することができるものである。
具体的には、例えば、まず図10中のA1〜A4の領域の温度分布を、赤外線センサ34が有する一列に並んだ赤外線検出素子51が同時に検出する。次に、ステッピングモー
タ53が回転動作しケース52が移動するとき、赤外線検出素子51がB1〜B4の領域の温度分布を検出する。さらに、ステッピングモータ53が回転動作してケース52が移動するとき、赤外線検出素子51がC1〜C4の領域の温度分布を検出し、同様に、D1〜D4の領域の温度分布が検出される。
また、上述の動作に続けて、ステッピングモータ53が逆回転することで、D1〜D4の領域側から、C1〜C4、B1〜B4、A1〜A4の順に、温度分布を検出する。赤外線センサ34は、以上の動作を繰り返すことで、加熱室25内の全体の温度分布を検出することができる。
次に、図7を参照して、制御手段32の概略構成を説明する。制御手段32は、回転アンテナ28、29の動作を制御するアンテナ制御部321と、加熱室25内に載置された被加熱物が食品であるか否かを判定する食品判定部322と、加熱処理のうち初期段階の終了を判定する加熱初期段階終了判定部323と、加熱処理全体の終了を判定する加熱終了判定部324とを有する構成である。
食品判定部322は、被加熱物の初期温度分布を記憶する初期温度分布記憶部328と、被加熱物の単位時間あたりの温度上昇率を算出する温度上昇率算出部329と、を有し、算出した温度上昇率が所定以上の場合に、被加熱物が食品であると判定するものである。これは、すなわち、温度を検出した領域が、被加熱物を載せる載置台であるのか又は加熱対象である食品であるのかを判定するものである。これは載置台はマイクロ波を透過してほとんど温度上昇しないが、食品はマイクロ波を吸収して温度上昇しやすい、その特性の違いにより判別するものである。
加熱初期段階終了判定部323は、例えば、加熱開始から所定時間が経過した場合に加熱初期段階が終了したと判定する判定条件や、被加熱物の最高温度が所定温度以上に到達した場合に加熱初期段階が終了したと判定する判定条件や、また、加熱開始から被加熱物の温度変化の最高値が所定以上である場合に加熱初期段階が終了したと判定する判定条件を用いて、加熱処理の初期段階が終了したことを判定するものである。
加熱終了判定部324は、例えば、被加熱物の温度分布のうち最高温度が予め設定された設定温度を超えるときに加熱処理を終了すると判定する判定条件や、食品と判定した箇所の平均温度が設定温度を越えるときに加熱処理を終了する判定条件や、また、被加熱物の最高温度が所定温度に到達するのに要する時間を測定し、その要した時間の一定の割合(例えば、50%)を追加加熱時間として加熱処理し、その後追加加熱時間が終了したときに加熱処理を終了する構成等により、加熱処理の終了を判定するものである。
アンテナ制御部321は、加熱室内を均一加熱させるべく回転アンテナ28、29の動作を制御する分散加熱モード制御部325と、被加熱物の低温部分を加熱すべく回転アンテナ28、29の動作を制御する局所加熱(スポット加熱)モード制御部326と、加熱室内に載置された被加熱物の低温部を検出する低温部抽出部327とを有する構成である。
分散加熱モード制御部325は、例えば、マイクロ波発振中に所定の位置で停止させることで局所的な加熱のできる二つの回転アンテナ28、29を、その停止位置を刻々と変化させることで分散加熱を実現したり、回転アンテナ28、29を連続的に回転させることで分散加熱を実現したり、また、回転アンテナ28、29の停止位置をランダムに変えることで分散加熱を実現する構成である。
局所加熱(スポット加熱)モード制御部326は、低温部抽出部327より最低温度箇
所の情報を得て、局所加熱すべく回転アンテナ28、29の向きを制御する構成である。例えば、最低温度箇所が、図10中のB2、B3、C2、C3のいずれかであれば、回転アンテナ28、29が中央を加熱する向き、すなわち図6、図7に示した停止位置に回転アンテナ28、29を停止させる。
また、最低温度箇所が、図10中のB1、C1のいずれかであれば、回転アンテナ28、29が左方向を加熱する向きに回転アンテナ28、29を停止させる。また、最低温度箇所が、図10中のB4、C4のいずれかであれば、回転アンテナ28、29が右方向を加熱する向きに回転アンテナ28、29を停止させる。
また、最低温度箇所が、図10中のA2、A3のいずれかであれば、回転アンテナ28、29が前方を加熱する向きに回転アンテナ28、29を停止させる。また、最低温度箇所が、図10中のD2、D3のいずれかであれば、回転アンテナ28、29が後方を加熱する向きに回転アンテナ28、29を停止させる。
