JP4093542B2 - 硬化性シリコーン剥離剤組成物及びそれを使用してなる剥離紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜塗工性,基材への密着性に優れ、シリコーンオイル移行性が低く、剥離力の剥離速度依存性の高い剥離性シリコーン硬化皮膜を与え、硬化性が良好な、付加反応型無溶剤タイプのシリコーン剥離剤組成物及びこの組成物の硬化皮膜が形成されてなる剥離紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、紙やプラスチックフィルムなどの基材と粘着性物質との間の接着又は固着を防止することを目的として、基材面にシリコーン組成物の硬化皮膜を形成させて、剥離性を付与することが行われている。
この場合、基材表面にシリコーン皮膜を形成する方法としては、
(1)白金系化合物を触媒として、脂肪族不飽和基を含有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応させて剥離性皮膜を形成する方法、
(2)有機錫化合物などの有機酸金属塩触媒を使用し、オルガノポリシロキサンを縮合反応させて剥離性皮膜を形成する方法、
(3)アクリル基を含有するオルガノポリシロキサンと光反応開始剤との組成物に紫外線を照射して剥離性皮膜を形成する方法、
(4)アクリル基を含有するオルガノポリシロキサンに電子線を照射して剥離性皮膜を形成する方法、などが知られている。また、形態としては、トルエン等の有機溶剤に溶解する溶剤タイプ、シリコーンをエマルジョン化したエマルジョンタイプ、シリコーンのみからなる無溶剤タイプに分類される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらシリコ−ン皮膜形成法の中で、低速剥離及び高速剥離での種々の剥離特性の要求に対して対応可能な(1)の付加反応型が広く用いられており、また、近年では安全・衛生等の面から溶剤タイプから無溶剤タイプへの転換が進んでいる。また、生産性の面から高速塗工が求められており、レベリング性,ミスト発生が無いとの観点から、より低粘度の無溶剤タイプが要求されている。
しかし、無溶剤タイプのアルケニル基を有するベースポリマーの分子量は溶剤タイプのそれに比べて圧倒的に小さく、架橋密度が高く、硬い硬化皮膜となるため、溶剤タイプに比べ高速剥離での剥離抵抗が小さくなる傾向にある。更に、分子量が小さいほど、即ち、粘度が低くなるほど、この傾向は顕著になり、高速剥離での剥離抵抗が小さく、低速剥離での剥離抵抗が大きく、剥離力の剥離速度依存性が低くなり、目標とする溶剤タイプの剥離力の剥離速度依存性は得られなくなる。無溶剤タイプのベースポリマーの粘度を高くすれば、レベリング性が低下し、高速塗工時における塗工ロール間から発生するミストによる作業者への安全,衛生面での悪影響の問題、オーブンへの吸引によるシリカダストの問題、更に塗工への付着による塗工面状態の低下の問題を生じる。
また、シリコーンレジンを使用する場合は、高速剥離での剥離抵抗は大きくなるものの、低速剥離での剥離抵抗も大きくなり、やはり、目標とする溶剤タイプに近い、剥離力の剥離速度依存性は得られない。
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、硬化性が良好で、薄膜塗工性,基材への密着性に優れ、且つ、高速剥離での剥離抵抗の大きい、剥離力の剥離速度依存性の高い、シリコーンオイル移行性の低い、付加反応溶剤型の剥離特性に近い剥離性のシリコーン硬化皮膜を与える付加反応型無溶剤タイプのシリコーン組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するため主成分となるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応するオルガノハイドロジェンポリシロキサンについて鋭意検討を行った結果、分子鎖両末端及び側鎖に合計して3〜4個のけい素原子に結合した水素原子を有するジオルガノポリシロキサン及び1分子中の側鎖にけい素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用することにより、硬化皮膜の架橋密度を下げ、しかも硬化性,シリコーン移行性,基材との密着性を低下させることなく、高速剥離で剥離抵抗を大きくでき、目標とする付加反応溶剤タイプの剥離特性が得られることを知見し本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、下記(A)〜(D)成分を必須成分とし、25℃における粘度が50〜1,000mPa.sの範囲内であり、有機溶剤を含有しない、硬化性シリコ−ン剥離剤組成物である。
(A)下記一般式(1)
(R1R2SiO1/2)(2+a)(R2SiO)n(RSiO3/2)a・・・・・・・・・・・・・・・(1)
