JP5206022B2 - ポリシロキサン被覆ポリアミド多孔質微粒子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、特定の粒子径と狭い粒子径分布を持ち、特定のBET比表面積、平均細孔径、多孔質度(RI)を持つポリアミド多孔質微粒子の内部細孔および外周表面に、ポリシロキサンをコーティングしたポリアミド多孔質微粒子に関するものである。
ポリアミド多孔質微粒子は、特許文献1に挙げるように真球状のポリアミド微粒子と異なり、中心から放射状にナイロンのフィブリルか成長した球晶状構造をとっており、この粒子の表面では、ナイロンフィブリルからなる無数のヒダ状構造からなることが知られている。この独特な構造は、光を効果的に散乱させることからソフトフォーカス効果があり、さらに水分や油分を多く吸収することから、化粧料の原料として使われている。また、光拡散性や偏光解消特性などの独特の光学特性から、光学材料として拡散フィルムや拡散板、導光板などのディスプレー分野やインクや塗料向け材料などで期待されている。
このポリアミド多孔質微粒子は、上記のとおり表面に無数のヒダ状構造があるために、粉体の乾燥時において、真球状ポリアミド粒子と比較して、周囲の粒子との接触界面が多く、数個〜数100個が二次凝集した凝集体を形成しやすい。このような凝集体を含む乾燥粉体をパウダーファンデーションなどの化粧品原料として処方した場合、触感が著しく低下し、製品の不均一性を増大させ、機能が低下するなどの問題が発生していた。
粉体の凝集を防ぐ方法のひとつに、粒子の表面により表面エネルギーの低い物質をコーティングするという方法がある。真球状ポリアミド粒子については、ポリアミドよりも表面エネルギーの低いポリシロキサンやシロキシケイ酸でコーティングすることで、ポリアミド粒子に撥水性、流動性、触感向上特性を与え、ブロッキングや凝集が防げることが示されている(特許文献2〜6参照)。
特開2002−080629号公報 特開平3−243559号公報, 特開平3−243658号公報 特開昭63−113082号公報 特開平5−239446号公報 特開2000−119399号公報
しかしながら、ポリアミド多孔質微粒子については、上記文献のようなポリシロキサン処理を実施しても、処理温度や処理量が最適ではなく、ポリアミド自体の劣化による変色や、シリコーン量過不足による機能低下や再凝集が起こってしまうことが明らかとなった。このため著者らは、真球状ポリアミド粒子と比較して凝集しやすいポリアミド多孔質微粒子について、ポリシロキサンをコーティングする条件について鋭意検討し、ポリアミド多孔質微粒子が劣化せずに、さらに凝集をも起こさない処理方法を見出した。さらに、これらポリシロキサンを被覆したポリアミド多孔質微粒子は、配合量によっては被覆する前よりも光の散乱性が増し、化粧品などに効果的なソフトフォーカス性を向上させることが出来ることを見出した。本発明は、ポリシロキサン処理による二次凝集のない光散乱性能の向上したポリシロキサン被覆ポリアミド多孔質微粒子を工業的に容易な手法で提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明をなすに至った。すなわち本発明は以下のとおりである。
(1)数平均粒子径が1〜30μmであり、BET比表面積が0.1〜80m/gであるポリアミド多孔質微粒子の細孔内の少なくとも一部及び/又はポリアミド多孔質微粒子の表面の少なくとも一部を、ポリアミド多孔質微粒子の重量に対して2〜40重量%のポリシロキサンでコーティングした後、100℃未満の温度で熱処理したポリシロキサン被覆ポリアミド多孔質微粒子の製造方法である。
(1)に記載の製造方法で製造されたポリシロキサン被覆ポリアミド多孔質微粒子である。
本発明により、ポリアミド多孔質微粒子の2次凝集を解くことができる。また、ポリシロキサンの配合量によっては光散乱性を高めることが出来る。このため、凝集のない単独粒子状の粉体でかつ機能がさらに向上した粉体を化粧品原料、電子分野の光学フィルム用途、塗料用などの用途に対して提供することができ、品質や機能の安定性などに大いに貢献することができる。
本発明は、数平均粒子径1〜30μmである結晶性高分子からなる粒子、好ましくは、結晶性高分子からなる粒子でBET比表面積0.1〜80m/gであるポリアミド多孔質微粒子の内部細孔および外周表面に、ポリシロキサンをコーティングしたポリシロキサン被覆ポリアミド多孔質微粒子に関するものである。