以上のように、制御手段32は、温度検出手段が検出した最低温度箇所に応じて、回転アンテナ28、29の停止位置を制御するものであるが、このとき、回転アンテナが所定の位置に停止したまま加熱室内にマイクロ波を放射しつづけると、回転アンテナ自体が昇温し過ぎて融解する恐れがある。
この点を鑑みて、制御手段32の局所加熱(スポット加熱)モード制御部326は、上述の局所加熱モード時に、回転アンテナ28、29を目標角度(停止位置)を中心として所定角度(例えば、±5度)程度往復揺動させるものである。これにより、局所的加熱効果に影響を与えることなく回転アンテナの劣化を防止することができる。また、マイクロ波放射中に回転アンテナが停止しつづけることで、回転アンテナの一部にマイクロ波が集中しすぎて、過剰加熱することを防止する。この往復揺動動作は、局所加熱開始時から行っても良いが、局所加熱開始時から所定時間経過後(例えば、30秒〜1分後)に開始する構成としてもよい。
この往復揺動動作を実行するために、制御手段32は、回転アンテナ28、29が停止することを許容する上限時間を予め記憶する停止上限時間記憶部と、回転アンテナ28、29が停止している時間をカウントする停止時間計時部と、回転アンテナ28、29を往復揺動させる角度を記憶する往復角度記憶部と、を有している。
また、局所加熱開始時から所定時間経過後(例えば、30秒〜1分後)に回転アンテナ28、29を所定角度(例えば、5度)だけ回転させる構成としても良い。
また、制御手段32は、回転アンテナ28、29が所定の停止位置(角度)にあるときを原点として記憶している。そして、制御手段32は、例えば、加熱処理実行前または加熱処理実行後に回転アンテナ28、29の原点を確認する原点検出モードを実行する。
原点検出モード中は、回転アンテナ28、29の角度を特定することができず、このままマイクロ波を発振すると不本意な加熱状態を起こし不良の原因となってしまうことがある。そこで、制御手段32は、原点検出モード中で回転アンテナを駆動している間は、マグネトロンの動作を停止する制御を行う。
また、制御手段32は、原点検出モードを加熱処理終了後に行い、原点を検出した状態で非加熱時に待機する。これにより、加熱処理を開始する前に原点検出のための待機時間が発生するのを防ぐことできる。
また、制御手段32は、原点検出モードで原点が見つからなかった場合には、エラーと判定してそれ以降の加熱処理の実行を禁止するメニューと、回転アンテナ28、29を停止させた状態で加熱処理を実行するメニューと、を有するものである。この構成により、調理メニューに応じて、例えば、加熱室25内の温度分布の偏っていても構わないメニュー(単に加熱処理できればムラがあっても良い場合等)のときは、回転アンテナ28、29の動作を停止したまま加熱処理を実行するので、ユーザに対して最低限の機能を提供することができる。
なお、原点が検出できない場合は、回転アンテナ28、29を駆動するモータ30、31が故障している場合もあり、その状態のまま回転アンテナ28、29を動作させることは問題があるので、回転アンテナ28、29の動作は停止させるものである。
一方、加熱室25内の温度分布が偏っていたのではユーザが所望する出来栄えの加熱処理を実現することができないメニューのときは、加熱処理の実行自体を禁止するものである。
また、制御手段32は、加熱開始の初期段階においては分散加熱モードで加熱室25全体を均一加熱し、加熱室25内の温度分布に差が生じはじめたときに局所加熱モードに移行するものとしても良い。加熱開始の初期段階では加熱室25内の温度分布に差がないので、分散加熱モードが効率よく加熱室25全体を昇温させることができる。
また、制御手段32は、加熱開始の初期段階においては、まず、加熱室25内の中央付近を局所的に加熱するものとしても良い。通常、加熱室内の温度分布に差がない状態から加熱処理を開始すると、加熱室の中央付近が最も昇温しにくい。従って、まず、加熱室25内の中央付近を局所加熱し、その後、分散加熱を行って加熱室全体の均一加熱を行うことで、効率よく加熱室全体を均一加熱することができる。
