JP5210018B2 - マウントブッシュ - Google Patents
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Description
その他、ステアリングギヤボックスを車体フレームに支持させる手段としては、ステアリングギヤボックスの外周にゴムブッシュを取り付けて、そのゴムブッシュを略コ字状の金属製バンドで車体フレームに固定する方法がある。
このため、鍔部320をブッシュ嵌合部210から押し出すためには、マウントブッシュ300をブッシュ嵌合部210に対してオーバーストロークさせて、元の方向へ戻さなければならないので、取り付け作業の作業性が悪いという問題点があった。
かかる構成によれば、マウントブッシュは、軸線方向の長さが、マウントブッシュが嵌合されるブッシュ嵌合部よりも長く形成されている。このため、マウントブッシュをブッシュ嵌合部に圧入した際に、マウントブッシュの鍔部とブッシュ嵌合部の端面との間には、軸線方向に所定の隙間が形成される。この隙間があることにより、マウントブッシュは、ブッシュ嵌合部へ嵌合させたときに、折れ曲った鍔部が隙間によって開放されるため、マウントブッシュの弾性で元の形の状態に戻るようになる。
また、かかる構成によれば、ブッシュ嵌合部の外周面が、先端部から後端部に向かって外径が段差状に大きくなるように形成され、マウントブッシュの内周面が、ブッシュ嵌合部の外周面に合わせて段差状に形成されている。これにより、ブッシュ嵌合部をマウントブッシュに圧入し易くすることができる。このように嵌入部材の外径が段差状に形成されていることによって、マウントブッシュの鍔部の厚さを減少させずに済み、ブッシュ性能を満足させることができる。
なお、本発明の一実施形態として、自動車の前輪側に搭載されるステアリングギヤボックスのギヤハウジングを車体に弾性的に取り付けるのに使用されるマウントブッシュを例に挙げて説明する。
マウントブッシュは、取り付け状態によって上下左右の向きが変化する。このため、本発明の実施形態では、便宜上、図面に対して前側を「上」、手前側を「下」として説明する。
マウントブッシュ3を説明する前に、マウントブッシュ3が設置されるステアリング機構Sおよびステアリングギヤボックス1について説明する。
図1に示すように、ステアリング機構Sは、例えば、ステアリングホイールStの操舵入力に応じて駆動源Mを駆動し、その動力を駆動源Mの動力を利用してステアリングホイールStの操作力を軽減させてアシストするパワーステアリング装置からなる。ステアリング機構Sは、ステアリングホイールStからの操舵力がステアリングギヤボックス1内のラック・ピニオン機構(図示省略)に伝達され、ラック軸(図示省略)と、このラック軸の両端にタイロッド9等を介在して転舵車輪(前輪)が転舵されるようになっている。
図1に示すように、ステアリングギヤボックス1は、ステアリング軸Ssの回転を、ラック・ピニオン機構等によってラック軸(図示省略)を横方向の動きに変換して転舵させる装置であり、ギヤハウジング2内に収納されている。ステアリングギヤボックス1は、図2および図3に示すように、ギヤハウジング2に一体形成された複数のブラケット部2aを車体フレーム5の取付部5a(図3参照)にマウントブッシュ3を介在して締結部材6で締結することによって車体に取り付けられている。
なお、ステアリングギヤボックス1のブラケット部2aは、特許請求の範囲に記載の「ブッシュ嵌合部」に相当する。
