JP5214653B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、各種ディスプレイに使用される光学フィルムの製造方法に係り、特に、走行する長尺状のフィルム基材に溶媒を含む塗布液を塗布し、溶媒を乾燥し、紫外線硬化する塗布層を、乾燥風による乾燥ムラ及び紫外線硬化による収縮シワのないように乾燥する光学フィルムの製造方法に関する。
通常、有機溶剤を含む塗布液を連続走行する支持体上に塗布して形成した塗布膜を乾燥する場合、乾燥風を給排気して乾燥を促進させている。しかし、給排気される乾燥風の乱れが塗布面に直接当たることにより塗布面を流動させるため、乾燥後の塗布面に乾燥ムラ(たとえば、膜厚ムラに起因するスジ故障)が発生するという問題がある。
特に、液晶表示装置等に使用される光学フィルム(例えば、反射防止フィルム、防眩性フィルム等)の塗布の乾燥においては、乾燥ムラが光学性能上致命的な欠陥となる場合がある。
このような乾燥ムラを抑制する対策として、特許文献1では、塗布膜粘度が20cp以下のときに、風速のばらつきが±30%以下、幅方向の塗布膜温度のばらつきが±15%以下になるように乾燥することが開示されている。そして、特許文献2では、塗布膜における溶媒量の重量濃度が25〜45%のときに、乾燥速度を0.2g/m2 ・s以下にし、乾燥風速を0.1m/s〜0.5m/s、乾燥温度を25℃〜120℃にして乾燥させることが開示されている。また、特許文献3では、乾燥進行中の塗布膜中央部位における溶剤の初期含有量に対する含有量をy(質量%)、そのyに達するまでに要した時間をx(s)としたとき、yが10以上となる範囲において、yをxで積分した値Sと塗布幅d(m)との積が170以下であるように乾燥することが開示されている。さらに、特許文献4では、溶媒含有量によって乾燥速度を変化させる方法が、特許文献5では、乾燥初期を無風で乾燥する方法が、特許文献6では、ある溶媒含有量での乾燥速度を規定する方法が、特許文献7では、乾燥前半では温度を10〜40℃で風速を0.5m/s以下にし、乾燥後半で温度をある範囲に上げる方法が開示されている。
特開2003−126768号公報 特開2006−331561号公報 特開2009−68730号公報 特開2001−286817号公報 特開2005−81256号公報 特開2006−334561号公報 特開2008−209927号公報
しかしながら、特許文献1〜7や従来の乾燥する方法では、乾燥した塗布膜の厚みが10μm以下の薄膜や、粘度が300cp以上であるような塗布膜に限られていた。そのため、乾燥した塗布膜の厚みが10μm以上で粘度が300cp以下の場合では、乾燥工程で風速1.5m/sec以上の乾燥風を当て続けると風圧によって塗布膜が動かされて膜厚ムラが発生するため、風圧による膜厚ムラの発生しない1.5m/sec未満の乾燥風を当てていることが通常行われていた。
ところが、塗布膜が厚い場合、乾燥風が1.5m/sec未満のような弱い風速では、最終的に塗布膜内部に残留する溶媒が多く、紫外線硬化時に紫外線照射熱で残留する溶媒の蒸発が一気に起こることによる急激な塗布膜収縮のため塗布膜にシワが発生してしまうという問題が起きることが分かった。そこで、塗膜中の残留溶媒を充分減らすために、フィルム搬送速度を遅くして乾燥時間を延ばしてみたが、生産性を阻害しない程度にの搬送速度ダウンでは最終的に残留する溶媒量を充分減らすことができず、紫外線硬化工程で起きる残留溶媒起因のシワを解消できなかった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、塗布膜の膜厚ムラと収縮によるシワがないように製造することができる光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するために、フィルム基材上に塗布液を塗設する塗布工程と、塗設した塗布液層の溶媒を乾燥させる乾燥工程と、溶媒を乾燥した塗布液層に紫外線を照射し硬化する硬化工程と、を有し、前記塗布液は、前記乾燥工程の最高温度下での粘度が300cp以下を示す溶質を含有し、該溶質が全固形分における重量割合の20%以上であって、前記乾燥工程後の膜厚が10μm以上となるよう塗設され、前記乾燥工程では、塗布膜粘度が50cp以上となった後に、前記溶質が粘度300cp以下を示す温度下で、風速1.5m/sec以上2.5m/sec以下で合計時間にして15sec以下の間乾燥風を当て、その他の間は風速1.5m/sec未満の乾燥風を当てることを特徴とする。
紫外線硬化型の塗布液であって、乾燥工程の最高温度下での粘度が300cp以下を示す溶質を含有し、その溶質が全固形分における重量割合の20%以上であって、乾燥工程後の膜厚が10μm以上となるよう塗設された塗布液を、塗布膜粘度が50cp以上となった後に、前記溶質が粘度300cp以下を示す温度下で、風速1.5m/sec以上2.5m/sec以下で合計時間にして15sec以下の間乾燥風を当て、その他の間は風速1.5m/sec未満の乾燥風を当てることで、紫外線での硬化工程までに塗布液層に残留する溶媒は殆んどなくなるので、紫外線硬化時の紫外線照射熱で溶媒の蒸発が一気に起こることによる急激な塗布膜収縮のための塗布膜のシワが発現するのを防ぐことができる。