また、各回転アンテナ28、29を駆動するモータ30、31は、例えば、ステッピングモータとしても良い。このとき、制御手段32は、各回転アンテナ28、29に取り付けられた各ステッピングモータに対してパルスを入力するタイミングを、各ステッピングモータ毎に時間差を設けて同時にならないように制御すると良い。同時にパルスを入力すると、そのタイミングで必要な電流が増大し、電子レンジ31に大電流に対応可能な回路を設置しなければならなくなるが、時間差を設けてパルスを入力することで回路が大型化するのを防止できる。
次に、本実施の形態の電子レンジ21の動作について説明する。まず、加熱初期段階時の動作について、図11を参照して説明する。
まず、加熱処理が開始されると、マグネトロン23がマイクロ波を発生させ、そのマイクロ波が導波管24を介して加熱室25内に伝送される(S101)。このとき、赤外線センサ34は、加熱初期時点での加熱室25内の温度分布を検出し、制御手段32は温度分布の検出結果を記憶する(S102)。
次に、制御手段32は、分散加熱を実現するために、例えば、回転アンテナ28、29を一定速度で回転させる(S103)。一定時間経過後、赤外線センサ34は、再び加熱室25内の温度分布を検出する(S104)。
そして、制御手段32の加熱初期段階終了判定部323は、S102の段階で検出した加熱初期段階での加熱室25内の温度分布と、S104の段階で検出した一定時間経過後の加熱室25内の温度分布とを参照して、一定の加熱初期段階終了の判定条件が見たされ
ているか否かを判断する。判定条件が具備されていなかった場合は(S105−No)、続けて加熱室25内を分散加熱し、所定時間経過後に再び加熱室25内の温度分布を検出する。
判定条件が具備されていた場合は(S105−Yes)、赤外線センサ34が温度を検出した各領域が、食品が載置された領域であるか否かを判定するステップに移行する。このステップでは、例えば、温度を検出した各領域の単位時間あたりの温度上昇率を参照し、所定値以上である場合には、その領域に食品が載置されていると判断する。また、温度を検出した各領域について初期温度を参照し、その初期温度がマイナスだった場合(例えば、冷凍食品等が想定される)に、その領域は食品が載置されている領域と判断しても良い。このように、S106のステップにおいては、加熱室25内の全領域のうち、食品が載置されている領域と、食品が載置されていないその他の領域とを判別し、制御手段32に記憶しておく。(S106)。
加熱初期段階が終了すると、電子レンジ21は、続けて、加熱フィードバック段階へ移行する。図12を参照して、加熱フィードバック段階の動作について説明する。電子レンジ21の赤外線センサ34は、加熱初期段階が終了した後、加熱室25内の全体の温度分布を検出する(S107)。そして、加熱室25内で食品が載置されていると判定されている領域内での最低温度の領域を抽出、すなわち、食品箇所のうち最低温度箇所を抽出する(S108)。
その最低温度箇所が図10中のB2、B3、C2、C3のいずれかの領域であるか否かを判定する(S109)。最低温度箇所がB2、B3、C2、C3のいずれかの領域であった場合は(S109−Yes)、制御手段32は、回転アンテナ28、29が加熱室25内の中央を加熱する向き、すなわち図6、図7に示した停止位置に回転アンテナ28、29を停止させるように動作制御を実行する(S117)。
最低温度箇所がB2、B3、C2、C3のいずれの領域でもなかった場合は(S109−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がB1、C1のいずれかである否かを判定する(S110)。
最低温度箇所がB1、C1、のいずれかの領域であった場合は(S110−Yes)、制御手段32は、回転アンテナ28、29が加熱室25内の左方向を加熱する向きに回転アンテナ28、29を停止させるように動作制御を実行する(S118)。
最低温度箇所がB1、C1のいずれの領域でもなかった場合は(S110−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がB4、C4のいずれかである否かを判定する(S111)。
最低温度箇所がB4、C4、のいずれかの領域であった場合は(S111−Yes)、制御手段32は、回転アンテナ28、29が加熱室34内の右方向を加熱する向きに回転アンテナ28、29を停止させるように動作制御を実行する(S119)。
最低温度箇所がB4、C4のいずれの領域でもなかった場合は(S111−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がA2、A3のいずれかである否かを判定する(S112)。
