JP5208622B2 - 固体酸化物型燃料電池の組立方法 - Google Patents

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Description

本発明は、固体酸化物型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)の組立方法に係わり、特に、薄板体とその薄板体を支持する支持部材とが1つずつ交互に積層されてなる(平板)スタック構造を有するSOFCの組立方法に関する。
従来から、上記スタック構造を有するSOFCが知られている(例えば、特許文献1を参照)。このSOFCにおいて、薄板体(「単セル」とも称呼される。)としては、ジルコニアから構成される固体電解質層と、その固体電解質層の上面に形成された燃料極層と、その固体電解質層の下面に形成された空気極層と、が積層されてなる平板状の焼成体が使用され得る。以下、各薄板体について、薄板体の上方、下方に隣接する支持部材(「セパレータ」とも称呼される。)をそれぞれ、「上方支持部材」、「下方支持部材」とも称呼する。
特開2004−342584号公報
上記SOFCでは、上記各薄板体について、薄板体の周縁部が上方支持部材の周縁部の下面と下方支持部材の周縁部の上面との間に挟持されることで、上方支持部材の周縁部よりも内側に位置する平面部の下面と薄板体の燃料極層の上面との間の空間に燃料ガスが供給される燃料流路が区画・形成されるとともに、下方支持部材の周縁部よりも内側に位置する平面部の上面と薄板体の空気極層の下面との間の空間に酸素を含むガス(空気)が供給される空気流路が区画・形成されている。
係る構成にて、SOFCの作動温度(例えば、800℃、以下、単に「作動温度」と称呼する。)まで薄板体を加熱した状態で、燃料流路及び空気流路に燃料ガス及び空気がそれぞれ供給されることで、各薄板体の上面及び下面に燃料ガス及び空気がそれぞれ接触し、この結果、各薄板体にて発電反応が発生する。
ところで、上記スタック構造を有するSOFCでは、燃料流路内の燃料ガスと空気流路内の空気とが混ざらないように且つ外部に漏れないように、更には、燃料電池全体の形状を維持するため、一般に、各薄板体について、薄板体の周縁部、上方支持部材の周縁部、及び下方支持部材の周縁部がシール材により互いにシールされ且つ固定されている。
他方、上記のように薄板体として焼成体が使用される場合、上記燃料極層をSOFCの燃料極電極(アノード電極)として機能させるためには、焼成後の薄板体の上記燃料極層に対して還元処理を行う必要がある。この還元処理は、上記燃料極層の表面に還元ガス(例えば、水素)を供給することで実行される。このとき、上記空気極層の表面に還元ガスが供給されないような処置を併せて施す必要がある。
ここで、上記のようにシール材によるシール及び固定が達成された状態にある上記スタック構造体では、上記燃料流路と空気流路とがシール材により気密的に区画されている。従って、このスタック構造体における各燃料流路に還元ガスを供給して上記還元処理を行うと、上記空気極層の表面への還元ガスの供給を防止するための特別の処置を施すことなく上記空気極層の表面への還元ガスの供給を防止することができる。
一般に、上記燃料極層に対して上記還元処理を実行すると、上記燃料極層が収縮し、この結果、薄板体全体も収縮する。従って、上記のように、シール及び固定が達成された状態にある上記スタック構造体における各燃料流路に還元ガスを供給して上記還元処理が行われる場合においても、同様に、薄板体が収縮しようとする。しかしながら、この場合、薄板体はシール材によりその周縁部において上方・下方支持部材の周縁部に固定されている。この結果、薄板体はその周縁部において上方・下方支持部材から平面方向に沿った方向の引っ張り力を受ける。
ここで、上記シール材による固定が完全に相対移動不能になされている場合、薄板体が受ける上記引っ張り力(熱応力)が過大となって、薄板体に割れが発生する等の問題が発生し得る。係る問題は、薄板体の厚さが小さいほどより発生し易い。
