JP5215721B2 - エンジン - Google Patents

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Description

本発明は、例えば自動二輪車や小型滑走艇等の乗物に搭載されるエンジンであって、そのエンジンケースには内方空間と外方空間とを連通する連通路が形成されたエンジンに関する。
自動二輪車等の乗物に搭載される4サイクルエンジンは、クランクシャフトを収容するクランクケース等を備えたエンジンケースを有している。該エンジンケースには、ピストンが挿入されるシリンダが形成されており、該シリンダの一端には燃焼室が連なっている。また、シリンダの他端にはクランクケースの内部空間(以下、クランク室とも呼ぶ)が連なっており、ピストンの往復動に基づいてクランクシャフトが回転される。該クランク室内ではピストンの往復動に伴う圧力変動が発生する。この圧力変動を緩和すべく、エンジンケースには、ケース内の空間とケース外の外方空間とを連通する連通路が形成される(例えば特許文献1参照)。
また、クランク室内には、霧状の潤滑油であるオイルミストや、燃焼室からピストンとシリンダとの間隙を通って侵入するガスであるブローバイガスが含まれている。このため、ピストンの下動に伴いクランク室の内圧が外方空間に比べて高圧になったときに、クランク室の空気とともにオイルミストが連通路内に侵入することがある。このため、連通路内にはオイルミストを液滴にして該液滴となったオイルを回収するためのブリーザ構造を備える場合がある。
特開平6−50125号公報
アイドリング時等のエンジン低回転運転時には、ピストンの往復周期が長くなることによって、クランク室内の圧力変動の振幅が大きくなる。この場合、ピストンの下動に伴いクランク室の内圧が外方空間に比べて高圧になったときに、連通路を介してエンジンケース内からオイルミスト及びブローバイガスがエンジンケースの外方空間に流出するおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、オイルミストおよびブローバイガス等のエンジンケース内のガスがエンジンケース外へ流出することを防ぐことがでいるエンジンを目的としている。
上記目的達成のため、シリンダを有するエンジンケースを備え、該エンジンケースには、前記シリンダと連なりクランクシャフトが収容されるクランク室と、前記クランクシャフトの回転に応じて燃焼室を開閉させる動弁機構が収容される動弁室と、前記クランクシャフトの回転を前記動弁機構に伝達する伝動機構の少なくとも一部が収容される伝動室と、前記伝動室に開放するブリー入口を介して前記クランク室と連通し、ブリーザ出口を介してエンジンケース外となる外方空間と連通するブリーザ室とが形成され、前記ブリーザ室には、該ブリーザ室内の圧力上昇に対して、該ブリーザ室内から前記外方空間へのガスの流出を遅らせる遅延機構、又は、前記外方空間から該ブリーザ室内へのガスの流入を防ぎ該ブリーザ室内から前記外方空間へのガスの流出を抑制する逆流防止機構が設けられ、前記エンジンケースは、前記クランク室を有するクランクケースと、前記シリンダを有して前記クランクケースに結合されるシリンダブロックと、前記シリンダブロックに前記クランクケースと反対側に結合されて前記動弁室及び前記燃焼室を有するシリンダヘッドとを備え、前記伝動室は前記シリンダブロック及び前記シリンダヘッドを貫いており、前記シリンダヘッドが前記伝動室と前記燃料室とを区画するヘッド側隔壁部を有し、前記ブリーザ室の少なくとも一部前記伝動室と前記燃焼室との間に配置されて前記ヘッド側隔壁部に形成され、前記ブリーザ入口が前記ヘッド側隔壁部に設けられ、前記シリンダブロックでは前記クランク室のガスは前記伝動室を通過して前記シリンダヘッド内の前記ブリーザ入口に導かれ、前記遅延機構又は前記逆流防止機構が前記シリンダヘッドに形成された前記ブリーザ出口に設けられていることを特徴としている。
かる構成によれば、クランク室はピストンの上下動によって圧力変動が生じる。ブリーザ室は伝動室を介してクランク室に連通されるので、クランク室での圧力変動に応じて圧力が変動する。ブリーザ室は伝動室を介してクランク室に接続されることで、クランク室に比べて圧力変動における振幅が小さくなる。これによってブリーザ室の内圧が外方空間の圧力を超える期間を短くすることができ、ブリーザ室から外から空間へのガスの流出を抑えることができる。また、ブリーザ室に遅延機構を設けていれば、ブリーザ室の圧力上昇に対するガスの流出が遅れる。ブリーザ室から外方空間へガスが流出する前に、クランク室の圧力が低下する場合には、ブリーザ室のガスは外方空間へ流出することが抑えられて、クランク室へ向けて移動する。これによってさらにブリーザ室から外方空間へのガスの流出を抑えることができる。このようにしてブリーザ室から外方空間へのガスの流出を抑えることで、クランク室内に存在するオイルミスとおよびブローバイガス等がエンジン外に飛散することを抑えることができる。ブリーザ室の出口側には逆流防止機構を設けていれば、ブリーザ室からガスが流出することを抑制することができ、また、ブリーザ室の出口側からブリーザ室内へのガスの逆流を防止することができる。
なお、前記ブリーザ室の少なくとも一部が前記燃焼室と隣接して配置されていれば、ブリーザ室は、クランク室内と伝動室を介して連通していると共に、クランク室とシリンダを挟んで反対側に形成される燃焼室と隣接するように配置されているため、クランク室からブリーザ室に至るまでの空間容量が大きく確保され、ブリーザ室内の圧力変動を緩和する効果を高めることができる。さらに、このようにブリーザ室が大きな空間を介してクランク室と連通しているため、ブリーザ室内に達したガスはクランク室内のガスと比べて圧力変動が小さく、低温になる。このため、耐圧性や耐高温性の観点から逆流防止機構の材料や構造の選択肢を増やすことができ、例えば安価な材料や構造によって逆流防止機構を製作可能になる。
