ところで、特許文献2、3に記載の炊飯技術は、特許文献1に記載のような非金属製の鍋を適用した電気炊飯器にも適用されるべきである。
しかし、特許文献2に記載の炊飯技術は、省エネ炊飯モードが入力された場合、浸水工程において、鍋の検知温度が所定時間の間、所定の温度になるように鍋加熱装置を制御し、所定時間の経過後は鍋加熱装置の鍋加熱動作を停止させるよう加熱制御部を制御するようにし、特許文献3に記載の炊飯技術は、入力される鍋の検知温度と炊飯量とから、炊き上げ検知後の蒸らし時の最大加熱量を決定し蒸らし時に最大加熱量以下で鍋内の温度を第1の所定温度になるように加熱手段を制御し、加えて、検知した周辺温度に応じて蒸らし時に加熱手段による最大加熱量を変化させるようにしているが、いずれも、鍋の検知温度を基にした制御を主体としているのに対し、非金属製の鍋では、土鍋で代表される非金属製の鍋は熱伝導性が低く、土鍋ではアルミニウムの1/200と小さく、しかも厚いので、鍋内側の温度、つまり各工程での実進行温度を捉えにくく、特許文献2、3の炊飯技術を適用しても同等の結果は得られない。
そこで、本発明者は、まず、図3(a)に示すシーケンスでの現行の炊飯における各部での検出温度を比較した。温度検出位置は図4に示すように1.ご飯温度、2.蓋体の蒸気を外部に放出する放出口部、3.鍋底部外面中央に当てがったセンターセンサの3種類である。結果は、炊飯時の4.室温と5.電力量との変化を併せ示すと図4に示す通りである。なお、4.室温は炊飯器の本体内に備える室温センサにより検出したもので、加熱制御状態が反映している。つまり、鍋まわりの雰囲気温度といえるものである。
図6に示す現行例でいうと、吸水工程は、メインIHである底部加熱源の出力0%で、つまり非加熱状態で初期水温を検知する吸水1処理、水温を約30℃に維持するメインIHである底部加熱源の出力を60%とする吸水2処理、昇温工程は、IHである底部加熱源の出力を100%に上げて合数判定する昇温1処理、メインIHである底部加熱源の出力100%を維持する昇温2処理、メインIHである底部加熱源4の出力を70%に低減する昇温3処理としている。炊き上げ工程はメインIHである底部加熱源の出力を70%、50%と2段階にする炊き上げ1、2処理としてあり、追い炊きオフの炊き上げ3処理、メインIHである底部加熱源の出力60%での追い炊きオンの炊き上げ4処理として加熱制御している。蒸らし工程は、メインIHである底部加熱源の出力は0%とし、蓋ヒータ、側面上ヒータ、側面中ヒータ、側面したヒータの出力をそれぞれ6/16とする蒸らし2処理としている。
図4において、1.ご飯温度とその変化パターンが、実際の実工程温度とその変化パターンといえ、3.センターセンサの温度は実工程温度と変化はほぼ対応しているが、ご飯が100℃を維持される昇温段階での電力量の変化やオン、オフの影響を強く受けている分だけ、実工程温度から外れている。このように3.センターセンサ温度が実工程温度から外れるにもかかわらず、各種経験も踏まえ、昇温工程で100℃を維持しながら炊き上げ工程に移行し、焦げの発生がないように一旦電力量を継続して下げた後、再度電力量を高めて、電力量低下過程でも鍋の蓄熱性を利用してご飯をほぼ100℃域に保ちながら焦げなく炊き上げを終了して蒸らし工程に入ることで、ご飯を炊き上げている。
ここで、蒸気口温度は図5に現行5として抜き出し示すように、炊き上げ工程での前記電力量の変化の影響を最も受けている。この影響は、炊き上げ時に多量に発生する蒸気の温度が電力量の低下によって一旦低下した後、再度立ち上げていることを意味し、電力量低下域での電力量の炊き上げへの貢献度が極端に低いので省エネ効果にならない。しかも、蒸気口温度の100℃からこの吸水工程時の約30℃に近い60℃未満への極端な低下は、蒸気の発生が鈍るのに加え、引圧による外気の引き込みの影響も考えられ、蒸気の効率的な放出の妨げとなって炊飯時間延長による反省エネの原因になる。
