JP5067333B2 - ガスバリア性シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱層形成用塗布液、この耐熱層形成用塗布液を用いたガスバリア性シートの製造方法、この製造方法で得られるガスバリア性シート、及びこのガスバリア性シートを用いた製品に関する。
食品、医薬品等の包装材料や有機ELディスプレイの封止フィルムとして用いられるガスバリア性シートにおいては、品質を劣化させる要因である酸素・水蒸気の影響を防ぐために、プラスチックフィルム基材上にガスバリア層が形成されている。また、ガスバリア層と基材との間にポリマー層を挿入することが行われる。
例えば、特許文献1では、substrate(基材)105、scratch resistant layer(スクラッチ防止層)110、polymer smoothing layer(平坦化層)115、及びfirst barrier stack(バリア積層)120の層構成を有するbarrier assemblyが記載されている。そして、polymer smoothing layerには、acrylate−containing polymerを用いる旨が記載されている。
また、特許文献2では、プラスチック樹脂基材上に、アクリレートとメタクリレートの混合物からなる電子線もしくは紫外線硬化性モノマー及び/又はオリゴマーが重合したポリマー層、および無機薄膜層を積層した透明ガスバリア材が記載されている。そして、同文献では、より高度なガスバリア性や視覚的欠陥がないことが要求される場合、ポリマー層の形成を真空プロセスで行うことが望ましい旨が記載されている。実際に、実施例においては有機蒸着が用いられている。
さらに、特許文献3には、透明なプラスチック樹脂基材の両面に、電子線または紫外線重合性モノマーおよび/もしくはオリゴマーを重合したポリマーからなるポリマー層、無機化合物薄膜層を交互に積層した積層体において、ポリマー層がそれぞれの面に同数積層されていることを特徴とする透明ガスバリア材が記載されている。そして、同文献では、より高度なガスバリア性や視覚的欠陥がないことが要求される場合は、ポリマー層の形成は真空中で行うのが望ましい旨が記載されている。実際に、実施例においては、混合樹脂液をPETフィルム上に蒸着した後に電子線を照射し硬化させ、ポリマー層を形成している。
米国特許第6,413,645明細書(col.3〜4、FIG.1) 特開2002−205354号公報(請求項1、第0054段落、第0088段落、第0090段落) 特開2003−89164号公報(請求項1、第0031段落、第0046段落、第0047段落)
上述のとおり、特許文献2,3では、真空での有機蒸着が採用されているが、こうした有機蒸着においては、真空中での成膜となるために、ポリマー層を形成するための混合樹脂液に溶媒を用いることができない。このため塗布液の粘度調整に制限がある上、混合樹脂液の重合が進みにくく、架橋・硬化しにくい傾向にある。その結果、ポリマー層の平坦性を保ちにくくなる、耐熱性に劣る等の膜質に課題を有するものとなっている。
一方で、大気中での通常の塗布・乾燥又は硬化によるポリマー層の成膜では、上記混合樹脂液に溶媒を加えた塗布液を用いることが可能となる。このため、この塗布液の粘度調整の自由度が大きくなり、上記重合が進みにくい、架橋・硬化しにくいという傾向を抑制することができる。そこで、こうした塗布液を用いて基材上にポリマー層を形成すればよいことになるが、本発明者が検討したところ、従来の塗布液を用いて、より生産効率を高くしコストを抑えてポリマー層を大気中で形成しようとすると、新たな課題が発生することがわかった。
すなわち、シート状の基材一枚一枚にそれぞれ塗布液を塗布してポリマー層を形成する製造方法を用いる場合には、塗布液の組成に特に留意することなく、様々な材料を用いることができる。しかしながら、より生産性・量産性を向上させ、低コスト化を図る観点から、ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出し、この基材上に塗布液を連続的に塗布してポリマー層を形成する、いわゆるロール・ツー・ロール方式の製造方法を採用する場合には、シート状の基材への塗布では問題なく使用することができる塗布液であってもロール・ツー・ロール方式の製造方法では用いることができないという課題が新たに発生するのである。具体的には、ガスバリア性シートの製造においては、ポリマー層の上にプラズマ等を用いてガスバリア層が形成されるが、ロール・ツー・ロール方式の製造方法では、このガスバリア層形成時の熱の影響が大きくなる。このため、従来のポリマー層では耐熱性が不十分で、ガスバリア性シートの表面粗さが大きくなりやすい、ガスバリア性が不十分となりやすい、カールがしやすい等の現象が発生するのである。そこで、より耐熱性を備えたポリマー層(以下、耐熱プラズマ層という場合がある。)の開発と、こうした耐熱プラズマ層を形成するための耐熱層形成用塗布液の開発が課題となっているのである。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ロール・ツー・ロール方式の製造方法において膜質の良好な耐熱プラズマ層を形成することが可能な耐熱層形成用塗布液を提供することを目的とする。また、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ロール・ツー・ロール方式の製造方法において膜質の良好な耐熱オーバーコート層を形成することが可能な耐熱層形成用塗布液を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ロール・ツー・ロール方式の製造方法において、膜質の良好な耐熱プラズマ層を有するガスバリア性シートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ロール・ツー・ロール方式の製造方法で製造された、膜質の良好な耐熱プラズマ層を有するガスバリア性シートを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ロール・ツー・ロール方式の製造方法で製造された、膜質の良好な耐熱プラズマ層を有するガスバリア性シートを用いた製品を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討した結果、ロール・ツー・ロール方式を用いてガスバリア性シートの製造を行う場合、ガスバリア層が高速で成膜されることとなる分、基材に対する熱の影響が大きくなること、また基材が巻き出しロール及び巻き取りロールのいずれからも引っ張られた状態でガスバリア層等の成膜が行われること、により、ガスバリア性シートの平坦性が確保しにくく、ひいてはガスバリア性が低下しやすくなる傾向にあることがわかった。以上の知見に鑑み、本発明者が鋭意検討した結果、ロール・ツー・ロール方式でのガスバリア性シートの製造において、耐熱プラズマ層を大気中で塗布・乾燥又は硬化によって形成する場合に、耐熱プラズマ層形成に用いる耐熱層形成用塗布液の組成を制御して、ガスバリア層形成時の熱の影響等に十分耐えうる耐熱性を有する耐熱プラズマ層とすることが特に重要となることがわかった。また、本発明者が鋭意検討した結果、こうした耐熱性の高い層を形成できる耐熱層形成用塗布液を用いて、ガスバリア性シートのオーバーコート層として用いることができる、耐熱オーバーコート層も良好に形成できることを見出した。
上記課題を解決するための本発明の耐熱層形成用塗布液は、ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出し、該基材上に耐熱プラズマ層又は耐熱オーバーコート層を形成するために用いる耐熱層形成用塗布液であって、該耐熱層形成用塗布液が3官能以上のアクリレート及び溶媒を含有することを特徴とする。
