JP5214633B2 - L−アルギニン生産コリネバクテリウムグルタミカム変異株およびその製造方法 - Google Patents

L−アルギニン生産コリネバクテリウムグルタミカム変異株およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、L−アルギニンを高収率で生産することができるため、医薬および薬学産業に有用に使用することができるL−アルギニン生産変異株およびその製造方法に関する。具体的には、本発明は、コリネバクテリウムグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)のアルギニン生合成に関与するアセチルオルチニンアミノ基転移酵素の遺伝子と推定されるargD2遺伝子(Ncg12355)を含むポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、前記ポリヌクレオチドを含む組み換えベクター、前記組み換えベクターをL−アルギニン生産宿主微生物に導入してargD2遺伝子を過発現させて高収率でL−アルギニンを生産することが可能な形質転換体、および前記形質転換体を培養してL−アルギニンを製造する方法に関する。
L−アルギニンは、植物種子または大蒜の中に遊離状態で含有されたアミノ酸であり、 有効な添加材として医薬品、食品などに広く用いられている。L−アルギニンは、肝機能促進剤、脳機能促進剤、男性不妊治療剤、総合アミノ酸製剤などとして有用である。また、L−アルギニンは、魚肉団子添加剤、健康飲料添加剤として使用されており、高血圧患者の食塩代替用としても最近脚光を浴びている。
従来の公知の生物学的発酵法によるL−アルギニンの製造方法は、炭素源、窒素源から直接L−アルギニンを生産する方法を基本としている。たとえば、L−アルギニンは、グルタミン酸生産菌株であるブレビバクテリウム(Brevibacterium)またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)属微生物から誘導された変異株(特開昭57−163487、同昭60−83593、同昭62−265988)、または細胞融合によって生育改善されたアミノ酸生産菌株(特開昭59−158185)を用いて生産することができる。最近は、アルギニン生合成オペロンの発現を抑える遺伝子argRを不活性化させた遺伝子組み換え菌株を用いる方法(米国特許出願第2002/0045223A1号)とアルギニンオペロンのargFを過発現させる方法(韓国特許出願第10−2004−107215号)などが報告されている。
微生物からのL−アルギニンの生合成は、線形経路と環形経路の相異なる2つの経路を介して、L−グルタメートから8段階の酵素系を経て行われる。
コリネバクテリウム属微生物は、環形経路を経てアルギニンの生合成が行われる。環形経路において、L−アルギニンは、L−グルタメートからN−アセチルグルタメート(N-acetylglutamate)、N−アセチルグルタミルホスフェート(N-acetylglutamyl phosphate)、N−アセチルグルタメートセミアルデヒド(N-acetylglutamate semialdehyde)、N−アセチルオルニチン(N-acetylornithine)、オルニチン(ornithine)、シトルリン(citrulline)、およびアルギニノサクシネート(arginiosuccinate)を経て合成される。これらの中間物質は、それぞれグルタメートN−アセチルトランスフェラーゼ(glutamate N-acetyltransferase)、N−アセチルグルタメートキナーゼ(glutamate N-acetyltransferase)、アセチルグルタメートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(acetylglutamate semialdehyde dehydrogenase)、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(acetylornithine aminotransferase)、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(ornithine carbamoyltransferase)、アルギノサクシネートシンターゼ(arginosuccinate synthase)、およびアルギノサクシネートリアーゼ(arginosuccinate lyase)の連続的な酵素反応によって合成される。これらの酵素はそれぞれargJ、argB、argC、argD、argF、argGおよびargH遺伝子によってコードされる。