図2および図3に示すように、マウントブッシュ3は、ステアリング機構S(図1参照)のステアリングギヤボックス1を車体フレーム5に取り付けるために用いられる緩衝材である。図4に示すように、マウントブッシュ3は、円筒状に形成された円筒部3aと、円筒部3aの上下両端に形成された鍔部3b,3cとを主にして略ボビン形状に形成されたゴム製の部材からなる。マウントブッシュ3は、前記円筒部3aと、前記鍔部3b,3cと、上側の鍔部3bの端面3eの径方向側に窪んだ状態に形成された底面部3g(図4参照)と、下側の鍔部3cの開口縁に形成された面取部3hと、円筒部3aの外周面3iに形成されたポケット部3d、凸部3kおよび凹部3mと、内径が段差状に形成された内周面3jと、を有している。このため、マウントブッシュ3は、上下が非対称な形状に形成され、車体フレーム5に取り付ける際に、後記するポケット部3dがある上側が先端側となる。マウントブッシュ3の軸線O方向の長さ(端面3e,3f間の長さ)L1は、このマウントブッシュ3に嵌合されるカラー(嵌入部材)4の軸線Oの方向の長さHよりも隙間L4だけ長く形成されている(図4参照)。
図4に示すように、円筒部3aは、マウントブッシュ3の円筒状の本体を形成する部位であり、鍔部3b,3c間に形成されている。円筒部3aは、マウントブッシュ3において、横方向の振動や衝撃を吸収するように形成されている。円筒部3aは、外周面3iがブラケット部2aに穿設された取付孔2bに圧入され、内周面3jにカラー4が圧入される(図5参照)。マウントブッシュ3を車体に取り付ける前の円筒部3aの軸線方向の長さL3は、ブラケット部2aの厚さTより隙間L5分(図6および図7参照)だけ長く形成されている。その隙間L5の長さは、折り畳んだ状態の鍔部3bが弾性で元のフランジ形状に自動復帰できる長さになっている。
円筒部3aの内周面3jは、上端側から下端側にわたって内径を段々に大きくして形成されている。つまり、内周面3jは、マウントブッシュ3に圧入されるカラー4が適度な押圧力で圧入されるように、カラー4の外周面4eの形状に合わせて段差状に形成されている。
ポケット部3dは、マウントブッシュ3をギヤハウジング2の取付孔2bに圧入した際に、上側の鍔部3bが破損するのを防止するために形成されている。ポケット部3dは、円筒部3aの上端周縁(上側の鍔部3bの下側基端部)に形成された円環状の溝からなる。ポケット部3dは、図6に示すように、マウントブッシュ3を下側から取付孔2bに押し込んだ際に、鍔部3bの端面3eが取付孔2bの開口縁に当接して、鍔部3bが基端部を中心として下方向へ折れ曲がって収納される位置に形成されている。マウントブッシュ3は、車体フレーム5に組み付ける際に、折れ曲がった鍔部3bが入り込む収納空間となるポケット部3dを形成したことによって、ポケット部3dが形成された円筒部3aの部位の肉厚t3が薄くなっている。ポケット部3dは、マウントブッシュ3をギヤハウジング2の取付孔2bに圧入したときに、鍔部3bが収納される大きさに形成されている。ギヤハウジング2の取付孔2bにマウントブッシュ3を取り付けたときには、鍔部3bとブラケット部2aとの間には、隙間L5がある。
凸部3kは、円筒部3aの外周面3iの中央部から外側方向へ向けて突出形成された円環状のものからなる。円筒部3aは、この凸部3kを形成したことによって、径方向の厚さが他の部分よりも厚く形成されている。凸部3kは、マウントブッシュ3をギヤハウジング2に取り付けた際に、取付孔2bの内壁に押し付けられて圧入され、マウントブッシュ3がしっかりと車体フレーム5に取り付けられるように形成されている。
凹部3mは、マウントブッシュ3を取付孔2bに圧入した際に、円筒部3aの外周面3iの下側が、取付孔2bの内壁面に非接触状態になる逃げ用の空間を形成して、弾性が維持されるように形成されている。凹部3mは、下側の鍔部3cの上側基端部に形成された環状溝からなる。凹部3mは、円筒部3aに負荷される横方向の負荷を吸収するために形成されている。
内周面3jは、カラー4が挿入される部位であり、カラー4の外面形状に合わせて、内径が下側に向かって拡径するように段差状(テーパ状)に形成されている。
図4に示すように、鍔部3b,3cは、円筒部3aの両端の外周部から外方向に向いて突設された環状厚板(フランジ)からなる。鍔部3b,3cは、マウントブッシュ3において、上下方向(スラスト方向)の振動や衝撃を吸収するために形成されている。鍔部3b,3cは、上下方向へ折れ曲がることができるように形成され、上側の鍔部3bを先にしてマウントブッシュ3をギヤハウジング2の取付孔2bに圧入した際に、上側の鍔部3bが折れ曲がって折り畳んだ状態になるようになっている(図6参照)。