また前記シリンダブロックが、前記伝動室と前記シリンダとを区画し、前記ヘッド側隔壁部の下面を支持する上面を有したシリンダ側隔壁部を有し、前記シリンダヘッドが、前記ヘッド側隔壁部に形成されて前記下面に開口する空間を有し、前記シリンダブロックが、前記シリンダ側隔壁部の前記上面に開口する凹部を有し、前記ブリーザ室及び前記ブリーザ入口が、前記空間の開口が前記凹部で塞がれることによって形成されてもよい。
また、前記ブリーザ室が第1のオイル戻し孔を介して伝動室と連通され、該エンジンがエンジン搭載対象物に搭載された状態で前記第1のオイル戻し孔が、該伝動室を区画する壁面のうち、前記ブリーザ入口に対して下方に位置して形成されていてもよい。かかる構成によれば、ブリーザ室内で液滴となったオイルを第1のオイル戻し孔から伝動室へ逃がすことができる。この第1のオイル戻し孔は伝動室を区画する壁面のうち下側に位置しているため、第1のオイル戻し孔を通って伝動室内へと排出されたオイルは、自重により壁面を伝って下方へ流下する。ブリーザ室に溜まったオイルが外方空間に流出することを防ぐことができ、オイルによってブリーザ入口が塞がれることを防ぐことができる。
また、前記ブリーザ室が、前記ブリーザ入口と前記ブリーザ出口との間に形成された絞り部を有し、前記ヘッド側隔壁部には、前記動弁機構のカムシャフトにオイルを送るためのオイルパイプ孔が設けられ、前記ブリーザ室が、前記オイルパイプ孔を挟むようには位置された第1ブリーザ室と第2ブリーザ室とを有し、前記絞り部が、前記オイルパイプ孔の外周に沿って形成され、前記第1ブリーザ室を前記第2ブリーザ室に連通させてもよい。かかる構成によれば、ブリーザ室入口から流入したガスが絞り部を通過することによって絞り部を通過した後のガスの流速や圧力が低減し、ブリーザ室内のうち出口側の圧力変動がさらに緩和される。また、これによって外方空間へのガスの流出をさらに抑えることができる。ガスが絞り部を通過するときには、絞り部を区画する壁面にガス中のオイル成分を液滴として付着回収することができる。また、絞り部の通過後においてガスの流速が低下するため、絞り部の下流側でのオイル成分の回収効率が向上する。したがって、オイル成分が外方空間へ流出することをさらに抑えることができる。
また、前記エンジンケースの外面に吸気ポートが開口しており、該吸気ポートの開口付近に前記ブリーザ室出口が形成され、該ブリーザ室出口と該吸気ポートとを連通する還元用通路が形成されていてもよい。かかる構成によれば、ブリーザ室を吸気系と連通してブローバイガスを還元可能としたときに、ブローバイガスの還元用通路をコンパクトに構成することができるようになる。
また、前記エンジンケースに前記ブリーザ室出口を覆うようにしてブリーザカバーが設けられ、前記エンジンケースと前記ブリーザカバーとにより区画され、前記ブリーザ室出口を介してブリーザ室と連通するブリーザ副室が形成されていてもよい。かかる構成によれば、エンジンケースの形状に関わらずブリーザ副室を形成することができる。例えばブリーザ副室の空間容量を拡大することができる。また、ブリーザ副室内で液滴となって回収された潤滑油を第2のオイル戻し孔によってブリーザ室に戻すことができる。
以上の説明のとおり、本発明によれば、ブリーザ出口側からブリーザ室内への逆流を防止可能なエンジンを提供することができる。
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。以下の説明における方向の概念は、自動二輪車に騎乗した運転者から見る方向と一致している。また、エンジンに関する方向の概念は、自動二輪車に搭載された状態においてこの自動二輪車に騎乗した運転者から見る方向と一致している。なお、本実施形態における「ガス」とは、オイルミスト及びブローバイガスを含む概念である。
図1は本発明の実施形態に係る自動二輪車1の左側面図である。図1に示される自動二輪車1は、所謂クルーザータイプの自動二輪車であり、前輪2及び後輪3の間に車体をなすフレーム4が設けられている。フレーム4にはエンジン5が支持され、エンジン5の上方には燃料タンク6が設けられている。燃料タンク6の後方には運転者用のシート7が設けられている。
エンジン5はV型2気筒の4サイクルエンジンである。エンジン5の本体をなすエンジンケース5aは、シリンダ軸線Aが対をなして前後にV型に配列された2つのバンク9,10を有している。2つのバンク9,10の下端はクランクケース8に結合されている。クランクケース8にはクランクシャフト11が回転可能に支持されている。エンジン5は、クランクシャフト11の軸線Bを車体の左右に向けた状態にして搭載されている。
エンジン5の出力は、クランクケース8の後部に設けられる変速機13や、図示しないドライブシャフト又はチェーン等を介して後輪3に伝達され、この後輪3が回転することにより自動二輪車1に推進力が付与される。エンジン5の前方には、走行風Wを利用して冷却液を放熱させるラジエータ14が設けられている。
このクルーザータイプの自動二輪車1は長距離長時間の一定速度走行に適した仕様となっている。例えばエンジン5は、スポーツタイプ等の他のタイプの自動二輪車に搭載されるエンジンと比べて1気筒当たりの排気量が大きく、低回転域から比較的大きいトルクが出力されるようなトルク特性を有している。
