JP5209941B2 - α,β−不飽和エーテルの製造方法 - Google Patents

α,β−不飽和エーテルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、α,β−不飽和エーテルの製造方法に関する。
α,β−不飽和エーテルは、単独重合またはその他の物質との共重合によって、各種合成樹脂、接着剤、潤滑油として、また、医薬、農薬、香料等の中間体として工業上重要な物質である。α,β−不飽和エーテルの製造方法の1つとして、アセタールを熱分解して製造する方法が一般的に知られている。通常、この熱分解反応には触媒が使用される。
そのような触媒の例として、イオン化傾向が水素よりも大きい金属の硫酸塩、または該金属硫酸塩をアルミナ、シリカゲル等の各種固状の担体に担持させた触媒が開示されている(たとえば、特許文献1参照。)。しかし、前記文献に後者の態様として具体的に開示されているのは、硫酸カルシウムや硫酸マンガン等をアルミナやケイ酸マグネシウム等に担持させた触媒であり、原料であるアセタールの転化率については、比較的高い触媒性能を示すものの、なおα,β−不飽和エーテルの選択率が不充分な場合があった。また、前記触媒の触媒寿命について検討はなされていない。
一方、特定のアパタイトを触媒成分とする触媒系で、高い触媒活性と選択性、長い触媒寿命を有することが開示されている(たとえば、特許文献2参照。)。しかしながら、触媒の再活性化についての検討や、従来用いられている触媒についての検討は、充分になされていない。
また、工業プロセスにおいては、その生産性維持のため、触媒交換の頻度は少ないことが望まれ、特に1年に1回未満であることが望まれる。ところが、アセタールの熱分解反応においては、生成するα、β−不飽和エーテルまたは副生するアセトアルデヒドが、高い反応温度のために重合等により反応して触媒を劣化させやすく、触媒交換を頻繁に行わなければならなかった。このため、アセタールの熱分解反応においては特に、触媒の長寿命化が望まれていた。
特公昭41−5376号公報 国際公開第2007/086496号パンフレット
本発明は、触媒を再活性化させて触媒寿命を延ばすことができ、効率的かつ長時間にわたって安定的にα,β−不飽和エーテルを製造する方法を提供することを課題としている。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、原料のアセタール中に、分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物を微量混入させることにより、α,β−不飽和エーテルの製造過程において触媒を再活性化させて触媒寿命を飛躍的に向上させることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の事項に関する。
本発明のα,β−不飽和エーテルの製造方法は、触媒および分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物の存在下、アセタールを熱分解させることを特徴とする。
前記触媒が、一般式(1)で表されるアパタイトを含む触媒であることが好ましい。
(M)5-y(HZO4y(ZO43-y(X)1-y・・・(1)
[ただし、式(1)において、MはMg、Ca、Sr、Ba、Pb、MnおよびCdからなる群から選択される少なくとも1種であり、ZはP、AsおよびSbからなる群から選択される少なくとも1種であり、XはOH、F、Cl、Br、IおよびAtからなる群から選択される少なくとも1種であり、0≦y<1である。]
前記アパタイトが、カルシウムのリン酸塩系アパタイトであることが好ましい。
前記分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物が、水および/またはカルボン酸であることが好ましい。
前記アセタールに対する前記水の濃度が、5〜5000wtppmであり、前記アセタールに対する前記カルボン酸の濃度が、5〜5000wtppmであることが好ましい。
前記アセタールに対する前記水の濃度が、5〜1500wtppmであり、前記アセタールに対する前記カルボン酸の濃度が、5〜1500wtppmであることが好ましい。
本発明のα,β−不飽和エーテルの製造方法では、従来の触媒系を使用して、触媒を再活性化させて触媒寿命を飛躍的に延ばすことができる。その結果、触媒交換頻度を減らすことが出来、結果としてα,β−不飽和エーテルの生産性を向上させることができる。
以下、本発明のα,β−不飽和エーテルの製造方法について具体的に説明する。
本発明のα,β−不飽和エーテルの製造方法は、触媒および分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物の存在下、アセタールを熱分解させることを特徴とする。ここでアセタールとは、アルデヒドから誘導されるアセタールに加えて、ケトンから誘導されるアセタールすなわちケタールを含む広義の意味である。また、分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物とは、分子内にX−H結合(Xは電気陰性度の高い原子で、たとえばO、N、S等)を有する化合物として定義される。
より具体的には、本発明のα,β−不飽和エーテルの製造方法は、触媒および分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物の存在下、下記一般式(2)で表わされるアセタールを気相中で熱分解させ、下記一般式(3)で表されるα,β−不飽和エーテルを得るものである。
12CH−CR3(OR42・・・(2)
12C=C−R3(OR4)・・・(3)
前記式(2)、(3)においてR1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル
