JP5210523B2 - 粘着体、及び剥離シート - Google Patents

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Description

乾式電子写真方式用のプリンターラベル等に使用される粘着体及び剥離シートに関する。
乾式電子写真方式用のプリンターラベル等に使用される粘着体は、剥離シートに粘着シートが貼着されて構成され、粘着シートの一部が耳部としてカス取りされ、残った粘着シートの基材が、印刷が施されるためのラベル部として使用される。このような用途で使用される粘着体は、プリンターにおける走行性を良好にし、紙詰まりを防止するために、剥離シートに高い滑り性が要求される。
また、近年、粘着体は、環境への負荷低減が要求されつつあり、剥離剤に無溶剤タイプのシリコーンが使用されつつあり、粘着剤にはエマルションタイプのものの使用が検討されつつある。
特許文献1には、剥離シートの滑り性を向上するための無溶剤タイプの剥離剤組成物が開示されている。ここでは、分子鎖末端にアルケニル基を有する低分子オルガノポリシロキサンと、高分子オルガノポリシロキサンとを含む剥離剤組成物において、低分子オルガノポリシロキサンのアルケニル基の1分子当たりの個数を2個より少なくし、これにより剥離シートの滑り性を改善している。
また、特許文献2には、分岐構造を有し、分子鎖末端にのみアルケニル基を有する低粘度ジオルガノポリシロキサンをベースとする無溶剤タイプの剥離剤組成物において、分子鎖末端にのみアルケニル基を有する高粘度ジオルガノポリシロキサンを添加することにより、剥離シートに滑り性が付与できる構成が開示されている。
特開2002−356667号公報 特開2006−152265号公報
しかし、特許文献1では、剥離シートの滑り性が改善されるが、低速剥離時の剥離力が小さく設定されているので、印刷中やラベル搬送中にラベル部が剥離シートからめくれ易くなり、搬送不良等のトラブルが生じやくなる。また、高速剥離時の剥離力が大きく設定されているので、高速で粘着シートを剥離させると粘着シートが切れやくなり、高速でカス取りが行えないという問題がある。特許文献2でも、剥離力の速度依存性について考慮されておらず、同様の問題が発生する虞がある。
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、剥離シートの滑り性を改善すると共に、低速剥離時の剥離力を所定のレベルに保ち、かつ高速剥離時の剥離力を抑えることができる無溶剤タイプの剥離剤組成物を用いた粘着体を提供することを目的とする。
本発明に係る粘着体は、剥離シート基材の一方の面に剥離剤層を備えた剥離シートに、粘着シート基材の一方の面に粘着剤層を備えた粘着シートを、剥離剤層に粘着剤層が接するように、貼着されて構成される粘着体において、剥離剤層が、質量平均分子量1000〜20,000の1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する低分子オルガノポリシロキサンと、質量平均分子量50,000〜500,000の高分子直鎖状オルガノポリシロキサンとを含む付加反応型無溶剤タイプの剥離剤組成物が硬化被膜して形成されることを特徴とする。
上記高分子直鎖状オルガノポリシロキサンは、充分な滑り性を発現させるために、アルケニル基を少なくすることが好ましく、分子末端のみにアルケニル基を有し、又はアルケニル基を有さないことが好ましい。分子末端のみにアルケニル基を有する場合、例えば、1分子中の各分子末端は1〜3個のアルケニル基を有する。剥離剤組成物の硬化前の粘度は、例えば50〜3000mPa・sである。また、例えば、剥離シートの剥離剤層表面とポリエチレンテレフタレートとの動摩擦係数はJIS P8147に準じた測定法において、0.1〜0.6となる。
また上記粘着剤層は、アクリル系エマルション粘着剤で構成されることが好ましく、アクリル系エマルション粘着剤は、官能基含有モノマーを0.3〜5.0質量%含むアクリル酸エステル系共重合体を含むエマルション粘着剤であることが好ましい。アクリル系エマルション粘着剤と上記剥離剤組成物の組み合わせにより、低速剥離時の剥離力を所定のレベルに保ち、かつ高速剥離時の剥離力を充分に抑えることが可能となる。また、このような構成によれば、剥離剤層及び粘着剤層に、有機溶剤を使用しなくても良くなるので、環境負荷を低減することができる。
本発明においては、温度23℃、湿度50%の環境下において、剥離速度0.3m/分、剥離方向180°の条件で測定される、剥離シートの粘着シートに対する剥離力は、50〜1500mN/50mmであることが好ましい。また、温度23℃、湿度50%の環境下において、剥離速度100m/分、剥離方向180°の条件で測定される、剥離シートの粘着シートに対する剥離力は、100〜3000mN/50mmであることが好ましい。
