JP5213702B2 - ディスペプシア診断検査薬 - Google Patents

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Description

本発明は、ディスペプシア(Dyspepsia)の診断に有効に使用される胃排出能測定用組成物および胃排出能測定方法に関する。具体的には、本発明は、胃の排出機能の低下を、呼気を用いて非侵襲的に測定することのできる組成物、および当該組成物を用いた胃の排出機能の測定方法に関する。また本発明はディスペプシアの診断検査薬およびディスペプシアの診断方法に関する。さらに本発明は、胃腸薬、特に消化管運動機能に関わる薬物について、ディスペプシア患者などの胃排出能不全を原因とする胃腸障害を有する患者に対する薬効または治療効果を測定する方法に関する。
現代は様々な事柄がめまぐるしく変化するストレスの多い社会である。それに伴って胃腸の痛みや不快感(心窩部痛・心窩部不快感、胃もたれ、胸やけ、心窩部膨満感、易満腹感、悪心、嘔吐など)を訴える患者が増えている。こうした症状を長期間持ちながらも、胃透視、内視鏡検査または腹部超音波検査で異常が認められない患者は、これまで腹部不定愁訴として治療の対象から外されるか、慢性胃炎として診断され治療されてきた。
しかし、近年、こうした症状は消化管の機能障害に原因があると考えられるようになり、米国では「内視鏡的に器質的疾患がないにもかかわらず上腹部の不定愁訴が4週間以上ある病態」を、慢性胃炎と区別して“非潰瘍性上部消化管症候群”(Non-ulcer Dyspepsia:NUD)(以下「ディスペプシア」という)と称するようになっている(1987年、米国消化器病学会)。
ディスペプシアは自覚症状により、(1)胃食道逆流型(胸やけ、呑酸、逆流感、げっぷ)、(2)運動不全型(早期膨満感、腹部膨満感、食欲不振、悪心、嘔吐)、(3)潰瘍症状型(夜間痛、空腹時痛、周期的不快感・腹痛)および(4)非特異型(上記(1)〜(3)に該当しないもの)に分類されるが、(1)を除く(2)〜(4)は、総じて機能性上部消化管症候群(Functional Dyspepsia:FD)と称される(ROME II基準:非特許文献1参照)。これらのディスペプシアの中で、特に多いのが(2)の型(運動不全型)であり、全体の3〜4割程度を占めるといわれている(非特許文献2参照)。
ディスペプシアに対する治療は薬による対症療法が主である。(1)胃食道逆流型は胃酸との関係が深いため胃酸の分泌を抑制する薬が用いられ、また(4)非特異型は心理的要因の関与が考えられることから抗不安剤や抗うつ剤が用いられるものの、下記に示すように、消化管運動機能改善薬がこれらの治療の中心となっている:
(1)胃食道逆流型:酸分泌抑制薬、制酸薬、消化管運動機能改善薬
(2)運動不全型および(3)潰瘍症状型:消化管運動機能改善薬
(4)非特異型:消化管運動機能改善薬、抗不安剤、抗うつ剤。
ところで、ディスペプシアの診断は、胃腸の痛みや不快感(心窩部痛・心窩部不快感、胃もたれ、胸やけ、心窩部膨満感、易満腹感、悪心、嘔吐など)を長期間有しながらも、内視鏡検査や腹部超音波検査などによって器質的な疾患が認められない場合、すなわち除外診断によって行われる。またディスペプシアは主として患者の主観によるところが大きいため診断が難しい。こうしたことが、患者に精神的また金銭的負担をかけているだけでなく、適切な治療を遅らせ患者のQOL(Quality of Life)を悪化させている要因にもなっている。
このため、簡便かつ高精度にディスペプシアを診断することができれば、ディスペプシア患者の精神的かつ金銭的負担を軽減し、またその治療に大きく貢献できるものと考えられる。
ディスペプシアの主な原因は胃排出能の低下であることから、その診断には胃排出機能の測定技術が利用できる。しかし、従来の胃排出能測定方法は高価であったり侵襲的であり、また拘束時間も長く、患者の精神的及び肉体的負担が大きい反面、測定精度が充分でないといった問題を有している。例えば、従来の胃排出能測定方法のうち、アイソトープ法(例えば、Scintigraphyなど)は、放射性同位元素を使用するため管理が煩雑であるとともに、測定に高価なガンマカメラが必要なため、その使用が専門施設に限定されるという問題がある。またX線不透過性マーカー法は、マーカーが胃から食物と同時でなく食物が全て排出された後に排出されるために、胃の本来の排出機能を正確に検査できないという問題がある。更にアセトアミノフェン法は、アセトアミノフェンの副作用によって肝障害や薬剤アレルギーが発症するおそれがあり、またこれは小腸での吸収、肝臓での代謝、腎臓からの排泄等の体内における他の影響を受けるため胃排出機能を正確に検査できないという問題を含む。更に一定時間後の血中のアセトアミノフェン濃度を測定するため、採血という侵襲的処置を必要とする問題もある。
またその他の胃排出能測定方法としては、超音波で胃内体積及び胃内残存物を測定する方法(Ultrasound法)、MRIで胃排出能を測定する方法(Magnetic Resonance Imaging法)、胃電図を測定して胃の運動機能を評価する方法(Electrogastrography)等も提案されているが、これらは、(i)診断法の精度に問題がある、(ii)一定の基準がなく実施者によって判断がまちまちである、(iii)診断にあたって被験者を長時間拘束する等、といった問題を有している(非特許文献3〜4など参照)。
Talley Nj et al., Gut 45 (Suppl 2): II 37-42, 1999 Quarteo AO et al., Dig Dis Sci 43: 2028-2033, 1998 J. Smooth Muscle Res. (Jpn. Sec.)6: J-75〜J-91, 2002 J. Smooth Muscle Res. (Jpn. Sec.)6: J-129〜J-138, 2002
本発明は、ディスペプシアの診断に有効に用いることのできる胃排出能測定用組成物、特に呼気を用いて胃の排出機能を簡便にしかも非侵襲的に測定することができる組成物を提供することを目的とする。また本発明は、ディスペプシアの診断に有効に用いることのできる胃排出能測定方法を提供することを目的とする。すなわち、本発明の主な目的は、ディスペプシアの診断検査薬、およびディスペプシアの診断方法を提供することである。
さらに本発明は、ディスペプシア患者などの胃排出能不全を原因とする胃腸障害を有する患者に対する治療(薬物療法を含む)効果、特に消化管の運動機能に関わる薬物の薬効または治療効果を測定する方法を提供することを目的とする。
呼気試験を用いて胃の排出機能を診断評価するための検査プローブとして望まれる特性として、下記の4つを挙げることができる:
(1)胃から吸収されず、十二指腸以下の消化管(十二指腸、空腸、回腸など)で吸収される、
(2)pHの変動(消化管pH)によって吸収が影響されにくい、
(3)吸収率および代謝率が高く、同位体標識COとしての呼気排出率(回収率)が高い。