また、乾燥工程で塗布膜粘度が50cp以上となった後に、全固形分のうち20重量%以上の溶質が粘度300cp以下を示す温度下で、風速1.5m/sec以上2.5m/sec以下の乾燥風を当てているが、合計時間が15sec以下であるので、塗布膜には膜厚ムラが発現しない。
したがって、本発明によれば、塗布膜の膜厚ムラと収縮によるシワとが発現しない光学フィルムを提供することができる。
なお、風速1.5m/sec以上2.5m/sec以下の乾燥風を当てる時間は、15sec以下であって15secに近いほうが好ましいが、具体的には10secより長ければ、塗布液層に残留する溶媒は殆んどなくなり、収縮のための塗布膜のシワが発現するのを防ぐことができる。
そして、前記風速1.5m/sec以上2.5m/sec以下の乾燥風は、連続又は複数回に分けて当てることが好ましい。
風速1.5m/sec以上2.5m/sec以下の乾燥風は、合計時間が15sec以下であれば良い。連続又は複数回に分けて当てるときについて実験で確認した。
本発明において、前記塗布液が防眩性層形成用塗布液であることが好ましい。塗布液が防眩性層形成用塗布液の際に本発明は特に有効である。
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、塗布膜の膜厚ムラと収縮によるシワがないように光学フィルムを製造することができる。
光学フィルムの製造装置の一例を示す概略図である。 実施例の結果を示す表図である。
以下、添付図面に従って、本発明に係る光学フィルムの製造方法の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、光学フィルムの製造装置の一例を示す概略図である。
長尺状のフィルム基材16(既に何らかの機能層が形成されているものも含む)が、フィルムロール12から送出機14により送り出される。フィルム基材16の走行速度は、例えば、0.1〜1.5m/秒とすることができる。
フィルム基材16はガイドローラ18によってガイドされて除塵機20に送りこまれる。除塵機20は、フィルム基材16の表面に付着した塵を取り除くことができるようになっている。除塵機20の下流には、塗布手段であるエクストルージョン方式の塗布装置22が設けられており、塗布液がバックアップローラに巻き掛けられたフィルム基材16上に塗布できるようになっている。本発明において、塗布液は、次に述べる乾燥工程の最高温度下での粘度が300cp以下を示す溶質を含有し、その溶質が全固形分における重量割合の20%以上である。また、塗布層が乾燥工程後の膜厚が10μm以上となるよう塗設するものが本発明の対象である。
塗布工程22としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法等も用いることができる。塗布装置22は、クリーンルーム等の清浄な雰囲気に設置するとよい。その際、清浄度はクラス1000以下が好ましく、クラス100以下がより好ましく、クラス10以下が更に好ましい。
塗布工程22の下流には、乾燥工程24が設けられている。乾燥工程24では、形成された塗布膜の表面を乾燥風により溶媒を蒸発させ、溶媒の大部分を蒸発させて塗布層を乾燥させる。
この乾燥工程24では、塗布液を、所定温度(例えば、60℃)で溶媒を蒸発させる。例えば、溶媒の沸点に応じて、例えば、40〜120℃程度の温度で乾燥させてもよい。
そして、本発明は、乾燥工程24内において、塗布膜の粘度が50cp以上となった後に、全固形分のうち20重量%以上の溶質が粘度300cp以下を示す温度下で、風速1.5m/sec以上2.5m/sec以下で合計時間にして15sec以下の間乾燥風を当て、その他の間は風速1.5m/sec未満の乾燥風を当てるようにする。
従来は、全固形分のうち20重量%以上の溶質が粘度300cp以下を示す温度下で、乾燥工程24で風速1.5m/sec以上の乾燥風を当て続けると風圧によって塗布膜が動かされて膜厚ムラが発生するため、とりあえず膜厚ムラの発生しない1.5m/sec未満の乾燥風を当てていることが通常行われていた。ところが、乾燥風が1.5m/sec未満のような弱い風速では、最終的に塗布膜内部に残留する溶媒が多く、次に述べる硬化工程26での紫外線硬化時に紫外線照射熱で残留する溶媒の蒸発が一気に起こることによる急激な塗布膜収縮のため塗布膜にシワが発生してしまうという問題があった。
そこで、本発明では、塗布液が乾燥工程の最高温度下での粘度が300cp以下を示す溶質を含有し、その溶質が全固形分における重量割合の20%以上であって、塗布層の乾燥工程後の膜厚が10μm以上となるよう塗設するものにおいて、前記溶質が粘度300cp以下を示す温度下で、合計時間にして15sec以下の間だけ、乾燥工程24で塗布膜の粘度が50cp以上となった後に風速1.5m/sec以上2.5m/sec以下の乾燥風を当てるようにした。