以上より、本発明の目的は、固体電解質層、燃料極層、及び空気極層からなる焼成体である薄板体と、支持部材とが1つずつ交互に積層されてなる(平板)スタック構造を有する小型のSOFCの組立方法において、焼成後の薄板体の燃料極層に対して還元処理を施す際に発生する薄板体の収縮に起因する薄板体の割れの発生を抑制し得るものを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明によるSOFCの組立方法が適用されるSOFCは、上記背景技術の欄に記載したものと同様、固体電解質層と、前記固体電解質層の上面に形成された燃料極層と、前記固体電解質層の下面に形成された空気極層と、が積層・焼成されてなる1又は複数の薄板体と、前記1又は複数の薄板体を支持する複数の支持部材と、を備え、前記薄板体と前記支持部材とが1つずつ交互に積層されてなるSOFCであって、前記各薄板体について、前記薄板体の周縁部が前記上方支持部材の周縁部の下面と前記下方支持部材の周縁部の上面との間に挟持されるように、前記薄板体の周縁部の上面と前記上方支持部材の周縁部の下面、及び前記薄板体の周縁部の下面と前記下方支持部材の周縁部の上面がそれぞれシールされていて、前記各薄板体について、前記上方支持部材の周縁部よりも内側に位置する平面部の下面と前記薄板体の燃料極層の上面との間の空間に燃料ガスが供給される燃料流路が区画・形成されるとともに、前記下方支持部材の周縁部よりも内側に位置する平面部の上面と前記薄板体の空気極層の下面との間の空間に酸素を含むガスが供給される空気流路が区画・形成されている。ここで、反応装置全体を小型化する観点から、各薄板体の厚さは、20μm以上且つ500μm以下であり、且つ、薄板体全体に亘って均一であることが好ましい。
本発明によるSOFCの組立方法は、互いに隣接する前記薄板体の周縁部と前記支持部材の周縁部との間に結晶化ガラスの材料が介在した状態で前記薄板体と前記支持部材とを1つずつ交互に積層する積層工程と、前記積層された前記積層体を加熱することで、前記結晶化ガラスの結晶化率を0〜50%まで増大させて、互いに隣接する前記薄板体の周縁部と前記支持部材の周縁部とをシールするシール工程と、前記シールが施された前記積層体を加熱するとともに前記燃料流路内に還元ガスを流入させることで、前記結晶化ガラスの結晶化率を70〜100%まで増大させるとともに前記燃料極層に対する還元処理を行う還元処理工程とを含む。ここで、前記シール工程における熱処理温度は500〜800℃であり、前記還元処理工程における熱処理温度は650〜950℃であることが好適である。
上記のように、本発明では、前記シール材として結晶化ガラスが使用され、結晶化ガラスの結晶化率が2段階に調整される。即ち、第1段階として、シール工程が実行される。シール工程では、積層工程にて結晶化ガラスの材料が介在した状態で積層された積層体が加熱される。この結果、結晶化率が0〜50%まで増大させられる。換言すれば、非晶質領域を敢えて十分に残しておく。ここで、結晶化率とは、結晶化ガラス材料中における結晶質領域の存在割合(体積割合)を指す。測定対象の結晶化ガラス材料の結晶化率は、例えば、十分に高い温度で熱処理が行われてX線回折及び熱分析により非晶質領域が存在しないことが確認されている結晶化ガラス材料(基準品)と、前記測定対象の結晶化ガラス材料との間での、X線回折での主相の回折ピーク比を利用して測定され得る。
これにより、各薄板体について、薄板体の周縁部が、上方・下方支持部材の周縁部と、結晶化ガラスによりシールされ得る。加えて、非晶質領域が十分に残存していることで、その後において積層体の温度が結晶化ガラスの軟化点以上になった場合、前記非晶質領域が軟化することで薄板体の周縁部が上方・下方支持部材の周縁部に対して相対移動可能な状態を得ることができる。
前記シール工程が終了すると、次に、第2段階として、還元処理工程が実行される。還元処理工程では、積層体が加熱されるとともに、燃料流路内に還元ガス(例えば、水素ガス)が流入されて燃料極層に対して還元処理が行われる。この結果、積層体の温度が前記軟化点以上となって薄板体の周縁部が上方・下方支持部材の周縁部に対して相対移動可能な状態が得られている間において、上記還元処理が実行され得る。このため、上記還元処理による上述した薄板体の収縮に伴って薄板体が上方・下方支持部材から上述の引っ張り力を受けても、その引っ張り力が過大となることが抑制され得る。この結果、薄板体に割れが発生することが抑制され得る。この還元処理が完了すると、燃料極層がSOFCの燃料極電極(アノード電極)として機能し得るようになる。
なお、シール工程終了後では、上記燃料流路と空気流路とが結晶化ガラスにより気密的に区画されている。従って、上述のようにシール工程終了後において各燃料流路に還元ガスを供給して上記還元処理を行うと、上記空気極層の表面への還元ガスの供給を防止するための特別の処置を施すことなく上記空気極層の表面への還元ガスの供給を防止することができる。