(4)吸収後の代謝が速やか。
本発明者らは、上記課題の解決にあたり、上記特性を備えた胃排出機能検査プローブの開発を目指して鋭意検討を重ねていたところ、同位元素C又はOで標識されてなるウラシルやチミンといったピリミジン化合物が、上記4つの特性を備えており、これらを被験者に経口投与し、呼気に排泄された同位体標識COの量やその挙動を測定することによって当該被験者の胃排出能が簡便に測定できることを見出し、当該測定方法が非侵襲的なディスペプシア診断方法として有効であることを確認した。また、かかるピリミジン化合物を用いた胃排出能測定方法によれば、当該被験者に対する薬物などの治療効果を評価することができ、被験者(患者)に応じて、より適切かつ有効な治療方法を選択し設定することができることを確信した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は下記の態様を有する:
(I)胃排出能測定用組成物
(I-1)生体内で標識COガスに変換されて呼気中に排泄される、同位元素C又はOの少なくとも一方で標識されてなるピリミジン化合物を有効成分とする、胃排出能測定用組成物。
(I-2)同位元素が13C、14C及び18Oからなる群から選択されるいずれか少なくとも一種である(I-1)記載の胃排出能測定用組成物。
(I-3)標識ピリミジン化合物が、ウラシルまたはチミンである(I-1)または(I-2)記載の胃排出能測定用組成物。
(II)ディスペプシア診断検査薬
(II-1)(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する組成物からなるディスペプシア診断検査薬。
(II-2)上記ディスペプシアが胃排出能不全を原因とするディスペプシアである、(II-1)記載のディスペプシア診断検査薬。
(II-3)上記ディスペプシアが運動不全型ディスペプシアである、(II-2)記載のディスペプシア診断検査薬。
(III)胃排出能測定方法
(III-1)(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載の組成物を被験者に経口投与し、呼気内に排泄される標識COの量またはその挙動を測定することを特徴とする胃排出能測定方法。
(III-2)(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載の組成物を胃排出能の低下または亢進が疑われる被験者に経口投与し、呼気内に排泄された標識COの量もしくはその挙動を、同じ組成物を用いて得られる健常者における呼気への排泄標識COの量もしくはその挙動と比較することからなる、(III-1)記載の胃排出能測定方法。
なお、上記(III-1)〜(III-2)の方法は、下記のように言い換えることもできる:
(III-1’)(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載の組成物を経口的に摂取した被験者から採取した呼気を被験試料として、当該被験試料中の標識COの量をin vitroで測定することを特徴とする胃排出能測定方法。
(III-2’)(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載の組成物を経口的に摂取した胃排出能の低下または亢進が疑われる被験者から採取した呼気を被験試料として、当該被験試料中の標識COの量をin vitroで測定し、得られた測定値を、同じ組成物を摂取した健常者から採取した呼気中の標識COの量と比較することからなる、(III-1’)記載の胃排出能測定方法。
(IV)ディスペプシアの診断方法
(IV-1)(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載のディスペプシア診断検査薬を被験者に経口投与し、呼気内に排泄される標識COの量またはその挙動から胃排出能を測定することを特徴とするディスペプシアの診断方法。
(IV-2)(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載のディスペプシア診断検査薬をディスペプシアが疑われる被験者に経口投与し、呼気内に排泄される標識COの量もしくはその挙動を、同じ検査薬を用いて得られる健常者の呼気への排泄標識COの量もしくはその挙動と比較して、当該被験者の胃排出能を測定することからなる、(IV-1)記載のディスペプシアの診断方法。
(IV-3)胃排出能不全を原因とするディスペプシアの診断方法である、(IV-1)または(IV-2)に記載する診断方法。
(IV-4)運動不全型ディスペプシアの診断方法である、(IV-3)に記載する診断方法。
なお、これら(IV-1)〜(IV-4)の方法は、下記のように言い換えることもできる:
(IV-1’)(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載のディスペプシア診断検査薬を経口的に摂取した被験者から採取した呼気を被験試料として、当該被験試料中の標識COの量をin vitroで検出し、胃排出能を測定することを特徴とするディスペプシアの診断方法。
(IV-2’)(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載のディスペプシア診断検査薬を経口的に摂取したディスペプシアが疑われる被験者から採取した呼気を被験試料として、当該被験試料中の標識COの量をin vitroで測定し、当該測定値を、同じ検査薬を摂取した健常者から採取した呼気中の標識CO量と比較し、当該被験者の胃排出能を測定することからなる、(IV-1’)記載のディスペプシアの診断方法。
(IV-3’)胃排出能不全を原因とするディスペプシアの診断方法である、(IV-1’)または(IV-2’)に記載する診断方法。
(IV-4’)運動不全型ディスペプシアの診断方法である、(IV-3’)に記載する診断方法。
(V)薬効もしくは治療効果の測定方法
(V-1)被験者に対する胃腸の治療前後に、当該被験者に(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載の組成物または(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載の診断検査薬を経口投与し、治療後の呼気内への標識COの排泄量またはその挙動と治療前の標識COの排泄量またはその挙動とを比較することからなる、当該治療の被験者に対する胃腸の治療効果の測定方法。
(V-2)被験者への胃腸薬の投与前と投与後に、当該被験者に当該被験者に(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載の組成物または(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載の診断検査薬を経口投与し、胃腸薬投与後の呼気内への標識COの排泄量またはその挙動と胃腸薬投与前の標識COの排泄量またはその挙動とを比較することからなる、胃腸薬の薬効もしくは該被験者に対する治療効果の測定方法。