本発明においては、剥離シートの幅方向における両端部には、粘着体を長手方向に送るための送り孔部が穿設され、粘着シートは、その一部が耳部として剥離シートから取り除かれて、剥離シートに残された部分が印刷が施されるためのラベル部として使用されることが好ましい。
本発明に係る剥離シートは、剥離シート基材の一方の面に剥離剤層を備えた剥離シートにおいて、剥離剤層が、質量平均分子量1000〜20,000の1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する低分子オルガノポリシロキサンと、質量平均分子量50,000〜500,000の高分子直鎖状オルガノポリシロキサンとを含む付加反応型無溶剤タイプの剥離剤組成物が硬化被膜して形成されることを特徴とする。
本発明においては、低分子オルガノポリシロキサンに、高分子量の直鎖状オルガノポリシロキサンを添加した剥離剤組成物を剥離シートに用いることにより、剥離シートの滑り性が良好で、かつ低速及び高速剥離時に適正な剥離力を有する粘着体を得ることができる。また、この剥離シートに、エマルションタイプの粘着剤、特に官能基含有モノマーを0.3〜5.0質量%含むアクリル酸エステル系共重合体を含むアクリル系エマルション粘着剤を用いた粘着シートを組み合わせることにより、特に適正な剥離力を有する粘着体を得ることができる。さらには、無溶剤系剥離剤及びエマルション粘着剤を用いることにより、環境負荷の少ない粘着体を提供することができる。
以下本発明について、実施形態を用いてさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る粘着体を示す模式的な断面図である。粘着体10は、剥離シート基材11の一方の面に剥離剤層12を備えた剥離シート13に、粘着シート基材21の一方の面に粘着剤層22を備えた粘着シート23が、剥離剤層12が粘着剤層22に接するように、貼着されて構成される。
図2は、粘着体10をプリンターラベルに適用した例である。粘着体10の粘着シート23は、その基材21(図1参照)の表面側から、所定の部分を囲むように、切り込み41が入られて抜き加工が施され、これにより粘着シート23は切り込み41に囲まれたラベル部42と、ラベル部42以外の耳部43とから成る。耳部43は、剥離シート13から剥離されて取り除かれ、剥離シート13の上には、ラベル部42が残され、ラベル部42が残された粘着体10はプリンターラベルとして使用される。
粘着シート23は、幅方向(図2における左右方向)における両端部が少なくとも耳部43として取り除かれ、粘着シート23が取り除かれた、剥離シート13の幅方向における両端部には、長手方向(図2における上下方向)に沿って並ぶ無数の送り孔44が穿設されている。プリンターラベルは、プリンター内部において、送り孔44が、例えば送りピン(不図示)に嵌め合わされ、かつ送りピンが移動することにより、ラベルの長手方向に搬送され、印刷部(不図示)でラベル部42の基材21の上面に印刷が施される。
ラベル部42は、図2において、幅方向において3つ離間して並べられたが、この構成に限定されず、幅方向において1つ以上並べられればいくつ並べられても良いし、ラベル部同士が離間されていなくても良い。長手方向においても同様に隣接するラベル部42は離間していなくても良い。また、送り孔44は、耳部43が剥離された後に、形成されても良いし、剥離される前から形成されていても良い。
剥離シート13は、剥離シート基材11上に、付加反応型無溶剤タイプの剥離剤組成物が塗布された後、熱硬化によって硬化被膜して剥離剤層12が剥離シート基材11上に形成することにより作製される。
剥離シート基材11は、剥離剤層12を支持する機能を有しており、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムやポリメチルペンテンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウム、ステンレス等の金属箔、グラシン紙、上質紙、コート紙、含浸紙、合成紙等の紙、これら紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートした紙等で構成されている。
剥離シート基材11の坪量は、特に限定されないが、5〜300g/m2であるのが好ましく、10〜200g/m2であるのがより好ましい。