そして、この還元処理工程では、結晶化率が70〜100%まで増大させられる(非晶質領域が少なくなる)。これにより、各薄板体について、薄板体の周縁部が上方・下方支持部材の周縁部と、温度にかかわらず相対移動され難い状態で固定され得る。以上にて、SOFCの組立が完了する。
以上のように、シール工程では敢えてガラス軟化の余地を残しておき、その後の還元処理工程にて燃料極層の還元処理を実行し且つSOFCの組立を完了させることで、上記還元処理による上述した薄板体の収縮に起因する薄板体の割れの発生を抑制することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係る固体酸化物型燃料電池について説明する。
(燃料電池の全体構造)
図1は、本発明の一実施形態に係るデバイスである固体酸化物型燃料電池(以下、単に「燃料電池」と称呼する。)10の破断斜視図である。図2は、燃料電池10の部分分解斜視図である。燃料電池10は、薄板体11と支持部材12とが交互に積層されることにより形成されている。即ち、燃料電池10は、平板スタック構造を備えている。薄板体11は、燃料電池10の「単セル」とも称呼される。支持部材12は、「セパレータ」とも称呼される。
図2の円A内に拡大して示したように、薄板体11は、電解質層(固体電解質層)11aと、電解質層11aの上(上面)に形成された燃料極層11bと、電解質層11a上の燃料極層11bとは反対の面(下面)に形成された空気極層11cと、を有している。薄板体11の平面形状は、互いに直交するx軸及びy軸の方向に沿う辺を有する正方形(1辺の長さ=A)である。薄板体11は、x軸及びy軸に直交するz軸方向に厚み方向を有する板体(厚さ=t1)である。
本例において、電解質層11aは、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)の緻密な焼成体である。燃料極層11bは、Ni−YSZからなる焼成体(後述する還元処理後の状態であり、還元処理前はNiO−YSZからなる焼成体)であり、多孔質電極層である。空気極層11cは、LSCF(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)からなる焼成体であり、多孔質電極層である。電解質層11a、燃料極層11b、及び空気極層11cの常温から1000℃での平均熱膨張率はそれぞれ、およそ、10.8ppm/K、12.5ppm/K、及び12ppm/Kである。
薄板体11は、一対のセル貫通孔11d,11dを備えている。それぞれのセル貫通孔11dは、電解質層11a、燃料極層11b及び空気極層11cを貫通している。一対のセル貫通孔11d,11dは、薄板体11の一つの辺の近傍であってその辺の両端部近傍領域に形成されている。
図3は、図2においてx軸と平行な1−1線を含むとともにx−z平面と平行な平面に沿って支持部材12を切断した支持部材12の断面図である。図2及び図3に示したように、支持部材12は、平面部12aと、上方枠体部12b(周縁部)と、下方枠体部12c(周縁部)と、を備えている。支持部材12の平面形状は、互いに直交するx軸及びy軸の方向に沿う辺を有する正方形(1辺の長さ=A)である。平面部12aの厚さはtzであり、「枠体部」(周縁部)の厚さはt2(>tz)である。
支持部材12は、Ni系耐熱合金(例えば、フェライト系SUS、インコネル600及びハステロイ等)から構成されている。支持部材12の常温から1000℃での平均熱膨張率は、例えばフェライト系SUSであるSUS430の場合、およそ12.5ppm/Kである。従って、支持部材12の熱膨張率は、薄板体11の平均熱膨張率よりも大きい。従って、燃料電池10の温度が変化したとき、薄板体11と支持部材12との間にて伸縮量差が生じる。
平面部12aは、z軸方向に厚み方向を有する薄い平板体である。平面部12aの平面形状は、x軸及びy軸方向に沿う辺を有する正方形(1辺の長さ=L(<A))である。
上方枠体部12bは、平面部12aの周囲(4つの辺の近傍領域、即ち、外周近傍領域)において上方に向けて立設された枠体である。上方枠体部12bは、外周枠部12b1と段差形成部12b2とからなっている。
外周枠部12b1は、支持部材12の最外周側に位置している。外周枠部12b1の縦断面(例えば、y軸方向に長手方向を有する外周枠部12b1をx−z平面に平行な平面に沿って切断した断面)の形状は長方形(又は正方形)である。