多孔質粒子を構成するポリアミドとしては、公知の種々のものを挙げることができる。例えば、環状アミドの開環重合、あるいはジカルボン酸とジアミンの重縮合で得られる。モノマーとしては、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等の環状アミドを開環重合して得られる結晶性ポリアミド、ε−アミノカプロン酸、ω−アミノドデカン酸、ω−アミノウンデカン酸などのアミノ酸の重縮合、または蓚酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などのジカルボン酸および誘導体とエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキシルジアミン、m−キシリレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、デカメチレンジアミンなどのジアミンを重縮合して得られるものなどである。
前記ポリアミドは、単独重合体及びこれらの共重合体からなるポリアミドまたはその誘導体である。具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド610、ポリアミド66/6T(Tはテレフタル酸成分を表す)などである。また上記ポリアミドの混合物であってもよい。特に好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66が好ましい。
ポリアミドの分子量は、2,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜40,000である。ポリアミドの分子量が小さすぎると、多孔質微粒子の形成条件が狭くなり、製造が難しくなる。また、ポリアミドの分子量が大きすぎると、製造時に一次凝集体が出来やすくなる傾向がある。
本発明のポリアミド多孔質微粒子は、球状、略球状、勾玉(C型)形状、もしくはダンベル形状のいずれかの単体もしくは混合物であるが、その70重量%以上、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上が一種類の粒子形状で構成された均一な粒子であることが望ましい。70重量%より少ないと、粉体材料としての流動性が劣るなど好ましくないことがある。
また、本発明のポリアミド多孔質微粒子は、単一粒子そのものが球晶構造を有している。
本発明におけるポリアミド多孔質微粒子は、数平均粒子径が1.0〜30μm、好ましくは1.0〜25μmが好ましい。数平均粒子径が1μmより小さいと、二次凝集力が強く、取り扱い操作が悪くなる。30μmより大きいと化粧料として取り扱う際、皮膚への付着性が落ちるため、使用できる用途が限定される傾向がある。
本発明におけるポリアミド多孔質微粒子のBET比表面積は、0.1m/g〜80m/g好ましくは、3m/g〜75m/g、さらに好ましくは、5m/g〜70m/gである。比表面積が0.1m/gより低いと、ポリシロキサンを十分にコーティングすることが出来ず凝集しやすくなる。比表面積が大きすぎると、コーティングするポリシロキサンの必要量が増し、コーティングする時間もかかるため好ましくない。
本発明におけるポリアミド多孔質微粒子の平均細孔径は、0.01μm〜0.5μm好ましくは、0.01〜0.3μmである。平均細孔径が0.01μmより小さい場合、コーティングするポリシロキサンがコーティングされにくくなり、凝集しやすくなる。0.5μmより大きい場合、ポリシロキサンが細孔内全体に充填されやすくなり、細孔が埋まってしまうことにより期待された吸油特性や光学特性が発現しにくくなる場合がある。
本発明のポリアミド多孔質微粒子の多孔度指数(RI)は、5〜100が好ましい。ここで多孔度指数(RI)とは、同じ直径の平滑な球状粒子の比表面積に対し、多孔質の球状粒子の比表面積の比で表示したものと定義する。次式で表せる。多孔度指数が5より小さければ、ポリシロキサンを十分にコーティングすることが出来ず凝集しやすくなる。
多孔度が100より大きいと、粉体として取り扱いずらくなる。
ここで、RI;多孔度指数、S;多孔粒子の比表面積[m/kg]、
;同一粒子径の円滑な球状粒子の比表面積[m/kg]である。
は、次式に従って求めることができる。
