JP5207296B2 - 腐刻方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガスの放電による腐刻(エッチング)方法に係わる。
MEMS(微小電気機械素子)による圧力・加速度センサを作製する場合や、三次元半導体の貫通電極を形成する場合には、微細穴開け加工工程が行われる。
この微細穴開け加工工程等の、14族原子で構成された物質(主に単結晶珪素)の狭いスペースを深く腐刻する工程において、炭素系成膜と腐刻とを交互に行う腐刻方法が、多く採用されている。
この腐刻方法として、具体的には、古典的なエッチング法と、BOSCH(ボッシュ)法とがある。
古典的なエッチング法では、腐刻主体のガス(SF,C,添加ガス酸素等)と、側壁を保護する炭素系膜の成長主体のガス(C等)とを、併せて供給して、炭素系成膜による側壁の保護と腐刻とを同時に行っている。
BOSCH(ボッシュ)法では、腐刻主体のガス(SF,C,添加ガス酸素等)と、炭素系膜の成長主体のガス(C等)とのガス比を高速に変化させて、炭素系成膜による側壁の保護と、腐刻とを、交互に行っている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2006−49817号公報
微細化加工を行う場合には、マスクの開口を狭めないように、側壁保護用の炭素系成膜を薄くする必要がある。
しかしながら、上述した腐刻方法では、側壁保護膜が薄い場合、炭素系成膜が炭素原子を含んでいるため、この炭素原子が酸化珪素、窒化珪素や酸窒化珪素の酸素や窒素を離脱させる作用を生じて、酸化珪素、窒化珪素や酸窒化珪素の単結晶珪素に対する選択比を悪化させる原因となる。
また、上述した腐刻方法では、炭素系の成膜と半導体物質の腐刻とを同時又は交互に行うため、腐刻により生じた導体や半導体が放電源絶縁物内壁の絶縁物に付着することにより、絶縁抵抗を低下させることがある。絶縁抵抗が低下すると、高周波のインピーダンスが変動して、放電を変化させたり放電を不安定にさせたりするため、再現性が乏しくなる。
同様に、深さ制御を行う終点検出機構(End Point Detector)を行っている放電発光分析部分では、導体や半導体の付着により採光部の窓が汚れて、分光強度が変化してしまうことから、終点検出の再現性精度が悪化する原因となっている。
狭いスペースかつ深い腐刻においては、炭素を含む成膜ガスの供給によって側壁保護膜を形成すると、表面から供給されるガスによる、イオンよりもエネルギーの低い電気的中性ラジカルが主体となって成膜が行われるため、保護膜の成長が等方性成長となる。
これにより、腐刻スペースの幅が狭くなる程、又、深さ方向が深くなる程、基板表面に形成されたマスクの水平方向の成長比率が腐刻深さ方向よりも大きくなって、厚くオーバ・ハングするようになる。オーバ・ハングすることによって、スペース部分の面積を狭めてしまうので、腐刻底面へ到達するイオン密度が低下して、深さ方向の腐刻速度の低下や腐刻の停止が起きてしまう。このことから、腐刻深さや微細化に限界が発生する。
また、特に上述したBOSCH(ボッシュ)法では、成膜と腐刻とを交互に行っているため、腐刻側壁に凹凸が発生する。
この側壁に形成される凹凸により、段差下部の逆テーパー部分に腐刻中の再付着物が残りやすくなる。
このような再付着物が残ると、次工程の成膜後の膜剥がれを生じる原因や、長期使用中に再付着物が剥がれ落ち、最終製品での長期信頼性を低下させる原因になる。
エッチング後に行う成膜工程において、成膜方法の多くは、逆テーパー部分の膜厚成長が他の部分よりも遅くなるため、後工程の成膜厚制御不良の原因となる。
上述した問題の解決のために、本発明においては、微細化を可能にすると共に、安定して良好な腐刻を行うことを可能にする、腐刻方法を提供するものである。