この発明によれば、ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出し、この基材上に耐熱プラズマ層又は耐熱オーバーコート層を形成するために用いる耐熱層形成用塗布液が3官能以上のアクリレート及び溶媒を含有するので、耐熱プラズマ層の重合、架橋、硬化が良好に進みやすくなり、その結果、ロール・ツー・ロール方式の製造方法において膜質の良好な耐熱プラズマ層や耐熱オーバーコート層を形成することが可能な耐熱層形成用塗布液を提供することができる。
本発明の耐熱層形成用塗布液においては、前記耐熱層形成用塗布液が重量平均分子量10万以上の高分子成分を含有しないことが好ましい。
この発明によれば、耐熱層形成用塗布液が重量平均分子量10万以上の高分子成分を含有しないので、耐熱プラズマ層の重合、架橋、硬化がより良好に進みやすくなり、その結果、ロール・ツー・ロール方式での製造方法に良好に用いることができる耐熱層形成用塗布液を提供することができる。
本発明の耐熱層形成用塗布液においては、前記アクリレートが5官能以下であることが好ましい。
この発明によれば、アクリレートが5官能以下であるので、ロール・ツー・ロール方式の製造方法における耐熱プラズマ層の重合の程度が良好となって、その結果、耐熱性、耐プラズマ性をより確保しやすくなる。
本発明の耐熱層形成用塗布液においては、前記アクリレートが分子内に環構造を有することが好ましい。
この発明によれば、アクリレートが分子内に環構造を有するので、耐熱プラズマ層の膜質がより良好となって、その結果、耐熱性、耐プラズマ性をより確保しやすくなる。
上記課題を解決するための本発明のガスバリア性シートの製造方法は、基材上に耐熱プラズマ層及びガスバリア層をこの順に有するガスバリア性シートの製造方法であって、ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出し、該基材上に本発明の耐熱層形成用塗布液を用いて、耐熱プラズマ層を形成する耐熱プラズマ層形成工程と、前記耐熱プラズマ層上に、ガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、を有することを特徴とする。
この発明によれば、ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出し、この基材上に本発明の耐熱層形成用塗布液を用いて、耐熱プラズマ層を形成する耐熱プラズマ層形成工程と、この耐熱プラズマ層上に、ガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、を有するようにするので、耐熱プラズマ層の重合、架橋、硬化が良好に進みやすくなり、その結果、膜質の良好な耐熱プラズマ層を有するガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法においては、前記耐熱プラズマ層形成工程における前記耐熱プラズマ層の形成が、前記耐熱層形成用塗布液を塗布して得られた塗布層を硬化させることによって行われることが好ましい。
この発明によれば、耐熱プラズマ層形成工程における耐熱プラズマ層の形成が、耐熱層形成用塗布液を塗布して得られた塗布層を硬化させることによって行われるので、耐熱プラズマ層の工業生産が良好に行われやすくなり、その結果、耐熱プラズマ層の膜質が安定しやすくなる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法においては、前記耐熱プラズマ層形成工程における前記耐熱プラズマ層の形成が、5m/min以上のプロセススピードで走行する前記基材上に前記耐熱層形成用塗布液を塗布することによって行われることが好ましい。
この発明によれば、耐熱プラズマ層形成工程における耐熱プラズマ層の形成が、5m/min以上のプロセススピードで走行する基材上に耐熱層形成用塗布液を塗布することによって行われるので、工業的に十分に速いプロセススピードで生産を行うことが可能となり、その結果、生産性の高いガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法においては、前記ガスバリア層形成工程における前記ガスバリア層の形成が、イオンプレーティング法によって行われることが好ましい。
この発明によれば、ガスバリア層形成工程におけるガスバリア層の形成が、イオンプレーティング法によって行われるので、ガスバリア層成膜時の基材に対する熱の影響が大きくなって、その結果、膜質のよい耐熱プラズマ層を製造できる本発明のガスバリア性シートの製造方法を用いる意義が大きくなる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法においては、前記耐熱層形成用塗布液を用いて、前記ガスバリア層の上に、耐熱オーバーコート層をさらに形成する耐熱オーバーコート層形成工程を有することが好ましい。
この発明によれば、耐熱層形成用塗布液を用いて、ガスバリア層の上に、耐熱オーバーコート層をさらに形成する耐熱オーバーコート層形成工程を有するので、耐熱プラズマ層と耐熱オーバーコート層とが同組成となり、その結果、生産工程での段取りが大幅に改善され、塗布装置内でのコンタミロスを抑え歩留まり向上等の利点が発揮されやすくなる。
上記課題を解決するための本発明のガスバリア性シートは、本発明のガスバリア性シートの製造方法によって製造されることを特徴とする。
この発明によれば、ガスバリア性シートが本発明のガスバリア性シートの製造方法によって製造されるので、耐熱プラズマ層の重合、架橋、硬化が良好に進みやすくなり、その結果、ロール・ツー・ロール方式の製造方法で製造された、膜質の良好な耐熱プラズマ層を有するガスバリア性シートを提供することができる。
本発明のガスバリア性シートにおいては、前記ガスバリア性シートの表面の最大突起長(Rmax)が2nm以上、100nm以下であり、水蒸気透過率が0.1g/mday以下であることが好ましい。
この発明によれば、ガスバリア性シートの表面の最大突起長(Rmax)が2nm以上、100nm以下であり、水蒸気透過率が0.1g/mday以下であるので、ガスバリア性シートの平坦性及び水蒸気透過率が良好となり、その結果、実使用上有用なガスバリア性シートを提供することができる。
上記課題を解決するための本発明の製品は、本発明のガスバリア性シートを用いる製品であって、該製品が、ディスプレイ、照明、又は太陽電池であることを特徴とする。
この発明によれば、本発明のガスバリア性シートを用いる製品であって、この製品が、ディスプレイ、照明、又は太陽電池であるので、より高いガスバリア性が必要とされる製品に本発明のガスバリア性シートが用いられることになり、その結果、より高性能なディスプレイ、照明、及び太陽電池を提供することができる。
本発明の耐熱層形成用塗布液によれば、ロール・ツー・ロール方式の製造方法において膜質の良好な耐熱プラズマ層や耐熱オーバーコート層を形成することが可能な耐熱層形成用塗布液を提供することができる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法によれば、ロール・ツー・ロール方式の製造方法において、膜質の良好な耐熱プラズマ層を有するガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
本発明のガスバリア性シートによれば、ロール・ツー・ロール方式の製造方法で製造された、膜質の良好な耐熱プラズマ層を有するガスバリア性シートを提供することができる。
本発明の製品によれば、ロール・ツー・ロール方式の製造方法で製造された、膜質の良好な耐熱プラズマ層を有するガスバリア性シートを用いた製品を提供することができる。
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[耐熱層形成用塗布液]