(V-3)胃腸薬が消化管運動機能に関わる薬物である、(V-2)に記載する測定方法。
(V-4)胃排出能不全を原因とするディスペプシア患者に対する胃腸薬の薬効または治療効果の測定方法である、(V-1)乃至(V-3)のいずれかに記載する測定方法。
(V-5)運動不全型ディスペプシア患者に対する胃腸薬の薬効または治療効果の測定方法である、(V-1)乃至(V-3)のいずれかに記載する測定方法。
なお、これら(V-1)〜(V-5)の方法は、下記のように言い換えることもできる:
(V-1’) 胃腸の治療前後に(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載の組成物または(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載の診断検査薬を経口的に摂取した被験者から採取した呼気を被験試料として、治療後の被験試料中の標識CO量と治療前の被験試料中の標識CO量とを比較することからなる、当該被験者に対する胃腸の治療効果を測定する方法。
(V-2’) 胃腸薬の投与前と投与後に(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載の組成物または(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載の診断検査薬を経口的に摂取した被験者から採取した呼気を被験試料として、胃腸薬投与後の被験試料中の標識CO量と胃腸薬投与前の被験試料中の標識CO量とを比較することからなる、胃腸薬の薬効もしくは該被験者に対する治療効果の評価方法。
(V-3’)胃腸薬が消化管運動機能に関わる薬物である、(V-2’)に記載する測定方法。
(V-4’) 胃排出能不全を原因とするディスペプシア患者に対する胃腸薬の薬効または治療効果の評価方法である、(V-1’)乃至(V-3’)のいずれかに記載する測定方法。
(V-5’)運動不全型ディスペプシア患者に対する胃腸薬の薬効または治療効果の測定方法である、(V-1’)乃至(V-3’)のいずれかに記載する測定方法。
(VI)使用
(VI-1)生体内で標識COガスに変換されて呼気中に排泄される、同位元素C又はOの少なくとも一方で標識されてなるピリミジン化合物の、ディスペプシア診断検査薬の製造のための使用。
(VI-2)同位元素が13C、14C及び18Oからなる群から選択されるいずれか少なくとも一種である、(V-1)記載の使用。
(VI-3)ピリミジン化合物が、ウラシルまたはチミンである、(VI-1)または(VI-2)記載の使用。
本発明において「ディスペプシア」とは「内視鏡的に器質的疾患がないにもかかわらず上腹部の不定愁訴が4週間以上ある病態」〔非潰瘍性上部消化管症候群”(Non-ulcer Dyspepsia:NUD)〕を意味する。本発明が対象とするディスペプシアは、好ましくは胃排出能不全が一原因となっているディスペプシアである。かかるディスペプシアには、機能性上部消化管症候群(Functional Dyspepsia:FD)、特に運動不全型ディスペプシアが含まれる。なお、ここで胃排出能不全とは、胃排出機能が正常でないことを意味し、胃排出能の消失のみならず、胃排出能の低下が含まれる。
本発明の組成物によれば、簡単かつ精度良くヒトまたは動物の胃の排出機能を測定することができる。すなわち、本発明の組成物は、胃の運動機能および当該運動機能障害に起因する疾患を客観的に診断するために有用であるとともに、消化管の運動機能に関わる薬物の薬効や、患者に対する治療効果を測定評価するために有効に使用することができる。
また、本発明のディスペプシア診断検査薬によれば、被験者の胃排出能の低下を簡単に精度よく測定して、ディスペプシアを診断することができる。特に本発明の検査薬は、呼気中に標識炭酸ガスとして排泄される標識ピペリジン化合物を有効成分とするため、当該検査薬によれば、被験者に精神的または肉体的負担をかけず、呼気試験によって簡便にディスペプシアを診断することができる。また、当該検査薬は、ディスペプシア患者に対する治療(薬物療法を含む)効果、特に消化管の運動機能に関わる薬物の薬効やその治療効果を測定し評価するのに有効に使用することができる。
(I)胃排出能測定用組成物、および(II)ディスペプシア診断検査薬
本発明の胃排出能測定用組成物は、生体内で標識COガスに変換して呼気中に排泄される、同位元素C又はOの少なくとも一種で標識されてなるピリミジン化合物を有効成分とするものである。
当該組成物において用いられるピリミジン化合物は、ピリミジン骨格を有する化合物であり、経口投与後、生体内で標識COガスに変換して呼気中に排泄されるように、同位元素C又はOの少なくとも一種で標識されたものである。具体的には、ウラシル、チミン、シトシンおよび5-メチルシトシンなどのピリミジン塩基を挙げることができる。好ましくは、(1)胃から全く若しくは殆ど吸収されずに、全て若しくはその殆どが十二指腸以下の消化管(十二指腸、空腸、回腸など)で吸収され、その後分解又は代謝されて、標識COガスとして呼気に排泄されるものである。また、(2)消化管内のpHの変動により吸収が影響されにくいものが好ましい。さらに好ましくは、(3)吸収率および代謝率が高く、呼気中への標識COガスとしての排泄率(回収率)が高いものである。特に好ましくは、上記特性に加えて(4)吸収後の代謝が速やかなものである。かかる特性を備えるピリミジン化合物として、好適にはウラシルおよびチミンを挙げることができる。
ピリミジン化合物中の炭素原子または酸素原子の標識に用いられる同位体としては、特に制限はされないが、具体的には13C、14C並びに18Oを挙げることができる。かかる同位体は放射性及び非放射性の別を問わないが、安全性の観点から好ましく非放射性同位元素である。かかる同位元素としては好適に13Cを挙げることができる。
具体的には、本発明で用いられるピリミジン化合物は、ピリミジン代謝経路を経て生成されるCOの少なくとも一部が同位体標識されてなるように、同位体標識されてなるものである。例えば、このようなピリミジン化合物としては、ピリミジン骨格の2位の炭素原子が同位体で標識されてなる化合物を挙げることができる。具体的には、2-13C標識ウラシル、2-13C標識チミン、および2-13C標識シトシンなどを例示することができる。好ましくは2-13C標識ウラシル、および2-13C標識チミンである。
ピリミジン化合物をこれらの同位体で標識する方法は、特に制限されず、通常使用される方法が広く採用される(佐々木、「5.1安定同位体の臨床診断への応用」:化学の領域107「安定同位体の医・薬学、生物学への応用」pp.149-163(1975)南江堂;梶原、RADIOISOTOPES,41,45-48(1992)等)。これらの同位体標識ピリミジン化合物の一部、特に2-13C標識ウラシルは商業的に入手することができ、簡便にはかかる市販品を使用することもできる。