本発明の腐刻方法は、腐刻用ガスの放電により腐刻を行う方法であって、腐刻対象物をSi,Snのうち1種類以上の原子で構成された物質とし、腐刻側壁を表面酸化することにより異方性腐刻の水平方向の腐刻速度を低下させて異方性を強調するために、腐刻側壁を酸化するガスとして酸素原子を含む酸化性ガスをガス全体に対して20〜50vol%の範囲の濃度で添加しながら腐刻用ガスとしてClF ,ClF ,BrF ,IF から選ばれる1つ以上のハロゲン間化合物ガスを使用して、腐刻対象物に対して腐刻を行って、前記腐刻対象物に孔を形成するものである。
上記本発明の腐刻方法において、腐刻を行う処理室内に腐刻対象物を入れる前に、炭素原子を含まないハロゲン間化合物ガスを放電させて、処理室内に付着した炭素原子を含む物質を剥離清掃する処理を行い、その後、腐刻対象物に対して腐刻を行うことが可能である。
上記本発明の腐刻方法において、腐刻対象物に対して腐刻を行うと同時に、腐刻を行う処理室内に付着した炭素原子を含む物質を剥離清掃することが可能である。
上記本発明の腐刻方法において、酸化性ガスとして、O,NOから選ばれる1つ以上のガスを使用することが可能である。
上述の本発明の腐刻方法によれば、腐刻ガスとして炭素原子を含まない、ClF ,ClF ,BrF ,IF から選ばれる1つ以上のハロゲン間化合物ガスを使用するので、腐刻箇所の側壁や処理室内に炭素原子を含む物質(有機物等)が付着することがない。
また、腐刻ガスに酸化性ガスを添加することにより、腐刻対象物の腐刻箇所の側壁の表面を酸化して、この酸化膜によって水平方向の腐刻速度を抑制することができる。
これにより、深さ方向の腐刻速度に対して、水平方向の腐刻速度を充分に小さくすることができるため、腐刻対象物と、酸化物や窒化物との、腐刻選択比を向上することができる。
しかも、酸化性ガスで腐刻箇所の側壁の表面を酸化するだけであるため、側壁の体積膨張量はほぼ0である。これにより、腐刻箇所のスペースを狭めることがなく、微細加工が可能となる。
本発明の腐刻方法は、腐刻ガスとして炭素原子を含まないハロゲン間化合物ガスを使用するので、腐刻処理中に同時に、処理室内壁及び放電源内壁に付着した物質を剥離する清掃処理を行うことも可能である。
これにより、処理室内の炭素原子を含む物質を除去して、放電源の安定性・再現性を向上させることも可能になる。
処理室内の炭素原子を含む物質としては、例えば、炭素原子と14族元素であるSi,Snで構成された物質が考えられる。
また、例えば、腐刻対象物に炭素を含む材料が存在していたり、処理室内の部品でエンジニアリング・プラスティック、バイトンO−ring等が存在していたりする場合にも、炭素を含む物質が昇華されて、腐刻対象物からのSi原子やSn原子と結合して、蒸気圧が下がり再付着することが考えられる。
また、処理室内に、炭素原子を含む有機物(例えば、ポリイミド、エンジニアリング・プラスティック材料)等が存在していると、放電部品の絶縁抵抗が低下し、放電が不安定になり、再現性が低下する。さらに、炭素原子が酸化珪素、窒化珪素や酸窒化珪素の酸素や窒素を離脱させる作用を生じて、酸化珪素、窒化珪素や酸窒化珪素の14族原子で構成された物質に対する腐刻の選択比が低下することがある。
これに対して、ハロゲン間化合物ガスによる放電活性種は、イオン化された活性種のみならず、電気的中性ラジカルも、炭素化合物を剥離・昇華させる作用を有しており、蒸気圧の低い炭素化合物(有機珪素化合物付着物等)を昇華蒸発剥離することができる。
これにより、処理室内の放電清掃、及び、腐刻対象物の表面の有機物剥離を行うことが可能になる。
従って、放電源の絶縁物の絶縁抵抗を維持することや、放電発光分析部分での採光部の窓の汚れ等を除去して終点検出の精度を向上させることが可能になる。
上述の本発明の腐刻方法によれば、腐刻対象物と酸化物や窒化物との腐刻選択比を向上することができる。
また、腐刻箇所のスペースを狭めることがなく、微細加工が可能となる。
さらに、腐刻箇所の側壁や処理室内に炭素原子を含む物質(有機物等)が付着することがないため、腐刻反応ガスの濃度変動を抑制して、腐刻側壁角度等、腐刻の再現性を向上することができる。
従って、本発明の腐刻方法により、加工の微細化を可能にすると共に、安定して良好な腐刻を行うことを可能にする。