これにより、紫外線での硬化工程までに塗布液層に残留する溶媒は殆んどなくなるので、紫外線硬化時の紫外線照射熱で溶媒の蒸発が一気に起こることによる急激な塗布膜収縮のための塗布膜のシワが発現するのを防ぐことができる。
また、乾燥工程で塗布膜粘度が50cp以上となった後に風速1.5m/sec以上2.5m/sec以下の乾燥風を当てているが、合計時間が15sec以下であるので、塗布膜には膜厚ムラが発現しない。
したがって、本発明によれば、塗布膜の膜厚ムラと収縮によるシワがないように光学フィルムを製造することができる。
なお、全固形分のうち20重量%以上の溶質が粘度300cp以下を示す温度下で、風速1.5m/sec以上2.5m/sec以下の乾燥風を当てる時間は、15sec以下であって15secに近いほうが好ましいが、具体的には10secより長ければ、塗布液層に残留する溶媒は殆んどなくなり、収縮のための塗布膜のシワが発現するのを防ぐことができる。
なお、乾燥風には整流した風もしくは均一な風を用いても良いし、もしくは蒸発した溶媒を塗布膜面に対向して設置された冷却凝縮板により凝縮させ取り除いても良い。また、本発明において、乾燥風は、塗布膜面に対し垂直方向に当てるだけではなく、塗布膜面に対し平行方向に風を吹かせたものであっても良い。
乾燥工程24に用いる乾燥装置としては、特に限定はないが、熱風乾燥装置(例えば、特開2001−314799に記載の乾燥装置等)等が使用できる。
乾燥工程の下流には、塗布層の硬化工程26として、活性エネルギー線(紫外線や電子線など)により、塗布層を硬化又は架橋させる。硬化方法としては、硬化性化合物の種類に応じて選択できるが、紫外線照射装置28が使用される。この紫外線照射により、所望の硬化、架橋を形成できるようになっている。
紫外線照射は、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の各種の市販の紫外線照射ランプを用いて実施することができる。なお、紫外線照射を実施する際、架橋反応、又は、重合反応を酸素濃度を低下させた雰囲気下で行うことも好ましい。この際、酸素濃度は10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度や耐薬品性に優れた硬化層を形成することができる。より好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が1体積%以下、最も好ましくは0.1体積%以下である。
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
また、活性放射線で硬化する際、放射される塗膜の温度を制御することも好ましい。塗膜の放射線照射時の温度を制御する方法としては、活性放射線を照射する室内の雰囲気温度を制御する方法、照射する側と反対側にロールを設置し、そのロール温度により制御する方法等がある。
フィルム基材16上に逐次塗布を行い2層以上の塗布層を形成させる場合には、これらを連続で行う(巻き取らず、塗布、乾燥工程を繰り返し、最終的に巻き取る)ことが生産上は好ましい。
以上説明したように、本発明に係る光学フィルムの製造方法を採用することにより、塗布膜の膜厚ムラと収縮によるシワがない光学フィルムを製造することができる。
以下、本発明に係る塗布液等について説明する。
本発明に係る塗布液は、溶質と溶媒とからなる。溶質としては、乾燥工程の最高温度下での粘度が300cp以下を示す溶質を含有し、その溶質が全固形分における重量割合の20%以上である。本発明に係る溶質としては、樹脂材料として紫外線硬化性化合物が必要である。
紫外線硬化性化合物としては、活性エネルギー線(紫外線)により反応する官能基を有する化合物であり、活性エネルギー線により架橋して樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能な種々の紫外線硬化性化合物が使用できる。
紫外線硬化性化合物としては、活性光線(紫外線)により硬化可能な紫外線硬化性化合物(紫外線硬化性モノマー、オリゴマー、プレポリマーなどの紫外線硬化性化合物など)などが例示できる。なお、紫外線硬化性モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい紫外線硬化性樹脂などの紫外線硬化性化合物を、単に「紫外線硬化性樹脂」という場合がある。紫外線硬化性化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
紫外線硬化性化合物は、通常、紫外線硬化性基、例えば、重合性基(ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基など)や感光性基(シンナモイル基など)を有しており、特に重合性基を有する紫外線硬化性化合物(例えば、単量体、オリゴマー(又は樹脂、特に低分子量樹脂))が好ましい。