基、アルケニル基、アリール基を意味する。R4は、アルキル基、アルケニル基、アリー
ル基を意味し、式(2)においてR4が複数あるが、R4は同一であっても異なってもよい。
<アセタール>
本発明において用いられる反応原料となるアセタールとしては、アセトアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジエチルアセタール、アセトアルデヒドジn−プロピルアセタール、アセトアルデヒドジn−ブチルアセタール、アセトアルデヒドジイソブチルアセタール、アセトアルデヒドジベンジルアセタール、プロピオンアルデヒドジエチルアセタール、ブチルアルデヒドジエチルアセタール、2,2−ジメトキシプロパン、2,2−ジエトキシプロパン、2,2−ジベンジルプロパン等を例示することができる。
<分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物>
本発明において用いられる分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物としては、水、アルコール、カルボン酸、アミン、アミド、チオール等の各化合物を例示することができる。これらのうち、特に、水およびカルボン酸が好ましい。
前記水は、どのようなものでも使用可能であるが、不純物の影響を排除するため、イオン交換または蒸留により精製した水を使用することが好ましい。
前記カルボン酸は、一般式RCOOHで表され、カルボキシル基が1個のモノカルボン酸、2個のジカルボン酸、3個のトリカルボン酸のいずれでもよい。前記カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロトン酸、安息香酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸等を例示することができる。これらのうち、特に、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クロトン酸が好ましい。前記カルボン酸は、一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物は、一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物が、水およびカルボン酸の場合は、それぞれ単独で、または両方を併用して用いることができる。
分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物として前記水を用いる場合、前記水の濃度はアセタールに対して、通常5〜5000wtppm、好ましくは5〜1500wtppmの範囲にある。前記水の濃度が前記範囲を下回ると、後述する触媒寿命が延びない傾向にある。また、前記水の濃度が前記範囲を上回ると、アルデヒドの副生が増えてα,β−不飽和エーテルの選択率が落ち、さらに副生したアルデヒドがコーキ
ングの要因となり、触媒が劣化して触媒寿命が短くなる傾向にある。
また、分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物として前記カルボン酸を用いる場合、前記カルボン酸の濃度はアセタールに対して、通常5〜5000wtppm、好ましくは5〜1500wtppmの範囲にある。前記カルボン酸の濃度が前記範囲を下回ると、後述する触媒寿命が延びない傾向にある。
<触媒>
本発明において用いられる触媒としては、特に限定されるものではなく、アパタイト、アルミナ、シリカゲル、ゼオライト類、粘土鉱物類、活性炭、シリカマグネシア、酸化マグネシウム、酸化リチウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の酸化物;イオン化傾向が水素よりも大きい金属の硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、モリブデン酸塩、硝酸塩または該金属塩をアルミナ、シリカゲル等の各種固体担体に担持したもの等を例示することができる。
これらのうち、一般式(1)で表されるアパタイトを含む触媒が特に好ましい。
(M)5-y(HZO4y(ZO43-y(X)1-y・・・(1)
ただし、式(1)において、MはMg、Ca、Sr、Ba、Pb、MnおよびCdからなる群から選択される少なくとも1種であり、ZはP、AsおよびSbからなる群から選択される少なくとも1種であり、XはOH、F、Cl、Br、IおよびAtからなる群から選択される少なくとも1種であり、0≦y<1である。
一般にアパタイトは、別名燐灰石とも呼ばれ、前記式(1)で表される基本組成式(M)5-y(HZO4y(ZO43-y(X)1-yを持ち、六方晶系P63/mまたは単斜晶P21/bに属する化合物の総称である。基本組成式で、y=0の時はM5(ZO43(X)となり
、化学量論的アパタイトと呼ばれる。一方、0<y<1のときは、非化学量論的アパタイ
トと呼ばれる。
前記アパタイトとしては、リン酸塩(Z=P)、砒素塩(Z=As)、アンチモン酸塩(Z=Sb)が挙げられるが、特に、リン酸塩のものが好ましい。
リン酸塩の化学量論的アパタイトM5(PO43(X)では、XとしてOH、F、Cl
が好ましく、具体的には、ヒドロキシアパタイトM5(PO43(OH)、フルオロアパ
タイトM5(PO43(F)、クロロアパタイトM5(PO43(Cl)が挙げられる。これらOH、F、Clを含むリン酸塩系アパタイトは、他成分を含まない純粋なものでも良いし、OH、F、Clが任意の混合比で含まれるものでも良い。
ヒドロキシアパタイトとしては、マグネシウム塩Mg5(PO43(OH)、カルシウ
ム塩Ca5(PO43(OH)、ストロンチウム塩Sr5(PO43(OH)、バリウム塩Ba5(PO43(OH)、マンガン塩Mn5(PO43(OH)、鉛塩Pb5(PO43