本発明者らは、L−アルギニンを高収率で生産するために、L−アルギニンの生合成に関与する前記酵素に対して長期間研究を行ったところ、アルギニン生合成の中間段階であるN−アセチルグルタメートセミアルデヒド(N-acetylglutamate semialdehyde)がN−アセチルオルニチン(N-acetylornithine)に転換される酵素反応を増幅させる場合、L−アルギニン生合成フラックス(flux)が強化されてL−アルギニンの生産性を向上させることができることを見出した。
細胞には様々なアミノ基転移酵素(aminotransferase)が存在し、これらの酵素はそれらの相互構造的関係性(mutual structural relatedness)によって4つのグループに分類される。これらのグループは、アスパルチルオルニチン(aspartylornithine)、アラニン(alanine)、チロシン(tyrosine)、ヒスチジオルホスフェート(histidiolphosphate)、およびフェニルアラニン(phenylalanine)アミノ基転移酵素を含むグループI、アセチルオルニチン、オルニチン、ω−アミノ酸、アミノ酪酸塩(aminobutyrate)およびフェニルアラニンアミノ基転移酵素を含むグループII、D−アラニンおよび枝分かれしたアミノ酸アミノ基転移酵素を含むグループIII、並びにセリンおよびホスホセリン(phosphoserine)アミノ基転移酵素を含むグループIVに分けられる(Perdeep K. MEHTA, et al, Eur.J.Biochem., 214, 549-561, 1993)。
現在まで知られている事実によれば、コリネバクテリウムグルタミカムは、アルギニンの生合成に関与するargCJBDF遺伝子がオペロンとして存在しており、細胞内のアルギニンによってフィードバック阻害(feedback-inhibition)を受けるものと知られている(Vehary Sakanyan, et al., Microbiology, 142:9-108, 1996)。よって、高収率のL−アルギニンを生産するには限界がある。
そこで、本発明者らは、L−アルギニンの生産収率をさらに高めることが可能な菌株を開発するために努力した結果、アセチルオルニチンアミノ基転移酵素をコードするargD遺伝子と同一の機能を果たすものと推定されるargD2遺伝子に形質転換された微生物がargD2遺伝子を過発現させてL−アルギニン生産母菌株に比べて高収率でL−アルギニンを生産することができることを確認し、本発明を完成するに至った。
本発明の目的は、コリネバクテリウムグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)のアルギニン生合成に関与するアセチルオルニチンアミノ基転移酵素の遺伝子と推定されるargD2遺伝子(Ncgl2355)がコードするポリペプチドを提供することにある。
本発明の他の目的は、前記ポリペプチドをコードする塩基配列を含む組み換えベクターを提供することにある。
本発明の別の目的は、前記組み換えベクターを導入してL−アルギニンを高収率で生産することが可能な形質転換体を提供することにある。
本発明の別の目的は、前記形質転換体を培養してL−アルギニンを製造する方法を提供することにある。
図1はargD2遺伝子、CJ1プロモーター、およびrrnB2タミネーターを含む、本発明に係る組み換えプラスミドpHC131T−argD2の製作図である。
一様態において、本発明は、コリネバクテリウムグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)のアルギニン生合成に関与するアセチルオルニチンアミノ基転移酵素(acetylornithine aminotrasferase)の遺伝子と推定されるargD2遺伝子(Ncgl2355)がコードするポリペプチドを提供する。好ましくは、前記ポリペプチドのアミノ酸配列が配列番号1で表示できる。
コリネバクテリウムグルタミカムのアルギニン生合成に関与するアセチルオルニチンアミノ基転移酵素の遺伝子と推定されるargD2遺伝子(Ncgl2355)は、ゲノム基盤分析(genome based analysis)によれば、argD遺伝子と同じアミノ基転移酵素グループII に属するアミノ基転移酵素に分類できるが(Alice C. McHardy, et al, J. Biotechnology, 104, 229-240, 2003)、現在までもargD2遺伝子によってコードされるタンパク質の明確な機能が定義されていない。但し、argDとargD2遺伝子の塩基配列の相同性は低いが、2つの遺伝子はアミノ基転移酵素グループIII(aminotransferase class III)という同一のモチーフを持っているため、argD2遺伝子によってコードされるタンパク質はargD遺伝子によってコードされるアルギニン生合成過程に必要なアセチルオルニチンアミノ基転移酵素と類似の機能を持つものと推定される(www.genome.jp/kegg/)。