剥離剤組成物は、低分子オルガノポリシロキサンを主ポリマーとし、高分子直鎖状オルガノポリシロキサン、架橋剤、及び触媒が添加されたものであり、更に所望により、反応抑制剤、剥離調整剤、密着向上剤などが添加されていても良い。また、剥離剤塗工後の硬化工程で、加熱に加えて紫外線照射を行う場合、光開始剤が添加されていても良い。
低分子オルガノポリシロキサンとしては、質量平均分子量1000〜20,000の1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが使用され、このオルガノポリシロキサンは例えば一般式(I)で示される。
12 2SiO(RRSiO)m(RR2SiO)nSiR2 21 ・・・(I)
ここで、Rは脂肪族不飽和結合を有しない同一又は異種の一価炭化水素、R1はアルケニル基、R2はR又はR1であり、m及びnは自然数を表し、12≦(m+n)≦270である。
1で示されるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基など炭素数2〜10のものが例示される。Rは炭素数1〜12、好ましくは1〜10であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などが挙げられるが、硬化性、剥離性の点から80モル%以上がメチル基であることが好ましい。また、低分子オルガノポリシロキサンの粘度は、例えば10〜300mPa・sである。
高分子直鎖状オルガノポリシロキサンとしては、質量平均分子量50,000〜500,000のものが使用され、例えば、1分子中の各分子鎖末端のみに1〜3個のアルケニル基を有するもの、又はアルケニル基を有しないものが使用され、一般式(II)で示されるものが使用される。
3 3SiO(R2SiO)pSiR3 3 ・・・(II)
ここで、Rは脂肪族不飽和結合を有しない同一又は異種の一価炭化水素、R3はビニル基等のアルケニル基、又は同一若しくは異種の一価炭化水素基であり、pは自然数を表し、700≦p≦7000である。
一般式(II)で示されるように、高分子直鎖状オルガノポリシロキサンは、各分子鎖末端のみに1〜3個のアルケニル基を有し、又はアルケニル基を有さないことが好ましい。高分子直鎖状オルガノポリシロキサンは、1分子中のアルケニル基を少なくし、又はアルケニル基を有さないようにすることにより、その架橋密度が低くなるので、剥離剤層に充分な滑り性を発現させることができる。また、高分子直鎖状オルガノポリシロキサンは、アルケニル基を有さない場合、剥離剤層の滑り性が良好になる傾向にある一方、アルケニル基を有する場合、剥離剤の粘着シートへの転写が防止される傾向にある。
高分子直鎖状オルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ビニル基を各分子鎖末端のみに1個ずつ有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。高分子直鎖状オルガノポリシロキサンは、低分子オルガノポリシロキサン100質量部に対して、好ましくは0.5〜15質量部、特に好ましくは0.8〜12質量部添加される。
架橋剤としては、例えば1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子(SiH)を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、具体的にはジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)等が挙げられる。本実施形態では、架橋剤のSiHと、低分子オルガノポリシロキサン及び高分子直鎖状オルガノポリシロキサンのアルケニル基との付加反応により硬化被膜が形成される。
架橋剤は、剥離剤組成物中において、ケイ素原子結合水素原子の数が、アルケニル基の数に対して、0.8〜5.0(モル比)になるように添加されることが好ましい。モル比が0.8より低いと当該組成物の硬化性が低下し、5.0より高いと剥離剤の剥離力が重くなり、剥離性能が悪化する虞がある。
触媒としては、例えば白金系化合物が用いられ、白金系化合物の例としては、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム、ロジウム触媒等が挙げられる。触媒は、付加反応型のオルガノポリシロキサン及び架橋剤の合計量に対し、白金系金属として1〜1000ppm程度添加される。
剥離剤組成物の硬化前の粘度は、50〜3000mPa・sであることが好ましく、80〜2500mPa・sであることがより好ましく、特に好ましくは100〜2000mPa・sである。粘度が上記下限値より低くなると、剥離シート基材に紙を使用した場合に剥離剤組成物が剥離シート基材に染み込みやすくなり、上限値より高いと剥離シート基材への剥離剤組成物の塗工が難しくなる。