上述の本発明の清掃処理方法によれば、放電源の安定性・再現性を向上させることが可能になるため、その後の腐刻を安定して行うことができる。
本発明の腐刻方法においては、異方性腐刻における深さ方向に対する水平方向の腐刻速度を抑制するために、腐刻用ガス(ハロゲン間化合物ガス)に酸化性ガス(O,NO)を添加して、腐刻対象物(Si,Sn)の表面を酸化する。
これにより、腐刻対象物の表面に薄い酸化膜を形成して、水平方向の腐刻速度を抑制することができる。
腐刻処理を行うための腐刻装置の構成としては、処理室内で腐刻ガスを放電させて、処理室内の腐刻対象物に対して、腐刻を行う装置を基本とする。
さらに必要に応じて、高周波バイアス電圧等の電圧印加手段等を設けてもよい。
腐刻用ガスのハロゲン間化合物ガスとしては、例えば、ClF,ClF,BrF,IFから選ばれる1つ以上のガスを使用することができる。
これらのハロゲン間化合物ガスは、Ar(アルゴン)原子よりも大きい分子量を有している。
ハロゲン間化合物ガスを正イオン化した状態で、高周波を印加して負電位の自己バイアス電位を生じさせると、正イオンが電位差で加速されて腐刻対象物に衝突する。このとき、正イオン分子は、パーフルオロコンパウンドの正イオン分子と比較し、結合エネルギーが弱いため、衝突時に容易に分解し、分子量が小さくなるため、腐刻対象物へのダメージを低減することができる低加速電位で腐刻を行うことができる。
上述した自己バイアス電位を生じさせるための電力の大きさは、誘導結合低圧高密度放電又はアノード・カップル式容量結合放電において、周波数400kHz〜27.12MHz、かつ、印加電力÷電極面積が0.01〜0.5W/cm(ただし、同一の圧力及び印加高周波電力において、Arガスの分子量以下で発生する物理衝突による腐刻対象物の削れが起こる電位の領域を除く)となるように設定することが好ましい。
ハロゲン間化合物ガスに添加する酸化性ガスとしては、例えば、O,NOから選ばれる1つ以上のガスを使用することができる。
ハロゲン間化合物ガスに添加する酸化性ガスの濃度は、ハロゲン間化合物ガスと合わせたガス全体を100vol%として、20〜50vol%の範囲とすることが好ましい。
処理対象物の処理温度は、好ましくは、−20℃〜250℃の範囲とする。
処理圧力は、(a)低圧高密度放電においては、0.4Pa〜97Paの範囲、(b)周波数27MHz〜94.92MHzの容量結合放電においては、2.2Pa〜667Paの範囲、(c)周波数4MHz〜27MHzの容量結合放電においては、9Pa〜6.6kPaの範囲、とすることが好ましい。
処理ガスの流量は、ガス流量[Pa・m/s(0℃)]÷処理室体積[m(0℃・大気圧時)]の値が、(a)低圧高密度放電においては、1.7〜169[Pa/s]の範囲、(b)周波数27.12MHz〜94.92MHzの容量結合放電においては、4.9〜338[Pa/s]の範囲、(c)周波数4MHz〜27.12MHzの容量結合放電においては、9.8〜562[Pa/s]の範囲、となるようにそれぞれ流量を設定することが好ましい。
高周波印加電力を1つ以上使用した放電発生源の最も大きな放電源の印加電力は、以下のように設定することが好ましい。
(a)誘導結合低圧高密度放電でかつ印加高周波の周波数400kHz〜27.12MHzにおいては、放電電力[kW]÷放電体積[m]の値が10〜2000[kW/m]の範囲にあるように設定する。ただし、連続放電させながら、放電状態の印加電力を一つ前の設定電力の10%ずつ低下させていき、発光輝度が一つ前の設定電力における発光輝度の65%以下になるような電力設定値以下の場合、即ち、容量結合放電領域の電力設定値を除く。
(b)周波数27.12MHz〜94.92MHzの容量結合放電においては、印加電力[kW]÷電極面積[m]の値が、4.9〜338[kW/m]の範囲にあるように設定する。
(c)周波数4MHz〜27.12MHzの容量結合放電においては、印加電力[kW]÷電極面積[m]の値が、2.7〜56[kW/m]の範囲にあるように設定する。