すなわち、観測された数平均球状粒子径dobs[m]、ポリアミドの密度ρ[kg/m3]とすると、円滑な球の比表面積Sは次式で表すことができる。
ポリアミドがポリアミド6の場合、結晶相の密度を1230kg/m、非晶相の密度を1100kg/mとした。
また本発明のポリアミド多孔質微粒子は結晶性であって、融点が110〜320℃であることが好ましく、より好ましくは、130〜290℃である。融点が110℃より低くなると、ポリアミド多孔質微粒子の熱安定性が低くなる傾向がある。
さらに、本発明のポリアミド多孔質微粒子は、DSCで測定された結晶化度が40%以上であることが好ましい。ポリアミドの結晶化度は、X線解析より求める方法、DSC測定法により求める方法、密度から求める方法があるが、DSC測定法により求める方法が好適である。普通溶融物から結晶化させたポリアミドの結晶化度は高いものでせいぜい30%程度である。本発明のポリアミドは結晶化度が40%より高いことが好ましい。結晶化度が低いと、直線偏光を非偏光に変換する能力が低下する傾向がある。ポリアミド多孔質微粒子の結晶化度が40%未満であると、熱安定性が低くなる傾向がある。
本発明のポリアミド多孔質微粒子は、粒子径分布において、数平均粒子径(または数基準平均粒子径)に対する体積平均粒子径(または体積基準平均粒子径)の比が1〜2.5であることが好ましい。さらに好ましくは、1〜1.5である。数平均粒子径に対する体積平均粒子径の比(粒度分布指数PDI)が2.5より大きいと、粉体としての取り扱いが悪くなる。
ポリアミド多孔質微粒子は、ポリアミドを良溶媒に溶解した後、溶液のポリアミドに対する溶解度を下げ、ポリアミドを析出させることによって製造することができる。
好ましい方法としては、低温ではポリアミドの非溶媒であるが、高温にてポリアミドを溶解する溶媒を用い、溶媒にポリアミド分散させた後、温度を上昇し溶媒のポリアミドに対する溶解度を上昇させることで溶解させたのち、溶液の温度を降下させることで溶媒のポリアミドに対する溶解度を減ずることで、ポリアミドを析出さえる方法によって作成することができる。
低温ではポリアミドの非溶媒であるが、高温にてポリアミドを溶解する溶媒も例として、多価アルコール及びそれらの混合物が挙げられる。多価アルコールとしてはしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
上記溶媒中に溶解促進のため、溶解温度を降下させるため無機塩を加えても良い、無機塩としては塩化カルシウム、塩化リチウム等が挙げられる。金属イオンがポリアミドの水素結合部に作用して溶解を促進する無機塩であれば上記の限りではない。
より好ましい方法として、室温付近においてポリアミドを溶解させる良溶媒中にポリアミドを溶解させたポリアミド溶液(A)に、室温付近でポリアミドを溶解させることができない非溶媒(B)を混合することで、溶媒のポリアミドに対する溶解度を減ずる方法を用いて製造することができる。この方法で作られた粒子は、単一粒子そのものが球晶構造を有した多孔質粒子となる。
「単一粒子そのものが球晶構造」であるとは、一つの単独粒子の中心付近の単数または複数のコアから高分子フィブリルが三次元等方あるいは放射状に成長して形成した結晶性高分子特有の球晶構造であることを意味する。
本発明におけるポリアミドの室温付近における良溶媒としては、フェノール化合物または蟻酸が好ましい。フェノール化合物としては、具体的には、フェノール、0−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、クレゾール酸、クロロフェノール等が好ましい。これらは、室温、または温度30〜90℃の加熱により、結晶性ポリアミドを溶解する、または、溶解を促進するから好ましい。特に、好ましくは、フェノールである。フェノールは、他の溶媒よりも毒性が少なく、作業上安全である。また、得られた多孔質微粒子から留去しやすいから都合がよい。
ポリアミド溶液(A)には、凝固点降下剤を添加しても良い。凝固点降下剤としては、ポリアミド溶液中のポリアミドを析出させない範囲であれば、ポリアミドの非溶媒を用いることができる。凝固点降下剤の例としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチルー2−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、およびジグリセリンを挙げることができる。