本発明の組成物は、経口投与後、中に配合されたピリミジン化合物が十二指腸以降で吸収され、また代謝された後に、標識COガスとして呼気に排泄されるものであればよく、それを満たすものである限り、その形態、同位体標識ピリミジン化合物以外の成分、各成分の配合割合、組成物の調製方法等を特に制限するものではない。
形態としては、経口投与形態であればよく、液剤(シロップ剤を含む)、懸濁剤および乳剤などの液状形態;錠剤(裸剤、被覆剤を含む)、チュアブル錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤(粉末剤)、細粒剤、および顆粒剤などの固形形態など、任意の経口投与形態を採用することができる。
また本発明の組成物は、製剤形態を有するものに限らず、上記標識ピリミジン化合物を含み、本発明の作用効果を妨げないものであればよく、上記標識ピリミジン化合物を任意の食品素材と組み合わせて、固形食、流動食または液状食の形態を有するものであってもよい。
本発明の組成物は、実質上、有効成分である上記同位体標識ピリミジン化合物だけからなるものであってもよいが、本発明の作用及び効果を損なわない限り、他の成分として、各製剤形態(投与形態)に応じて、通常当業界において用いられる薬学上許容される任意の担体及び添加物を配合した形態であってもよい。
この場合、有効成分として配合する同位体標識ピリミジン化合物の量としては、特に制限されることない。例えば、組成物100重量%中、1〜95重量%の割合を挙げることができ、好ましくはかかる範囲で適宜調整することができる。
本発明の組成物を、例えば錠剤、チュアブル錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤(粉末剤)、細粒剤、および顆粒剤などの固形形態に成形するに際しては、各種形態に応じて各種の担体または添加剤を用いることができる。
担体または添加剤として、例えば乳糖、白糖、デキストリン、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、リン酸二水素カルシウム、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤;水、エタノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セラック、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストリン、プルラン等の結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポピドン等の崩壊剤;白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;ポリソルベート80、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール、コロイド状ケイ酸、ショ糖脂肪酸類、硬化油等の滑沢剤;クエン酸、無水クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等のpH調整剤;酸化鉄、βカロテン、酸化チタン、食用色素、銅クロロフィル、リボフラビン等の着色剤;およびアスコルビン酸、塩化ナトリウム、各種甘味料等の矯味剤等を使用できる。
錠剤は必要に応じて通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、フィルムコーティング錠、二重錠、多層錠等とすることができる。またカプセル剤は常法に従い、有効成分である同位体標識ピリミジン化合物を上記で例示した各種の担体と混合して硬化ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填して調製される。
なお、本発明の組成物において、特に、被験者の個体差によるばらつきが少なく高い精度で胃排出能を測定するための好適な組成物として、(a)同位体標識ピリミジン化合物と(b)糖及び/又は糖アルコールとを混合粉砕し、これにより得られる粉末原料を用いて製剤化してなる組成物を挙げることができる。
ここで使用される糖および糖アルコールは、薬学的に許容される限り特に制限されるものではない。例えば、糖に関しては、グルコース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、アラビノース、マンノース等の単糖類;麦芽糖、イソマルトース、セロビオース、乳糖、ショ糖、トレハロース等の二糖類等が挙げられる。好ましくはグルコース及びショ糖である。また、糖アルコールに関しては、例えば、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、還元パラチノース、ラクチトール等が挙げられる。好ましくはマンニトール、キシリトール、エリスリトール、更に好ましくはマンニトールである。(b)成分として、好ましくは糖アルコールである。
また組成物中の(a)成分の配合割合として、好適には、組成物の総重量に対して、5〜20重量%、好ましくは6〜18重量%、より好ましくは8〜15重量%を挙げることができる。また(b)成分の配合割合は、組成物の総重量に対して、通常80〜95重量%、好ましくは82〜94重量%、より好ましくは85〜92重量%を挙げることができる。
(a)成分に対する(b)成分の配合比率としては、制限はされないが、例えば、(a)成分100重量部に対して、上記(b)成分が400〜1900重量部、好ましくは450〜1550重量部、更に好ましくは550〜1150重量部の割合を例示することができる。
かかる組成物は、好適には(a)成分と(b)成分を含む粉末原料を用いて製剤化することにより製造される。上記粉末原料は、好ましくは(a)成分と(b)成分を上記比率で混合し、粉砕処理することによって調製することができる。粉末原料の粒子径は特に制限されないが、被験者間のバラツキを抑制し、胃排出能測定の精度を高めるという観点から、50%粒子径が40μm以下、好ましくは、50%粒子径が30μm以下、更に好ましくは50%粒子径が5〜20μmであることが望ましい。また、その粒度分布として、好ましくは50%粒子径が40μm以下であり、且つ90%粒子径が200μm以下であるもの;更に好ましくは50%粒子径が30μm以下であり、且つ90%粒子径が100μm以下であるもの;特に好ましくは50%粒子径が5〜20μmであり、且つ90%粒子径が10〜70μmであるものが例示される。かかる粒度分布は、乾式レーザー法(測定条件;焦点距離:100mm、平均化回数:10回、平均化間隔:5ミリ秒、エアー圧力:0.4MPa)にて測定される。
なお、上記粉末原料の調製に採用される粉砕処理としては、制限されないが、乾式粉砕機を用いた粉砕処理が好ましい。当該乾式粉砕機として、具体的にはハンマーミル粉砕機、ピンミル粉砕機、ジェットミル粉砕機等を例示することができる。