本発明の耐熱層形成用塗布液は、ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出し、基材上に耐熱プラズマ層又は耐熱オーバーコート層を形成するために用いる耐熱層形成用塗布液であって、耐熱層形成用塗布液が3官能以上のアクリレート及び溶媒を含有する。これにより、耐熱プラズマ層の重合、架橋、硬化が良好に進みやすくなり、その結果、ロール・ツー・ロール方式の製造方法において膜質の良好な耐熱プラズマ層や耐熱オーバーコート層を形成することが可能な耐熱層形成用塗布液を提供することができる。なお、本明細書において、「アクリレート」という場合、特に断りのない限り、アクリレートのみならずメタクリレートを含むものとする。また、耐熱プラズマ層とは、基材とガスバリア層との間に挿入される層であり、プラズマ等を利用して形成されるガスバリア層の形成時の熱の影響等に対して所定の耐熱性・耐プラズマ性を有する層(所定の耐熱性・耐プラズマ性を有するアンカー層)である。そして、耐熱オーバーコート層とは、ガスバリア性シートのオーバーコート層として用いられる層であり、耐熱プラズマ層同様の所定の耐熱性等を有する層である。
耐熱層形成用塗布液は、ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出し、基材上に耐熱プラズマ層又は耐熱オーバーコート層を形成するために用いられる。すなわち、耐熱層形成用塗布液は、より生産性・量産性を向上させ、低コスト化を図る観点から、ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出し、この基材上に耐熱層形成用塗布液を連続的に塗布して耐熱プラズマ層や耐熱オーバーコート層を形成する、いわゆるロール・ツー・ロール方式の製造方法に用いられるものである。
本発明者が検討した結果、基材及びガスバリア層を少なくとも有するガスバリア性シートをロール・ツー・ロール方式の製造方法を用いて製造する場合に、基材上に直接ガスバリア層を設けようとすると、シート状の基材に直接ガスバリア層を形成する場合と比較して、以下の相違点があることがわかった。
第1に、ロール・ツー・ロール方式の製造方法では、巻き出しロールから基材が引き出され、走行する基材上にガスバリア層が形成されることになる。ここで、ガスバリア層は、後述するように、通常、無機材料を真空成膜することによって形成されるので、移動する基材上に一定の厚さを持つようにガスバリア層を成膜しようとすると、成膜速度を上げて(ハイレートで)無機材料を基材に堆積させることになる。その結果、無機材料が基材に衝突する際に基材に発生する熱が大きくなると推測される。特に、ロール・ツー・ロール方式では、通常、基材にはフレキシブルな樹脂材料を用いるので、基材が相対的に熱に弱く、ガスバリア層の成膜時の基材の熱劣化が大きくなる傾向となると推測される。このため、基材を熱から守るために、基材とガスバリア層との間に一定の耐熱性・耐プラズマ性等を有する耐熱プラズマ層を設けることが必要となる。
第2に、ロール・ツー・ロール方式の製造方法では、巻き出しロールから引き出された基材が引っ張られた状態で、基材上へのガスバリア層の成膜が行われる。上述のとおり、基材は通常フレキシブルな樹脂基材から構成されるので、一定の力で引っ張られた状態でガスバリア層の成膜が行われると、瞬間的に軽く延伸された基材上にガスバリア層が形成されることになると推測される。一方、ガスバリア層は、上述のとおり、通常は無機材料で構成されるので、膜質として硬くなる傾向にあり、基材ほどの柔軟性がないのが通常である。すなわち、ぴんと張った基材の上に膜質として硬いガスバリア層が成膜されることとなる。ところが、製造後は基材にかかった張力は解除されるので、今度は、基材は、微視的にせよ元の状態に戻ろう(縮もう)とすると推測される。しかしながら、基材の元に戻ろうという力に硬い膜質を有するガスバリア層が追従できないことが原因と推測されるクラックがガスバリア層に発生しやすくなり、ガスバリア性を確保しにくくなる。このため、製造時には張力がかかった基材上に基材よりも硬いガスバリア層が形成される一方で、製造後は上記張力が解除されるという、ロール・ツー・ロール方式の製造方法の特殊性に鑑み、基材とガスバリア層との間に両者の応力を緩和してガスバリア層のクラック発生を抑制するような耐熱プラズマ層を設ける必要がある。
こうした、ロール・ツー・ロール方式の製造方法の特殊性に鑑みて検討を行った結果、耐熱プラズマ層を形成するための耐熱層形成用塗布液に3官能以上のアクリレートを用いることが有効であることを見出した。シート状の基材の上にアクリレート樹脂を用いて耐熱プラズマ層を形成する場合には、アクリレートが2官能であろうが3官能であろうが、基材の熱劣化を抑制する効果やガスバリア性シートのガスバリア性に与える影響はほとんどないか又は影響は少ないもの(実使用上影響を与えるほどのものではない)と考えられていたが、ロール・ツー・ロール方式の製造方法においては、上記説明した製造方法の特殊性により、3官能以上のアクリレートでないと良好なガスバリア性シートが得られないのである。
なお、3官能以上のアクリレートをロール・ツー・ロール方式の製造方法に適用するにあたっては、従来以下の懸念があった。すなわち、3官能のアクリレートは、2官能のアクリレートよりも反応性が高いので、耐熱プラズマ層がもろくなりやすい又はガスバリア性シートがカールしやすい傾向にあると考えられていた。このため、ロールに巻き取られて一定の曲率を有する状態で長時間保存されることとなるロール・ツー・ロール方式の製造方法では、保存中に耐熱プラズマ層にクラックが入りやすくなる又はガスバリア性シートがカールしやすくなる懸念があり、生産安定性、歩留まり向上を考えると、耐熱プラズマ層は反応性を抑えた2官能のアクリレートで形成される方が好ましいと考えられていた。ところが、本発明者が検討した結果、こうした懸念点はそれほど重要ではなく、むしろ、良好なガスバリア性シートを得るためには、耐熱性や耐熱プラズマ性を向上させるために、耐熱プラズマ層に用いるアクリレートを3官能以上のものとすることが重要であることがわかった。
耐熱層形成用塗布液に用いるアクリレートは3官能以上とする。2官能以下のアクリレートでは、キメの粗い結合状態を有する耐熱プラズマ層となるためか、ロール・ツー・ロール方式の製造方法におけるガスバリア層形成時の耐熱性及び耐プラズマ性に劣る傾向となる。一方、アクリレートは、5官能以下であることが好ましい。これにより、ロール・ツー・ロール方式の製造方法における耐熱プラズマ層の重合の程度が良好となって、その結果、耐熱性、耐プラズマ性をより確保しやすくなる。すなわち、6官能以上のアクリレートを用いた場合には、官能数が多くなる分、反応しない結合末端が多くなる傾向となるためか、ロール・ツー・ロール方式の製造方法におけるガスバリア層形成時の耐熱性及び耐プラズマ性に劣る場合がある。
3官能以上のアクリレートとしては、特に制限はないが、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)(メタ)アクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、及び1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート等を挙げることができる。なお、上記において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を指す。3官能以上のアクリレートとして、上記材料を2以上併用して用いてもよい。この場合の3官能以上のアクリレートの配合割合は、本発明の要旨の範囲内において任意に設定することができる。
3官能以上のアクリレートとして、分子内に環構造を有するものを用いることも好ましい。これにより、耐熱プラズマ層の膜質がより良好となって、その結果、耐熱性、耐プラズマ性をより確保しやすくなる。分子内に環構造を有する3官能以上のアクリレートとは、いわゆる環状アクリレートのことをいうが、環状アクリレートを用いることにより、高分子の緻密性を確保しやすくなり、耐熱プラズマ層の耐熱性、耐プラズマ性をより確保しやすくなる。