上記ポリアミド溶媒中に溶解促進のため、及びポリアミドの溶解度向上のため、無機塩を加えても良い、無機塩としては塩化カルシウム、塩化リチウム等が挙げられる。金属イオンがポリアミドの水素結合部に作用して溶解を促進する無機塩であれば上記の限りではない。
ポリアミド溶液(A)中のポリアミド濃度は、好ましくは0.1〜30重量%の範囲、更に好ましくは0.2〜25重量%の範囲であることが好ましい。ポリアミド溶液中でポリアミドの割合が30重量%を越えると、溶解しにくくなったり、均一な溶液にならないことがある。また、溶解しても溶液の粘度が高くなり、扱いにくくなる場合がある。ポリアミドの割合が0.1重量%より低くなると、ポリマー濃度が低く、製品の生産性が低くなる傾向がある。
本発明のポリアミドの室温付近における非溶媒(B)は、ポリアミド溶液(A)の良溶媒と少なくとも部分的に相容するものが好ましい。非溶媒(B)の例としては、水およびポリアミド不溶性有機溶媒から成る群から選ばれる化合物を挙げることができる。非溶媒(B)は、二種以上の溶媒の混合物でも良い。非溶媒(B)は、液温25℃においてポリアミド溶液中のポリアミドを0.01重量%以上溶解することの無いものであることが好ましい。
室温付近におけるポリアミド不溶性有機溶剤の例としては、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのアルキレングリコールを挙げることができる。
室温付近におけるポリアミド不溶性有機溶媒の他の例としては、一価および三価アルコールを挙げることができる。一価アルコールは、炭素数1〜6の一価アルコールであることが望ましい。直鎖でもまた分岐を有していても良い。一価アルコールの例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチルー2−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、を挙げることができる。3価アルコールとしてはグリセリンを挙げることができる。また、ケトンとして、アセトンを挙げることができる。
ポリアミドがポリアミド6の場合は、非溶媒(B)は水とポリアミド不溶性溶媒(好ましくは一価アルコール)とを含む混合物であることが好ましい。ポリアミドがポリアミド12である場合は、非溶媒(B)にアルキレングリコールとアルキレングリコール以外のポリアミド不溶性有機溶媒(好ましくは三価アルコール)とを含む混合物である。
多孔質ポリアミド微粒子を作成するためには、溶液(A)と非溶媒(B)とを混合して一時的に均一な混合溶液を形成し、その後静置する方法が利用でき、この操作により多孔質ポリアミド粒子が析出する。多孔質ポリアミド粒子を析出させる際の混合溶液の液温は、0℃〜80℃の範囲が好ましく、20℃〜40℃の範囲が特に好ましい。
ポリアミド溶液(A)とポリアミドの非溶媒(B)との混合溶液には、析出したポリアミド粒子の凝集を防止する目的で増粘剤を加えて混合溶液の粘度を高めても良い。増粘剤の例としては、数平均分子量1000以上(特に1100から5000の範囲)のポリアルキレングリコールを挙げる事ができる。ポリアルキレングリコールの例としては、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを挙げる事ができる。増粘剤の添加方法としては、ポリアミド溶液および非溶媒Bとを混合するのと同時に増粘剤を添加する方法、もしくは調整直後の混合溶液に増粘剤を添加する方法のいずれかの方法であってもよい。ポリアルキレングリコールは二種以上を併用できる。
ポリアミド溶液と非溶媒との添加順序は、溶液の均一性が保たれれば、特に制限はない。
本発明においては、作成したポリアミド多孔質微粒子は、デカンテーション、ろ過あるいは遠心分離などの方法で固液分離させることができる。
本発明においては、作成したポリアミド多孔質微粒子は、ポリアミド溶液(A)の良溶媒と40℃以上の温度で相溶するポリアミド非溶媒を40℃以上の温度にて接触させることによって、(A)の良溶媒をポリアミド多孔質微粒子から抽出除去することができる。