剥離剤層12の塗布量は、特に限定されないが、0.05〜5g/m2であるのが好ましく、0.1〜3g/m2であるのがより好ましい。
剥離剤組成物を剥離シート基材11上に塗工する方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等の既存の方法が使用できる。
上記剥離剤組成物が使用されることにより、剥離シート13の動摩擦係数が以下のように設定され、剥離シート13の滑り性が良好になる。例えば、剥離シートの剥離剤表面とポリエチレンテレフタレートとの動摩擦係数は、JIS P8147に準じた測定法において、0.1〜0.6となり、その上限値は好ましくは0.55、特に好ましくは0.5となり、また、その下限値は好ましくは0.15、特に好ましくは0.2となる。動摩擦係数が上記上限値を超えると、粘着体20の走行性が悪くなり、プリンター内部における紙詰まり等が発生しやすくなる。また、動摩擦係数が上記下限値より低くなると、例えば生産工程において、剥離シートがロールに巻き取られる際、巻きずれが起こる虞がある。
粘着シート23は、粘着シート基材21上に、粘着剤が塗布されて、粘着剤層22が粘着シート基材21上に形成されることにより作製される。その後、粘着シート23は、粘着剤層22が剥離剤層12に接するように、剥離シート13と粘着シート23が貼り合わせられ、粘着体10が作製される。なお、剥離シート13の剥離剤層12の上に、粘着剤を塗布して粘着剤層22を形成し、次いで、粘着剤層22の上に粘着シート基材21を貼着させることにより粘着体10を作製してもよい。
粘着剤を塗工する方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等の既存の方法が使用できる。
粘着シート基材21は粘着剤層22を支持する機能を有しており、例えば、上質紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙等の紙、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウム、ステンレス等の金属箔等の単体もしくは複合物で構成されている。粘着シート基材21は、その表面または裏面に、印刷インクまたは粘着剤層22の密着をよくする等の目的で、表面処理が施されていてもよい。
粘着剤としては、アクリル系エマルション粘着剤が使用される。アクリル系エマルション粘着剤は、官能基含有モノマーと、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等の他のモノマーとを共重合して得られるアクリル系共重合体を主成分として構成され、溶媒として水を含み、乳化剤、増粘剤等の所望の添加剤が適宜含まれており、必要に応じて、安定剤、粘着付与剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等をさらに含んでいてもよい。官能基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタアクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーが挙げられる。官能基含有モノマーは、アクリル酸エステル系共重合体を構成するモノマー全体を基準(100質量%)として、0.3〜5.0質量%含むことが好ましい。
粘着剤層22の塗布量は、特に限定されないが、5〜60g/m2であるのが好ましく、10〜40g/m2であるのがより好ましい。
本実施形態では、粘着剤をエマルションで構成することにより、粘着剤層及び剥離剤層のいずれにも有機溶剤を使用しなくて良いので、環境負荷を低減することができる。また、アクリル系エマルション粘着剤から形成される粘着剤層と、上記剥離剤組成物から形成される剥離剤層とを組み合わせて使用し、かつ粘着剤の官能基含有モノマーの含有量を上述した所定の範囲内にすることにより、高速剥離時、及び低速剥離時の剥離シートの剥離力を、所望の範囲に設定することができる。
すなわち、温度23℃、湿度50%の環境下において、剥離速度0.3m/分、剥離方向180°の条件で測定された、剥離シートの粘着シートに対する剥離力(以下、低速剥離力という)は、50〜1500mN/50mmとなり、好ましくは80〜1200mN/50mm、最も好ましくは100〜1000mN/50mmとなる。上記上限値を超えると、低速剥離力が高くなりすぎ、ユーザーがラベル部を剥がすとき、無理な負荷をかけなければならず、ラベル部が剥がしにくくなる。また、下限値を下回ると、印刷中や搬送中に、ラベル部が剥離シートからめくれやすくなり、搬送不良等が生じやすくなる。