本発明の目的は、このような新たな知見に基づき、非金属製の鍋を採用した炊き上げ工程での蒸気口温度を基にした加熱制御によって、焦げの生じない省エネ炊飯ができる電気炊飯器を提供することにある。
上記のような目的を達成するため、本発明の電気炊飯器は、非金属製とした鍋側の発熱体をこの鍋を収容した本体側の加熱コイルからの交番磁界により誘導発熱させて炊飯過程での加熱を行い、加熱により発生する蒸気の蓋体の外面に開口する蒸気口からの外部への放出を伴い、吸水・合数判定、合数判定に基づく昇温、炊き上げ、蒸らしの各工程を経て、炊飯を行う電気炊飯器において、蒸気が放出される蒸気口での温度を検出する蒸気センサを備え、炊き上げ工程は、前記蒸気口での検出温度を、吸水時と昇温時との蒸気口温度のほぼ中間帯域に保つように加熱制御することを1つの特徴としている。
このような構成では、炊き上げ工程において、蒸気センサにより蒸気が放出される蒸気口での温度が検出され、この検出される蒸気口温度を、吸水時と昇温時との蒸気口温度のほぼ中間帯域を保つように加熱制御することで、電力量の、蒸気口温度を前記中間帯域に保つ過程での昇温工程からの適度な低減によって焦げの発生を防止しながら、電力量の有効利用を図って、従来、焦げ防止のために電力量を継続して低下していた場合のような、蒸気の発生が鈍ったり、蒸気口温度が引圧による外気の吸い込みの影響もあって吸水工程時に近い温度にまで低下するのを回避し、蒸気の、活発な発生と、引圧による外気の引き込みのない効率的な放出と、を確保し、炊き上げ工程を早期に終えて蒸らし工程に移行することができる。
本発明の電気炊飯器は、また、非金属製とした鍋側の発熱体をこの鍋を収容した本体側の加熱コイルからの交番磁界により誘導発熱させて炊飯過程での加熱を行ない、加熱により発生する蒸気の蓋体の外面の蒸気口からの外部への放出を伴い、吸水・合数判定、合数判定に基づく昇温、炊き上げ、蒸らしの各工程を経て、炊飯を行う電気炊飯器において、蒸気が放出される蒸気口での温度を検出する蒸気センサを備え、炊き上げ工程は、主として鍋底部外面での検出温度を基にした加熱制御から、蒸気が放出される蒸気口での検出温度を基にした加熱制御に切り替え、蒸気口での検出温度を、吸水時と昇温時との蒸気口温度のほぼ中間帯域に保つようにすることを別の特徴としている。
このような構成では、1つの特徴の場合に加え、さらに、吸水・合数判定、昇温、蒸らしの各工程を、主として鍋底部の外面での検出温度を基にした従来通りの加熱制御を踏襲して問題なく遂行しながら、昇温工程と蒸らし工程との間の炊き上げ工程については、蒸気口温度を基にした加熱制御に切り替えることで、1つの特徴の場合と同様に遂行することができる。
上記において、さらに、炊き上げ工程中は、加熱を中断しないことを特徴とすることができる。
このような構成では、上記に加え、さらに、炊き上げ工程中加熱を中断しないで、蒸気口での検出温度を、吸水時と昇温時との蒸気口温度のほぼ中間帯域に保つように加熱制御することで、焦げの発生を見ないで、しかも、炊き上げ工程中に加熱の停止により蒸気発生、放出の効率をいささかも低下させないようにすることができる。
上記において、さらに、判定合数、初期水温、雰囲気温度、の少なくとも1つに応じて、炊き上げ工程での電力量を変化させることを特徴とすることができる。
このような構成では、上記に加え、さらに、判定合数、初期水温、雰囲気温度はそれぞれ、電力量に対する蒸発率を変動させる要素であるので、これらの1つに対応してでも炊き上げ工程での電力量を変化させると、該当変動要素による炊き上げ終了時点の変動を回避でき、対応する変動要素の数が増大するほど変動要素による炊き上げ終了時点の変動を回避できる。
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面によって明らかになる。本発明の各特徴は可能な限りそれ単独で、あるいは種々な組合せで複合して採用することができる。