段差形成部12b2は、平面部12aの四つの角部のうちの一つの角部において、外周枠部12b1の内周面から支持部材12の中央に向けて延設された部分である。段差形成部12b2の下面は平面部12aと連接している。段差形成部12b2の平面視における形状は略正方形である。段差形成部12b2の上面(平面)は、外周枠部12b1の上面(平面)と連続している。段差形成部12b2には、貫通孔THが形成されている。貫通孔THは、段差形成部12b2の下方に位置する平面部12aにも貫通している。
下方枠体部12cは、平面部12aの周囲(4つの辺の近傍領域、即ち、外周近傍領域)において下方に向けて立設された枠体である。下方枠体部12cは、平面部12aの厚さ方向の中心線CLに対して上方枠体部12bと対称形状を有している。従って、下方枠体部12cは、外周枠部12b1、及び段差形成部12b2とそれぞれ同一形状の外周枠部12c1、及び段差形成部12c2を備えている。但し、段差形成部12c2は、平面部12aの四つの角部のうち段差形成部12b2が形成されている角部と隣り合う2つの角部のうちの一方の角部に配置・形成されている。
図4は、薄板体11及び薄板体11を支持(挟持)した状態における一対の支持部材12を、図2においてy軸と平行な2−2線を含むとともにy−z平面と平行な平面に沿って切断した縦断面図である。上述したように、燃料電池10は、薄板体11と支持部材12とが交互に積層されることにより形成されている。
ここで、この一対の支持部材12のうち、薄板体11に対してその下方・上方に隣接するものをそれぞれ、便宜上、下方支持部材121及び上方支持部材122と称呼する。図4に示したように、下方支持部材121及び上方支持部材122は、下方支持部材121の上方枠体部12bの上に上方支持部材122の下方枠体部12cが対向するように互いに同軸的に配置される。
薄板体11は、その周縁部全周が、下方支持部材121の上方枠体部12b(周縁部)の上面と上方支持部材122の下方枠体部12c(周縁部)の下面との間に挟持される。このとき、薄板体11は、下方支持部材121の平面部12aの上面に空気極層11cが対向するように配置され、上方支持部材122の平面部12aの下面に燃料極層11bが対向するように配置される。
薄板体11の周縁部全周と下方支持部材121の上方枠体部12bの全周、並びに、薄板体11の周縁部全周と上方支持部材122の下方枠体部12cの全周は、シール材13により互いにシール(接合)され且つ相対移動不能に固定されている。シール材13としては、結晶化ガラス(非晶質領域が残存していてもよい。)が使用される。燃料電池10の組立に際し、この結晶化ガラスの結晶化率が段階的に調整されるが、この点については後述する。
以上により、図4に示したように、下方支持部材121の平面部12aの上面と、下方支持部材121の上方枠体部12b(外周枠部12b1及び段差形成部12b2)の内側壁面と、薄板体11の空気極層11cの下面と、により酸素を含む気体が供給される空気流路21が形成される。酸素を含む気体は、図4の破線の矢印により示したように、上方支持部材122の貫通孔THと薄板体11のセル貫通孔11dとを通して空気流路21に流入する。
また、上方支持部材122の平面部12aの下面と、上方支持部材122の下方枠体部12c(外周枠部12c1及び段差形成部12c2)の内側壁面と、薄板体11の燃料極層11bの上面と、により水素を含む燃料が供給される燃料流路22が形成される。燃料は、図4の実線の矢印により示したように、下方支持部材121の貫通孔THと薄板体11のセル貫通孔11dとを通して燃料流路22に流入する。
また、図4に示すように、空気流路21及び燃料流路22中において、集電用の金属メッシュ(例えば、エンボス構造の金属メッシュ)が内装されている。各金属メッシュは、積層方向において弾性を有する。加えて、各金属メッシュは、対応する支持部材12と薄板体11とを積層方向において互いに引き離す方向の弾性力が発生するように(即ち、プレ荷重が発生するように)内装されている。
これにより、下方支持部材121と薄板体11との電気的接続、及び上方支持部材122と薄板体11との電気的接続が確保される。加えて、係る金属メッシュの内装により、ガスの流通経路が規制される。この結果、空気流路21及び燃料流路22中において、平面視にてガスの流通により発電反応が実質的に発生し得る領域の面積(流通面積)が拡大され得、薄板体11にて発電反応が効果的に発生し得る。