(ここで、R1はアルケニル基、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価の炭化水素基であり、35≦n≦250,aは0または1)で示され、25℃における粘度が50〜1,000mPa.sである分子鎖末端にけい素原子に結合したアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン 100重量部、
(B)下記一般式(2)
(HR2SiO1/2)(2+b)(HRSiO)c(R2SiO)m(RSiO3/2)b ・・・(2)
[ここで、Hは水素原子、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価炭化水素基であり、12≦m≦250、bは0または1、1≦(b+c)≦2 ] で示され、25℃における粘度が2〜1,000mPa.sである分子鎖両末端及び側鎖に合計して3〜4個のけい素原子に結合した水素原子を有するジオルガノポリシロキサン、 0.5〜30.0重量部、
[ただし(A)成分のアルケニル基の量に対する水素原子の量がモル比で0.3〜0.9の範囲である。]
(C)25℃における粘度が2〜1,000mPa.sであり1分子中の側鎖にけい素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.3〜10.0重量部、
[ただし(A)のアルケニル基量に対する水素原子の量がモル比で0.4〜3.0の範囲である]
(D)触媒量の白金族金属系触媒
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳しく説明すると、本発明における(A)成分のオルガノポリシロキサンは硬化性の向上及び硬化後の皮膜の硬度を抑えるため、分子鎖末端のみに、一般式(1)中でR1で示されるけい素原子に結合したアルケニル基を有する。このアルケニル基R1としてはビニル基,アリル基,プロペニル基,5−ヘキセニル基,オクテニル基,デセニル基等が例示される。
Rで示される脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価の炭化水素基としては、メチル基,エチル基,プロピル基等のアルキル基,フェニル基,トリル基等のアリール基などが挙げられるが、硬化性,剥離性の向上の点から80モル%以上がメチル基であることが好ましい。aは0または1であり、即ち、直鎖状及び分岐状でも差し支えないが、aが2以上では、架橋密度が増加して、鎖長延長の効果が低下し、高速剥離での剥離抵抗を大きくするという、本発明の目的、効果の一つが達成されない。
更に、25℃における粘度が50mPa.sより低いと、基材への染み込みが多くなるという不具合いを生じ、1,000mPa.sより高い場合は、塗工性が低下し、高速塗工におけるミスト発生の問題を生じるため、重合度nは35から250の範囲が必要である。
【0006】
本発明における(B)成分のジオルガノポリシロキサンは、分子鎖両末端及び側鎖に合計して3〜4個のけい素原子に結合した水素原子を有する。この分子鎖両末端のSiH基は、(A)成分中のアルケニル基と付加反応して、鎖長延長の効果を示すものである。側鎖中にけい素原子に結合した水素原子がなく、分子鎖両末端のSiH基によってのみ架橋が行われる場合は、シリコーンオイルの移行が生じ易く、シリコーンオイルの非移行が要求されるラベル印刷を伴う用途には不適当である。また、側鎖中の、けい素原子に結合した水素原子が3個以上になると架橋密度が増して、鎖長延長の効果が低下し、高速剥離での剥離抵抗を大きくするという、本発明の目的、効果の一つが達成されない。bは0または1であり、即ち、直鎖状及び分岐状でも構わないが、bが2以上の場合は、側鎖中のけい素原子に結合した水素原子の数が1個以下でないと、本願発明の目的の一つである、高速剥離での剥離抵抗を大きくすることができないという問題を生じる。
Rは前記した基であるが、硬化性,剥離性の向上の点から80モル%以上がメチル基であることが好ましい。また、mは12≦m≦250の範囲であるが、mが2未満であると、(B)成分の沸点が低くなり、加熱硬化時に揮発してしまうという不利が発生する。また、mが250を超えると、基材との密着性が低下するため25℃における粘度は2〜1000mPa.sの範囲内にあることを必要とする。
また、(B)成分の配合量は(A)成分100重量部に対して0.5〜30.0重量部であるが、(A)成分のアルケニル基量と(B)成分のSiH基量によって調整されるものであり、(A)成分のアルケニル基量に対する(B)成分のSiH基量のモル比は0.3〜0.9の範囲である。モル比が0.3未満であると、鎖長延長の効果が十分に得られないため、硬化性に優れ、且つ、高速剥離での剥離抵抗を大きくするという、本発明の目的、効果の一つが達成されず、また、目標とする溶剤タイプの剥離力の剥離速度依存性に近い特性が得られず、モル比が0.9を超えると、架橋密度が低くなり過ぎて、十分な皮膜強度が得られず、且つ、皮膜と基材との密着性が低下する。