当該組成物は、上記(a)成分と(b)成分からなるものであってもよいし、またこれらの成分が上記配合比率で含まれるものであれば他の成分を添加して製剤化されてもよい。この場合の他の成分としては、前述する任意の薬学的に許容される担体または添加剤(例えば賦形剤、結合剤、pH調整剤、崩壊剤、吸収促進剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、香料等)であって、(a)および(b)成分と同様に、粉砕処理されたものであることが好ましい。製剤の形態は、固形の経口投与形態であれば、特に制限されず、細粒剤、顆粒剤、散剤(粉末剤)、錠剤(裸剤、被覆剤を含む)、カプセル剤、丸剤等の形態を任意に採用することができる。中でも、細粒剤や顆粒剤等の粒状製剤、特に押出造粒により製された粒状製剤が好適である。
粒状形態に調製する場合、当該製剤の平均粒子径としては、通常、1400μm以下、好ましくは50〜1200μm、更に好ましくは100〜1000μmが例示される。このような粒子径の粒状製剤にすることにより、より高い精度で胃排出能を測定することが可能になる。上記製剤粒子径は、振動篩い法[具体的には、測定装置:ロボットシフターRPS−95(セイシン企業)、振動レベル:5、シフトタイム:5分、パルス間隔:1秒]により測定できる。
本発明の組成物の単位投与形態中に配合される同位体標識ピリミジン化合物(有効成分)の量は、測定試料及び配合する有効成分の種類などによって異なるため、一概に定めることができずケースに応じて適宜調節設定することができる。例えば、有効成分の同位体標識ピリミジン化合物として2-13C標識ウラシル等の同位体標識ウラシルを用いる場合、単位投与あたりの組成物中に同位体標識ウラシルを1〜1000mg/body、好ましくは10〜100mg/bodyの範囲で含むことが好ましく、他の同位体標識ピリミジン化合物を有効成分とする場合も、これに準じて適宜調整することができる。
本発明の胃排出能測定用組成物は、これを経口的に服用した後に、呼気中に排泄される標識COガスの量またはその排泄挙動を測定することによって、当該被験者の胃排出機能を評価することができる。
具体的には、本発明の胃排出能測定用組成物は、被験者に経口的に摂取された後、胃に入り、次いで胃の収縮弛緩運動や蠕動運動により最終的に胃の幽門から排出される。胃幽門から排出されると、十二指腸以降の消化管内(十二指腸、空腸、回腸など)で有効成分である同位体標識ピリミジン化合物が速やかに吸収され、代謝されて呼気中に標識COガスとして排泄される。本発明で用いる同位体標識ピリミジン化合物は、胃内で全く若しくは殆ど吸収されず、胃排出後に速やかに吸収され代謝されて呼気中に標識COガスとして排泄されるものであることを特徴とする。このため、呼気中の標識COガスの排泄挙動(具体的には、例えば呼気中に排泄される12COあたりの同位体標識COガスの割合[同位体標識CO12CO]として示される)は、本発明の組成物、言い換えれば同位体標識ピリミジン化合物の胃排出速度(胃排出時間)に依存する。
具体的には、組成物投与後所定時の呼気中の13COガス量、炭酸ガスΔ(‰)値〔組成物投与前及び投与後の各呼気採取時における呼気中13CO12CO濃度比(δ13C値)の差〕、または13COガスの初速度を胃排出機能の指標とすることができる。例えば、健常者の炭酸ガスΔ(‰)値又は初速度を基準として、それに対して被験者がより低い炭酸ガスΔ(‰)値又は初速度を示す場合、当該被験者は胃排出機能が低下していると診断することができる。
尚、本発明の胃排出能測定用組成物の投与は、胃排出能測定用組成物単独であってもよいし、試験食と共にまたは試験食の摂取の直前または直後に行うこともできる。好ましい方法は、試験食を摂取した直後に本発明の胃排出能測定用組成物を投与する方法である。ここで用いられる試験食は、本発明の組成物による胃排出能の測定の作用効果を妨げないものであれば特に制限されず、また固形食、流動食並びに液状食のいずれの態様であってもよい。
前述するように、ディスペプシア(非潰瘍性上部消化管症候群)の主な原因は、消化管運動機能障害、特に胃排出能の低下である。従って、本発明の胃排出能測定用組成物は、ディスペプシア、特に胃排出能の不全を主な原因とするディスペプシア(例えば、運動不全型ディスペプシア)の診断検査薬として有効に利用することができる。ゆえに、上記本発明の胃排出能測定用組成物に関する説明は、すべてディスペプシア診断検査薬に関する説明として援用することができる。
(III)胃排出能測定方法、および(IV)ディスペプシアの診断方法
本発明はまた、前述する胃排出能測定用組成物を用いる胃排出能測定方法である。胃排出能の測定は、同位体標識ピリミジン化合物を有効成分とする本発明の胃排出能測定用組成物を動物又はヒト等に経口投与し、呼気を採取し、当該呼気試料に排泄される標識COガスの量またはその挙動を調べることによって行うことができる。
例えば、同位元素として13Cを用いる場合は、常法の13C呼気検査法に従って、本発明の胃排出能測定用組成物を被験者に経口投与後、経時的に呼気を採取して、呼気中に排泄される13CO量を13CO12CO量(δ13C値)として、その経時的挙動を測定することによって、胃排出能を測定することができる。
本発明の胃排出能測定用組成物は、胃内で全くまたは殆ど吸収されず、胃排出後に、消化管内のpHに影響されることなく、十二指腸以降(十二指腸、空腸、回腸など)で速やかに吸収され代謝され、高い割合で呼気中に標識COガスとして排泄されるという特性を有する同位体標識ピリミジン化合物を有効成分とするため、胃の排出運動機能をダイレクトかつ精度良く反映して測定することができる。また胃排出能測定用組成物を、同位体標識ピリミジン化合物と糖及び/又は糖アルコールとの粉末原料から調製した場合には、被験者間でのバラツキを抑制してより精度よく胃の排出運動機能を測定することができる。
胃排出能の測定は、本発明の胃排出能測定用組成物を1回のみならず数回繰り返して行うことにより、また絶食条件下や摂食条件下などの種々異なる条件下で複数回行うことにより、より一層高い精度で正確に行うことができる。呼気試料中に含まれる標識COの測定・分析は、使用する同位元素が放射性か非放射性かによって異なるが、液体シンチレーションカウンター法、質量分析法、赤外分光分析法、発光分析法、磁気共鳴スペクトル法等といった一般に使用される分析手法を用いて行うことができる。好ましくは測定精度の点から赤外分光分析法及び質量分析法である。
本発明の胃排出能測定用組成物の投与方法は、前述する通りであるが、特に制限されない。
本発明の組成物の投与単位形態中に配合される同位体標識ピリミジン化合物の量は、用いる標識化合物の種類等によって異なるため一概に定めることができず、ケースに応じて適宜調節設定することができる。例えば標識ピリミジン化合物として、2−13Cウラシルを用いて呼気テストによって測定する場合、単位投与あたりの製剤には2−13Cウラシルを1〜2000mg、好ましくは10〜300mgの範囲で含むことが望ましい。また、他の同位体標識ピリミジン化合物を有効成分とする場合も、これに準じて適宜調整することができる。