以上のように構成された燃料電池10は、例えば、図5に示したように、薄板体11の燃料極層11bと支持部材12の平面部12aの下面との間に形成された燃料流路22に燃料が供給され、且つ、薄板体11の空気極層11cと支持部材12の平面部12aの上面との間に形成された空気流路21に空気が供給されることにより、以下に示す化学反応式(1)及び(2)に基づく発電を行う。
(1/2)・O+2e−→O2− (於:空気極層11c) …(1)
+O2−→HO+2e− (於:燃料極層11b) …(2)
燃料電池(SOFC)10は、固体電解質層11aの酸素伝導度を利用して発電するので、燃料電池10としての作動温度は最低600℃以上であることが一般的である。このため、燃料電池10は、常温から作動温度(例えば800℃)まで外部の加熱機構(例えば、抵抗加熱ヒータ方式の加熱機構、或いは、燃料ガスを燃焼して得られる熱を利用する加熱機構等)により昇温された状態で使用される。
薄板体11(従って、支持部材12)の平面形状(=正方形)の1辺の長さAは、本例では、5mm以上且つ200mm以下である。薄板体11の厚さt1は、全体に渡って均一であり、本例では、20μm以上且つ500μm以下である。なお、電解質層11a、燃料極層11b、及び空気極層11cの厚さはそれぞれ、例えば、1μm以上且つ50μm以下、5μm以上且つ500μm以下、及び、5μm以上且つ200μm以下である。
支持部材12の平面部12aの平面形状(=正方形)の1辺の長さLは、本例では、4mm以上且つ190mm以下である。支持部材12の「枠体部」(周縁部)の厚さt2は、200μm以上且つ1000μm以下である。支持部材12の平面部12aの厚さtzは、50μm以上且つ100μm以下である。
(燃料電池の組立、及び結晶化ガラスの結晶化率の調整)
次に、シール材13としての結晶化ガラスの結晶化率の調整を行いながら燃料電池10を組み立てる方法の一例について説明する。
先ず、燃料電池10の組立に使用される薄板体11の製造について説明する。薄板体11が燃料極支持型(支持基板が燃料極層)の場合について説明すると、先ず、NiO及びYSZからなるシート(燃料極層11bとなる層)が準備される。次いで、このシートの下面にグリーンシート法により作成したセラミックスシート(YSZのテープ)が積層され、この積層体が1400℃・1時間にて焼成される。次いで、その積層体(焼成体)の下面にLSCFからなるシート(空気極層11cとなる層)が印刷法により形成され、この積層体が850℃・1時間にて焼成される。これにより(還元処理前の)薄板体10が形成される。なお、この場合、上記YSZのテープを使用することに代えて、NiO及びYSZからなるシート(燃料極層11bとなる層)の下面に、セラミックスシートが印刷法により形成されてもよい。また、電解質層と空気極層の間に、反応防止層としてセリア層(CeO2)などが設けられても良い。
燃料電池10の組立に使用される支持部材12は、エッチング、切削等により形成され得る。
以上のようにして、薄板体10及び支持部材12が必要な枚数だけ準備されると、以下のように、燃料電池10の組立が進行する。以下、図6〜図8を参照しながら説明する。図6〜図8は、薄板体11及び薄板体11を支持(挟持)した状態における一対の支持部材12を、図2においてx軸と平行な3−3線を含むとともにx−z平面と平行な平面に沿って切断した縦断面の模式図である。3−3線は、支持部材12の平面形状(=正方形)の中心(=薄板体11の平面形状(=正方形)の中心)を通る線である。図6〜図8では、シール材13の形状を見やすくするため、シール材13の形状(特に、厚さ等)が誇張して描かれている。
<積層工程>
先ず、各支持部材12の周縁部において薄板体11を挟持する部分(即ち、下方枠体部12cの下面、及び上方枠体部12bの上面、支持部材12の周縁部の上下面)にシール材13としての結晶化ガラスの材料(例えば、ホウ酸珪系結晶化ガラス等のスラリー)が、常温にて塗布される。或いは、各薄板体11の周縁部において上方・下方支持部材12から挟持される部分(即ち、薄板体11の周縁部の上下面)にシール材13としての結晶化ガラスの材料(ホウ酸珪系結晶化ガラス等のスラリー)が、常温にて塗布されてもよい。この例では、結晶化ガラスの結晶化ピーク温度は850℃であり、結晶化ガラスの軟化点は650℃である。また、この段階における結晶化ガラスの結晶化率は、0〜20%である。上述のように、結晶化率とは、結晶化ガラス材料中における結晶質領域の存在割合(体積割合)であり、測定対象の結晶化ガラス材料の結晶化率は、上記結晶化ガラス材料の基準品と、前記測定対象の結晶化ガラス材料との間での、X線回折での主相の回折ピーク比を利用して測定され得る。