底面部3gは、マウントブッシュ3を締結部材6で車体に取り付けた際に、板状部材7とブラケット部2aとの間に介在された鍔部3bの端面3eが板状部材7によって強く押圧されて緩衝性が劣るのを避けるために形成された部位である。底面部3gは、上側の鍔部3bの端面3eの軸線O側に形成されて、端面3eから下方向へ一段下がって窪んだ状態に形成されている。車体フレーム5へ取り付け前の底面部3gは、上側の鍔部3bの端面3eから隙間L4分だけ下がった位置に平らに形成されている。その底面部3gは、締結部材6でマウントブッシュ3を車体フレーム5に締結した際に、締結部材6の下面に接触する程度、あるいは、弱い圧縮力で押圧されるように設けられて、スラスト方向の振動を減衰させる弾性を備えている。
面取部3hは、下側の鍔部3cの開口縁に環状に切欠形成されて、マウントブッシュ3にカラー4を圧入した際に、マウントブッシュ3の下端部とカラー4の下端部との間に空間を形成するために設けられている。面取部3hは、マウントブッシュ3にカラー4を圧入する際のガイドと、マウントブッシュ3を車体フレーム5に取り付けた際に、車体フレーム5の上面によって押圧された鍔部3cが座屈変形したときの逃げ部と、を形成するものである。
図4に示すように、カラー4は、外周面3iがマウントブッシュ3の内周面4f内に圧入されて、内周面4fに締結部材6が挿入され、締結部材6とマウントブッシュ3との間に配置される部材である。カラー4は、略円筒状の金属製部材からなる。カラー4は、上側の端面側(先端部)3eから下側の端面3f側(後端部)に向かって外径D1,D2,D3が段差状に大きくなるように形成した外周面4eを有している。
なお、カラー4は、特許請求の範囲に記載の「嵌入部材」に相当する。
図3に示すように、車体フレーム5は、ステアリングギヤボックス1が取り付けられる部材であり、車体の骨格を形成する頑丈な金属製部材である。車体フレーム5には、締結部材6が螺着されるねじ穴5bが形成されている。
図3に示すように、締結部材6は、例えば、ボルトからなる。締結部材6は、板状部材7の挿通孔7aおよびカラー4の挿通孔4gを挿通して、車体フレーム5のねじ穴5bに螺着される。
なお、締結部材6は、ねじ穴5bを貫通したねじ孔にして、車体フレーム5の反対側のナットを配置して、そのナットに螺合させるようにしてもよい。
図3に示すように、板状部材7は、締結部材6のねじ部を挿通させるための挿通孔7aを有し、鍔部3bを押圧することができる部材であれば形状等は特に限定されない。板状部材7は、上側の鍔部3bと、締結部材6の頭部との間に介在される部材であり、例えば、金属製平板部材や、座金等からなる。板状部材7は、締結部材6でマウントブッシュ3を車体に固定した際に、下面が上側の鍔部3bの端面3e、底面部3gおよびカラー4の端面4aを押圧するように組み付けられる。
次に、図3〜図7を主に参照しながら本発明の実施形態にかかるマウントブッシュ3の作用を組み付け手順と共に説明する。
ギヤハウジング2を車体フレーム5に取り付ける場合は、まず、図4に示すように、マウントブッシュ3の上側の鍔部3bを上にして、マウントブッシュ3をギヤハウジング2の下側から取付孔2bに圧入する。このとき、上側の鍔部3bは、取付孔2bの縁に当接して、鍔部3bの基端部を支点として下方向(矢印A方向)に折れ曲がって、ポケット部3d内に入り込む(図6参照)。マウントブッシュ3は、鍔部3bが、ポケット部3d内に入り込んで折り畳んだ状態で取付孔2bの上側へ移動し、下側の鍔部3cが取付孔2bの縁に当接することで、その移動が抑制されてストップし、図6に二点鎖線で示す状態になる。
このように、上側の鍔部3bは、取付孔2bの内側に入り込んだとしても、治具等の特別な工具を使用しなくても、自動的に取付孔2b内から出るようになっている。このため、マウントブッシュ3を車体に取り付ける取付作業の作業性を向上させることができる。