(OH)等が挙げられ、これらの複合塩を用いてもよい。
フルオロアパタイトとしては、同様に、マグネシウム塩Mg5(PO43(F)、カル
シウム塩Ca5(PO43(F)、ストロンチウム塩Sr5(PO43(F)、マンガン塩Mn5(PO43(F)、バリウム塩Ba5(PO43(F)、鉛塩Pb5(PO43(F
)等が挙げられ、これらの複合塩を用いてもよい。
クロロアパタイトとしては、同様に、マグネシウム塩Mg5(PO43(Cl)、カル
シウム塩Ca5(PO43(Cl),ストロンチウム塩Sr5(PO43(Cl),バリウム塩Ba5(PO43(Cl),マンガン塩Mn5(PO43(Cl)、鉛塩Pb5(PO43(Cl)等が挙げられ、これらの複合塩を用いてもよい。
これらのうち、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムのリン酸塩系アパタイトを主成分に含んだものが、好ましい。特に、カルシウムのリン酸塩系アパタイトを用いることが本発明のα,β−不飽和エーテルの製造方法において好ましい。
本発明において、α,β−不飽和エーテルを製造するに際して、上記の分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物と、前記の従来用いられている触媒とを併用することで、その触媒寿命を飛躍的に延ばすことができる。その結果、前記触媒の交換頻度を減らすことが出来、α,β−不飽和エーテルの生産性を向上させることができる。
<α,β−不飽和エーテル>
本発明において製造されるα,β−不飽和エーテルとしては、上記式(3)で表され、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2−メトキシ-1-プロペン、2−エトキシ−1−プロペン、2−プロポキシ−1−プロペン、2−ブトキシ−1−プロペン等を例示することができる。
<α,β−不飽和エーテルの製造条件>
本発明において、α,β−不飽和エーテルを製造するに際して、固定床、流動床いずれの気相流通反応装置を使用してもよい。たとえば、10〜20メッシュの粒径の触媒からなる固定床を備えた気相流通反応装置を用いると、満足すべき成績が得られる。また、固定床反応管の形状は、縦型、横型いずれのものも用いることができる。
本発明において、上記分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物を原料のアセタールに供給する方法は、特に限定されるものではない。たとえば、アセタ
ールと分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物とを事前に混合して反応器に供給しても良いし、アセタールの供給ラインに分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物を供給しても良いし、アセタールの供給ラインと異なる供給ラインで分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物を反応器に供給しても良い。また、上記分子内に水素結合し得る水素原子を少なくとも一つ有する化合物は、他の溶媒に溶解して反応に供することもできる。使用する溶媒は、反応条件に対して不活性であれば一般的な溶媒が使用可能であり、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒などを挙げることができる。
本発明において、アセタールの気相における熱分解反応の温度は、原料であるアセタールの種類や触媒との接触時間によっても異なるが、150〜400℃、好ましくは200〜380℃の範囲にある。熱分解反応の温度が、前記範囲の下限値以上であると、原料の平衡上充分な高いアセタールの転化率が得られ、前記範囲の上限値以下であると、副反応がほとんど生ずること無くコーク析出が増加しない。反応帯域を所定反応温度に保持しながら原料であるアセタールを順次供給することによって連続操作が可能であり、その際、アセタールを予熱することがより好ましい。
また、熱分解反応時の圧力は、常圧、減圧、加圧のいずれでも可能である。
本発明において、触媒と接触した後の熱分解生成物中から目的生成物のα,β−不飽和エーテルを分離するには、たとえば反応器から排出するガス状混合物を、分別蒸留にかけることで行うことができる。
以下、本発明の好適な態様について実施例を示してさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例において使用されているアセタールの転化率およびビニルエーテルの選択率は、以下の式で定義される。
アセタールの転化率(%)=〔(反応したアセタールのモル数)/(反応に供給したアセタールのモル数)〕×100
ビニルエーテルの選択率(%)=〔(生成したビニルエーテルのモル数)/(反応したアセタールのモル数)〕×100
なお各物性は以下のように測定した。
<アセタールに対する水濃度の分析(カールフィッシャー法)>
カールフィッシャー法を用いて、下記条件でアセタールに対する水濃度の分析を行った。なお、検出限界は2wtppmであった。
測定試料:1ml
陽極液:Riedel−deHaen Hydramal−Coulomat AK(ケトン分析用)
陰極液:Riedel−deHaen Hydramal−Coulomat CG−K
<アセタールに対する酸濃度の分析(陰イオンクロマトグラフ法)>
陰イオンクロマトグラフ法を用いて、下記条件でアセタールに対する酸濃度の分析を行った。なお、検出限界は2wtppmであった。
測定装置:DIONEX DX−500
分離カラム:Shodex IC SI−90 4E(室温)
溶離液:Na2CO3(1.8mM)+NaHCO3(1.7mM)
流速:1.0ml/min
注入量:25μl
検出器:電気伝導度検出器
サプレッサー:ASRS−ULTRA II(リサイクルモード)