重合性基を有する紫外線硬化性化合物のうち、単量体としては、例えば、単官能性単量体[(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、例えば、アルキル(メタ)アクリレート(メチル(メタ)アクリレートなどのC1−6アルキル(メタ)アクリレートなど)、シクロアルキル(メタ)アクリレート、橋架環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなど)、グリシジル(メタ)アクリレート;酢酸ビニルなどのビニルエステル、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体など]、少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する多官能性単量体[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの3〜6程度の重合性不飽和結合を有する多官能性単量体]が例示できる。
紫外線硬化性化合物は光重合開始剤と組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類等を使用できる。光重合開始剤の含有量は、硬化性化合物に対して0.1〜20重量部程度とすることができる。
使用される溶媒としては、用いるポリマー、硬化性化合物等の種類及び溶解性に応じて選択でき、混合溶媒の場合、少なくとも1種類は固形分(複数のポリマー及び硬化性化合物、反応開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
また、フィルム基材の種類に応じて、フィルム基材を溶解や侵食、又は膨潤させない溶媒を選択してもよい。例えば、フィルム基材としてトリアセチルセルロースフィルムを用いる場合、塗布液の溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、トルエン等を好ましく使用できる。
また、溶質として、充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の無機化合物、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、界面活性剤等も使用することができる。
なお、防眩性フィルムの塗布膜形成用液は、溶媒、粒子、樹脂材料、紫外硬化性化合物、光重合開始剤を調整することで作製される。
使用できる粒子としては特に制限はないが、シリカ粒子、ジルコニア粒子が特に望ましい。粒子径は1〜15μmほどが望ましい。
好ましい熱可塑性樹脂としては、通常、非結晶性であり、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶な樹脂が使用される。特に、成形性又は製膜性、透明性や耐候性の高い樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類など)などが好ましい。
なお、使用できる紫外硬化性化合物と光重合開始剤と溶媒は、上記と同様である。
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
以下に示す塗布液を調整し、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(フジタック、富士フイルム(株)製)上に初期膜厚(Wet膜厚)が35μmになるように、エクストルージョンダイを用いて塗布を行った。
・UV硬化性モノマー 10質量部
・UV硬化性ポリマー 30質量部
・粒径8μmシリカ粒子 10質量部
・メチルイソブチルケトン 35質量部
・メチルエチルケトン 15質量部
なお、このUV硬化性モノマーの60℃における粘度は300cpである。ここで、粘度は、UV硬化性モノマーを60℃で保温した状態でSV型(音叉振動式)粘度計により測定したものである。
(実施例1)
塗布後の乾燥工程において、まず塗布後最初の15秒間は風速0.3m/s風温28℃の乾燥風を当て、次の10秒間は風速1.0m/s風温37℃の乾燥風を当てた。この時点での塗布膜粘度は50〜60cpになっている。そして、乾燥工程最後の30秒間のうち、はじめ15sは風速1.5m/s風温60℃の乾燥風を、次の15sは風速1.3m/s風温60℃の乾燥風を当てた。
その後、UV硬化を行い得られた膜(膜厚11μm)に対し、乾燥ムラとUV照射によるシワがあるかないかを目視で評価した。評価基準は以下の通り。
○:乾燥ムラかUV照射によるシワがまったくない。
×:乾燥ムラかUV照射によるシワがあり、製品として成り立たない。
(実施例2)
実施例1において、最後の30秒間のうち、はじめ15s間は風速2.5m/s風温60℃の乾燥風を、次の15s間は風速1.3m/s風温60℃の乾燥風を当てた。
(比較例1)
実施例1において、最後の30秒間はすべて、風速1.3m/s風温60℃の乾燥風を当てた。
(比較例2)