当該胃排出能測定方法を利用することによって、被験者の排出能の低下または亢進を診断評価することが可能である。具体的には、当該診断は、上記方法によって測定される被験者の呼気に排泄される標識COガスの量若しくはその挙動を、標準コントロール(健常被験者において呼気に排泄される標識COガスの量若しくはその挙動)と比較することによって行うことができる。
例えば、本発明の胃排出能測定用組成物を被験者に投与した後に呼気中に排泄される標識炭酸ガス(13CO)量または炭酸ガスΔ(‰)(組成物投与後のδ13C値と組成物投与前のδ13C値との差)値を経時的に測定し、その排泄パターンと標準コントロール(健常被験者)の排泄パターンとを対比することによって、被験者の胃排出能を診断評価することができる。
また、呼気に排泄される13COの初速度からも胃排出能の低下の有無を評価することができる。この方法によれば被験者の拘束時間をより一層短縮することが可能となる。この場合、被験者について呼気に排泄される13COの初速度が標準コントロール(健常被験者)の13CO初速度よりも遅い場合に胃排出能が低下していると判断することができる。
前述するように、ディスペプシア(非潰瘍性上部消化管症候群)の主な原因は、消化管運動機能障害、特に胃排出能の低下である。従って、以上説明する胃排出能測定方法は、ディスペプシア、特に胃排出能の不全を主な原因とするディスペプシア(例えば、運動不全型ディスペプシア)の診断方法として有効に利用することができる。ゆえに、上記本発明の胃排出能測定方法に関する説明は、すべてディスペプシア診断方法に関する説明として援用することができる。なおこの場合、胃排出能測定用組成物に代えて、前述するディスペプシア診断検査薬が用いられる。
(V)薬効もしくは治療効果の測定方法
上記の胃排出能測定方法を利用することによって、胃腸薬、とくに消化管運動機能に関わる薬物についてその薬効または個々の被験者に対する治療効果を測定することが可能である。具体的には、当該測定は、被験者に胃腸薬、特に胃運動機能に関わる薬物を投与する前と投与した後のそれぞれにおいて、本発明の胃排出能測定用組成物を用いて胃排出能を測定し、両者を比較することによって実施することができる。これによって該薬物自体の薬効を評価することができる。また、個々に被験者に対する薬物の治療効果を評価することも可能であり、その結果、個々の被験者に適合した薬物を選別する手段としても利用することができる。
なお、消化管運動機能に関わる薬物としては、消化管運動機能改善剤、消化管運動機能亢進剤若しくは消化管運動機能賦活剤(具体的には、アセチルコリン作動薬、ドパミン受容体拮抗薬、ドパミンD2受容体拮抗薬、セロトニン受容体作動薬、オピアト作動薬、漢方薬[六君子湯、半夏瀉心湯、安中散])、または消化管運動機能抑制剤(抗コリン薬やムスカリン受容体拮抗薬など)などのように、胃の蠕動運動を亢進的または抑制的に調節する作用を有する薬物を挙げることができる。
また当該方法は、被験者として、ディスペプシア患者、特に胃運動機能の不全を主な原因とするディスペプシアの患者(運動不全型ディスペプシアの患者)を対象として行うこともできる。この場合、個々のディスペプシア患者に対する薬物療法の効果を測定することでき、個々の患者に応じて、適切な薬物、消化管運動機能に関わる薬物(上記消化管運動機能改善剤、消化管運動機能亢進剤若しくは消化管運動機能賦活剤)を選択することができる。すなわち、上記方法は、ディスペプシア患者に対する薬物、特に消化管運動機能に関わる薬物の薬効を測定する方法、またはディスペプシア患者に対する薬物の治療効果を測定する方法として有効に利用することができる。その具体的な測定方法については、前述する胃排出能測定方法の説明を援用することができる。
以下に実施例並びに実験例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。ただし、本発明はこれらの実施例等によって何ら制限されるものではない。
実施例1 液剤
2−13Cウラシル(分子量113.08:Cambridge Isotope Laboratory製)100mgを、0.1N−NaOH/saline溶液(調整)50mlに溶解し、水溶液の形態をした組成物を調製した(20μmol/mlの割合で2−13Cウラシルを含む)。
実施例2 顆粒剤
(1)顆粒剤の調製
2−13Cウラシル(Cambridge Isotope Laboratory製)20gとD−マンニトール(マンニット、協和発酵製)380gを混合後、サンプルミル(KIIWG−1F、不二パウダル製)に導入し混合粉砕(粉砕条件;粉砕ローター回転数:12800rpm、サンプル供給モーター回転数:約10rpm、スクリーン:1mmパンチスクリーン)し、粉末原料を調製した。得られた粉末原料200gを量り取り、スピードニーダー(NSK−150、岡田精工製)に入れ、精製水20gを加えて練合した。次いで、得られた湿粉体をφ1mm穴のドームダイを装着した押し出し造粒機(ドームグランDG−1L、不二パウダル製)で押し出し、60℃に設定した送風乾燥機(SPHH−200、エスペック製)で乾燥させた。乾燥後の製剤のうち、目開き1400μmの篩いを通過し、且つ目開き355μmの篩いを通過しなかったものを2−13Cウラシル5重量%含有顆粒剤として得た。
斯くして得られた2−13Cウラシル5重量%含有顆粒剤の粒径を、振動篩い法[具体的には、測定装置:ロボットシフターRPS−95(セイシン企業)、振動レベル:5、シフトタイム:5分、パルス間隔:1秒]により測定したところ、表1に示す結果が得られた。
Figure 0005213702
(2)溶解性の評価
室温下で、200mLのビーカーに水道水100mLを入れ、マグネチックスターラー(RCN−7D、EYELA製)を用いて200rpmで攪拌しながら、上記顆粒剤2000mgを投入し目視で製剤の溶解までの時間を測定した。また、顆粒剤を投入して3分経過した際に、該製剤の溶け残りについても目視評価した。その結果、溶解までに要した時間は1分10秒と短く、3分経過後の溶け残りは極めて少量であった。
実施例3 顆粒剤
2−13Cウラシル(Cambridge Isotope Laboratory製)20gとD−マンニトール(マンニット、協和発酵製)180gを混合後、サンプルミル(KIIWG−1F、不二パウダル製)へ導入し混合粉砕(粉砕ローター回転数:12800rpm、サンプル供給モーター回転数:約10rpm、スクリーン:1mmパンチスクリーン)し、粉末原料を調製した。得られた粉末原料144gを量り取り、スピードニーダー(NSK−150、岡田精工製)に入れ、精製水14.4gを加えて練合した。次いで得られた湿粉体をφ1mm穴のドームダイを装着した押し出し造粒機(ドームグランDG−1L、不二パウダル製)で押し出し、60℃に設定した送風乾燥機(SPHH−201、エスペック製)で乾燥させた。乾燥後の製剤の内、目開き1400μmの篩いを通過し、且つ目開き355μmの篩いを通過しなかったものを2−13Cウラシル10重量%含有粒状製剤として得た。