分子内に環構造を有する3官能以上のアクリレートとしては、特に制限はないが、例えば、2官能であるジメチロールトリシクロデカンジアクリレートにさらに官能基を導入することによって得られる化合物を挙げることができる。こうした化合物としては、以下の構造式(1)のものが好ましく用いられる。
Figure 0005067333
(構造式(1)中、R1は、水素又は脂肪族炭化水素基を表し、R3は−CHOOC(R1)=CHを表し、nは1以上10以下の整数を表す。)
耐熱層形成用塗布液には、上記3官能以上のアクリレート以外に、1官能又は2官能のアクリレートを併用してもよい。1官能(単官能)又は2官能のアクリレートを併用することにより、耐熱プラズマ層の膜質を調整することができるので、膜質の制御の自由度を上げることができる。
1官能又は2官能のアクリレートとしては、特に制限はないが、例えば、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、シエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、及びイソシアヌル酸OE変性ジアクリレート等を挙げることができる。
耐熱層形成用塗布液は、重量平均分子量10万以上の高分子成分を含有しないことが好ましく、重量平均分子量7万以上の高分子成分を含有しないことが好ましく、重量平均分子量5万以上の高分子成分を含有しないことが好ましい。これにより、耐熱プラズマ層の重合、架橋、硬化がより良好に進みやすくなり、その結果、ロール・ツー・ロール方式での製造方法に良好に用いることができる耐熱層形成用塗布液を提供することができる。より詳しくは、耐熱層形成用塗布液に高分子成分を含有させることにより、得られる耐熱プラズマ層や耐熱オーバーコート層の柔軟性が向上する傾向となり割れにくくなるものの、高分子成分が核となって耐熱プラズマ層や耐熱オーバーコート層の表面に突起が生じやすくなり、これら層の平坦性が損なわれる場合がある。そこで、有機ELディスプレイや有機EL照明のような平坦性を必要とする用途に対しては、高分子成分を用いないことが好ましい。
耐熱層形成用塗布液には、上述のとおり、3官能以上のアクリレートが含有され、場合によっては、3官能以上のアクリレートと1官能又は2官能のアクリレートとが併用される。このため、耐熱プラズマ層及び耐熱オーバーコート層は、これらアクリレートが重合(架橋・硬化)することによって形成される。したがって、耐熱層形成用塗布液には、アクリレートの重合を良好に進めるために、重合開始剤を含有させることが好ましい。重合開始剤としては、特に制限はなく従来公知のものを適宜用いることができるが、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバガイギー製 商品名:イルガキュア184)を挙げることができる。重合開始剤の含有量は、良好な重合が行えるように適宜調整すればよいが、耐熱層形成用塗布液100重量部に対して、通常、0.1重量部以上、3重量部以下とする。この範囲とすれば、耐熱プラズマ層が着色しにくくなるとともに反応阻害を引き起こしにくくなる。
耐熱層形成用塗布液には、溶媒を含有させる。溶媒を用いることにより、大気中で通常の塗布・乾燥又は硬化による耐熱プラズマ層及び耐熱オーバーコート層の成膜を行うこととなる。これにより、耐熱層形成用塗布液の粘度調整の自由度が大きくなり、重合を進みやすくし、架橋・硬化もしやすくなる。用いる溶媒としては、特に制限はないが、有機溶媒を用いることが好ましく、例えば、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒や、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒等を挙げることができる。
耐熱層形成用塗布液中の3官能以上のアクリレートの含有量は、耐熱層形成用塗布液100重量部に対して、通常5重量部以上、好ましくは10重量部以上、また、通常70重量部以下、好ましくは60重量部以下、より好ましくは50重量部以下とする。この範囲とすれば、耐熱プラズマ層や耐熱オーバーコート層の膜質を良好としやすくなる。
3官能以上のアクリレートの固形分全体に対する含有量は、固形分全体を100重量部とすると、通常30重量部以上、好ましくは35重量部以上、また、通常80重量部以下、好ましくは70重量部以下、より好ましくは60重量部以下とする。この範囲とすれば、耐熱プラズマ層や耐熱オーバーコート層の膜質を良好としやすくなる。
3官能以上のアクリレートと、1官能又は2官能のアクリレートと併用する場合には、3官能以上のアクリレートを100重量部とした場合に、1官能又は2官能のアクリレートは、通常10重量部以上、好ましくは30重量部以上、また、通常120重量部以下、好ましくは110重量部以下とする。この範囲とすれば、耐熱プラズマ層や耐熱オーバーコート層の膜質を良好としやすくなる。
耐熱層形成用塗布液の固形分粘度は、得ようとする耐熱プラズマ層や耐熱オーバーコート層の厚さによって適宜調整すればよい。固形分粘度は、通常、1Pa・s以上、10Pa・s以下とする。
以上説明した本発明の耐熱層形成用塗布液によれば、膜質が良好で、ロール・ツー・ロール方式の製造方法に良好に適用できる耐熱プラズマ層や耐熱オーバーコート層を形成することができるようになる。
[ガスバリア性シートの製造方法]
本発明のガスバリア性シートの製造方法は、基材上に耐熱プラズマ層及びガスバリア層をこの順に有するガスバリア性シートの製造方法であって、ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出し、この基材上に上記説明した本発明の耐熱層形成用塗布液を用いて、耐熱プラズマ層を形成する耐熱プラズマ層形成工程と、この耐熱プラズマ層上に、ガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、を有する。これにより、耐熱プラズマ層の重合、架橋、硬化が良好に進みやすくなり、その結果、膜質の良好な耐熱プラズマ層を有するガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
ガスバリア性シートの製造方法は、耐熱プラズマ層形成工程と、ガスバリア層形成工程とを有する。これら各工程により、基材上に耐熱プラズマ層及びガスバリア層をこの順に有するガスバリア性シートを製造することができる。ガスバリア性シートの積層構造等によって、上記各工程以外の工程を適宜行ってもよい。こうした工程としては、例えば、後述する、ロール状に巻くための長尺の基材を準備する基材準備工程、基材洗浄工程、及び耐熱オーバーコート層形成工程を挙げることができるが、これに限られるものではない。
基材準備工程では、ロール状に巻かれた長尺の基材が準備される。こうした基材は、従来公知のものを適宜用いることができるが、ロール状に巻くためにフィルム状のものを用いるのが通常である。より具体的には、通常、基材は樹脂製のものを用いる。基材を構成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ポリノルボルネン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、環状ポリオレフィン等を挙げることができる。また、ガラスクロスに樹脂を含浸させたものを用いてもよい。基材が樹脂製である場合、好ましくは100℃以上、特に好ましくは150℃以上の耐熱性を有するものが適当である。
基材準備工程で得られるロール状に巻かれた長尺の基材は、通常、種々の性能確保のために添加剤が含有される。こうした添加剤として従来公知のものを適宜用いることができ、例えば、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、塩素捕獲剤等を挙げることができる。