ポリアミド溶液(A)の良溶媒を抽出除去するのに用いるポリアミド非溶媒の例として、脂肪族アルコール、脂肪族もしくは芳香族ケトン、脂肪族もしくは芳香族の炭化水素、および水からなる群より選ばれる化合物を挙げる事ができる。この非溶媒は、2種類以上の混合物でも良く、液温が40℃でポリアミドを0.01重量%以上溶解することがないものであることが好ましい。
脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、および2−プロパノールなどの炭素原子数が1〜3の1価の脂肪族アルコールを挙げる事ができる。
脂肪族ケトンの例としては、アセトン、およびメチルエチルケトンを挙げる事ができる。芳香族ケトンの例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、およびブチロフェノンを挙げる事ができる。
芳香族炭化水素の例としては、トルエンおよびキシレンを挙げる事ができる。脂肪族炭化水素の例としては、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、およびn−デカンを挙げる事ができる。
本発明においては、作成したポリアミド多孔質微粒子は、最後に乾燥工程を経て、乾燥粉体にすることが出来る。乾燥方法としては、真空乾燥、恒温乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動槽乾燥などの汎用の粉体乾燥方法を用いることが出来る。
例えば、噴霧乾燥等において、ポリアミド多孔質微粒子を100℃以上で乾燥をおこなっても、ポリアミド多孔質微粒子が受ける熱履歴の時間は、非常に短い。また、ポリアミド多孔質微粒子が吸収している溶媒等が気化熱として熱を奪うこととなる。このため、ポリアミド多孔質微粒子をシリコーンコーティングした後の熱処理温度が100℃を超えなければよく、ポリアミド多孔質微粒子自体の乾燥工程等において、100℃を超える熱処理を行っても良い。
本発明において被覆のために用いられるポリシロキサンは、特に限定されるものではなく、シリコーンオイルとして市販されているものを用いることが出来る。
ポリシロキサンは、下記一般式で表される。

式中、nは繰り返し数であり、正の整数である。また、nが大きいほど分子量が高くなり粘度が大きくなる。
上記ポリシロキサンのR1,R2としては、水素、アルキル基、アミノ基、エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、フェノール基、シラノール基、メトキシ基、ポリエーテル基、フロロアルキル基、フェニル基などを選択することができ、R1,R2によって活性なポリシロキサンや不活性なポリシロキサンとなる。例えば、R1、R2がともにメチル基であれば、不活性なジメチルシリコーンオイルとなり、R1がメチル基、R2が水素であれば、活性なメチルハイドロジェンシリコーンオイルとなる。
ポリシロキサンの粘度は1mm/s〜200,000mm/sが好ましい。1mm/s以下のものは、沸点が低くなるためにコーティング時に揮発する成分がふえるため、ポリシロキサンによるコーティングの効果が低くなる場合がある。また、200,000mm/s以上では、分子量が大きく粘度が高すぎるためポリアミド多孔質微粒子の細孔内に入りにくくなる傾向がある。
被覆するポリシロキサンの量は、ポリアミド多孔質微粒子に対して、2〜40重量%であり、多孔質構造の保持と凝集抑制のバランスの点から、ポリシロキサンの量は5〜25重量%であることが好ましい。被覆する量が2重量%未満では、ポリシロキサンの量が少なく、ポリアミド多孔質微粒子の凝集を抑えることが困難である。被覆する量が40重量%をこえると、粒子同士がポリシロキサンを介して複数個凝集した状態になるので好ましくない。
ポリシロキサンをポリアミド多孔質微粒子の表面および細孔内に被覆する方法として、湿式法と乾式法がある。
湿式法は、ポリアミド多孔質微粒子には貧溶媒でかつポリシロキサンと相溶性のある溶剤中に、ポリアミド多孔質微粒子とポリシロキサンを適量混合攪拌した後、減圧蒸留法または常圧蒸留法で溶剤を除去するものである。
湿式法において使われる溶剤としては、脂肪族アルコール、脂肪族もしくは芳香族ケトン、脂肪族もしくは芳香族の炭化水素、および水からなる群より選ばれる化合物を挙げる事ができる。
脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、および2−プロパノールなどの炭素原子数が1〜3の1価の脂肪族アルコールが好ましい。