本発明の電気炊飯器の1つの特徴によれば、非金属製の鍋を採用した炊飯での炊き上げ工程にて、蒸気が放出される蒸気口での検出温度を、吸水時と昇温時との蒸気口温度のほぼ中間帯域を保つ加熱制御上、電力量の昇温工程からの適度な低減によって焦げの発生を防止しながら、従来の加熱制御では望めなかった、蒸気の、活発な発生と、引圧による外気の引き込みのない効率的な放出と、を確保する電力量の有効利用を図って、炊き上げ工程を早期に終えて蒸らし工程に移行し、省エネ炊飯ができる。
本発明の電気炊飯器の別の特徴によれば、1つの特徴の場合に加え、さらに、吸水・合数判定、昇温、蒸らしの各工程を、主として鍋底部の外面での検出温度を基にした従来通りの加熱制御を踏襲して問題なく遂行しながら、炊き上げ工程については、蒸気口温度を基にした加熱制御に切り替えることで、1つの特徴の場合のような利点を持って遂行することができる。
上記に加え、さらに、炊き上げ工程中加熱を中断せず、蒸気の検出温度を、吸水時と昇温時との蒸気口温度のほぼ中間帯域に保つように加熱制御することで、焦げの発生を見ないで、しかも、炊き上げ工程中に加熱の停止により蒸気発生、放出の効率に影響をいささかも低下させないようにすることができる。
上記に加え、さらに、電力量に対する蒸発率を変動させる要素である、判定合数、初期水温、雰囲気温度、の1つに対応してでも炊き上げ工程での電力量を変化させて、該当変動要素による炊き上げ終了時点の変動を回避でき、対応する変動要素の数が増大するほど変動要素による炊き上げ終了時点の変動を回避でき、常に安定した炊飯ができる。
以下、本発明に係る電気炊飯器の実施の形態について、図1〜図6を参照しながら詳細に説明し本発明の理解に供する。
本実施の形態の電気炊飯器は、図1、図2に示すように、非金属製とした、具体的には土鍋である鍋1側の適数の発熱体4b1、4b2・・からなる発熱体4bを、この鍋1を収容した本体2側の適数の加熱コイル4a1、4a2・・からなる加熱コイル4aからの交番磁界により誘導発熱させて炊飯過程での加熱を行い、加熱により発生する蒸気の蓋体3の外面に開口する蒸気口27からの外部への放出を伴い、吸水・合数判定、合数判定に基づく昇温、炊き上げ、蒸らしの各工程を経て、炊飯を行う基本的な機能を有している。
具体的には、非金属製の鍋1、この鍋1を着脱できるように収容した本体2、本体2および鍋1を開閉する蓋体3、鍋1の底部から加熱する前記発熱体4bと加熱コイル4aとの組み合わせからなる底部加熱源4と、鍋1の側部から加熱する側部加熱源5と、蓋体3から加熱する蓋加熱源6と、を備えている。本体2は内外装ケース11、12間に底部加熱源4の加熱コイル4aを配し、これに対向する鍋1の底部に加熱コイル4aからの交番磁界によって誘導発熱される発熱体4bを設けてある。具体的には鍋1の底部の外面に設けてあるが内面でもよいし埋設されていてもよい。側部加熱源5は内装ケース11における樹脂製の下部枠11bと上部枠11cとの間に挟み付けた金属製とした胴部枠11aの外まわりに巻きつけたヒータ5aとしてある。しかし、側部加熱源5も図示しない加熱コイルと鍋1側の発熱体との組み合わせとすることもできる。蓋加熱源6は蓋体3の樹脂製の上板3aと組み合わせた樹脂製の下板3bに嵌め付けた金属製の放熱板3cの上面に配線し取り付けた保温ヒータ6aとしてある。この保温ヒータ6aを加熱コイルに換え、鍋1を閉じる非金属製の蓋に設けた発熱体ないしは発熱体である内蓋7を発熱させる組み合わせの蓋加熱源とすることもできる。放熱板3cは鍋1の開口に対応した大きさを有し、鍋1の開口を閉じる金属製の内蓋7の上方から鍋1内のご飯を加熱し保温するもので、主として側部加熱源5と協働して温度差による結露を防止しながら保温する。
ここで、底部加熱源4は鍋1の側部中央部と底部の胴部へ例えばアール形状で立ち上がる外周部とに別れ定置するように、中央部の加熱コイル4a1、発熱体4b1の組みと、周辺部の加熱コイル4a2、発熱体4b2の組みとに分かれている。しかし、加熱コイル4a1、4a2は1本の線を2箇所に巻き分けた構成として同一の通電制御を行うようにしている。これに限られることはなく、個別の線で構成して個別な通電制御を行うようにもできる。