次に、本発明の実施形態に係るエンジンの全体構成について説明する。図2は図1に示すエンジン5を左後方から見た斜視図である。図3は図1に示すエンジン5の平面図である。図2及び図3に示すように、クランクケース8は前後に長寸に形成され、合面17にて左ケース部15と右ケース部16とに左右分割される。前方バンク9はクランクケース8の上面前部から斜め前上方に向けて延在し、後方バンク10はクランクケース8の上面における前方バンク9の直後から斜め後上方に向けて延在している。各バンク9,10は、クランクケース8の上面からシリンダブロック18、シリンダヘッド19、シリンダヘッドカバー20(図5参照)及び化粧カバー21がこの順で連結されてなる。
バンク間のV字状空間12内にはエンジン5の吸気系22が配設されている。吸気系を構成する吸気マニホールド22aが、各バンク9,10のシリンダヘッド19におけるV字状空間12に面した側面(前方バンク9のシリンダヘッド19においては後面、後方バンク10のシリンダヘッド19においては前面)に接続されている。
図4は図1の矢印IV−IV方向に沿って示すエンジン5の断面図である。図4に示すように、エンジンケース5aには、シリンダブロック18に形成されて両端が開口したシリンダ23と、シリンダ23の下端と連通するクランクケース8の内部空間(以下「クランク室」と呼ぶ)24と、シリンダ23の上端の燃焼室25とが形成されている。
クランク室24は、クランクケース8の左右のケース部15,16に設けられた側壁15a,16aに囲まれて形成され、クランクシャフト11のジャーナル部11a,11aが各側壁15a,16aに回転可能に支持されている。クランク室24内には、各ジャーナル11a,11aの軸方向中央側に設けられたクランクピン11cが収容されている。
シリンダ23にはピストン26が摺動可能に挿入されている。ピストン26は、コンロッド27を介してクランクピン11cと連結され、ピストン26の往復動とクランクシャフト11の回転とが互いに変換可能になっている。
燃焼室25はシリンダヘッド19の下面に形成され、燃焼室25には吸気口及び排気口(図7参照)が開口し、また点火プラグ28の端部が露出している。燃焼室25の上方には、シリンダヘッド19及びシリンダヘッドカバー20に囲まれた動弁室30が形成され、この動弁室30内には常閉の吸気バルブ及び排気バルブ(図示略)を駆動する動弁機構が設けられている。本実施形態の動弁機構はSOHC型であり、図4はこの動弁機構のうち前方バンク9のカムシャフト29を示している。このカムシャフト29上の吸気側カム31及び排気側カム32の回転に基づいてバルブが上下動することにより、燃焼室25の吸排気口が開閉する。
クランクシャフト11の左端部11dは側壁15aから突出し、左ケース部15はこの左端部11dを外囲するリブ部15cを有している。エンジンケース5aの左壁部には、このリブ部15c、前方バンク9のシリンダブロック18及びシリンダヘッド19を貫く前側チェーントンネル33が形成されている。前側チェーントンネル33内には、カムシャフト29の左端部29aと、クランクシャフト11の回転をこのカムシャフト29に伝達する伝動機構34とが収容されている。伝動機構34は、クランクシャフト11の左端部11dに固定された駆動スプロケット35と、カムシャフト29の左端部29aに固定された従動スプロケット36と、両スプロケット35,36の間に巻き掛けられたタイミングチェーン37とを備える。
シリンダブロック18は、シリンダ23と前側チェーントンネル33の一部をなすシリンダ側トンネル33aとを左右に区画するシリンダ側隔壁部38を有し、シリンダヘッド19は、燃焼室25と前側チェーントンネル33の一部をなすヘッド側トンネル33bとを左右に区画するヘッド側隔壁部39を有している。リブ部15bの上面にシリンダ側隔壁部38の下面が支持され、シリンダ側隔壁部38の上面にヘッド側隔壁部39の下面が支持され、ヘッド側隔壁部39の上面にカムシャフト29が支持されている。エンジンケース5aにはリブ15bからヘッド側隔壁部39の上面側までを貫通するオイルパイプ孔40が形成されており、クランクシャフト11に供給された潤滑油は、このオイルパイプ孔40と該オイルパイプ孔40に挿入されたオイルパイプ41の内部を介し、ヘッド側隔壁部39の上面側のカムシャフト29の軸受部分に供給される。
また、クランクシャフト11の右端部11eは側壁16aから突出し、右ケース部16はこの右端部11eを外囲するリブ部16cを有している。エンジンケース5aの右壁部には、リブ部16c、後方バンクのシリンダブロック及びシリンダヘッドを貫く後側チェーントンネル(図示略)が形成され、その内部には後方バンクのカムシャフトの端部と、クランクシャフト11の回転をこのカムシャフトに伝達する伝動機構とが収容される。なお、図4には、該構成のうちクランクシャフト11の右端部11eに固定された伝動機構の駆動スプロケット35が示されている。
クランク室24の後側には変速機13を収容する変速機収容室42が形成され、クランク室24及び変速機収容室42の右側にはリブ部16cの開口を覆うクラッチカバー43と右ケース部16とにより囲まれたクラッチ収容室44が形成されている。クラッチ収容室44には、クランクシャフト11の回転を変速機13側に伝達する減速機構48や、変速機13の入力軸45上に配置された多板クラッチ49等が収容されている。
クランク室24の左側にはリブ部15cの開口を覆う発電機カバー50と左ケース部16とにより囲まれた発電機収容室51が形成され、この発電機収容室51内にはクランクシャフト11の左端部11d上に配置された発電機53等が収容されている。