実施例4 錠剤
2-13Cウラシル(Cambridge Isotope Laboratory製)100g、乳糖(H.M.S社製)60g、トウモロコシデンプン(コーンスターチ、日本食品化工製)25g、結晶セルロース(セオラスPH301、旭化成製)10g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L微粉、日本曹達製)4gをスピードニーダー(NSK−150、岡田精工製)に入れ混合後、精製水40gを加えて練合した。次いで、得られた練合粉体を3mmパンチスクリーンを装着したスピードミル(ND-02、岡田精工製)により造粒した後、70℃に設定した送風乾燥機(SPHH−200、エスペック製)で乾燥させた。乾燥後得られた粒状体を16号篩いに通過させて整粒し、整粒後の粒状体199gにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)1gを添加して打錠用顆粒とした。この打錠用顆粒をφ8mmスミ角Rの杵臼を装着した単発打錠機(No.2B、菊水製作所製)を用いて1錠が200mgとなるように打錠して錠剤を得た。
実施例5 粉末製剤
(1)製剤の調製
2-13Cウラシル(Cambridge Isotope Laboratory製)20g及びD−マンニトール(マンニット、協和発酵製)180gを良く混合した後、サンプルミル(SAM、奈良機械社製)に投入して混合粉砕処理(粉砕羽根形状:ピンタイプ、ローター回転数:4000rpm、スクリーン:3mmパンチスクリーン)し、粉末製剤を調製した。
(2)粒度分布測定
上記粉末製剤について、乾式粒度分布測定装置(LDSA-1500A、東日コンピュータ社製)を用いて、焦点距離:100mm、平均化回数:10回、平均化間隔:5ミリ秒、及びエアー圧力:0.4MPaの条件下で粒度分布を測定した。測定した粒度分布から、10%粒子径(10%D[μm])、50%粒子径(50%D[μm])、及び90%粒子径(90%D[μm])を算出した結果を表2に示す。
Figure 0005213702
表2に示すように、粒子が小さくなっており、十分な粉砕効果が得られていることが確認された。
実施例6〜10、11〜15
上記実施例1〜5において、2−13Cウラシルに代えて2−13Cチミンを用いて同様にして液剤(実施例6)、顆粒剤(実施例7および8)、錠剤(実施例9)および粉末製剤(実施例10)を調製した。また、上記実施例1〜5において、2−13Cウラシルに代えて2−13Cシトシンを用いて同様にして液剤(実施例11)、顆粒剤(実施例12および13)、錠剤(実施例14)および粉末製剤(実施例15)を調製した。
実験例1
ラット(雄性、Wister系ラット、8週齢)を用い、ペントバルビタール麻酔下で開腹した後、胃、十二指腸、空腸及び回腸の各部位を結搾し、各消化器(胃、十二指腸、空腸、回腸)内でループを作成した。具体的には、胃については幽門部、十二指腸については幽門部及び幽門部より下20cm、空腸についてはTreitz’ligament下10cmとその下20cm、及び回腸については盲腸より上20cmと回盲部を、各々結搾した。
次いで注射針を用い、蒸留水に溶解した20μmol/mLの6-14Cウラシル(Moravek Biochemicals, Inc.製)の水溶液を、1mL/kgの割合で各消化管ループに注入し,注入部位を接着剤にて封鎖した。6-14Cウラシル水溶液を注入した後,5, 10, 20, 30, 45及び 60分めに頸静脈より注射筒を用い採血し、血清分離剤入りチューブに移した。これを3000rpmで15分間遠心分離し、血清を得た。次いで液体シンチレーションカウンターを用い血清中の放射能を測定した。結果を図1に示す。
図1に示す結果からわかるように、ウラシルは胃では殆ど吸収されず、十二指腸以下の消化管(十二指腸、空腸、および回腸)で吸収された。
実験例2
2-13Cウラシル(Cambridge Isotope Laboratory製)をそのまま各種pHのBritton-Robinson緩衝液(pH2、4、6および8)に溶解して飽和溶液を調製した。各溶液を高速液体クロマトグラフィーにかけて、溶液中に溶解している2-13Cウラシル量を測定し、溶解度(w/v%)を算出した。結果を表3に示す。
Figure 0005213702
この結果から、ウラシルの溶解度は、溶液のpH(消化管pH)によって殆ど変動しないことがわかる。
実験例3
ラット(雌, Wister系ラット, 8週齢:n=3)およびイヌ(雌,ビーグル犬,11kg:n=3)に、6-14Cウラシル(Moravek Biochemicals, Inc.製)を含む水溶液を、20μmol /kgの用量で絶食下単回経口投与し、投与後168時間までに呼気,尿及び糞中に排出された代謝物の量を、放射能を指標として液体シンチレーションカウンターを用いて測定し、累積排泄率を算出した。
またヒト(12例)を対象として、実施例2で調製した 2-13Cウラシル(Cambridge Isotope Laboratory製)を含む顆粒剤を、2-13Cウラシルの量として100mg経口投与し、尿中および呼気中への代謝物の排泄率を測定した。尿中排泄率は、2-13Cウラシル投与後の12時間蓄尿中への代謝物の排泄率(累積排泄率)を、LC/MS/MSで測定した尿中代謝物濃度と尿量から計算した。呼気中排泄率は、呼気中に排泄された13CO濃度(投与前,投与後10,20,30,40,50,60,90分及び2,4,6,8,12時間)をGC/MSを用いて測定した結果から、Ghoosら(Ghoos YF, Maes BD, Geypens BJ, et al. Measurement of gastric emptying rate of solids by means of a carbon-labeled octanoic acid breath test. Gastroenterology 1993; 104: 1640-7)の換算式を用いて算出した。結果を図2に示す。
図2に示すように、ラット、イヌおよびヒトに投与したウラシルは、いずれも投与から12時間以内に代謝されて80%以上の高い割合で呼気中に炭酸ガスとして排泄されることが確認された。
実験例4
抗コリン薬「propantheline」を1mg/kgの割合で、ラット(雌, Wister系ラット,8週齢:n=3)に静脈内投与し、胃排出機能を低下させたモデル動物(胃排出遅延モデル)を作成した。propanthelineを静注した5分後に、 2-13Cウラシル水溶液を10mg/kgの割合で経口投与し、5,10,20,30,40,50および60分後にラット専用呼気採取用ディバイスを用いて、100mL/60secの速度で呼気を吸引採取し、2-13Cウラシル投与前に同様に採取した呼気試料(pre)とともに、呼気試料中の13CO濃度をGC-MS(ABCA-G、Europa Scientific社製)を用いて測定した。なお、対照試験として、propanthelineを静注しない正常な胃排出機能を有するラットに、上記と同様にして2-13Cウラシル(10mg/kg)を投与して、経時的に呼気試料を採取して、各呼気試料中の13CO濃度を測定した。