図1に示すように、これら底部加熱源4、側部加熱源5、蓋加熱源6を駆動する電源・駆動基板111、この電源・駆動基板111を通じ設定されたモードの炊飯や調理を行なう制御基板112を本体2の内外装ケース11、12の前部間に形成した大きな空間に配し、ファン13によるヒートシンク13aと協働したIGBTといった発熱素子を矢印Aで示すような送風にて冷却するようにしてある。ファン13はまた、電源・駆動基板111とその下部から鍋1の底部の側に延びるガイド113との案内による矢印Bで示すような送風にて本体2の内装ケース11の底部まわりに配置した加熱コイル4a1、4a2を冷却し、かつこの送風が内装ケース11の上部まわりに及ぶことを利用して適時に鍋1を冷却することもできる。
本体2の広い前部の上面には各種のモードを設定したり、炊飯や調理を開始したり、保温を選択したり停止したりする操作パネル14を設けてあり、その内側には操作基板18を設けて操作パネル14での各種操作に対応し、また操作の状態や動作の状態の表示を行えるようにしている。本体2の後部間には側部間よりはやや広い空間として電源接続コードの巻取りリール115を収容している。本体2の内装ケース11の下部枠11b、上部枠11cは樹脂製としてあり、下部枠11bが透磁性を満足し加熱コイル4a1、4a2による発熱体4b1、4b2への電磁作用を邪魔しないようにしている。本体2の外装ケース12は樹脂製の底部材12aの周壁上端に金属製の胴部12bの下端縁巻き部を無理嵌めして連結し、胴部12bの上端と内装ケース11の上部枠11cの上端とを合成樹脂製の肩部材12cにより連結してある。加熱コイル4a1、4a2は樹脂製のコイル台15に載置して支持し、コイル台15の下に放射状に延びたフェライト16を樹脂製の支持台17で支持して設け、加熱コイル4a1、4a2が発生させる磁界を強化し安定させるようにしている。
蓋体3は図1に示すように本体2の後部軸受部2dに軸21により開閉できるように枢支してばね22により開き方向に付勢し、ばね22と後部軸受部2dとの摺接による抵抗などにて蓋体3がゆっくりと開くようにしてある。蓋体3の前部は本体2の側に軸124に枢支して設けるなどしたロックレバー23によって閉じ位置にロックされ、ロックレバー23のロック解除操作によってロックが解除さればね22によって開かれるようにしている。蓋体3のこのような閉じ状態にて図1、図2に示すように蓋体3の下板3bと放熱板3cとの間に挟み込んだシールパッキン24が内蓋7の外周枠7aに圧接し、この圧接によって内蓋7は外周枠7aとの間に設けたシールパッキン25にて鍋1の水平となっている口縁に上方から圧接し鍋1を閉じ、炊飯や保温を行う状態となる。このような閉じ状態で、内蓋7には高位部と低位部とに図示しない孔があり、炊飯中の蒸気を逃がしたり、逃がした蒸気に随伴して内蓋7外に出たおねばを鍋1内に戻したりできるようにしている。また、蓋体3の中央に設けた穴26には前記蒸気口27をパイプ状に構成して下方から挿入して穴26内周のシールパッキン28によって分解洗浄などのために着脱できるように保持するようにしている。蒸気口27はボール状の逆止弁29aを持った蒸気通路29を有し、内蓋7の外に出た蒸気を逆止弁29aの弁圧を超えたときだけ蓋体3外に放出しながら、内部に気液分離した「おねば」を内蓋7上に戻し、鍋1内に戻されるようにする。
なお、非金属製の鍋1は主として陶土を焼成したものでよいがセラミック類も含み、既に知られる種々のものを採用することができる。底部加熱源4の発熱体4b1、4b2は加熱コイル4a1、4a2からの交番磁界によって渦電流を発生し発熱する導電層であり、鍋1の外面などに設けた10〜数十μm程度の銀ペーストの印刷などによる塗布層、銀箔の貼り合わせ層、あるいは銀の蒸着層、埋設層などでよい。しかし、その導電材料や層形成の方法は自由に選択できる。側部加熱源5のヒータ5aは、鍋1の側部に対向するアルミニウムや鋼板、ステンレスなどの放熱板3cの外面に押え板5cとの間に挟み込んで装備し、主として保温に用いるが、特に、ヒータ5aの下部は炊飯に用いても好適である。