本発明の腐刻方法は、腐刻ガスとして炭素原子を含まないハロゲン間化合物ガスを使用し、添加ガスとして酸化性ガスを使用するだけであるため、燃焼除害装置を使用せずに、水又はアルカリ・スクラバーのみによって腐刻中の排ガスの毒性濃度を法規定以下に低減することが可能になる。
また、腐刻ガスが炭素原子を含まないので、排気ガスのパーフルオロカーボンが発生しない。
また、腐刻ガスとして炭素原子を含まないハロゲン間化合物ガスを使用するので、腐刻対象物(珪素等)の試料表面に、SiO,SiN,Al,Cu等の材料のマスクを作製する際に使用する紫外線感光型有機膜レジストを剥離する工程を、腐刻工程の前に行わずに、腐刻中に同時に紫外線感光型有機膜レジストを剥離することも可能になる。
これにより、工程数を削減することが可能になる。
本発明の腐刻方法は、従来の炭素系の成膜ガスを添加する側壁保護膜の「成膜」方法とは異なり、酸化性ガスで腐刻箇所の側壁の表面を酸化するだけであるため、側壁の体積膨張量はほぼ0である。例えば、厚さ10〜20nm程度であり、腐刻箇所のスペースの幅と比較すると充分に小さい。
これにより、腐刻箇所のスペースを狭めることがなく、微細加工が可能となる。
ハロゲン間化合物ガスは、炭素系成膜ガスよりも結合エネルギーが低いため、低エネルギーで分解する。
これにより、腐刻処理を行うプラズマ・シースに対する電位差(Vdc)を低減することができ、電気ダメージを低下することが可能である。
また、本発明の清掃処理方法は、腐刻用ガスの放電により、腐刻対象物に対して腐刻を行った後に、処理室内に付着した炭素原子を含む物質を剥離清掃する処理を行うものである。
腐刻が終了して、腐刻を行った処理室内から腐刻対象物を取り出した後に、炭素原子を含まないハロゲン間化合物ガスを使用して、このハロゲン間化合物ガスを放電させることにより、処理室内に付着した炭素原子を含む物質を剥離清掃する。
この清掃処理方法は、前述した本発明の腐刻方法だけでなく、従来の腐刻と炭素系成膜とを同時又は交互に行う腐刻方法に対しても、腐刻後の清掃処理として適用することができる。
従来の腐刻と炭素系成膜とを同時又は交互に行う腐刻方法では、腐刻終了時点で、処理室内に炭素原子を含む物質が多く付着している。そこで、本発明の腐刻後の清掃処理方法を適用することにより、付着物質を除去することができるため、次回の腐刻の際に安定した放電を行うことができる。
続いて、本発明の腐刻方法の一実施の形態を説明する。
本実施の形態では、一般的な装置構成である誘導結合型高密度放電を用いた腐刻装置(異方性腐刻装置)を使用する。
使用する腐刻装置(異方性腐刻装置)の概略構成図を、図1に示す。
図1に示す腐刻装置は、放電により生じたプラズマを用いて、試料10に対するエッチングが行われる処理室1を有して構成されている。
試料10は、試料台(ステージ)2上に配置されている。
処理室1内を減圧するために、ターボ分子ポンプ3及びドライ・ポンプ4が設けられている。
試料台2には、自己バイアス電源5から、高周波バイアス電圧が印加される。
ハロゲン間化合物ガス(例えば、ClF)は、MFC(マスフローコントローラ)6と弁8とを経て、処理室1内に供給される。
酸化性ガス(例えば、O)は、MFC(マスフローコントローラ)7と弁9とを経て、処理室1内に供給される。
図1の腐刻装置を使用して、例えば、以下に説明するようにして、試料10に対して腐刻を行うことができる。
まず、処理室1内に試料10を入れて、試料10を試料台2の上に配置する。
次に、ターボ分子ポンプ3及びドライ・ポンプ4を使用して、処理室1内を減圧する。
そして、MFC6と弁8により流量を調節して、ハロゲン間化合物ガスを処理室1内へ供給する。また、MFC7と弁9により流量を調節して、酸化性ガスを処理室1内へ供給する。
さらに、自己バイアス電源5から、試料台2を通じて、試料10の珪素単結晶基板等に高周波バイアス電圧を供給する。
この状態で、処理室1内においてガス放電を生じさせて、試料10の珪素単結晶基板等に対して、ハロゲン間化合物ガスによる腐刻を行う。