基材準備工程で得られるロール状に巻かれた長尺の基材の厚さは、特に制限はなく、可とう性及び形態保持性の観点から、通常6μm以上、好ましくは12μm以上、また、通常400μm以下、好ましくは250μm以下の範囲とする。
基材準備工程で得られるロール状に巻かれた長尺の基材が、透明性が必要とされる有機ELディスプレイや有機EL照明等の発光素子等の基板として用いられる場合には、基材は無色透明であることが好ましい。より具体的には、例えば400nm〜700nmの範囲内での基材の平均光透過度が80%以上の透明性を有するように構成することが好ましい。こうした光透過度は基材の材質と厚さに影響されるので両者を考慮して構成される。
基材準備工程では、基材に樹脂製のものを用いる場合には、通常、長尺の基材の製造は、樹脂を溶融し、上記厚さ等を満たすように長尺に成型した後に、ロール状に巻き取ることによって行われる。こうした製造方法も従来公知の一般的な方法によって行えばよい。また、ロール状に巻かれた長尺の基材は適宜延伸を行ってもよい。延伸の方法も従来公知の一般的な方法を用いればよい。延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍とすることが好ましい。
基材準備工程においては、長尺の基材の表面を、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、加熱処理、薬品処理、UV照射処理、大気圧プラズマ処理、易接着化処理等により表面処理をしてもよい。こうした表面処理の具体的な方法は従来公知のものを適宜用いることができる。
基材準備工程の後に基材洗浄工程を行ってもよい。
基材洗浄工程は、耐熱プラズマ層形成工程の前に、ロール状に巻かれた長尺の基材を洗浄するものであるが、従来公知の方法で行うことができる。洗浄工程は、例えば、供給装置等を用いて、ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出して、これを有機溶媒等で洗浄した後に必要に応じて乾燥し、巻き取り装置等を用いて、再度ロール状に巻き取ることによって行えばよい。長尺の基材を引き出す(巻き出す)ための供給装置や、これを巻き取るための巻き取り装置には、従来公知のものを用いることができる。
耐熱プラズマ層形成工程においては、ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出し、この基材上に上記説明した本発明の耐熱層形成用塗布液を用いて、耐熱プラズマ層を形成する。より具体的には、ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出し、この基材上に耐熱層形成用塗布液を連続的に塗布して耐熱プラズマ層を形成する、いわゆるロール・ツー・ロール方式の製造方法を採用する。耐熱プラズマ層の成膜につき、特に制限はないが、耐熱層形成用塗布液を塗布して得られた塗布層を硬化させることによって行われることが好ましい。これにより、耐熱プラズマ層の工業生産が良好に行われやすくなり、その結果、耐熱プラズマ層の膜質が安定しやすくなる。
耐熱プラズマ層形成工程においては、通常、ロール状に巻かれた長尺の基材が供給装置等を用いてロールから引き出され、基材を走行させた状態で耐熱層形成用塗布液を塗布して塗布層を形成する。次いで、この塗布層を乾燥及び/又は硬化して耐熱プラズマ層を形成し、その後、巻き取り装置等を用いて耐熱プラズマ層が形成された基材を巻き取る。長尺の基材を引き出す(巻き出す)ための供給装置や、これを巻き取るための巻き取り装置には、従来公知のものを用いることができる。なお、耐熱層形成用塗布液の詳細についてはすでに説明したので、重複を避けるためここでの説明は省略する。
耐熱プラズマ層形成工程における耐熱層形成用塗布液の塗布は、それを均一に薄く形成できる方法であればよく特に制限はない。こうした塗布方法としては、通常、ダイコート法、スピンコート法、グラビアコート法、(キス)リバースコート法、コンマコート法、リップコート法、CAP(毛細管)コート法、ナイフコート法、及びディップコート法等が適宜使用される。これらの方法を、製造ラインやプロセススピード等に合わせて適宜採用すればよい。
耐熱プラズマ層形成工程における耐熱プラズマ層の乾燥や硬化も、従来公知の方法を適宜用いればよい。乾燥方法としては、耐熱層形成用塗布液の溶媒に低沸点溶媒のみを用いる場合には室温乾燥でもよいが、高沸点溶媒を併用する場合には加熱乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度は、溶媒の沸点を考慮して適宜制御すればよい。また、硬化方法としては、例えば、電子線又は紫外線を照射する方法を挙げることができ、用いるアクリレート等の材料に応じて適当な硬化方法を採用すればよい。
耐熱プラズマ層形成工程においては、上記説明したとおり、通常、ロール状に巻かれた長尺の基材がロールから引き出され、基材を走行させた状態で耐熱層形成用塗布液の塗布、乾燥・硬化が行われる。こうした耐熱プラズマ層の形成は、5m/min以上のプロセススピードで行われることが好ましい。すなわち、耐熱プラズマ層形成工程における耐熱プラズマ層の形成が、5m/min以上のプロセススピードで走行する基材上に耐熱層形成用塗布液を塗布することによって行われることが好ましい。これにより、工業的に十分に速いプロセススピードで生産を行うことが可能となり、その結果、生産性の高いガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。プロセススピードは、より好ましくは7m/min以上、さらに好ましくは10m/min以上とする。これにより、さらに生産性を良好に確保しやすくなる。
耐熱プラズマ層形成工程において形成される耐熱プラズマ層の厚さは、通常0.5μm以上、好ましくは0.7μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下とする。上記範囲とすれば、耐熱プラズマ層表面のみならずガスバリア層表面の平坦性が確保しやすくなり、透明性・応力等の品質も確保しやすく、コスト、生産性等経済的なメリットも大きい。
ガスバリア層形成工程では、ガスバリア層の形成が行われる。カスバリア層に用いる材料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム、酸化錫等の酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム等の窒化物;炭化珪素等の炭化物;硫化物等を挙げることができる。また、これら材料から選ばれた二種以上の複合体を用いてもよい。こうした複合体としては、例えば、2種以上の酸化物を用いる複合酸化物、2種以上の酸化物及び窒化物を用いる複合金属酸窒化物、酸素と窒素を含有する無機酸化窒化物、さらに炭素を含有してなる無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化炭化物等を挙げることができる。カスバリア層に用いる材料としては、より具体的には、無機酸化物(MO)、無機窒化物(MN)、無機炭化物(MC)、無機酸化炭化物(MO)、無機窒化炭化物(MN)、無機酸化窒化物(MO)、無機酸化窒化炭化物(MO)を挙げることができ、好ましいMは、Si、Al、Ti等の金属元素である。なかでも、MをSiとし、酸化珪素からなる膜は、透明性が高くかつガスバリア性も良好となり、一方、窒化珪素はさらに高いガスバリア性を発揮するので好ましく用いられる。特に好ましくは、酸化珪素と窒化珪素の複合体(無機酸化窒化物(MO))である。酸化珪素の含有量が多いと透明性が向上し、窒化珪素の含有量が多いとガスバリア性が向上する。また、2種以上の酸化物を用いる複合体として、例えば、MaMbO、MaMbMcO等を挙げることができる。さらに、2種以上の酸化物及び窒化物を用いる複合金属酸窒化物として、例えば、MaMbOや、MaMbMcO等を挙げることができる。ここで、Ma、Mb、及びMcは異なる金属元素を表し、例えば、Sn、Zn、Si、Al、Ti等を挙げることができる。