このようにクランク室24の左右両側には側壁15a,16aを介して2つの室44,51が形成され、両室44,51は、発電機53や多板クラッチ49等の比較的大型の回転部材を収容すべくその空間容量が大きいものとなっている。左側壁15aには貫通孔15d(図5参照)が形成され、この貫通孔15dを介してクランク室24は発電機収容室51と連通している。またクランク室24は右側壁16aに同様に形成された図示しない貫通孔を介してクラッチ収容室と連通している。さらに、発電機収容室51は前側チェーントンネル33と連通してクラッチ収容室44は後側チェーントンネルと連通しているが、これら前後のチェーントンネルも、スプロケットやタイミングチェーンを収容すべくその空間容量が大きいものとなっている。
次に、エンジン5のブリーザ構造について説明する。以下では、前方バンクにのみブリーザ構造を設けるものとするが、前方バンクに替えて後方バンクに設けてもよく、両方のバンクに設けてもよい。
図5は図3のV−V線に沿って示すエンジン5の断面図である。なお、図5ではカムシャフト等の動弁機構の図示を省略すると共に伝動機構のスプロケットの図示を省略している。前方バンク9の前側チェーントンネル33内には、スプロケット間に巻き掛けられたタイミングチェーン37がシリンダ軸線A方向に沿うように延在している。このようにしてタイミングチェーン37は前後一対のチェーン延在部37aを形成し、前側チェーントンネル33内には、これらチェーン延在部37aのそれぞれに外側から接触するチェーンガイド55及びチェーンテンショナ56が設けられている。
図6は図4又は図5のVI−VI線に沿って示す図である。図6に示すように、シリンダブロック18の上面には前述したシリンダ23、シリンダ側トンネル33a及びオイルパイプ孔40が開口している。なお、符号57aはシリンダ23上部を水冷するためのシリンダ側ウォータージャケットである。シリンダ側トンネル33aは、その断面形状が前後に長く左右に短い長方形状に開口して前後左右の4つの内面61〜64により規定されている。図5にはそのうちシリンダ側隔壁部38が形成する右側内面61と共に、前側内面62及び後側内面63が示されている。自動二輪車1(図1参照)に搭載された状態において前側内面62及び後側内面63は、それぞれ側面視にて前方バンク9のシリンダ軸線A方向に沿うようにして略平行に延在しており、前上方から後下方に向けて傾斜している。前側内面62は後側内面63に対して下方に位置している。図6に戻ると、オイルパイプ孔40は、シリンダ側隔壁部38の前後中央部に円形状に開口している。シリンダ側隔壁部38には、このオイルパイプ孔40を前後に挟むように第1凹部65と第2凹部66とが形成されている。
図7は図4又は図5のVII−VII線に沿って示す図である。図7に示すように、シリンダヘッド19の下面には、前述した燃焼室25が略円形状に開口し、ヘッド側トンネル33bが略長方形状に開口し、オイルパイプ孔40が円形状に開口している。オイルパイプ孔40はヘッド側隔壁部39の前後中央部に開口している。ヘッド側隔壁部39にはこのオイルパイプ孔40を前後に挟むように第1空間67と第2空間68とが配置され、シリンダヘッド19の下面にはこれら第1及び第2空間67,68が開口している。したがって、ヘッド側隔壁部39には、第1空間67と第2空間68とオイルパイプ孔40を形成する壁面部が形成される。第1及び第2空間67,68は、ヘッド側トンネル33bと燃焼室25との間に形成され、上側及び前後左右は閉塞されている。ヘッド側隔壁部39のうち第1及び第2空間67,68の右側内面は、シリンダ軸線Aを中心とする仮想円筒面に大略的に沿って延びる。また、ヘッド側隔壁部39のうち第1及び第2空間67,68の左側内面は、ヘッド側トンネル33bの右側内面を規定する側面に平行に延びている。これによりシリンダヘッド19の強度低下を抑えて第1及び第2空間67,68を可及的に大型にすることができる。
なお、燃焼室25の頂部には点火プラグ28(図4参照)を収容する点火プラグ孔69が開口し、その周囲に2つの吸気口70と2つの排気口71とが開口している。吸気口70は、後側に左右に並んで形成され、シリンダヘッド19の後面に形成されて吸気系22の吸気マニホールド22a(図5参照)が連結される開口72と連通している。排気口71は、前側に左右に並んで形成され、シリンダヘッド19の前面に形成されて図示しない排気マニホールドが連結される開口73と連通している。
図8は図6のVIII−VIII線に沿って示す断面図であり、シリンダヘッドカバーより上側の図示を省略している。図8に示すように、シリンダヘッド19がシリンダブロック18に組み付けられると、第1空間67の下側開口が第1凹部65により塞がれ、エンジンケース5a内に大略的に閉じられた第1ブリーザ室74が形成される。同様に、第2空間68の下側開口が第2凹部66により塞がれ、エンジンケース5a内に大略的に閉じられた第2ブリーザ室75が形成される。このように第1及び第2ブリーザ室74,75はヘッド側隔壁部38とシリンダ側隔壁部39とに跨っており、オイルパイプ孔40を前後に挟むように配置されている。なお、第1空間68は第2空間69に対して前側すなわち下側に配置されている。図7に戻ると、第1空間67により形成される第1ブリーザ室74と第2空間68により形成される第2ブリーザ室75との間には、断面円形のオイルパイプ孔40を規定する略円筒状のパイプ孔形成部81が配設され、第1ブリーザ室74は、このパイプ孔形成部81の外周に沿ってC字状に形成された絞り空間82(図4も参照)を介して第2ブリーザ室75に連通している。