このとき、ハロゲン間化合物ガスに加えて、酸化性ガスも処理室内に供給していることにより、試料10の腐刻側壁表面を酸化させて、水平方向の腐刻速度を抑制することができる。これにより、深さ方向の腐刻速度を水平方向の腐刻速度に対して大きくすることができ、腐刻の選択比を大きく確保することができる。
(実施例)
ここで、実際に、図1に示した腐刻装置を使用して、珪素単結晶基板の腐刻処理を行った。
図2Aに上面図を示し、図2Bに断面図を示すように、酸化珪素膜(厚さ0.8μm)12を表面に形成した、厚さ550μmの珪素単結晶基板11上に、15mm×15mmの正方形の開口14を形成した石英ガラス13を乗せて、石英ガラス13をマスクとして、基板11に対して腐刻処理が行われるように配置した。
腐刻ガスの総流量は、ClF+O=5.91[Pa/s]とした。
印加電力は、ICP(誘導結合プラズマ)550W−基板バイアス50Wとした。
そして、基板11を貫通した時点で、腐刻を終了させるようにした。
腐刻処理の際には、放電発光モニターにより時間軸波長解析を行い、図3に示すように、発光強度の時間変化を調べた。
そして、基板11を貫通したときの特定波長(406.1nm)の発光強度の変化点(図3の時刻2214sの点)をもって基板貫通時間とし、基板11の厚さ550μmを基板貫通時間で割ったものを、腐刻速度とした。
なお、SiFのスペクトルのピーク中心波長は約406.5nmであるが、使用した装置の都合上、波長406.1nmで発光強度を測定した。
ここで、参考までに、放電発光モニターにより得られた発光強度の波長分布を、図4に示す。
図4では、細線で示す発光強度の波長分布に、O,Si,SiF,SiClの各スペクトルの位置を重ねている。各スペクトルの上には、そのスペクトルが示す物質名(O,Si,SiF,SiCl)を記載している。なお、2つ以上の物質のスペクトルが重なっている場合には、代表して1つの物質のみを示している。
このような波長分布から、SiFのスペクトルのピークの中心波長の近傍の波長406.1nmを選定して、図3に示した発光強度の時間変化を得た。
図3の時刻300秒から放電を開始し、時刻430秒で厚さ0.8μmの酸化珪素膜の昇華腐刻が終了していることにより、(430−300)=130secで0.8μmの酸化珪素膜が腐刻できたことになる。即ち、酸化珪素膜の腐刻速度は、0.8μm÷130sec×60sec/min=0.369[μm/min]となる。
同様に、時刻2214secで厚さ550μmの珪素単結晶の昇華腐刻が終了していることにより、(2214−430)=1784secで550μmの珪素単結晶が腐刻できたことになる。即ち、珪素単結晶の腐刻速度は、550μm÷1784sec×60sec/min=18.5[μm/min]となる。
これらの腐刻速度の比を選択比として求めると、選択比Si:SiO=18.5:0.369=50.1:1となる。
上述のような条件・手順によって、酸素ガスの添加量(酸素濃度)を変えて、それぞれ珪素単結晶の腐刻速度を求めた。
酸素ガスの添加量は、ClFのみ(酸素ガス無添加)の場合と、Oを7vol%、10vol%、15vol%、20vol%、25vol%添加した場合とについて、それぞれ測定を行った。
測定結果として、ClFへのOの添加量比率と腐刻速度(エッチングレート)との関係を、図5に示す。図5において、縦軸は腐刻速度(エッチングレート:E/R)[μm/min]を示し、横軸はOの添加量比率[vol%]を示している。
図5からわかるように、ClFのみ(酸素ガス無添加)の場合、約14.5μm/minと早い腐刻速度が得られる。ただし、ClFのみ(酸素ガス無添加)の場合には、側壁表面に酸化膜が形成されないので、好ましくない。
また、酸素の添加量が増えるに従い、腐刻速度が低下していくが、腐刻速度の低下率が小さく、酸素を25vol%添加しても、10μm/min程度の腐刻速度が得られる。
なお、図示しないが、比較対照として、塩素ガスのみ(酸素ガス無添加)及び塩素ガスに酸素ガスを添加した場合も、同様にして、腐刻速度を測定した。