本発明の具体的実施例では、argD2遺伝子を含む組み換えベクターで形質転換されたL−アルギニン生産菌株が母菌株に比べて向上したL−アルギニン生産収率を持つことを確認した。
本発明の他の様態において、本発明は、前記配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを提供する。好ましくは、前記ポリヌクレオチドの塩基配列が配列番号2で表示できる。また、本発明は、前記配列番号2の塩基配列と70%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは、前記配列番号2の塩基配列と90%以上の相同性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
本発明の別の様態において、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含む組み換えベクターを提供する。好ましくは、前記組み換えベクターは、配列番号2で表示されるポリヌクレオチドを含むもので、本発明の具体的な実施例によって製造された組み換えベクターpHC131T−argD2であってもよい。
前記組み換えベクターは、DNA組み換え技術を用いた任意の公知の方法によって当業者が容易に製造することができる。具体的な例として、本発明の実施例では、L−アルギニン生産菌株からゲノムDNAを分離し、これを鋳型としてPCRによってargD2遺伝子のORF部位を増幅した。過発現のための組み換えベクターの製作のために、pECCG117−CJ1とE.coli K−12を鋳型としてそれぞれCJ1プロモーター(韓国登録特許第10−0620092号)およびrrnBタミネーター部位を増幅した。コリネバクテリウムアンモニアゲネスHsp60の上端部位であってコリネバクテリウムグルタミカムで強く発現するものと知られているCJ1プロモーターと、一般に常用されるrrnB1B2タミネーターをそれぞれプロモーターとタミネーターとして使用した。この際、得られたargD2遺伝子の塩基配列を通常のシーケンシング方法によって分析した。前記得られたプロモーター部位、タミネーター部位およびargD2遺伝子を適合なプラスミドまたはその他のクローニングベクター内にクローニングして適切なコンピテント細胞(competent cell)に形質転換し、それから組み換えベクターを製造した(図1)。
前記組み換えベクターの製造方法において、クローニングベクターは、原核または眞核細胞で発現可能な任意のベクターを使用することができる。本発明の具体的な実施例では、プラスミドpECCG117(Han J.K., et al, Biotechnology letters, 13(10):721-726, 1991または韓国特許公告第92−7401号)を使用した。また、前記L−アルギニン生産菌株は、原核および真核を含んだL−アルギニンを生成することが可能な全ての微生物であってもよく、好ましくはL−アルギニンを生産することが可能な大腸菌、コリネ型細菌、バシラス属細菌、さらに好ましくはL−アルギニンを生産することが可能なコリネバクテリウムグルタミカムであってもよい。
本発明の別の様態においては、argD2遺伝子を含む前記組み換えベクターをL−アルギニン生産宿主微生物に導入してargD2遺伝子を過発現させることにより高収率でL−アルギニンを生産することが可能な形質転換体を提供する。
具体的には、前記宿主微生物は、DNAの導入効率が高くかつ導入されたDNAの発現効率が高い宿主が通常使用され、原核および真核を含んだL−アルギニンを生成することが可能な全ての微生物であってもよい。好ましくは、エシェリキア(Escherichia)、アエロバクター(Aerobacter)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ピチア(Pichia)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、カンジダ(Candida)、ハンセヌラ(Hansenula)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ジゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)、ケカビ(Mucor)、トルロプシス(Torulopsis)、メチロバクター(