ガスバリア層形成工程では、ガスバリア層はロール・ツー・ロール方式で形成される。すなわち、巻き出しロールから、耐熱プラズマ層が積層された基材が引き出され、走行する耐熱プラズマ層上にガスバリア層が連続的に形成される。次いで、巻き取り装置等を用いて、基材上に、耐熱プラズマ層及びガスバリア層が少なくとも形成された積層体を巻き取っていく。
ガスバリア層形成工程におけるガスバリア層の形成は、特に制限はないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、及びプラズマCVD法等の真空成膜法を適宜用いればよい。これらの方法は、基材やガスバリア層の種類、成膜材料の種類、成膜のし易さ、工程効率等を考慮して、適宜選択すればよい。これら成膜方法のうち、ガスバリア層形成工程におけるガスバリア層の形成をイオンプレーティング法によって行うことが好ましい。これにより、ガスバリア層成膜時の走行する基材に対する熱の影響が大きくなって、その結果、膜質のよい耐熱プラズマ層を製造できる本発明のガスバリア性シートの製造方法を用いる意義が大きくなる。また、イオンプレーティング法は生産性も向上させやすく、本発明で採用するロール・ツー・ロール方式の製造方法と組み合わせる意義も大きい。
ガスバリア層形成工程において形成されるガスバリア層の厚さは、通常10nm以上、500nm以下とする。この範囲とすれば、ガスバリア性、フレキシビリティを確保しつつ、色味の調整もしやすくなり、生産性も確保しやすい。
本発明のガスバリア性シートの製造方法においては、耐熱層形成用塗布液を用いて、上記ガスバリア層の上に、耐熱オーバーコート層をさらに形成する耐熱オーバーコート層形成工程を有するようにすることが好ましい。これにより、耐熱プラズマ層と耐熱オーバーコート層とが同組成となり、その結果、生産工程での段取りが大幅に改善され、塗布装置内でのコンタミロスを抑え歩留まり向上等の利点が発揮されやすくなる。
耐熱オーバーコート層形成工程は、耐熱オーバーコート層を形成する対象となる被成膜体が、基材から、基材/耐熱プラズマ層/ガスバリア層等の層構成に変わるだけであり、その内容は、耐熱プラズマ層形成工程と同様にして行うことができる。そこで、説明の重複をさけるため、ここでの説明は省略する。
以上説明した本発明のガスバリア性シートの製造方法によれば、ロール・ツー・ロール方式の製造方法において、膜質の良好な耐熱プラズマ層を形成することが可能となる。
[ガスバリア性シート]
本発明のガスバリア性シートは、上記説明した本発明のガスバリア性シートの製造方法によって製造される。これにより、耐熱プラズマ層の重合、架橋、硬化が良好に進みやすくなり、その結果、ロール・ツー・ロール方式の製造方法で製造された、膜質の良好な耐熱プラズマ層を有するガスバリア性シートを提供することができる。
図1は、本発明のガスバリア性シートの一例を示す模式的な断面図である。ガスバリア性シート1Aは、基材2、基材2の上に設けられた耐熱プラズマ層3、耐熱プラズマ層3の上に設けられたガスバリア層4から構成されている。ガスバリア性シート1Aは、本発明のガスバリア性シートで長尺の基材上に形成された耐熱プラズマ層とガスバリア層とを、ガスバリア性シートの製品の大きさにあわせて裁断したものである。
図2は、本発明のガスバリア性シートの他の一例を示す模式的な断面図である。ガスバリア性シート1Bは、基材2、基材2の上に設けられた耐熱プラズマ層3、耐熱プラズマ層3の上に設けられたガスバリア層4、ガスバリア層4の上に設けられた耐熱オーバーコート層5から構成されている。ガスバリア性シート1Bは、本発明のガスバリア性シートで長尺の基材上に形成された耐熱プラズマ層、ガスバリア層、及び耐熱オーバーコート層を、ガスバリア性シートの製品の大きさにあわせて裁断したものである。
ガスバリア性シート1A,1Bにおける基材及び各層の詳細については、すでに説明したとおりなので、説明の重複を避けるためここでの説明は省略する。
ガスバリア性シート1A,1Bにおいては、ガスバリア性シート1A,1Bの表面(ガスバリア層4又は耐熱オーバーコート層5の表面)の最大突起長(Rmax)が、好ましくは2nm以上であり、また好ましくは100nm以下、より好ましくは90nm以下、さらに好ましくは40nm以下、さらに好まくは20nm以下、特に好ましくは15nm以下、最も好ましくは10nm以下である。ガスバリア性シート1A,1Bを、有機ELディスプレイや有機EL照明の基板フィルムに用いる場合には、平坦性が高いことが要求されるので、Rmaxを20nm以下とするのが好ましい。一方、ガスバリア性シート1A,1Bを封止フィルムとして用いる場合には、Rmaxを100nm以下とすれば良好な特性を確保することができる。また、ガスバリア性シート1A,1Bの水蒸気透過率が0.1g/mday以下であることが好ましい。これにより、ガスバリア性シート1A,1Bの平坦性及び水蒸気透過率が良好となり、その結果、実使用上有用なガスバリア性シート1A,1Bを提供することができる。
以上、ガスバリア性シート1A,1Bについて説明したが、本発明のガスバリア性シートは、上記構成に限られるものではない。具体的には、基材と耐熱プラズマ層との間や、耐熱プラズマ層とガスバリア層との間には、接着性の確保等の観点から、適宜他の層を挿入してもよい。また、基材において耐熱プラズマ層が形成されていない方の面に、ガスバリア層等他の層を適宜形成してもよい。さらに、透明導電層や補助電極層等の他の層をガスバリア層の上にさらに設けてもよい。こうした他の層としては、例えば、従来公知の、反射防止層、防汚層、防眩層、及びカラーフィルタ等を挙げることもできる。これらのうち、反射防止層、防汚層、防眩層、カラーフィルタは、光学粘着剤を介してガスバリア性シートと貼り合わせることで、所望の機能を得てもよい。このように、用いることが可能な他の層の種類やその積層に関するバリエーションは、本発明の要旨の範囲内において適宜選択することができる。
本発明のガスバリア性シートは、ディスプレイの用途、照明の用途、又は太陽電池の用途に用いられることが好ましい。これにより、より高いガスバリア性が必要とされる用途に本発明のガスバリア性シートが用いられることになり、その結果、より高性能なディスプレイ、照明、及び太陽電池を提供することができる。こうした用途としては、具体的には、ディスプレイ用フィルム基板、ディスプレイ用封止フィルム、太陽電池用フィルム基板、太陽電池用封止フィルム等を挙げることができる。その他、本発明のガスバリア性シートは、食品や医薬品等の包装材料や、タッチパネル、サーキットボード用フィルム基板等に用いることも可能である。こうした用途にガスバリア性シートを用いることにより、従来ガラスや缶を利用していたものに代替できる、軽くて割れない、曲げられるガスバリア性シートを提供することができ、特にロール・ツー・ロール方式の製造方法で良好に製造可能なガスバリア性シートを用いることができる。
[製品]
本発明の製品は、本発明のガスバリア性シートを用いる製品であって、この製品が、ディスプレイ、照明、又は太陽電池である。これにより、より高いガスバリア性が必要とされる製品に本発明のガスバリア性シートが用いられることになり、その結果、より高性能なディスプレイ、照明、及び太陽電池を提供することができる。