2-13Cウラシル投与後の呼気中13CO濃度推移を図3に示す。図3中、縦軸は、2-13Cウラシル投与前に採取した呼気のδ13C値(‰)(呼気中13CO12CO濃度比)と2-13Cウラシル投与後に採取した各時それぞれの呼気のδ13C値(‰)との差である△13C値(‰)を示す。また横軸は、2-13Cウラシル投与後、呼気を採取した時間(分)を示す。図3からわかるように、propantheline投与により胃排出能を低下させたラットの呼気排泄13CO濃度(△13C値(‰))は、正常ラットの呼気排泄13CO濃度(△13C値(‰))に比して有意に低かった。この結果から、2-13Cウラシル投与後の呼気中13CO濃度推移に基づいて胃排出能を測定することができること、また2-13Cウラシル投与後の呼気中13C炭酸ガス濃度推移を、正常な胃排出能を有する対照群と比較することによって、胃排出能の低下や亢進の有無を評価することができることがわかる。
実験例5
胃摘出術後20日以内の術性胃不全麻痺が疑われるヒト患者(20症例、うち7症例は胃全摘出)に、実施例2で調製した2-13Cウラシルの顆粒剤を、2-13Cウラシルの量として100mg経口投与し、投与後10,20,30,40,50および60分めに呼気を採取し、2-13Cウラシル投与前に同様に採取した呼気試料(pre)とともに、各呼気試料中の13CO濃度を、GC/MSを用いて測定した。次いで、呼気中13CO濃度の変化量(Δ13C(‰))を算出した。結果を図4に示す。
図4に示すように、本発明の2-13Cウラシルを用いた呼気試験により、上記ヒト患者(20症例)は、胃排出能が正常な患者(正常型:実線)、胃排出能が低下している患者(胃排出遅延型:破線)、および胃排出能が不全の患者(不全型:点線)に分類することができた。なお、これらの患者について、2-13Cウラシル投与後20分後の血漿中2-13Cウラシル濃度を測定したところ、図5に示すように、胃排出能に対応して、胃排出能低下(胃排出遅延)患者および胃排出能不全患者について、血漿中の2-13Cウラシル濃度の低下が認められた。このことから、本発明の2-13Cウラシルを用いた呼気試験は、胃排出能をよく反映していることがわかる。
実験例6 診断精度の評価
実施例2の顆粒剤各々1gを3名の健常者(被験者A、B及びC)に経口投与し、経時的に呼気を採取して呼気中13CO濃度をGC-MS分析装置(ABCA-G、Europa Scientific社製)を用いて測定した。
製剤投与後の呼気中13CO濃度推移を図6に示す。図6中、縦軸は、顆粒剤投与前に採取した呼気のδ13C値(‰)(呼気中13CO12CO濃度比)と顆粒剤投与後に採取した各時それぞれの呼気のδ13C値(‰)との差である△13C値(‰)を示す。また横軸は、顆粒剤投与後、呼気を採取した時間(分)を示す。図6からわかるように、呼気試験において、実施例2で調製したような2-13Cウラシル等の同位体標識ピリミジン化合物と糖及び/又は糖アルコールとを混合粉砕して調製した粉末原料を用いて製剤化した顆粒剤を用いると、被験者間の呼気中13CO濃度推移が類似しており、個人差によるばらつきが少なかった。この結果から、好適には上記のような製剤を使用して投与後20分から30分の呼気中13CO濃度を指標として胃排出能を測定することにより、個人差によるばらつきが少なく、迅速且つ高い精度でディスペプシアを診断できると考えられる。
胃(stomach)、十二指腸(duodenum)、空腸(jejunum)、および回腸(ileum)におけるウラシル(6-14Cウラシル)の吸収を示す図である。 ウラシルの体内動態を示す図である。 実験例3において、胃排出遅延モデル(ラット)(propantherinel前処理)と胃排出能が正常なラット(control)に2-13Cウラシルを経口投与した場合に、呼気に排泄された13COの挙動を経時的に示した結果である。 実験例4において、2-13Cウラシルを20名の胃不全麻痺が疑われる患者に投与した場合に、呼気に排泄された13COの挙動を経時的に示した結果である。 図4の結果から、胃排出能正常、胃排出能低下および胃排出能不全の3群に分類された各群の患者について2-13Cウラシル投与後20分後の血漿中の2-13Cウラシル濃度を示す。 実施例2の顆粒剤を3名の健常者(被験者A、B及びC)に投与した場合に、呼気に排泄された13COの挙動を経時的に示した結果である。

Claims (7)

  1. 生体内で標識COガスに変換されて呼気中に排泄される、同位元素C又はOの少なくとも一方で標識されてなるウラシルまたはチミンを有効成分とする、胃排出能測定用組成物。
  2. 同位元素が13C、14C及び18Oからなる群から選択されるいずれか少なくとも一種である請求項1記載の胃排出能測定用組成物。
  3. 請求項1または2に記載する組成物からなるディスペプシア診断検査薬。
  4. 上記ディスペプシアが胃排出能不全を原因とするディスペプシアである、請求項記載のディスペプシア診断検査薬。
  5. 請求項1または2に記載の組成物を経口的に摂取した胃排出能の低下または亢進が疑われる被験者から採取された呼気を被験試料として、
    当該被験試料中に排泄された標識COの量もしくはその挙動を、上記と同じ組成物を摂取した健常者から採取した呼気への排泄標識COの量もしくはその挙動と比較する工程、及び
    被験者の呼気に排泄される標識CO の初速度が、健常被験者の呼気排泄標識CO の初速度よりも遅い場合、または被験者の呼気に排泄される標識CO の濃度が、健常被験者の呼気排泄標識CO 濃度よりも低い場合に、被験者について胃排出能が低下していると判断する工程
    を有する、胃排出能測定方法。
  6. 請求項3または4に記載のディスペプシア診断検査薬を経口的に摂取したディスペプシアが疑われる被験者から採取された呼気を被験試料として、
    当該被験試料中に呼気内に排泄された標識COの量もしくはその挙動を、同じ検査薬を摂取した健常者から採取した呼気への排泄標識COの量もしくはその挙動と比較する工程、及び
    被験者の呼気に排泄される標識CO の初速度が、健常被験者の呼気排泄標識CO の初速度よりも遅い場合、または被験者の呼気に排泄される標識CO の濃度が、健常被験者の呼気排泄標識CO 濃度よりも低い場合に、被験者について胃排出能が低下していると判断する工程
    を有する、胃排出能の不全を原因とするディスペプシアの決定方法。
  7. 生体内で標識COガスに変換されて呼気中に排泄される、同位元素C又はOの少なくとも一方で標識されてなるウラシルまたはチミンの、ディスペプシア診断検査薬の製造のための使用。
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