また、温度23℃、湿度50%の環境下において、剥離速度100m/分、剥離方向180°の条件で測定された、剥離シートの粘着シートに対する剥離力(以下、高速剥離力という)は、100〜3000mN/50mmとなり、好ましくは150〜1800mN/50mm、特に好ましくは200〜1600mN/50mmとなり、高速剥離力は、低速剥離力の1〜3倍になることが好ましい。高速剥離力が上記下限値より低くなると、耳部をカス上げするときに、ラベル部が耳部と共に飛ぶ可能性が高くなる。また、上記上限値を超える場合、カス上げのときに高速で耳部(粘着シート)を剥離させると、粘着シートが途中で切れる可能性が高くなる。
なお、本明細書において粘度とは、JIS K7117−1の4.1(ブルックフィールド形回転粘度計)に準拠し、25℃において測定されたものである。
また、質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、各シリコーン樹脂を測定し、ポリスチレン換算値として求めたものをいう。測定条件は以下の通りである。
測定装置:Shodex GPC SYSTEM-21H(商品名、昭和電工社製)
カラム:Waters, styragel(R) HR5E を2本使用
測定溶媒:クロロホルム 測定温度:40℃
流量:1.0ml/分 試料濃度:1.0%
本実施形態について、以下実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例の構成に限定されるわけではない。
[実施例1]
低分子オルガノポリシロキサン(1分子中に5個のビニル基を含有、質量平均分子量8000)と、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンとの混合物(混合物中のアルケニル基に対するケイ素原子結合水素原子のモル比1.8)100質量部に、高分子直鎖状オルガノポリシロキサンとして質量平均分子量4.0×105のジメチルポリシロキサン5質量部を添加し、さらに白金触媒(商品名:SRX-212、東レ・ダウコーニング社製)1質量部を添加し、剥離剤組成物を得た。剥離剤組成物の粘度は500mPa・sであった。次いで、剥離シート基材として坪量80g/m2のグラシン紙を用意し、この基材に剥離剤組成物を塗布量1.0g/m2になるように均一に塗布し、140℃で加熱処理して硬化させて、基材の一方の面に剥離剤層が形成された剥離シートを得た。
剥離シートの剥離剤層の上に、アクリル酸エステル系共重合体(モノマー組成:アクリル酸−2−エチルヘキシル49質量%、アクリル酸ブチル50質量%、アクリル酸1質量%)を含むアクリル系エマルション粘着剤を、アプリケーターを用いて、乾燥後の塗布量が30g/m2になるように塗工した。その後、100℃で1分間オープンにて乾燥後、坪量64g/m2の上質紙(商品名:NPiフォーム、日本製紙社製)を粘着シート基材として粘着剤層の上に貼り合わせ、粘着体を得た。
[実施例2]
高分子直鎖状オルガノポリシロキサンとして、ジメチルポリシロキサンの代わりに、各分子鎖末端に1個のビニル基を有する(すなわち、1分子中にビニル基を2個有する)質量平均分子量4.0×105のオルガノポリシロキサン5質量部を添加した以外は、実施例1と同様に実施した。なお、剥離剤組成物の粘度は500mPa・sであった。
[実施例3]
高分子直鎖状オルガノポリシロキサンの添加量を7質量部にしたこと以外は、実施例2と同様に実施した。剥離剤組成物の粘度は1500mPa・sであった。
[実施例4]
高分子直鎖状オルガノポリシロキサンの添加量を2質量部にしたこと以外は、実施例2と同様に実施した。剥離剤組成物の粘度は300mPa・sであった。
[実施例5]
高分子直鎖状オルガノポリシロキサンの添加量を1質量部にしたこと以外は、実施例2と同様に実施した。剥離剤組成物の粘度は250mPa・sであった。
[実施例6]
高分子直鎖状オルガノポリシロキサンとして質量平均分子量1.0×105のジメチルポリシロキサンを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施した。剥離剤組成物の粘度は250mPa・sであった。
[実施例7]
高分子直鎖状オルガノポリシロキサンとして質量平均分子量6.0×104のジメチルポリシロキサンを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施した。剥離剤組成物の粘度は200mPa・sであった。
[実施例8]
低分子オルガノポリシロキサンとして、1分子中に10個のビニル基を含有し、質量平均分子量8000であるオルガノポリシロキサンを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施した。剥離剤組成物の粘度は500mPa・sであった。