さらに、本実施の形態では炊飯とご飯の保温に関し、各種の炊飯モード、炊飯モードに続く保温モード、炊飯モードに続く保温無しモード、などの各種制御モードを有し、これらのために、4重のヒータ5aの最上部1つを60〜70W相当の通電容量、その下の中間部1つを20〜30、最下部2つを40〜50W相当の通電容量としてある。通電容量の違いは通電のデューティ比の違いによって簡単に得られるし、どのように得てもよい。このような通電容量の違いを利用して炊飯時の合数や保温モード時の結露、白化、乾燥による褐変、保温なしモード時の結露、や降温遅れによる黄ばみなどのご飯の品質低下など各種の条件に応じた細かな加熱制御ができる。以上で各種の炊飯モードや調理モード、保温モード、保温なしモードを操作パネル14上での選択操作やスタート操作、停止操作に従い実行することができる。
また、土鍋などの非金属製の鍋1では、その外面に設けた発熱体4b1、4b2の熱が、鍋1の側に効率よく伝わらない分だけ、内装ケース11側、加熱コイル4a1、4a2の側に放熱する割合が高くなり、炊飯を首尾よく遂行できなかったり、炊飯温度を確保するために炊飯時の加熱温度を高めると鍋1側の局部過熱や、この局部過熱部となる特に発熱体4b1などからの放熱による内装ケース11の下部枠11bの劣化や溶損、加熱コイル4a1などの異常発熱の原因になって炊飯器や使用の安全が損なわれたりすることがある。そこで、内装ケース11における下部枠11bの鍋1における特に径方向幅が大きく総発熱量が多くなる発熱体4b1と対向する部分に透磁性の耐熱プレート31を配し、発熱体4b1からの熱を反射させるようにして対応している。具体的には、本体2における内装ケース11の鍋1外面に設けられた発熱体4a1などとの対向部に設けた透磁性の耐熱プレート31は、その透磁性によって内外装ケース11、12の少なくとも底部間に設けた加熱コイル4a1などからそれに対向する鍋1外面の発熱体4b1などに交番磁界を及ぼして誘導発熱させる作用を損なわない。しかも、この透磁性の耐熱プレート31は、鍋1外面の発熱体4b1などが良好な炊飯に必要な高い温度に発熱させるのに対し鍋1が土鍋などの熱伝導性の低い非金属製で熱伝導しにくく、発熱体4b1などから内装ケース11側への外面への放熱の割合が高くなる関係であっても、この放熱を耐熱プレート31の表面で鍋1側に反射させて鍋1を二次加熱して炊飯の加熱に再度生かし加熱効率を高められる。この結果、非金属製の鍋1の厚く熱を篭らせやすい特性との組み合わせから均一で十分な加熱での良好な炊飯が実現しやすくなる。さらに、耐熱プレート31はその耐熱性によって劣化や損傷するようなことがなく、鍋1外面の発熱体4b1などからの熱が本体2の内装ケース11、特に下部枠11bや加熱コイル4a1に及ばないようにするし、まして本体2の外装ケース12下へ熱が及ぶようなことは回避できる。
耐熱プレート31は発熱体4b1などからの熱を鍋1の側に反射させるものであることに対応して、鍋1および発熱体4b1などと耐熱プレート31との間にはエアギャップ32を設けることが必須となる。特に、このエアギャップ32が閉鎖空間となって熱を篭らせないように少なくともまわりへ開放されているのが望ましく、本実施の形態ではこのエアギャップ32は鍋1の底部外周に形成した環状の高台1dを、下部枠11bの底部外周部の円周上3ヵ所程度に設けた図2に示すシリコンゴムなどよりなる弾性支持台33により支持した高さにて、周囲3ヵ所での接触だけで確保している。しかし、鍋1の開口部のフランジ1cを本体2の開口部で受けて吊持ちすることでエアギャップ32を確保することもできる。鍋1の高台1dでの弾性支持台33上への載置、支持は、鍋1の弾性支持や回り止めの効果も併せ発揮する。一方、このエアギャップ32は図1、図2に示すように内装ケース11と鍋1との間の全域に形成することが鍋1側から内装ケース11の側への熱影響を防止しながら、その熱を内装ケース11と鍋1との間に篭らせて、厚く熱伝導性の低い非金属製である鍋1と炊飯の加熱に協働して加熱効率、均一加熱を促進しやすくなり、特に、本体2の内装ケース11に設けた耐熱プレート31が鍋側に反射させる熱を生かしやすい。