Methylobacter)、サルモネラ(Salmonella)、バシラス(Bacillus)、ストレプトミセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、マグネトスピリルム(Magnetospirillum)およびコリネバクテリウム(Corynebacterium)属よりなる群から選ばれるいずれか一つ、さらに好ましくはL−アルギニン類似体に対する耐性を有し、L−アルギニンを生産することが可能なコリネバクテリウム属に属する微生物、最も好ましくはコリネバクテリウムグルタミカムATCC21493またはコリネバクテリウムグルタミカムATCC21831であってもよい。L−アルギニン類似体としては、タチナタマネに入っているα−アミノ酸の一つであるカナバニン(canavanine)およびアルギニンヒドロキサメート(arginine hydroxamate)が含まれる。
本発明の特定の実現例では、前記組み換えベクターpHC131T−argD2を、L−アルギニン類似体に対する耐性を有しかつL−アルギニンを生産することが可能なコリネバクテリウムグルタミカムATCC21493とコリネバクテリウムグルタミカムATCC21831に導入して形質転換させた微生物CA06−0012およびCA06−0013を製造し、2006年12月13日付で前記菌株をそれぞれ韓国微生物保存センター(Korean Culture center of Microorganism、以下「KCCM」という)に受託番号KCCM10820PおよびKCCM10821Pとして寄託した。
前記形質転換体は、任意の形質転換方法によって当業者が容易に製造することができる。本発明の「形質転換(transformation)」は、DNAを宿主として導入し、DNAが染色体の因子としてまたは染色体統合完成によって複製可能なものになることであって、外部のDNAを細胞内に導入して人為的に遺伝子的な変化を生じさせる現象を意味する。一般に、形質転換方法には、CaCl沈殿法、CaCl方法にDMSO(dimethyl sulfoxide)という還元物質を使用することにより効率を高めたHanahan方法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム沈殿法、原形質融合法、炭化ケイ素繊維を用いた攪拌法、アグロバクテリア媒介形質転換法、PEGを用いた形質転換法、硫酸デキストラン、リポフェクタミンおよび乾燥/抑制媒介形質転換方法などがある。本発明の実施例では、エレクトロポレーション法を用いて前記組み換えベクターpHC131T−argD2を宿主微生物に導入して形質転換体を製造し、抗生剤の耐性を用いて組み換えベクター含有菌株を分離した。
本発明によって製造された形質転換体のL−アルギニン生成能をさらに増大させるために、通常の遺伝子組み換え技術によって、前記形質転換体の染色体に存在するargD2遺伝子を発現または欠損させる方法をさらに行うことができ、これらの遺伝子塩基配列が蛍光物質を活用したシーケンシング方法によって分析できることは本発明の技術分野における公知の事実である。
L−アルギニンを生合成する経路において、オルニチンは、アルギニン代謝経路の中間体であって、尿素回路と共に窒素代謝に重要な物質である。本発明の方法で形質転換されたCA06−0012およびCA06−0013菌株は、L−アルギニン生産菌株であるコリネバクテリウムグルタミカムATCC21831の染色体からPCRによって得た、アセチルオルニチンアミノ基転移酵素機能を果たすものと推定されるタンパク質をコードするargD2遺伝子をベクターに挿入し、これをL−アルギニン生産菌株としてのコリネバクテリウムグルタミカムATCC21493およびコリネバクテリウムグルタミカムATCC21831にそれぞれ導入することにより、argD2遺伝子の発現を増加させた形質転換体である。本発明に係る方法で形質転換された前記CA06−0012およびCA06−0013菌株は、argD2遺伝子の過発現によって、N−アセチルオルニチンの合成が増加してアルギニン生合成経路が活性化されることにより、L−アルギニンを高収率で生産することができることを確認した。
したがって、本発明は、別の様態において、前記形質転換体、好ましくは受託番号KCCM10820Pまたは受託番号KCCM10821Pで表示される形質転換体を培養することを含むL−アルギニンの製造方法を提供する。