[実施例9]
アクリル系エマルション粘着剤のモノマー組成をアクリル酸−2−エチルヘキシル47質量%、アクリル酸ブチル50質量%、アクリル酸3質量%と変更したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
[実施例10]
アクリル系エマルション粘着剤のモノマー組成をアクリル酸−2−エチルヘキシル40質量%、アクリル酸ブチル50質量%、アクリル酸10質量%と変更したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
[比較例1]
高分子直鎖状オルガノポリシロキサンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に実施した。剥離剤組成物の粘度は150mPa・sであった。
[比較例2]
高分子直鎖状オルガノポリシロキサンの代わりに質量平均分子量3.0×103のジメチルポリシロキサンを5質量部添加したこと以外は、実施例1と同様に実施した。剥離剤組成物の粘度は170mPa・sであった。
[比較例3]
高分子直鎖状オルガノポリシロキサンの代わりに質量平均分子量3.0×103のジメチルポリシロキサンを30質量部添加したこと以外は、実施例1と同様に実施した。剥離剤組成物の粘度は200mPa・sであった。
(1)残留接着率測定
幅25mm、長さ20cmの剥離シートの剥離剤層側の面に、ポリエステルテープ(製品名:NO.31B、日東電工社製)を貼り合わせ、その上に20g/cm2の荷重をかけて、70℃で24時間エージングを行った後、ポリエステルテープを剥離シートから剥がして、ステンレス板に貼り付けた。このポリエステルテープをステンレス板から180°の角度で速度0.3m/分にて剥がした時の抵抗力(A)を測定した。ブランクとして剥離シートに貼り合わしていないポリエステルテープをステンレス板に貼り合わせて同様に抵抗力(B)を測定した。そして、残留接着率を100×(A/B)として表した。残留接着率が90%以上であれば、良好であるとして表1において○とした。80%以上90%未満であれば、使用可能であるとして△とした。80%未満であれば使用不可能であるとして×とした。
(2)滑り性試験
各剥離シートについて、JIS P8147に準じて動摩擦係数を測定した。まず、底面6cm×10cm、高さ2cmの金属片(1000g)の底面にポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせた。この金属片を、剥離シートの剥離剤層側の面上に、貼り付けたフィルムが剥離剤層に接するように載せた。引張り試験機を用いて、水平方向に1.0m/分の速度で金属片を引っ張り、安定状態になったときの力F(N)を測定し、F/(1000×9.8×10-3)を動摩擦係数とした。動摩擦係数が0.1以上0.6以下であれば良好であるとして表1には○とした。0.1未満または0.6を超える場合であれば使用不可能として×にした。
(3)紙詰まり試験
各粘着体について、その幅方向の両端部に送り孔を形成すると共に、抜き加工及びカス取りを行い、図2に示すようなプリンターラベルを作製した。印刷機(商品名:VSP-4971、富士通社製)を用いて、プリンターラベルに印刷を施したときに紙詰まりが起こるかどうかのテストを行った。テストは、速度8200行/分、テスト時間10分で行った。
(4)剥離力測定
各粘着体について剥離力を測定した。剥離力の測定は、温度23℃湿度50%の環境で1日放置後、30日放置後それぞれの粘着体について行った。粘着体は幅20mm、長さ200mmに裁断し、引っ張り試験機によって、剥離シートを固定し、粘着シートを所定の剥離速度で180°方向に引っ張ることにより、粘着シートに対する剥離シートの剥離力を測定した。このとき、剥離速度を0.3m/分、100m/分それぞれに設定し、温度23℃、湿度50%の環境下で低速剥離力及び高速剥離力の測定を行った。
表1から明らかなように、分子量50,000〜500,000の高分子直鎖状オルガノポリシロキサンを添加した実施例1〜10は、残留接着率及び滑り性のいずれもが良好な結果となった。また、高分子直鎖状オルガノポリシロキサンの添加量が同一である場合、滑り性は、その分子量が高いほうが良好であった。また、分子量が同一である場合、高分子直鎖状オルガノポリシロキサンがアルケニル基を含有しているとき、アルケニル基を含有していないときに比べ、残留接着率が高くなると共に、滑り性が低くなる傾向となった。