さらに、耐熱プレート31は、センターセンサ34を鍋1に接触させる孔35を中央部に有し、対向する発熱体4b1の外径よりも大きくしている。これにより、中央部の孔35を通じ炊飯との比較的相関性の高い鍋1底部の中央部の温度をセンターセンサ34で検出することができる。このために、センターセンサ34は図1、図2に示すように、コイル台15の中央に設けてばねにより上動付勢し、下部枠11bおよび耐熱プレート31を貫通してその上に常時突出する習性を与え、支持台16上に載置される鍋1の底部に圧接し、鍋1の温度をモニタできるようにしている。
ところで、鍋1はその下半部1bを側部加熱源5との対向部1eよりも薄肉としている。このように、鍋1を本体2に着脱できるように収容して、底部加熱源4、側部加熱源5および蓋加熱源6からの加熱により炊飯やご飯の保温を行うことになるが、鍋1の下半部1bが側部加熱源5との対向部1eよりも薄肉で熱容量が小さいことにより、炊飯に重要な発熱体4b1、4b2からの熱により、前記直接の熱伝導による一次加熱と、耐熱プレート31から反射した熱による二次加熱とを得て、加熱効率がさらに向上し比較的低い通電容量に抑えながら十分な炊飯加熱を実現して良好な炊飯ができる。しかも、鍋1は側部加熱源5との対向部が下半部1bよりも厚肉で蓄熱容量が高いことにより、炊飯に続く保温時の降温が鈍く、昇降温時に温度むらが生じにくい特性と、側部加熱源5からの加熱、蓋加熱源6からの加熱による熱補助の基に、ご飯を均一に保温しやすくなる。
因みに、1つの実施例を示せば、通常の土鍋では10〜15mm程度の均一厚さとするのが主流であるところを、ムライト−コージェライトを主成分とするセラミック製で、ガラス系の釉薬にて封孔処理をした鍋1につき、底部加熱源4との対向部である下半部1bの厚みを3〜4mm程度、側部加熱源5との対向部1eの厚みを7〜8mm程度として十分な耐落下強度が得られたし、均一加熱による炊飯、均一保温が実現できた。このような寸法関係から鍋1の厚肉部と薄肉部との厚みの差はほぼ2倍程度とすることもできる。なお、鍋1のヒータ5aの放熱板である胴部枠11aとの対向部と、加熱コイル4a2と対向する発熱体4b2を有する部分との間は加熱源がないので鍋1の厚みは小さい程炊飯時の均一加熱には有利であって、3mm程度とするのが好適であり、場合によっては耐落下強度を満足するのを条件に鍋1の下半部1bに設定する厚みよりも薄くしてもよい。
また、底部加熱源4からの高出力加熱などに対応して、内装ケース11の樹脂部分は外装ケース12の樹脂部分と共に従来PETで形成されているが、耐熱温度が150℃程度と低く熱影響が懸念されるので、本実施の形態では上部枠11cや下部枠11bを耐熱温度が250℃程度と高いPPSとしており、前記耐熱プレート31のシリコン系接着剤との接着も問題なく達成されている。一方、外装ケース12の底部材12aや肩部材12cは従来通りPETなどの樹脂製としている。また、肩部材12cの左右2箇所には図2に示すように鍋1のフランジ1cとの間にフランジ1cへの手掛りを容易にするための凹部41を形成している。胴部12bの上部には肩部材12cにまで達して軸受したハンドル118を設けてある。
本実施の形態では、特に、炊き上げ制御において、非金属製の鍋1の蓄熱性を利用した焦げの発生を見ない炊飯、特に炊き上げを、高い省エネ性を発揮して実現すべく、蒸気が放出される蒸気口27での温度を検出する図1に示すような蒸気センサ101を設けて、図5の実施例に示すように、炊き上げ工程は、蒸気口27での検出温度を、吸水時と昇温時との蒸気口温度Ta〜Tbのほぼ中間帯域MTzに保つように加熱制御するようにしている。このために、蒸気センサ101は、図1に示すように蓋体3の放熱板3cの穴26近くの上面に設置し、穴26に蒸気口27が下方から挿入された際に、蒸気口27の肩部にシールパッキン102を設けて開口したセンサ受け入れ口103に、蒸気センサ101の放熱板3cの下面側に突出した温度検出子101aが圧入されて蒸気口27の蒸気通路29に進入し、蒸気口27を通じ外部に放出される蒸気の温度を検出できるようにしている。