本発明のガスバリア性シートは、一般には、上記製品の封止フィルム又はフィルム基板として用いられる。そして、ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等を挙げることができる。また、照明としては、例えば、有機EL照明等を挙げることができる。そして、太陽電池としては、例えば、シリコン太陽電池や化合物半導体を用いた太陽電池等を挙げることができる。このように、ディスプレイ、照明、及び太陽電池は、本発明のガスバリア性シートを用いること以外は、従来公知の部材を適宜用いて形成することができる。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1]
(基材準備工程)
基材としてとして厚さ100μmの長尺のPENフィルム(帝人デュポン株式会社製:Q65F(商品名))を用いた。このPENフィルムは、フィルムの片面に易接着化処理がなされているものである(以下、易接着化処理がなされた面を易接着面、同処理がなされていない面を未処理面という。)。
(耐熱プラズマ層形成工程)
ロール状に巻かれた上記長尺のPENフィルムを、供給装置を用いて引き出し、このPENフィルムを走行させながら、その未処理面に下記組成の耐熱層形成用塗布液をダイコートにて塗布した。次いで、温度120℃で3min乾燥させた後、150mJの紫外線を照射して1μmの厚さになるように耐熱プラズマ層を硬化させて形成した。なお、PENフィルムの走行速度(プロセススピード又はライン速度)は、10m/minとした。そして、長尺のPENフィルム上に連続的に形成された耐熱プラズマ層を、巻き取り装置を用いて再度ロール状に巻き取った。
耐熱層形成用塗布液の組成
ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬株式会社製:PET−30):20重量部
イソシアヌル酸OE変性ジアクリレート(東亞合成株式会社製:M−215):20重量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバガイギー製 商品名:イルガキュア184):2重量部
トルエン:60重量部
(ガスバリア層形成工程)
この耐熱プラズマ層の上に、イオンプレーティング法によってガスバリア層を形成した。具体的には、巻取式イオンプレーティング装置を用いて、ガスバリア層を成膜した。まず、上記「耐熱プラズマ層形成工程」で得られた、ロール状に巻き取られた基材/耐熱プラズマ層の被成膜体を、供給装置を用いて引き出し、この被成膜体を走行させながら、耐熱プラズマ層上にガスバリア層が形成されるようにガスバリア層の成膜を行った。ガスバリア層の材料としてSiOSn(二酸化珪素と酸化錫の複合体)を用い、Ar:20sccmでプラズマを発生(11kW)し、真空度0.04Paにてイオンプレーティング法を行ったところ、被成膜体の走行速度(プロセススピード又はライン速度)を1m/minとしたときに、厚さ50nmのSiOSn膜(ガスバリア層)を得た。
以上の工程を経て得られたガスバリア性シートを以後の測定に供するため、適当な大きさに裁断した。
(水蒸気透過率の測定)
ガスバリア性シートの水蒸気透過率の測定は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 PERMATRAN−W 3/31)を用いて、温度37.8℃、湿度100%RHで測定した。その結果、0.04g/mdayの測定限界値以下であった(測定限界値は0.1g/mday)。
(ガスバリア性シートの表面粗さ測定)
ガスバリア性シートの表面(耐熱プラズマ層及びガスバリア層を設けた側の表面)の粗さの測定は、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)として、セイコーインスツルメンツ社製のNanopics−1000を用い、JIS B0601−1982に準拠して、20μmの範囲にて最大突起長(Rmax)を測定することにより評価を行った。その結果、ガスバリア性シートの表面の最大突起長(Rmax)は8nmであった。
(カール性評価試験)
ガスバリア性シートに対して160℃×1時間×3回の耐熱性サイクル試験を実施したところ、サンプルの外観変形(カール)は無かった。また、上記耐熱性サイクル試験後(カール性評価試験後)に再度ガスバリア性シートの水蒸気透過率の測定を行ったところ、0.04g/mdayの測定限界値以下を維持していることが確認できた。
[実施例2]
基材の裏面(易接着面)に、実施例1と同様の成膜条件で厚さ50nmのSiOSn(二酸化珪素と酸化錫の複合体)膜を設けたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。
(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率を実施例1と同様にして測定したところ、0.008g/mdayの測定限界値以下であった。
(ガスバリア性シートの表面粗さ測定)
ガスバリア性シートの表面(耐熱プラズマ層及びガスバリア層を設けた側の表面)の粗さを実施例1と同様にして測定したところ、最大突起長(Rmax)は8nmであった。
(カール性評価試験)
ガスバリア性シートのカール特性を実施例1と同様にして評価したところ、外観変形(カール)は無かった。また、上記カール性評価試験後に再度ガスバリア性シートの水蒸気透過率の測定を行ったところ、0.007g/mdayの測定限界値以下を維持していることが確認できた。
[実施例3]
実施例1で得られた基材/耐熱プラズマ層/ガスバリア層の積層体の上に、さらに実施例1と同様の条件でダイコートを用いて厚さ1μmの耐熱オーバーコート層を形成し、耐熱オーバーコート層形成工程をさらに行ったこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。
(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率を実施例1と同様にして測定したところ、0.01g/mdayの測定限界値以下であった。
(ガスバリア性シートの表面粗さ測定)
ガスバリア性シートの表面(耐熱オーバーコート層を設けた側の表面)の粗さを実施例1と同様にして測定したところ、最大突起長(Rmax)は6nmであった。
(カール性評価試験)
ガスバリア性シートのカール特性を実施例1と同様にして評価したところ、外観変形(カール)は無かった。また、上記カール性評価試験後に再度ガスバリア性シートの水蒸気透過率の測定を行ったところ、0.05g/mdayの測定限界値以下を維持していることが確認できた。
[実施例4]
耐熱層形成用塗布液を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。
耐熱層形成用塗布液の組成
ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬株式会社製:PET−30):20重量部
イソシアヌル酸OE変性ジアクリレート(東亞合成株式会社製:M−215):20重量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバガイギー製 商品名:イルガキュア184):2重量部
重量平均分子量10万のアクリレートポリマー:10重量部
トルエン:48重量部
(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率を実施例1と同様にして測定したところ、0.05g/mdayの測定限界値以下であった。
(ガスバリア性シートの表面粗さ測定)
ガスバリア性シートの表面(耐熱プラズマ層及びガスバリア層を設けた側の表面)の粗さを実施例1と同様にして測定したところ、最大突起長(Rmax)は85nmであった。
(カール性評価試験)
ガスバリア性シートのカール特性を実施例1と同様にして評価したところ、外観変形(カール)は無かった。また、上記カール性評価試験後に再度ガスバリア性シートの水蒸気透過率の測定を行ったところ、0.05g/mdayの測定限界値以下を維持していることが確認できた。
[比較例1]