図5及び図7に示すように、ヘッド側隔壁部39の下面のうち、第1空間67とヘッド側トンネル33bとを仕切っている区画部76の前後端部がそれぞれ半円状に切り欠かれており、第1の切欠き部77及び第2の切欠き部78をなしている。図5に示すように、シリンダ側隔壁部38にヘッド側隔壁部39が支持されると、これら2つの切欠き部77,78の面とシリンダ側隔壁部38の上面とによって、前側チェーントンネル33を第1ブリーザ室74に連通させる2つの開口が形成されることとなる。図7に示すように、区画部76の後端部を切り欠いて形成される第1の切欠き部77の開口径D1は、第2の切欠き部78の開口径D2に対して大きい(D1>D2)。また、第1の切欠き部77は一対のチェーン延在部37aの前後方向内側に配置されている。第2の切欠き部78は前側を延在するチェーン延在部37aよりも前側に配置され、チェーントンネル33を規定する前側内面62に近接している。第1の切欠き部77により形成される開口がブリーザ入口79をなし、第2の切欠き部78により形成される開口が第1のオイル逃げ孔80をなしている。
図9はシリンダヘッド19の後面図である。図9に示すように、前方バンク9のシリンダヘッド19の後面には前述した開口72が形成され、この開口に隣接して略円筒状のボス部83が設けられている。このボス部83の内部によって第2のブリーザ室75がシリンダヘッド19の外面側に連通している。シリンダヘッド19の後面に開口するボス部83の後端開口は、第2のブリーザ室75をエンジンケース5aの外部に連通させるブリーザ出口84をなしている。また、シリンダヘッド19の後面からは、このボス部83を取り囲む略台形状のリブ85が突出している。シリンダヘッド19の後面には、このリブ85の内側領域の下端部に円形状の小孔が形成されており、この小孔が第2のオイル逃げ孔86をなしている。この第2のオイル逃げ孔86を介して第2ブリーザ室75がシリンダヘッド19の外部と連通している。
このようなブリーザ室74,75は、ブリーザ入口79を介して第1ブリーザ室74内に流入したガスを気液分離して液体成分を除いて第2ブリーザ室75からブリーザ出口84を介して外方空間に流出させる構造に形成されている。具体的には、詳細図示を省略するが、ブリーザ室74はブリーザ入口79から勢いよく流入したガスが衝突する衝突壁を有し、ブリーザ出口84付近でのガスの流速が小さくなるように形成される。例えばブリーザ室74,75は、ブリーザ入口79からブリーザ出口84までの間に迷路形状等が形成され、流路抵抗が高く設定されたり、例えばブリーザ入口79を絞られた形状に形成してその断面積をブリーザ室の断面積に比べて小さくすることによってブリーザ入口79から流入するガスの流入量に対して十分大きな容積を有するように設定されたりする。
また、本実施形態においては、ブリーザ入口79からブリーザ出口84に向かうガスの通路に中間領域として絞り空間82が設けられている。この絞り空間82の通路断面積A3は第1ブリーザ室73の断面積A1や第2ブリーザ室74の断面積A2よりも小さくなっている。これにより、圧力変動の低減とガス流速の低減とが図られる。また、第1ブリーザ入口74は左右に指向して開口し、絞り空間82は略前後方向に延びているため、第1ブリーザ室74内に流入したガスは、略90度屈曲して絞り空間内に向かうこととなる。このようにブリーザ室内のガスの流れ方向が非直線状となっているため、絞り空間82に流入するガス流速を低下させることができる。しかも、絞り空間82は、その流路形状が湾曲しているため、気液分離の効率が向上すると共に絞り空間82内を通過するガス流速が低下する。
図8に戻ると、ブリーザ出口84にはシリンダヘッド19の外側から逆止弁87が設けられる。この逆止弁87は、ブリーザ室出口84の周囲に配置される弁座プレート88と、弁座プレート88に対して接離可能な弁体89と、弁体89を弁座プレート88に取り付けるためのニードル90とを備えている。逆止弁87は、シリンダヘッド19の外側からボス部83に設置されている。ボス部83のブリーザ室出口84の周囲には段差83aが形成されており、弁座プレート87がこの段差83a内に受容される。なお、弁座プレート87は図示しないOリングを介在させることによってシリンダヘッド19に密着させて取り付けることが好ましい。
図10は弁座プレート88の断面図である。弁座プレート88は円板状に形成され、その中心部にはニードル90(図8参照)が挿通されるニードル挿通孔88aが形成されている。このニードル挿通孔88aの周囲には複数の開口88bが形成されている。図10には弁体89を平面視で弁座プレート88に投影したときの弁体89の外形輪郭線を二点鎖線で示している。弁体89はこれら複数の開口88bを覆うようにして弁座プレート88に取り付けられ、弁体89が弁座プレート88に着座して接触しているときには弁体89により開口88bが閉塞され、弁体89が弁座プレート88から離隔しているときには開口88bが開放される。
図8に戻ると、台形状のリブ85にはブリーザカバー91が複数のボルト93を用いて結合されており、これによりリブ85とブリーザカバー91とに囲まれたブリーザ副室92が形成される。ブリーザ副室92は、弁座プレート88の開口88b(図10参照)及びブリーザ出口84を介して第2ブリーザ室75と連通している。また、ブリーザ副室92は第2のオイル逃げ孔86を介して第2ブリーザ室75と連通している。
図11は図9の矢印XI−XI方向に示す図であり、ブリーザカバー91の内面図である。図11に示すように、ブリーザカバー91の内面からは4本のリブ94が突出している。これらのリブ94は周方向に等間隔をおいて設けられ、ブリーザカバー91をリブ85に取り付けるとこのリブ94がボス部83に支持される。ブリーザ室出口84は、隣接するリブ94の間隙を介してブリーザ副室92と連通している。また、ブリーザカバー91には開口95が形成され、この開口95にはホース連結具96が固定されている。このホース連結具96にはブローバイガス還元配管97が接続される。このブローバイガス還元配管97は吸気系22(図5参照)に接続される。この場合、接続される個所は適宜変更可能であり、例えば吸気系22の最上流に位置するエアクリーナのクリーンサイドにブローバイガスが還元される。図8に戻ると、ホース連結具96は逆止弁87よりも上方に配置され、より具体的にはブリーザ副室92内における略最上位置にある。また、第2のオイル逃げ孔92は逆止弁87よりも下方に配置され、より具体的にはブリーザ副室92内における略最下位置にある。