それに対して、剥離剤が分子量50,000〜500,000の高分子直鎖状オルガノポリシロキサンを含まない比較例1,2では、滑り性が悪く、紙詰まり試験において紙詰まりが発生した。また、比較例3のように、分子量が低い直鎖状オルガノポリシロキサンを多量に添加すると、滑り性が良好となったが、残留接着率が低く使用可能なレベルにならなかった。
また、実施例1〜9では、官能基含有モノマーを1〜3質量%含む粘着剤を用いることにより、高速及び低速剥離力のいずれも適正な値となった。それに対して、実施例10のように官能基含有モノマーの含有量を10質量%とすると、実施例1と同一の剥離シートを用いたにもかかわらず、30日後の高速及び低速剥離力のいずれもが重くなりすぎる結果となった。この結果から、本発明の剥離剤組成物に対しては、官能基含有モノマーの含有量が1〜5質量%程度であるアクリル系エマルション粘着剤を用いれば、高速及び低速剥離力のいずれもが適切になることが理解できる。
本実施形態に係る粘着シートを示す模式的な断面図である。 粘着シートをプリンターラベルに適用したときの模式的な平面図である。
符号の説明
10 粘着体
11 剥離シート基材
12 剥離剤層
13 剥離シート
21 粘着シート基材
22 粘着剤層
23 粘着シート
42 ラベル部
43 耳部
44 送り孔

Claims (10)

  1. 剥離シート基材の一方の面に剥離剤層を備えた剥離シートに、粘着シート基材の一方の面に粘着剤層を備えた粘着シートを、前記剥離剤層に前記粘着剤層が接するように、貼着されて構成される粘着体において、
    前記剥離剤層が、下記一般式(I)で示されるアルケニル基を有する質量平均分子量1000〜20,000の低分子オルガノポリシロキサンと、質量平均分子量50,000〜500,000の高分子直鎖状オルガノポリシロキサンとを含む付加反応型無溶剤タイプの剥離剤組成物が硬化被膜して形成されることを特徴とする粘着体。
    SiO(RRSiO)(RRSiO)SiR ・・・(I)
    (ここで、Rは脂肪族不飽和結合を有しない同一又は異種の一価炭化水素であり、Rはアルケニル基であり、RはR又はRであり、m及びnは自然数を表し、12≦(m+n)≦270である。)
  2. 前記剥離剤組成物の硬化前の粘度が、50〜3000mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載の粘着体。
  3. 前記高分子直鎖状オルガノポリシロキサンは、1分子中の各分子末端のみに1〜3個のアルケニル基を有し、又はアルケニル基を有さないことを特徴とする請求項1に記載の粘着体。
  4. 前記剥離シートの剥離剤層表面とポリエチレンテレフタレートとの動摩擦係数がJIS P8147に準じた測定法において、0.1〜0.6であることを特徴とする請求項1に記載の粘着体。
  5. 前記粘着剤層が、アクリル系エマルション粘着剤で構成されることを特徴とする請求項1に記載の粘着体。
  6. 前記アクリル系エマルション粘着剤は、官能基含有モノマーを0.3〜5.0質量%含むアクリル酸エステル系共重合体を含むことを特徴とする請求項5に記載の粘着体。
  7. 温度23℃、湿度50%の環境下において、剥離速度0.3m/分、剥離方向180°の条件で測定される、前記剥離シートの前記粘着シートに対する剥離力は、50〜1500mN/50mmであることを特徴とする請求項1に記載の粘着体。
  8. 温度23℃、湿度50%の環境下において、剥離速度100m/分、剥離方向180°の条件で測定される、前記剥離シートの前記粘着シートに対する剥離力は、100〜3000mN/50mmであることを特徴とする請求項1に記載の粘着体。
  9. 前記剥離シートの幅方向における両端部には、粘着体を長手方向に送るための送り孔部が穿設され、
    前記粘着シートは、その一部が耳部として前記剥離シートから取り除かれて、前記剥離シートに残された部分が印刷が施されるためのラベル部として使用されることを特徴とする請求項1に記載の粘着体。
  10. 剥離シート基材の一方の面に剥離剤層を備えた剥離シートにおいて、
    前記剥離剤層が、下記一般式(I)で示されるアルケニル基を有する質量平均分子量1000〜20,000の低分子オルガノポリシロキサンと、質量平均分子量50,000〜500,000の高分子直鎖状オルガノポリシロキサンとを含む付加反応型無溶剤タイプの剥離剤組成物が硬化被膜して形成されることを特徴とする剥離シート。
    SiO(RRSiO)(RRSiO)SiR ・・・(I)
    (ここで、Rは脂肪族不飽和結合を有しない同一又は異種の一価炭化水素であり、Rはアルケニル基であり、RはR又はRであり、m及びnは自然数を表し、12≦(m+n)≦270である。)
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