【0007】
本発明における(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分のアルケニル基と付加反応して硬化皮膜が形成されるものである。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、側鎖のけい素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも3個有するものであり、下記一般式(3)
R2 eHdSiO(4-e-d)/2……………(3)
[ここでR2は非置換または置換の一価炭化水素基であり、e,dはそれぞれ(e+d)≦3を満たす正数で有る。]で示されるものである。
この種のポリシロキサンとしては、(CH3)HSiO2/2単位,HSiO3/2単位,
(CH3)2SiO2/2単位,(CH3)2HSiO1/2単位,(CH3)SiO3/2単位,(CH3)3SiO1/2単位から成るポリマ−またはコポリマ−が例示されるが、R2HSiO2/2単位を1分子中に少なくとも3個有すものである。これは直鎖状、環状のいずれであってもよく、25℃における粘度が2〜1,000mPa.sの範囲内にあるものである。
また、(C)成分の配合量は(A)成分100重量部に対して0.3〜10.0部であるが、(A)成分のアルケニル基量と(C)成分のSiH基量によって調整されるものであり、(A)成分のアルケニル基量に対する(C)成分のSiH基量のモル比が0.4〜3.0の範囲が必要である。モル比が0.4未満であると硬化性が低下し、3.0を超えると高速剥離での剥離抵抗は大きくなるものの、低速剥離での剥離抵抗も大きくなってしまい、溶剤タイプの剥離力の剥離速度依存性に近い剥離特性を示すという本発明の目的、効果が得られない。
ここで、上記R2としてはメチル基,エチル基,プロピル基等のアルキル基,フェニル基,トリル基等のアリール基などが挙げられるが、付加反応速度が大きいという観点からもメチル基であることが好ましい。
(B),(C)成分のSiH基はいずれも(A)成分のアルケニル基と反応するものであるが、反応性の高い末端にSiH基を有する(B)成分と(A)成分のアルケニル基が、先ず反応して鎖長延長し、残余のアルケニル基と(C)成分及び(B)成分の残りのSiH基とが反応するので、硬化皮膜の硬度が低下し、目標とする溶剤タイプの剥離力の剥離速度依存性に近い剥離特性が得られる。
【0008】
(D)成分の白金族金属系触媒は、(A)成分と(B),(C)成分との付加反応を促進するための触媒であり、付加反応触媒として公知のものが使用できる。このような白金族金属系触媒としては、例えば白金系,パラジウム系,ロジウム系などの金属触媒が挙げられ、これらの中で特に白金系触媒が好ましい。このような白金系触媒としては、例えば塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液やアルデヒド溶液、塩化白金酸と各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体などが挙げられる。
これら白金族金属系触媒の添加量は触媒量であるが、良好な硬化皮膜を得ることができ、また経済的であるとの見地から、(A)成分100重量部に対して白金族金属量として1〜1,000ppmの範囲とすることが好ましい。
【0009】
本発明の組成物は、上記(A)〜(D)成分の所定量を配合することによって得られるが、これらの各成分の外に、他の任意成分、例えば、白金族金属系触媒の触媒活性を抑制する目的で、各種有機窒素化合物,有機りん化合物,アセチレン系化合物,オキシム化合物,有機塩素化合物などの活性抑制剤を、剥離力,硬化皮膜の摩擦抵抗を制御する目的で、粘度が10,000mPa.s以上の、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、更にシリコーンオイルの移行性を重要視しない場合には、末端にけい素原子に結合した水酸基を有するジオルガノポリシロキサン、けい素原子に結合した水素原子やビニル基を有さないジオルガノポリシロキサン、または、シリコーンレジンなどを必要に応じて添加することができる。なお、任意成分の添加量は本発明の効果を妨げない範囲の通常使用される量とすることができる。
【0010】
本発明のシリコーン組成物の調製に際しては、(A)〜(C)成分及び任意成分を予め均一に混合した後、(D)成分を添加することが好ましく、各成分は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。ただし、組成物全体としての25℃における粘度は50〜1,000mPa.sの範囲内とすることが必要であり、1,000mPa.sを超えると、塗工時における塗工ロール間から発生するミストのため高速塗工が出来ず、生産性が低下するため実用的使用が困難となる。
【0011】