耐熱性ポリイミド樹脂(大日精化工業株式会社製)を用いて耐熱プラズマ層を形成し、耐熱プラズマ層の形成方法を適宜調整・変更したこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。
(ガスバリア性シートの表面粗さ測定)
ガスバリア性シートの表面(耐熱プラズマ層及びガスバリア層を設けた側の表面)の粗さを実施例1と同様にして測定したところ、最大突起長(Rmax)は215nmであった。
[比較例2]
耐熱層形成用塗布液中の3官能のアクリレートたるペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬株式会社製:PET−30)を除き、イソシアヌル酸OE変性ジアクリレート(東亞合成株式会社製:M−215)を40重量部としたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。
(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率を実施例1と同様にして測定したところ、0.6g/mdayであった。
(ガスバリア性シートの表面粗さ測定)
ガスバリア性シートの表面(耐熱プラズマ層及びガスバリア層を設けた側の表面)の粗さを実施例1と同様にして測定したところ、最大突起長(Rmax)は、46nmであった。
(カール性評価試験)
ガスバリア性シートのカール特性を実施例1と同様にして評価したところ、ガスバリア性シートは変形(カール)し、実質的に使用不可能であった。また、上記カール性評価試験後に再度ガスバリア性シートの水蒸気透過率の測定を行ったところ、1.0g/mdayまでガスバリア性が劣化していることが観察された。
[比較例3]
カルドポリマー(新日鐵化学化学株式会社製 V259EHシリーズ)を用いたこと、PENフィルムの走行速度(プロセススピード又はライン速度)を2m/minとしたこと、温度120℃で15min乾燥させて1μmの厚さになるように耐熱プラズマ層を形成したこと、以外は実施例1と同様にしてガスバリア性シートの製造を試みた。ところが、カルドポリマーの硬化反応を促進させるため、160℃オーブンに1時間入れたところ、ブロッキングを起こし、使用不可能となった。
そこで、硬化促進反応を行わないこと以外は上記条件を用い、その他は実施例1と同様にしてガスバリア性シートの製造を試みた。この場合においてもガスバリア層の形成の際に、耐熱プラズマ層からの脱ガス量が多く真空度が悪化し、プラズマが不安定となったが、成膜を続けて厚さ45nmの酸窒化珪素膜を得た。
(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率を実施例1と同様にして測定したところ、1.5g/mdayであった。
(ガスバリア性シートの表面粗さ測定)
ガスバリア性シートの表面(耐熱プラズマ層及びガスバリア層を設けた側の表面)の粗さを実施例1と同様にして測定したところ、最大突起長(Rmax)は、134nmであった。
[比較例4]
基材を長尺のPENフィルムからシート状(毎葉)のPENフィルムに変更し、ロール・ツー・ロール方式の製造方法を採用しなかったこと、以外は実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。
(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率を実施例1と同様にして測定したところ、0.02g/mdayであった(測定限界値以下)。
(ガスバリア性シートの表面粗さ測定)
ガスバリア性シートの表面(耐熱プラズマ層及びガスバリア層を設けた側の表面)の粗さを実施例1と同様にして測定したところ、最大突起長(Rmax)は、7nmであった。
(カール性評価試験)
ガスバリア性シートのカール特性を実施例1と同様にして評価したところ、外観変形(カール)は無かった。また、上記カール性評価試験後に再度ガスバリア性シートの水蒸気透過率の測定を行ったところ、0.06g/mdayの測定限界値以下を維持していることが確認できた。
[比較例5]
基材を長尺のPENフィルムからシート状(毎葉)のPENフィルムに変更し、ロール・ツー・ロール方式の製造方法を採用しなかったこと、以外は比較例2と同様にしてガスバリア性シートを製造した。
(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率を実施例1と同様にして測定したところ、0.06g/mdayであった(測定限界値以下)。
(ガスバリア性シートの表面粗さ測定)
ガスバリア性シートの表面(耐熱プラズマ層及びガスバリア層を設けた側の表面)の粗さを実施例1と同様にして測定したところ、最大突起長(Rmax)は、9nmであった。
(カール性評価試験)
ガスバリア性シートのカール特性を実施例1と同様にして評価したところ、外観変形(カール)は無かった。また、上記カール性評価試験後に再度ガスバリア性シートの水蒸気透過率の測定を行ったところ、0.08g/mdayの測定限界値以下を維持していることが確認できた。
本発明のガスバリア性シートの一例を示す模式的な断面図である。 本発明のガスバリア性シートの他の一例を示す模式的な断面図である。
符号の説明
1,1A,1B ガスバリア性シート
2 基材
3 耐熱プラズマ層
4 ガスバリア層
5 耐熱オーバーコート層

Claims (8)

  1. 基材上に耐熱プラズマ層及びガスバリア層をこの順に有するガスバリア性シートの製造方法であって、
    ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出し、該基材上に耐熱層形成用塗布液を用いて、耐熱プラズマ層を形成する耐熱プラズマ層形成工程と、
    前記耐熱プラズマ層上に、イオンプレーティング法によってガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、を有し、
    前記耐熱層形成用塗布液が、3官能以上のアクリレート及び溶媒を含有することを特徴とするガスバリア性シートの製造方法。
  2. 前記耐熱プラズマ層形成工程における前記耐熱プラズマ層の形成が、前記耐熱層形成用塗布液を塗布して得られた塗布層を硬化させることによって行われる、請求項に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  3. 前記耐熱プラズマ層形成工程における前記耐熱プラズマ層の形成が、5m/min以上のプロセススピードで走行する前記基材上に前記耐熱層形成用塗布液を塗布することによって行われる、請求項1又は2に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  4. 前記耐熱層形成用塗布液を用いて、前記ガスバリア層の上に、耐熱オーバーコート層をさらに形成する耐熱オーバーコート層形成工程を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  5. 前記耐熱層形成用塗布液が重量平均分子量10万以上の高分子成分を含有しない、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  6. 前記アクリレートが5官能以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  7. 前記アクリレートが分子内に環構造を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  8. 前記3官能以上のアクリレートが、ペンタエリスリトールトリアクリレートであり、
    前記溶媒が、トルエンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリア性シートの製造方法
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