脂肪族ケトンの例としては、アセトン、およびメチルエチルケトンを挙げる事ができる。芳香族ケトンの例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、およびブチロフェノンを挙げる事ができる。
芳香族炭化水素の例としては、トルエンおよびキシレンを挙げる事ができる。脂肪族炭化水素の例としては、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、およびn−デカンを挙げる事ができる。
溶液の攪拌方法は、例えば、スリーワンモーターと攪拌羽根を用いる方法、攪拌子とマグネティックスターラーを用いる方法、超音波ホモジナイザーを用いる方法等およびこれらを組み合わせた方法がある。
乾式法は、ポリアミド多孔質微粒子とポリシロキサンを機械的なエネルギーを用いて混合攪拌を行なうことからなる。
機械的な混合攪拌法では、その強力な機械的エネルギーによってポリアミド多孔質微粒子の表面細孔がつぶれて消滅したり、破砕されたり、また衝突に伴う熱エネルギーによりポリアミド微粒子自体が溶融してしまうことがない範囲であればどのような方法を用いても良い.例えば微粒子に回転やあるいは揺動を与える混合攪拌方法として、愛知電気株式会社製のロッキングミキサーや、小型シェーカーであるイカジャパン社のIKA−VIBRAX VXRベーシック、三井鉱山株式会社のヘンシェルミキサーなどが挙げられる。
湿式法、乾式法でポリシロキサンを被覆したポリアミド多孔質微粒子は、加熱処理によってとポリシロキサンを適量混合攪拌した後、室温(25℃)から〜100℃未満の温度範囲で、減圧下で一定時間加熱処理を行う。100℃以上の温度で加熱処理を行うと、ポリアミド粒子が黄色く変色し、劣化する恐れがある。
本発明のポリシロキサン被覆ポリアミド多孔質微粒子は触媒担持体、化粧品、電子分野の光学部品、塗料用、医療用、食品工業分野用の機能性粒子として供給できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また結晶化度、粒子径、平均細孔径、空孔率、比表面積などの測定は次のように行った。また、各実施例で製造したポリアミド多孔質微粒子は、単一粒子そのものが球晶構造を有していた。
(結晶化度)
ポリアミド微粒子の結晶化度は、DSC(示差走査熱量計)で測定した。流速40ml/min窒素気流中で、昇温速度5℃/min、温度範囲120〜230℃の吸熱ピークの面積から結晶融解熱を算出する。ポリアミドの融解熱は、 R.Viewegら、kunststoffeIV polyamide、218頁、Carl Hanger Verlag、1966年の記載により、ポリアミド6の融解熱は45cal/gとして算出した。結晶化度は、算出した融解熱量とポリアミドの結晶融解熱量との比(数式1)から求める.
χ ;結晶化度(%)
ΔHobs;サンプルの融解熱 (cal/g)
ΔH;ポリアミドの融解熱 (cal/g)
(平均粒子径)
ポリアミド多孔質微粒子の平均粒子径、粒子径分布は、電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡 SEM)を用いて、微粒子100個の平均値として測定した。数平均粒子径、体積平均粒子径および粒子径分布指数(PDI)は次式で表される。
数平均粒子径は下記式1で表され、体積平均粒子径は下記式2で表され、粒子径分布指数は下記式3で表される。各式中、Xiは、個々の粒子径、nは測定数を表す。
(比表面積)
ポリアミド多孔質微粒子の比表面積は、窒素吸着によるBET法で3点測定をおこなった。
(平均細孔径・空孔率)
ポリアミド多孔質微粒子の平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した。測定範囲は、0.0036から14μmの範囲で平均細孔径を求めた。ポリアミド多孔質微粒子の空孔率は、1個の粒子中のポリアミドの体積と空間体積の割合を表す。ここで、ポリアミドの密度をρとして、空孔率(porousity)を次式で表すことができる。ここで、Vpは粒子内空孔体積、Vsは粒子内ポリマー体積とする。
[数7]
P=Vp/(Vp+Vs)
即ち、粒子内累積細孔容積(P1)とすると
[数8]
P=P/(P+(1/ρ))×100
で表せられる。