次ぎに、本発明の第2の発明である剥離紙について、その製造方法の一例を述べるが、本発明の剥離紙は以下の方法によってのみ製造されるものではなく、その他通常行われる製造方法が使用可能である。
本発明の組成物を塗布し、硬化皮膜を形成する基材としては、グラシン紙,クラフト紙,クレーコート紙などの紙基材,ポリエチレンラミネート上質紙,ポリエチレンラミネートクラフト紙などのラミネート紙,ポリエステル,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリ塩化ビニル,ポリテトラフルオロエチレン,ポリイミドなどの合成樹脂から得られるフィルム、シートなど及びアルミニウムなどの金属箔が挙げられるが、皮膜との密着性に優れるという観点から、紙基材,ラミネート紙の使用が特に好適である。
【0012】
上記基材に本発明の組成物を塗布するには、グラビア・オフセット3本ロール方式または5本、6本などの多段ロール方式などの公知の方法を用いることができる。塗布量としては0.05〜5.0g/m2、特に、0.1〜3.0g/m2の範囲内が好適であり、基材の全面または剥離性の必要な箇所に部分的に塗布する。基材に塗布した後、70〜220℃で、1.5〜60秒の加熱によって硬化させて、本発明の剥離紙を得る。
【0013】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部であり、粘度は25℃における値である。
また、シリコーン組成物の硬化性,剥離力,残留接着率,シリコーンオイル移行性は下記の方法により測定した。
【0014】
(硬化性)
シリコーン組成物を薄膜状フィルム又はシート状の基材表面に所定量塗布し、所定温度の熱風式乾燥機中で加熱して、形成される硬化皮膜を指で数回こすり、くもり及び脱落のない状態になるまでの時間(秒数)を測定し、これを以って硬化性とする。
(剥離力)
シリコーン組成物を薄膜状フィルム又はシート状の基材表面に所定量塗布し、所定温度の熱風式乾燥機中で加熱して、硬化皮膜を成形した後、25℃で24時間、セパレーターでエージング後、この硬化皮膜表面にアクリル系溶剤型粘着剤・オリバインBPS−5127(東洋インキ製造株式会社製商品名)をウエットで130μmの厚さに塗布して、100℃で3分間加熱処理する。次に、この処理面に、坪量64g/m2の上質紙を貼り合わせ、25℃で20時間エイジングさせた後、試料を50mm幅に切断し、引張り試験機を用いて180度の角度で剥離速度0.3m/分、60m/分で、貼り合わせ紙を引張り、剥離させるのに要する力(N)を測定した。なお、0.3m/分の剥離速度には、株式会社島津製作所製DSC−500型試験機を、60m/分の剥離速度には、テスター産業株式会社製TE−702型試験機を用いて測定する。
【0015】
(残留接着率)
剥離力測定の場合と同様にして、基材表面に形成されたシリコーン組成物の硬化皮膜の表面にポリエステルテープ(商品名:No.31Bテ−プ、日東電工株式会社製)を貼り合わせ、1.96KPaの荷重を載せて70℃で20時間エイジングした後、テープを剥がして、ステンレス板に貼り付ける。次に、このテープをステンレス板から180度の角度で剥離速度0.3m/分で剥がし、剥離させるのに要する力A(N)を測定する。また、ブランクとしてポリエステルテープをテフロン(登録商標)板に貼り合わせ、同様に処理したテープをステンレス板から剥離するのに要する力B(N)を測定し、(A/B)×100の値を残留接着率(%)とする。
(シリコーンオイル移行性)
剥離力測定の場合と同様にして、基材表面に形成されたシリコーン組成物の硬化皮膜の表面に、厚さ36μmのPETフィルムを重ね、室温で、0.98MPaで、20時間圧着した後、シリコーン塗工面に接した側のPETフィルム面に油性のインキ(商品名:マジックインキ、寺西化学工業株式会社製)を塗布し、そのハジキ具合により下記の評価基準で、シリコーンオイルの移行性を評価する。
インキのハジキなし:○、
インキのハジキあり:×。
【0016】
[実施例1]
(A)成分として一般式(1)において、Rをメチル基,R1をビニル基,a=0,n=146とした、粘度が390mPa.sの分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100部、(B)成分として一般式(2)においてRをメチル基、c=1,b=0,m=12で、粘度が10mPa.sである分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、側鎖中にけい素原子に結合した水素原子を一個有するジメチルポリシロキサン3.3部、[SiH/(SiCH=CH2)=0.5]、(C)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、粘度が20mPa.sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン1.5部[SiH/(SiCH=CH2)=1.3]、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3部を加え、均一になるまで攪拌した後、(D)成分として、式:Pt/[H2C=C(CH3)2Si]2Oで示される白金とビニルシロキサンとの錯体を上記ジメチルポリシロキサンに対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度330mPa.sのシリコーン組成物を調製した。