次いで、図6に示すように、前記集電用の金属メッシュを内装しながら支持部材12と薄板体11とが交互に積層される。これにより、互いに隣接する薄板体11の周縁部と支持部材12の周縁部との間に結晶化ガラスの材料が介在した状態で薄板体11と支持部材12とが1つずつ交互に積層された状態が得られる。
<シール工程>
次いで、この積層体に熱処理が施されて、この積層体の温度が第1温度(500〜800℃、例えば、700℃)に所定時間だけ維持される。この結果、図7に示すように、結晶化ガラスの結晶化率が0〜50%まで増大させられる。なお、図中において、シール材13としての結晶化ガラス内の微細なドットの数が多いほど結晶化率が大きいことを示す(図8も同様)。これにより、互いに隣接する薄板体11の周縁部と支持部材12の周縁部とが一体化され且つシール(接合)される。この結果、各燃料流路22と各空気流路21とが結晶化ガラスにより気密的にそれぞれ区画・形成される。
加えて、結晶化率が0〜50%に留められて、結晶化ガラス内において非晶質領域が敢えて十分に残される。この結果、このシール工程終了後において、積層体の温度が結晶化ガラスの軟化点未満の状態では互いに隣接する薄板体11の周縁部と支持部材12の周縁部とが相対移動不能に固定される一方で、その後において積層体の温度が結晶化ガラスの軟化点以上になった場合、非晶質領域が軟化することで隣接する薄板体11の周縁部と支持部材12の周縁部とが相対移動可能な状態を得ることができる。
<還元処理工程>
次に、この積層体に再び熱処理が施されて、この積層体の温度が第2温度(650〜950℃、例えば、800℃、第1温度よりも高い)に所定時間だけ維持される。これと同時に、各燃料流路22内に還元ガス(本例では、水素ガス)が流入させられる。
この熱処理により、積層体の温度が前記軟化点以上となって互いに隣接する薄板体11の周縁部と支持部材12の周縁部とが相対移動可能な状態が得られる。係る状態が得られている間において、上記還元ガスの流入により、各燃料極層11bの還元処理が行われ、燃料極層11bを構成するNiOとYSZのうちNiOが還元される。この結果、燃料極層11bがNi−YSZサーメットとなって燃料極電極(アノード電極)として機能し得るようなる。
燃料極層11bに対して上記還元処理を実行すると、燃料極層11bが収縮し、この結果、図8に示すように、薄板体11全体も収縮する。この結果、薄板体11はその周縁部において隣接する支持部材12(上方・下方支持部材)から平面方向に沿った方向の引っ張り力を受ける。ここで、互いに隣接する薄板体11の周縁部と支持部材12の周縁部とが完全に相対移動不能な状態にある場合、薄板体11が受ける上記引っ張り力が過大となって、薄板体11に割れが発生する等の問題が発生し得る。この割れは、本例のように薄板体11の厚さが小さいほどより発生し易い。
これに対し、本例では、上述のように、互いに隣接する薄板体11の周縁部と支持部材12の周縁部とが相対移動可能な状態において還元処理が行われる。従って、上記還元処理による上述した薄板体11の収縮に伴って薄板体11が隣接する支持部材12から上述の引っ張り力を受けても、その引っ張り力が過大となることが抑制され得る。この結果、薄板体11に割れが発生することが抑制され得る。
加えて、現段階では、燃料流路22と空気流路21とが結晶化ガラスにより気密的に区画されている。従って、還元処理中において、空気極層21の表面への還元ガスの供給を防止するための特別の処置を施すことなく空気極層21の表面への還元ガスの供給を防止することができる。
そして、この還元処理工程では、図8に示すように、結晶化率が70〜100%まで十分に増大させられる(非晶質領域が少なくなる)。これにより、互いに隣接する薄板体11の周縁部と支持部材12の周縁部とが結晶化ガラスにより、温度にかかわらずに相対移動し難い状態で固定される。以上にて、燃料電池10の組立が完了する。
以上のように、シール工程及び還元処理工程においてシール材13としての結晶化ガラスの結晶化率が2段階に調整される。即ち、シール工程では敢えてガラス軟化の余地が残され、その後の還元処理工程にて燃料極層11bの還元処理が実行され且つ燃料電池10の組立が完了する。この結果、上記還元処理による上述した薄板体11の収縮に起因する薄板体11の割れの発生を抑制することができる。