このように、炊き上げ工程において、蒸気センサ101により蒸気が放出される蒸気口27での温度が検出され、この検出される蒸気口温度を、吸水時と昇温時との蒸気口温度Ta〜Tbのほぼ中間帯域MTzを保つように加熱制御することで、電力量の、蒸気口温度を前記中間帯域MTzに保つ過程での昇温工程からの適度な低減によって焦げの発生を防止しながら、電力量の有効利用を図って、従来、焦げ防止のために電力量を継続して低下していた場合のような、蒸気の発生が鈍ったり、蒸気口温度が引圧による外気の吸い込みの影響もあって吸水工程時に近い温度にまで低下するのを回避し、蒸気の、活発な発生と、引圧による外気の引き込みのない効率的な放出と、を確保し、炊き上げ工程を早期に終えて蒸らし工程に移行することができる。
この結果、非金属製の鍋1を採用した炊飯での炊き上げ工程にて、蒸気が放出される蒸気口27での検出温度を、吸水時と昇温時との蒸気口温度Ta〜Tbのほぼ中間帯域MTzを保つ加熱制御上、電力量の昇温工程からの適度な低減によって焦げの発生を防止しながら、従来の加熱制御では望めなかった、蒸気の、活発な発生と、引圧による外気の引き込みのない効率的な放出と、を確保する電力量の有効利用を図って、炊き上げ工程を早期に終えて蒸らし工程に移行し、省エネ炊飯ができる。
図4、図5に、図3(a)に示す現行炊飯例と、図3(b)に示すシーケンスでの本実施の形態の炊飯例とを比較して示しているが、図4における本実施の形態の炊飯例(b)では、炊飯開始後46分00秒で蒸気口温度が降下していて、この時点は炊き上げ工程後の蒸気の発生が殆ど無くなる蒸らし工程終了時点であることを意味するのに対し、現行の炊飯例(a)では、同じ時点ではまだ蒸らし工程終了時点ににない。ここに、本実施の形態の炊飯例では、現行炊飯例と同時に炊き上げ工程を開始しているが、炊き上げ工程、蒸らし工程が現行炊飯例よりも早期に終了していることが分かる。同時に、図4(a)、(b)での現行炊飯例と、本実施の形態の炊飯例との炊き上げ工程にて消費した総電力量を比較すれば、図4(a)の現行炊飯例の場合よりも、(b)での本実施の形態の炊飯例の場合の方が減少している。つまり、本実施の炊飯例での炊き上げ工程は現行炊飯例での炊き上げ工程に対し炊飯時間の短縮に併せ、省エネを達成している。
また、以上のような炊飯手法は、炊き上げ工程は、主として鍋1底部外面でのセンターセンサ34による検出温度を基にした加熱制御から、蒸気が放出される蒸気口27での検出温度を基にした加熱制御に切り替え、蒸気口27での検出温度を、吸水時と昇温時との蒸気口温度Ta〜Tbのほぼ中間帯域MTzに保つようにする炊飯操作により行うものとすることができる。これにより、吸水・合数判定、昇温、蒸らしの各工程を、主として鍋1底部の外面での検出温度を基にした従来通りの加熱制御を踏襲して問題なく遂行しながら、昇温工程と蒸らし工程との間の炊き上げ工程については、蒸気口温度を基にした加熱制御に切り替えることで、先の例の場合と同様に遂行することができる。
この加熱制御例、先の制御例を合わせ示せば、以下の通りである。
図6に示す本実施の形態の制御例でいうと、吸水工程は、現行例の場合同様に、全加熱源の出力0%で、つまり非加熱状態で初期水温を検知する吸水1処理、水温を約30℃強にほぼ維持するため現行例同様に底部加熱源4の出力を60%とする吸水2処理。昇温工程は、現行例同様に底部加熱源4の出力を100%に上げ、蓋ヒータ6aの出力を0とし、側面ヒータ5aは上段、中段、下段の出力をそれぞれ現行例の8/16に対し4/16と半減して、断熱材145による側面センサ121の過剰昇温を相殺し、工程所要時間を420秒と現行例に等しくして、合数判定を行う昇温1処理(センターセンサの検知温度では相関性が鈍いので、蓋センサ123の検知温度を用いるのが好適である。)