最低温度箇所がA2、A3、のいずれかの領域であった場合は(S112−Yes)、制御手段32は、回転アンテナ28、29が加熱室34内の前方向を加熱する向きに回転アンテナ28、29を停止させるように動作制御を実行する(S120)。
最低温度箇所がA2、A3のいずれの領域でもなかった場合は(S112−No)、続けて、食品箇所のうち最低温度箇所がD2、D3のいずれかであるか否かを判定する(S113)。
最低温度箇所がD2、D3、のいずれかの領域であった場合は(S113−Yes)、制御手段32は、回転アンテナ28、29が加熱室25内の後方向を加熱する向きに回転アンテナ28、29を停止させるように動作制御を実行する(S121)。
最低温度箇所がD2、D3のいずれの領域でもなかった場合は(S113−No)、続けて、制御手段32は、回転アンテナ28、29を一定回転させて加熱室25内を均一加熱する分散加熱モードに移行する(S114)。
制御手段32は、S114、S117〜S121のいずれかステップを実行した後に、終了判定を行う(S115)。例えば、食品の温度分布のうち最高温度が予め設定された設定温度を超えるときに加熱処理を終了すると判定する加熱処理終了判定条件や、食品と判定した箇所の平均温度が設定温度を越えるときに加熱処理を終了すると判定する加熱処理終了判定条件を満たしているか否かを判定する。
加熱処理終了判定条件を満たしていた場合は(S115−Yes)、加熱処理を終了する(S116)。加熱処理終了判定条件を満たしていない場合は(S115−No)、S107のステップの段階に移行し、再びS107以降のステップを繰り返す。
以上のように、本実施の形態の電子レンジ21は、二つの回転アンテナ28、29により加熱室25内の特定の箇所を集中的に加熱することができるものであり、加熱処理中に被加熱物である食品の温度分布を検出し、その食品の最低温度箇所にスポットを当てて局所的に加熱することができるので、食品をムラなく加熱処理することができる。
また、局所的加熱と分散加熱とを食品の温度分布に応じて切り換えることができ、すなわち必要な箇所にマイクロ波を集中させることができるので、効率よく短時間で食品を加熱することができる。
なお、図12において説明した加熱フィードバック段階の動作制御については、食品の最低温度箇所を探索する順序はこれに限られず、結果として食品全体を探索するものであれば他の順序で実行しても良い。
なお、加熱フィードバック制御に関しては、たとえば加熱室34内の各領域(A1〜A4、B1〜B4、C1〜C4、D1〜D4)を、中央領域A(B2、B3、C2、C3)と左側領域B(B1、C1)と右側領域C(B4、C4)と前方領域D(A2、A3)と後方領域E(D2、D3)とに分類し、その分類した領域内の食品箇所の平均温度に基づいて加熱フィードバックを行うようにしても良い。この場合は、分類した一定領域内(A〜E)の食品箇所の平均温度に基づいて、局所加熱箇所を決定するので、食品の一箇所だけが極端に低い場合であっても、食品全体として加熱が必要な箇所に対して集中加熱を行うことができる。
次に分布変更手段48について説明する。前述の通り、分布変更手段48は、導波管24の上面を兼ねている加熱室壁面251を導波管24側にしぼった構成で、回転アンテナ28、29間の中央に配置し、回転アンテナ28、29が図6、図7のように向き合ったときに端部47に対向する構成で、かつ導波管24がT字型に分岐する分岐点に位置している。
以上の構成により、分布変更手段48は、回転アンテナ28、29の駆動領域に配置しており、回転アンテナ28、29の向きを制御して加熱分布を制御するだけでなく、図6、図7のように向き合ったときにそれぞれの端部47と加熱室壁面251との距離が広くなるので、マイクロ波が出やすくなり、より一層食品の中央にマイクロ波を集中させることができる。
また、分布変更手段48は、加熱室壁面251をしぼることで構成している。極めて簡単に実現できるとともに、加熱室形状を一部変更することになるので容易に定在波分布に影響を与えて加熱分布を変更することができる。また本実施の形態においてはT字型に分岐する左右対称な導波管24に対して、分布変更手段48も左右対称にしぼる構成としており、左右の回転アンテナ28、29から放射されるマイクロ波の量も自然と同等量を放射できるようにバランスさせることができる。