上記エンジン5の動作について図4,図5及び図8等を参照しつつ図12に基づいて説明する。図12はエンジン動作時におけるクランク室24、前側チェーントンネル33、及び第2ブリーザ室の内圧変動を説明するグラフである。図4及び図13を併せて参照すると、ピストン26が下動するとクランク室24の内圧が大きくなり、ピストンが下死点に達したときにクランク室24の内圧は平均値に対してH1だけ大きくなる。ピストンが上動するとクランク室の内圧が低下し、ピストン26が上死点に達したときにクランク室24の内圧は平均値に対してH1だけ小さくなる。このクランク室の内圧変動はピストン26が1往復するごと、すなわちクランクシャフトが1回転するたびに繰り返して生じるようになっている。
クランク室24の内圧が大きくなると、クランク室内のガスが貫通孔15d及び発電機収容室51を介し、前側チェーントンネル33内に流れていく。前側チェーントンネル33の内圧変動の周期T2はクランク室24の内圧変動の周期T1とほぼ等しく、圧力伝播に要する時間Δt2の分だけチェーントンネル33の内圧変動の位相がクランク室の変動の位相に対してずれている。また、クランク室24の内圧は最も高くなったときに平均値に対してH2だけ大きくなるが、この昇圧量H2は、クランク室24における上記の昇圧量H1よりも小さく、言い換えるとチェーントンネル33内の圧力変動はクランク室24内の圧力変動に比べて小さいものとなっている。
チェーントンネル33で昇圧したガスは、ブリーザ入口79を介して第1ブリーザ室74内に流入する。第1ブリーザ室74に流入したガスは、流路断面の小さい絞り空間82を通り抜けるため、第2ブリーザ室75へ流れ込んだガスの流速が小さくなって第2ブリーザ室75の内圧は第1ブリーザ室74の内圧に比べて小さくなる。第2ブリーザ室75の内圧変動は、その周期T3がクランク室24の内圧変動の周期T1とほぼ等しいが、その位相はクランク室24の変動の位相に対して圧力伝播に要する時間Δt3の分だけずれている。また、クランク室24の内圧は最も高いときに平均値に対してH3だけ大きくなるが、この昇圧量H3は、チェーントンネル33における上記昇圧量H2よりも小さい。
第1及び第2ブリーザ室74,75内では、ガス内に含まれているオイルミストが絞り空間82の内面や第2ブリーザ室75の内面に液滴となって付着する。図8には、第1及び第2ブリーザ室74,75で液滴となった潤滑油の流れを破線で略示している。第2ブリーザ室75内で液滴となった潤滑油は第2ブリーザ室75の前下部に溜まり絞り空間82内へと流入する。そして、絞り空間82内で液滴となった潤滑油と共に絞り空間82の下面を伝って第1ブリーザ室74内へと流入する。絞り空間82の下面は前下方に傾斜しているため液滴となった潤滑油はスムーズにその傾斜方向に流下する。第1ブリーザ室74の潤滑油は、前下方へ傾斜している第1凹部66の底面を伝って流下する。前端まで流下した潤滑油は第1オイル逃げ孔80を通って前側チェーントンネル33へと排出される。図5を参照すると、第1オイル逃げ孔80は後下方へと向けて傾斜する前側内面の直上に近接して配置されている。このため、前側チェーントンネル33内へと流入した潤滑油は自重により前側内面62に落下し、その後前側内面62を伝って下方に流下する。このようにしてブリーザ室74,75内で液滴となった潤滑油が回収される。
図8及び図12を参照しつつ図13に基づいて逆止弁の動作について説明する。エンジン5が低回転運転しているときには、ピストンの往復周期が長くなるため、第2ブリーザ室75の内圧変動の周期T3も比較的長くなる。この場合、第2ブリーザ室75の内圧が上昇し、ブリーザ室の内圧から外方空間の圧力を減じた差圧が逆止弁に設定される駆動圧力値以下のときには、図13(a)に示すように逆止弁によってブリーザ出口が閉鎖され、ブリーザ室側から外方空間へとガスが流出するのを防止することができると共に、外方からブリーザ室側にガスが逆流するのを防止することができる。この差圧が駆動圧力値を超える、すなわちブリーザ室の内圧が外方空間の圧力と該駆動圧力値との和Ponを超えると、図13(b)に示すように、逆止弁87の弁体89が該圧力に基づいて移動して開口88b(図11参照)が開放される。これにより第2ブリーザ室75内のガスがボス部83の内部を通り抜けてブリーザ出口84からブリーザ副室92内へと流入する。このように第2ブリーザ室75からブリーザ副室92にガスが流れ込む過程では、流路断面積がこれら2つの室よりも小さいボス部83を通り抜けることとなる。このため、絞り空間82を通過したときと同様にして、ブリーザ副室92内のガスの流速及び圧力を低減させることができ、潤滑油を液滴として回収し易くなる。しかも、ブリーザ出口84の下流側にはブリーザカバー91のリブが配置されているため、ブリーザ出口84を通ったガスから潤滑油を回収し易い構造となっている。ブリーザ副室92内で液滴となった潤滑油は、ブリーザ副室92を規定する内面を伝って流下し、第2のオイル逃げ孔を通って第2ブリーザ室75内へと流入する。また、第2ブリーザ室75のガスがブリーザ副室92内へと流れることにより、ブリーザ副室92の内圧が上昇してブリーザ副室92内のガスは開口を通りブローバイガス還元配管97内へと流入し、吸気系22へと還元される。