[実施例1]
触媒調製:ヒドロキシアパタイトCa5(PO43(OH)(和光純薬製)10gを2
0MPa、5分間の条件で圧力成型し、粒径0.85〜1.70mmに整粒したものを焼成管に入れ、常圧、窒素下350℃で3時間焼成した後、更に窒素流通のまま1時間かけて室温まで冷却し、触媒を得た。
原料調製:アセトアルデヒドジエチルアセタール500mlに対し、モレキュラーシーブ4A(1/16inch径円筒形)170gを加え、12時間静置した。それによって得られた脱水アセトアルデヒドジエチルアセタール90gを、デカンテーションによりモレキュラーシーブと分離し、酢酸0.063gを加えた。調製されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液の水分量および酢酸量を定量すると、それぞれアセタールに対する水濃度が40wtppm、酢酸濃度が700wtppmであった。
反応実験:管サイズ(直径12.7mm、長さ300mm)のステンレス製反応管に、上記で調製した触媒1mlを充填した。この反応管に上記原料調製法で調製したアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液を15g/h(SV3000/h相当)で導入し、250℃で気化させ、常圧下、360℃で反応させた。
反応開始から6時間後の反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、エチルビニルエーテルが主生成物として確認され、アセタール転化率86.5%、ビニルエーテル選択率98.6%であった。結果を表1に示す。
[実施例2]
原料調製:酢酸の添加量を0.253gとした以外は実施例1と同様にした。調製されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液の水分量および酸量を定量すると、それぞれアセタールに対する水濃度が40wtppm、酢酸濃度が2808wtppmであった。
反応実験:実施例1と同様に反応実験を行い、反応開始から6時間後の反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、エチルビニルエーテルが主生成物として確認され、アセタール転化率92.0%、ビニルエーテル選択率99.0%であった。結果を表1に
示す。
[比較例1]
原料調製:酢酸を加えなかったこと以外は実施例1と同様にした。調製されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液の水分量および酸量を定量すると、それぞれアセタールに対する水濃度が検出限界(2wtppm)以下、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下であった。
反応実験:実施例1と同様に反応実験を行い、反応開始から6時間後の反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、エチルビニルエーテルが主生成物として確認され、アセタール転化率74.5%、ビニルエーテル選択率98.5%であった。結果を表1に
示す。
[実施例3]
原料調製:酢酸に代えて水0.324gを加えた以外は実施例1と同様にした。調製されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液の水分量および酸量を定量すると、それぞれアセタールに対する水濃度が3613wtppm、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下であった。
反応実験:実施例1と同様に反応実験を行い、反応開始から6時間後の反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、エチルビニルエーテルが主生成物として確認され、アセタール転化率78.9%、ビニルエーテル選択率95.5%であった。結果を表1に示す。
[実施例4]
原料調製:酢酸0.063gに、さらに水0.117gを加えた以外は実施例1と同様にした。調製されたアセトアルデヒドジエチルアセタールの水分量および酸量を定量すると、それぞれアセタールに対する水濃度が1302wtppm、酢酸濃度が700wtppmであった。
反応実験:実施例1と同様に反応実験を行い、反応開始から6時間後の反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、エチルビニルエーテルが主生成物として確認され、アセタール転化率88.0%、ビニルエーテル選択率98.2%であった。結果を表1に示す。
[実施例5]
原料調製:酢酸の添加量を0.063g、水の添加量を0.324gとした以外は実施例4と同様にした。調製されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液の水分量および酸量を定量すると、それぞれアセタールに対する水濃度が3613wtppm、酢酸濃度が700wtppmであった。
反応実験:実施例1と同様に反応実験を行い、反応開始から6時間後の反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、エチルビニルエーテルが主生成物として確認され、アセタール転化率89.2%、ビニルエーテル選択率96.1%であった。結果を表1に示す。
[実施例6]
原料調製:酢酸の添加量を0.253g、水の添加量を0.117gとした以外は実施例4と同様にした。調製されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液の水分量および酢酸量を定量すると、それぞれアセタールに対する水濃度が1302wtppm、酢酸濃度が2808wtppmであった。