細孔径に対する累積細孔容積の図から、粒子内累積細孔容積を算出し、[数4]に従って、粒子内空孔率を算出する。このときポリアミド微粒子の密度ρは、DSCで求めた結晶化度χと結晶密度ρc、非晶密度ρaから下記[数6]を用いて求めた。
[数式6]
ρ=χ・ρc+(1−χ)・ρa
ここでポリアミド6の結晶密度は1.23cm/g,非晶密度は1.09cm/g、ポリアミド12の結晶密度は1.1cm/g、非晶密度は0.99cm/gとした。
ポリアミド多孔質微粒子の多孔質度(RI)は、同一粒子径で真球状微粒子を仮定したときの比表面積値Sp0と多孔質微粒子の場合のBET比表面積Spの比で表すことができる.すなわち、下記[数7]及び[数8]で求められる。[数8]中、dは粒子の直径、ρは密度である。
[数9]
RI=Sp/Sp
[数10]
Sp=6/d/ρ
ポリシロキサン被覆ポリアミド多孔質微粒子の凝集の有無は、乾燥粉体を直接SEM観察することにより確認した。
ポリアミド多孔質微粒子および複合化した多孔質微粒子の反射光の光散乱特性は、カラーシステム社製、変角分光側色システムカラーロボIIIを用いた。測定試料は、日東電工社製の透明両面テープCS9621(10cm×10cm)片のPET剥離ライナー片面のみをはがし、コーセー社製のパウダーファンデーション用スポンジ(コスメデコルテAQメイクアップスポンジM)を用いて、粉体0.2gを面内に均一に塗布後、ホコリ除去用エアスプレー(エンジニア社製エアロダスター)を用いて、接着面に付着していない粉体を除去して作成した。入射光45°を固定し、受光角(反射角)を0〜80°まで5°刻みにて測定を行い、代表値として0°および45°の視感反射率の値(Y値)を比較することで光散乱性を評価した。
[実施例1]
(1)ポリアミド6(宇部興産社製、1011、分子量11,000)100gを、フェノール溶液900gに溶解し、濃度10重量%フェノール溶液を得た。この溶液を攪拌しながら,2−プロパノール5kgと水3kgからなる混合液8kgを15秒かけて投入した。攪拌を続け,溶液が均一になった時点で攪拌を停止し,静置した。しばらくして、ポリアミド6粒子が析出した。さらに30分静置後、析出物をろ紙を用いてろ別した後、ろ紙上で25℃の2−プロパノール1000mlで5回ほど洗浄を行なった。次に、真空乾燥機で温度60℃で、8時間乾燥した。乾燥したポリアミド6微粒子を保温付きソックスレー抽出器に充填し、抽出器内に2−プロパノールを10時間還流して、多孔質ポリアミド6粉末と接触させた.次に乾燥微粒子をイオン交換水10重量%スラリーにして、180℃にて噴霧乾燥を行った。
得られた白色粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、数平均粒子径11.3μm、体積平均粒子径15.4μmの比較的均一な球形粒子であった。PDIは1.36であった。BET比表面積は42.5m/g、平均細孔径は、0.07μm、RIは93.2であった。結晶化度は50%であった。また、SEM写真から乾燥粉体は、一部凝集している部分が確認された(図1)。また表面の多孔質(凹凸)構造が確認できた。この乾燥粉体の0°および45°での視感反射率は、それぞれ27.9および66.6であった。
(2)実施例1(1)の乾燥ポリアミド6多孔質微粒子5gを容器にいれアセトン9gおよびヘキサン21gを加えて、超音波攪拌機(日本精機製作所製:ヨウカイくん)を用いて超音波与えながらマグネティックスターラーで粒子を分散させ、スラリーを作成した.次に、ポリシロキサン(信越シリコーン社製:KF−9901:粘度20cs)を0.5g加え、十分混合攪拌した。その後、ロータリーエバポレータを用いて、80℃にて減圧蒸留を行い、溶剤を除去した。最後に、真空乾燥機を用いて、1toor、80℃で3hほど真空乾燥を行って、乾燥粉体を得た。得られた粉体は、白色で触感の良いものであった。この乾燥粉体についてSEM観察を行ったところ、ほぼ凝集がない粒子が単分散された粒子が確認された(図2)。また表面の多孔質(凹凸)構造も確認できた(図3)。この乾燥粉体の0°および45°での視覚反射率は、それぞれ29.3および56.4であった。
[実施例2]
実施例1の(2)で、ポリシロキサンを1.25gにした以外は、同様に行った。得られた粉体は、白色で触感の良いものであった。この乾燥粉体についてSEM観察を行ったところ、ほぼ凝集がない粒子が単分散された粒子が確認された。また表面の多孔質(凹凸)構造も確認できた。この乾燥粉体の0°および45°での視覚反射率は、それぞれ23.3および72.0であった。