これに対し、クランク室24の内圧が最大の状態から下降すると、これに伴い第2ブリーザ室75の内圧も下降する。この圧力の下降により第2ブリーザ室75内の圧力が上記圧力値の和Ponを下回ると、弁体89が第2ブリーザ室75側に近付くように移動して弁座プレート87に着座する。これにより開口88b(図11参照)が閉塞されてブリーザ出口84が閉塞される。このため、ブリーザ副室92、及びブローバイガス還元配管97内のガスがブリーザ出口84を通って第2ブリーザ室75内に逆流することはない。これにより、エンジン5の低回転運転時において、クランク室24の正圧時に一旦ブリーザ室から排出されたブローバイガスが逆流するのを防ぐことができる。
ここで、クランク室に同様の動作圧Ponで動作する逆止弁を設けた場合を想定すると(図12二点鎖線参照)、動作圧Ponを超える期間(もしくはクランク角範囲)が、上記のようにブリーザ室に設けた場合に比べて長くなる。このため逆止弁が全開となるよう動作するのに十分な時間があると共に動作圧Pon以下になってからも開弁している時間が長くなる。このため、クランク室内のガスが外方空間に流れ易く、また、外部からクランク室側にガスが逆流し易くなる。本実施形態においてはクランク室24と離れて配置されて圧力変動の振幅が小さくなっているブリーザ室に逆止弁を設けているため、逆止弁の開弁期間が短くなると共に、その開度を小さくすることができるようになるため、ブリーザ室内のガスが外方空間に流出するのを有効に防止することができるようになっている。
このように逆止弁87によりブリーザ室74,75の圧力上昇に対するガスの流出が遅れるようになり、逆止弁87は遅延機構として機能する。ブリーザ室74,75内の圧力が外方空間の圧力よりも高くなる圧力上昇時点に達してからブリーザ室74,75内のガスが外方空間へ流出を開始する流出開始時点まで時間遅れが生じる。圧力上昇時点から流出開始時点に達するまでの間にクランク室内の圧力が低下すると、ブリーザ室74,75内のガスは外方空間へ流出する前にクランク室に向けて移動することとなり、外方空間へのガスの流出を防ぐことができる。仮に流出開始時点を越えてからクランク室内の圧力が低下したとしても、圧力上昇時点を越えてからクランク室内の圧力が低下したとしても、圧力上昇時点からガスが外方空間に流出する場合に比べ、外方空間へのガスの流出を抑えることができる。
このように、本実施形態のエンジン5によれば、ブリーザ室74,75の内圧変動に伴って動作する逆止弁87がブリーザ出口84の近傍に設けられているため、クランク室24内のガスが外方空間に流出することが抑えられる。また、一旦ブリーザ出口84を通ってブリーザ室74,75から流出したガスが逆流するおそれがない。
また、ブリーザ室74,75が空間容量の大きい発電機収容室51及び前側チェーントンネル33を介してクランク室24と連通しており、ブリーザ室74,75には流路断面の小さい絞り空間82とボス部83を有している。この結果、第2ブリーザ室75内での圧力変動の緩和効果が大きくなり、潤滑油の回収効率が向上させることができる。
このエンジン5は、クルーザタイプの自動二輪車に搭載されているため1気筒当たりの排気量が大きくなっており、ピストン26の往復動に伴うクランク室24の内圧変動も大きなものとなる。このようなエンジンに対して上記のように内圧変動の緩和効果の大きいブリーザ構造を設けると特に有効となる。
また、吸気ポートおよび排気ポートが形成されるシリンダヘッドにブリーザ出口が形成される。吸気ポートおよび排気ポートのいずれかにブリーザ室から流出するガスを導く場合には、いずれかのポートとブリーザ出口とを連通する還元通路を短くすることができる。また、ブリーザ室から流出するガスを吸気ポートに導くことによって、ブリーザ室内のガスに含まれるブローバイガスを燃焼室で燃焼させることができる。これによって未燃焼のブローバイガスが外方空間に漏れることを抑えることができ、単位燃料あたりに発生可能なエンジン出力を増大させることができる。
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は上記構成に限られない。例えばチェーントンネル内に収容される伝動機構は、チェーン伝動を利用するものに限らず、ベルト及びプーリを備える形態やギヤ列やシャフトドライブ等でもよい。エンジンケースのうちのシリンダブロック及びシリンダヘッドによりブリーザ室が形成される構成を例示したが、その他シリンダブロックを用いずシリンダヘッドによってブリーザ室を形成するなど、適宜その構造を変更可能である。ブリーザ副室から吸気系にガスを流す構成を例示したが、二次空気系或いは排気系にそのガスが流れるように構成してもよい。また、ブリーザ室74,75をチェーントンネル33と燃焼室25との間に配置する構成を例示したが、その他チェーントンネル33内にブリーザ室を区画形成してもよいし、動弁室30をブリーザ室として機能させるように構成してもよい。
また、逆流防止機構及び遅延機構は、上述した構造以外の逆止弁であってもよい。例えば遅延機構として出口側の通路の流路抵抗が残余の通路の流路抵抗に比べて高くなる構造によって実現されても良い。具体例として出口側の通路が残余の通路に比べて凹凸形状、迷路形状、幅狭形状およびそれらが複数複合された通路形状などでもよい。
本発明のエンジンは、V型多気筒エンジンに限らず直列型エンジンなどにも適用可能であるが、脈動が生じやすいV型エンジン、単気筒エンジン或いは不等爆エンジンに好適に適用可能である。また、本発明のエンジンは、脈動の大きいクルーザタイプの自動二輪車に搭載されるエンジンに適用することが好ましいが、他のタイプの自動二輪車用のエンジンにも適用可能である。また、本発明のエンジンは、自動二輪車に限らず、例えばATV、ユーティリティビークル等の二輪車以外の乗物に搭載されてもよい。