次に、得られたシリコーン組成物をポリエチレンラミネート紙(坪量100g/m2)に0.6〜0.7g/m2塗布し、硬化性試験として、120℃で硬化するまでの秒数を求めた。また、剥離力,残留接着率測定用サンプルとしては140℃で30秒間加熱処理して硬化皮膜を形成させたものを用いた。これらの測定結果を表1に示した。
【0017】
[比較例1]
実施例1中で(B)成分を使用せず、(C)成分の量を2.2部[SiH/(SiCH=CH2)=1.8]とした以外は実施例1と同様にして粘度が360mPa.sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行い、結果を表1に示した。
【0018】
[比較例2]
実施例1中で(B)成分として一般式(2)においてRをメチル基、b=0,c=0,m=8であり、粘度が5mPa.sであるジメチルポリシロキサン3.3部、[SiH/(SiCH=CH2)=0.5]とした以外は実施例1と同様にして粘度が320mPa.sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行い、結果を表1に示した。
【0019】
[実施例2]
(A)成分として一般式(1)において、Rをメチル基,R1をビニル基,a=1,n=157とした粘度が260mPa.sである分子鎖末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された分岐状のジメチルポリシロキサン100部、(B)成分として一般式(2)においてRをメチル基、c=1,b=0,m=12であり、粘度が10mPa.sである分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、側鎖中にけい素原子に結合した水素原子を一個、有するジメチルポリシロキサン6.2部、[SiH/(SiCH=CH2)=0.6]、(C)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された粘度が20mPa.sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン1.2部[SiH/(SiCH=CH2)=0.7]、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されジメチルシロキサン単位を27モル%含有する、粘度が40mPa.sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン1.2部[SiH/(SiCH=CH2)=0.5]、更に、任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3部を加え、均一になるまで攪拌した後、(D)成分として前記式で示される白金とビニルシロキサンとの錯体を上記ジメチルポリシロキサンに対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が200mPa.sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行い、結果を表1に示した。
【0020】
[比較例3]
実施例2中で(B)成分を使用せず、(C)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、粘度が20mPa.sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン1.7部[SiH/(SiCH=CH2)=1.0]、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、ジメチルシロキサン単位を27モル%含有する、粘度が40mPa.sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン1.9部[SiH/(SiCH=CH2)=0.8]とした以外は、実施例2と同様にして粘度が220mPa.sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行い、結果を表1に示した。
【0021】
[比較例4]