その結果、塩素ガスのみの場合には、ClFのみ(酸素ガス無添加)の場合(約14.5μm/min)と比較して、腐刻速度が約4分の1とかなり遅くなった。
また、塩素ガスに酸素ガスを5vol%添加しただけで、塩素ガスでは途中でエッチングが停止してしまい、孔を貫通させることができなかった。
従って、腐刻ガスとしてClFのようなハロゲン間化合物ガスを使用することにより、塩素ガスのようなハロゲンガスを使用した場合と比較して、腐刻速度を大幅に速くできることがわかる。
また、ハロゲン間化合物ガスに酸素ガスを添加しても、酸素ガスの添加による腐刻速度の低下率が小さく、充分に速い腐刻速度が得られることがわかる。
次に、腐刻ガスとして、ハロゲン間ガスClFのみ(酸素ガス無添加)を使用して、ClFの流量を変化させて、同様に、厚さ550μmの基板11に対する基板貫通時間を測定した。
なお、印加電力は、ICP(誘導結合プラズマ)600W−基板バイアス50Wとした。
そして、基板厚さを、測定して得られた基板貫通時間で割って、腐刻速度を求めた。
測定結果として、流量÷処理室体積の値[Pa/s]と、腐刻速度(エッチングレート)との関係を、図6に示す。
図6からわかるように、10Pa/s付近でエッチングレートが最大になり、それより流量が少なくなっても、流量が多くなっても、エッチングレートが低下する。
従って、10Pa/s付近となるようにガスの流量を設定することにより、大きいエッチングレートが得られる。
次に、ハロゲン間化合物ガスへの酸素ガスの添加量を変えて、それぞれの腐刻後の状態を調べた。
試料としては、被腐刻対象の珪素単結晶の表面に、マスクとして厚さ0.8μmの酸化珪素膜を形成した試料を用意した。
酸素ガスの添加量としては、ClF100vol%(酸素ガス無添加)、ClF80vol%・O20vol%、ClF50vol%・O50vol%の3通りとした。
腐刻後のそれぞれの状態の写真(電子顕微鏡による)を、図7A〜図7Cに示す。
図7AはClF100vol%の場合を示し、図7BはClF80vol%・O20vol%の場合を示し、図7CはClF50vol%・O50vol%の場合を示している。
図7Aからわかるように、ハロゲン間化合物ガスであるClF100vol%を腐刻ガスとして使用した場合、側壁角度は約45度であった。
さらに、酸化性ガスとして酸素を添加したところ、14族元素である珪素単結晶の側壁が酸化されて、腐刻速度が低下するので、図7B及び図7Cに示すように、側壁角度を大きくすることができた。
特に、図7Cに示す50vol%添加では、側壁角度を約80度まで垂直方向に近づけることができた。
次に、酸化珪素マスク上にフォトレジストを残した状態で腐刻処理を行い、その後の状態を調べた。
ハロゲン間化合物ガスと酸素を混合した放電腐刻処理の対象物として、珪素単結晶基板上に、酸化珪素膜を形成し、その上にフォトレジストを形成して、このフォトレジストを現像した。
さらに、フォトレジストをマスクとして、酸化珪素膜を所定のパターンにパターニングし、酸化珪素マスクを形成した。
そして、フォトレジストを上に残したまま、酸化珪素マスクによって、珪素単結晶を腐刻した。
その結果、図8に写真(電子顕微鏡による)を示すように、有機物であるフォトレジストは綺麗に剥離されており、フォトレジスト下の酸化珪素のマスクは初期の形状を維持していた。
ところで、前述したように、処理室内に有機物(例えば、ポリイミド、エンジニアリング・プラスティック材料)が存在していると、放電が不安定になり、再現性が低下する。また、腐刻の選択比が低下することがある。
従来の腐刻に対して、本発明の腐刻方法又は清掃処理方法を適用して、ハロゲン間化合物ガスによって、再付着した有機物を除去しておくと、放電が安定し、良好な再現性を得て、腐刻の選択比も向上することができる。
そこで、処理室1内に有機物が存在している場合と、有機物が存在していない場合とについて、それぞれ、ハロゲン間化合物ガスに酸素ガスを添加した腐刻ガスを使用して、腐刻後の状態の比較を行った。