実施例1において、最後の30秒間のうち、はじめ15s間は風速2.7m/s風温60℃の乾燥風を、次の15s間は風速1.3m/s風温60℃の乾燥風を当てた。
(比較例3)
実施例1において、最後の30秒間のうち、はじめ17.5s間は風速1.5m/s風温60℃の乾燥風を、次の15s間は風速1.3m/s風温60℃の乾燥風を当てた。
(実施例3)
実施例1において、メチルイソブチルケトンの代わりにシクロヘキサノンを、チルエチルケトンの代わりにトルエンを用いた。
(実施例4)
実施例2において、メチルイソブチルケトンの代わりにシクロヘキサノンを、チルエチルケトンの代わりにトルエンを用いた。
(比較例4)
比較例1において、メチルイソブチルケトンの代わりにシクロヘキサノンを、チルエチルケトンの代わりにトルエンを用いた。
(比較例5)
比較例2において、メチルイソブチルケトンの代わりにシクロヘキサノンを、チルエチルケトンの代わりにトルエンを用いた。
(比較例6)
比較例3において、メチルイソブチルケトンの代わりにシクロヘキサノンを、チルエチルケトンの代わりにトルエンを用いた。
(実施例5)
実施例1において、UV硬化性モノマーを、60℃における粘度が140cpであるものを用いた。
(実施例6)
実施例2において、UV硬化性モノマーを、60℃における粘度が140cpであるものを用いた。
(比較例7)
比較例1において、UV硬化性モノマーを、60℃における粘度が140cpであるものを用いた。
(比較例8)
比較例2において、UV硬化性モノマーを、60℃における粘度が140cpであるものを用いた。
(比較例9)
比較例3において、UV硬化性モノマーを、60℃における粘度が140cpであるものを用いた。
(実施例7)
実施例1において、最後の30秒間のうち、はじめ10sは風速2.5m/s風温60℃の乾燥風を、次の15sは風速1.3m/s風温60℃の乾燥風を、さらに次の5sは風速2.5m/s風温60℃の乾燥風を当てた。
(比較例10)
実施例7において、最後の30秒間のうち、はじめ10sは風速2.7m/s風温60℃の乾燥風を、次の15sは風速1.3m/s風温60℃の乾燥風を、さらに次の5sは風速2.5m/s風温60℃の乾燥風を当てた。
(比較例11)
実施例7において、最後の30秒間のうち、はじめ10sは風速2.5m/s風温60℃の乾燥風を、次の12sは風速1.3m/s風温60℃の乾燥風を、さらに次の8sは風速2.5m/s風温60℃の乾燥風を当てた。
(比較例12)
実施例7において、最後の30秒間のうち、はじめ8sは風速2.5m/s風温60℃の乾燥風を、次の20sは風速1.3m/s風温60℃の乾燥風を、さらに次の2sは風速2.5m/s風温60℃の乾燥風を当てた。
実施例1〜7及び比較例1〜12の評価結果を図2に示した。
図2の表から分かるように、塗布液が乾燥工程の最高温度下での粘度が300cp以下を示す溶質を含有し、その溶質が全固形分における重量割合の20%以上であって、塗布層の乾燥工程後の膜厚が10μm以上となるよう塗設するものにおいて、合計時間にして15sec以下の間だけ、前記溶質が粘度300cp以下を示す温度下で、乾燥工程で塗布膜の粘度が50cp以上となった後に風速1.5m/sec以上2.5m/sec以下の乾燥風を当てるようにすることで、塗布膜の膜厚ムラと収縮によるシワがないように光学フィルムを製造することができる。
10…光学フィルムの製造装置、16…フィルム基材、22…塗布装置(塗布工程)、24…乾燥工程、26…硬化工程

Claims (4)

  1. フィルム基材上に塗布液を塗設する塗布工程と、塗設した塗布液層の溶媒を乾燥させる乾燥工程と、溶媒を乾燥した塗布液層に紫外線を照射し硬化する硬化工程と、を有し、
    前記塗布液は、前記乾燥工程の最高温度下での粘度が300cp以下を示す溶質を含有し、該溶質が全固形分における重量割合の20%以上であって、前記乾燥工程後の膜厚が10μm以上となるよう塗設され、
    前記乾燥工程では、塗布膜粘度が50cp以上となった後に、前記溶質が粘度300cp以下を示す温度下で、風速1.5m/sec以上2.5m/sec以下で合計時間にして15sec以下の間乾燥風を当て、その他の間は風速1.5m/sec未満の乾燥風を当てることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 前記合計時間は10secより長いことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記風速1.5m/sec以上2.5m/sec以下の乾燥風は、連続又は複数回に分けて当てることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記塗布液は、防眩性層形成用塗布液であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の光学フィルムの製造方法。
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