なお、折れ曲って取付孔2b内にあった鍔部3bを取付孔2bから開放して元のフランジの形状に戻し易くするためには、鍔部3bが取付孔2bから開放され易くするために、取付孔2bの上側開口縁に形成した面取2dを適宜な大きさに形成する。
円筒部3aの凸部3kの上下は、ポケット部3dと凹部3mとによってそれぞれ空間が形成されてブラケット部2aと非接触の状態になっているので、ポケット部3dおよび凹部3mに負荷がかかった際に、ポケット部3dおよび凹部3mが変形して荷重を吸収することができる。
その結果、マウントブッシュ3は、円筒部3aによって横方向に負荷される振動や衝撃や異音を吸収して、ギヤハウジング2を車体フレーム5へ弾性的に支持させることができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
また、マウントブッシュ3は、下側と上側とを非対称に形成した場合を説明したが、下側半分を上側半分と対称な形状に形成してもよい。
2 ギヤボックス
2a ブラケット部(ブッシュ嵌合部)
2b 取付孔
2c 端面
3 マウントブッシュ
3a 円筒部
3b,3c 鍔部
3d ポケット部
3e,3f 端面
3g 底面部
3j 内周面
4 カラー(嵌入部材)
4a,4b 端面
4c 先端部
4d 後端部
4e 外周面
D1,D2,D3 外径
H カラーの軸線方向の長さ
L1 マウントブッシュの軸線方向の長さ
L2 底面部の軸線方向の長さ
L3 円筒部の軸線方向の長さ
L4,L5 隙間
T ブラケット部の軸線方向の長さ
t1,t2,t3 厚さ
O 軸線
Claims (3)
- 円筒部の一端に第1鍔部を有し、前記円筒部の他端に第2鍔部を有するマウントブッシュであって、
前記マウントブッシュは、当該マウントブッシュが嵌合されるブッシュ嵌合部内に押し込んで前記第1鍔部が前記円筒部側に折れ曲がった際に、前記第1鍔部が入り込んで収納されるポケット部が設けられ、
軸線方向に外力が加わっていない状態での前記第1鍔部と前記第2鍔部との間の軸線方向の最短の長さが、前記マウントブッシュが嵌合されるブッシュ嵌合部の軸線方向の長さよりも長く、
前記ブッシュ嵌合部に組み付けられた前記マウントブッシュの前記第1鍔部と前記ブッシュ嵌合部の端面とは、該マウントブッシュに軸線方向に外力が加わっていない状態で軸線方向に所定の隙間を有し、
前記所定の隙間は、前記ブッシュ嵌合部に前記マウントブッシュを押し込んで前記第1鍔部が折れ曲がって前記ポケット部に入り込んだ後、前記第2鍔部が前記ブッシュ嵌合部に接触したときに、折り畳んだ状態の前記第1鍔部が、該第1鍔部の弾性で元のフランジ形状に自動復帰可能な長さに形成され、
前記マウントブッシュに嵌入される嵌入部材は、先端部から後端部に向かって外径が段差状に大きくなるように形成した外周面を有し、
前記マウントブッシュは、前記嵌入部材の外周面に合わせて段差状に形成された内周面を有し、
前記ポケット部は、前記段差状の内周面の最も小径に形成された小径部分の外周面に形成され、
前記円筒部の前記ポケット部が形成された部位は、前記ポケット部によって空間が形成されて前記ブッシュ嵌合部と非接触の状態になっていることを特徴とするマウントブッシュ。 - 前記第1鍔部は、外周部側の厚さに対して、基端部の厚さが薄く形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマウントブッシュ。
- 前記マウントブッシュの端面の内径側には、軸線方向の長さが、前記マウントブッシュに嵌入される前記嵌入部材の軸線方向の長さと略同一な底面部が設けられ、
前記第1鍔部は、前記底面部から軸線方向外側へ突き出た位置に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマウントブッシュ。
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