腐刻ガスは、いずれの場合も、ClF50vol%・O50vol%とした。
それぞれの状態の写真(電子顕微鏡による)を、図9A及び図9Bに示す。図9Aは有機物が存在する場合を示し、図9Bは有機物が存在しない場合を示している。
図9Aからわかるように、処理室内の有機物が存在している場合は、酸素を供給しているにもかかわらず基板表面の酸化珪素マスクが剥離されている。
即ち、酸化珪素と珪素との選択比が低下したことがわかる。
これに対して、図9Bからわかるように、処理室内に有機物が無い場合は、基板表面の厚さ0.8μmの酸化珪素マスクは、ほぼ膜厚・形状を保持することができた。
従って、本発明の腐刻方法又は清掃処理方法を適用して、腐刻処理と同時、或いは腐刻処理の前又は後に、ハロゲン間化合物ガスによる処理室内の有機物の除去を行うことにより、マスクの酸化珪素膜が剥離することなく、良好な状態で腐刻処理を行うことができる。
上述した各実施例では、ハロゲン間化合物ガスとしてClFガスを使用し、酸化性ガスとして酸素ガスを使用した。
本発明では、もちろん、その他のハロゲン間化合物ガスや酸化性ガスを使用することが可能である。
また、本発明を適用する腐刻装置は、図1に示した腐刻装置に限定されるものではない。
その他のガス放電により腐刻を行う装置にも、図1に示した腐刻装置と同様に、本発明を適用することが可能である。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
本発明の腐刻方法の一実施の形態で使用する腐刻装置の概略構成図である。 A、B 酸化珪素膜を表面に形成した珪素単結晶基板上に石英ガラスによるマスクを配置した状態を示す図である。 発光強度の時間経過を示す図である。 発光強度の波長分布とO,Si,SiF,SiClの各スペクトルとを重ねて示した図である。 酸素の添加量比率と腐刻速度(エッチングレート)との関係を示す図である。 流量÷処理室体積の値と腐刻速度との関係を示す図である。 A〜C ハロゲン間化合物ガスと酸素ガスとの比率を変えて、それぞれ腐刻を行った後の状態を示す写真である。 フォトレジストを残したまま酸化珪素マスクで珪素単結晶を腐刻した後の状態を示す写真である。 A、B 処理室内の有機物の有無による、腐刻後の酸化珪素マスクの状態の違いを示す写真である。
符号の説明
1 処理室、2 試料台、3 ターボ分子ポンプ、4 ドライ・ポンプ、5 自己バイアス電源、6,7 MFC、10 試料、11 珪素単結晶基板、12 酸化珪素膜、13 石英ガラス、14 開口

Claims (4)

  1. 腐刻用ガスの放電により腐刻を行う方法であって、
    腐刻対象物を、Si,Snのうち1種類以上の原子で構成された物質とし、
    前記腐刻用ガスとして、ClF ,ClF ,BrF ,IF から選ばれる1つ以上のハロゲン間化合物ガスを使用し、
    腐刻側壁を表面酸化することにより異方性腐刻の水平方向の腐刻速度を低下させて異方性を強調するために、前記腐刻用ガスに、酸素原子を含む酸化性ガスを、ガス全体に対して20〜50vol%の範囲の濃度で添加して、
    前記腐刻対象物に対して腐刻を行って、前記腐刻対象物に孔を形成する
    腐刻方法。
  2. 前記腐刻を行う処理室内に前記腐刻対象物を入れる前に、炭素原子を含まない前記ハロゲン間化合物ガスを放電させて、前記処理室内に付着した炭素原子を含む物質を剥離清掃する処理を行い、
    その後、前記腐刻対象物に対して前記腐刻を行う、請求項1に記載の腐刻方法。
  3. 前記腐刻対象物に対して前記腐刻を行うと同時に、前記腐刻を行う処理室内に付着した炭素原子を含む物質を剥離清掃する、請求項1又は請求項2に記載の腐刻方法。
  4. 前記酸化性ガスとして、O,NOから選ばれる1つ以上のガスを使用する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の腐刻方法。
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