反応実験:実施例1と同様に反応実験を行い、反応開始から6時間後の反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、エチルビニルエーテルが主生成物として確認され、アセタール転化率92.4%、ビニルエーテル選択率96.1%であった。結果を表1に示す。
Figure 0005209941
[実施例7]
原料調製:酢酸に代えて蟻酸0.05gを加えた以外は実施例1と同様にした。調製されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液の水分量および酸量を定量すると、それぞれアセタールに対する水濃度が40wtppm、蟻酸濃度が550wtppmであった。
反応実験:実施例1と同様に反応実験を行い、反応開始から6時間後の反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、エチルビニルエーテルが主生成物として確認され、アセタール転化率82.3%、ビニルエーテル選択率98.6%であった。結果を表2に示す。
[実施例8]
原料調製:酢酸に代えてクロトン酸0.09gを加えた以外は実施例1と同様にした。調製されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液の水分量および酸量を定量すると、それぞれアセタールに対する水濃度が40wtppm、クロトン酸濃度が1000wtppmであった。
反応実験:実施例1と同様に反応実験を行い、反応開始から6時間後の反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、エチルビニルエーテルが主生成物として確認され、アセタール転化率88.9%、ビニルエーテル選択率96.1%であった。結果を表2に示す。
Figure 0005209941
[実施例9]
反応実験:管サイズ(直径12.7mm、長さ300mm)のステンレス製反応管に、実施例1で調製した触媒2mlを充填した。この反応管にアセタールに対する水濃度が検出限界(2wtppm)以下、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下に調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液を11g/hで導入し、250℃で気化させ、常圧下、電気炉温度315℃で反応させた(SV1040/h相当)。
反応を開始してから時間の経過とともに反応溶液の分析を行った。さらに、反応時間が238時間経過した後、アセタールに対する水濃度が1302wtppm、酢酸濃度が700wtppmに調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液に切り替えて反応を行い、時間の経過とともに反応溶液の分析を行った。各反応時間における分析結果を表3および図1にまとめた。
表3および図1から、反応管に導入するアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液が、アセタールに対する水濃度が検出限界(2wtppm)以下、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下に調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液の場合、アセタール転化率が徐々に低下するのに対して、アセタールに対する水濃度が1302wtppm、酢酸濃度が700wtppmに調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液に切り替えると、アセタール転化率が上昇した後、低下傾向が見られなかった。したがって、アセタールに対する水濃度が1302wtppm、酢酸濃度が700wtppmに調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液は触媒を再活性化させて触媒寿命を延ばし、かつ触媒性能の低下を抑制する効果があることが分かる。
Figure 0005209941
[実施例10]
実施例9と同様に反応管に導入するアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液を、アセタールに対する水濃度が検出限界(2wtppm)以下、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下に調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液にて反応を行い、時間の経過とともに反応溶液の分析を行った。さらに、反応時間が170時間経過した後、アセタールに対する水濃度が320wtppm、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下
に調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液に切り替えて反応を行い、時間の経過とともに反応溶液の分析を行った。各反応時間における分析結果を表4および図2にまとめた。
表4および図2から、反応管に導入するアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液が、アセタールに対する水濃度が検出限界(2wtppm)以下、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下に調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液の場合、アセタール転化率が徐々に低下するのに対して、アセタールに対する水濃度が320wtppm、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下に調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液に切り替えると、アセタール転化率が上昇した後、低下傾向が見られなかった。したがって、アセタールに対する水濃度が320wtppm、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下に調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液は触媒を再活性化させて触媒寿命を延ばし、かつ触媒性能の低下を抑制する効果があることが分かる。