[比較例1]
実施例1の(2)で、ポリシロキサンを2.5gにした以外は、同様に行った。得られた粉体は、白色であるがべとつき感のあるものであった。この乾燥粉体についてSEM観察を行ったところ、複数個がポリシロキサンを介して凝集した凝集粒子が確認された(図4)。また表面の多孔質(凹凸)構造がポリシロキサンに覆われて凹凸のない表面構造が確認できた(図5)。この乾燥粉体の0°および45°での視覚反射率は、それぞれ11.2および95.6であった。
[比較例2]
実施例1の(2)で、ポリシロキサンを0.05gにした以外は、同様に行った。得られた粉体は、白色であるが、やや触感劣るものであった。この乾燥粉体についてSEM観察を行ったところ、被覆する前の粉体同様若干の凝集構造が確認できた。
[比較例3]
実施例1の(2)で、最終真空乾燥の温度を110℃にした以外は同様に実施した。得られた粉体は、やや黄色く変色したものであった。
[実施例3]
実施例1の(2)で、ポリシロキサンの種類を高粘度ポリシロキサン(信越シリコーン社製:KF−8015:粘度50000〜100000cs)として1.25g添加した以外は、同様に行った。得られた粉体は、白色で触感の良いものであった。この乾燥粉体についてSEM観察を行ったところ、ほぼ凝集がない粒子が単分散された粒子が確認された。また表面の多孔質(凹凸)構造も確認できた。この乾燥粉体の0°および45°での視覚反射率は、それぞれ25.6および60.0であった。
[比較例4]
実施例3の(2)で、高粘度ポリシロキサンを2.5g添加した以外は、同様に行った。白色であるがべとつき感のあるものであった。この乾燥粉体についてSEM観察を行ったところ、複数個がポリシロキサンを介して凝集した凝集粒子が確認された。また表面の多孔質(凹凸)構造がポリシロキサンに覆われて凹凸のない表面構造が確認できた。この乾燥粉体の0°および45°での視覚反射率は、それぞれ11.6および148.4であった。
[実施例4]
実施例3で、ポリシロキサンの種類をジメチルポリシロキサン(信越シリコーン社製:KF−96A−10s:粘度10cs)を1.25gにした以外は、同様に行った。得られた粉体は、白色で触感の良いものであった。この乾燥粉体についてSEM観察を行ったところ、ほぼ凝集がない粒子が単分散された粒子が確認された。また表面の多孔質(凹凸)構造も確認できた。
[実施例5]
容器に実施例1(1)の乾燥ポリアミド6多孔質微粒子5gに、ジメチルポリシロキサン(信越シリコーン社製:KF−96A−10s:粘度10cs)を1.25gを加え、イカジャパン社のIKA−VIBRAX VXRベーシックにて、2000rpmで、4h混合攪拌をおこなった。次に真空乾燥機を用いて、1toor、80℃で3hほど真空乾燥を行って、乾燥粉体を得た。得られた粉体は、白色で触感の良いものであった。この乾燥粉体についてSEM観察を行ったところ、ほぼ凝集がない粒子が単分散された粒子が確認された。また表面の多孔質(凹凸)構造も確認できた。
図1は、本発明の実施例1(1)で得られたポリアミド多孔質微粒子のSEM写真である。 図2は、本発明の実施例1(2)で得られたポリシロキサン被覆ポリアミド多孔質微粒子のSEM写真である。 図3は、本発明の実施例1(2)で得られたポリシロキサン被覆ポリアミド多孔質微粒子のSEM写真(高倍率)である。 図4は、本発明の比較例1で得られたポリシロキサン被覆ポリアミド多孔質微粒子のSEM写真である。 図5は、本発明の比較例1で得られたポリシロキサン被覆ポリアミド多孔質微粒子のSEM写真(高倍率)である。

Claims (2)

  1. 数平均粒子径が1〜30μmであり、BET比表面積が0.1〜80m/gであるポリアミド多孔質微粒子の細孔内の少なくとも一部及び/又はポリアミド多孔質微粒子の表面の少なくとも一部を、ポリアミド多孔質微粒子の重量に対して2〜25重量%のポリシロキサンでコーティングした後、100℃未満の温度で熱処理したポリシロキサン被覆ポリアミド多孔質微粒子の製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法で製造されたポリシロキサン被覆ポリアミド多孔質微粒子。
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