本発明のL−アルギニンを製造する方法において、前記形質転換されたL−アルギニン過発現微生物の培養過程は、当業界における公知の適当な培地と培養条件によって行われ得る。このような培養過程は、当業者であれば、選択される菌株に応じて容易に調整して使用することができる。前記培養方法の例には、回分式培養(batch culture)、連続式培養(continuous culture)および流加式培養(fed-batch culture)が含まれるが、これに限定されない。様々な培養方法は、例えば、“Biochemical Engineering”(James M. Lee, Prentice-Hall International Editions, pp 138-176, 1991)などに開示されている。
培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸および硫酸などの化合物を培養物に適切な方式で添加することにより、培養物のpHを調整することができる。また、培養中には脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を用いて気泡生成を抑えることができる。また、培養物の好気状態(aerobic condition)を維持するために、培養物内に酸素または酸素含有気体(たとえば、空気)を注入する。培養物の温度は通常20℃〜45℃、好ましくは25℃〜40℃である。培養期間は、所望のL−アルギニンの生産量が得られるまでであり、好ましくは10〜160時間である。培養物からのL−アルギニンの分離は、当業界における公知の通常の方法によって行うことができる。このような分離方法には、遠心分離、濾過、イオン交換クロマトグラフィーおよび結晶化などの方法が利用できる。たとえば、培養物を低速遠心分離してバイオマスを除去し、得られた上澄み液をイオン交換クロマトグラフィーによって分離することができる。
以下、下記実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。ところが、これらの実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
実施例1.argD2遺伝子、CJ1プロモーターおよびrrnB タミネーターの製作
コリネバクテリウムグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)のアルギニン生合成に関与するアセチルオルニチンアミノ基転移酵素の遺伝子と推定されるargD2遺伝子、コリネバクテリウムグルタミカムで強く発現するCJ1プロモーターおよびrrnBタミネーターを含む組み換えベクターpHC131Tの製作のために、L−アルギニン生産菌株ATCC21831のゲノムDNA(gDNA)から、argD2遺伝子のオープンリーディングフレーム(以下「ORF」と略する)を含むDNA断片1.371Kbを得、CJ1プロモーターはpECCG117−CJ1(韓国特許出願第10−2004−107215号)を鋳型としてPCRを行ってCJ1プロモーター(0.3Kb)を得、rrnBタミネーターはE.coli K−12 W3110のゲノムを鋳型としてPCRを行って0.4Kbの断片を得た。
実施例1−1.argD2遺伝子のORFを含むDNA断片の増幅
ゲノミック−チップシステム(Genomic-tip system)(QIAGEN社製、以下同一)を用いてL−アルギニン生産菌株ATCC21831のゲノムDNA(gDNA)を抽出した。argD2遺伝子のORFを含むDNA断片1.371Kbを増幅するために、前記gDNAを鋳型としてPTC−200 Peltier Thermal Cycler(MJ Research社製、USA、以下同一)を用いて連鎖重合反応(polymerase chain reaction、以下「PCR」と略する)を行った。この際、argD2遺伝子のORF部位の増幅に使用されたプライマーは次のとおりである:配列番号7;5’−tcccccgggggattggcatgaagggttac−3’、および配列番号8;5’−gctctagagcttagaacaacgccccagc−3’。PCR反応は変性(denaturation)94℃で30秒、アニーリング(annealing)55℃で30秒および延長(elongation)72℃で1分を1サイクルとして25サイクル繰り返し行った。前記PCR結果物は1.0%アガロースゲルで電気泳動した後、1.3Kbサイズのバンドを溶出して得た。
実施例1−2.CJ1プロモーターの増幅
CJ1プロモーターを増幅するために、pECCG117−CJ1(韓国特許出願第10−2004−107215号)を鋳型としてPTC−200 Peltier Thermal Cyclerを用いてPCRを行った。この際、CJ1プロモーターの増幅に使用されたプライマーは次のとおりである:配列番号3;5’−cgggtaccaccgcgggcttattccattacat−3’および配列番号4;5’−acgcgatatcttaatctcctagattgggtttc−3’。PCR反応は変性94℃で30秒、アニーリング55℃で30秒および延長68℃で30秒を1サイクルとして25サイクル繰り返し行った。前記PCR結果物は1.0%アガロースゲルで電気泳動した後、0.3Kbサイズのバンドを溶出して得た。