また、分布変更手段48は、加熱室25の外向きに突出する形状で、かつ、2つの回転アンテナ28、29間の中央に配置する構成している。2つの回転アンテナ間の中央においては、分布変更手段によりアンテナと加熱室壁面の距離が遠くなり、マイクロ波が伝送される空間が広くなるので、アンテナからのマイクロ波が通りやすくなり、局部的な集中加熱能力を高めることができる。通常は、加熱室の中央に一つ(一皿、カップ一杯など)の食品を置かれる頻度が高く、加熱室中央を集中加熱したいという場合が多く、また横長の加熱室の場合に2つの回転アンテナが加熱室底面に左右対称に配置されることが多いと考えられるので、2つの回転アンテナ間の中央の局部的な集中加熱能力を高めることは効果的である。
さらに、制御手段32は、回転アンテナ28、29が分布変更手段48にかかる向き(互いに内向き)で停止させる構成により、食品の中央を集中的に加熱することについては、最も分布変更手段48の効果を活かすことができる。
(実施の形態3)
図13、図14は、本発明に係る実施形態3のマイクロ波加熱装置である電子レンジの概略構成を示す図であり、図13は上方から見た平断面図、図14は図13の実矢線59から見た断面図である。
本実施の形態の電子レンジは、代表的なマイクロ波発生手段であるマグネトロン60と、マグネトロン60から放射されるマイクロ波を伝播する導波管61と、導波管61の上部に接続された加熱室62と、加熱室62の底面を為す加熱室壁面621の中心から略等距離に設けた2つの結合孔63、63と、結合孔63、63を中心に回転可能な回転アンテナ64、64と、嵌合させた駆動軸を介して回転アンテナ64、64を駆動する駆動手段としてのモータ65を備える構成である。
回転アンテナ64、64は、いわゆるスロットアンテナであり、平らな円板状の導電性材料にスロット(孔)66を有する放射部67、67と、結合孔63、63を貫通して放射部67、67と電気的及び機械的に一体化された円筒状の導電性材料から成る結合部68から構成されている。本実施の形態の回転アンテナ64、64は、結合部68からスロット(孔)66の側へと放射指向性が高くなる特性を有している。
次に分布変更手段69、69について説明する。分布変更手段69、69は、加熱室壁面621上に別部品をスポットや溶接によって一体化した構成で、回転アンテナ64、64の駆動領域の一部(前と後。図13のやや上側と下側。図14では右側と左側)に配置されている。さらに分布変更手段69、69は、加熱室62の内向きに突出する形状で、
かつ、2つの回転アンテナ64、64間の中央よりずらした位置に配置する構成としている。中央よりずらした位置とは、本実施の形態の場合、回転アンテナ64、64のスロット(孔)66を互いに向き合わせたときにはスロット(孔)66にオーバーラップせず、図13のようにスロット(孔)66位置をややうしろ向きとか逆にやや前向きとかにしたときにはスロット(孔)66にオーバーラップする位置を示している。つまり回転アンテナ64、64の指向性の強い向きを内向きにして中央を集中的に加熱する時には邪魔にならず、中央から少しずらした向きでは邪魔になるような位置である。
この構成により、2つの回転アンテナ64、64間の中央より前とか後にずらした位置においては、分布変更手段69、69が加熱室壁面621と一体化されることにより回転アンテナ64、64の放射部67、67と加熱室壁面の距離が近くなることに等しく、マイクロ波が伝送される空間が狭くなるので、アンテナからのマイクロ波が通りにくくなり、局部的な集中加熱能力を低下させることができる。通常は、加熱室中央を集中加熱したいという場合が多く、また2つの回転アンテナが加熱室底面に左右対称に配置されることが多いと考えられ、2つの回転アンテナ間の中央の局部的な集中加熱能力を高めようとするので、その影響で2つの回転アンテナ間の中央よりずれた位置までも集中加熱されてしまうことが考えられる。よって2つの回転アンテナ間の中央よりずれた位置で、分布変更手段69、69により局部的な集中加熱能力を低下させることは加熱室中央よりずれた位置の過加熱を防ぐために効果的である。
なお本実施の形態では、分布変更手段69、69を別部品で構成して加熱室壁面621上に一体化したが、このようにすれば、分布変更手段69、69を導波管を構成する一壁面内に収まる形状にしなくても良く、加熱室壁面621上のどこにでも構成できる。
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
特に、アンテナについて、複数のアンテナが異なる構成でも良いし、パッチアンテナ・回転導波管・スロットアンテナだけでなくほかのアンテナで構成しても良い。また分布変更手段を複数個配置することなども容易に考えられる。