次に、「シール工程、及び還元処理工程にて調整されるそれぞれの結晶化率の組み合わせが、0〜50%、及び70〜100%であることが好ましい」ことを確認した試験について説明する。この試験では、薄板体として、平面視にて1辺の長さが30mmの正方形を呈していて、8YSZからなる電解質層(厚さ:3μm)、NiO−8YSZからなる燃料極層(厚さ:150μm)、及びLSCFからなる空気極層(厚さ:15μm)が積層された燃料極支持型(支持基板が燃料極層)のものが使用された。そして、この薄板体を使用して、上記積層工程にて3層のスタックが作製され、この3層のスタックを用いて試験が行われた。
Figure 0005208622
表1は、シール工程、及び還元処理工程にて調整されるそれぞれの結晶化率の組み合わせを順次変更しながらシール工程及び還元処理工程の一連の工程を繰り返し行った場合の結果を示している。薄板体の破損の有無は、スタックへのガス流量の収支を測定することで評価した。結晶化率の調整は、シール材としての結晶化ガラス材料(全て周知のもの)と熱処理温度との組み合わせを適宜変更することで行った。この試験で設定された熱処理温度は、シール工程では500〜800℃であり、還元処理工程では650〜950℃であった。
表1に示すように、シール工程で調整されるシール材の結晶化率が50%を超えると、スタック組立後において薄板体に破損が発生した(水準6,7を参照)。これは、以下の理由に基づくと考えられる。即ち、シール材の結晶化率が高い(非晶質領域が少ない)ことで、その後の高温の還元処理工程にてシール材が軟化し難い(薄板体の周縁部と支持部材の周縁部とが相対移動し難い)。従って、還元処理工程にて薄板体の周縁部が支持部材から受ける上述した平面方向の引っ張り力(熱応力)が開放され難くなる。この結果、この引っ張り力が過大になって薄板体に破損が発生したと考えられる。
また、還元処理工程で調整されるシール材の結晶化率が70%未満であると、シールの耐久性が低いという問題が発生した(水準8〜10を参照)。これは、以下の理由に基づくと考えられる。即ち、シール材の結晶化率が低い(非晶質領域が多い)ことで、SOFC作動中の作動温度(高温)においてシール材が融解する度合いが大きい。この結果、SOFC作動中において薄板体の周縁部と支持部材の周縁部とが相対移動し易くなってシールの耐久性が低下したと考えられる。
一方、シール工程、及び還元処理工程で調整されるそれぞれの結晶化率の組み合わせが0〜50%、及び70〜100%である場合、還元処理後においてシール性が良好であることが確認できた(水準1〜5、11〜14を参照)。以上のことから、シール工程、及び還元処理工程にて調整されるそれぞれの結晶化率の組み合わせは、0〜50%、及び70〜100%であることが好ましい、ということができる。
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る、固体電解質層、燃料極層、及び空気極層からなる焼成体である薄板体(単セル)と、支持部材(セパレータ)とが1つずつ交互に積層されてなる(平板)スタック構造を有する固体酸化物型燃料電池10の組立方法では、先ず、積層工程において、互いに隣接する薄板体11の周縁部と支持部材12の周縁部との間に結晶化ガラスの材料が介在した状態で薄板体11と支持部材12とが1つずつ交互に積層される。次いで、シール工程において、積層体を第1温度に加熱して結晶化ガラスの結晶化率が0〜50%まで増大させられる。これにより、互いに隣接する薄板体11の周縁部と支持部材12の周縁部とが一体化され且つシールされる。次いで、還元処理工程において、積層体を第2温度(>第1温度)に加熱し且つ燃料流路22内に還元ガスを流入させて、結晶化ガラスの結晶化率を70〜100%まで増大させるとともに燃料極層11bに対する還元処理が行われる。
このように、シール工程では敢えてガラス軟化の余地が残され、その後の還元処理工程にて燃料極層11bの還元処理が実行され且つSOFCの組立が完了する。この結果、上記還元処理による上述した薄板体11の収縮に起因する薄板体11の割れの発生を抑制することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、燃料極層11bは、白金、白金−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、ルテニウム、ルテニウム−ジルコニアサーメット等から構成することができる。