Figure 0005209941
[実施例11]
実施例9と同様に、反応管に導入するアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液を、アセタールに対する水濃度が検出限界(2wtppm)以下、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下に調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液にて反応を行い、時間の経過とともに反応溶液の分析を行った。ついで、反応時間が145時間経過した後、アセタールに対する水濃度が40wtppm、酢酸濃度が250wtppmに調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液に切り替えて反応を行い、時間の経過とともに反応溶液の分析を行った。さらに、反応時間が313時間経過した後、アセタールに対する水濃度が検出限界(2wtppm)以下、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下に調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液に切り替えて反応を行い、その後、反応時間が361時間経過した後、アセタールに対する水濃度が40wtppm、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下に調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液に切り替えて反応を行い、時間の経過とともに反応溶液の分析を行った。各反応時間における分析結果を表5および図3にまとめた。
表5および図3から、反応管に導入するアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液が、アセタールに対する水濃度が検出限界(2wtppm)以下、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下に調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液の場合、アセター
ル転化率が低下するのに対して、アセタールに対する水濃度が40wtppm、酢酸濃度が250wtppmに調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液に切り替えると、アセタール転化率が上昇に転じた。再びアセタールに対する水濃度が検出限界(2wtppm)以下、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下に調整されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液に切り替えるとアセタール転化率が低下したが、アセタールに対する水濃度が40wtppm、酢酸濃度が検出限界(2wtppm)以下に調製されたアセトアルデヒドジエチルアセタール溶液に切り替えると、アセタール転化率の低下傾向が止まった。
Figure 0005209941
実施例9における、反応時間に対するアセタール転化率およびビニルエーテル選択率の経時変化を示す図である。 実施例10における、反応時間に対するアセタール転化率およびビニルエーテル選択率の経時変化を示す図である。 実施例11における、反応時間に対するアセタール転化率およびビニルエーテル選択率の経時変化を示す図である。

Claims (6)

  1. 一般式(1)で表されるアパタイトを含む触媒と、水および/またはカルボン酸との存在下、アセタールを熱分解させることを特徴とするα,β−不飽和エーテルの製造方法。
    (M) 5-y (HZO 4 y (ZO 4 3-y (X) 1-y ・・・(1)
    [ただし、式(1)において、MはMg、Ca、Sr、Ba、Pb、MnおよびCdからなる群から選択される少なくとも1種であり、ZはP、AsおよびSbからなる群から選択される少なくとも1種であり、XはOH、F、Cl、Br、IおよびAtからなる群から選択される少なくとも1種であり、0≦y<1である。]
  2. 前記アパタイトが、カルシウムのリン酸塩系アパタイトである請求項に記載のα,β−不飽和エーテルの製造方法。
  3. 前記アセタールに対する前記水の濃度が、5〜5000wtppmであり、
    前記アセタールに対する前記カルボン酸の濃度が、5〜5000wtppmである
    請求項1または2に記載のα,β−不飽和エーテルの製造方法。
  4. 前記触媒ととの存在下、アセタールを熱分解させる請求項1〜3のいずれかに記載のα,β−不飽和エーテルの製造方法。
  5. 前記アセタールに対する前記水の濃度が、5〜5000wtppmである請求項に記載のα,β−不飽和エーテルの製造方法。
  6. 前記アセタールを気相中で熱分解させる請求項1〜5のいずれかに記載のα,β−不飽和エーテルの製造方法。
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