、現行例同様に底部加熱源4の出力を100%に維持し、蓋ヒータ6aの出力を0、側面ヒータ5aの上段、中段、下段の出力をそれぞれ6/16とし、工程所要時間を15秒とする昇温2処理、底部加熱源4の出力を現行例の70%を100%に、蓋ヒータ6aの出力を現行例の8/16を10/16にそれぞれ増大して蒸気量を極端に増やしながら、側面ヒータ5aの上段、中段、下段の出力を現行例の6/16に対し4/16と減少するのに併せ、工程所要時間は現行例の30秒から15秒に半減させて焦げの発生と反省エネを回避する昇温3処理としている。炊き上げ工程は、蓋ヒータ6aの出力を現行例の8/16に対し10/16と上げ、側面ヒータ5aの上段、中段、下段の出力は現行例の6/16に対し4/16と減少させ、底部加熱源4の出力を現行例同様に70%とする炊き上げ1、蓋ヒータ6aの出力を現行例の0に対し10/16と上げ、側面ヒータ5aの上段、中段、下段の出力は現行例の6/16に対し4/16と減少させ、底部加熱源4の出力を現行例の50%に対し60%に上げる炊き上げ2処理として、現行例の60%、50%の場合に比し蒸気量の増大を図るのに併せ、炊き上げ1処理の工程所要時間の現行例240秒から180秒への短縮と、炊き上げ2処理の工程所要時間の現行例360秒から180秒への短縮とによって省エネを実現し炊き上げるようにしてある。さらに、底部加熱源4の出力を現行例が0%であるのを50%、蓋ヒータ6aの出力を現行例の0に対し10/16に上げて蒸発量を増大しながら、側面ヒータ5の上段、中段、下段の出力それぞれを現行例が6/16であるのを、4/16と低減するのに併せ、工程所要時間を現行例の180秒に対し60秒と極短時間に設定することで、焦げや反省エネを回避して早期炊き上げを図る炊き上げ3処理、底部加熱源4の出力を現行例での60%から50%に低減するのに併せ、蓋ヒータ6aの出力を現行例の0に対し10/16に上げて蒸発量を増大しながら、側面ヒータ5の上段、中段、下段の出力それぞれが現行例6/16であるのを、4/16と低減し、かつ工程所要時間は現行例同様に30秒とする後炊き上げ3処理としている。なお、蒸らし工程は、蓋ヒータ6a、側面ヒータ5aのみで行い、現行例では蓋ヒータ6aの出力、側面ヒータ5aの上段、中段、下段の出力のそれぞれが6/16、工程所要時間0であったのを、それぞれの出力を2/16に低減し、工程所要時間を180秒とした蒸らし1処理、現行例では蓋ヒータ6aの出力、側面ヒータ5aの上段、中段、下段の出力のそれぞれが6/16、工程所要時間420秒であったのを、蓋ヒータ6aの出力を10/16、側面ヒータ5aの上段、中段、下段の出力のそれぞれが4/16、工程所要時間を現行例同様に420秒とした蒸らし2処理としてある。その他は現行例を含め図6に示す通りである。
図6に示す現行例に対する本実施の形態の炊飯例での消費電力を纏めると図7の通りであり、現行例の243.4kwに対し本実施の形態の炊飯例では238.2kwと低減し省エネを達成しながら、焦げの発生なく早期炊飯を実現している。
なお、炊き上げ工程中は、加熱を中断しないで、前記蒸気口温度を所定の中間帯域MTzに保つことにより、炊き上げ工程中加熱を中断しないで、蒸気口27での検出温度を所定の中間帯域MTzに保ち、焦げの発生を見ないで、しかも、炊き上げ工程中に加熱の停止により蒸気発生、放出の効率をいささかも低下させないようにすることができる。
また、判定合数、初期水温、雰囲気温度、の少なくとも1つに応じて、炊き上げ工程での電力量を変化させることができる。雰囲気温度は操作・制御基板112上に搭載するなどした室温センサ122などによって検知できる。判定合数、初期水温、雰囲気温度はそれぞれ、電力量に対する蒸発率を変動させる要素であるので、これらの1つに対応してでも炊き上げ工程での電力量を変化させると、該当変動要素による炊き上げ終了時点の変動を回避でき、対応する変動要素の数が増大するほど変動要素による炊き上げ終了時点の変動を回避できる。