また、空気極層11cは、例えば、ランタンを含有するペロブスカイト型複合酸化物(例えば、上述のランタンマンガナイトのほか、ランタンコバルタイト)から構成することができる。ランタンコバルタイト及びランタンマンガナイトは、ストロンチウム、カルシウム、クロム、コバルト(ランタンマンガナイトの場合)、鉄、ニッケル、アルミニウム等をドープしたものであってよい。また、パラジウム、白金、ルテニウム、白金−ジルコニアサーメット、パラジウム−ジルコニアサーメット、ルテニウム−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、パラジウム−酸化セリウムサーメット、ルテニウム−酸化セリウムサーメットであってもよい。
加えて、上記実施形態においては、薄板体11及び支持部材12の平面形状は正方形であるが、長方形、円形、楕円形等であってもよい。
本発明の実施形態に係る固体酸化物型燃料電池の破断斜視図である。 図1に示した燃料電池の部分分解斜視図である。 図2に示した1−1線を含むとともにx−z平面と平行な平面に沿って支持部材を切断した支持部材の断面図である。 図1に示した薄板体及び薄板体を支持した状態における支持部材を、図2に示した2−2線を含むとともにy−z平面と平行な平面に沿って切断した縦断面図である。 図1に示した燃料電池における燃料と空気の流通を説明する図である。 図1に示した燃料電池のシール材周りを誇張して示した積層工程における図4に対応する模式図である。 図1に示した燃料電池のシール材周りを誇張して示したシール工程における図4に対応する模式図である。 図1に示した燃料電池のシール材周りを誇張して示した還元処理工程における図4に対応する模式図である。
符号の説明
10…燃料電池、11…薄板体、11a…ジルコニア固体電解質層、11b…燃料極層、11c…空気極層、12…支持部材、12a…平面部、12b…上方枠体部、12c…下方枠体部、13…シール材、21…空気流路、22…燃料流路、121…下方支持部材、122…上方支持部材

Claims (3)

  1. 固体電解質層と、前記固体電解質層の上面に形成された燃料極層と、前記固体電解質層の下面に形成された空気極層と、が積層・焼成されてなる1又は複数の薄板体と、
    前記1又は複数の薄板体を支持する複数の支持部材と、
    を備え、前記薄板体と前記支持部材とが1つずつ交互に積層されてなる固体酸化物型燃料電池であって、
    前記各薄板体について、前記薄板体の周縁部が前記薄板体の上方に隣接する前記支持部材である上方支持部材の周縁部の下面と前記薄板体の下方に隣接する前記支持部材である下方支持部材の周縁部の上面との間に挟持されるように、前記薄板体の周縁部の上面と前記上方支持部材の周縁部の下面、及び前記薄板体の周縁部の下面と前記下方支持部材の周縁部の上面がそれぞれシールされていて、
    前記各薄板体について、前記上方支持部材の周縁部よりも内側に位置する平面部の下面と前記薄板体の燃料極層の上面との間の空間に燃料ガスが供給される燃料流路が区画・形成されるとともに、前記下方支持部材の周縁部よりも内側に位置する平面部の上面と前記薄板体の空気極層の下面との間の空間に酸素を含むガスが供給される空気流路が区画・形成された固体酸化物型燃料電池の組立方法であって、
    互いに隣接する前記薄板体の周縁部と前記支持部材の周縁部との間に結晶化ガラスの材料が介在した状態で前記薄板体と前記支持部材とを1つずつ交互に積層する積層工程と、
    前記積層された前記積層体を加熱することで、前記結晶化ガラスの結晶化率を0〜50%まで増大させて、互いに隣接する前記薄板体の周縁部と前記支持部材の周縁部とをシールするシール工程と、
    前記シールが施された前記積層体を加熱するとともに前記燃料流路内に還元ガスを流入させることで、前記結晶化ガラスの結晶化率を70〜100%まで増大させるとともに前記燃料極層に対する還元処理を行う還元処理工程と、
    を含む固体酸化物型燃料電池の組立方法。
  2. 前記各薄板体の厚さは、20μm以上且つ500μm以下である、請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池の組立方法。
  3. 前記シール工程における熱処理温度は500〜800℃であり、前記還元処理工程における熱処理温度は650〜950℃である、請求項1又は請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池の組立方法。
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