実施例1−3.rrnB タミネーターの増幅
ゲノミック−チップシステムを用いてE.coli K−12 W3110のゲノムDNA(gDNA)を抽出した。rrnBタミネーターを増幅するために、前記gDNAを鋳型としてPTC−200 Peltier Thermal Cyclerを用いてPCRを行った。この際、rrnBタミネーターの増幅に使用したプライマーは次のとおりである:配列番号5;5’−gctctagagctgttttggcggatgaga−3’および配列番号6;5’−ataagaatgcggccgccgcaaaaaggccatccgtcag−3’。PCR反応は前記CJ1プロモーターの増幅のための条件と同様に行った。前記PCR結果物を1.0%アガロースゲルで電気泳動した後、411bp断片を溶出して得た。
実施例2.組み換えプラスミドの製作
実施例2−1.組み換えプラスミドpHC131Tの製作
大腸菌/C.グルタミカムシャトルベクター(E.coli/C.glutamicum shuttle vector)(Han J.K., et al, Biotechnology letters, 13(10):721-726, 1991または韓国特許公告第92−7401号)を制限酵素EcoRVとKpnIで処理した後、これを0.8%アガロースゲルで約5.9Kbサイズのバンドを溶出した。また、実施例1−2で製作したCJ1プロモーターを制限酵素KpnIとEcoRVで処理した後、Quiaquick PCR purification kit(Qiagen社製、以下同一)を用いて分離した。
Quick ligation kit(NEB社製、以下同一)を用いて、前記2つのDNA断片を連結させて組み換えプラスミドpECCG117−CJ1を製作した後、これに制限酵素XbaIとNotIを処理し、これを0.8%アガロースゲルで電気泳動して約6.2Kbサイズのバンドを溶出した。Quick ligation kitを用いて、前記で得たpECCG117−CJ1と実施例1−3で得たrrnBタミネーター断片とを連結させて約6.6Kbの組み換えプラスミドpECCG117−CJ1−rrnBを得た。これを本発明では「pHC131T」と命名した。
前記製作したpHC131TプラスミドをEcoRVとXbaIで処理した後、1%アガロースゲルで約6.6Kbサイズのバンドを溶出して得た。
実施例2−2.pHC131T−argD2プラスミドの製作
実施例1−1で得たargD2遺伝子のPCR結果物を制限酵素smaIとXbaIで処理した後、これを0.8%アガロースゲルで約1.3Kbサイズのバンドを溶出した。これを、Quic ligation kitを用いて、実施例2−1で製作したpHC131Tと連結させて約7.4Kbの組み換えプラスミドを製作し(図1)、これを本発明では「pHC131T−argD2」と命名した。
実施例3.arg2D遺伝子の塩基配列分析
実施例2−2で製作したpHC131T−argD2の塩基配列分析のために、pHC131T−argD2のDNA0.1μgを鋳型としてPCRを行った。この際、プライマーはそれぞれ2mMの配列番号3および配列番号6のプライマーを使用し、反応液はBigDyeTMTerminator Cycle Sequencing v2.0 Ready Reaction(PE Biosystems社製)1μLを使用した。PCR反応条件は、変性95℃で30秒、アニーリング55℃で30秒、延長72℃で2分を1サイクルとして25サイクルを行った。その後、PCR反応液を4℃に冷却して反応を終了させた。前記PCR結果物を0.8%アガロースゲルで電気泳動した後、2KbサイズのDNA断片を溶出して分離した。
前記DNA断片と前記配列番号3のプライマーを用いてABI PRISM3100 Genetic AnalyzerTM(Applied Biosystems社製)で塩基配列を確認した。本発明のargD2遺伝子がコードするアミノ酸配列とその塩基配列をそれぞれ配列番号1および2に示した。
実施例4.形質転換体の製作
実施例2−2で製作した組み換えプラスミドpHC131T−argD2をL−アルギニン生産菌株ATCC21493およびATCC21831にエレクトロポレーション法で流入させ、argD2遺伝子が過発現した形質転換体を製作した。これらの形質転換体を、本発明では、母菌株がATCC21493の形質転換体はCA06−0012と命名し、母菌株がATCC21831の形質転換体はCA06−0013と命名した。これらの形質転換体を韓国微生物保存センターに2006年12月13日付で寄託し、寄託番号はそれぞれKCCM10820PおよびKCCM10821Pである。