本発明の実施形態に係るエンジンを搭載した自動二輪車の左側面図である。 図1に示すエンジンを左後方から見た斜視図である。 図1に示すエンジンの平面図である。 図1の矢印IV−IV方向に沿って示すエンジンの断面図である。 図3の矢印V−V方向に沿って示すエンジンの断面図である。 図4及び図5の矢印VI−VI方向に沿って示す図である。 図4及び図5の矢印VII−VII方向に沿って示す図である。 図6の矢印VIII−VIII方向に沿って示す図である。 前方バンクのシリンダヘッドの後面図である。 図8に示す逆止弁の着座プレートの断面図である。 図8に示す矢印XI−XI方向に沿って示す図である。 エンジンケース内の圧力変動を説明するグラフである。 逆止弁の動作説明図である。
符号の説明
1 自動二輪車
5 エンジン
5a エンジンケース
8 クランクケース
9 前方バンク
10 後方バンク
11 クランクシャフト
22 吸気系
23 シリンダ
24 クランク室
25 燃焼室
26 ピストン
33 前側チェーントンネル(伝動室)
34 伝動機構
74 第1ブリーザ室
75 第2ブリーザ室
79 ブリーザ室入口
80 第1のオイル逃げ孔
82 絞り空間(絞り部)
83 ボス部
84 ブリーザ室出口
87 逆止弁
91 ブリーザカバー
92 ブリーザ副室
94 リブ

Claims (6)

  1. シリンダを有するエンジンケースを備え、該エンジンケースには、
    前記シリンダと連なりクランクシャフトが収容されるクランク室と、
    前記クランクシャフトの回転に応じて燃焼室を開閉させる動弁機構が収容される動弁室と、
    前記クランクシャフトの回転を前記動弁機構に伝達する伝動機構の少なくとも一部が収容される伝動室と、
    前記伝動室に開放するブリー入口を介して前記クランク室と連通し、ブリーザ出口を介してエンジンケース外となる外方空間と連通するブリーザ室とが形成され、
    前記ブリーザ室には、該ブリーザ室内の圧力上昇に対して、該ブリーザ室内から前記外方空間へのガスの流出を遅らせる遅延機構、又は、前記外方空間から該ブリーザ室内へのガスの流入を防ぎ該ブリーザ室内から前記外方空間へのガスの流出を抑制する逆流防止機構が設けられ、
    前記エンジンケースは、前記クランク室を有するクランクケースと、前記シリンダを有して前記クランクケースに結合されるシリンダブロックと、前記シリンダブロックに前記クランクケースと反対側に結合されて前記動弁室及び前記燃焼室を有するシリンダヘッドとを備え、前記伝動室は前記シリンダブロック及び前記シリンダヘッドを貫いており、
    前記シリンダヘッドが前記伝動室と前記燃料室とを区画するヘッド側隔壁部を有し、前記ブリーザ室の少なくとも一部前記伝動室と前記燃焼室との間に配置されて前記ヘッド側隔壁部に形成され、前記ブリーザ入口が前記ヘッド側隔壁部に設けられ、前記シリンダブロックでは前記クランク室のガスは前記伝動室を通過して前記シリンダヘッド内の前記ブリーザ入口に導かれ、前記遅延機構又は前記逆流防止機構が前記シリンダヘッドに形成された前記ブリーザ出口に設けられていることを特徴とするエンジン。
  2. 前記シリンダブロックが、前記伝動室と前記シリンダとを区画し、前記ヘッド側隔壁部の下面を支持する上面を有したシリンダ側隔壁部を有し、
    前記シリンダヘッドが、前記ヘッド側隔壁部に形成されて前記下面に開口する空間を有し、前記シリンダブロックが、前記シリンダ側隔壁部の前記上面に開口する凹部を有し、前記ブリーザ室及び前記ブリーザ入口が、前記空間の開口が前記凹部で塞がれることによって形成されることを特徴とする請求項に記載のエンジン。
  3. 前記ブリーザ室は、前記ブリーザ入口と前記ブリーザ出口との間に形成された絞り部を有し、
    前記ヘッド側隔壁部には、前記動弁機構のカムシャフトにオイルを送るためのオイルパイプ孔が設けられ、
    前記ブリーザ室が、前記オイルパイプ孔を挟むように配置された第1ブリーザ室と第2ブリーザ室とを有し、前記絞り部が、前記オイルパイプ孔の外周に沿って形成され、前記第1ブリーザ室を前記第2ブリーザ室に連通させることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン。
  4. 前記ブリーザ室が第1のオイル戻し孔を介して伝動室と連通され、該エンジンがエンジン搭載対象物に搭載された状態で前記第1のオイル戻し孔が、該伝動室を区画する壁面のうち、前記ブリーザ入口に対して下方に位置して形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のエンジン。
  5. 前記エンジンケースの外面に吸気ポートが開口しており、該吸気ポートの開口付近に前記ブリーザ室出口が形成され、該ブリーザ室出口と該吸気ポートとを連通する還元用通路が形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のエンジン。
  6. 前記エンジンケースに前記ブリーザ出口を覆ってブリーザカバーが設けられ、前記エンジンケースと前記ブリーザカバーとにより、前記ブリーザ出口を介してブリーザ室と連通するブリーザ副室が形成され、
    該ブリーザ副室にはエンジンケース外の外方空間に連通する開口と、第2のオイル逃げ孔が形成されており、該エンジンがエンジン対象物に搭載された状態で前記第2のオイル逃げ孔が前記ブリーザ出口に対して下方に配置されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のエンジン。
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