実施例2で(B)成分の代わりに、分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、側鎖中にけい素原子に結合した水素原子を有さない粘度が5mPa.sであるジメチルポリシロキサン6.1部、[SiH/(SiCH=CH2)=0.6]とした以外は実施例2と同様にして粘度が185mPa.sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行い、結果を表1に示した。
【0022】
[実施例3]
(A)成分として、一般式(1)において、Rをメチル基,R1をビニル基,a=0,n=146とした粘度が390mPa.sである分子鎖末端がジメチルビニルシロキシキ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100部、(B)成分として一般式(2)においてRをメチル基,b=1,c=0,m=40である粘度が18mPa.sである分岐型で分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン14.0部、[SiH/(SiCH=CH2)=0.7]、(C)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、粘度が20mPa.sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン1.4部[SiH/(SiCH=CH2)=1.2]、任意成分として分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、粘度が100,000mPa.sであるジメチルポリシロキサン5.0部、更に1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3部を加え、均一になるまで攪拌した後、(D)成分として前記式で示される白金とビニルシロキサンとの錯体を上記ジメチルポリシロキサンに対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が360mPa.sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様に物性試験を行い、結果を表1に示した。
【0023】
【表1】
【0024】
(実施例の総括)
表1の剥離力の欄の実施例,比較例のデータ対比から、本願発明の組成物が剥離力の剥離速度依存性が高いことが実証され、残留接着率の欄の実施例,比較例のデータ対比から、本願発明の組成物が残留接着率も高く、シリコーンオイル移行性の欄の実施例,比較例のデータ対比から、シリコーンオイル移行も少ないことが解る。また、硬化性は実施例,比較例ともほぼ同等で、良好であった。
【0025】
【発明の効果】
本発明のシリコーン組成物は硬化性が良好で,薄膜塗工性、基材への密着性に優れ、硬化皮膜の硬度が低く、高速剥離での剥離抵抗が大きく、目標とする溶剤タイプに近い、剥離力の剥離速度依存性を有し、溶剤タイプから無溶剤タイプへの転換が円滑に行えるものである。
Claims (2)
- 下記(A)〜(D)成分を必須成分とし、25℃における粘度が50〜1,000mPa.sの範囲内であり、有機溶剤を含有しない硬化性シリコーン剥離剤組成物。
(A)下記一般式(1)
(R1R2SiO1/2)(2+a)(R2SiO)n(RSiO3/2)a・・・・・・・・・・・・・・・(1)
(ここで、R1はアルケニル基、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価の炭化水素基であり、35≦n≦250,aは0または1)で示され、25℃における粘度が50〜1,000mPa.sである分子鎖末端にけい素原子に結合したアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン 100重量部、
(B)下記一般式(2)
(HR2SiO1/2)(2+b)(HRSiO)c(R2SiO)m(RSiO3/2)b・・・(2)
[ここで、Hは水素原子、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価炭化水素基であり、12≦m≦250、bは0または1、1≦(b+c)≦2]で示され、25℃における粘度が2〜1,000mPa.sである分子鎖両末端及び側鎖に合計して3〜4個のけい素原子に結合した水素原子を有するジオルガノポリシロキサン、 0.5〜30.0重量部、
[ただし(A)成分のアルケニル基の量に対する水素原子の量がモル比で0.3〜0.9の範囲である。]
(C)25℃における粘度が2〜1,000mPa.sであり1分子中の側鎖にけい素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.3〜10.0重量部、
[ただし(A)のアルケニル基量に対する水素原子の量がモル比で0.4〜3.0の範囲である]
(D)触媒量の白金族金属系触媒 - 請求項1に記載の剥離剤組成物の硬化皮膜が形成されてなる剥離紙。
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