前記菌株および前記形質転換体をカナマイシン(Kanamycin)25mg/L入りの固体培地(組成;牛肉エキス3.0g/L、ペプトン5.0g/L、以下同一)に塗抹して30℃で16時間培養し、選抜したコロニーに対して実施例5と同様のプラスコ力価確認実験を行った結果、本発明に係るargD2遺伝子の過発現した形質転換体がL−アルギニンを高収率で生産していることを確認することができた。
実施例5.三角プラスコにおけるアルギニン生産力価比較実験
実施例4で製作した形質転換体と母菌株としてのATCC21831およびACC21493菌株を抗生剤としてのカナマイシン25mg/L含有固体培地に塗抹して30℃、16時間培養した後、選別された各菌株からコロニー10株ずつを選別した。これを表1に示したL−アルギニン種培地で培養した後、さらにこれを表1に示した力価培地を用いて三角プラスコでL−アルギニン生産性を平均値で比較した。
Figure 0005214633
選別したコロニーを種培地に接種した後、30℃の培養器で16時間培養した後、培養液を24mLの力価培地で1mLずつ接種して30℃、220rpmの培養器で72時間培養し、ATCC21831、ATCC21493および形質転換体のL−アルギニン生産力価実験結果を表2に示した。
表2に示すように、アルギニン生産菌株としてのコリネバクテリウムグルタミカムATCC21493およびATCC21831菌株のL−アルギニン生産量はそれぞれ0.9g/Lと4.4g/Lであるが、本発明のargD遺伝子が過発現した組み換え菌株CA06−0012およびCA06−0013のL−アルギニン生産量はそれぞれ1.1g/Lおよび4.9g/Lである。よって、本発明の組み換え菌株CA06−0012およびCA06−0013は、母菌株に比べてそれぞれ0.2g/L(22.2%)および0.5g/L(11.4%)の向上した収率でL−アルギニンを生産することを確認することができた。
Figure 0005214633
以上の説明より、本発明の属する技術分野における当業者は、本発明がその技術的思想または必須的特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。これに関連し、上述した実施例および実験例は全ての面で例示的なもので、制限的なものではないと理解すべきである。本発明の範囲は前述した詳細な説明よりは特許請求の範囲によって定められ、そしてその等価概念から導出される全ての変更または変形形態も本発明の範囲に属するものと理解すべきである。
本発明は、コリネバクテリウムグルタミカムのアルギニン生合成に関与するアセチルオルニチンアミノ基転移酵素の遺伝子と推定されるargD2遺伝子(Ncgl2355)を含むポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、前記ポリヌクレオチドを含む組み換えベクター、前記組み換えベクターをL−アルギニン生産宿主微生物に導入してargD2遺伝子を過発現させることにより高収率でL−アルギニンを生産することが可能な形質転換体、前記形質転換体を培養してL−アルギニンを製造する方法を提供するという効果がある。本発明の形質転換体は、argD2遺伝子を過発現させて高収率でL−アルギニンを生産することができるため、ヒト医薬および薬学産業と飼料産業に有用に使用することができる。
Figure 0005214633
Figure 0005214633

Claims (4)

  1. 受託番号KCCM10820Pまたは受託番号KCCM10821Pにより同定され、配列番号1で表示されるアミノ酸配列を有するargD2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組み換えベクターで形質転換された、コリネバクテリウム微生物。
  2. argD2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組み換えベクターで形質転換されたコリネバクテリウム微生物を培養する段階を含み、該argD2ポリペプチドが配列番号1で表示されるアミノ酸配列を有する、L−アルギニンの製造方法。
  3. 前記ポリヌクレオチドが、配列番号2で表示されるヌクレオチド配列を有する、請求項2記載の製造方法。
  4. 前記コリネバクテリウム微生物が、受託番号KCCM10820Pまたは受託番号KCCM10821Pにより同定されるものである、請求項2記載の製造方法。
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